(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088119
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】ポテトフライの製造方法、ポテトフライ
(51)【国際特許分類】
A23L 19/18 20160101AFI20220607BHJP
【FI】
A23L19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200386
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】520400003
【氏名又は名称】松本 生来
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】松本 生来
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE03
4B016LG06
4B016LK01
4B016LK12
4B016LK15
4B016LP03
4B016LP04
4B016LP07
(57)【要約】
【課題】ボリューム感があり、かつ外側がカリカリで内側がモチモチした食感のポテトフライの製造方法及びポテトフライを提供する。
【解決手段】じゃがいもを千切り状にスライスする工程と、スライスした前記じゃがいもと小麦粉、塩及び溶いた卵とを混ぜ合わせてポテトフライのタネを作る工程と、前記ポテトフライのタネを成形する工程と、成形した前記ポテトフライのタネを油で揚げる工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
じゃがいもを千切り状にスライスする工程と、
スライスした前記じゃがいもと小麦粉、塩及び溶いた卵とを混ぜ合わせてポテトフライのタネを作る工程と、
前記ポテトフライのタネを成形する工程と、
成形した前記ポテトフライのタネを油で揚げる工程と、を含むことを特徴とするポテトフライの製造方法。
【請求項2】
前記じゃがいも、前記小麦粉、前記塩及び前記卵の重さの比は、
260gの前記じゃがいもに対して、
130g以上かつ150g以下の前記小麦粉、
2.5g以上かつ3.5g以下の前記塩、
1個の前記卵
を満足することを特徴とする請求項1に記載のポテトフライの製造方法。
【請求項3】
じゃがいもを千切り状にスライスする工程と、
スライスした前記じゃがいもとひよこ豆粉、小麦粉及び塩とを混ぜ合わせてポテトフライのタネを作る工程と、
前記ポテトフライのタネを成形する工程と、
成形した前記ポテトフライのタネを油で揚げる工程と、を含むことを特徴とするポテトフライの製造方法。
【請求項4】
前記じゃがいも、前記ひよこ豆粉、前記小麦粉及び前記塩の重さの比は、
260gの前記じゃがいもに対して、
85g以上かつ95g以下の前記ひよこ豆粉、
25g以上かつ35g以下の前記小麦粉、
2.5g以上かつ3.5g以下の前記塩、
1個の前記卵
を満足することを特徴とする請求項3に記載のポテトフライの製造方法。
【請求項5】
じゃがいもを千切り状にスライスする工程と、
スライスした前記じゃがいもとひよこ豆粉、米粉及び塩とを混ぜ合わせてポテトフライのタネを作る工程と、
前記ポテトフライのタネを成形する工程と、
成形した前記ポテトフライのタネを油で揚げる工程と、を含むことを特徴とするポテトフライの製造方法。
【請求項6】
前記じゃがいも、前記ひよこ豆粉、前記小麦粉及び前記塩の重さの比は、
260gの前記じゃがいもに対して、
65g以上かつ75g以下の前記ひよこ豆粉、
55g以上かつ65g以下の前記米粉、
2.5g以上かつ3.5g以下の前記塩、
1個の前記卵
を満足することを特徴とする請求項5に記載のポテトフライの製造方法。
【請求項7】
前記じゃがいもをしりしり器でスライスすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のポテトフライの製造方法。
【請求項8】
成形した前記ポテトフライのタネを170度以上かつ180度以下の前記油で5分以上かつ7分以下揚げることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポテトフライの製造方法。
【請求項9】
前記ポテトフライのタネを成形する前に10分以上かつ15分以下の時間放置することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のポテトフライの製造方法。
【請求項10】
23g以上かつ28g以下の前記ポテトフライのタネを成形することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のポテトフライの製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のポテトフライの製造方法によって製造したことを特徴とするポテトフライ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポテトフライの製造方法、ポテトフライに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、拍子木切り等にしたじゃがいもを油で揚げてなるポテトフライが広く知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来のポテトフライは、食感のバリエーションが少なく、また少量のじゃがいもで作った場合にボリューム感が不足してしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ボリューム感があり、かつ外側がカリカリで内側がモチモチした食感のポテトフライの製造方法及びポテトフライを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、
じゃがいもを千切り状にスライスする工程と、
スライスした前記じゃがいもと小麦粉、塩及び溶いた卵とを混ぜ合わせてポテトフライのタネを作る工程と、
前記ポテトフライのタネを成形する工程と、
成形した前記ポテトフライのタネを油で揚げる工程と、を含むことを特徴とするポテトフライの製造方法を提供する。
【0007】
また本発明は、
じゃがいもを千切り状にスライスする工程と、
スライスした前記じゃがいもとひよこ豆粉、小麦粉及び塩とを混ぜ合わせてポテトフライのタネを作る工程と、
前記ポテトフライのタネを成形する工程と、
成形した前記ポテトフライのタネを油で揚げる工程と、を含むことを特徴とするポテトフライの製造方法を提供する。
【0008】
また本発明は、
じゃがいもを千切り状にスライスする工程と、
スライスした前記じゃがいもとひよこ豆粉、米粉及び塩とを混ぜ合わせてポテトフライのタネを作る工程と、
前記ポテトフライのタネを成形する工程と、
成形した前記ポテトフライのタネを油で揚げる工程と、を含むことを特徴とするポテトフライの製造方法を提供する。
【0009】
また本発明は、
上記ポテトフライの製造方法によって製造したことを特徴とするポテトフライを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボリューム感があり、かつ外側がカリカリで内側がモチモチした食感のポテトフライの製造方法及びポテトフライを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の第1実施例に係るポテトフライを示す写真である。
【
図2】
図2は本発明の第1~3実施例に係るポテトフライの製造に用いられるしりしり器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各実施例に係るポテトフライとその製造方法について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、各実施例に係るポテトフライは「ジャガジャガフライ」とも称する。
(第1実施例)
図1に示す第1実施例に係るポテトフライは、以下の材料(1-1)~(1-5)からなる。なお、材料(1-1)~(1-5)はポテトフライ10~13個分のものである。
【0013】
<ポテトフライの材料>
(1-1)卵1個
(1-2)皮付きのじゃがいも2~3個(約260g)
じゃがいもの品種は限定されず、いずれの品種のじゃがいもでも選択することが可能である。じゃがいもの量は卵を基準に決められる。卵1個に対してじゃがいもの量を増やし過ぎると、卵の香りとふっくら感が減ってしまう。卵1個に対してじゃがいもの量を減らし過ぎると、卵焼きのような味になってしまう。じゃがいもを2~3個とすることでじゃがいもをポテトフライの主役にすることができる。
(1-3)小麦粉130~150g
小麦粉の量はじゃがいもの品種や水分量に応じて調整することが好ましい。小麦粉の量が130gを下回ると、ポテトフライのふっくら感が減少し、硬過ぎる部分ができてしまうため食感が安定しない。後述する作り方(A-3)の成形もしづらくなってしまう。小麦粉の量が150gを上回ると、ポテトフライの食感が重く、もったりとした感じになってしまう。
(1-4)塩2.5~3.5g
塩の量はじゃがいもの品種や水分量に応じて調整することが好ましい。塩の量が3.5gを上回るとポテトフライの塩気が強くなり過ぎてしまい、2.5gを下回ると塩気が物足りなくなってしまう。
(1-5)油
ポテトフライを揚げるための食用油脂であり適量(ポテトフライが鍋底につかない程度の量であればよい)を用いる。
【0014】
なお、上記材料(1-1)~(1-5)における小麦粉、塩及び卵の量は、約260gのじゃがいもに最適な割合のものである。したがって、じゃがいもの量を変更する場合には、当該割合を満足するようにじゃがいもの量に応じて小麦粉、塩及び卵の量を変更すればよい。このことは後述する第2、3実施例に係るポテトフライについても同様である。
【0015】
第1実施例に係るポテトフライは、上記材料(1-1)~(1-5)を用いて以下の製造方法(作り方(A-1)~(A-4))によって作られる。
【0016】
<ポテトフライの作り方>
(A-1)じゃがいもを水洗いして芽を取り、しりしり器でスライスする。
しりしり器は、沖縄の郷土料理であるにんじんしりしりを作る際に用いられるスライサーの一種である(
図2参照)。しりしり器は、通常のスライサー(千切り器)と異なり、食材を平たくかつ薄く2~4cmの長さでスライスするものであり、食材をふんわりとスライスできる。しりしり器でスライスされた野菜は、通常の千切り器に比して、野菜の繊維が粗く断ち切られ、不揃いで、表面がザラザラになるため、油や調味料が染み込みやすい。しりしり器を用いることでじゃがいもは平たく薄く細くスライスされて断面が丸みを帯びるため、粉等を加えずともスライスされたじゃがいも同士がくっつきやすくなる。
【0017】
(A-2)小麦粉、塩及び溶いた卵とスライスしたじゃがいもとをまんべんなく混ぜ合わせ(混ぜ合わせたものを「ポテトフライのタネ」と称する)、10~15分間寝かせる。
この工程は、塩でじゃがいもの水分を調整し、次の工程でポテトフライのタネを成形しやすくするためのものである。ポテトフライのタネの放置時間が15分を上回ると、変色して味にエグ味が出てしまうため好ましくない。
【0018】
(A-3)ポテトフライのタネ23~28gを手の平に取り、軽く握って略俵形に成形する。
成形されたポテトフライのタネは、スライスされたじゃがいも同士が絡み合い、これを小麦粉、卵及びじゃがいもから生じた粘り気でできた衣を纏うことにより形が維持される。なお、ポテトフライのタネが23gを下回ると、次の工程においてポテトフライのタネが油を吸い過ぎて、油の温度調整が必要になってしまうため好ましくない。また、ポテトフライのタネが28gを上回ると、次の工程においてポテトフライのタネへの火の通りが安定しないため、油の温度調整が必要になってしまうため好ましくない。ポテトフライのタネを23~28gで成形することにより、一口又は二口で食べることに適したポテトフライのサイズ感と調理のしやすさとを実現することができる。
【0019】
(A-4)成形したポテトフライのタネを170~180度の油で5~7分、きつね色になるまで揚げる。これにより、長さ4~6cm、最も膨らんだ部分の厚み2cm、最も膨らみのない部分の厚み5~8mm程度のサイズ感で凡そ俵形のポテトフライを完成することができる。なお、油の温度を170~180度、揚げ時間を5~7分とすることにより、ポテトフライのタネの内側及び外側にバランス良く火を通すことができる。
【0020】
以上に述べたポテトフライの製造方法によれば、スライスされたじゃがいも同士が絡み合い衣で包まれる構造により、少量のじゃがいもで作った場合でも十分なボリューム感と、外側がカリカリで内側がモチモチした新食感とを達成したポテトフライを製造することができる。また、当該ポテトフライは5つのシンプルな材料で作ることができ、調理法も簡単である。
本実施例に係るポテトフライは、小麦粉と卵をつなぎに使ったことにより、じゃがいもの素材を生かしながら、楽しい食感や香りを表現している。また、柔らかくふっくらした部分とカリカリの部分とを同時に楽しむことができ、程良い塩分があり、シンプルな構成ながら満足感があってとてもおいしい。小麦粉と卵は油とも相性が良い組み合わせであるため、じゃがいもが油を吸い過ぎてべたっとしてしまうこともない。程良いカリカリ感により、じゃがいもが口内に突き刺さるようなこともなく食べやすい。
【0021】
なお、上記(A-1)においてしりしり器以外の調理器具、例えば包丁や千切り用の一般的なスライサー等を用いてじゃがいもをスライスすることも可能である。以下、(A-1)においてじゃがいもをしりしり器以外の調理器具を用いてスライスした場合について説明する。
【0022】
(i)包丁でじゃがいもをスライスし千切りにした場合
包丁でじゃがいもを均一に切ることが難しい。また(A-3)でポテトフライのタネを成形しづらく、(A-4)でポテトフライのタネへの火の通り具合にムラが生じやすい。
【0023】
(ii)一般的なスライサーでじゃがいもを千切りにした場合
じゃがいもの断面が細くて丸い。(A-4)でポテトフライのタネを揚げた際に、全体的にカリカリと仕上がるため、ふんわりとした食感を得にくい。
【0024】
(iii)(ii)と異なるメーカー製の一般的なスライサーでじゃがいもを千切りにした場合
じゃがいもの断面は薄く平たい。しりしり器でスライスしたじゃがいもに比して幅が太く短い、或いは幅が細く長い。このため(A-3)でポテトフライのタネを成形する際に、まとまりすぎて丸く団子のようになってしまう。その結果(A-4)でポテトフライのタネを揚げた際に、カリカリの部分が少なくなってしまう。
【0025】
以上より、調理器具(i)~(iii)を使用して第1実施例に係るポテトフライを作った場合、味はいずれも美味しいものの、しりしり器を使用した場合に比して食感や火の通りの観点で劣ってしまう。しりしり器は食感や火の通りの問題を最も効果的に解消することができる。
【0026】
(第2実施例)
第2実施例に係るポテトフライは、ベジタリアンの中でも特にヴィーガン(Vegan)向けのポテトフライである。なお、ヴィーガンとは鳥獣の肉、卵、魚介類及びそれらの副生成物が含まれる物を食べない生活習慣を持つ人をいう。
第2実施例に係るポテトフライは、以下の材料(2-1)~(2-5)からなる。なお、材料(2-1)~(2-5)はポテトフライ9~12個分のものである。
【0027】
<ヴィーガン向けポテトフライの材料>
(2-1)皮付きのじゃがいも2~3個(約260g)
じゃがいもの品種は限定されず、いずれの品種のじゃがいもでも選択することが可能である。
(2-2)ひよこ豆粉90g
(2-3)小麦粉30g
ひよこ豆粉は独特の強い香りと衣の重たさがあるため、じゃがいもの食感や香りを引き立てることもあれば台無しにしてしまうこともある。したがって、ひよこ豆粉にひよこ豆粉よりも香りの弱い小麦粉を組み合わせてバランスを取る必要がある。小麦粉が20gを下回るとひよこ豆粉の主張が強くなってしまい、小麦粉が40gを上回るとひよこ豆粉の良さが減ってしまう。小麦粉の量は25~35gが好ましく30gが最も好ましい。斯かる量の小麦粉に対してひよこ豆粉の量は85~95gが好ましく、90gが最も好ましい。
(2-4)塩2.5~3.5g
塩の量はじゃがいもの品種や水分量に応じて調整することが好ましい。
(2-5)油
ポテトフライを揚げるための食用油脂であり適量(ポテトフライが鍋底につかない量であればよい)を用いる。
【0028】
第2実施例に係るポテトフライは、上記材料(2-1)~(2-5)を用いて、上述した第1実施例に係るポテトフライの製造方法(作り方(A-1)~(A-4))と同様の製造方法で作ることができる。
【0029】
以上に述べたポテトフライの製造方法によれば、スライスされたじゃがいも同士が絡み合い、これをひよこ豆粉、小麦粉及びじゃがいもから生じた粘り気でできた衣が包む構造により、上記第1実施例と同様の効果を奏するヴィーガン向けのポテトフライを製造することができる。
本実施例に係るポテトフライは、第1実施例のポテトフライにおける小麦粉と卵の代用として配合したひよこ豆粉と小麦粉をつなぎに使ったことにより、じゃがいもの素材を生かしながら、楽しい食感や香りを表現している。また、柔らかくふっくらした部分とカリカリの部分とを同時に楽しむことができ、程良い塩分があり、シンプルな構成ながら満足感があってとてもおいしい。配合したひよこ豆粉と小麦粉は油とも相性が良い組み合わせであるため、じゃがいもが油を吸い過ぎてべたっとしてしまうこともない。程良いカリカリ感により、じゃがいもが口内に突き刺さるようなこともなく食べやすい。
【0030】
(第3実施例)
第3実施例に係るポテトフライは、グルテンを含まない即ちグルテンフリーのヴィーガン向けポテトフライである。
第3実施例に係るポテトフライは、以下の材料(3-1)~(3-5)からなる。なお、材料(3-1)~(3-5)はポテトフライ9~12個分のものである。
【0031】
<グルテンフリーのヴィーガン向けポテトフライの材料>
(3-1)皮付きのじゃがいも2~3個(約260g)
(3-2)ひよこ豆粉70g
(3-3)米粉60g
米粉は小麦粉に比して香りが少なく粘り気もない。このため、本実施例のポテトフライにおいて小麦粉の代わりに米粉のみを用いるとポテトフライのタネを揚げた際にじゃがいもがバラバラになってしまう。そこで本実施例のポテトフライは米粉をひよこ豆粉に加えることで小麦粉のような粘り気とさっくりとした食感を実現している。米粉の量が60~70gを上回るとポテトフライの食感がべたっとしてしまい、50gを下回るとひよこ豆粉の香りが強くなり、じゃがいもの香りを活かすことができなくなってしまう。米粉の量は55~65gが好ましく60gが最も好ましい。斯かる量の米粉に対してひよこ豆粉の量は65~75gが好ましく、70gが最も好ましい。
(3-4)塩2.5~3.5g
塩の量はじゃがいもの品種や水分量に応じて調整することが好ましい。
(3-5)油
ポテトフライを揚げるための食用油脂であり適量(ポテトフライが鍋底につかない量であればよい)を用いる。
【0032】
第3実施例に係るポテトフライは、上記材料(3-1)~(3-5)を用いて、上述した第1実施例に係るポテトフライの製造方法(作り方(A-1)~(A-4))と同様の製造方法で作ることができる。
【0033】
以上に述べたポテトフライの製造方法によれば、スライスされたじゃがいも同士が絡み合い、これをひよこ豆粉、米粉及びじゃがいもから生じた粘り気でできた衣が包む構造により、上記第1実施例と同様の効果を奏するグルテンフリーのヴィーガン向けポテトフライを製造することができる。
本実施例に係るポテトフライは、第1実施例のポテトフライにおける小麦粉と卵の代用として配合したひよこ豆粉と米粉をつなぎに使ったことにより、じゃがいもの素材を生かしながら、楽しい食感や香りを表現している。また、柔らかくふっくらした部分とカリカリの部分とを同時に楽しむことができ、程良い塩分があり、シンプルな構成ながら満足感があってとてもおいしい。配合したひよこ豆粉と米粉は油とも相性が良い組み合わせであるため、じゃがいもが油を吸い過ぎてべたっとしてしまうこともない。程良いカリカリ感により、じゃがいもが口内に突き刺さるようなこともなく食べやすい。
【0034】
上記第1実施例のポテトフライのレシピは小麦粉と水分量の調整を繰り返すことにより完成したものであり、上記第2、3実施例のポテトフライは以下に述べる試作を繰り返すことにより完成したものである。
【0035】
<ヴィーガン向けのポテトフライにおける卵不使用の問題点>
卵は食材をまとめ、ふっくらと柔らかく仕上げることができ、ほのかに硫黄の香りと優しい甘味とコクをもたらすものである。このため、卵を抜いた場合には、ポテトフライのタネの成形がしづらく、水分量が安定しないため、ポテトフライの味と食感にもバラツキが生じてしまい、物足りない感じが出てしまう。食感は小麦粉の量を調整することである程度補うことができる。そこで風味の物足りなさを解消することに適した材料を中心に検討した。
【0036】
<グルテンフリーのヴィーガン向けポテトフライにおける卵、小麦粉不使用の問題点>
小麦粉の成分であるグルテンは、他の粉にはほとんど無い強い粘り気があり、食材に膨らみを持たせることができる。このため、揚げ物や生地に適しており、ポテトフライのタネを成形しやすく味も深みがあり美味しい。そこで斯かる小麦粉の特性を補うために、数種類の粉を組み合わせてその割合を調整した。
【0037】
具体的には、上記第1~3実施例のポテトフライのために以下の試作(a-1)~(a-5)を行った。
<試作の流れ>
(a-1)小麦粉の代わりに数種類の粉を1つずつ使用した第1実施例のポテトフライを作り、粉の特徴を検討した。
(a-2)ポテトフライのタネの理想的な衣を作るために粉の組み合わせとその割合を検討した。
(a-3)塩の種類を検討した。
(a-4)卵の代わりに水と豆乳を使用した第1実施例のポテトフライを検討した。
(a-5)第1~第3実施例のポテトフライを美味しくする油の種類と適正温度を検討した。
【0038】
(a-1)粉の種類と特徴
表1は第1実施例のポテトフライにおいて小麦粉の代わりに数種類の粉を1つずつ用いて作った試作品から検討した各粉の特徴を示している。なお、表1中の〇は第2、3実施例のポテトフライにメインの粉として使用可能、△は補助的に使用可能、×は使用に適していないことを示す。
【0039】
(表1)
扱いやすさ 味 食感 結果
小麦粉 ○ ○ ○ ○
オーツ粉 × △ × △
ひよこ豆粉 △ ○ ○ ○
レンズ豆粉 × × × ×
米粉 △ △ × ○
玄米粉 × × × ×
大豆粉 △ ○ △ ×
コーンスターチ △ △ ○ △
片栗粉 × △ △ △
【0040】
詳細には、小麦粉は、ポテトフライのタネを最も成形しやすく、ふっくらさっくりした食感で味に深みがあるものの、卵の風味には負ける。
オーツ粉は、小麦粉に似たような粘りと深みがあるが、山芋のような粘りがあり扱いにくい。またオーツ粉は、揚げると固く仕上がってしまい焦げやすいため、衣には向いてないが、米粉との相性が良い。
【0041】
ひよこ豆粉は、独特の香りを有し、軽くさっくりとした衣になるため、食べ応えがあり味が美味しく、スパイスとも合う。
レンズ豆粉は、豆の苦味が際立ち、扱いづらく火の通りが悪く、舌触りも良くない。
米粉は、粘りがなく扱いづらい。また米粉は、揚げ温度にもよるがべとついた衣になるが、うまくいけばモチモチな食感になる。片栗粉と似ている。
【0042】
玄米粉は、米粉より粘りがなく扱いづらい。また玄米粉は、油の中でばらけてしまうため揚げ物には不向きと思われる。
大豆粉は、ポテトフライのタネを成形しやすく香りが良いため、小麦粉に近い使い方が可能かと思われる。しかしながら大豆はアレルギーが起きてしまう人が少なくないため使用は避けたい。
【0043】
コーンスターチは、衣が軽めの仕上がりになり味も美味しい。コーンスターチは遺伝子組み換え製品が多い印象があるため、ポテトフライ用のメインの粉でなく補助的に使用することが望ましい。
片栗粉は、味も食感も良い。しかしながら片栗粉は粘りやとろみが強すぎて扱いづらいため、ポテトフライ用のメインの粉でなく補助的に使用することが望ましい。
【0044】
(a-2)粉の組み合わせと割合
以下の割合で組み合わせた粉を用いて第2、3実施例のポテトフライを試作した。
なお、試作の段階では各粉のグラム数は計量せず、理想の衣に近い粉の組み合わせを絞ってから各粉を計量した。
【0045】
<第2実施例のポテトフライ(ヴィーガン向け)のための試作>
1. 小麦粉:ひよこ豆粉=5:5
2. 小麦粉:ひよこ豆粉=7:3
3. 小麦粉:ひよこ豆粉:大豆粉=1:1:1
4. 小麦粉:オーツ粉:ひよこ豆粉=2:2:3
5. 小麦粉:米粉=5:5
6. 小麦粉:片栗粉:ひよこ豆粉=3:1:5
【0046】
<第3実施例のポテトフライ(グルテンフリーのヴィーガン向け)のための試作>
1. 米粉:ひよこ豆粉:オーツ粉=3:3:1
2. 米粉:ひよこ豆粉:オーツ粉=3:3:3
3. 米粉:ひよこ豆粉:片栗粉=3:3:1
4. 米粉:片栗粉=5:1
5. 米粉:コーンスターチ=5:1
6. ひよこ豆粉:重曹=5:1
7. ひよこ豆粉:ベーキングパウダー=5:1
8. 米粉:大豆粉=5:5
9. 米粉:ひよこ豆粉=5:5
【0047】
以上の試作から、ひよこ豆粉が卵のような風味を出すことが判明した。また、粘り気を追加するためにオーツ粉、コーンスターチ、片栗粉を加えて試作を行ったものの、配合した粉をじゃがいもに加える際に塩も一緒に追加することでじゃがいもに程よい粘り気が生じることが判明したためこれらの粉はレシピから排除している。
【0048】
(a-3)塩の種類
以下の4種の塩を用いて第1実施例のポテトフライを試作した結果、以下のことが判明した。
1.ヒマラヤンソルト
火を通すと香りが飛んでしまう。卵のような香りがするため隠し味になるかと思われたが、仕上げに使用した際に硫黄の香りが強く好みが分かれてしまう。
2.宮古島の雪塩
4種のうちで最も美味しく食材を仕上げることができるが、単価が高い。
3.粟国の塩
まろやかな塩味で甘味も感じられ、バランスが良い。第1~3実施例のポテトフライのレシピに採用可能である。
4.食塩
味に奥行きが無く、塩味だけしか感じられない。
【0049】
(a-4)水と豆乳を使用した試作
ポテトフライのタネを成形する際に卵の粘り気が食材をまとめる働きをしていると思われたため、卵の代わりに水と豆乳を使用した第1実施例のポテトフライを試作し、水と豆乳が食材をまとめる働きができるか検討した。豆乳はポテトフライに卵のような風味を追加することが判明したため試作を繰り返したものの、理想通りの食感が得られなかった。最終的には、じゃがいもを塩もみして粉を加えることで程よい粘りが生じることが判明したため、水と豆乳は不採用とした。
【0050】
(a-5)油の種類と温度
以下の4種の油を用いて第1~3実施例のポテトフライを試作した結果、以下の1~3の油を使用可能である。
【0051】
<油の種類>
1.米油
クセがなく使いやすい。
2.菜種油
クセがなく使いやすい。
3.オリーブオイル
ひよこ豆粉を用いた第2、3実施例のポテトフライと相性がよく清涼感がある。
4.ココナッツオイル
加熱し過ぎると沸騰しているお湯のようになり危険である。
【0052】
以下の4つの温度の油を用いて第1~3実施例のポテトフライを試作した結果、以下の2の温度と揚げ時間が好ましいことがわかった。
【0053】
<油温度>
1.160度、揚げ時間10分前後
ポテトフライの外側に火が通り過ぎる。
2.170~180度、揚げ時間5~7分
ポテトフライの内側、外側ともにバランス良く火が通る。
3.180度以上、揚げ時間4~5分
ポテトフライの内側まで火が通らない。
【0054】
なお、以上に述べた試作の他に、ポテトフライの形や大きさの変更、じゃがいもの皮付き/皮なし/半分のみ皮付き、にんじんの追加、ごぼうの追加、豆乳ヨーグルトの追加、絹ごし豆腐/木綿豆腐の追加、焼いて調理、オーブンで調理、冷凍保存後再度揚げる、冷めた状態で質がどれだけ維持できるか等も検討した結果、上記第1~3実施例のポテトフライのレシピと調理方法が最も好ましいことが判明した。