(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088011
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】車両用パーキング装置
(51)【国際特許分類】
B60T 1/06 20060101AFI20220607BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20220607BHJP
F16D 65/28 20060101ALI20220607BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20220607BHJP
F16D 125/70 20120101ALN20220607BHJP
F16D 127/06 20120101ALN20220607BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20220607BHJP
F16D 125/64 20120101ALN20220607BHJP
【FI】
B60T1/06 G
F16D63/00 H
F16D65/28
F16D121:24
F16D125:70
F16D127:06
F16D125:40
F16D125:64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200220
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AB21
3J058BA62
3J058CC15
3J058CC63
3J058CC66
3J058CC77
3J058FA07
(57)【要約】
【課題】消費電力を低減しつつシンプルな構造の車両用パーキング装置を提供すること。
【解決手段】車両用パーキング装置(1)は、駆動源(5)と、第1直線方向(X)において、パーキングロック状態に対応する第1位置と、パーキングロック解除状態に対応する第2位置との間で進退する第1軸(10)と、第1軸の進退に連動して第2方向(Y)において、第1位置に対応する第3位置と第2位置に対応する第4位置との間で進退する第2軸(20)と、第1ジョイント部(15)を介して第1軸に接続され、第1位置に対応する第1姿勢と第2位置に対応する第2姿勢との間で姿勢が遷移するリンク部(30)と、第2軸に接続され且つ他第2ジョイント部(35)を介してリンク部に接続されリンク部の姿勢の遷移に連動して回動することにより第2軸の進退を案内するレバー部(40)と、第1軸が第1位置に位置する場合に第1軸が第2位置に向かう方向と逆の方向に移動することを規制する規制部(50)と、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源の出力軸に接続され、第1直線方向において、パーキングロック状態に対応する第1位置と、パーキングロック解除状態に対応する第2位置との間で進退する第1軸と、
前記第1直線方向における前記第1軸の進退に連動して、前記第1直線方向とは異なる方向に延びる第2方向において、前記第1軸の前記第1位置に対応する第3位置と、前記第1軸の前記第2位置に対応する第4位置との間で進退する第2軸と、
一端が少なくとも第1ジョイント部を介して前記第1軸に接続されることにより、前記第1軸の進退に伴って、前記第1軸の前記第1位置に対応する第1姿勢と、前記第1軸の前記第2位置に対応する第2姿勢との間で姿勢が遷移するリンク部と、
一端が前記第2軸に接続され、且つ他端が第2ジョイント部を介して前記リンク部に接続され、前記リンク部の姿勢の遷移に連動して回動することにより前記第2軸の進退を案内するレバー部と、
前記第1軸が前記第1位置に位置する場合に、前記第1軸が前記第2位置に向かう方向と逆の方向に移動することを規制する規制部と、
を具備する、車両用パーキング装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記駆動源を収容するハウジング上に設けられる、請求項1に記載の車両用パーキング装置。
【請求項3】
前記第1姿勢は、前記第1直線方向に延びる第1線と、前記リンク部の他端から一端へと延びる第2線との間に形成される角度が90度以下となる姿勢である、請求項1又は2に記載の車両用パーキング装置。
【請求項4】
前記第1ジョイント部は、前記第1直線方向に対して直交する方向に前記第1軸を貫通する貫通ピンであり、前記貫通ピンが前記規制部に当接することにより、前記第1位置に位置する前記第1軸の前記第2位置に向かう方向と逆の方向への移動が規制される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用パーキング装置。
【請求項5】
前記リンク部は、第1リンク部と第2リンク部とから形成され、
前記第1リンク部の一端及び前記第2リンク部の一端は、前記貫通ピンに軸受けを介して接続され、且つ、前記第1リンク部の他端及び前記第2リンク部の他端は、前記第2ジョイント部としての連結ピンにて結合され、
前記レバー部は、前記連結ピンに接続される、請求項4に記載の車両用パーキング装置。
【請求項6】
前記駆動源は、モータであり、
前記第1軸上には、前記モータの回動を前記第1直線方向における直動に変換する変換機構が設けられる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用パーキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用パーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電動化、バイワイヤ化の進展に伴って、駆動部材から被駆動部材へ動力を伝達しつつ、被駆動部材から駆動部材への動力伝達を遮断、低減等する機構のニーズが高まっている。中でも、車両用パーキング装置において、このような機構が求められている。車両用パーキング装置は、主に、車輪と一体となって回転するパーキングギヤと、パーキングギヤに係合可能なパークポール(ロックポール)と、パークポールの動作を案内するパーキングロッドと、を備えるものであって、ドライバによるシフトスイッチ、パーキングスイッチ等の操作に対応してアクチュエータを作動させることでパーキングロッドを動作させて、パークポールをパーキングギヤに係合させて、機械的に車輪の回転を停止せしめるものである。
【0003】
このような車両用パーキング装置に関し、特許文献1には、パーキングロッドを動作させるパーキングアクチュエータと、パーキングロッドの移動を阻止する保持用アクチュエータと、を備える車両用パーキング装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、パーキングロック状態又はパーキングロック解除状態の操作を油圧ユニットにて実行しつつ、磁気ユニットにてピストンロッド(前述のパーキングロッドに相当)の移動を規制するパーキング装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、パーキングポジションと非パーキングポジションのシフト切替を電動機で実行しつつ、ディテント回動プレートの回動をディテントスプリングによって規制するパーキング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-45991号公報
【特許文献2】特開2019-60390号公報
【特許文献3】特開2012-31902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される車両パーキング装置は、パーキングアクチュエータと保持用アクチュエータとを併用しているために、装置全体の構造が複雑化し、さらに装置全体における消費電力が増大してしまうという課題がある。同様に、特許文献2に開示されるパーキング装置も、油圧ユニットと磁気ユニットとを併用しており、装置全体の構造が複雑化し、さらに装置全体における消費電力が増大してしまうという課題がある。
【0008】
また、特許文献3に開示されるパーキング装置は、パーキング装置として機能させるに際し、ディテントスプリングのバネ力に抗してディテント回動プレートを回動させるための動力を電動機から出力させる必要があるため、パーキング装置全体として消費電力が増大してしまう恐れがあるという課題がある。
【0009】
そこで、様々な実施形態により、消費電力を低減しつつシンプルな構造の車両用パーキング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様に係る車両用パーキング装置は、駆動源と、前記駆動源の出力軸に接続され、第1直線方向において、パーキングロック状態に対応する第1位置と、パーキングロック解除状態に対応する第2位置との間で進退する第1軸と、前記第1直線方向における前記第1軸の進退に連動して、前記第1直線方向とは異なる方向に延びる第2方向において、前記第1軸の前記第1位置に対応する第3位置と、前記第1軸の前記第2位置に対応する第4位置との間で進退する第2軸と、一端が少なくとも第1ジョイント部を介して前記第1軸に接続されることにより、前記第1軸の進退に伴って、前記第1軸の前記第1位置に対応する第1姿勢と、前記第1軸の前記第2位置に対応する第2姿勢との間で姿勢が遷移するリンク部と、一端が前記第2軸に接続され、且つ他端が第2ジョイント部を介して前記リンク部に接続され、前記リンク部の姿勢の遷移に連動して回動することにより前記第2軸の進退を案内するレバー部と、前記第1軸が前記第1位置に位置する場合に、前記第1軸が前記第2位置に向かう方向と逆の方向に移動することを規制する規制部と、を具備する。
【0011】
この構成の車両用パーキング装置によれば、駆動源から第2軸までの動力伝達経路に係る構造をシンプルなものとすることができるため、消費電力を効率的に低減することが可能となる。また、この構成とすることで、別途のアクチュエータ等を用いることなく、第1軸が第1位置に位置する場合において、第2軸に対して何らかの動力(逆入力)が入力されても、規制部によってリンク部の姿勢の遷移が規制され(リンク部の姿勢は第1姿勢に維持され)、その結果として当該第1軸を当該第1位置に留まらせることができるため、当該逆入力の駆動源への伝達を遮断又は低減することが可能となる。
【0012】
また、一態様に係る前記車両用パーキング装置において、前記規制部は、前記駆動源を収容するハウジング上に設けられる。
【0013】
この構成とすることにより、複雑な構成とすることなく、規制部を容易に設けることが可能となる。
【0014】
また、一態様に係る前記車両用パーキング装置において、前記第1姿勢は、前記第1直線方向に延びる第1線と、前記リンク部の他端から一端へと延びる第2線との間に形成される角度が90度以下となる姿勢である。
【0015】
この構成とすることにより、第1軸が第1位置に位置する場合に、第2軸に逆入力が入力された場合でも、リンク部の姿勢の遷移が規制部によって確実に規制されうる(リンク部の姿勢が第1姿勢に維持されうる)。その結果、第2軸に逆入力が入力されても、第1軸を第1位置に留まらせることができるため、逆入力の駆動源への伝達を遮断又は低減することが可能となる。
【0016】
また、一態様に係る前記車両用パーキング装置において、前記第1ジョイント部は、前記第1直線方向に対して直交する方向に前記第1軸を貫通する貫通ピンであり、前記貫通ピンが前記規制部に当接することにより、前記第1位置に位置する前記第1軸の前記第2位置に向かう方向と逆の方向への移動が規制される。
【0017】
この構成とすることにより、リンク部は、第1軸の第1直線方向における進退に連動して、姿勢を遷移させることができ、且つ、第1軸が第1位置に位置する場合において、リンク部の姿勢の遷移が規制部によって確実に規制されうる(リンク部の姿勢が第1姿勢に維持されうる)。
【0018】
また、一態様に係る前記車両用パーキング装置において、前記リンク部は、第1リンク部と第2リンク部とから形成され、前記第1リンク部の一端及び前記第2リンク部の一端は、前記貫通ピンに軸受けを介して接続され、且つ、前記第1リンク部の他端及び前記第2リンク部の他端は、前記第2ジョイント部としての連結ピンにて結合され、前記レバー部は、前記連結ピンに接続される。
【0019】
この構成とすることにより、リンク部は、第1直線方向における第1軸の進退に連動して、第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢を確実に遷移させることが可能となる。また、この構成とすることにより、レバー部は、リンク部の姿勢の遷移に連動して確実に回動することが可能となり、その結果第2軸の進退を案内することが可能となる。
【0020】
また、一態様に係る前記車両用パーキング装置において、前記駆動源は、モータであり、前記第1軸上には、前記モータの回動を前記第1直線方向における直動に変換する変換機構が設けられる。
【0021】
この構成とすることにより、モータ由来の動力を第2軸に確実に伝達することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
様々な実施形態によれば、消費電力を低減しつつシンプルな構造の車両用パーキング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係る車両用パーキング装置の構成を模式的に示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る車両用パーキング装置の構成を模式的に示す概略図である。
【
図3】一実施形態に係る車両用パーキング装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略図である。
【
図4】一実施形態に係る車両用パーキング装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略断面図である。
【
図5】一実施形態に係る車両用パーキング装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略側面図である。
【
図6】一実施形態に係る車両用パーキング装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略図である。
【
図7】一実施形態に係る車両用パーキング装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略断面図である。
【
図8】一実施形態に係る車両用パーキング装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略側面図である。
【
図9】
図6に示される車両用パーキング装置について、
図6中のA-A線の断面を模式的に示す概略上面図である。
【
図10】第2実施形態に係る車両用パーキング装置の構成を模式的に示す概略図である。
【
図11】電磁式アクチュエータを駆動源とする場合の変形例に係る車両用パーキング装置の構成を模式的に示す概略図である。
【
図12】送りねじ機構を直動変換機構とする場合の変形例に係る車両用パーキング装置の構成を模式的に示す概略図である。
【
図13】一実施形態に係る車両用パーキング装置の構成であって、パークポールがパーキングギヤに係合することができない状態を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明する。なお、図面において共通した構成要件には同一の参照符号が付されている。また、或る図面に表現された構成要素が、説明の便宜上、別の図面においては省略されていることがある点に留意されたい。さらにまた、添付した図面が必ずしも正確な縮尺で記載されている訳ではないということに注意されたい。
【0025】
1.車両用パーキング装置の構成
一実施形態に係る車両用パーキング装置の全体構成の概要について、
図1乃至
図9を参照しつつ説明する。
図1及び
図2は、一実施形態に係る車両用パーキング装置1の構成を模式的に示す概略図である。
図3及び
図6は、一実施形態に係る車両用パーキング装置1の一部の構成を拡大して模式的に示す概略図である。
図4及び
図7は、一実施形態に係る車両用パーキング装置1の一部の構成を拡大して模式的に示す概略断面図である。
図5及び
図8は、一実施形態に係る車両用パーキング装置1の一部の構成を拡大して模式的に示す概略側面図である。
図9は、
図6に示される車両用パーキング装置1について、
図6中のA-A線の断面を模式的に示す概略上面図である。
【0026】
なお、
図1及び
図3乃至
図5は、パーキングロック解除状態の車両用パーキング装置1を示すものであって、後述する第1軸10(及び後述する第1ジョイント部15)が第2位置に、後述する第2軸20が第4位置に位置する旨が示されている。他方、
図2及び
図6乃至
図9は、パーキングロック状態の車両用パーキング装置1を示すものであって、第1軸10(第1ジョイント部15)が第1位置に、第2軸20が第3位置に位置する旨が示されている。
【0027】
一実施形態に係る車両用パーキング装置1は、
図1に示すように、主に、駆動源5と、駆動源5の出力軸6Cに接続される第1軸10と、第2軸20と、一端が第1ジョイント部15を介して第1軸10に接続されるリンク部30と、一端が第2軸20に接続され他端が第2ジョイント部35を介してリンク部30に接続されるレバー部40と、規制部50と、を構成要素として含む。さらに、一実施形態に係る車両用パーキング装置1は、公知の車両用パーキング装置1と同様に、車輪(図示せず)と一体となって回転するパーキングギヤ60と、パーキングギヤ60に係合可能なパークポール70と、を含む。以下、一実施形態に係る車両用パーキング装置1の各構成要素の詳細を説明する。
【0028】
1-1.駆動源5
駆動源5としては、一例として、
図4に示すように、ステータ6A、ロータ6B、出力軸6C、及びハウジング7で主に構成される一般的なモータを使用することができる。なお、出力軸6Cには、詳細を後述する第1軸10が接続されている。
【0029】
駆動源5としてモータを用いる場合、当該モータの動作は、電子制御装置(図示せず)によって制御されており、例えば、ドライバによるシフトスイッチ、パーキングスイッチ等の操作が入力されると、第1軸10を第2位置から第1位置にまで移動(後述する第1直線方向に進退)させるように、モータを動作させる。なお、第1軸10を第1位置から第2位置(又は第2位置から第1位置)までの距離移動させるために必要となるモータから出力を予め電子制御装置に記憶させておくことで、前述のドライバによるスイッチ操作に基づいて、モータから所定の動力を出力させることができる。
【0030】
1-2.第1軸10
第1軸10は、駆動源5の出力軸6Cに接続され、第1直線方向(例えば、
図1における方向Xであって、
図1における紙面上下方向)において、パーキングロック状態に対応する第1位置(
図2及び
図6乃至
図8参照)と、パーキングロック解除状態に対応する第2位置(
図1及び
図3乃至
図5参照)との間で進退可能に構成されている。
【0031】
駆動源5として、モータが使用される場合、第1軸10上には、
図4及び
図7に示すように、当該モータの出力軸6Cの回動を第1直線方向における直動に変換する直動変換機構11が設けられる。直動変換機構11としては、
図4及び
図7に示すように、一例として、一般的に知られるボールねじ機構等を採用することができる。
【0032】
また、第1軸10には、第1軸10と、詳細を後述するリンク部30とを接続させるための第1ジョイント部15を案内する貫通孔12が、第1直線方向と直交する方向(例えば、
図4及び
図7においては、紙面表裏方向)に形成されている。ここで、第1ジョイント部15としては、一例として、貫通孔12内に挿通される貫通ピンを用いることができる。第1ジョイント部15としての貫通ピンは、第1軸10と一体的に、第1直線方向に進退することができる。
【0033】
なお、第1ジョイント部15としての貫通ピンは、第1軸10の外径よりも長く(第1直線方向と直交する方向において、第1軸10から突出するように)設定されることが好ましい。これにより、貫通ピンは、第1軸10が第1位置に位置する場合において、詳細を後述する規制部50に当接することができる。これにより、第1軸10は、第1位置に位置する場合において、パーキングギヤ60から第2軸20を介して逆入力が入力されたとしても、第2位置に向かう方向と逆の方向(例えば、
図2においては、紙面下方向)に移動することが規制される。この構成とすることにより、一例としてモータが用いられる駆動源5への逆入力の伝達が遮断又は低減されることとなる。
【0034】
1-3.第2軸20
第2軸20は、パーキングロッドに相当するものであり、第1直線方向における第1軸10の進退に連動して、第1直線方向とは異なる方向に延びる第2方向において、第1軸10の第1位置に対応する第3位置(
図2及び
図6乃至
図8参照)と、第1軸10の第2位置に対応する第4位置((
図1及び
図3乃至
図5参照)との間で進退可能に構成されている。ここで、第2方向とは、一例として、第1直線方向と略直交(必ずしも、第1直線方向に対して90.0度である必要はない)する方向(例えば、
図1における方向Y)とすることができる。なお、第2方向は、必ずしも直線状でなくてもよく、後述するレバー部40の一端の動作に対応して、円弧状であってもよい。
【0035】
第2軸20の一端側は、詳細を後述するレバー40に接続ピン21を介して接続されている。第2軸20の他端側には、パーキングギヤ60に対するパークポール70の係合又は非係合(パーキングロック状態又はパーキングロック解除状態)に関する動作を案内するためのカム部22が形成されている。
【0036】
また、第2軸20上には、カム部22に隣接するように弾性部材23が配置されている。弾性部材23としては、一例として、コイルスプリングを用いることができる。なお、第2軸20上には、弾性部材23の一端を支持する支持部23Aが設けられており、弾性部材23は、カム部22をガイド部80に押し当てるように押圧することができる構成となっている。したがって、第2軸20が第4位置から第3位置に次第に移動すると、弾性部材23が次第に圧縮した状態となってカム部22をガイド部80に対して押圧する。これにより、パークポール70がパーキングギヤ60に係合するように、カム部22がパークポール70を押圧することとなる。
【0037】
1-4.リンク部30
リンク部30は、例えば
図5、
図8及び
図9に示すように、同形の第1リンク部31と第2リンク部32とから構成されている。第1リンク部31及び第2リンク部32は、
図1及び
図9等に示すように、各々の一端(本開示において「一端」とは、必ずしも延在方向の「端部」である必要はなく、「端部近傍」を含むものとする)において、第1ジョイント部15としての貫通ピン、及び軸受け16を介して第1軸10に接続されている(第1リンク部31及び第2リンク部32は、第1軸10に対して相対的に回転自在に、第1ジョイント部15としての貫通ピン及び軸受け16を介して第1軸10に接続されている)。
【0038】
また、第1リンク部31及び第2リンク部32は、各々の他端(本開示において「他端」とは、必ずしも延在方向の「端部」である必要はなく、「端部近傍」を含むものとする)において、第2ジョイント部35としての連結ピンに各々結合されている。これにより、第1リンク部31及び第2リンク部32は一体的に動作することができ、前述のとおり、第1姿勢と第2姿勢との間でリンク部30としての姿勢を遷移させることが可能となっている。なお、第2ジョイント部35としての連結ピンには、詳細を後述するレバー部40が接続される。
【0039】
このような構成を有するリンク部30は、第1軸10の第1直線方向における進退に伴って、第1軸10の第1位置に対応する第1姿勢(
図2及び
図6乃至
図8参照)と、第1軸10の第2位置に対応する第2姿勢(
図1及び
図3乃至
図5参照)との間で姿勢を遷移(変化)させることができる。
【0040】
ところで、リンク部30(第1リンク部31及び第2リンク部32)の第1姿勢とは、
図6に示すように、第1直線方向に延びる第1線T1と、リンク部30の他端から一端へと延びる第2線T2との間に形成される角度αが90度以下となるように設計されることが好ましい。この構成とすることにより、第1軸10が第1位置に位置する場合に、パーキングギヤ60から第2軸20を介してリンク部30に逆入力が入力されたとしても、第1ジョイント部15としての貫通ピンには、第2位置に向かう方向とは逆の方向(例えば、
図2においては、紙面下方向)のベクトルの力がリンク部30から入力されることとなる。しかしながら、第1軸10が第1位置に位置する場合、前述のとおり、第1ジョイント部15としての貫通ピンは、後述する規制部50に当接しているため、第2位置に向かう方向とは逆の方向へ移動することが規制されている(同時に、第1軸10の当該逆の方向への移動も規制されている)。したがって、駆動源5への逆入力の伝達を効率的に遮断又は低減することが可能となる。
【0041】
1-5.レバー部40
レバー部40は、
図1及び
図9等に示すように、その一端が接続ピン21を介して第2軸20に接続され、その他端が第2ジョイント部35としての連結ピン及び軸受け36を介してリンク部30に接続されている(レバー部40は、リンク部30に対して相対的に回転自在に、第2ジョイント部35としての連結ピン及び軸受け36を介してリンク部30に接続されている)。これにより、レバー部40は、リンク部30の前述の姿勢の遷移に連動して回動可能とされており、当該回動に基づいて第2軸20の第2方向の進退を案内することができる。
【0042】
レバー部40の形状は特に制限はなく、例えば、
図1等に示すように、略直線状の形状を呈していてもよいし、略「くの字状」に途中で折れ曲がった形状を呈していてもよい。
【0043】
1-6.規制部50
規制部50は、第1軸10が第1位置に位置する場合に、第1軸10(第1ジョイント部15としての貫通ピン)が、第2位置に向かう方向とは逆の方向(例えば、
図2においては、紙面下方向)に移動することを規制するために設けられる。規制部50は、一例として
図2に示すように、駆動源5を収容するハウジング7上に設けることができる。
【0044】
なお、第1軸10が第2位置に位置する場合に、第1軸10(第1ジョイント部15としての貫通ピン)が、第1位置に向かう方向とは逆の方向(例えば、
図1においては、紙面上方向)に移動することを規制するために、別の規制部をハウジング7から延在して設けてもよい。
【0045】
また、規制部50を設けることに代えて又は規制部50を設けることに加えて、第1軸10が、第1直線方向において、第1位置と第2位置との間のみで進退することができるように、駆動源5の電子制御装置(図示せず)に予め第1位置と第2位置との間の移動距離を記憶させておいてもよいし、及び/又は、別途位置センサを設けて第1軸10の位置を管理するような構成としてもよい。
【0046】
以上のとおり説明した各構成要素を少なくとも具備する車両用パーキング装置1は、例えば、
図1に示されるパーキングロック解除状態と、
図2に示されるパーキングロック状態との間で動作することが可能となっている。
【0047】
2.変形例
次に、別の実施形態に係る車両用パーキング装置1の構成について、
図10乃至
図12を参照しつ説明する。
図10は、第2実施形態に係る車両用パーキング装置1の構成を模式的に示す概略図である。
図11は、電磁式アクチュエータを駆動源5とする場合の変形例に係る車両用パーキング装置1の構成を模式的に示す概略図である。
図12は、送りねじ機構を直動変換機構11とする場合の変形例に係る車両用パーキング装置の構成を模式的に示す概略図である。
【0048】
2-1.第2実施形態及び他の変形例
第2実施形態に係る車両用パーキング装置1は、
図10に示すように、前述した一実施形態に係る車両用パーキング装置1と概ね同様の構成であるが、駆動源5として油圧ユニットが使用される。駆動源5として油圧ユニットを使用する場合、油圧ユニットの出力軸を第1軸10と一体化することが可能となるため、一実施形態における直動変換機構11を設ける必要がない。
【0049】
なお、駆動源5としては、前述のモータ及び油圧ユニットに限定されず、例えば、
図11に示すような電磁式アクチュエータ等を限定なく用いることができる。また、駆動源5として例えばモータを用いる場合において設けられる直動変換機構11としては、前述のボールねじ機構に限定されず、
図12に示すような、第1軸10としての雄ねじ及び雌ねじ10pで構成される送りねじ機構であってもよい。
【0050】
以上、前述の通り、様々な実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数等は適宜変更して実施することができる。
【0051】
また、前述のとおり例示された様々な実施形態の車両用パーキング装置1によれば、消費電力を低減しつつ(電気エネルギーを用いることなく)シンプルな構造にて、パーキングギヤ60由来の逆入力の駆動源5への伝達を効率的に遮断又は低減することができる。また、様々な実施形態の車両用パーキング装置1によれば、駆動源5から第2軸20までの動力伝達経路上に、特許文献3に開示されるディテントスプリングのような抵抗力を発現する部材が含まれていないため、駆動源5からの動力を効率的に第2軸20に伝達することができ、この結果として、パーキングギヤ60に対してパークポール70を効率的に係合又は非係合させることができる。
【0052】
さらに、様々な実施形態の車両用パーキング装置1によれば、仮に、第1軸10が第1位置に位置する(第2軸が第3位置に位置する)するにも関わらず、パークポール70とパーキングギヤ60との互いの係合歯同士の位置等に起因して、パークポール70がパーキングギヤ60に係合することができない場合が生じたとしても(
図13参照)、第2軸20が第3位置に位置する関係で弾性部材23が押圧状態となっているため、この弾性部材23の押圧力が支持部23Aを介して第2軸20に入力される。これにより、第2軸20は、弾性部材23の押圧力に基づいて第3位置から第4位置に向かう方向に若干退避(例えば、
図13においては、紙面左方向に移動)することができ、その結果として、パークポール70がパーキングギヤ60に係合することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 車両用パーキング装置
5 駆動源
7 ハウジング
10 第1軸
11 変換機構(直動変換機構)
15 第1ジョイント部、貫通ピン
20 第2軸
30 リンク部
31 第1リンク部
32 第2リンク部
35 第2ジョイント部、連結ピン
40 レバー部
50 規制部
60 パーキングギヤ
70 パークポール
X 第1直線方向
Y 第2方向