(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087969
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】打込み工具
(51)【国際特許分類】
B25C 7/00 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
B25C7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200142
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】井田 慶介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 芳彦
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068EE20
3C068JJ20
(57)【要約】
【課題】コンタクト部の強度を確保しつつも、斜め打ちしたときの射出口の浮き上がりを小さくすることができる打込み工具を提供する。
【解決手段】ノーズ部17の先端に形成された射出口33bからファスナーを射出する打込み工具10であって、前記ノーズ部17の先端にコンタクト部30を備えており、前記コンタクト部30は、前記射出口33bを形成する筒状部33を有し、前記筒状部33の先端には、周方向に見て他の部分よりも薄肉に形成された薄肉部34aが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーズ部の先端に形成された射出口からファスナーを射出する打込み工具であって、
前記ノーズ部の先端にコンタクト部を備えており、
前記コンタクト部は、前記射出口を形成する筒状部を有し、
前記筒状部の先端には、周方向に見て他の部分よりも薄肉に形成された薄肉部が設けられている、
打込み工具。
【請求項2】
前記コンタクト部は、前記射出口の中心軸に対して回転可能である、
請求項1に記載の打込み工具。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記筒状部の周方向に複数設けられている、
請求項1または2のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項4】
前記筒状部の径方向に見て前記薄肉部の外周側に、被打込材に引っ掛けるための爪部を配置した、
請求項1~3のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項5】
ノーズ部の先端に形成された射出口からファスナーを射出する打込み工具であって、
前記ノーズ部の先端にコンタクト部を備えており、
前記コンタクト部は、前記射出口を取り囲むように配置された複数の爪部を備え、
平坦な打込み面に対して前記射出口の中心軸が45度となるように前記コンタクト部の先端を前記打込み面に当接させたときに、少なくとも3つの前記爪部が前記打込み面に当接するように構成されている、
打込み工具。
【請求項6】
前記複数の爪部は、先端間の距離が5mm以下に設定されている、
請求項5に記載の打込み工具。
【請求項7】
前記複数の爪部の内周側に、前記射出口を形成する筒状部を備え、
前記筒状部の先端に円環状の突起を形成した、
請求項5または6のいずれか1項に記載の打込み工具。
【請求項8】
前記複数の爪部の内周側に、前記射出口を形成する筒状部を備え、
前記筒状部の先端面に周方向に一定間隔で凹凸を設けた、
請求項5または6のいずれか1項に記載の打込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釘やピンなどのファスナーを被打込材に打ち込む打込み工具に関し、特にファスナーの斜め打ちに有利な構造を有する打込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の打込み工具を使用する際に、例えば壁際等のコーナー部へ釘打ちするときなどに、被打込材に対して斜めに釘を打ち込む作業(斜め打ち)が発生する場合がある。こうした斜め打ちの際には、被打込材と工具先端との接触面積が狭くなるため、工具先端が被打込材の表面を滑りやすくなる。
【0003】
こうした問題を解決するため、被打込材に接触するコンタクト部の先端に斜め打ち用のスパイク爪を設けた打込み工具が知られている(例えば特許文献1参照)。こうした従来の打込み工具では、斜め打ちの際にスパイク爪を被打込材に突き刺すことで、工具先端の位置決めを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の打込み工具で斜め打ちしようとした場合、コンタクト部の先端の厚みの分だけ、射出口が打込み面から浮いた状態となる。このため、ファスナーを深く打ち込めないという問題があった。なお、コンタクト部の先端の厚みを薄くすれば射出口の浮き上がりを小さくすることができるが、コンタクト部が強度不足となり、耐久性が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、コンタクト部の強度を確保しつつも、斜め打ちしたときの射出口の浮き上がりを小さくすることができる打込み工具を提供することを第1の課題とする。
【0007】
また、従来の打込み工具は、斜め打ちするときの位置ズレを抑制する目的でスパイク爪を備えているが、コンタクト部の方向によってはスパイク爪がうまく掛からず、打ち込み時の位置ズレの抑制効果が十分に得られないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、斜め打ち作業を行うときに、コンタクト部を当てる方向にかかわらず機械を安定させることができる打込み工具を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した第1の課題を解決するため、第1の発明は、ノーズ部の先端に形成された射出口からファスナーを射出する打込み工具であって、前記ノーズ部の先端にコンタクト部を備えており、前記コンタクト部は、前記射出口を形成する筒状部を有し、前記筒状部の先端には、周方向に見て他の部分よりも薄肉に形成された薄肉部が設けられている。
【0010】
また、上記した第2の課題を解決するため、第2の発明は、ノーズ部の先端に形成された射出口からファスナーを射出する打込み工具であって、前記ノーズ部の先端にコンタクト部を備えており、前記コンタクト部は、前記射出口を取り囲むように配置された複数の爪部を備え、平坦な打込み面に対して前記射出口の中心軸が45度となるように前記コンタクト部の先端を前記打込み面に当接させたときに、少なくとも3つの前記爪部が前記打込み面に当接するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明は上記の通りであり、筒状部の先端には、周方向に見て他の部分よりも薄肉に形成された薄肉部が設けられている。このような構成によれば、薄肉部を打込み面に当接させることで、射出口をできるだけ打込み面に近づけることができるので、ファスナーを深く打ち込むことができる。また、コンタクト部の全体を薄肉化する必要がないので、コンタクト部の強度を大きく損なうことがない。
【0012】
また、第2の発明は上記の通りであり、平坦な打込み面に対して射出口の中心軸が45度となるようにコンタクト部の先端を打込み面に当接させたときに、少なくとも3つの爪部が打込み面に当接するように構成されている。このような構成によれば、一般的な斜め打ちの角度において三点以上の爪部で機械を支持することができるので、コンタクト部を当接させる方向にかかわらず機械を安定させることができる。また、従来のように大きな爪部を設ける必要がなく、小さい爪部で機械を安定させることができるので、先端部が大きくならず、ノーズ部先端の作業箇所の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】第1の実施形態に係るノーズ部の斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係るノーズ部の(a)側面図、(b)底面図、(c)(b)に示すA1-A1線断面図、(d)(c)に示すB1部拡大図である。
【
図4】第1の実施形態に係るノーズ部の斜視図であって、コンタクト部を回転させた状態の図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例1に係るノーズ部の斜視図である。
【
図6】第1の実施形態の変形例1に係るノーズ部の(a)側面図、(b)底面図、(c)(b)に示すA2-A2線断面図、(d)(c)に示すB2部拡大図である。
【
図7】第1の実施形態の変形例2に係るノーズ部の斜視図である。
【
図8】第1の実施形態の変形例2に係るノーズ部の(a)側面図、(b)底面図、(c)(b)に示すA3-A3線断面図、(d)(c)に示すB3部拡大図である。
【
図9】第2の実施形態に係るノーズ部の斜視図である。
【
図10】第2の実施形態に係るノーズ部の(a)側面図、(b)底面図、(c)(b)に示すA4-A4線断面図、(d)(c)に示すB4部拡大図である。
【
図11】第2の実施形態に係る爪部が3つ突き刺さった状態を示す(a)正面図、(b)側面図、(c)斜視図である。
【
図12】第2の実施形態に係る爪部が4つ突き刺さった状態を示す(a)正面図、(b)側面図、(c)斜視図である。
【
図13】第2の実施形態の変形例1に係るノーズ部の斜視図である。
【
図14】第2の実施形態の変形例1に係るノーズ部の(a)側面図、(b)底面図、(c)(b)に示すA5-A5線断面図、(d)(c)に示すB5部拡大図である。
【
図15】第2の実施形態の変形例2に係るノーズ部の斜視図である。
【
図16】第2の実施形態の変形例2に係るノーズ部の(a)側面図、(b)底面図、(c)(b)に示すA6-A6線断面図、(d)(c)に示すB6部拡大図である。
【
図17】第2の実施形態の変形例3に係るノーズ部の斜視図である。
【
図18】第2の実施形態の変形例3に係るノーズ部の(a)側面図、(b)(a)に示すB7部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本実施形態にかかる打込み工具10は、ノーズ部17の先端に形成された射出口33bからファスナーを射出するものである。
【0015】
打込み工具10の構造は周知であるため詳しく説明しないが、例えば圧縮空気やガス、電気などを動力源とするものであり、
図1に示すような構成となっている。
図1に示す打込み工具10は、作業者が把持するために棒状に形成されたグリップ11を備える。また、このグリップ11を作業者が把持したときに人差し指がかかる位置には、引き操作可能なトリガ12が配置されている。このトリガ12が引き操作されると、内部の駆動機構(ピストンシリンダ機構やバネ機構など)が作動してファスナーが打ち込まれる。
【0016】
上記したグリップ11の上端には、このグリップ11と略直交するように出力部16が接続されている。この出力部16の先端には、ノーズ部17が突出形成されている。ノーズ部17は、出力部16の先端に固定されている。ノーズ部17の内部には、ファスナーの案内路が形成されており、ファスナーの案内路の出口が射出口33bとなっている。出力部16には駆動機構が内蔵されており、駆動機構が作動したときにノーズ部17からファスナーが打ち出される。詳しくは、出力部16の内部には、ファスナーを打ち出すためのドライバがノーズ部17の方向へと摺働可能に案内されている。駆動機構が作動すると、ドライバが衝撃的にノーズ部17の方向へと摺働し、ドライバの先端によってノーズ部17の案内路内に待機しているファスナーが打ち出される。
【0017】
なお、ノーズ部17の後方には、連結ファスナーを収容したマガジン14が連結されており、図示しないファスナー供給機構によって、マガジン14内のファスナーが順次ノーズ部17の案内路内に供給されるようになっている。
【0018】
本実施形態に係るノーズ部17の先端には、コンタクトノーズ20が摺働可能に設けられている。このコンタクトノーズ20は、出力部16に対して往復移動可能に設けられたコンタクトアームに接続されており、コンタクトアームと一体的に移動する。自然状態においては、コンタクトノーズ20は先端方向へ突出するように付勢されており、この状態ではファスナーの打ち込みができないように構成されている。一方、コンタクトノーズ20の先端を被打込材へ押し付けると、コンタクトノーズ20とともにコンタクトアームが移動し、安全機構が解除されてファスナーの打ち込みが可能な状態となる。
【0019】
本実施形態に係るコンタクトノーズ20は、
図2に示すように、本体部21と、コンタクト部30と、を備える。
【0020】
本体部21は、工具本体側と接続される部材であり、本実施形態においてはコンタクトアームに接続されている。なお、この本体部21は、必ずしもコンタクトアームに接続されている必要はない。例えば、本体部21は、出力部16(ノーズ部17)の先端に移動できないように固定されていてもよい。また、本体部21は、ノーズ部17と一体的に形成されていてもよい。また、本体部21は、コンタクトアームの先端に一体的に形成されていてもよい。
【0021】
本実施形態に係る本体部21は、
図3(c)に示すように、コンタクト部30を取り付けるための筒部21bを備える。この筒部21bの内周面には、周状にリング保持溝21aが凹設されている。このリング保持溝21aには、Oリング22が圧縮された状態で挿入されている。
【0022】
コンタクト部30は、ファスナーの打ち込み時に被打込材に接触する部位である。本実施形態に係るコンタクト部30は、本体部21に回転可能に取り付けられており、これにより、
図2および
図4に示すように、射出口33bの中心軸Xに対して回転可能となっている。なお、コンタクト部30を回転可能としない場合は、コンタクト部30を本体部21に固定してもよいし、また、コンタクト部30を本体部21と一体的に形成してもよい。
【0023】
このコンタクト部30は、
図3(c)に示すように、本体部21に挿入される挿入部31と、本体部21の先端方向に突出する筒状部33と、を備える。
【0024】
挿入部31は、本体部21の内径に合わせた円筒形に形成されており、外周面に係合溝31aが形成されている。この係合溝31aは、Oリング22に係合する浅い溝である。フランジ部32に当接する位置まで挿入部31を本体部21に挿入すると、
図3(c)に示すようにOリング22が係合溝31aに係合し、コンタクト部30が本体部21から容易に抜け落ちないようになっている。ただし、Oリング22を弾性変形させるだけの力を入れてコンタクト部30を引き抜けば、コンタクト部30を本体部21から取り外すことも可能である。また、このようにOリング22を使用してコンタクト部30と本体部21とを接続することで、コンタクト部30は本体部21に対してOリング22の周方向に回転自在となっている。
【0025】
筒状部33は、
図3(c)に示すような円筒状の部位であり、本体部21の先端方向に突出している。この筒状部33の中空部には、ファスナーを案内する射出経路33aが形成されている。この射出経路33aは、ノーズ部17内と連通しており、上記したファスナーの案内路の一部を形成している。また、射出経路33aの端部には、ファスナーを射出する射出口33bが開口している。
【0026】
本実施形態に係る筒状部33は、
図3(d)に示すように、射出口33bを形成する先端部の外周面にテーパ部34が形成されている。このテーパ部34は、先端方向に向けて外径が徐々に縮径するように形成されている。このテーパ部34を設けることで、斜め打ちしたときに射出口33bをできるだけ打込み面に近づけることができる。射出口33bを打込み面に近づけることで釘を深く打ち込めるので、斜め打ちした際の釘の浮き上がりを小さくすることができる。
【0027】
また、このテーパ部34には、周方向に見て他の部分(非薄肉部34b)よりも薄肉に形成された薄肉部34aが設けられている。薄肉部34aは、筒状部33の先端外周面を切り欠いた形状として設けられており、筒状部33の外形からはみ出さないように形成されている。本実施形態に係る薄肉部34aの表面は平坦面である。また、本実施形態に係る薄肉部34aの表面は、非薄肉部34bの表面とは異なる角度で傾斜しており、
図3(c)に示すように、薄肉部34aの表面の角度の方が、非薄肉部34bの表面の角度よりも、射出口33bの中心軸Xに対して平行に近い角度となっている。また、この薄肉部34aにおける筒状部33の先端面35は、非薄肉部34bにおける筒状部33の先端面35よりも厚みが薄く形成されている。
【0028】
このような構成により、斜め打ちするときに薄肉部34aを打込み面に当接させることで、非薄肉部34bを打込み面に当接させるよりも、射出口33bを打込み面に近づけることができる。
【0029】
なお、斜め打ちするためにコンタクト部30を斜めに打込み面に当接させたときに、コンタクト部30の当て方によっては、薄肉部34aではなく非薄肉部34bが打込み面に当接してしまう場合もある。このような場合には、
図4に示すようにコンタクト部30を回転させることで、薄肉部34aが打込み面に当接するように調整することができる。
【0030】
本実施形態においては、
図3(b)に示すように、薄肉部34aと非薄肉部34bとが交互に配置されており、複数の薄肉部34aが筒状部33の周方向に均等な間隔で設けられている。具体的には、薄肉部34aは、筒状部33の周方向に均等な間隔で3つ設けられており、すなわち、120度の角度ごとに配置されている。このように構成することで、薄肉部34aを打込み面に当接させやすくなっている。また、薄肉部34aが打込み面に当接しない場合でも、少しだけコンタクト部30を回転させれば、薄肉部34aを打込み面に当接させることができる。
【0031】
また、上記した筒状部33の外周面には、
図3(d)等に示すように、外周側に張り出した突出部36が設けられている。この突出部36の先端には、複数の爪部36aが形成されている。爪部36aは、ファスナーの射出方向と同じ方向に向けて尖った鋭利な形状であり、ファスナーを斜め打ちするときに被打込材に引っ掛けるために使用される。この爪部36aは、筒状部33の先端面35よりも先端方向に突出しないように形成されており、平打ち(被打込材に対して垂直に釘を打ち込む作業)をしたときに、爪部36aが打込み面に当たらないようになっている。本実施形態においては、筒状部33の径方向Dに見たときに、薄肉部34aの外周側に必ず爪部36aが配置されているようにしている。このため、斜め打ちで薄肉部34aを打込み面に当接させたときに、必ず爪部36aが打込み面に臨むようになっている。
【0032】
なお、本実施形態においては、薄肉部34aの外周側に複数(本実施形態においては2本)の爪部36aが配置されている。このように複数の爪部36aを配置することで、複数の点で機械を支持できるため、打ち込み時の機械の姿勢を安定させることができる。
【0033】
また、本実施形態においては、非薄肉部34bの外周側にも爪部36bを配置している。この非薄肉部34bの外周側の爪部36bは、薄肉部34aの外周側の爪部36aよりも大きく先端方向に突出して形成されている。このように構成することで、斜め打ちで薄肉部34aが打込み面に当接したときに、薄肉部34aの側部で大きな爪部36bを被打込み材に引っ掛けることが可能となり、更に機械の姿勢を安定させることができる。
【0034】
本実施形態は上記の通りであり、筒状部33の先端には、周方向に見て他の部分よりも薄肉に形成された薄肉部34aが設けられている。このような構成によれば、薄肉部34aを打込み面に当接させることで、射出口33bをできるだけ打込み面に近づけることができるので、ファスナーを深く打ち込むことができる。また、コンタクト部30の一部だけを薄肉化しているので、コンタクト部30の強度を大きく損なうことがない。
【0035】
なお、上記した実施形態においては、尖った鋭利な形状の爪部36aを設けているが、爪部36aの形状はこれに限らない。例えば、
図5および
図6に示すような爪部36cを設けてもよい。
図5および
図6に示す爪部36cは、ファスナーの射出方向(すなわち射出口の中心軸X)に対して直交する方向に一直線で形成されたくさび状の刃先を備えている。この爪部36cは、一重に設けてもよいが、複数段に重ねて設けることで滑り止めの効果が向上する。例えば、
図6(d)に示すように、筒状部33の径方向Dに複数の爪部36cを並列して設けることで、波状の突起を形成してもよい。このとき、内側の爪部36cの方が外側の爪部36cよりも先端方向に突出するようにすることで、斜め打ちする打込み面に対し、複数の爪部36cを当たりやすくすることができる。
【0036】
また、上記した実施形態に係る薄肉部34aは、射出口33bの中心軸Xに対して傾斜した表面を有するように形成したが、薄肉部34aは必ずしも傾斜面である必要はない。例えば、
図7および
図8に示すように、薄肉部34aの表面が、射出口33bの中心軸Xに対して平行となるようにしてもよい。このように、薄肉部34aの表面の角度を、射出口33bの中心軸Xに対して平行に近づけていくことで、より射出口33bを打込み面に近づけることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
本実施形態にかかる打込み工具10は、ノーズ部17の先端に形成された射出口33bからファスナーを射出するものである。
【0038】
打込み工具10の構造は周知であるため詳しく説明しないが、例えば圧縮空気やガス、電気などを動力源とするものであり、
図1に示すような構成となっている。
図1に示す打込み工具10は、作業者が把持するために棒状に形成されたグリップ11を備える。また、このグリップ11を作業者が把持したときに人差し指がかかる位置には、引き操作可能なトリガ12が配置されている。このトリガ12が引き操作されると、内部の駆動機構(ピストンシリンダ機構やバネ機構など)が作動してファスナーが打ち込まれる。
【0039】
上記したグリップ11の上端には、このグリップ11と略直交するように出力部16が接続されている。この出力部16の先端には、ノーズ部17が突出形成されている。ノーズ部17は、出力部16の先端に固定されている。ノーズ部17の内部には、ファスナーの案内路が形成されており、ファスナーの案内路の出口が射出口33bとなっている。この出力部16には駆動機構が内蔵されており、駆動機構が作動したときにノーズ部17からファスナーが打ち出される。詳しくは、出力部16の内部には、ファスナーを打ち出すためのドライバがノーズ部17の方向へと摺働可能に案内されている。駆動機構が作動すると、ドライバが衝撃的にノーズ部17の方向へと摺働し、ドライバの先端によってノーズ部17の案内路内に待機しているファスナーが打ち出される。
【0040】
なお、ノーズ部17の後方には、連結ファスナーを収容したマガジン14が連結されており、図示しないファスナー供給機構によって、マガジン14内のファスナーが順次ノーズ部17の案内路内に供給されるようになっている。
【0041】
本実施形態に係るノーズ部17の先端には、コンタクトノーズ20が摺働可能に設けられている。このコンタクトノーズ20は、出力部16に対して往復移動可能に設けられたコンタクトアームに接続されており、コンタクトアームと一体的に移動する。自然状態においては、コンタクトノーズ20は先端方向へ突出するように付勢されており、この状態ではファスナーの打ち込みができないように構成されている。一方、コンタクトノーズ20の先端を被打込材へ押し付けると、コンタクトノーズ20とともにコンタクトアームが移動し、安全機構が解除されてファスナーの打ち込みが可能な状態となる。
【0042】
なお、コンタクトノーズ20は、必ずしもコンタクトアームに接続されている必要はない。例えば、コンタクトノーズ20は、出力部16(ノーズ部17)の先端に移動できないように固定されていてもよい。また、コンタクトノーズ20は、ノーズ部17と一体的に形成されていてもよい。また、コンタクトノーズ20は、コンタクトアームの先端に一体的に形成されていてもよい。
【0043】
本実施形態に係るコンタクトノーズ20は、
図9および
図10に示すように、先端にコンタクト部30を備えている。コンタクト部30は、ファスナーの打ち込み時に被打込材に接触する部位である。このコンタクト部30は、
図10(c)に示すように、ファスナーを案内する射出経路33aを形成する筒状部33を備える。射出経路33aは、ノーズ部17内と連通しており、上記したファスナーの案内路の一部を形成している。また、射出経路33aの端部(筒状部33の先端部)には、ファスナーを射出する射出口33bが開口している。
【0044】
本実施形態に係る筒状部33は、
図10(d)に示すように、コンタクト部30の先端方向に突出した円筒状の部位である。この筒状部33の先端部にはテーパ部34が形成されている。このテーパ部34は、先端方向に向けて外径が徐々に縮径するように形成されている。このテーパ部34を設けることで、斜め打ちしたときに射出口33bをできるだけ打込み面40に近づけることができる。射出口33bを打込み面に近づけることで釘を深く打ち込めるので、斜め打ちした際の釘の浮き上がりを小さくすることができる。
【0045】
また、この筒状部33には、射出口33bを取り囲むように複数の爪部36aが配置されている。これらの爪部36aは、射出口33bを形成する筒状部33の先端面35よりも外周側に配置されている。また、これらの爪部36aは、ファスナーの射出方向と同じ方向に向けて尖った鋭利な形状となっており、ファスナーを斜め打ちするときに被打込材に引っ掛けるために使用される。本実施形態においては、複数の爪部36aが、すべて同じ大きさかつ同じ形状で形成されており、それぞれが周方向に等間隔に配置されている。
【0046】
本実施形態に係る打込み工具10は、このような小さい爪部36aを複数備えることで、斜め打ちの際に3つ以上の爪部36aで機械の姿勢を支持できるように構成されている。具体的には、
図11に示すように、平坦な打込み面40に対して射出口33bの中心軸Xが45度となるようにコンタクト部30の先端を打込み面40に当接させたときに、少なくとも3つの爪部36aが打込み面40に当接する(突き刺さる)ように構成されている。なお、爪部36aは最低でも3つは打込み面40に突き刺さるようになっているため、コンタクト部30の当て方によっては、
図12に示すように、4つの爪部36aが打込み面40に突き刺さる場合もある。
【0047】
なお、斜め打ちした際に少なくとも3つの爪部36aが打込み面40に当接するようにするためには、複数の爪部36aは、先端間の距離が5mm以下となるように設定することが望ましく、先端間の距離が3mm以下となるように設定することが更に望ましい。
【0048】
このような構成によれば、一般的な斜め打ちの角度(45度前後)において三点以上の爪部36aで機械を支持することができる。すなわち、周方向のどの位置でコンタクト部30を当接させるかにかかわらず(どの爪部36aを引っ掛けるかを使用者が意識しなくても)、必ず3つ以上の爪部36aが打込み面40に当接するので、容易に機械を安定させることができる。また、従来のように大きな爪部を設ける必要がなく、小さい爪部36aで機械を安定させることができるので、先端部が大きくならず、ノーズ部17の先端の作業箇所の視認性を高めることができる。
【0049】
なお、上記した実施形態においては、
図10(d)に示すように、筒状部33の先端面35が平坦に形成されている。しかしながら、これに限らず、筒状部33の先端に滑り止め用の形状を設けてもよい。
【0050】
例えば、
図13および
図14に示すように、筒状部33の先端に円環状の突起35aを形成してもよい。この
図13および
図14に示す例では、テーパ部34に連続するように(テーパ部34のテーパー面を共有するように)突起35aを設けている。突起35aは、筒状部33の先端面35よりも先端方向に突出して形成されている。この突起35aは、先端を尖らせた薄い刃状に形成されており、射出口33bと同心円上に設けられている。このような円環状の突起35aを設けることで、斜め打ちの際に更に機械の姿勢を安定させることができる。すなわち、この円環状の突起35aによって、爪部36aから離れた位置で、爪部36aとは異なる方向への滑りを抑制できるので、爪部36aとの相乗効果によって機械の姿勢を安定させることができる。
【0051】
また、
図15および
図16に示すように、筒状部33の先端面35に周方向に一定間隔で凹凸を設けてもよい。なお、
図15および
図16に示す例では、凹部35bを設けているが、これに代えて、凸部を設けてもよい。また、凸部を設ける場合、凸部の先端を先細りの爪形状としてもよい。このような凹凸を設けることで、斜め打ちの際に更に機械の姿勢を安定させることができる。すなわち、この凹凸によって、爪部36aから離れた位置で、爪部36aとは異なる方向への滑りを抑制できるので、爪部36aとの相乗効果によって機械の姿勢を安定させることができる。
【0052】
また、上記した実施形態においては、尖った鋭利な形状の爪部36aを設けるようにしたが、爪部36aの形状は異なる形状であってもよい。例えば
図17および
図18に示すように、平歯の爪部36aを設けるようにしてもよい。このような構成とすれば、鋭利な形状の爪部36aを形成する場合と比較して、加工時の形状のばらつきを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 打込み工具
11 グリップ
12 トリガ
14 マガジン
16 出力部
17 ノーズ部
20 コンタクトノーズ
21 本体部
21a リング保持溝
21b 筒部
22 Oリング
30 コンタクト部
31 挿入部
31a 係合溝
32 フランジ部
33 筒状部
33a 射出経路
33b 射出口
34 テーパ部
34a 薄肉部
34b 非薄肉部
35 先端面
35a 突起
35b 凹部
36 突出部
36a 爪部
36b 爪部
36c 爪部
40 打込み面
D 筒状部の径方向
X 射出口の中心軸