(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088126
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20220607BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K31/06 305K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200394
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 大輝
(72)【発明者】
【氏名】小山 祐
(72)【発明者】
【氏名】劔持 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 健久
【テーマコード(参考)】
3H051
3H106
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB02
3H051CC11
3H051DD01
3H051EE06
3H106DC02
3H106JJ03
3H106JJ08
(57)【要約】
【課題】密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる弁装置を提供する。
【解決手段】電磁弁1Aは、弁本体2とは別体の弁座部材4を備え、弁本体2の離座側面241に環状の凹部243が形成されている。これにより、凹部243に溶融したろう材を留めやすくすることができ、フランジ部の外周全体と弁本体2の内周面との間の全周にろう材を浸透させる構成と比較して、必要なろう材の量を少なくすることができる。従って、密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を弁座に着座又は離座させることによって、第1継手が接続された第1ポートと第2継手が接続された第2ポートとの間の流路を開閉する弁装置であって、
着座側又は離座側に直進移動する前記弁体と、
前記第1ポート及び前記第2ポートを有するとともに、前記弁体を収容する弁室が形成された弁本体と、
前記弁本体とは別体に形成され、前記第2ポートに連通する弁ポート、及び、前記弁座が形成された弁座部材と、
前記弁体を駆動する駆動手段と、を備え、
前記弁本体は、前記弁座部材の一部が前記離座側から挿入される被挿入部と、前記被挿入部の周囲に形成されるとともに前記離座側を向いた離座側面と、を有し、
前記弁座部材は、前記被挿入部に挿入される挿入部と、前記離座側面に対向する対向面を有するとともに該離座側面を覆うように配置されるフランジ部と、を有し、
前記離座側面と前記対向面とのうち少なくとも一方には、前記弁ポートを囲むように環状の凹部が形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記離座側面に、前記離座側から見て前記フランジ部から露出した露出部を有する前記凹部が形成され、
前記露出部は、環状に形成されているか又は周方向の複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記離座側面の凹部の外径が、前記フランジ部の外径よりも大きく形成されていることで、前記露出部が環状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記フランジ部の外周面が、前記離座側面の凹部内に配置される配置部と、前記配置部よりも前記離座側において該配置部よりも外周側に突出した突出部と、を有することを特徴とする請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記被挿入部の内周面には、前記離座側の空間と前記着座側の空間とを連通させる溝が形成され、
前記溝は、前記離座側の端部において前記凹部内に開口し、
前記フランジ部は、前記凹部内に配置されて前記被挿入部への挿入を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記被挿入部に挿入された際、該被挿入部の内周面からの突出寸法が、前記凹部における前記溝の深さよりも小さいことにより、前記被挿入部への挿入を規制しつつ、前記溝と前記凹部とを連通させることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の弁装置。
【請求項6】
前記フランジ部は、複数の大径部及び小径部を有し、
前記小径部の外径が前記離座側面の凹部の外径よりも小さく形成され、且つ、前記大径部の外径が前記離座側面の凹部の外径よりも大きく形成されていることで、前記露出部が周方向の複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、プランジャと吸引子と励磁コイルとを有し、
電磁弁として機能することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流路を開閉するための弁装置として、プランジャを電磁石により駆動することで弁体を移動させる電磁弁が知られている。このような弁装置では、弁体が弁座に対して衝突することにより、摩耗や騒音が発生することがある。これらの摩耗や騒音を低減することや、弁体との接触部の加工精度を向上させること等を目的として、弁室が形成される弁本体と、弁本体とは別部品であり弁ポート及び弁座が形成された弁体受けと、を備えた電磁弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電磁弁では、互いに別部品である弁本体と弁体受けとをろう付けによって固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電磁弁では、弁本体のうち出口ポート側にろう材を配置し、ろう材を浸透させることによってフランジ部の外周全体にろう材が回り込むようにしているため、使用するろう材の量が増大しやすかった。一方、ろう材の使用量を低減しようとすると、ろう材がフランジ部の外周全体に回り込みにくくなり、密封性が低下してしまう可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、弁体を弁座に着座又は離座させることによって、第1継手が接続された第1ポートと第2継手が接続された第2ポートとの間の流路を開閉する弁装置であって、着座側又は離座側に直進移動する前記弁体と、前記第1ポート及び前記第2ポートを有するとともに、前記弁体を収容する弁室が形成された弁本体と、前記弁本体とは別体に形成され、前記第2ポートに連通する弁ポート、及び、前記弁座が形成された弁座部材と、前記弁体を駆動する駆動手段と、を備え、前記弁本体は、前記弁座部材の一部が前記離座側から挿入される被挿入部と、前記被挿入部の周囲に形成されるとともに前記離座側を向いた離座側面と、を有し、前記弁座部材は、前記被挿入部に挿入される挿入部と、前記離座側面に対向する対向面を有するとともに該離座側面を覆うように配置されるフランジ部と、を有し、前記離座側面と前記対向面とのうち少なくとも一方には、前記弁ポートを囲むように環状の凹部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、互いに対向する離座側面と対向面とのうち少なくとも一方に、環状の凹部が形成されていることで、この凹部に溶融したろう材を留めやすくすることができる。これにより、弁本体と弁座部材とを固定しつつ、弁ポートを囲むように全周に亘ってろう付けしやすく、弁本体と弁座部材との接続部分における流体の漏洩を抑制することができる。このとき、凹部の最大外径はフランジ部の直径よりも小さくすることができ、フランジ部の外周と弁本体の内周面との間の全周にろう材を浸透させる構成と比較して、必要なろう材の量を少なくすることができる。従って、密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる。
【0008】
この際、本発明の弁装置では、前記離座側面に、前記離座側から見て前記フランジ部から露出した露出部を有する前記凹部が形成され、前記露出部は、環状に形成されているか又は周方向の複数箇所に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、凹部内のろう付けの状態を離座側から視認することができる。このとき、露出部が環状に形成されているか又は周方向の複数箇所に形成されていることで、環状の凹部において周方向の全体又は略全体に亘って適切にろう付けが行われているかを確認することができ、ろう材の局所的な不在による密封性の低下を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の弁装置では、前記離座側面の凹部の外径が、前記フランジ部の外径よりも大きく形成されていることで、前記露出部が環状に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、凹部の周方向の全体に亘って適切にろう付けが行われているかをより確認しやすくすることができる。
【0010】
また、本発明の弁装置では、前記フランジ部の外周面が、前記離座側面の凹部内に配置される配置部と、前記配置部よりも前記離座側において該配置部よりも外周側に突出した突出部と、を有することが好ましい。このような構成によれば、溶融前のろう材を、配置部の外周に沿うように配置し、且つ、凹部の底面と突出部とによって挟み込むことができ、ろう付け時の作業性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の弁装置では、前記被挿入部の内周面には、前記離座側の空間と前記着座側の空間とを連通させる溝が形成され、前記溝は、前記離座側の端部において前記凹部内に開口し、前記フランジ部は、前記凹部内に配置されて前記被挿入部への挿入を規制する規制部を有し、前記規制部は、前記被挿入部に挿入された際、該被挿入部の内周面からの突出寸法が、前記凹部における前記溝の深さよりも小さいことにより、前記被挿入部への挿入を規制しつつ、前記溝と前記凹部とを連通させることが好ましい。このような構成によれば、溶融したろう材が、凹部から溝または溝から凹部へと通過することができ、ろう材を浸透させやすくすることができる。
【0012】
また、本発明の弁装置では、前記フランジ部は、複数の大径部及び小径部を有し、前記小径部の外径が前記離座側面の凹部の外径よりも小さく形成され、且つ、前記大径部の外径が前記離座側面の凹部の外径よりも大きく形成されていることで、前記露出部が周方向の複数箇所に形成されていてもよい。このような構成によれば、フランジ部の最大外径を確保することができる。これにより、例えば、大径部の外周面を弁本体の内周面に近接又は当接するように配置することができ、弁本体に対する弁座部材のがたつきを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の弁装置では、前記駆動手段は、プランジャと吸引子と励磁コイルとを有し、電磁弁として機能することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弁装置によれば、密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一例である第1実施形態に係る弁装置を示す断面図である。
【
図2】前記弁装置の要部を拡大して示す断面図である。
【
図3】前記弁装置の要部をさらに拡大して示す断面図である。
【
図4】前記弁装置のろう付け前の状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の一例である第2実施形態に係る弁装置の要部を示す断面図である。
【
図6】前記弁装置のフランジ部をしめす平面図である。
【
図7】前記弁装置のろう付け前の状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の変形例に係る弁装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、第2実施形態においては、第1実施形態と共通する構成には同様の符号を付し、説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
本実施形態の電磁弁1Aは、
図1、2に示すように、第1継手101と第2継手102との間の流路を開閉する弁装置であって、弁本体2と、弁体3と、弁座部材4と、駆動手段5と、を備える。
【0018】
電磁弁1Aにおいて、弁体3が所定方向に直進移動するように設けられている。以下では、弁体3の直進移動の方向をZ方向とし、弁体3が弁閉するように移動する側を着座側(
図1における下側)とし、弁体3が弁開するように移動する側を離座側(
図1における上側)とする。また、Z方向に直交する2方向をX方向及びY方向とする。Z方向について説明する際、離座側又は着座側と呼ぶことがあり、単に上下で呼ぶこともあるが、特に説明がない限り、上下については
図1を基準とする。
【0019】
弁本体2は、例えば黄銅等の金属によって構成され、第1継手101が接続される第1ポート21と、第2継手102が接続される第2ポート22と、を有する。本実施形態では、第1ポート21が入口ポート(一次側)となり、第2ポート22が出口ポート(二次側)となる。弁本体2には、第1ポート21及び第2ポート22に連通するとともに弁体3を収容する弁室23が形成される。弁室23は、後述するプランジャ512の下端部も収容する。尚、弁本体2は、黄銅によって構成されたものに限定されず、例えばステンレス等によって構成されていてもよい。
【0020】
弁本体2は、全体がZ方向に沿って延在する円筒状に形成され、第2ポート22と弁室23との間において、内周側に突出した凸部24を有する。これにより、凸部24の内側に、第2ポート22よりも小径な被挿入部25が形成される。被挿入部25には、弁座部材4の一部である後述する挿入部41が離座側から挿入される。凸部24のうち離座側を向いた面が離座側面241となり、離座側面241は被挿入部25の周囲に形成される。また、凸部24の内周面(即ち被挿入部25の内周面)には、Z方向を軸方向とする螺旋状の溝242が形成されている。溝242は、被挿入部25の離座側の空間(弁室23)と、被挿入部25の着座側の空間(第2ポート22)と、を連通させるように形成されている。また、螺旋状の溝242の離座側端部は、後述する凹部243に開口し、溝242と凹部243とが連通可能となっている。
【0021】
弁体3は、例えばステンレス等の金属によって球状に形成され、後述する弁体ホルダ514によって保持され、Z方向に直進移動することで後述する弁ポート43を開閉する。
【0022】
弁座部材4は、例えばステンレス等の金属によって弁本体2とは別体(別部品)に形成され、挿入部41及びフランジ部42を有するとともに、第2ポート22に連通する弁ポート43と、弁座44と、が形成されている。尚、弁座部材4の材質は、必要な耐摩耗性や硬度、衝撃吸収性等に応じて適宜に選択されればよく、例えば、弁体3や後述する弁体ホルダ514の材質によっては樹脂であってもよいが、上述のように弁本体2を加工性に優れる黄銅製とし、弁座部材4を耐久性に優れるステンレス製とすることが好ましい。挿入部41は、Z方向から見て円形に形成されるとともに、離座側から被挿入部25に圧入(挿入)され、その下端部が第2継手102の上端部に近接するように配置される。
【0023】
フランジ部42は、Z方向から見て円形に形成されるとともに、被挿入部25の内径よりも大きな外径を有することで被挿入部25には挿入不能となっている。弁座部材4のうち挿入部41が被挿入部25に挿入された状態において、フランジ部42は、弁本体2の離座側面241を離座側から覆うように配置されるとともに、その下面(着座側の面)が、Z方向において離座側面241と対向する対向面421となる。
【0024】
弁ポート43は、弁座部材4の全体をZ方向に貫通するように形成されることにより、第2ポート22に連通する。また、弁座44は、弁座部材4のうち離座側の面(フランジ部42の上面)に形成されており、この弁座44に対して弁体3が着座又は離座するようになっている。また、貫通状の弁ポート43は、そのうち最も内径が小さい部分であるオリフィス431を有する。
【0025】
駆動手段5は、プランジャユニット51と電磁コイルアセンブリ52とによって構成される。プランジャユニット51は、プランジャチューブ511と、プランジャ512と、吸引子513と、弁体ホルダ514と、コイルスプリング515と、を有する。
【0026】
プランジャチューブ511は、例えば金属等によって形成された円筒状の部材であり、弁本体2の上部開口(離座側の開口)に気密に接続される。プランジャ512は、プランジャチューブ511内をZ方向に摺動可能な可動鉄心である。プランジャ512には、離座側の開口部であるプランジャ室512Aと、内部のZ方向の貫通孔である均圧孔512Bと、着座側に設けられた開口部である下端中空部512Cと、が形成される。プランジャ512にZ方向の均圧孔512Bと、下端中空部512Cと、が形成されることにより、後述する通孔514Aを介してプランジャ室512Aと弁室23とが連通され均圧される。
【0027】
吸引子513は、プランジャチューブ511の離座側端部に固定される固定鉄心である。コイルスプリング515は、プランジャ512のプランジャ室512Aの内部に配置され、プランジャ512と吸引子513とに接続され、弁体3を閉弁する方向の付勢力を生じるように縮装される。
【0028】
弁体ホルダ514は、例えばステンレス等の金属製であり、プランジャ512の着座側端部に固定される略円筒形状の部材であり、弁室23内に設けられるとともに、その内部に弁体3を保持している。弁体ホルダ514のZ方向中段付近には、XY平面内方向の通孔514Aが形成されている。これにより、弁体ホルダ514の内部と弁室23とが連通し、弁体3が弁座44に接触する直前に、弁体3に対して着座側から高圧流体が作用するために、弁体3は、その圧力差により弁ポート43を閉弁しやすくなっている。
【0029】
プランジャ512の下端中空部512Cの内部には、弁ばね6が縮装されている。弁ばね6は、プランジャ512に接続され、弁体3を着座側に付勢する。
【0030】
電磁コイルアセンブリ52は、プランジャチューブ511に同心状に取り付けられる樹脂製のボビン521と、ボビン521に巻回されるとともにプランジャ512及び吸引子513を励磁するコイル522と、コイル522が巻回された後のボビン521を樹脂によって覆うことでこれらを内側に収容するケーシング523と、ケーシング523を吸引子513に固定するボルト524と、コイル522に接続されるリード線525と、を有する。
【0031】
本実施形態の電磁弁1Aは、常閉型の電磁弁であり、通常状態(無通電状態)では、吸引子513に接続されたコイルスプリング515の付勢力により、プランジャ512が下方向に押され、プランジャ512に接続された弁ばね6の付勢力により弁体3が弁座部材4の弁座44に着座して押し付けられ、電磁弁1Aが閉弁状態となる。
【0032】
一方、リード線525からコイル522に通電されて通電状態になると、吸引子513及びプランジャ512が励磁される。これにより、吸引子513とプランジャ512との間に吸引力が発生し、この吸引力がコイルスプリング515の付勢力を上回り、プランジャ512と、プランジャ512に固定された弁体ホルダ514と、弁体ホルダ514に保持された球状の弁体3と、が離座側に移動する。弁体3は離座側に移動することにより弁座44から離座し、弁座44が開放され、電磁弁1Aが開弁状態となる。これにより、第1継手101から流入した流体は、第1ポート21、弁室23、及び弁ポート43を通過し、第2継手102から吐出される。
【0033】
リード線525からコイル522への通電を停止して再び通常状態とすれば、吸引子513及びプランジャ512を消磁(又は減磁)させることができ、吸引子513とプランジャ512との間の吸引力が消滅(又は低下)する。これにより、コイルスプリング515の付勢力によって上記同様に弁体3が着座側に移動し、弁体3が弁座44に着座して電磁弁1Aが再び閉弁状態となる。
【0034】
ここで、互いに別体(別部品)に形成された弁本体2と弁座部材4との固定構造の詳細について、
図3も参照しつつ説明する。上記のように、弁本体2の離座側面241と、弁座部材4の対向面421と、がZ方向において対向している。これら対向する2面のうち離座側面241に、弁ポート43を囲むように環状の凹部243が形成されている。即ち、離座側面241が形成された凸部24の内側に、弁ポート43が形成された弁座部材4の挿入部41が配置されており、凹部243が弁ポート43を外側から囲んでいる。
【0035】
フランジ部42は、被挿入部25のうち溝242を除く部分よりも大径に形成されて凹部243の底面に当接する規制部422を有する。規制部422により、弁座部材4の被挿入部25への過挿入が規制される。フランジ部42の外周面は、配置部423と突出部424とを有する。配置部423は、規制部422から離座側に向かって延びる円筒面であって、そのZ方向寸法が凹部243の深さよりも大きく、凹部243内に配置される。また、突出部424は、配置部423よりも離座側において、配置部423よりも外周側に突出しており、凹部243の外側に配置される。
【0036】
Z方向視円形のフランジ部42は、突出部424において最も大径となり、突出部424の外径は、離座側面241に形成された凹部243の外径よりも大きい。即ち、凹部243は、Z方向の離座側から見て、フランジ部42から露出した露出部A1を有する。フランジ部42及び凹部243は同心円状に形成されており、露出部A1は円環状に形成される。
【0037】
溝242は、内周面に形成されたものであり、螺旋の中心と、最も溝が深い位置と、の間の寸法(半径)を最大内径と呼ぶ。即ち、最大内径は、被挿入部25の内径(半径)に溝242の深さを加えたものである。溝242は、その螺旋の全体において、略一定の最大内径を有し、即ち略一定の溝深さを有する。
図2、3の断面では、凹部243に位置する溝242は表れておらず、それよりも着座側において、溝242のうち最大内径となっている部分が二箇所(左右一箇所ずつ)示されている。
図2、3をZ軸方向周りに所定角度回転させた断面において、凹部243内で溝242が最大内径となる。規制部422の半径(外径)は、凹部243における溝242の最大内径よりも小さく、規制部422と溝242には同心に配置される。換言すれば、被挿入部25の内周面からの規制部422の突出寸法は、被挿入部25の内周面を基準とした溝242の深さよりも小さい。従って、凹部243内において、規制部422によって溝242の開口は完全には覆われず、一部が露出する。これにより、規制部422が被挿入部25への挿入を規制しつつ、溝242と凹部243とが連通するようになっている。
【0038】
次に、弁本体2と弁座部材4との固定方法について説明する。弁本体2と弁座部材4とは、離座側を鉛直方向上側とする向きでろう付けを実施することによって固定される。まず、
図4に示すように、凹部243内にろう材10を配置する。このとき、フランジ部42における配置部423の外周にろう材10が沿うようにし、突出部424と凹部243の底面とによって、ろう材10の一部をZ方向から挟み込む(Z方向においてろう材の一部と突出部424とが重なり合う)。このように、突出部424によってろう材10が安定して保持されるようになっている。
【0039】
ろう材10を溶融させることにより、溶融したろう材は、一部が凹部243に留まるとともに、他の一部は、重力によって鉛直方向下側に移動することにより、弁本体2と弁座部材4との隙間に浸透する。このとき、溶融したろう材は螺旋状の溝242を通過しやすくなっている。また、凹部243に留まったろう材は、凹部243に沿って円環状となる。
【0040】
このように凹部243に溜まったろう材が固化することにより、この位置において弁室23と第2継手102とが連通しなくなる。即ち、凹部243に適切にろう材を溜めることで、弁室23は、弁ポート43のみを介して第2継手102と連通する。
【0041】
以上の本実施形態によれば、離座側面241に環状の凹部243が形成されていることで、この凹部243に溶融したろう材を留めやすくすることができる。これにより、弁本体2と弁座部材4とを固定しつつ、弁ポート43を囲むように全周に亘ってろう付けしやすく、弁本体2と弁座部材4との接続部分における流体の漏洩を抑制することができる。このとき、凹部243の最大外径をフランジ部42の直径よりも小さくすることができ、フランジ部の外周全体と弁本体2の内周面との間の全周にろう材を浸透させる構成と比較して、必要なろう材の量を少なくすることができる。従って、密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる。
【0042】
凹部243が露出部A1を有することで、凹部243内のろう付けの状態を離座側から視認することができ、ろう材の局所的な不在による密封性の低下を抑制することができる。さらに、凹部243が環状に形成されていることで、凹部の周方向の全体に亘って適切にろう付けが行われているかをより確認しやすくすることができる。
【0043】
また、フランジ部42の外周面が配置部423と突出部424とを有することで、溶融前のろう材10を、配置部423の外周に沿うように配置し、且つ、凹部243の底面と突出部424とによって挟み込むことができ、ろう付け時の作業性を向上させることができる。
【0044】
また、フランジ部42の規制部422が被挿入部25への挿入を規制した際に、溝242と凹部243とが連通することにより、溶融したろう材が、凹部243から溝242へと通過することができ、ろう材を浸透させやすくすることができる。
【0045】
[第2実施形態]
本実施形態の電磁弁は、
図5に示すように、弁座部材4に代えて弁座部材4Bが用いられている点と、ろう付けの方法と、において第1実施形態の電磁弁1Aと相違する。
【0046】
弁座部材4Bは、挿入部41とフランジ部45とを有するとともに、オリフィス431を有する弁ポート43と、弁座44と、が形成されている。フランジ部45は、
図6に示すように、3つの大径部451と3つの小径部452とを有し、これらが周方向に交互に配置されている。各々の大径部451及び小径部452は、Z方向から見て60°の範囲に形成されているものとするが、大径部と小径部とで範囲が異なっていてもよいし、大径部同士又は小径部同士で範囲が異なっていてもよい。大径部451の外径は、凹部243の外径よりも大きい。小径部452の外径は、被挿入部25の内径よりも大きく、且つ、凹部243の外径よりも小さい。
【0047】
このような小径部452が形成されていることにより、凹部243は、離座側から見てフランジ部45から露出した露出部A2を有する。露出部A2は、周方向の3箇所に形成されている。
【0048】
次に、弁本体2と弁座部材4Bとの固定方法について説明する。弁本体2と弁座部材4とは、着座側を鉛直方向上側とする向きでろう付けを実施することによって固定される。まず、
図7に示すように、弁座部材4の挿入部41にろう材10を配置する。このとき、図示のように、挿入部41に、先端側(着座側)が小径となった段差部を形成し、この段差部によってろう材10を保持する(小径な部分の外周にろう材を沿わせる)ことが好ましい。
【0049】
ろう材10を溶融させることにより、重力によって鉛直方向下側に移動し、弁本体2と弁座部材4Bとの隙間に浸透する。このとき、溶融したろう材は螺旋状の溝242を通過しやすくなっている。弁本体2と弁座部材4Bとの隙間に浸透したろう材の一部は、凹部243に到達し、この凹部243内に留まって円環状となる。
【0050】
以上の本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、離座側面241に環状の凹部243が形成されていることで、密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる。また、凹部243が露出部A2を有することで、凹部243内のろう付けの状態を離座側から視認することができる。
【0051】
また、フランジ部45が大径部451及び小径部452を有することで、フランジ部45の最大外径を確保することができる。これにより、大径部451の外周面を弁本体2の内周面に近接するように配置することができ、弁本体2に対する弁座部材4のがたつきを抑制することができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記第1実施形態及び前記第2実施形態では、対向する離座側面241と対向面421とのうち、離座側面241に凹部243が形成されているものとしたが、対向面に凹部を形成してもよい。例えば、
図8に示すように、挿入部41と、対向面461に凹部462が形成されたフランジ部46と、を有する弁座部材4Cを用いてもよい。
図8に示す形態では、第2実施形態と同様に、着座側を鉛直方向上側とする向きでろう付けを実施すればよい。
【0053】
このような構成によれば、前記第1実施形態及び前記第2実施形態と同様に、凹部462が形成されていることにより、密封性を確保しつつろう材の使用量を低減することができる。また、弁座部材4Cを弁本体2よりも軟質な材料によって形成する場合、凹部を形成しやすい。また、弁本体2に凹部を形成する必要がないことから、弁本体2の設計変更の必要がない。
【0054】
尚、前記第1実施形態及び前記第2実施形態のように離座側面に凹部を形成し、且つ、
図8の変形例のように対向面に凹部を形成してもよい。
【0055】
また、前記第1実施形態では、フランジ部42の外周面が配置部423と突出部424とを有するものとしたが、溶融前のろう材の寸法や形状、凹部との関係等によって、ろう材を安定して保持することができる場合には、フランジ部は配置部及び突出部を有していなくてもよい。
【0056】
また、前記第1実施形態及び前記第2実施形態では、離座側面241に形成された凹部243が露出部A1,A2を有するものとしたが、離座側面に凹部が形成されるとともにこの凹部が露出部を有していない構成としてもよい。このような構成とすれば、露出部を形成するためにフランジ部を加工する必要がなく、弁座部材の形状を簡素化したり、弁座部材の設計変更を省略したりすることができる。
【0057】
また、前記第1実施形態では、電磁弁1Aが、プランジャユニット51と電磁コイルアセンブリ52とによって構成された駆動手段5を備えるものとしたが、他の駆動手段を備えた弁装置としてもよい。
【0058】
また、前記第1実施形態では、被挿入部25の内周面に螺旋状の溝242が形成され、フランジ部42の規制部422が被挿入部25への挿入を規制しつつ、溝242と凹部243とが連通するものとしたが、このような構成に限定されない。即ち、被挿入部に形成される溝は螺旋状のものに限定されず、例えば、弁体の直進移動方向に沿って延びる直線溝と、弁体の直進移動方向周りに環状に形成された環状溝と、を組み合わせてもよい。また、規制部によって溝を完全に覆うようにしてもよく、このような構成において、凹部と溝とを連通させる連通孔を追加工により設けてもよい。また、弁本体と弁座部材と寸法や材質等の関係により、溶融したろう材がこれらの間において浸透しやすい場合には、被挿入部の内周面に螺旋状等の溝を形成しなくてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1A…電磁弁(弁装置)、2…弁本体、21…第1ポート、22…第2ポート、23…弁室、241…離座側面、243…凹部、25…被挿入部、3…弁体、4…弁座部材、41…挿入部、42,45,46…フランジ部、421,461…対向面、423…配置部、424…突出部、451…大径部、452…小径部、462…凹部、5…駆動手段、A1,A2…露出部