(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087984
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】ハニカム触媒およびこれを使用したガソリン自動車排ガスの浄化方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220607BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20220607BHJP
B01J 29/44 20060101ALI20220607BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220607BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B01J35/04 301A
B01J35/04 301G
B01J35/04 301B
B01J35/04 301L
B01J35/04 301M
B01J37/04
B01J29/44 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200164
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】城取 万陽
(72)【発明者】
【氏名】原 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】近野 優里
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AB03
3G091BA01
3G091GA06
3G091GB10W
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148BA03X
4D148BA06Y
4D148BA08X
4D148BA11X
4D148BA19X
4D148BA30Y
4D148BA31X
4D148BA33X
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB01
4D148BB02
4D148BB03
4D148BB14
4D148BB15
4D148BC07
4D148DA03
4D148DA20
4D148EA04
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01B
4G169BA07B
4G169BA07C
4G169BA13B
4G169BB04A
4G169BB06B
4G169BC13B
4G169BC16B
4G169BC43B
4G169BC51B
4G169BC71B
4G169BC72B
4G169CA02
4G169CA03
4G169DA06
4G169EA04X
4G169EA11
4G169EA18
4G169EA25
4G169EA26
4G169EB15X
4G169EB18X
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169EE01
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB04
4G169FB18
4G169FB23
4G169FB29
4G169FB30
4G169FB31
4G169FC08
4G169ZA11B
4G169ZB04
(57)【要約】
【課題】内燃機関などから排出される排ガス中の有害物質や環境負荷物質を浄化するために使用するハニカム触媒において、浄化性能の向上を図るために、高いガス拡散性を有する触媒層を形成する。
【解決手段】端部が開口した筒状のセルが、セルの壁を共有して集積したハニカム構造体のセル壁上に触媒組成物を被覆したハニカム触媒であって、
触媒組成物が略球状の無機酸化物粒子と、板状の無機酸化物粒子とを含むことを特徴とするハニカム触媒およびこれの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が開口した筒状のセルが、セルの壁を共有して集積したハニカム構造体のセル壁上に触媒組成物を被覆したハニカム触媒であって、
触媒組成物が略球状の無機酸化物粒子と、板状の無機酸化物粒子とを含むことを特徴とするハニカム触媒。
【請求項2】
略球状の無機酸化物粒子のアスペクト比が2以下である請求項1記載のハニカム触媒。
【請求項3】
板状の無機酸化物粒子の幅が厚みの2倍以上であり、長径の長さが前記幅の1倍以上であり、かつ、略球状の無機酸化物粒子の長径の1/10~2倍である請求項1または2記載のハニカム触媒。
【請求項4】
板状の無機酸化物粒子が、少なくとも平行な一組の平面を有するものである請求項1~3の何れか1に記載のハニカム触媒。
【請求項5】
体積基準の略球状の無機酸化物粒子の平均粒子径(D50)が1~100μmである請求項1~4の何れか1に記載のハニカム触媒。
【請求項6】
板状の無機酸化物粒子の長径の長さが5~100μmである請求項1~5の何れか1に記載のハニカム触媒。
【請求項7】
板状の無機酸化物粒子が結晶性の一次粒子である請求項1~6の何れか1に記載のハニカム触媒。
【請求項8】
ハニカム構造体を構成するセルの開口形状が四角であり、セル壁表面に被覆される触媒組成物の層の厚みが、セル壁の中央部よりもセル角部が大きい請求項1~7の何れか1に記載のハニカム触媒。
【請求項9】
触媒層における単位体積当たりの板状の無機酸化物粒子と略球状の無機酸化物粒子の質量比(板状の無機酸化物粒子/略球状の無機酸化物粒子)が5/100~40/100である請求項8記載のハニカム触媒。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1に記載のハニカム触媒の製造方法であって、
ハニカム構造体への触媒組成物の被覆がスラリー化した触媒組成物をウオッシュコート法を持ってセル壁上に被覆するもので、
触媒組成物のスラリー化が、板状の無機酸化物粒子を混合後は非破壊の条件で混合することを特徴とするハニカム触媒の製造方法。
【請求項11】
非破壊の条件が、撹拌翼による混合であって、撹拌要素同士の接触により板状の無機酸化物粒子の粉砕が行われないように混合するものである請求項10記載のハニカム触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9の何れか1に記載のハニカム触媒を使用したガソリン自動車排ガスの浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス拡散性に優れたハニカム触媒並びにその製造方法およびこのハニカム触媒を使用してガソリン自動車から排出される排ガスを浄化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の化石燃料を使用して稼働される内燃機関からは排ガスが排出される。このような排ガスには炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、化石燃料の燃焼由来の煤成分を含む微粒子(PM:Particulate Matter)等、有害成分や地球温暖化の原因とされている環境負荷物質が含まれている。これらの有害成分、環境負荷物質の浄化にはハニカム触媒を使用した手法が広く普及しており、有害成分、環境負荷物質はハニカム触媒で浄化されたうえで大気中に排出されている。
【0003】
このような有害成分、環境負荷物質の大気中への排出量は、各国の行政機関によって規制値が設定されており、市場における環境問題への意識が高まる中、この規制値も年々厳しさを増している。
【0004】
触媒化して使用されるハニカム構造体にはフロースルー型ハニカム構造体とウォールフロー型ハニカム構造体がある。フロースルー型ハニカム構造体は、両端が開口した管状のセルがこのセルを構成するセル壁を共有する形で集積したものであり、セラミックスやステンレス等の金属を素材としている。ウォールフロー型ハニカム構造体は管状のセルの開口部の一端が閉塞され、この閉塞部と開口部がハニカム構造体の両端面において互い違いになるようにセルを集積したものである。ウォールフロー型ハニカム構造体ではセル壁を通気可能な多孔質とすることで排ガス中のPMを濾し取り、大気中へのPM放出を防いでいる。
【0005】
排ガスから濾し取られたPMは、ウォールフロー型ハニカム構造体に堆積して行くが、触媒化される事で排ガスの熱と触媒の作用によって燃焼除去する事によって触媒化されたウォールフロー型ハニカム構造体が再生される。PMが除去されたウォールフロー型ハニカム構造体は再びPMを捕集することができる。このようなウォールフロー型ハニカム構造体は耐熱性とガス透過性を両立するために、多孔質なセラミックスから構成されている。なお、ごく小さなPM粒子は多孔質なセル壁や触媒層をすり抜けてしまう恐れがあるが、このような極小さなPM粒子は熱を帯びた触媒層と接触する際に、その多くが燃焼しCO2となって大気中に放出される。
【0006】
フロースルー型ハニカム構造体もセル壁が触媒化されて使用されることはウォールフロー型ハニカム触媒と同様である。排ガス中の有害成分や環境負荷物質はセル壁の触媒成分と接触することで浄化され大気中に放出される。
【0007】
これらの触媒化されたハニカム構造体は排ガスの流れ中に配置されるが、排ガスの流れにとって、このようなハニカム構造体の存在は抵抗となる。排ガスの流れにおける抵抗は圧力損失とも言われ、内燃機関にあっては出力低下の原因にもなる。前記のウォールフロー型ハニカム構造体はセルに閉塞部を有することから圧力損失が大きくなりがちである。このような圧力損失の影響は、流速の速い排ガスを排出する内燃機関において大きくなり、多くの乗用車に搭載されているガソリンエンジンがこれにあたる。
【0008】
一方で、フロースルー型ハニカム構造体はセルの両端が開口していることで圧力損失が少なく、ガソリン自動車の様に高回転で稼働する事を要求される内燃機関から排出される排ガスの浄化にあたって生じる圧力損失の著しい増加を招く事の無いハニカム構造体であるといえる。
【0009】
このように内燃機関から排出される排ガスの浄化に使用されるハニカム触媒であるが、PMを除くと反応物は気体である。ハニカム触媒ではこれらの気体成分が固体触媒との接触によって浄化されることから、触媒反応としては気相反応であるといえる。近年、厳しさを増す有害成分、環境負荷物質の排出規制にあたっては、ハニカム触媒におけるこの気相反応がより効率的に行われる事が求められている。
【0010】
触媒による気相反応において反応を効率的に促進するためには、反応物が含まれる排ガスと触媒組成物中の活性種や助触媒成分とが効率的に接触することが求められる。このような効率的な反応物との接触による浄化性能の向上は高いガス拡散性によって達成されるものであり、逆にいえばガス拡散性が低い触媒では浄化性能が低くいものとなる(特許文献1、特許文献2)。そして、後述するような触媒組成物層の様な層状物においては、ガス拡散性はガスの透過性と同義である(特許文献3)。
【0011】
通常、触媒組成物に使用される触媒成分は微細な粒子状態であり、このような粒子の多くは微細化にあたって粉砕工程を経る事が殆どである事もあって、基本的に触媒成分の形状は球形に近い形状を有している。従来のハニカム触媒では、このような略球形の触媒成分が組成されてセル壁の表面に層状に被覆されて使用されているが、球形に近い形状の触媒成分粒子がセル壁表面に被覆されることで粒子同士が密着して堆積し触媒層を形成していることからこの触媒層は緻密なものになってしまう。そして、緻密に形成された触媒組成物層は空隙が少なくガス拡散性にとっては不利な状態になってしまい、浄化性能の向上を難しいものにしていた。
【0012】
このような緻密な触媒層の形成を回避するためには、触媒組成物層に含まれる空隙の量を増やす事が考えられるが、単に空隙を多くしてしまうとセル壁表面と触媒組成物層の密着性が低下してしまう恐れがあり、セル壁から触媒組成物層が剥離してしまう事が懸念される。触媒組成物が剥離してしまうと、その分ハニカム触媒における触媒担持量が減ってしまい、排ガスの浄化効率が低下してしまう。また、剥離した触媒成分は大気中に放出されてしまうことにもなり、新たな環境汚染の要因になってしまう恐れもある。
【0013】
また、触媒組成物層における排ガスの透過性向上を目的とする場合、略球状であっても粒子径の大きな触媒成分を使用する事も考えられる。粒子径の大きな触媒成分同士であれば、粒子間に形成される細孔も大きなものとなり、ガスの透過にあたっての抵抗が低減する場合がある。しかし、粒子径の大きいという事は粒子の単位体積あたりの幾何学的表面積が小さいものとなる。触媒反応は触媒成分の表面が主要な反応場であることから、幾何学的表面積の小さい粒子では触媒成分の有効利用が難しくなる。
【0014】
また、ハニカム構造体のセル壁表面への触媒組成物層の緻密化はその製造方法にも起因する。ハニカム構造体のセル壁表面への触媒組成物の被覆に手法は大きく分けてパウダーコート法とウオッシュコート法の2種類がある。パウダーコート法はウォールフロー型ハニカム構造体の触媒化に使用される手法である。パウダーコート法の概要は、粉末状態の触媒成分を気流と共にハニカム構造体のセル開口端面からセル内部に供給し、ウォールフロー型ハニカム構造体のフィルター機能を利用して気流のみを他方のセル開口端面から排出することで、粉末状の触媒組成物をセル壁表面に堆積させるものである。
【0015】
この様に、パウダーコート法はハニカム構造体のフィルター機能を利用して触媒化するものであることから、堆積される触媒組成物層も嵩高いものとなり、高いガス拡散性を有する触媒層の形成には有利なものであるが、フィルター機能を有さないフロースルー型ハニカム構造体の触媒化には使用することはできない。また、パウダーコート法では触媒組成物をセル壁上に定着させることが難しい場合があり、管状のセルの内の軸線方向で触媒成分に偏りが生じてしまう事がある。このような触媒成分の偏りは管状のセルの内の軸線方向で厚い触媒層と薄い触媒層が形成されてしまう事でもあり、薄い部分では排ガスが触媒組成物を透過する距離が短くなることで反応時間も短くなり浄化性能を低下してしまうことがあり、厚い部分では排ガスの透過性が悪くなり、排ガスはより透過し易い薄い触媒層から透過することになり、一層の浄化性能の低下を招いてしまう事がある。
【0016】
一方、フロースルー型ハニカム構造体のセル壁への触媒組成物の被覆にはウオッシュコート法が用いられる。ウオッシュコート法の概要は、水等の液状の媒体に触媒成分を混合してスラリー化した所定量の組成物を、吸引や圧入など方法をもってセルの開口端面から供給し、これに吸引、あるいはエアブロー等の手法を施してセル壁表面に塗り伸ばすものである。この様に液体と混合したスラリーは、通常はセル壁に水分を吸収されてセル壁上に層状に被覆されるが、その際、無機酸化物粒子からなる触媒成分は互いに密着する様にしてセル壁方向に移動し、結果的に緻密な触媒層を形成し易い。
【0017】
この様に、フロースルー型ハニカム構造体を使用したハニカム触媒では、形成される触媒層が、触媒層を構成する触媒成分粒子の隙間を狭めながら定着することで、触媒組成物層中の空間を最小化する方向に緻密化してしまい、触媒成分粒子間の空間の少ない、緻密でガス拡散性の悪い触媒組成物層を形成してしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許第6362040号公報
【特許文献2】特許第6763555号公報
【特許文献3】特開2012-9353公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、内燃機関などから排出される排ガス中の有害物質や環境負荷物質を浄化するために使用するハニカム触媒において、浄化性能の向上を図るために、高いガス拡散性を有する触媒層を形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ハニカム触媒に被覆する触媒組成物に、特定の形状の無機酸化物粒子を組み合わせて用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
すなわち、本発明は、端部が開口した筒状のセルが、セルの壁を共有して集積したハニカム構造体のセル壁上に触媒組成物を被覆したハニカム触媒であって、触媒組成物が略球状の無機酸化物粒子と、板状の無機酸化物粒子とを含むことを特徴とするハニカム触媒である。
【0022】
また、本発明は、上記ハニカム触媒の製造方法であって、ハニカム構造体への触媒組成物の被覆がスラリー化した触媒組成物をウオッシュコート法を持ってセル壁上に被覆するもので、触媒組成物のスラリー化が、板状の無機酸化物粒子を混合後は攪拌翼による混合であって攪拌子同士の接触粉砕処理を施さないことを特徴とするハニカム触媒の製造方法である。
【0023】
更に、本発明は、上記ハニカム触媒使用したガソリン自動車排ガスの浄化方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来のハニカム触媒における触媒層に比べて、触媒組成物層内深くまで排ガスの到達が容易なもので、ハニカム触媒における浄化性能向上に有効な高いガス拡散性を有する触媒層を形成することができる。
【0025】
また、本発明によれば、ガソリン自動車から排出される高流速の排ガスを効率よく浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態(A)と、従来の触媒組成物層の様子(B)を模式的に表した図面である。
【
図2】ウオッシュコート法で製造されたハニカム触媒と、その開口端面の一部を拡大して触媒層の状態(厚み)を模式的に表した図面である。
【
図3】本発明の実施形態に使用される板状の無機酸化物粒子の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)画像である。
【
図4】本発明の実施形態に使用可能な、異なる板状の無機酸化物粒子のSEM画像である。
【
図5】本発明の触媒層の構成である略球状の無機酸化物粒子と、板状の無機酸化物粒子とを含む触媒組成物層のSEM画像である。
【
図6】従来の、略球状の無機酸化物粒子からなる触媒組成物層のSEM画像である。
【
図7】ウォールフロー型ハニカム構造体を構成する最小単位であるplugと多孔質なセル隔壁を排ガスの流れ方向を示す矢印と共に表した模式図である。
【
図8】実施例、比較例の触媒における触媒組成物層の被覆長さを、触媒層の構成の模式図と共に表している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、端部が開口した筒状のセルが、セルの壁を共有して集積したハニカム構造体のセル壁上に触媒組成物を被覆したハニカム触媒であって、
触媒組成物が略球状の無機酸化物粒子と、板状の無機酸化物粒子とを含むことを特徴とするハニカム触媒(以下、「本発明ハニカム触媒」という)である。
【0028】
[ハニカム構造体]
本発明ハニカム触媒に用いられるハニカム構造体は、端部が開口した筒状のセルが、セルの壁を共有して集積したものであれば特に限定されず、フロースルー型、ウォールフロー型を問わない。このようなハニカム構造体は特に限定されるものでは無く、当業者によって使用され、市場から入手可能なハニカム構造体の中から、浄化対象となる排ガスの状態によって適宜選択すればよい。
【0029】
ハニカム構造体の材質も特に限定されるものでは無く、例えば、コージェライト、シリカ、アルミナ、ゼオライト等の無機酸化物をハニカム形状に押出成形したものの他、連続的な波状に加工したステンレス等の金属板を円筒状に巻き取ることでハニカム化したものであっても良い。
【0030】
ハニカム構造体は管状のセルが、セルの壁を共有して集積したものであり、限られた容積の中で大きな幾何学的な表面積を有し、このセル壁表面を触媒化することで表面積の大きなハニカム触媒が得られる。市場に普及しているハニカム構造体はフロースルー型ハニカム構造体とウォールフロー型ハニカム構造体であることは背景技術に記載のとおりである。触媒反応では反応物が触媒表面と接触することで反応が促進することから、表面積の大きな事は反応にとって有利で有るといえる。
【0031】
触媒表面は反応に最も貢献するものであるが、層状に形成された触媒組成物では触媒組成物層の内部、すなわちハニカム触媒においてはセル壁側の触媒成分は反応物と接触し難い状態になり、従来のハニカム触媒では触媒成分が有効に利用にされているとは言い難い。本発明では後述する様に触媒組成物層に高いガス拡散性を持たせる事で、ハニカム構造体のセル壁上に被覆された触媒組成物層内部の触媒成分を有効に利用できることで、反応性の高いハニカム触媒、排ガス触媒であれば有害物質、環境負荷物質の浄化性能が高い触媒を得る事ができる。
【0032】
ハニカム構造体は円筒形、楕円筒形など複数の形状のものが市場から入手可能であるが、本発明で使用される形状は特に限定されず、本発明のハニカム触媒が使用される排気装置の仕様によって適宜選択すれば良い。また、ハニカム構造体の仕様は外形のサイズと共に単位断面積あたりのセルの数(セル密度)をもって表されるが、本発明に使用されるフロースルー型ハニカム構造体のサイズやセル密度についても特に限定されるものでは無く、従来排ガスの浄化にあたり触媒化して使用されてきたハニカム構造体の中から、排気装置の仕様によって適宜選択すれば良い。このようなハニカム構造体のセル密度については、ガソリン乗用車では62~124セル/cm2(400~800セル/inch2)の使用が好まれ、62~93セル/cm2(400~600セル/inch2)の使用が最も好まれている。
【0033】
[略球状の無機酸化物粒子]
本発明ハニカム触媒に用いられる略球状の無機酸化物粒子は従来から使用されてきた多くの触媒成分が該当する。自動車排ガス浄化用の触媒組成物では多くの触媒成分を組み合わせて使用される事は前述のとおりである。本発明が従来から使用されてきた触媒成分を任意に採用可能であることは、触媒設計の自由度を増し、また、既存の触媒に板状の無機酸化物粒子を添加するという簡単な改良で浄化性能の向上も図る事が可能であるともいえる。略球状の無機酸化物粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニアあるいはこれらの酸化物のうち少なくとも一つを含む複合酸化物等が挙げられる。
【0034】
このような略球状の無機酸化物粒子は、市場から広く多様な材料が入手可能であり、前述のとおり当業者によって広く使用されてきた材料であるともいえる。このような略球状の無機酸化物粒子の製法は特に限定されるものでは無いが、例えば、無機酸化物粒子原料となる成分を混合焼成して焼成物をボールミル等で粉砕、分級する手法や、原料水溶液を噴霧し、噴霧された水溶液粒子を直接加熱することで酸化物粒子を得るスプレードライ法等が挙げられる。このようにして得られた無機酸化物粒子は、粉砕する手法により得られたものでは粉砕の過程で粒子が研磨され、角が取れた略球状の粒子になる。また、スプレードライ法では噴霧された水溶液粒子が表面張力により略球状になることから、焼成された無機酸化物粒子としても略球状な形状の粒子を得ることができる。
【0035】
略球状の無機酸化物粒子は板状の無機酸化物粒子との組み合わせのうえで理論的には完全な球状である事が好ましい。しかし、市場に大量に供給される排ガス触媒に使用することが可能な触媒成分として完全に球状の無機酸化物粒子を採用する事は著しいコスト増を招くことや、そもそも完全に球状な粒子として入手できない触媒成分が殆どであるため現実的には触媒成分として完全な球状の成分を利用することは不可能である。そのため、本発明においては板状の無機酸化物粒子への対比的な表現として、従来の触媒成分粒子のことを略球状の無機酸化物粒子として記載している。
【0036】
このような略球状の無機酸化物粒子はそのアスペクト比をもって特定しても良い。本発明に使用する略球状の無機酸化物粒子のアスペクト比としては2以下である事が好ましく、1.5以下である事がより好ましい。このようなアスペクト比であれば、板状の無機酸化物粒子との点接触による空間を形成し易く、従来から当業者によって使用されてきた触媒成分の多くが選択可能であり、燃焼制御に応じて多様な特性を要求される自動車排ガス浄化触媒における設計の自由度が高いものとなる。
【0037】
このような略球状の無機酸化物粒子はその粒子サイズをもって特定される事もあるが、本発明においては略球状の無機酸化物粒子の粒子サイズは特に限定されるものではなく、従来から当業者によって採用されてきた粒子サイズの中から適宜選択すれば良い。具体的には体積基準の平均粒子径(D50)で1~100μmの粒子が、本発明において略球状の無機酸化物粒子として採用可能である。また、このような略球状の無機酸化物粒子は一次粒子であっても良いが、一次粒子が凝集した二次粒子で有っても良い。
【0038】
[板状の無機酸化物粒子]
本発明ハニカム触媒に用いられる板状の無機酸化物粒子は、板状であれば特に限定されないが、例えば、その幅、厚み、長径の長さで特定すると、幅は厚みの2倍以上が好ましく3倍以上であることがより好ましく、かつ略球状の無機酸化物粒子長径の1/10~2倍が好ましく1/5~1倍であることがより好ましい。また、長径の長さは5~100μmが好ましく10~50μmがより好ましい。板状の無機酸化物粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、シリカ、チタニア、ゼオライト等の他、天然あるいは合成された2種以上の成分からなる板状の無機酸化物粒子等が挙げられる。特にゼオライトは製造工程における原料濃度、原料成分、攪拌速度、温度等を操作することで多様な形状やサイズの粒子を再現性良く合成することが可能であり、本発明の板状の無機酸化物粒子として好ましい材料であるといえる。なお、板状の無機酸化物粒子の長径の長さは平行な一組の平面を構成する面の外周上に端点を持つ直線のうち最も長い直線の長さをいい、幅は平行な一組の平面を構成する面の外周上に端点を持ち、板状の無機酸化物粒子の長径の長さにあたる直線と直交する直線のうち最も長い直線の長さをいう。
【0039】
板状の無機酸化物粒子は、触媒組成物層中で、前述する略球状の無機酸化物粒子同士の接点に挟まり込んだり、略球状の無機酸化物粒子の間に形成された空間に入り込んで略球状の無機酸化物粒子に接触して空間を広げる事によってガス拡散性にとって効果的な空間を形成することができる。これを模式的に表したのが
図1である。
図1では(B)が従来の触媒成分で構成された触媒組成物層における触媒成分と空隙の状態を表しており、(A)が本発明の触媒成分と空隙の状態を表している。
【0040】
従来の触媒(B)では触媒組成物層を構成する触媒成分粒子3が略球状であることから触媒成分粒子が密に接触しており、触媒成分粒子によって形成される空間も狭く、ガス拡散性に取って不利な状態であった。
【0041】
これに対して本発明の触媒(A)では、略球状な無機酸化物粒子3の間に板状の無機酸化物粒子2が挟まり込む事で略球状の無機酸化物粒子の間隔を押し広げ、触媒組成物層における空間1は広いものとなり、ガス拡散性も向上する。
【0042】
[板状の無機酸化物粒子が細過ぎる場合の懸念]
この様に、本発明では板状の無機酸化物粒子が略球状の無機酸化物粒子の間隔を押し広げることでガス拡散性に有利な空間を形成するものであるが、そのため、板状の無機酸化物粒子の幅が著しく狭い、言わばごく細い針状で、しかもその長径の長さが短いものであると、略球状の無機酸化物粒子同士の接触によって形成された空間に入り込むだけで略球状の無機酸化物粒子に接触せず、空間をごく細い針状粒子で充填してしまうことにもなりかねず、略球状の無機酸化物粒子同士の接触によって形成される空間をかえって減らしてしまう場合がある。
【0043】
[板状の無機酸化物粒子が大き過ぎる場合の懸念]
また、板状の無機酸化物粒子が大きすぎる場合、板状の無機酸化物粒子以外の触媒成分粒子同士の距離を広げ過ぎてしまう事があり、この場合は触媒としての活性を逆に低下させてしまう恐れがある。
【0044】
本発明ハニカム触媒に用いられる触媒組成物は上記した略球状の無機酸化物粒子と、板状の無機酸化物粒子とを含むものであり、その含有量はこれらが同一組成中に共に存在するものであれば特に制限されないが、例えば、触媒層におけるハニカム構造体の単位体積当たりの質量比(板状の無機酸化物粒子/略球状の無機酸化物粒子)で5/100~40/100であることが好ましく、10/100~25/100である事が好ましい。板状の無機酸化物粒子の含有量が少ないときには本発明の効果が得られ難くなる場合があることは言うまでも無いが、多すぎる場合には略球状の無機酸化物粒子間の距離が広くなり過ぎて、後述するTWCのように異なる作用を有する触媒成分の相互作用を必要とする触媒では相互作用が得られ難くなる場合がある。
【0045】
本発明の様に無機酸化物粒子を含むハニカム触媒はかねてより広く実施されているものであって様々な種類が市場に供給されている。このうち、特にガソリン自動車排ガス浄化用に使用されるハニカム触媒は三元触媒(TWC:Three way catalyst)とも言われ、一つの触媒組成物で排ガス中の主な有害成分、環境負荷物質であるCO、HC、NOxの浄化作用を有するため、それに併せて適宜作用の異なる触媒成分を混合して製造される。CO、HCは酸化作用によってそれぞれ二酸化炭素(CO2)と水に転化されるが、NOxは排ガス中の還元成分であるHCを利用した還元反応によって窒素(N2)と水に転化される。そして、このような酸化反応、還元反応にはそれぞれ適した触媒成分を選択する。また、このような酸化反応、還元反応には反応に適した酸素濃度があり、このような酸素濃度を調整するために酸素の吸蔵と放出作用を持つ酸素吸蔵成分(OSC:Oxygen storage component)や、HC等の還元成分が少ない雰囲気中(多くの場合、希薄燃焼状態の排ガス中)でNOxを一時的に吸蔵しておくためのNOx吸蔵成分(LNT:Lean NOx trap)等も併せて使用される。
【0046】
この様にTWCに含まれる触媒成分はそれぞれ個別の作用を有するが、一方で互いの作用が影響しあって総合的に有害成分、環境負荷物質の浄化が行われる。板状の無機酸化物粒子が大きすぎ、空間(成分粒子間距離)が大きすぎると、これらの相互作用を阻害してしまう恐れがある。
【0047】
また、板状の無機酸化物粒子が大きすぎると、触媒組成物層中の空間量が大きくなり過ぎ、自動車排ガス浄化用として車両に実装して使用される触媒では、走行時の振動や、排ガスの流れから受ける圧力で触媒組成物層がセル壁表面から剥離し易くなる場合がある。触媒組成物層が剥離したフロースルー型ハニカム触媒では排ガスの浄化性能が低下してしまうことがある。
【0048】
本発明の板状の無機酸化物粒子としては四角柱形状の粒子も含まれる。このような四角柱粒子の幅と厚さの比率[厚さ/幅]は1/2~1であるものの事をいい、幅と厚さが平面を含み構成されていることは同様であるが、粒子の長径の長さについては厚さ、あるいは幅の長さの3~20倍程度であることが好ましく、4~10倍程度であることがより好ましい。
【0049】
このように柱状の無機酸化物粒子であっても、その形状によって板状の無機酸化物粒子同様にガス拡散性の向上が見込める空間の形成が期待できるが、一方で粒子のサイズが大き過ぎたり触媒組成物中の含有量が多すぎると触媒成分粒子間の距離を広げすぎて触媒成分粒子間の相互作用を阻害したり、触媒層の厚みを増してしまうことでセルの開口断面積を減らしてしまい排ガスにおける背圧の増加を招いてしまうことがある。そのため、本発明にとっては、板状の無機酸化物粒子と柱状の無機酸化物粒子とでは、板状の無機酸化物粒子を使用することが好ましいといえる。
【0050】
[板状の無機酸化物粒子:板状を構成する平面]
本発明の板状の無機酸化物粒子は、少なくとも平行な一組の平面を有するものであることが好ましい。このような平面を持つことで、略球状の無機酸化物粒子と板状の無機酸化物粒子の接触が点接触となり、より広い空間の形成とガス拡散性の向上が可能になる。また、平面上には、マクロサイズの凹孔、貫通孔が形成されていてもよい。
【0051】
本発明の板状の無機酸化物粒子の平面は理論的に完全な平面の事を指すものでは無く、実存する無機酸化物粒子の幾何学的形状の構成要素として平面であれば良い。このような平面を具体的に示すと、無機物の結晶形状を構成する程度の平面であれば良いともいえ、例えば、各種ゼオライトの単結晶の様に結晶面に由来する平面から構成された粒子が挙げられる。
【0052】
[板状の無機酸化物粒子:結晶性一次粒子]
このような板状の無機酸化物粒子は結晶性の一次粒子である事が好ましい。無機酸化物の結晶は前述したように幾何学的な構成要素として平面を有する粒子形状を有するものが多い。また、結晶性の一次粒子であることは同じサイズの二次粒子に比べて耐久性にも優れる事が多く、自動車排ガス浄化触媒のように高温高湿度な雰囲気に晒される環境下での使用であっても粒形を保ち易く、本発明におけるガス拡散性に優れる空間を維持し易い。
【0053】
また、無機酸化物の結晶性の一次粒子であると極端な柔軟性を有さず、略球状の無機酸化物粒子と混合して触媒組成物層を形成する場合にも変形し難いことで、本発明におけるガス拡散性に優れる空間を形成し易い。
【0054】
本発明ハニカム触媒に用いられる板状の無機酸化物粒子として好適な結晶性一次粒子は特に限定されるものでは無いが、本発明者らは大きなシリカ/アルミナのモル比(SAR:Silica alumina ratio)をもつMFI型ゼオライトによって、本発明の作用である高いガス拡散性を実現できている。このようなMFI型ゼオライトをうち、SAR900以上のものは高い耐熱性を有するSilicalite-1としても知られており、アルミニウムの含有量が少ない事で脱アルミネーションが起き難く水熱耐久性にも優れるが、SAR200以上のMFI型ゼオライトであれば、自動車触媒用材料として使用しても結晶性を失うことなく高い耐久性が期待できる。
【0055】
[ガス拡散性]
触媒組成物層中の浄化性能の向上に寄与できる細孔によるガス拡散性は、単純な円筒状の様にガスの透過性が良いだけの細孔形状では実現することが難しい。しかし、本発明の様に板状の無機酸化物粒子と略球状の無機酸化物粒子が混合されることで形成される細孔は原理的にランダムな細孔が形成される。このようなランダムな細孔が形成された触媒組成物層では、排ガスは多くの触媒成分粒子と接触しながら触媒組成物層中を拡散することが可能となり、排ガス中の有害物質や環境負荷物質の浄化性能の向上を図る事ができる。
【0056】
このような細孔の形成でガス拡散性を向上して排ガス触媒における浄化性能を向上させることについては、特許第6364118号公報のように従来からその重要性に着目され検討も行われている。特許第6364118号公報記載の手法は細孔の形成に繊維状有機物を使用するもので、この繊維状有機物は触媒製造工程における焼成工程で焼失させることで所定の細孔を形成している。
【0057】
しかし、このような有機物の焼失では有機物周辺の酸素が消費されることから、有機物焼失の間、触媒組成物は高温でありかつ還元雰囲気となる。触媒における主要な活性種としては白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を使用するが、このような高温還元雰囲気では貴金属は酸化物ではなくメタルな状態になる。高温下のメタルな金属成分は粒子同士が結合(燒結)し、触媒組成物中での分散性が低下してしまう。金属成分の分散性の低下は貴金属の単位重量あたりの表面積(MSA:Metal surface area)の低下としても現れる。触媒反応は主に活性種表面で促進することから、このような表面積の低下は触媒としての活性の低下に繋がる。
【0058】
また、MSAの低下は、排ガス浄化触媒の様に活性種として高価な貴金属を使用する触媒では産業的に重要な問題となる。すなわち、触媒組成物に配合する貴金属について所定のMSAを得ようとするときに、多量の貴金属を含有させざるを得なくなり、市場に供給される排ガス触媒の価格を高価なものとしてしまう。本発明ハニカム触媒では空間の形成に焼失のような加熱還元雰囲気を経ないことから、触媒組成物中に白金、パラジウム、ロジウム等の高価な貴金属を含む場合であっても、これら貴金属のMSAの低下を招く恐れが無い。
【0059】
[触媒層の厚み]
本発明ハニカム触媒は気相反応にとって有利なガス拡散性に優れた空間形成を実現できるものである。そのため、多様な触媒組成物層の形成に応用可能であるが、特にセル壁上に厚く被覆された触媒組成物層においては高い効果が期待できる。
【0060】
一般に、ハニカム構造体のセル壁上に触媒組成物を層状に被覆する場合、被覆する層が厚くなると排ガスのような反応ガスが通過できる開口断面積が減少してしまい、内燃機関から排出される排ガスにおいては背圧が上昇してしまう。そのため、出来るだけ少ない触媒量で触媒組成物層を形成することで、触媒組成物層形成後のセルの開口断面積を確保しようとする。
【0061】
一方で、ハニカム構造体のセル壁表面への触媒組成物の被覆にあたっては、製法上の問題で、一つのセル断面をとってみても、触媒組成物層厚い箇所と薄い箇所ができてしまう事が少なくない。このような触媒組成物層の厚みの不均一さは後述するウオッシュコート法を用いた触媒組成物の被覆において発生し易い。
【0062】
ウオッシュコート法の概要は、スラリー化した触媒組成物の所定量をハニカム構造体の開口端面から供給し、スラリー供給開口端面からのエアブローや、反対側の開口端面から吸引することで触媒組成物スラリーをハニカム構造体のセル壁表面上を軸線方向に塗り伸ばすものである。
【0063】
ここで、触媒組成物はスラリー化されていることで触媒組成物スラリーは
図2の様にセルの角部にメニスカスを形成してセル壁中央部の薄い触媒組成物層L2よりも厚い触媒組成物層L1を形成し易い。
図2はハニカム触媒における触媒組成物層の厚みを模式的に表した拡大図である。このように厚い触媒組成物層が形成し易いメニスカスは、開口断面形状が三角のセルや四角のセルの様に、セルの角部が鋭角なセルからなるハニカム構造体において形成され易い。このうち、四角セルは機械的な強度、製造コストの安さから今現在最も普及しているハニカム構造体のセル形状である。言い換えれば、市場に最も多く供給されているハニカム触媒では、セルの角部に厚く触媒組成物層が形成されているとも言える。
【0064】
排ガス浄化触媒のような固体触媒における気相反応では、反応物は触媒表面と接触することで生成物に転化されるもので、セル壁表面に被覆された触媒組成物層においても同様であるが、触媒組成物層は前述の様に従来から触媒成分としての無機酸化物粒子によって構成されていることから当該粒子の間隙によって形成された空間を有する。この空間に排ガスが入り込む事によっても、空間を形成する触媒成分粒子表面で触媒反応が促進する。
【0065】
このような触媒組成物層内部空間表面は触媒組成物層が薄い部位では比較的有効に触媒反応に利用し易い。しかし、触媒層が厚くなると、その内部深く、セル壁近傍の触媒成分には排ガスが到達し難い。そのため、セル壁上で厚く形成された触媒組成物層では部分的に触媒成分が有効に利用されていない状態となる。前記のような三角セル、四角セルの角部でメニスカスの影響で厚くなった触媒組成物層はまさに有効利用され難い部位といえる。
【0066】
本発明ハニカム触媒に用いられる触媒組成物はガス拡散性に有効な空間形成能力に優れる事から、このような厚塗りされてしまった触媒組成物層におけるセル壁側内部深くの触媒成分をも触媒反応に有効に利用する事が可能になり、ハニカム触媒における排ガス浄化性能の向上を図る事ができる。このような排ガス浄化性能の向上は特に三角セル、四角セルにおいて有効であり、四角セルが市場に最も多く普及しているセルの断面形状であることから、本発明によれば産業上極めて有効なハニカム触媒を供給できるものといえる。
【0067】
[触媒の製法]
本発明ハニカム触媒は略球状と無機酸化物粒子と板状の無機酸化物粒子を混合してセル壁上に被覆したものであり、その製法は特に限定されるものでは無いが、ハニカム構造体への触媒組成物の被覆にあたってはウオッシュコート法が古くから採用されており、本発明ハニカム触媒の製造においても好適な手法であるといえる。ウオッシュコート法は触媒層のセル壁上への定着性、ハニカム構造体における触媒層の被覆長さのコントロールが容易であり緻密な触媒設計が可能である。また、触媒層の長さのコントロールは触媒層をハニカム構造体における特定領域(ゾーン)を複数の触媒組成で塗り分けることを可能にして、触媒設計の多様さを増すもので、排ガス触媒において近年主流となりつつある仕様である。
【0068】
ウオッシュコート法は水などの液状媒体と触媒成分である無機酸化物粒子を混合してスラリー化した触媒組成物を、ハニカム構造体のセルの開口端面から所定量供給し、その後、スラリーを供給したセルの開口端面からのエアブローや、触媒組成物スラリーを供給したセル開口端面とは反対側の開口端面からの吸引処理により、セル壁表面上の所定長さに触媒組成物スラリーを塗り伸ばすものである。
【0069】
本発明ハニカム触媒の製造にあたっても、ウオッシュコート法を用いる場合には触媒組成物はスラリー化されて使用される。触媒組成物のスラリー化には触媒成分の混合処理が必要になるが、従来、多くの触媒組成物スラリーの製造において、ボールミル等の粉砕混合方法が採用されて来た。ボールミルのような粉砕混合手段はクラスター化した触媒成分粒子の粉砕も可能で、触媒組成物の均質化にとっては大変有効な手法である。しかし、本発明ハニカム触媒に用いられる触媒組成物にあっては板状の無機酸化物粒子はその形状を保つ必要があり、ボールミル等の粉砕混合手段を使用するとその形状が破壊され、ガス拡散性向上の為に必要な空間が形成され難くなってしまう恐れがある。
【0070】
そのため、本発明のハニカム触媒の製造に使用される触媒組成物スラリーの製造にあたっては、ボールミル等の粉砕混合手段は適用せず、少なくとも板状の無機酸化物粒子を混合後は非破壊の条件で混合する。非破壊の条件での混合方法としては、例えば、撹拌翼による混合であって、撹拌要素同士の接触により板状の無機酸化物粒子の粉砕が行われないようにする方法、超音波を用いた方法、バブリングを用いた方法等の混合方法や、これらの方法を組み合わせた方法等が挙げられ、これらの中でも撹拌要素同士の接触により板状の無機酸化物粒子の粉砕が行われないようにする方法が好ましい。この様に非破壊な混合手段を採用することで、板状の無機酸化物粒子はその形状を保ち易く、本発明のハニカム触媒の触媒層においてガス拡散性に優れた空間を形成し易くなる。そのため、板状の無機酸化物粒子は触媒組成物スラリーの製造工程における最終段階で混合する事が好ましいといえる。
【0071】
上記のようにしてセル壁上に触媒組成物スラリーが塗り伸ばされたハニカム構造体は乾燥、焼成を経て市場に供給される本発明ハニカム触媒となる。乾燥、焼成の条件は、特に限定されない。
【0072】
[好ましい用途]
本発明ハニカム触媒は優れたガス拡散性を有することから、高流速な排ガスの浄化においてその効果が期待できる。高い速度で流れる排ガスは触媒成分との接触時間が短くなり、触媒反応に充分な時間を掛けられず、有害成分や環境負荷物質の浄化が充分とは言えない場合がある。これは、前述の様に触媒反応が主に触媒表面で促進するものであることから、ガス拡散性の低い触媒組成物層においては特に顕著にあらわれてしまう。
【0073】
しかしながら、本発明ハニカム触媒はガス拡散性に優れた触媒組成物層を有することから、触媒組成物層のセル壁方向の内部深くまで触媒粒子の表面を反応に利用することが可能であり、高流速な排ガスの浄化にあっても優れた浄化性能が期待できる。このような高流速な排ガスの発生源としてはガソリンエンジンを搭載した自動車が挙げられる。ガソリンエンジンはディーゼルエンジンに比べて圧縮比が低く、燃焼室内でのピストンの運動に対する負荷が少なく高回転で稼働し易くそのため排ガスの流速も速いものとなる。このようなガソリンエンジンから排出される高流速な排ガスの浄化にあたっても、本発明ハニカム触媒は優れた効果が期待できる。
【実施例0074】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
製 造 例 1
[触媒組成物スラリー1:略球状の無機酸化物粒子のみ]
以下の成分と水とを攪拌翼を使用した撹拌機で細粒が発生しない様に混合しTWC用の触媒組成物スラリー1を調整した。
・硝酸パラジウム水溶液(Pd金属換算):0.96重量部
・γ-アルミナ:16.8重量部
・硝酸ロジウム水溶液(Rh金属換算):0.16重量部
・セリウム-ジルコニウム複合酸化物:11.1重量部 (CeO2/ZrO2換算の組成比3/7)
【0076】
[略球状の無機酸化物粒子]
この様にして得られた触媒組成物スラリー1について、粒子径としてD50、D90を測定したところ、D50が9μm、D90が26μmであった。粒子径はレーザー回析法によって測定した。触媒組成物スラリー1においてこの様に粒子径として表される成分はγ-アルミナとセリウム-ジルコニウム複合酸化物であるが、これらはいずれも本発明の略球状の無機酸化物粒子にあたる。
【0077】
[ハニカム構造体1]
・ハニカムタイプ:ウォールフロー型ハニカム構造体
・材質:コージェライト
・形状:円筒形
・サイズ:直径118.4mm,高さ127mm
・セル形状:四角
・セル密度:46.5cel/cm2(300cel/inch2)
・セル隔壁の厚み:0.2mm(8ミリインチ)
・気孔率:63%
・平均気孔径(D50):16μm
【0078】
本発明の実施例において使用するハニカム構造体の気孔率、平均細孔径は圧入圧力400MPaで測定した水銀圧入法による値から求めたものである。
【0079】
このようなウォールフロー型ハニカム構造体においては、
図7の模式図において示す様に、セル開口端から流入した排ガスは
図7中にplugとして示された閉塞部によって軸線方向の流通が阻まれる。軸線方向への流通が阻まれた排ガスは、多孔質なセル壁を透過して排ガスが流入したセルと隣接するセル内に入り、排ガスが流入した側とは逆のハニカム構造型開口端面から流出する。この時、PMはセル壁のろ過作用によって排ガス中から濾し取られ、セル壁表面に触媒組成物層が形成されていることで排ガス中の有害成分、環境負荷物質は浄化される。
【0080】
比 較 例 1
[ハニカム触媒1:ウォールフロー型ハニカム触媒、略球状の無機酸化物粒子のみ]
ウォールフロー型ハニカム構造体に、排ガスの入口端面側から触媒組成物スラリー1を所定量供給した後、排ガス入口側から調整した圧力と時間でエアブロー処理を行い、ハニカム構造体における所定の長さにまでスラリー化した触媒組成物スラリー1を塗り伸ばした。続いて、排ガスの出口端面側から触媒組成物スラリー1を所定量供給した後、排ガス出口側から調整した圧力と時間でエアブロー処理を行い、ハニカム構造体における所定の長さにまで触媒組成物スラリー1を塗り伸ばした。この様にして、それぞれセルの開口端面からウオッシュコート法をもってそれぞれon wallに被覆し、乾燥後、550℃で1時間大気雰囲気で焼成し比較例1のハニカム触媒を得た。比較例1に関する触媒層の構成、触媒層の被覆長さを模式図と共に
図8に記す。
図8に示したゾーン1における触媒組成物の担持量は13g/L、ゾーン2における触媒組成物の担持量は32g/Lであった。
【0081】
このハニカム触媒1をセルの軸線方向に切断し、セル壁上に現れた触媒組成物層をSEMにより観察した。SEM画像を
図6に表す。
図6では粗大粒子の存在も目立つが、画像から確認できる粒子はいずれも略球状であり、アスペクト比も2を超える粒子も確認できなかった。
【0082】
製 造 例 2
[板状の無機酸化物粒子A]
板状の無機酸化物粒子として以下のとおりゼオライトを合成した。まず、40%テトラプロピルアンモニウム水酸化物水溶液(セイケム社製)271.4gと水3,266.0gを混合した溶液に、フッ化アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)29.9gを溶解した。この溶液にNipsil ER(東ソーシリカ社製)287.5gを加えて一晩撹拌保持した。混合物の組成は次のとおりであった。この混合物における各成分の数値は、SiO2の物質量を1としたときの物質量(モル)比を意味する。
【0083】
1 SiO2
0.001 Al2O3
0.121 TPAOH (TPA:テトラプロピルアンモニウムカチオン)
0.182 (NH4
++NH3)
0.182 F-
43.74 H2O
【0084】
次いで、この原料組成物(混合物)を5,000ccのステンレス製オートクレーブに入れ、300rpmで攪拌しながら室温から3時間かけて175℃まで昇温し、その後、175℃を維持して45時間撹拌保持した。この水熱処理後の生成物をまとめて105℃乾燥し粉砕した後、600℃で5時間焼成して生成物を得た。粉末X線回折分析(XRD)を行ったところ、生成物はMFI型ゼオライトの単相であることが確認された。また、蛍光X線(XRF:X-ray Fluorescence)により組成分析をしたところSARは952であった。このことから、この無機酸化物粒子は耐久性に優れたSilicalite-1であることも確認された。
【0085】
また、このようにして得られた無機酸化物粒子のサイズをSEMにより観察したところ粒子サイズの揃った板状をしていることが確認された。SEM画像を
図3に表す。また、
図3における50μm四方における粒子を目視で観察した結果、この粒子は少なくとも平行な一組の平面を有する板状であり、長径の長さは18μm、幅は3.5μm、厚みは1.6μmであった。
【0086】
製 造 例 3
[板状の無機酸化物粒子B]
40wt%テトラプロピルアンモニウム水酸化物水溶液(セイケム社製)7.1gと水4.7gを混合した溶液に、酸性フッ化アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)0.4gを溶解した。この溶液の全量を、種晶であるゼオライトベータであるCP-7104(SAR:275、ゼオリスト社製)23.3gに含浸させて一晩密閉状態で放置した。合成用組成物の組成は次のとおりであった。この混合物における各成分の数値は、SiO2の物質量を1としたときの物質量(モル)比を意味する。
【0087】
1 SiO2
0.036 Al2O3
0.040 TPAOH (TPA:テトラプロピルアンモニウムカチオン)
0.020 (NH4
++NH3)
0.040 F-
1.848 H2O
【0088】
次いで、この原料組成物(混合物)を100cc内筒テフロン(登録商標)のステンレス製密閉耐圧容器に入れ、140℃で14日間静置保持した。この水熱処理後の生成物をまとめて105℃乾燥し粉砕した後、600℃で焼成して生成物を得た。この様にして得られた生成物について粉末X線回折分析を行ったところ、生成物はMFI型ゼオライトの単相であることが確認され、蛍光X線(XRF:X-ray Fluorescence)により組成分析をしたところ、種晶と同じくSARは278と高いものであった。
【0089】
この様にして得られたMFI型ゼオライト粉末の形状をSEMにより確認した。画像を
図4に表す。SEMによる確認の結果、このゼオライトは少なくとも平行な一組の平面を有する板状であり、更にガス拡散性向上に有利に働くと思われるマクロサイズの凹孔、貫通孔も形成されていることが確認された。
【0090】
この板状MFI型ゼオライトについて、板状の無機酸化物粒子A同様に長径の長さ、幅、厚みをSEM画像から確認したところ、長径の長さは概ね6μmを最大として粉砕により生じたそれより小さい長さの粒子を含み、幅は3μmを最大としてこれも解砕時に生じた小さい幅の粒子を含むものの、主な粒子の厚さは凸部も含め概ね0.5μmであった。なお、この様に小さな粒子を含む粉体の場合、乾式分級装置等を使用して必要に応じて小さな粒子を取り除いてから本発明の触媒成分として使用しても良い事は言うまでもない。
【0091】
製 造 例 4
[触媒組成物スラリー2:触媒組成物スラリー1+板状の無機酸化物粒子]
触媒組成物スラリー1に対して、γ-アルミナの一部を板状の無機酸化物粒子Aに換え、ハニカム構造体1における担持量がゾーン1:13g/L(板状の無機酸化物粒子A:1.7g/L)、ゾーン2:32g/L(板状の無機酸化物粒子A:4.2g/L)となる量の板状の無機酸化物粒子Aを加えて攪拌翼を使用して非粉砕となるように混合し触媒組成物スラリー2を調整した。
【0092】
実 施 例 1
[ハニカム触媒2:ウォールフロー型ハニカム触媒:板状の無機酸化物粒子と略球状の無機酸化物粒子を含む]
この触媒組成物スラリー2を使用し、ハニカム触媒1と同様にしてハニカム触媒2を調整した。
【0093】
このハニカム触媒2をセルの軸線方向に切断し、セル壁上に現れた触媒組成物層をSEMにより観察した。SEM画像を
図5に表す。
図5では略球状の粒子と板状の粒子の両方を確認でき、板状の粒子が略球状の粒子の間隔を押し広げていた。
【0094】
試 験 例 1
[ガス拡散性評価:ガス透過性]
ガス拡散性を検証するため、ハニカム触媒1、ハニカム触媒2について、圧力損失測定装置(ツクバリカセイキ株式会社製)に設置し、設置した排ガス浄化触媒に室温の空気を導入し、ハニカム触媒からの空気の排出量が4m3/minとなったときのハニカム触媒への空気の導入側と排出側の差圧を測定した。この値は圧力損失とも言われるが、この圧力損失の値が小さい方が、ガス透過性に優れていること、すなわちガス拡散性に優れた触媒組成物層が形成されている事を表している。結果を表1に記す。
【0095】
【0096】
表1の結果から、略球状の無機酸化物粒子と板状の無機酸化物粒子を含む触媒組成物層を形成した実施例1の触媒においてガス拡散性に優れている事が分かった。
【0097】
試 験 例 2
[浄化性能評価]
この様にガス拡散性に優れるハニカム触媒における排ガス浄化性能を評価するため、車両での実装に近い状態を再現すべく、ハニカム触媒1、ハニカム触媒2の前段に下記の前段ハニカム触媒を配置し、以下の条件の下、排ガスの浄化性能評価を行った。結果を表2に記す。表中、COは触媒の後方に排出される一酸化炭素の排出量を、THCは同様に炭素水素成分の総量を、NOxも同様に窒素酸化物の総量を表している。
【0098】
[前段ハニカム触媒:ハニカム構造体]
・ハニカムタイプ:フロースルー型ハニカム構造体
・直径:118.4 mm
・長さ:56 mm
・セル密度:600 cel/inch2(93 cel/cm2)
・セル壁の厚さ:3.5 mil(0.09 mm)
・体積:616 cc
【0099】
[前段ハニカム触媒:触媒成分担持量]
・製法:ウオッシュコート法
・焼成条件:550℃、1時間、大気雰囲気
・パラジウム(Pd金属換算):6 g/L
・ロジウム(Rh金属換算):1 g/L
・γ-アルミナ:45 g/L
・セリウム-ジルコニウム複合酸化物(CeO2/ZrO2換算の組成比3/7):90 g/L
・硫酸バリウム:10 g/L
【0100】
[評価エンジン]
・過給式燃料直噴型ガソリンエンジン:排気量1.5L
【0101】
[評価条件:触媒レイアウト]
前記評価エンジンを搭載した自動車の排気管の中に、前記の前段ハニカム触媒を排ガスの流れの上流に配置し、その下流にハニカム触媒2(実施例1)を配置したものを実施例2の触媒ユニットとし、ハニカム触媒2に替えてハニカム触媒1(比較例1)を配置したものを比較例2の触媒ユニットとした。
【0102】
[評価条件:評価モード]
この様に配置した実施例2、比較例2についてWLTCモード(国際調和排ガス試験モード)の運転条件に従って運転し、触媒後方に排出されるCO、THC、NOxの排出量を堀場製作所製、商品名:MEXA-ONEを使用し、走行距離あたりの各成分の排出量を求めた。結果を表2に記す。
【0103】
【0104】
表2の結果から、実施例1の触媒を使用した触媒ユニットの場合、CO、THC、NOx全てにおいて排出量が低減している事が分かった。このような結果から、本発明の触媒では優れたガス拡散性を実現することで、排ガス浄化性能に優れたハニカム触媒が得られることが分かった。また、本発明の実施例における板状の無機酸化物粒子はゼオライトであり、触媒の活性種としてパラジウム等の貴金属が同一組成中に使用されている。このようなゼオライトとパラジウム等の貴金属との混合使用や接触使用では、貴金属がゼオライトにより被毒されて触媒の活性が低下する恐れがある事が指摘されている(特表2019-513078号公報の[0004]、特開平07-096183号公報の[0003])。しかし、本願の実施例はゼオライトと貴金属の混合使用であるにも関わらず、触媒としての活性が向上していることは驚くべき事である。