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特開2022-87988回路基板、表示パネルおよび回路基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087988
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】回路基板、表示パネルおよび回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20220607BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20220607BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220607BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
H01L21/88 B
H01L29/50 M
H01L21/28 B
H01L29/78 616V
H01L29/78 617M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200172
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】村井 淳人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正範
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
5F110
【Fターム(参考)】
4M104BB04
4M104DD40
4M104DD64
4M104DD78
4M104DD83
4M104FF17
4M104GG09
4M104HH16
5F033GG03
5F033GG04
5F033HH11
5F033HH18
5F033MM13
5F033PP15
5F033QQ08
5F033QQ19
5F033QQ73
5F033VV15
5F033XX08
5F110AA03
5F110BB01
5F110CC01
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD03
5F110DD05
5F110DD13
5F110DD14
5F110DD15
5F110EE02
5F110EE04
5F110EE06
5F110EE22
5F110EE23
5F110EE30
5F110EE44
5F110EE48
5F110EE50
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110GG01
5F110HL02
5F110HL04
5F110HL06
5F110HL27
5F110HM02
5F110HM03
5F110NN03
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】配線層の電気抵抗が大きくなることを抑制することが可能な回路基板、表示パネルおよび回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】回路基板1は、絶縁層12と、絶縁層12上に設けられた、CuおよびTiを含む配線層20と、を備える。配線層20は、配線層20を断面で見た場合に、配線層20の中央領域21よりも外周領域22のほうがTiの含有率が高い。回路基板の製造方法は、絶縁層上にTiを含むCu合金膜を形成する工程と、Cu合金膜をエッチングすることで配線パターンを形成する工程と、配線パターンを不活性ガス雰囲気において加熱し、配線パターンの外周面に前記Tiを偏析させることで、前記配線層を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた、CuおよびTiを含む配線層と、
を備え、
前記配線層は、前記配線層を断面で見た場合に、前記配線層の中央領域よりも外周領域のほうが前記Tiの含有率が高い
回路基板。
【請求項2】
前記配線層は、前記外周領域よりも前記中央領域のほうが前記Cuの含有率が高い
請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記配線層は、前記絶縁層に接する下面と、前記下面に背向する上面と、前記下面および前記上面を繋ぐ側面と、を有し、
前記Tiの含有率が高い前記外周領域は、前記下面、前記上面および前記側面を含む領域に形成されている
請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記配線層は、前記配線層を断面で見た場合に、台形状である
請求項1~3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記回路基板は、薄膜トランジスタを有し、
前記薄膜トランジスタに含まれるゲート電極、ソース電極、ドレイン電極およびシールド電極の少なくとも1つの電極は、前記配線層によって構成される
請求項1~4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の回路基板と、
前記回路基板上に設けられたELデバイス層と、
を備える表示パネル。
【請求項7】
絶縁層および配線層を備える回路基板の製造方法であって、
前記絶縁層上にTiを含むCu合金膜を形成する工程と、
前記Cu合金膜をエッチングすることで配線パターンを形成する工程と、
前記配線パターンを不活性ガス雰囲気において加熱し、前記配線パターンの外周面に前記Tiを偏析させることで、前記配線層を形成する工程と、
を含む回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板、この回路基板を備える表示パネル、および、回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルテレビ等の表示装置に用いられる表示パネルとして、複数の画素がマトリクス状に配置された有機EL(electro luminescence)表示パネルが知られている。例えばトップエミッション構造を有する有機EL表示パネルは、薄膜トランジスタなどを有する回路基板と、回路基板上に設けられたELデバイス層と、によって構成される。薄膜トランジスタは、基板上に複数の絶縁層および複数の配線層などが積層されることで形成される。
【0003】
特許文献1には、絶縁層上にTiを含むCu配線層を配置し、その後熱処理することで、絶縁層とCu配線層との界面にTiを偏析させる方法が開示されている。界面に偏析したTiは、Cu配線層のCuが絶縁層に拡散することを防止するバリア層としての機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-258256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、Cu配線層の表面においてTi、Moなどの金属や絶縁膜、所謂バリア層で保護されていない部分があると、後工程で行われる焼成などの熱処理によって、当該部分が酸化することがある。当該部分が酸化すると、配線層の電気抵抗が大きくなるという問題がある。
【0006】
本開示は、上記問題を解決するためになされたものであり、配線層の電気抵抗が大きくなることを抑制できる回路基板等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の回路基板の一態様は、絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた、CuおよびTiを含む配線層と、を備え、前記配線層は、前記配線層を断面で見た場合に、前記配線層の中央領域よりも外周領域のほうが前記Tiの含有率が高い。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の表示パネルの一態様は、上記回路基板と、前記回路基板上に設けられたELデバイス層と、を備える。
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の回路基板の製造方法の一態様は、絶縁層および配線層を備える回路基板の製造方法であって、前記絶縁層上にTiを含むCu合金膜を形成する工程と、前記Cu合金膜をエッチングすることで配線パターンを形成する工程と、前記配線パターンを不活性ガス雰囲気において加熱し、前記配線パターンの外周面に前記Tiを偏析させることで、前記配線層を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の回路基板等によれば、配線層の電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、比較例の回路基板の製造過程を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る回路基板を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る回路基板の製造方法を示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態に係る回路基板の製造過程を示す図である。
図5図5は、実施の形態に係る回路基板を備える表示パネルの一部の断面図である。
図6図6は、実施の形態の変形例に係る回路基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示に至る経緯)
本開示に至る経緯について、図1を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、比較例の回路基板101の製造過程を示す図である。
【0014】
比較例の回路基板101を作製するためには、まず、図1の(a)に示すように、基板110上にTi、MoまたはMoTiなどの金属層131を成膜し、さらに、金属層131上にCu層132を成膜する。次に、図1の(b)に示すように、金属層131およびCu層132を所定パターンでエッチングすることで、配線層120を形成する。これにより、基板110上に配線層120が形成された回路基板101が作製される。
【0015】
しかしながら、この回路基板101では、後工程で行われる焼成などの熱処理によって、配線層120に不具合が起きることがある。具体的には、酸素雰囲気において200℃以上の熱処理が行われた場合、配線層120の表面が酸化することがある。配線層120の表面が酸化すると、配線層120の電気抵抗が大きくなるという問題が起きる。
【0016】
それに対し本開示の回路基板では、以下に示す構成を有することで、配線層の電気抵抗が大きくなることを抑制している。
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、並びに、工程の順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0018】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0019】
また、本明細書において、「上」及び「下」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上」及び「下」という用語は、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合のみならず、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合にも適用される。
【0020】
(実施の形態)
[回路基板の構成]
本実施の形態に係る回路基板の構成について、図2を参照しながら説明する。
【0021】
図2は、実施の形態に係る回路基板1を示す図である。
【0022】
図2に示すように、回路基板1は、基板10と、基板10上に設けられた配線層20とを備える。
【0023】
基板10は、絶縁性基板11と、絶縁層12とによって構成されている。
【0024】
絶縁性基板11は、基台となる板状部材である。絶縁性基板11は、例えば、ガラス、石英及びシリコンなどから構成されている。なお、絶縁性基板11は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂材料から構成されていてもよい。
【0025】
絶縁層12は、絶縁性基板11上に設けられる層であり、絶縁性基板11の全体を覆っている。絶縁層12は、例えば酸化シリコン(SiO)膜などの絶縁材料により構成されている。なお、絶縁層12は、窒化シリコン(SiN)膜、酸窒化シリコン(SiON)膜などのなどの絶縁材料により構成されていてもよい。
【0026】
配線層20は、絶縁層12上に設けられる層であり、Cu(銅)およびTi(チタン)などの材料(元素)を含んでいる。なお、配線層20は、N(窒素)などの他の材料(元素)を微小量含んでいてもよい。
【0027】
配線層20は、基板10の主面に垂直な方向から見て、所定の配線形状にパターニングされている(図示省略)。また、配線層20は、配線が延びる方向から見て、すなわち配線層20を断面で見た場合に、台形状である。配線層20は、絶縁層12に接する下面20aと、下面20aに背向する上面20bと、下面20aおよび上面20bを繋ぐ2つの側面20cと、を有している。側面20cは、下面20aに対して傾斜している。下面20aに対する側面20cの傾斜角は、例えば、25°以上60°以下である。配線層20の厚みは、例えば、100nm以上800nm以下である。
【0028】
配線層20は、配線層20を断面で見た場合に、配線層20の中心を含む中央領域21と、中央領域21の外側に位置する外周領域22とを有する。外周領域22は、中央領域21の周囲に設けられ、配線層20の外周面23の全面を含んでいる。外周領域22の厚みは、例えば1nm以上20nm以下である。本実施の形態では、配線層20は、中央領域21よりも外周領域22のほうがTiの含有率が高い。例えば、中央領域21におけるTiの含有率は3原子%未満である。つまりこの配線層20は、外周領域22においてTiが偏析されており、中央領域21にあるCuが酸化されにくい構造となっている。
【0029】
また、配線層20は、外周領域22よりも中央領域21のほうがCuの含有率が高い。中央領域21におけるCuの含有率は、例えば、98原子%以上である。すなわち、配線層20は、中央領域21においてCuの純度が高く、例えば配線層20の全体がCuTi合金で構成されている場合に比べて、比抵抗が小さくなっている。
【0030】
[回路基板の製造方法]
回路基板1の製造方法について、図3および図4を参照しながら説明する。
【0031】
図3は、回路基板1の製造方法を示すフローチャートである。図4は、回路基板1の製造過程を示す図である。
【0032】
まず、図4の(a)に示すように、基板10の絶縁層12上にTiを含むCu合金膜51を形成する(ステップS11)。具体的には、Cuターゲットを用いたスパッタ法により、絶縁層12上にTiを含むCu合金膜51を形成する。Cuターゲットは、Tiを含むCuターゲットであってもよいし、純Cuターゲット上にTiチップを載せたターゲットであってもよい。Cu合金膜51は、絶縁層12上の全面に形成される。絶縁層12上に形成されたCu合金膜51の厚みは、例えば、400nmである。Cuターゲットに含まれるTiの含有率が3原子%である場合、Cu合金膜51におけるTiの含有率も約3原子%となる。なお、スパッタが窒素を含む雰囲気で実行される場合、絶縁層12上に形成されるCu合金膜51に、窒素成分が含まれていてもよい。
【0033】
次に、図4の(b)に示すように、Cu合金膜51をエッチングすることで配線パターン52を形成する(ステップS12)。具体的には、フォトレジスト法により配線パターン52の配線形状に対応したレジストをCu合金膜51上に形成した後、過酸化水素を含むエッチャントを用いてウエットエッチングする。その後、レジストを除去することで、配線パターン52が形成される。このウエットエッチングが行われることで、配線パターン52の断面が台形状になる。なお、ウエットエッチングは異方性エッチングであることが望ましい。
【0034】
次に、図4の(c)に示すように、配線パターン52の外周面にTiを偏析させることで、配線層20を形成する(ステップS13)。具体的には、配線パターン52が形成された基板10を窒素などの不活性ガス雰囲気において、数時間加熱する。この加熱処理(アニール処理)によって、配線パターン52に含まれるTi成分が中央から外周に向けて移動する。これにより、配線層20の外周面23にTiが偏析され、外周領域22におけるTiの含有率が高い配線層20が形成される。例えば、配線層20の中心におけるTiの含有率は3原子%未満である。
【0035】
また、配線層20の外周領域22のTiの含有率は、加熱処理前よりもステップS13による加熱処理後のほうが高くなっている。例えば、外周領域22において、加熱処理前のTiの含有率は3原子%であり、加熱処理後のTiの含有率は3原子%よりも高くなっている。
【0036】
これらのステップS11~S13が実行されることで、中央領域21よりも外周領域22のTiの含有率が高い配線層20が形成される。
【0037】
[表示パネルの構成]
上記の回路基板1を備えた表示パネル5の構成について説明する。表示パネル5は、デジタルテレビ等の表示装置に用いられるパネルであり、複数の画素回路を備えている。以下では、表示パネル5の一部の断面に着目して説明する。
【0038】
図5は、回路基板1を備える表示パネル5の一部の断面図である。
【0039】
図5に示すように、表示パネル5は、回路基板1とELデバイス層2とを備えている。ELデバイス層2は、陽極、正孔注入層、発光層、電子注入層および陰極が積層された多層構造を有している(図示省略)。
【0040】
図5に示すように、回路基板1は、薄膜トランジスタ40を有している。薄膜トランジスタ40は、基板10、層間絶縁層44、酸化物半導体層45、ゲート絶縁層46、ゲート電極47、層間絶縁層48、ソース電極49aおよびドレイン電極49bを含んでいる。また、薄膜トランジスタ40は、シールド電極43を含んでいる。
【0041】
本実施の形態では、ゲート電極47、ソース電極49a、ドレイン電極49bおよびシールド電極43の少なくとも1つの電極が、前述した配線層20によって構成されている。以下、各構成要素について説明する。
【0042】
基板10は、前述した絶縁性基板11および絶縁層12によって構成されている。
【0043】
シールド電極43は、絶縁層12上に配置される所定の形状にパターニングされた導電層である。シールド電極43は、ゲート電極47および酸化物半導体層45と対向する位置に配置される。シールド電極43は、前述した配線層20によって構成されている。
【0044】
層間絶縁層44は、シールド電極43を覆うように、絶縁層12上に配置される絶縁層である。層間絶縁層44は、例えば、窒化シリコン(SiN)膜、酸化シリコン(SiO)膜などの絶縁材料によって構成されている。
【0045】
酸化物半導体層45は、層間絶縁層44上に配置され、チャネル領域45aと、低抵抗領域45bとを有する半導体層である。チャネル領域45aは、シールド電極43およびゲート電極47と対向する位置に形成される。酸化物半導体層45としては、例えば、酸化インジウムスズ亜鉛(ITZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO:InGaZnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムガリウム(IGO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム(InO)などを用いることができる。
【0046】
ゲート絶縁層46は、酸化物半導体層45上に配置される絶縁層である。ゲート絶縁層46は、ゲート電極47の直下に配置される。ゲート絶縁層46として、例えば、シリコン酸化(SiO)膜、シリコン窒化(SiN)膜、酸窒化シリコン(SiON)膜、酸化アルミニウム(AlO)膜、酸化ハフニウム(HfO)膜のうちの1種よりなる単層膜、又は、それらのうちの2種以上よりなる積層膜を用いることができる。
【0047】
ゲート電極47は、酸化物半導体層45の上方に配置される導電層である。ゲート電極47は、ゲート絶縁層46を介して酸化物半導体層45のチャネル領域45aと対向している。ゲート電極47は、印加されるゲート電圧によってチャネル領域45a中のキャリア密度を制御すると共に、電位を供給する配線としての機能を有する。ゲート電極47は、前述した配線層20によって構成されている。
【0048】
層間絶縁層48は、ゲート電極47を覆うように、ゲート絶縁層46上に配置される絶縁膜である。層間絶縁層48として、例えば、酸化シリコン(SiO)膜、酸化アルミニウム(Al)膜などを用いることができる。層間絶縁層48として、例えば、窒化シリコン(SiN)膜、酸窒化シリコン(SiON)膜などを用いてもよい。
【0049】
ソース電極49aおよびドレイン電極49bは、それぞれ、薄膜トランジスタ40のソースおよびドレインとして機能する電極である。ソース電極49aおよびドレイン電極49bは、前述した配線層20によって構成されている。
【0050】
このように本実施の形態では、薄膜トランジスタ40のゲート電極47、ソース電極49a、ドレイン電極49bおよびシールド電極43が、前述した配線層20によって構成されている。
【0051】
[変形例]
実施の形態の変形例に係る回路基板1Aについて、図6を参照しながら説明する。変形例では、配線層20を覆うように、絶縁層12とは異なる他の絶縁層14が設けられている例について説明する。
【0052】
図6は、実施の形態の変形例に係る回路基板1Aを示す図である。
【0053】
図6に示すように、変形例の回路基板1Aは、基板10、配線層20および絶縁層14を備えている。
【0054】
基板10は、絶縁性基板11と、絶縁層12とによって構成されている。配線層20は、絶縁層12上に設けられており、CuおよびTiなどの材料を含んでいる。基板10および配線層20の構成は、実施の形態と同様である。
【0055】
変形例の絶縁層14は、絶縁層12と同様に、酸化シリコン(SiO)膜などの絶縁材料により構成されている。なお、絶縁層14は、窒化シリコン(SiN)膜、酸窒化シリコン(SiON)膜などのなどの絶縁材料により構成されていてもよい。
【0056】
この絶縁層14は、配線層20を覆うように、絶縁層12上に設けられている。そのため、変形例の回路基板1Aでは、配線層20の上面20bおよび2つの側面20cが絶縁層14に接している。すなわち、変形例の回路基板1Aでは、配線層20の外周面23が、絶縁層12または14に接する構造となっている。
【0057】
この変形例においても、配線層20は、中央領域21よりも外周領域22のほうがTiの含有率が高くなっている。また、配線層20は、外周領域22よりも中央領域21のほうがCuの含有率が高くなっており、例えば配線層20の全体がCuTi合金で構成されている場合に比べて、比抵抗が小さくなっている。
【0058】
なお、変形例に係る回路基板1Aは、図3に示すステップS12とS13との間に、絶縁層14を設ける工程を入れることで作製される。具体的には、ステップS12の後に、配線パターン52を覆うように絶縁層14を形成する。そしてステップS13の加熱処理によって、配線パターン52に含まれるTi成分が中央から外周に向けて移動する。これにより、Cu合金膜51と絶縁層12、14との界面にTiが偏析され、外周領域22におけるTiの含有率が高い配線層20が形成される。
【0059】
[効果等]
本実施の形態に係る回路基板1は、絶縁層12と、絶縁層12上に設けられた、CuおよびTiを含む配線層20と、を備える。配線層20は、配線層20を断面で見た場合に、配線層20の中央領域21よりも外周領域22のほうがTiの含有率が高い。
【0060】
このように、配線層20の外周領域22におけるTiの含有率が高くなっていることで、例えば、後工程で行われる焼成などの熱処理によって、配線層20の表面が酸化することを抑制できる。これにより、配線層20の電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0061】
また、配線層20は、外周領域22よりも中央領域21のほうがCuの含有率が高くてもよい。
【0062】
このように、中央領域21におけるCuの含有率が高くなっていることで、配線層20の電気抵抗を小さくすることができる。これにより、配線層20の電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0063】
また、配線層20は、絶縁層12に接する下面20aと、下面20aに背向する上面20bと、下面20aおよび上面20bを繋ぐ側面20cと、を有している。Tiの含有率が高い外周領域22は、下面20a、上面20bおよび側面20cを含む領域に形成されていてもよい。
【0064】
この構成によれば、配線層20の下面20a、上面20bおよび側面20cが酸化することを抑制できる。これにより、配線層20の電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0065】
また、配線層20は、配線層20を断面で見た場合に、台形状であってもよい。
【0066】
例えば、配線層20上に他の絶縁層が配置される場合、配線層20の上側に位置する他の絶縁層に亀裂が入ることがある。具体的には、配線層20の側面20cが、下面20aおよび上面20bに対して垂直であると、側面20cと上面20bとが交差する箇所において応力集中が起き、他の絶縁層に亀裂が入りやすい。それに対し、配線層20の断面を台形状とすることで、側面20cと上面20bとが交差する箇所において応力集中が起きることを抑制できる。これにより、配線層20上に配置された他の絶縁層に亀裂が入ることを抑制でき、回路基板1に発生する不具合を減らすことができる。
【0067】
また、回路基板1は、薄膜トランジスタ40を有し、薄膜トランジスタ40に含まれるゲート電極37、ソース電極49a、ドレイン電極49bおよびシールド電極43の少なくとも1つの電極は、配線層20によって構成されていてもよい。
【0068】
これによれば、ゲート電極37、ソース電極49a、ドレイン電極49bおよびシールド電極43の少なくとも1つの電極の電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0069】
本実施の形態に係る表示パネル5は、上記回路基板1と、回路基板1上に設けられたELデバイス層2と、を備える。
【0070】
これによれば、例えば、配線層20の電気抵抗を小さくした回路基板1を備える表示パネル5を提供することができる。
【0071】
本実施の形態に係る回路基板1の製造方法は、絶縁層12および配線層20を備える回路基板1の製造方法であって、絶縁層12上にTiを含むCu合金膜51を形成する工程と、Cu合金膜51をエッチングすることで配線パターン52を形成する工程と、配線パターン52を不活性ガス雰囲気において加熱し、配線パターン52の外周面にTiを偏析させることで、配線層20を形成する工程と、を含む。
【0072】
これによれば、配線層20の外周領域22におけるTiの含有率が高い回路基板1を製造することができる。そのため、例えば、後工程で行われる焼成などの熱処理によって、配線層20の表面が酸化することを抑制できる。これにより、配線層20の電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0073】
(その他の形態)
以上、本開示に係る回路基板などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示に係る回路基板などは、上記実施の形態に限定されるものではない。各実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、各実施の形態に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0074】
本実施の形態では、配線層20が中央領域21および外周領域22を有している例を示したが、中央領域21と外周領域22との境界は必ずしも明確である必要はない。例えば、配線層20は、中央領域21と外周領域22との境界付近において、中央領域21から外周領域22に向かってTiの含有率が徐々に高くなるように構成されていてもよい。
【0075】
本実施の形態では、基板10が絶縁性基板11と絶縁層12とによって構成されている例を示したが、絶縁性基板11は、絶縁層の一例であり、上記の絶縁層12と厳密に区別される必要はない。この例のように、基板本体が絶縁性基板11である場合、基板10は複数の絶縁層で構成されていることになる。また、基板10が絶縁性基板11のみで構成されている場合も、基板10は絶縁層で構成されていることになる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、回路基板を備える表示パネル、および、表示パネルを備える表示装置等に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1、1A 回路基板
2 ELデバイス層
5 表示パネル
10 基板
11 絶縁性基板
12、14 絶縁層
20 配線層
20a 下面
20b 上面
20c 側面
21 中央領域
22 外周領域
23 外周面
40 薄膜トランジスタ
43 シールド電極
44 層間絶縁層
45 酸化物半導体層
45a チャネル領域
45b 低抵抗領域
46 ゲート絶縁層
47 ゲート電極
48 層間絶縁層
49a ソース電極
49b ドレイン電極
51 Cu合金膜
52 配線パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6