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  • 特開-包装材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088077
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20220607BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220607BHJP
   G01K 11/12 20210101ALI20220607BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B65D65/40 D
G01K11/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200326
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【テーマコード(参考)】
2F056
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
2F056VA05
2F056VA10
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA35
3E086BB51
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086DA08
4F100AA21D
4F100AK03B
4F100AK03E
4F100AK24B
4F100AK41A
4F100AK42A
4F100AK42E
4F100AK63E
4F100AL01B
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA13C
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ55A
4F100EJ65B
4F100EJ86B
4F100EJ86C
4F100GB15
4F100HB31C
4F100HB31D
4F100JB09B
4F100JK06
4F100JL12
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた可逆的熱変色機能を備えた包装材料を供給することを目的とする。
【解決手段】基材層と、前記基材層の1方の面へ、アンカーコート層、示温インキ層、酸化チタンを含有する白インキ層、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層された包装材料であって、前記アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01~5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂を含む水性分散液であって、前記ポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように水性溶媒中に分散させてなる水性分散液を前記ポリエステル系樹脂フィルム層上に塗布し乾燥させてなる層であり、
前記示温インキ層は、可逆熱変色性組成物を含有したマイクロカプセル顔料がバインダーを含む媒体中に分散されてなる分散液を塗布し乾燥させてなる層であることを特徴とする包装材料である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリエステル系樹脂フィルム層からなる基材層と、前記基材層の1方の面へ、アンカーコート層、示温インキ層、酸化チタンを含有する白インキ層、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層された包装材料であって、
前記アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01~5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂を含む水性分散液であって、前記ポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように水性溶媒中に分散させてなる水性分散液を前記ポリエステル系樹脂フィルム層上に塗布し乾燥させてなる層であり、
前記示温インキ層は、温度変化により発色状態と消色状態を化学的に生起させる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料がバインダーを含む媒体中に分散されてなる分散液を塗布し乾燥させてなる層であることを特徴とする包装材料。
【請求項2】
前記酸化チタンを含有する白インキ層の乾燥時の厚みが1.7μm以上であって、酸化チタン含有量が2.5g/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活環境温度域で温度変化により可逆的に消色状態と発色状態を呈する可逆的熱変色機能を備えた、包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために食品、医薬品等は包装材料によって保護されている。また、保管時に温度域の制御が必要なものについては、内容物の変質や腐敗を抑制する目的以外に、使用時に最適な触感を得ることを目的としているものもある。温度制御機器によって保管庫の環境については設定温度にて管理されているが、包装袋自体が設定温度になっているかはわからない。この問題を解決するために、特許文献1に示されたように食品などの保存温度を管理できるように、温度と時間との履歴によって色が変化する可逆熱変色性インキ(以後、示温インキと言う)を積層体の間に積層し目視で読み取れるようにするという手段が用いられている。
【0003】
しかしながら、示温インキはプラスチックフィルムとは密着性が弱く、また酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分への耐性や耐熱安定性の保持のためにマイクロカプセルに含有されているため、塗工後の被膜の表面状態の凹凸が大きいことによりラミネート時に接着剤を均一に塗工することができずに、部分的に未接着部が出てしまう課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-281002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、支持体であるプラスチックフィルムと示温インキ層の間にアンカーコート層を形成することでプラスチックフィルムと示温インキ層間の密着力をあげ、さらに示温インキ層と接着層の間に酸化チタン含有の白インキ層を積層することで、接着剤を均一に塗工できるようにし、耐久性に優れた可逆的熱変色機能を備えた包装材料を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に於いて上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも、ポリエステル系樹脂フィルム層からなる基材層と、前記基材層の1方の面へ、アンカーコート層、示温インキ層、酸化チタンを含有する白インキ層、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層された包装材料であって、
前記アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01~5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂を含む水性分散液であって、前記ポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように水性溶媒中に分散させてなる水性分散液を前記ポリエステル系樹脂フィルム層上に塗布し乾燥させてなる層であり、
前記示温インキ層は、温度変化により発色状態と消色状態を化学的に生起させる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料がバインダーを含む媒体中に分散されてなる分散液を塗布し乾燥させてなる層であることを特徴とする包装材料である。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記酸化チタンを含有する白インキ層の乾燥時の厚みが1.7μm以上であって、酸化チタン含有量が2.5g/m以上であることを特徴と
する請求項1に記載の包装材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、支持体であるプラスチックフィルムと示温インキの間にアンカーコート層を形成することでプラスチックフィルムと示温インキの密着力をあげ、さらに示温インキと接着層の間に酸化チタン含有の白インキ層を積層することで、示温インキ塗工後の被膜の表面状態の凹凸を小さくし、接着剤層を設ける面の平滑性を確保することによって、接着剤が均一に塗工できるようになるので、耐久性に優れた可逆的熱変色機能を備えた包装材料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る包装材料の層構成について一例を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る実施例1の層構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の包装材料の基本構成は、基材層(11)、アンカーコート層(12)、示温インキ層(13)、酸化チタン含有白インキ層(14)及び接着剤層(15)を介してシーラント層(16)が積層されたものである。この態様を図1の概略断面図に示す。なお、本発明は、外層から内層に向かってこの順に積層されるものであれば、さらに他の層を積層するものであってもよい。
【0011】
<基材層>
基材層(11)としては、プラスチックフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムは高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミド系などが使用でき、商品や内容物に応じて適宜選択される。
【0012】
本発明の基材層(11)としては、アンカーコート層との接着性、強度、加工性としての適性等の観点から、特に、ポリエステル系樹脂フィルムであるポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。このポリエステル系樹脂のフィルムないしシートは、本発明において、他の層におけるポリエステル系樹脂フィルムとしても使用できる。そして、基材には、アンカーコート層側にコロナ処理、オゾン処理、フレーム処理などの濡れ性を向上させる表面処理を施してもよい。
【0013】
包装材料には通常印刷層(17)が形成されるが、外側から見ることのできるように、透明な基材層(11)とアンカーコート層(12)との間に形成することが好ましい。必要に応じて商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報を表示、印刷することができる。印刷方法および印刷インキには特に制約を設けるものではなく、既知の印刷方法、中でもグラビア印刷が好ましく用いることができる。
【0014】
<アンカーコート層>
本発明において、アンカーコート層(12)は、ポリエステル系樹脂フィルム層等からなる基材と、示温インキ層(13)とを強固に接着するためのものである。本発明のアンカーコート層(12)は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01~5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂を含む水性分散液であって、水性媒体は、酸変性ポリオレフィン樹脂を分散化する際にアミン化合物を含有し、有機溶剤を含有してもよい。また、必要に応じて不揮発性の水性分散化助剤が含有されていてもよく、その場合は酸変性ポリオレフィン樹脂成分に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5
質量%未満を添加することで含有されていても構わない。5質量%より多いと接着強度が十分なものとはならないので好ましくない。
【0015】
本発明のアンカーコート層(12)は、前記ポリオレフィン共重合樹脂を、その数平均粒子径が1μm以下となるように水性溶媒中に分散させてなる水性分散液を、前記ポリエステル系樹脂フィルム層上に塗布し、加熱乾燥させてなる層である。ポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように水性溶媒中に分散させたことから、安定したラミネート強度やシール強度を維持することができる。一方、数平均粒子径が1μmより大きな粒子を用いた場合は、接着強度が十分なものとならないことから耐久性を維持することができない。なお、数平均粒子径は、日機装社製 Nanotac waveにより測定できる。
【0016】
<示温インキ層>
示温インキ層(13)は、温度変化により発色状態と消色状態を化学的に生起させる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料がバインダーを含む媒体中に分散されてなる分散液を塗布し乾燥させてなる層であることが特徴である。可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料は、粒子径0.1~100μmが好ましく、3~30μmの範囲がより好ましい。粒子径が0.1μmより小さいと、製造するのが難しく製造コストがかかり工業化に適さない。粒子径が100μmより大きくなると、グラビア版のセルサイズよりも大きくなり印刷適性が低下するので好ましくない。
【0017】
<白インキ層>
酸化チタンを含有する白インキ層(14)を示温インキ層(13)の上に積層することによって、示温インキ層(13)の上に接着剤が均一に塗工できるようになり、シーラント層(16)との密着性が向上する。示温インキ(13)のような、熱変色性色素をマイクロカプセル化した熱変色性インキは、その粒子径が大きいために基材(11)への密着性に劣るので、マイクロカプセルの隙間を埋める程度の粒子(顔料)を含むインキ(デザイン的には白インキが好適)を積層すると、示温インキ(13)塗工後の被膜の表面状態の凹凸が小さくなり、接着剤層(15)を設ける面の平滑性が確保できることによって、接着剤(15)が均一に塗工できるようになりシーラント層(16)との密着性が向上する。
【0018】
そこで、酸化チタンを含む白インキ層(14)の粒子径は、マイクロカプセルの隙問を埋めるという意味合いから、0.1~1.0μm程度の粒子径であることが好ましい。0.1μmより小さいと凝集しやすいという問題があり、1.0μmより大きいとマイクロカプセルの隙問を埋めることができない。
【0019】
<シーラント層>
シーラント層(16)としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のシーラント性を有するポリオレフィン系樹脂、その他を使用することができる。本発明のシーラント層(16)は、熱によって溶融し相互に融着し得るヒートシール性樹脂からなる層である。
【0020】
本発明において好適に使用されるヒートシール性樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エ
チレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の1種ないしそれ以上からなる樹脂を挙げることができる。
【0021】
そして、これらの樹脂は単層でも、或いはこれらの樹脂を適宜積層することによっても、本発明のシーラント層(16)を形成することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等があげられる。これらの樹脂からなるフィルムないしシートを使用し、所望に応じて、その表面にコロナ処理、フレーム処理、オゾン処理等を施してもよい。また、ヒートシール性樹脂層の厚みは特に限定されないが、好ましくは50μm程度が好ましい。充分なラミネート強度とコストを考慮し決められる。
【0022】
<接着層>
本発明において、白インキ層(14)とシーラント層(16)との間に設ける接着剤(15)は、シーラント層(16)に対して相溶性のあるものが好ましい。たとえば、2液型ポリウレタン樹脂等の有機溶媒溶液を接着剤として、ドライラミネート法で貼り合わせが行われる。
【実施例0023】
(実施例1)
片面をコロナ処理した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)、E5100)のコロナ処理面に、ポリオレフィン系アンカーコート剤(ユニチカ(株)、アロベースSB-123ON)を1μm塗布し、その上に示温インキ(パイロットインキ(株)、メタモカラー(登録商標)を1μm塗布した。さらに、酸化チタン含有の白インキ(東洋インキ(株)、リオグラン)を2μm塗布した。次いで、2液硬化型ウレタン接着剤(三井化学(株)、A626)を3μm塗布し、両面がコロナ処理された2軸延伸ポリエチンンテレフタレート(PET)フィルム12μm(東洋紡(株)、E5202)をラミネートし、さらに2液硬化型ウレタン接着剤にて未延伸リニアローデンポリエチレン(LLDPE)フィルム50μm(フタムラ化学(株)、MTNST)をラミネートすることにより以下の包装材料を得た。
(PET(基材)/AC/示温インキ/白インキ/DL/PET(中間)/DL/LLDPE50)。実施例1の層構成を図2に示す。
【0024】
(実施例2)
アンカーコート層に不揮発性の水性化助剤が含有されたアンカーコート剤(ユニチカ(株)、アロベースSB-5230N)を用いた以外は実施例1と同様である。
【0025】
(比較例1)
アンカーコート剤を使用しない以外は、実施例2と同様である。
【0026】
(比較例2)
示温インキ層の上に酸化チタン含有の白インキ層を積層させない以外は、実施例2と同様である。
【0027】
(層間接着強度試験)
上記実施例及び比較例の積層体を、巾15mmの短冊状に切り出し、JISK6854に従って、テンシロン引張試験機を用いて、PETフィルム層(基材)と示温インキ層との間の接着部および、示温インキ層とPETフィルム層(中間層)との間の接着部を、引張速度300m/minとして90度方向に剥がし、層間接着強度を測定した。結果を表
1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
(評価結果)
表1に示されたとおり、各実施例の包装材料は、比較例の包装材料に比べ、良好なラミネート強度を発現した。本発明によって、耐久性に優れた可逆的熱変色機能を備えた包装材料を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0030】
1・・・包装材料
2・・・包装材料(実施例1)
11・・・基材層
12・・・アンカーコート層
13・・・示温インキ層
14・・・白インキ層
15・・・接着剤層
16・・・シーラント層
17・・・印刷層
18・・・接着剤層
19・・・中間層
図1
図2