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  • 特開-索道の空調装置付き搬器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088039
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】索道の空調装置付き搬器
(51)【国際特許分類】
   B61B 12/02 20060101AFI20220607BHJP
   B61D 27/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B61B12/02 C
B61D27/00 P
B61D27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200264
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 元幸
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により空調装置で発生した凝縮水を処理することのできる索道の空調装置付き搬器を提供することを目的とする。
【解決手段】搬器18の客車21の上部に備えて客車21内の空気調節を行う空調装置24と、客車21の下部に備えて空調装置24から排出される凝縮水を貯水する水受タンク28と、水受タンク28と空調装置24の排水口26とに連結された配管27と、水受タンク28の排水口に備えた電磁弁29と、客車21の扉の開閉状態を検出する扉開閉検出器32と、を備え、扉開閉検出器32の信号により電磁弁29の開閉動作を行うようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬器の客車の上部に備え該客車内の空気調節を行う空調装置と、前記客車の下部に備えて前記空調装置から排出される凝縮水を貯水する水受タンクと、該水受タンクと前記空調装置の排水口とに連結された配管と、前記水受タンクの排水口に備えた電磁弁と、前記客車の扉の開閉状態を検出する扉開閉検出器と、を備え、該扉開閉検出器の信号により前記電磁弁の開閉動作を行うようにしたことを特徴とする索道の空調装置付き搬器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道の空調装置付き搬器に関する。
【背景技術】
【0002】
索道設備は、空中に張架した索条に搬器を懸垂し、人員や物資を運ぶ輸送設備であり、多くは山岳傾斜地における人員の移動手段や、スキー場におけるスキーヤーやスノーボーダーの移動手段として利用されている。また、索道設備は、鉄道等のように地上にレール等を敷設する必要がなく線路に要する用地が少なくてすむために、特に海外においては都市部の公共交通機関として運用されるようになってきている。
【0003】
このように、都市部等においてゴンドラリフトやロープウェイのような閉鎖型搬器を運行する索道設備を運用するにあたっては、乗客の快適性を向上するために各搬器には空調装置を備えることが望ましい。しかしながら従来周知のように、索道設備においては、線路中を移動する搬器へ電力を供給することが困難であり、大量の電力を消費する空調装置を各搬器に備えることは困難であった。
【0004】
このようなことから従来、次のような技術が提案され、また、実施されている。この技術のうちの一例は、複数の搬器よりなる搬器グループを形成し、この搬器グループを複数備えて索条の循環移動とともに運行を行うようにしている。搬器グループ内のうち1台の搬器は、電源設備を搭載した電源搬器とし、他の搬器は乗客が乗車する乗客用搬器とする。そして、各乗客用搬器には空調設備を備えるとともに、電源搬器から各乗客用搬器へ給電ケーブルを介して電源を供給するようにし、乗客用搬器の空調を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、他の例としては、客車上部に乗客用スペースと隔離した機器用スペースを形成し、ここにガスタービンエンジン及び発電機と、これによって駆動される空調装置を備えて乗客用スペースの空調を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このように搬器に空調装置を備えた場合には、空調装置を運転する際に生じる凝縮水をどのように処理するかという問題がある。すなわち、都市部等で索道設備を運行する場合には、搬器が道路等の上空を通過するために、空調装置で発生した凝縮水をそのまま排出すると下方の人や車に迷惑を及ぼしてしまう。この問題に対して特許文献2に記載の索道設備においては、凝縮水をガスタービンエンジンの排気管または吸気管に導いて、排水を空気中に霧散するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-257363号公報
【特許文献2】特開平9-24823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように内燃機関を備えた搬器であれば排水の霧散が可能であるが、バッテリーで空調装置を動作させるような構成であると、排水を霧散する装置を別途備える必要があり経済的でない。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成により空調装置で発生した凝縮水を処理することのできる索道の空調装置付き搬器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、搬器の客車の上部に備え該客車内の空気調節を行う空調装置と、前記客車の下部に備えて前記空調装置から排出される凝縮水を貯水する水受タンクと、該水受タンクと前記空調装置の排水口とに連結された配管と、前記水受タンクの排水口に備えた電磁弁と、前記客車の扉の開閉状態を検出する扉開閉検出器と、を備え、該扉開閉検出器の信号により前記電磁弁の開閉動作を行うようにしたことを特徴と特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空調装置に生じた凝縮水は、線路中においては水受タンクに貯水され、貯水された凝縮水は停留場内で排出されるので、線路下に迷惑をかけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動循環式索道の模式図
図2】搬器の正面図
図3】搬器の側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態においては、索道設備の代表例として単線自動循環式索道により説明を行う。図1は、単線自動循環式索道の模式図である。単線自動循環式索道10は、線路の端部に停留場11及び停留場12を有しており、各停留場11、12には、原動滑車13及び従動滑車14を回転自在に備えている。原動滑車13と従動滑車14には、索条15が無端状に巻き掛けられており、原動滑車13を回転駆動することにより、索条15は両停留場11、12間を循環して移動する。索条15には、線路中で所定の間隔となるように複数の搬器18が懸垂される。
【0012】
搬器18は索条15に着脱自在であって、線路中では索条15に取り付けられて索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15から切り離される。停留場11、12には、平面視U字状の走行レール16及び走行レール17がそれぞれ敷設されており、索条15から切り離された搬器18は、走行レール16、17に沿って次のように移動する。まず、停留場11、12に到着した搬器18は、索条15から切り離されるとともに、走行レール16、17に乗り移り、走行レール16、17に沿って設けられた移送装置により減速させられる。乗客が乗降可能な速度まで搬器18が減速すると、その速度を保って停留場11、12内を出発側へ折返し、この間に乗客の乗降が行われる。出発側へ折り返した搬器18は、索条15の速度と同一速度にまで加速させられた後、索条15に取り付けられるとともに走行レール16、17から離脱して線路中へ出発する。
【0013】
図2は搬器18の正面図、図3は搬器18の側面図、図4図3におけるA-A矢視図である。搬器18は、大別して握索機19と懸垂機20と客車21とからなっている。握索機19は、索条15を握放索可能に構成されており、線路中では索条15を握索して索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15を放索するとともに、走行レール16、17上を走行ローラー22が転動して移動する。握索機19には、進行方向に対し前後方向へ揺動自在に懸垂機20を枢着しており、この懸垂機20の下部に乗客を搭載する客車21が取り付けられている。客車21の外側側面には、自動開閉の扉31を備えており、乗客の乗降区間で扉31が自動的に開き、その他の区間では扉31は閉じるようになっている。客車21の内部には、扉31の開閉機構や扉31の動作を検知して扉31の開閉状態を検出する扉開閉検出器32を備えている。
【0014】
客車21の上部には、上面23から上方へ若干の間隔を開けて空調装置24を備えている。空調装置24は、圧縮機、蒸発機、凝縮機等を内部に備えた一体型の空調装置であって、客車21下部に備えたバッテリー25から電力を供給されて駆動し、客車21の上部に設けた通風口から客車21内へ温風または冷風を供給する。バッテリー25は、急速充電が可能なバッテリーであって、搬器18が停留場11、12内を移動するときに搬器18に備えたパンタグラフ等の集電器(図示せず)により電力の供給を受け急速充電される。
【0015】
空調装置24の下部には排水口26が形成されており、空調装置24内で発生した凝縮水が排水口26から排出される。客車21の内部には、上下方向へ延びて配管27が配設されており、この配管27の一端が空調装置24の排水口26に連結されている。客車21の下部には、水を貯めることができる水受タンク28を備えており、配管27の他端が連結されている。これにより、空調装置24内で発生した凝縮水は、配管27を通して水受タンク28に導かれ貯水される。水受タンク28の下部の排水口には、電磁弁29を備えており、この電磁弁29が開となることにより水受タンク28内の凝縮水が排出される。
【0016】
以上の構成により、以下のように搬器18の運行を行う。線路中においては、バッテリー25から電力が供給されて空調装置24が動作し、客車21内部の空気調節が行われる。線路中においては電磁弁29には通電されておらず閉状態となっており、空調装置24から排出された凝縮水は、水受タンク28に貯水される。搬器18が停留場11、12に到着して乗客の乗降区間に達すると客車21の扉31が開くとともに、これを扉開閉検出器32が検出して信号を発信する。
【0017】
扉開閉検出器32から信号が発信されると電磁弁29に通電され、電磁弁29が開状態となって水受タンク28から凝縮水が排出される。停留場11、12の床面には、電磁弁29の通過軌跡の下に沿って排水溝30が形成されており、搬器18が停留場11、12内を移動する間に、この排水溝30へ水受タンク28内の凝縮水が排出される。搬器18が乗降区間を過ぎると客車21の扉31が閉じるとともに、これを扉開閉検出器32が検出して信号を発信する。これによって電磁弁29が閉じ、再び凝縮水は水受タンク28に貯水される。
【0018】
以上の構成によれば、客車21の扉31の開閉状態を客車21内に備えた扉開閉検出器32で検出し、この信号により電磁弁29の開閉を行うようにしたことにより、確実に凝縮水の排水、貯水を行うことができ、また搬器18外部に機器類を備える必要がなく簡易な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0019】
10 単線自動循環式索道
11 停留場
12 停留場
13 原動滑車
14 従動滑車
15 索条
16 走行レール
17 走行レール
18 搬器
19 握索機
20 懸垂機
21 客車
22 走行ローラー
23 上面
24 空調装置
25 バッテリー
26 排水口
27 配管
28 水受タンク
29 電磁弁
30 排水溝
31 扉
32 扉開閉検出器
図1
図2
図3