(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088192
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】エアボート
(51)【国際特許分類】
B63H 7/02 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
B63H7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200490
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】510074704
【氏名又は名称】佐々木 甲
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 甲
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プロペラを逆回転させること無く後進することが可能なエアボートを提供する。
【解決手段】エアボート10は、デッキ上に配され、前方に開口する第1の前方開口部及び後方に開口する第1の後方開口部を有し、第1の前方開口部と第1の後方開口部との間で筒状の流体路を形成するようにプロペラの周囲に所定の間隔をもって囲んでいる第1の囲い体21と、デッキ上に配され、前方に開口する第2の前方開口部及び第1の後方開口部よりも後ろ側において後方に開口する第2の後方開口部を有し、第1の囲い体の周囲に前後に連通する流体路を形成するように第1の囲い体を囲う第2の囲い体23と、第2の囲い体に対して回転軸と垂直な第2の軸回りに回動可能な板材からなり、板材によって第2の後方開口部を閉塞可能な回動板部と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキを有する船体と、
前記船体に配された原動機と、
前記デッキの後部に配され前記船体の前後方向に沿った第1の軸周りに前記原動機によって回転させられるプロペラと、
前記デッキ上に配され、前方に開口する第1の前方開口部及び後方に開口する第1の後方開口部を有し、前記第1の前方開口部と前記第1の後方開口部との間で筒状の流体路を形成するように前記プロペラを前記プロペラの周囲に所定の間隔をもって囲んでいる第1の囲い体と、
前記デッキ上に配され、前方に開口する第2の前方開口部及び前記第1の後方開口部よりも後ろ側において後方に開口する第2の後方開口部を有し、前記第1の囲い体の周囲に前後に連通する流体路を形成するように前記第1の囲い体を囲う第2の囲い体と、
前記第2の囲い体に対して前記第1の軸と垂直な第2の軸回りに回動可能な板材からなり、前記板材によって前記第2の後方開口部を閉塞可能な回動板部と、
を含むことを特徴とするエアボート。
【請求項2】
前記第2の軸は水平軸であることを特徴とする請求項1に記載のエアボート。
【請求項3】
前記第2の軸は鉛直軸であることを特徴とする請求項1に記載のエアボート。
【請求項4】
前記回動板部は、各々が前記第2の囲い体に対して前記第1の軸と垂直な前記第2の軸回りに回動可能でありかつ前記第1の軸及び前記第2の軸と垂直な第3の軸に沿って配列された複数の板材からなり、前記複数の板材によって前記第2の後方開口部を閉塞可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のエアボート。
【請求項5】
前記第2の囲い体は前記後方に向かって窄んでおり、前記第2の前方開口部よりも前記第2の後方開口部が小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のエアボート。
【請求項6】
前記第1の囲い体の第1の前方開口部はベルマウス形状を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のエアボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアボートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、船体のデッキ上にプロペラ取り付けられ、当該プロペラの回転によって発生する風を後方に吹き出すことによって推進するエアボートが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなエアボートで後進すなわち逆進しようとする場合には、例えば、プロペラの回転方向を逆転させることが考えられる。しかし、プロペラの回転方向を逆転させるには、原動機の回転方向、すなわち原動機の回転軸の回転方向を逆転させる機構、または原動機とプロペラとの間に伝達される回転力を逆転させる機構を別途設ける必要があることが問題の1つとして挙げられる。
【0005】
また、プロペラの回転方向を逆転させて後進する場合には、通常プロペラの前方に配される操縦席に座る操縦者に強烈な風が吹き付けてしまうことも問題の1つとしてあげられる。
【0006】
また、例えば、エアボートが前方に進む場合に、後方に人が居たり風で飛ばされやすいものがある場合に、後方に風を吹き出すことが望まれない場合がある。さらに、例えば、船体の後部が中州等に乗り上げた場合に、乗り上げ状態からの脱出と容易とするために船体の後方を持ち上げる力を発生させたいという要望もあった。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、例えば、プロペラを逆回転させること無く後進することが可能なエアボートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、デッキを有する船体と、前記船体に配された原動機と、前記デッキの後部に配され前記船体の前後方向に沿った第1の軸周りに前記原動機によって回転させられるプロペラと、前記デッキ上に配され、前方に開口する第1の前方開口部及び後方に開口する第1の後方開口部を有し、前記第1の前方開口部と前記第1の後方開口部との間で筒状の流体路を形成するように前記プロペラを前記プロペラの周囲に所定の間隔をもって囲んでいる第1の囲い体と、前記デッキ上に配され、前方に開口する第2の前方開口部及び前記第1の後方開口部よりも後ろ側において後方に開口する第2の後方開口部を有し、前記第1の囲い体の周囲に前後に連通する流体路を形成するように前記第1の囲い体を囲う第2の囲い体と、前記第2の囲い体に対して前記回転軸と垂直な第2の軸回りに回動可能な板材からなり、前記板材によって前記第2の後方開口部を閉塞可能な回動板部と、
を含むことを特徴とするエアボートである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係るエアボートの前方から見た斜視図である。
【
図2】実施例1に係るエアボートの後方から見た斜視図である。
【
図3】実施例1のエアボートのラダーの1の動作状態を示す断面図である。
【
図4】実施例1のエアボートのラダーの1の動作状態を示す断面図である。
【
図5】実施例1のエアボートのラダーの1の動作状態を示す断面図である。
【
図6】実施例2に係るエアボートの後方から見た斜視図である。
【
図7】実施例3のエアボートの前後方向の中心線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。以下の説明においては、ウレタンボート上に原動機、当該原動機によって回転するプロペラを含む推進装置が配されているエアボートを例に説明する。
【実施例0011】
[全体構造]
図1は、実施例1のエアボート10の前方から見た斜視図である。また、
図2は実施例1のエアボート10の後方から見た斜視図である。船体11は、ポリエステルやナイロン等の合成繊維の布に気密性材料ポリ塩化ビニールとハイパロンやエスコストロン等の合成ゴムとを何層にも貼り合わせてなるチューブに、硬質ウレタンフォームを充填してなる、いわゆるウレタンボートである。図中白抜き矢印の方向が船体11の前方となっている。船体11は、船首11Fにおいて船底が前方向かって上方に持ち上がっている。
【0012】
以下の説明において、図中X方向をエアボート10または船体11の前後方向、Y方向をエアボート10または船体11の幅方向、図中Z方向をエアボート10または船体11の高さ方向または鉛直方向として説明する。
【0013】
操縦席13は、船体11のデッキ11A上に配されている台座部15上に設けられている。言い換えれば、操縦席13は、デッキ11Aよりも一段高い位置に設けられている。エアボート10の操縦者は、操縦席13に座ってエアボート10を操縦する。
【0014】
原動機17は、台座部15上の操縦席13の後方の位置に設けられた支持台15Sに載置された電気モータ、またはガソリンエンジン等の内燃エンジンである。原動機17は、後方に向かって伸張している回転シャフト17Sを有している。この回転シャフト17Sは、エアボート10の前後方向、すなわちX方向に沿って伸張している。この回転シャフト17Sは、原動機17が駆動されることによって、X方向に沿った回転軸周りに回転する。
【0015】
プロペラ19は、その中心において原動機17の回転シャフト17Sに取り付けられており、原動機17が駆動することにより回転する。すなわち、プロペラ19は、原動機によって、船体11の前後方向に沿った軸回りに回転させられる。本実施例において、原動機17は、プロペラ19がエアボート10の後方に風を送出する回転方向で回転シャフト17Sを回転させる。
【0016】
第1の囲い体21は、エアボート10の前後方向に伸張する筒状の部分であり、原動機17の後方の台座部15上に配されている。第1の囲い体21は、プロペラ19をプロペラ19の周囲に所定の間隔もって囲み、プロペラ19を内部に収容するように形成されており、前方に開口した前方開口部21A及び後方に開口した後方開口部21Bを有している。言い換えれば、第1の囲い体21は、前記プロペラ19が回転することによって生成された気流が流れる、前方開口部21Aと後方開口部21Bとの間の筒状の流体路を形成している。
【0017】
第2の囲い体23は、台座部15上に配されたトンネル状の部分であり、台座部15上において第1の囲い体21を囲むように構成されている。第2の囲い体23は、前方に開口する前方開口部23Aを有している。第2の囲い体23の内側面23Sと第1の囲い体の外側面21Sは互いに離隔している。言い換えれば、第2の囲い体23は、第1の囲い体21と共に前記第1の囲い体21の周囲において前後に連通する流体路を形成している。
【0018】
ここで
図2を用いて、第2の囲い体23の後ろ側部分について詳細に説明する。上述のように、第2の囲い体は、後方に開口する後方開口部23Bを有している。第2の囲い体23の後方開口部23Bは、第1の囲い体21の後方開口部21Bよりも後ろ側において後方に開口している。第2の囲い体23においては、前方開口部23Aが後方開口部23Bよりも大きくなっている。言い換えれば、第2の囲い体23は、前方から後方に向かって窄んだ形状を有している。
【0019】
ルーバー板25は、後方開口部23Bに、後方開口部23Bの開口面に沿って鉛直方向に複数配列されている板材である。ルーバー板25の各々は、エアボート10の幅方向に沿った水平軸周りに回動可能になっている。すなわち、ルーバー板25は、後方開口部23Bから噴出される風の方向を上下方向に偏向可能なルーバーを構成している。ルーバー板25は、全てのルーバー板25の板面が垂直になされた場合に後方開口部23Bを閉塞可能に構成されている。
【0020】
ラダー板27は、後方開口部23Bに、ルーバー板25の後方において、後方開口部23Bの開口面に沿って水平方向に複数配列されている板材である。ラダー板27の各々は、エアボート10の上下方向に沿った鉛直軸周りに回動可能になっている。すなわち、ラダー板27は、後方開口部23Bから噴出される風の方向を左右方向に偏向可能なラダーを構成している。
【0021】
図1にもどると、第1の操縦レバー29は、エアボート10の正面からみて操縦席13の左側に設けられている。第1の操縦レバー29は、台座部15上に設けられた支持部29A及び支持部29Aに支持されて前後左右に揺動可能なレバー部29Bからなっている。第1の操縦レバー29には、原動機17及びラダー板27を動作させるための操作を受け付ける。
【0022】
レバー部29Bになされた操作に応じて、原動機の出力が変化してエアボート10の推進力がコントロールされる。また、レバー部29Bになされた操作に応じて、ラダー板27の回動角度が変化して、エアボート10の操舵がなされる。例えば、レバー部29Bを前方向に倒すと原動機17の出力が上がる。また、例えば、レバー部29Bを左右に倒すとそれに応じてラダー板27が左右に回動する。このレバー部29Bへの操作は、直接ワイヤで原動機17及びラダー板27に伝えられても良い。また、この操作によってフライ・バイ・ワイヤ方式で原動機17及びラダー板27が動作させられてもよい。
【0023】
第2の操縦レバー31は、エアボート10の正面からみて操縦席13の右側に設けられている。第2の操縦レバー31は、台座部15上に設けられた支持部31A及び支持部31Aに支持されて前後に揺動可能なレバー部31Bからなっている。第2の操縦レバー31は、ルーバー板25を動作させるための操作を受け付ける。
【0024】
レバー部31Bになされた操作に応じて、ルーバー板25の回動角度が変化して、第2の囲い体23の後方開口部23Bから吹き出し空気の方向が上下方向に変化させられる。例えば、レバー部31Bを前後に倒すとそれに応じてルーバー板25が上下に回動する。このレバー部31Bへの操作は、上記レバー部29Bへ操作と同様に、直接ワイヤでルーバー板25に伝えられても良い。また、この操作によってフライ・バイ・ワイヤ方式でルーバー板25が動作させられてもよい。
【0025】
上述のように、ルーバー板25がルーバー板25の板面が鉛直方向に沿うまで回動させられると、後方開口部23Bが閉塞される。後方開口部23Bが閉塞状態になると、プロペラ19によって後方に送出された空気は第1の囲い体21の外側面21Sと第2の囲い体23の内側面23Sとの間を通って前方に向かって吹き出すことになる。
【0026】
計器装置33は、操縦席13の前方に配されており、操縦席13と対向する部分に計器盤(図示せず)や操作盤(図示せず)が設けられている装置である。例えば、操縦者は操縦席13から原動機の回転数等の動作情報等の情報を計器板から読み取ることが可能である。また、例えば、操縦者は、エアボート10に搭載された各種機器の操作を操作盤を通して行うことが可能である。
【0027】
[ルーバーの回動動作]
図3乃至5は、エアボート10の後部の第2の囲い体23及びその周辺の断面図であり、エアボート10の前後方向に沿った中心線を含む垂直な面で切断した断面図である。
図3乃至5においては、説明のため、船体11、プロペラ19、第1の囲い体21、第2の囲い体23、ルーバー板25からなるルーバーLVのみを示している。
図3乃至5には、プロペラ19が回転して後方に空気が吹き出された際の、第2の囲い体23内及び前方開口部23A及び後方開口部23B近傍における空気の流れが矢印で記載されている
【0028】
[ルーバーが上方傾斜状態の場合]
図3は、ルーバー板25が後方に向かって上方に傾いている際、すなわちルーバーLVが上方傾斜状態にあるエアボート10の断面図である。
図3から分かるように、上述のように、第2の囲い体23の後方開口部23Bは、第1の囲い体21の後方開口部21Bよりも後ろ側において後方に開口している。
【0029】
図に示しているように、ルーバーLVが上方傾斜状態にある場合、プロペラ19によって第1の囲い体21を介して第2の囲い体23に送り込まれた空気は、ルーバーLVを通過して後方開口部23Bから吹き出す。
【0030】
図3に示すように、ルーバーLVが上方傾斜状態にある際には、後方開口部23Bからは上方に向けて空気が吹き出す。従って、エアボート10の後ろから少し離れると、地上、すなわちエアボート10と同等の高さレベルにおいて、後方開口部23Bから吹き出された空気による風の力は非常に弱くなる。これにより、エアボート10の後ろに人が立っている場合等、エアボート10の後方に風を起こしたく無い場合において、エアボート10から吹き出される風によるエアボート10の後方に与える風の影響を低減させることが可能である。
【0031】
また、ルーバーLVが上方傾斜状態の場合、第1の囲い体21内から第2の囲い体23の後方開口部23Bに流れる空気の流れによって、開口部23Aから第1の囲い体21の外側面21Sと第2の囲い体23の内側面23Sとの間に空気が誘引される。言い換えれば、開口部23Aから第1の囲い体21の外側面21Sと第2の囲い体23の内側面23Sとの間を通って、後方開口部23Bからに出て行く空気の流れが形成される。
【0032】
この空気の流れが形成されることによって、プロペラ19によって第1の囲い体21の前方開口部21Aから送り込まれる空気に加えて、第2の囲い体23の前方開口部23Aから引き込まれる空気も合わせて後方開口部23Bから噴出させられる。よって、エアボート10の前方への推進力を、単にプロペラ19によって後方に風を吹き出させるよりも効率良く発生させることが可能となる。
【0033】
また、上述のように、第2の囲い体23は前方から後方に向かって窄んだ形状を有している。これにより、前方開口部23Aから流入した空気はその流速を上げて後方開口部23Bから吹き出される。従って、エアボート10においては、プロペラ19の回転数に対して高い推進効率が実現可能である
【0034】
[ルーバーが下方傾斜状態の場合]
図4は、ルーバー板25が後方に向かって下方に傾いている際、すなわちルーバーLVが下方傾斜状態にあるエアボート10の断面図である。図に示しているように、ルーバーLVが下方傾斜状態にある場合、プロペラ19によって第2の囲い体23に送り込まれた空気はルーバーLVを通過して後方開口部23Bから吹き出す。
【0035】
図4に示すように、ルーバーLVが下方傾斜状態にある際には、後方開口部23Bからは下方に向けて空気が吹き出す。従って、エアボート10の後ろの地面または水面に向かって後方開口部23Bから吹き出された空気が吹き付けることになる。従って、エアボート10の後部においては、上記空気の下方への吹き出しによって上方へ浮き上がる力が働く。
【0036】
例えば、エアボート10の前部が水上に有り、後部が中州等の地面の上にあり船体11の後部の船底がそこに引っ掛かっている等の状態、言い換えれば後部が物体に乗り上げている後部乗り上げ状態の際に、ルーバーLVを下方傾斜状態にすると、上記した浮き上がる力によって船底と地面との摩擦力が低下する。それにより、ラダー板27を左右に回動させてエアボート10の後部を左右に振るいわゆるダッキングが容易になり、上記後部乗り上げ状態からの脱出が容易になる。
【0037】
なお、ルーバーLVが下方傾斜状態の場合も、上方傾斜状態の場合と同様に、開口部23Aから第1の囲い体21の外側面21Sと第2の囲い体23の内側面23Sとの間を通って、後方開口部23Bからに出て行く空気の流れが形成される。
【0038】
この空気の流れが形成されることによって、プロペラ19によって第1の囲い体21の前方開口部21Aから送り込まれる空気に加えて、第2の囲い体23の前方開口部23Aから引き込まれる空気も合わせて後方開口部23Bから吹き出される。よって、エアボート10の前方への推進力を、単にプロペラ19によって後方に風を吹き出させるよりも効率良く発生させることが可能となる
【0039】
[ルーバーが閉塞状態の場合]
図5は、ルーバー板25の板面が鉛直方向に沿った状態である、すなわちルーバーLVが後方開口部23Bを塞いでいる閉塞状態にあるエアボート10の断面図である。図に示しているように、ルーバーLVが閉塞状態にある場合、プロペラ19によって第2の囲い体23に送り込まれた空気はルーバーLVを通過せずに前方開口部23Aから吹き出す。
【0040】
具体的には、ルーバーLVが後方開口部23Bを塞いでいる閉塞状態にある場合、プロペラ19によって送り込まれた空気は、ルーバーLVに達した後、前方に戻って第1の囲い体21の外側面21Sと第2の囲い体の内側面23Sとの間の空間を通って前方開口部23Aから吹き出す。
【0041】
このように、ルーバーLVが閉塞状態にある際には、プロペラ19によって前方開口部21Aから後方に向かって送り込まれた空気が、前方開口部23Aから前方に吹き出すことによって、エアボート10に後方への推力が働き、エアボート10が後進することができる。言い換えれば、エアボート10においては、プロペラ19の回転方向、すなわちプロペラ19の風の送り方向を後方のまま変更せずにエアボート10を後進させることが可能である。
【0042】
また、上述のように、ルーバーLVが閉塞状態にある場合、すなわちエアボート10の後進時に、空気は第2の囲い体23の前方開口部23Aの、第1の囲い体21の前方開口部21Aの外側の領域から吹き出す。よって、エアボート10の後進時に、操縦席13付近に前方に吹き出す空気が直接向得ことが無いので、前方開口部23Aから吹き出した空気が操縦者に直接当たることはない。
以下に実施例2のエアボート20について説明する。実施例2のエアボート20は、ラダー板35は以外の構成は、実施例1のエアボート10と同様であるので、ラダー板35以外の構成については説明を省略する。
具体的には、実施例2のエアボート20においては、右側ラダー板35R、中央ラダー板35C、左側ラダー板35Lが後方開口部23Bに設けられている。この3枚のラダー板35は、エアボート20の前進時には一体として左右に回動することでエアボート20の操舵が行われる。その一方で、エアボート20の後進時において、この3枚のラダー板35は、その各々の板面が後方開口部23Bの開口面に沿うように回動し、後方開口部23Bを閉塞させる。これによって、第2の囲い体23の内部において、上記実施例1におけるルーバーLVが閉塞状態にある状態と同様の状態を作り出すことができ、前方開口部23Aから前方に空気を吹き出すことによるエアボート20の後進を実現可能である。
なお、このようにラダー板35によって後方開口部23Bを閉塞できる場合には、ルーバー板25がなくても、実施例1と同様のプロペラ19の回転方向を変えずしての後進は実現可能である。よって、プロペラ19の回転方向を変えずしての後進のみ必等であり、実施例1のようなルーバー機能が不要であれば、実施例2のエアボート20においてルーバー板25は不要である。