(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088211
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】回路基板用電気コネクタ及び電気コネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
H01R 12/72 20110101AFI20220607BHJP
H01R 13/633 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
H01R12/72
H01R13/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200524
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】北川 陵平
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FB02
5E021FC08
5E021FC31
5E223AB23
5E223AC21
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB22
5E223CB24
5E223CB29
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB11
5E223EA03
5E223EA13
(57)【要約】
【課題】相手コネクタが傾斜することを許容しつつ、相手コネクタの傾斜を所定角より大きくなることを阻止してハウジングの損傷を生じにくくする回路基板用電気コネクタ及びこれと相手コネクタとのコネクタ組立体を提供することを課題とする。
【解決手段】ハウジングは、端子配列方向Xで端子配列壁21Aの範囲内に、コネクタ挿抜方向Zで相手コネクタの嵌合最大深さ位置を定める挿抜方向規制部21Cを有し、端子配列方向での端子配列壁の範囲外で、嵌合最大深さ位置にある相手コネクタに対しコネクタ挿抜方向Zで相手コネクタの対応部分と間隔をもつ傾斜規制部12Aを有し、相手コネクタの抜出時に、端子配列方向における相手コネクタの一端側部分がコネクタ挿抜方向で他端側部分よりも大きくもち上がり相手コネクタが傾斜したとき、相手コネクタの他端側部分が傾斜規制部にコネクタ挿抜方向で当接して相手コネクタの所定角より大きい傾斜を規制する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に取り付けられ該回路基板の実装面に対して直角な方向をコネクタ挿抜方向として相手コネクタが挿抜される電気コネクタであって、
上記回路基板の実装面に半田実装される接続部及び相手コネクタに接続される接触部が形成された端子と、上記回路基板の実装面に平行な方向を端子配列方向として上記端子を配列保持するハウジングとを有し、上記ハウジングが上記端子の接触部を配列保持する端子配列壁を有する回路基板用電気コネクタにおいて、
上記ハウジングは、端子配列方向での端子配列壁の範囲内に設けられコネクタ挿抜方向で相手コネクタが当接し該相手コネクタの嵌合最大深さ位置を定める挿抜方向規制部を有し、
上記ハウジングもしくは該ハウジングに取り付けられた部材は、端子配列方向での端子配列壁の範囲外で、嵌合最大深さ位置にある相手コネクタに対しコネクタ挿抜方向で該相手コネクタの対応部分と間隔をもって位置する傾斜規制部を有し、
上記傾斜規制部は端子配列方向で両端側のそれぞれに位置する一端側傾斜規制部と他端側傾斜規制部とを有し、
上記相手コネクタの抜出時に、端子配列方向における相手コネクタの一端側部分がコネクタ挿抜方向で他端側部分よりも大きく上記一端側傾斜規制部からもち上がるように相手コネクタが傾斜したとき、該相手コネクタの他端側部分が上記他端側傾斜規制部にコネクタ挿抜方向で当接して相手コネクタの所定角より大きい傾斜を規制することを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【請求項2】
上記ハウジングは、互いに平行な二つの上記端子配列壁と、これらの両端部のそれぞれを結ぶ端壁とを有し、二つの上記端子配列壁と二つの上記端壁とで周壁を形成し、該周壁内に相手コネクタを受け入れる受入空間を形成し、端壁の内壁面は二つの端壁間距離がコネクタ挿抜方向で相手コネクタの方へ向け増大する傾斜面をなし、該傾斜面で相手コネクタが上記傾斜規制部に当接するまで傾斜することを許容することとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項3】
上記傾斜規制部は、端子配列方向で相手コネクタよりも外側にまで及んで位置していることとする請求項1又は請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項4】
上記傾斜規制部は、上記ハウジングに取り付けられた部材としての金具に形成されていることとする請求項1ないし請求項3のうちの1つに記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちの1つに記載の回路基板用電気コネクタと、これに嵌合接続される相手コネクタとを有し、相手コネクタは、コネクタ挿抜方向で上記回路基板用電気コネクタの傾斜規制部と対向する傾斜被規制部を有していることを特徴とする電気コネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用電気コネクタ及び電気コネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に取り付けられ該回路基板の実装面に対して直角な方向をコネクタ挿抜方向として相手コネクタが挿抜される回路基板用電気コネクタとして、例えば、特許文献1に開示されている形式のものが知られている。特許文献1では、回路基板用電気コネクタとしての第一コネクタに相手コネクタとしての第二コネクタが接続される。第一コネクタは、回路基板の実装面に半田実装される接続部及び第二コネクタに接続される接触部が形成された端子と、回路基板の実装面に平行な方向を長手方向として延び該長手方向を端子配列方向として端子を配列保持するハウジングとを有し、ハウジングが端子の接触部を配列保持する島状の端子配列壁(特許文献1では「島状部」)を有している。
【0003】
第一コネクタのハウジングは、島状の端子配列壁の周囲に第一周壁部を有し、この第一周壁部と端子配列壁との間に環状空間を形成している。この環状空間には、第二コネクタの筒状の第二周壁部が下方へ向け進入する。端子配列壁は、端子配列方向での端面の下半分に、下方に向け端子配列方向で内側へ傾斜して形成された凹部を有している。該凹部は、第二コネクタの抜出時に、第二コネクタの第二周壁部が端子配列方向での一端側が他端側よりも上方(第二コネクタの抜出方向)へ位置するように傾斜することを許容している。すなわち、第二コネクタの第二周壁部における他端側の端壁部分の下部が、第二コネクタが上述のように傾斜した際、上記凹部へ収められるようになっている。第二コネクタの第二周壁部の他端側における端壁の下端は上記環状空間の底面に当接しており、上述の傾斜の際の支点として作用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コネクタは、通常、コネクタ長手方向での小型化の要請を受けていることが多く、特許文献1においても、第一コネクタの第一周壁部及び第二コネクタの第二周壁部における端壁が薄く作られている。したがって、第二コネクタが、その抜出時に、第一コネクタの端子配列壁に傾斜して形成された凹部に当接するまで傾斜したときには、第二コネクタの端壁の下部の内面に第一コネクタの端子配列壁の端面(上記凹部の内壁面)から大きな力をコネクタ長手方向(端子配列方向)、すなわち端壁の厚み方向に受けることになる。また、第二コネクタの傾斜角が最大になる前に第一コネクタの第一周壁部の端壁の内面が第二コネクタの端壁の外面から大きな力をコネクタ長手方向に受けることもある。これらのコネクタ長手方向の力は薄い端壁に対して曲げ応力を生じ、その結果、端壁が破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、相手コネクタが傾斜することを許容しつつ、相手コネクタの傾斜が所定角より大きくとなることを阻止してハウジングの損傷を生じにくくする回路基板用電気コネクタ及びこれと相手コネクタとを有するコネクタ組立体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上述の課題は、次の回路基板用電気コネクタ、これと相手コネクタとを有する電気コネクタ組立体により解決される。
【0008】
<回路基板用電気コネクタ>
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板に取り付けられ該回路基板の実装面に対して直角な方向をコネクタ挿抜方向として相手コネクタが挿抜される電気コネクタであって、上記回路基板の実装面に半田実装される接続部及び相手コネクタに接続される接触部が形成された端子と、上記回路基板の実装面に平行な方向を端子配列方向として上記端子を配列保持するハウジングとを有し、上記ハウジングが上記端子の接触部を配列保持する端子配列壁を有する。
【0009】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記ハウジングは、端子配列方向での端子配列壁の範囲内に設けられコネクタ挿抜方向で相手コネクタが当接し該相手コネクタの嵌合最大深さ位置を定める挿抜方向規制部を有し、上記ハウジングもしくは該ハウジングに取り付けられた部材は、端子配列方向での端子配列壁の範囲外で、嵌合最大深さ位置にある相手コネクタに対しコネクタ挿抜方向で該相手コネクタの対応部分と間隔をもって位置する傾斜規制部を有し、上記傾斜規制部は端子配列方向で両端側のそれぞれに位置する一端側傾斜規制部と他端側傾斜規制部とを有し、上記相手コネクタの抜出時に、端子配列方向における相手コネクタの一端側部分がコネクタ挿抜方向で他端側部分よりも大きく上記一端側傾斜規制部からもち上がるように相手コネクタが傾斜したとき、該相手コネクタの他端側部分が上記他端側傾斜規制部にコネクタ挿抜方向で当接して相手コネクタの所定角より大きい傾斜を規制することを特徴としている。
【0010】
このような構成の回路基板用電気コネクタにあっては、相手コネクタが正規位置そして正規姿勢で嵌合されたときには、相手コネクタは、回路基板に対して傾斜することなく直角方向に嵌合されており、上記挿抜方向規制部に対し相手コネクタが当接した嵌合最大深さ位置にある。この状態で、回路基板電気コネクタの端子配列方向の両端に位置する傾斜規制部、すなわち、一端側傾斜規制部及び他端側傾斜規制部と相手コネクタの対応部分との間には、コネクタ挿抜方向で間隔が形成されている。
【0011】
相手コネクタの抜出時には、この相手コネクタを回路基板に対し直角な方向に引き上げるのが望ましいが、実際には、相手コネクタを、上記端子配列方向での一端側部分が他端側部分よりももち上がるように傾斜をさせながら引き上げることが多く、こうした操作が抜出を容易とする。
【0012】
上述のように相手コネクタを傾斜させてから引き上げて抜出する際、本発明では、相手コネクタは、この相手コネクタの対応部分と回路基板用電気コネクタの傾斜規制部との間のコネクタ挿抜方向での間隔により傾斜が許容され、その最大傾斜量は、相手コネクタが傾斜規制部に当接することで規制される。すなわち、相手コネクタの抜出時に、端子配列方向における相手コネクタの一端側部分がコネクタ挿抜方向で他端側部分よりも大きく上記一端側傾斜規制部からもち上がるように相手コネクタが傾斜したとき、該相手コネクタの他端側部分が上記他端側傾斜規制部にコネクタ挿抜方向で当接して相手コネクタの所定角より大きい傾斜が規制される。
【0013】
このような傾斜規制部に対する相手コネクタの当接力が生じる方向はコネクタ挿抜方向である。回路基板用電気コネクタにあっては、相手コネクタと嵌合するハウジングの端子配列方向における端部は、通常、端子配列方向での厚さに比べてコネクタ挿抜方向で厚さの方が大きいので強度が高い。したがって、本発明では、コネクタ挿抜方向での当接力によるハウジングの傾斜規制部の損傷が生じにくくなる。
【0014】
仮に、回路基板用電気コネクタと相手コネクタとが端子配列方向の端部に同方向で対向する部分を有している場合には、傾斜した相手コネクタの端部が回路基板用電気コネクタの端部に対して端子配列方向で当接する前に、上記傾斜規制部により相手コネクタの所定角より大きい傾斜が阻止されるように、端子配列方向にて回路基板用電気コネクタの端部と相手コネクタの端部との間に隙間を設定しておくことで、これらの端部同士が端子配列方向で当接することを回避できる。
【0015】
本発明において、上記ハウジングは、互いに平行な二つの上記端子配列壁と、これらの両端部のそれぞれを結ぶ端壁とを有し、二つの上記端子配列壁と二つの上記端壁とで周壁を形成し、該周壁内に相手コネクタを受け入れる受入空間を形成し、端壁の内壁面は二つの端壁間距離がコネクタ挿抜方向で相手コネクタの方へ向け増大する傾斜面をなし、該傾斜面で相手コネクタが上記傾斜規制部に当接するまで傾斜することを許容するようにすることができる。
【0016】
このように回路基板用コネクタのハウジングが端壁を有していても、端壁の内壁面には、二つの端壁間距離がコネクタ挿抜方向で相手コネクタの方へ向け増大する傾斜面が形成されているので、相手コネクタが傾斜規制部に当接するまで該相手コネクタの傾斜を上記傾斜面で許容することができる。したがって、回路基板用コネクタのハウジングに端壁を設けることは、相手コネクタの傾斜に対し何ら支障とならない。
【0017】
本発明において、上記傾斜規制部は、端子配列方向で相手コネクタよりも外側にまで及んで位置しているようにすることが好ましい。こうすることで、相手コネクタが傾斜した際、端子配列方向で上記傾斜規制部の範囲内に、相手コネクタの一端側部分及び他端側部分がそれぞれ位置しやすくなり、相手コネクタの傾斜が大きくなったとき、上記傾斜規制部によって相手コネクタの傾斜を良好に規制できる。
【0018】
本発明において、上記傾斜規制部は、上記ハウジングに取り付けられた部材としての金具に形成されていてもよい。このように傾斜規制部を金具に形成することより、ハウジングの一般的な材料である樹脂に傾斜規制部を形成する場合と比べて、傾斜規制部の強度が高くなり、相手コネクタの傾斜をさらに良好に規制できる。
【0019】
<コネクタ組立体>
本発明に係る電気コネクタ組立体は、上述の回路基板用電気コネクタと、これに嵌合接続される相手コネクタとを有し、相手コネクタは、コネクタ挿抜方向で上記回路基板用電気コネクタの傾斜規制部と対向する傾斜被規制部を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、相手コネクタを傾斜させてから引き上げて抜出する際、相手コネクタは、この相手コネクタと回路基板用電気コネクタの傾斜規制部との間に形成されるコネクタ挿抜方向での間隔により傾斜が許容され、その最大傾斜量は、相手コネクタが傾斜規制部に当接することで規制される。すなわち、傾斜規制部に対する相手コネクタの当接力が生じる方向はコネクタ挿抜方向である。回路基板用電気コネクタにあっては、相手コネクタと嵌合するハウジングの端子配列方向における端部は、通常、端子配列方向での厚さに比べてコネクタ挿抜方向で厚さの方が大きいので強度が高い。したがって、本発明では、コネクタ挿抜方向での当接力によるハウジングの傾斜規制部の損傷が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態としての回路基板用電気コネクタ(以下、「コネクタ」)と相手コネクタの嵌合前における外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1のコネクタと相手コネクタのY-Z面での断面図であり、端子位置での縦断面図である。
【
図3】(A)は、
図1のコネクタと相手コネクタの複数の端子のうちのそれぞれ一組を示す斜視図であり、(B)は、
図1のコネクタにおける一方の連結部材を示す斜視図である。
【
図4】
図1のコネクタと相手コネクタについて、相手コネクタが傾斜姿勢で抜出されている途中における斜視図である。
【
図5】
図1のコネクタと相手コネクタのX-Z面での断面図であり、(A)は相手コネクタが正規位置での嵌合状態、(B)は相手コネクタが傾斜姿勢で抜出されている途中における、
図4に相当する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のコネクタIと相手コネクタIIの嵌合前における外観を示す斜視図である。
図2は、
図1のコネクタIと相手コネクタIIを示す端子位置での断面図である。
図3(A)は、
図1のコネクタI及び相手コネクタIIのY-Z面での断面図であり、複数の端子のうちのそれぞれ一組を示す斜視図である。
図3(B)は、
図1のコネクタにおける一方の連結部材を示す斜視図である。
【0024】
図1において、コネクタI及び相手コネクタIIは、それぞれ異なる回路基板(図示せず)に取り付けられる回路基板用電気コネクタであり、回路基板の面同士が互いに平行をなした状態で嵌合接続される。本実施形態では、コネクタIは、雌型端子(後述の端子30)を有する、いわゆるレセプタクルコネクタとして構成されており、コネクタIIは、雄型端子(後述の相手端子60)を有する、いわゆるプラグコネクタとして構成されている。本実施形態では、方向性を理解しやすくするために、回路基板の面に平行な端子配列方向をX(一方をX1、他方をX2)、回路基板の面に平行で端子配列方向Xに対して直角なコネクタ幅方向をY(一方をY1、他方をY2)、XとYの両方に対して直角な上下方向をZ(上方をZ1、下方をZ2)として設定してある。
【0025】
回路基板(図示せず)上に取り付けられるコネクタIには、上下方向Zをコネクタ挿抜方向として、相手コネクタIIが上方Z1から、すなわち下方Z2へ向け嵌合接続される。
【0026】
以下、コネクタI、相手コネクタIIの順に構成を説明する。
【0027】
図1そして
図2に見られるように、本実施形態のコネクタIは、樹脂等の電気絶縁材料で作られたハウジング(後述の固定ハウジング10及び可動ハウジング20)と、金属製の端子30と、金属製の連結部材40とを有している。コネクタIは、全体として端子配列方向Xを長手方向とする略直方体外形を有し、回路基板(図示せず)上に配されて、端子30及び連結部材40がそれぞれ回路基板の対応部に半田接続される。本実施形態では、コネクタIは端子配列方向X及びコネクタ幅方向Yのいずれの方向においても対称に作られている。
【0028】
ハウジングは、端子30を及び連結部材40介して回路基板に固定される二つの固定ハウジング10と、固定ハウジング10に対して可動な可動ハウジング20とを有している。固定ハウジング10と可動ハウジング20は、互いに別部材として作られている。固定ハウジング10は、可動ハウジング20に対して、コネクタ幅方向Yでの両側、すなわちY1側及びY2側に一つずつ設けられている。これらの固定ハウジング10は、互いに別部材をなし、それぞれコネクタ幅方向Yで可動ハウジング20から離間して位置し、端子配列方向Xに延びている。
【0029】
それぞれの固定ハウジング10は、
図1に見られるように、端子配列方向Xで端子30の配列範囲にわたって延びる比較的細い棒状の中間部11と、端子配列方向Xでの中間部11の両側に位置し中間部11よりも上下方向Zで高く形成された被連結部12とを有している。つまり、それぞれの被連結部12は、端子配列方向Xでの固定ハウジング10の端部をなし、その上面が中間部11の上面よりも上方に位置している。
【0030】
中間部11は、
図2に見られるように、端子配列方向Xに対して直角な断面が略クランク状をなし、コネクタ幅方向Yで内方に位置し上方Z1に向け突出した上部11Aとコネクタ幅方向Yで外方に位置し下方Z2に向け突出した下部11Bとがつながった形状をなしている。中間部11の上部11Aと下部11Bは、端子30の一端側部分(図にて下端側部分)をなす後述の固定側連結部34を一体モールド成形(インサート成形)により保持する固定側保持部をなしている。
【0031】
被連結部12は、端子配列方向Xでの寸法に比べて上下方向Zでの寸法が大きくなっている。被連結部12の上部は、相手コネクタIIの所定角より大きい傾斜を規制するための傾斜規制部12Aを形成する。傾斜規制部12Aは、後述するように、相手コネクタIIの抜出時にて、コネクタ幅方向Yに延びるY軸線まわりでの回転を伴って相手コネクタIIが傾斜する際、傾斜規制部12Aの平坦な上面で相手コネクタIIに当接することにより、相手コネクタIIの所定角より大きい傾斜を規制するようになっている(
図4及び
図5(B)参照)。被連結部12ひいては傾斜規制部12Aは、正規の嵌合位置でのコネクタ嵌合状態(
図5(A)参照)にて、端子配列方向Xで相手コネクタIIの端壁50Bの外端面(端子配列方向Xに対して直角な面)よりも外側に及んで位置している。本実施形態では、必要に応じて、端子配列方向XでX1側に位置する傾斜規制部12Aを「一端側傾斜規制部12A」、X2側に位置する傾斜規制部12Aを「他端側傾斜規制部12A」という。両者を区別する必要がない場合には、単に「傾斜規制部12A」と総称する。
【0032】
可動ハウジング20は、
図1及び
図2に見られるごとく、上半部をなす嵌合部21と下半部をなす支柱部22とを有している。
【0033】
嵌合部21は、
図1に見られるように、上方Z1に開口した有底角筒状をなしていて、端子配列方向Xに延びる二つの端子配列壁としての側壁21Aと、コネクタ幅方向Yに延び二つの側壁21Aの両端部のそれぞれを結ぶ二つの端壁21Bと、二つの側壁21A及び二つの端壁21Bによって形成される周壁の下部を閉塞する底壁21C(
図2参照)とを有している。嵌合部21は、
図2に見られるように、側壁21A及び底壁21Cで端子30を保持している。上記周壁及び底壁21Cによって囲まれ上方へ開口する空間は、相手コネクタIIにおける対応部としての後述の中央壁50Dを上方Z1から受け入れるための受入空間23をなしている。
【0034】
端壁21Bは、
図5(A)に見られるように、その内面が上方Z1に向け端子配列方向Xで外側に傾斜しており、両方の端壁21Bの内面同士間の距離(端子配列方向Xでの距離)が上方に向かうにつれて増大するような傾斜面21B-1を形成している。端壁21Bは、後述するように、相手コネクタIIが固定ハウジング10の傾斜規制部12Aに当接するまで傾斜することを傾斜面21B-1で許容する。
【0035】
底壁21Cは、端子配列方向Xで側壁21Aと同範囲にわたって位置しており、上面が平坦面をなしている。底壁21Cは、コネクタ嵌合時にて、上下方向Zで相手コネクタIIが上方Z1から当接し相手コネクタIIの嵌合最大深さ位置を定める挿抜方向規制部として機能する。具体的には、相手コネクタIIが上下方向Zに対して傾くことなくコネクタIに嵌合され、相手コネクタIIの後述の中央壁50Dが受入空間23に上方から嵌入した際、底壁21Cの上面に中央壁50Dの下端面が接面して当接することで、相手コネクタIIの嵌合最大深さが定められることとなる。
【0036】
支柱部22は、底壁21Cの下面から下方Z2へ延びる縦中央壁部22A及び縦端壁部22Bと、縦端壁部22Bの下端部から端子配列方向Xでの外方へ向けて延びる可動被規制部22Cとを有している。支柱部22は、縦中央壁部22A及び縦端壁部22Bの下端は回路基板(図示せず)の面の近傍に位置しているが、該回路基板に対しては固定されておらず、外力を受けた際には、端子30の弾性変形により、可動ハウジング20全体が端子配列方向X、コネクタ幅方向Y及び上下方向Zに可動となっている。
【0037】
縦中央壁部22Aは、コネクタ幅方向Yでの底壁21Cの中央位置で、該底壁21Cの下面から下方Z2に延びるとともに端子配列方向Xで受入空間23の全長にわたって延びている。縦端壁部22Bは、端子配列方向Xでの嵌合部21の端壁21Bと同位置、換言すると、同方向Xでの縦中央壁部22Aの両端位置で縦中央壁部22Aと一体に設けられ、コネクタ幅方向Yで端壁21Bと同範囲にわたって延びている。
【0038】
可動被規制部22Cは、既述したように縦端壁部22Bの下端部から端子配列方向Xで外方へ延出しており、
図1及び
図5(A)に見られるように、後述する連結部材40の中間架橋部41の下方に位置している。可動被規制部22Cは、その上面が中間架橋部41の下面に対して接面した状態で対向している(
図5(A)参照)。この結果、上方Z1へ向けた可動ハウジング20の移動は、中間架橋部41に対して可動被規制部22Cが下方から当接することにより規制されている。また、可動被規制部22Cは、中間架橋部41に対して上下方向Zで間隔をもって位置していてもよい。その場合、可動ハウジング20が上方Z1に向けた移動は、上記間隔の寸法だけ許容されることとなる。
【0039】
底壁21C、縦中央壁部22A及び縦端壁部22Bで囲まれた空間は、
図2に見られるように、下方Z2及びコネクタ幅方向Yでの外方へ向けて開放され、端子30の後述の内直状部33A及び中間直状部33Cを収容する側方開放空間24を形成している。
【0040】
端子30は、
図2及び
図3(A)に見られるように、金属平帯状片をその板厚方向に屈曲して作られており、板厚方向に対し直角な方向での帯幅を端子幅としている。この端子30は、
図3(A)に見られるように、後述の接触部32の端子幅が他部の端子幅よりも若干広くなっており、該他部はその全長にわたって端子幅がほぼ等幅となっている。
図2に見られるように、コネクタIを端子配列方向Xに見たとき、端子30は、下方Z2側に位置する一端部に形成された接続部31と、上方Z1側に位置する他端部に形成された接触部32と、接続部31と接触部32との間で略横S字状に延びる弾性部33と、接続部31と弾性部33とを連結する固定側連結部34と、接触部32と弾性部33とを連結する可動側連結部35とを有している(
図3(A)も参照)。端子30は、コネクタ幅方向Yで対称をなすように対をなして設けられていて、この対が端子配列方向Xに複数配列されている。
【0041】
接続部31は、
図2に示されるように、固定ハウジング10の中間部11の底面から突出し、該底面に沿ってコネクタ幅方向Yで外側へ向け延びている。接続部31は、コネクタIが回路基板(図示せず)の上面に配置された状態で、回路基板の対応回路部に半田接続される。固定側連結部34は、接続部31のコネクタ幅方向Yでの内端から上方Z1側でクランク状に屈曲されて延びており、固定ハウジング10の中間部11に一体モールド成形により保持されている。固定側連結部34の一部の下面は、一体モールド成形の際に金型で支えられるために露呈している。
【0042】
接触部32は、
図2に示されるように、可動ハウジング20の側壁21Aの内側面に沿って直状に延び、その上端側部分がコネクタ幅方向Yで外側に向け屈曲された逆U字状の上端曲部32Aを形成している。上端曲部32Aは、その先端部が側壁21A内に完全に埋設されており、上記先端部以外の他部は上面のみが露呈した状態で側壁21A内に埋設されている。上端曲部32Aの上面、特にコネクタ幅方向Yで内側となる内側上面は、側壁21Aの上面に対し僅かに突出する程度で側壁21Aとほぼ同一レベルの面を形成し、相手コネクタIIの案内導入面をなしている。
【0043】
接触部32の直状部分、すなわち側壁21Aの内側面に沿って延びる部分は、受入空間23側に向く内面のみが露呈した状態で側壁21A内に埋設されている。上記直状部分の内面は、側壁21Aの内側面よりも若干突出して露呈していて相手コネクタIIの相手端子60と接触する接触面を形成している。
【0044】
可動側連結部35は、接触部32の下端から下方Z2側でクランク状に屈曲されて延びており、可動ハウジング20の底壁21Cに一体モールド成形により保持されている。可動側連結部35の一部の下面は、一体モールド成形の際に金型で支えられるために露呈している。
【0045】
弾性部33は、
図2に見られるように、端子配列方向Xに見て略横S字状をなすように屈曲した形状をなしており、固定側連結部34の上端と可動側連結部35の下端とを連結している。弾性部33は、コネクタ幅方向Yで内側に位置する内直状部33Aと、外側に位置する外直状部33Bと、それらの中間に位置する中間直状部33Cと、内直状部33Aと中間直状部33Cとをそれらの下端で連結する下端曲部33Dと、中間直状部33Cと外直状部33Bとをそれらの上端で連結する上端曲部33Eとを有している。
【0046】
このような形状の弾性部33は、端子30が外力を受けたときに、端子配列方向X、コネクタ幅方向Y及び上下方向Zで弾性部33全体としての弾性変位(弾性変形)が可能となっている。したがって、可動ハウジング20が、相手コネクタIIと嵌合したときに固定ハウジング10に対して、例えばコネクタ幅方向Yで正規の嵌合位置に対してずれを生じて位置すると、コネクタ幅方向Yでの弾性部33の弾性変位により上記ずれが吸収され、いわゆるフローティングがなされる。このとき、可動ハウジング20のずれが、例えば、コネクタ幅方向YでY1側である場合、Y1側に位置する端子30の弾性部33がコネクタ幅方向Yで圧縮されるように弾性変位し、Y2側に位置する端子30の弾性部33が同方向Yで拡大されるようにそれぞれ弾性変位を生ずる。
【0047】
連結部材40は、
図3(B)に見られるように、金属帯状部材を板厚方向に屈曲した形態をなしている。
図3(B)に示されているのは、コネクタIに設けられている二つの連結部材40のうち端子配列方向XでのX1側に位置する連結部材40である。X2側に位置する連結部材40は、
図3(B)に示される連結部材40に対して端子配列方向Xで対称な姿勢で設けられている。
【0048】
連結部材40は、端子配列方向Xにて可動ハウジング20の下部の外側に設けられており、回路基板の面に平行でコネクタ幅方向Yに延びる中間架橋部41と、中間架橋部41のコネクタ幅方向Yでの両端で屈曲され下方Z2に向けて延びる脚状をなす被保持部42と、被保持部42の下端で屈曲されコネクタ幅方向Yで外側へ向けて延びる被固定部43とを有している。
【0049】
中間架橋部41は、その板厚方向が上下方向Zとなるような姿勢で設けられており、コネクタ幅方向Yにて二つの固定ハウジング10の被連結部12同士の間にわたる範囲で延びている。また、中間架橋部41は、可動ハウジング20の可動被規制部22Cの直上にて可動被規制部22Cに対して上方から当接可能に位置しており、可動被規制部22Cひいては可動ハウジング20の上方Z1への移動を規制する規制部としての機能を有している。
【0050】
被保持部42は、固定ハウジング10の被連結部12内で一体モールド成形により埋設保持されている。被固定部43は、固定ハウジング10の被連結部12の底面から突出し、該底面に沿って延びている。被固定部43は、コネクタIが回路基板(図示せず)の上面に配置された状態で、回路基板の対応部に半田接続により固定される。
【0051】
連結部材40が二つの固定ハウジング10の被連結部12に保持されることで、これらの固定ハウジング10同士が連結部材40によって連結される。本実施形態では、コネクタIを上下方向Zで見たときに、固定ハウジング10と連結部材40とが相俟って、可動ハウジング20の下部をとり囲むような四角枠状をなす。この連結部材40を用いて、分離して位置する二つの固定ハウジング10を連結する利点としては、二つの固定ハウジング10の回路基板への固定の強化に加え、コネクタIの端子配列方向Xでの小型化と固定ハウジング10の製造容易化とが挙げられる。さらには、既述したように、連結部材40の中間架橋部41が可動ハウジング20の上方Z1への移動を規制する規制部として機能する際、連結部材40が金属製であるが故に、強度が高く規制の能力が大きくなることも利点として挙げられる。
【0052】
相手コネクタIIは、
図1に見られるように、樹脂等の電気絶縁材料で作られた相手ハウジング50と、相手ハウジング50により保持された金属板製の相手端子60とを有している。
図1では、相手コネクタIIは下方Z2に向けコネクタIへ嵌合接続される際の姿勢で示されており、回路基板(図示されず)に取り付けられる底面側が表われている。したがって、相手コネクタIIの嵌合側は、下方Z2に向いているため、
図1には表われていない。
【0053】
相手ハウジング50は、
図1に見られるように、全体として、端子配列方向Xを長手方向とする直方体外形をなしている。相手ハウジング50は、端子配列方向Xに延びる二つの側壁50Aと、コネクタ幅方向Yに延び二つの側壁50Aの両端部のそれぞれを結ぶ二つの端壁50Bと、二つの側壁50A及び二つの端壁50Bによって形成される周壁の
図1での上部を閉塞する底壁50Cと、上記周壁内で底壁50Cから下方Z2へ延びる中央壁50D(
図2及び
図5(A),(B)参照)とを有している。中央壁50Dは、コネクタ幅方向Yの中央位置で端子配列方向Xに延びる板状をなしている。上記周壁、底壁50C及び中央壁50Dによって囲まれて
図1での下方Z2へ開口する環状空間は、コネクタIの嵌合部21の周壁を下方から受け入れるための相手側受入空間51をなしている(
図2及び
図5(A),(B)参照)。
【0054】
端壁50Bは、端子配列方向Xでの寸法に比べて上下方向Zでの寸法が大きくなっている。
図1に見られるように、端壁50Bの下端部は、側壁50Aの下端よりも下方Z2へ突出しており、傾斜被規制部50B-1を形成している(
図5(A),(B)も参照)。後述するように、傾斜被規制部50B-1は、コネクタ抜出時に、相手コネクタIIが上下方向Zに対して傾いたとき、すなわち、コネクタ幅方向Yの軸線まわりに回転する方向に傾いたとき、コネクタIの傾斜規制部12Aの上面に上方Z1から当接し、所定角より大きい傾斜の規制を受けるようになっている(
図4,
図5(B)参照)。本実施形態では、必要に応じて、端子配列方向XでX1側に位置する傾斜被規制部50B-1を「一端側傾斜被規制部50B-1」、X2側に位置する傾斜被規制部50B-1を「他端側傾斜被規制部50B-1」という。両者を区別する必要がない場合には、単に「傾斜被規制部50B-1」と総称する。
【0055】
中央壁50Dの下端部は挿抜方向被規制部50D-1を形成している。挿抜方向被規制部50D-1は、
図5(A)に見られるように、相手コネクタIIが上下方向Zに対して傾くことなく下方Z2へ向けてコネクタIとの正規の嵌合位置までもたらされたきに、コネクタIの挿抜方向規制部としての底壁21Cに当接する。その結果、挿抜方向被規制部50D-1の下面が底壁21Cの上面に接面し、相手コネクタIIの嵌合最大深さ位置が定められる。
【0056】
相手ハウジング50は、コネクタIとの正規の嵌合位置(
図5(A)参照)にあるとき、既述したコネクタIのハウジングに対し、端子配列方向X及び上下方向Zにて、次の(1)ないし(3)のごとくの寸法関係を有している。
【0057】
(1)相手コネクタIIの相手ハウジング50は、
図5(A)に見られるように、端子配列方向Xでの両側の端壁50Bの外面同士間距離L2が、コネクタIの固定ハウジング10の端子配列方向Xでの両端における被連結部12の外端同士間距離L1よりも小さく、相手ハウジング50の端壁50Bは端子配列方向Xで被連結部12の範囲にある。すなわち、端子配列方向Xにて、端壁50Bの下端部をなす傾斜被規制部50B-1が、被連結部12の上部をなす傾斜規制部12Aの範囲にある。
【0058】
(2)相手コネクタIIの相手ハウジング50における端壁50Bは、
図5(A)に見られるように、中央壁50Dの挿抜方向被規制部50D-1よりも下方Z2へ距離h1だけ突出している。換言すると、挿抜方向被規制部50D-1が端壁50Bの下端よりも上方Z1へ距離h1だけ没している。また、端壁50Bの傾斜被規制部50B-1が、上下方向ZでコネクタIの固定ハウジング10の被連結部12の傾斜規制部12Aとの間に間隔h2を形成している。
【0059】
(3)相手コネクタIIの相手ハウジング50における相手側受入空間51の底面(
図5(A)にて上面)は、上下方向ZでコネクタIの可動ハウジング20の端壁21Bとの間に間隔h3を形成している。
【0060】
相手ハウジング50には、
図2に見られるように、後述する相手端子60を収容する端子溝52が形成されている。後述するように、相手端子60は、金属板の板面を板厚方向に打ち抜いて作られており、板面が
図2の紙面(YZ面)に平行となる姿勢で端子溝52に収容される。
【0061】
端子溝52は、
図2に見られるように、外収容溝52Aと、圧入溝52Bと、内収容溝52Cとを有している。外収容溝52Aは、上下方向Zで側壁50Aの中間位置から底壁50Cの底面(
図2での上面)にわたる範囲でコネクタ幅方向Yでの内側及び上方Z1に開放されて形成されている。圧入溝52Bは、
図2での外収容溝52Aよりも下方Z2にて、側壁50Aを上下方向Zに貫通する孔部として形成されている。内収容溝52Cは、上下方向Zで中央壁50Dの下端寄り位置から底壁50Cの底面(
図2での上面)にわたる範囲でコネクタ幅方向Yでの外側及び上方Z1に開放されて形成されている。端子溝52は、
図2の紙面に直角な方向(端子配列方向X)での溝幅が、相手端子60の板厚にほぼ等しくなっている。
【0062】
相手端子60は、既述のごとく、金属板をその平坦な板面を維持しつつ板厚方向(板面に対して直角な方向)に打ち抜くことにより作られている(
図3をも参照)。相手端子60は、
図2に示されるように、上下方向Zに延びる直状の固定腕部61と、上下方向Zでの固定腕部61の中間位置からコネクタ幅方向Yでの内側へ向けて延びる延出腕部62と、延出腕部62から屈曲されて下方Z2へ延びる接触腕部63と、固定腕部61の上端部からコネクタ幅方向Yでの外側へ向けて延びる接続部64とを有している。
【0063】
固定腕部61は、
図2に見られるように、上半部が外収容溝52A内に収容されているとともに、下半部が圧入溝52B内で圧入により保持されている。固定腕部61の下半部には、その側縁に圧入突起61Aが形成されており、上記下半部が圧入溝52Bへ上方から所定位置まで圧入されたときに、圧入突起61Aが圧入溝52Bの内壁面に喰い込むことで固定され、その結果、相手端子60の抜けが防止されている。
【0064】
接触腕部63は、後述の接触部63Aを除いて内収容溝52C内に収容されている。本実施形態では、接触腕部63は、その板厚方向(端子配列方向X)で内収容溝52Cの内壁面との間に若干の隙間をもって位置しており、コネクタ幅方向Yでの弾性変位が許容されている。接触腕部63の下端部には、コネクタ幅方向Yで外側に向け突出して相手側受入空間51内に位置する接触部63Aが設けられている。接触部63Aは、既述したコネクタIの端子30の接触部32に接触するための部位であり、接触腕部63の弾性変位状態のもとで、接触部63Aの突出頂面(板厚面)で接触部32の板面に接触可能となっている。接続部64は、コネクタIIが回路基板(図示せず)に配置された状態で、
図2での上縁にて回路基板の対応回路部に半田接続される。
【0065】
既述した本実施形態のコネクタIは、上述の相手コネクタIIとともに、次の要領で使用される。
【0066】
先ず、コネクタIと相手コネクタIIは、それぞれに対応する回路基板(図示せず)に実装される。具体的には、コネクタIは、端子30の接続部31が回路基板の対応回路部に半田接続されるとともに、連結部材40の被固定部43が回路基板の対応部に半田固定されることにより実装される。一方、相手コネクタIIは、相手端子60の接続部64が他の回路基板の対応回路部に半田接続されることにより実装される。
【0067】
次に、
図1及び
図2に見られるように、相手コネクタIIを、相手側受入空間51(
図2参照)が下方Z2に開口した姿勢でコネクタIの上方に位置させて、嵌合直前の状態とする。しかる後、相手コネクタIIを、上下方向Zに対して傾けることなく降下させる。この相手コネクタIIの降下により、相手コネクタIIの中央壁50DがコネクタIの嵌合部21における受入空間23内へ上方から進入するとともに、相手コネクタIIの相手側受入空間51へコネクタIの嵌合部21が下方から進入し、コネクタIと相手コネクタIIとは互いに
図5(A)に示す正規の嵌合位置(正規嵌合位置)にもたらされて嵌合状態となる。
【0068】
この正規嵌合位置において、相手コネクタIIの中央壁50Dの下端部、すなわち挿抜方向被規制部50D-1の下面が、コネクタIの嵌合部21の挿抜方向規制部、すなわち底壁21Cの上面に当接することで、相手コネクタIIが嵌合最大深さ位置に定まっている(
図5(A)参照)。かかる正規嵌合位置では、
図5(A)に見られるように、相手コネクタIIとコネクタIとは、相手コネクタIIの挿抜方向被規制部50D-1とコネクタIの挿抜方向規制部としての底壁21Cとが上下方向Zで当接するだけで、他の部位は当接していない。また、このとき、
図5(A)に見られるように、相手コネクタIIの底壁50CとコネクタIの端壁21Bとの間には上下方向Zで間隔h3が形成されており、相手コネクタIIの端壁50Bの傾斜被規制部50B-1とコネクタIの傾斜規制部12Aとの間には上下方向Zで間隔h2が形成されている。
【0069】
このようなコネクタIと相手コネクタIIは正規嵌合位置で、相手コネクタIの相手端子60の接触部63Aが、接触腕部63の弾性変位状態のもとで、コネクタIの端子30の接触部32に接圧をもって接触して電気的に接続される。
【0070】
相手コネクタIIは、コネクタIに対し、必ずしも正規嵌合位置にもたらされるとは限らない。例えば、相手コネクタIIがコネクタ幅方向Yで正規位置よりY1側(
図2にて右側)へずれた位置でコネクタIへの嵌合が開始されると、コネクタIの可動ハウジング20は、相手ハウジング50からY1側へ向けた力を受け、端子30の弾性部33の弾性変位(弾性変形)により、固定ハウジング10に対してY1側へ移動する。すなわち、弾性部33の弾性変位によりずれが吸収される。その際、
図2(A)にて、Y1側の端子30の弾性部33はコネクタ幅方向Yで圧縮するように弾性変位し、Y2側の端子30の弾性部33はコネクタ幅方向Yで広がるように弾性変位する。このように、相手コネクタIIが正規位置からずれた位置で嵌合されても、そのずれの量が許容量内であれば、弾性部33の弾性変位により対応できる。
【0071】
コネクタIに嵌合している相手コネクタIIをコネクタIから抜出する際には、相手コネクタIIを上下方向Zに対して傾斜させることなく、真っ直ぐ上方Z1へ引き上げることで抜出することができるが、相手コネクタIIが上下方向Zに対して傾斜させて抜出されることもある。このとき、
図4及び
図5(B)に見られるように、相手コネクタIIをコネクタ幅方向Yに延びる軸線まわりに傾斜させることが多い。
図4及び
図5(B)には、端子配列方向Xでの相手コネクタIIの一端側部分(X1側部分)が他端側部分(X2側部分)より大きくもち上げられた状態が示されている。
【0072】
従来、このように傾斜を伴って相手コネクタをコネクタから抜出しようとすると、端子配列方向での他端側にて、コネクタの端壁と相手コネクタの端壁との間に、端子配列方向での当接力が大きく作用していた。通常、端子配列方向ではコネクタの小径化の要請から同方向で端壁が薄く形成されていることが多く、そのような場合、端壁が上記当接力により損傷するおそれがあった。
【0073】
本実施形態では、
図5(A)に見られるように、相手コネクタIIが正規嵌合位置にてコネクタIに嵌合しているとき、相手コネクタIIは上下方向Zに対して傾斜しておらず、端子配列方向Xでの相手コネクタIIの中央壁50Dの端面50D-2とコネクタIの端壁21Bの傾斜面21B-1との間には間隔aが形成されている。相手コネクタIIを抜出する際、端子配列方向Xでの一端側(X1側)にて相手コネクタIIの一端側傾斜被規制部50B-1がコネクタIの一端側傾斜規制部12Aからもち上がるように相手コネクタIIが傾斜したとき、
図5(B)に見られるように、相手コネクタIIの傾斜は間隔aによって許容される。
【0074】
相手コネクタIIは、所定角で傾斜した姿勢となったときに、
図5(B)に見られるように、端子配列方向Xでの他端側(X2側)にて、端壁50Bの他端側傾斜被規制部50B-1で、コネクタI上下方向の他端側傾斜規制部12Aに上方から当接し、上記所定角より大きい傾斜角をもった傾斜が規制される。本実施形態では、他端側傾斜被規制部50B-1が他端側傾斜規制部12Aに当接するのと同時に、
図5(B)に見られるように、端子配列方向Xでの他端側(X2側)にて、相手コネクタIIの中央壁50Dの端面50D-2がコネクタIの端壁21Bの傾斜面21B-1に接面して当接する。つまり、本実施形態では、中央壁50Dの端面50D-2と端壁21Bの傾斜面21B-1との当接によっても、相手コネクタIIの傾斜が規制される。相手コネクタIIは、他端側傾斜被規制部50B-1がコネクタIの他端側傾斜規制部12Aに当接した状態において、一端側(X1側)にてコネクタIから抜出されており、しかる後、上方Z1へ真っ直ぐもち上げられることにより容易に抜出される。
【0075】
本実施形態では、上述したように、上記所定角より大きい角度での相手コネクタIIの傾斜は、他端側傾斜被規制部50B-1が他端側傾斜規制部12Aに上方から当接することで規制される。したがって、他端側傾斜被規制部50B-1と他端側傾斜規制部12Aとの当接力は上下方向Zで生じる。コネクタIにおいて他端側傾斜規制部12Aが形成されている被連結部12及びコネクタIIにおいて他端側傾斜被規制部50B-1が形成されている端壁50Bは、それぞれ、端子配列方向Xでの寸法に比べて上下方向Zでの寸法が大きく、強度が高くなっている。したがって、他端側傾斜規制部12A及び他端側傾斜被規制部50B-1は、上下方向Zで生じる上記当接力に対して十分に対抗でき、この結果、上記当接力によるハウジングの損傷が生じにくくなる。
【0076】
また、本実施形態では、
図5(A),(B)に見られるように、コネクタIの傾斜規制部12Aは、端子配列方向Xにて相手コネクタIIの端壁50Bよりも外側にまで及んで位置しているので、相手コネクタIIが傾斜した際、端子配列方向Xで他端側傾斜規制部12Aの範囲内に相手コネクタIIの他端側傾斜被規制部50B-1が位置しやすくなり、他端側傾斜被規制部50B-1によって相手コネクタIIの傾斜を良好に規制できる。
【0077】
本実施形態では、傾斜規制部12Aは固定ハウジング10に形成されていたが、これに替えて、傾斜規制部は可動ハウジングに形成されていてもよい。また、本実施形態では、固定ハウジング10及び可動ハウジング20により端子30を保持し、固定ハウジング10に傾斜規制部12Aを形成することとしたが、これに替えて、端子を保持するハウジングと、傾斜規制部を有するハウジングとを部材として構成することも可能である。つまり、そのような構成を採用する場合、ハウジングは、例えば、端子を保持する固定ハウジング及び可動ハウジングに加え、傾斜規制部が形成された別個に独立した部材としてのハウジング部材を有することとなる。
【0078】
本実施形態では、コネクタIのハウジングは固定ハウジング10と可動ハウジング20とに分離された、いわゆるフローティング可能な形式であったが、本発明はこれに限定されず、一つのハウジングによる形式であってもよい。また、ハウジングの端子配列壁は、本実施形態で示されたハウジングの側壁でなくとも、周壁内に位置する中央起立壁、あるいは、周壁に囲まれていない起立壁であってもよく、さらには、端子配列壁の数は、単数、複数のいずれでもよい。
【0079】
さらに、本実施形態では、傾斜規制部12AはコネクタIの固定ハウジング10の一部として形成されていたが、これに替えて、傾斜規制部はハウジングに取り付けられた他の部材、例えば、金具に形成されていてもよい。これは、コネクタIが、固定ハウジング、可動ハウジングと分離されていない一つのハウジングの形式としたときも同様である。傾斜規制部を金具に形成する場合、ハウジングの一般的な材料である樹脂に傾斜規制部を形成する場合と比べて、傾斜規制部の強度が高くなり、相手コネクタの傾斜をさらに良好に規制できる。これは、コネクタのハウジングが固定ハウジングと可動ハウジングとに分離されていない形式であるときも同様である。
【0080】
また、本実施形態では、レセプタクルコネクタであるコネクタIに挿抜方向規制部及び傾斜規制部を設け、プラグコネクタである相手コネクタIIに挿抜方向被規制部及び傾斜被規制部を設けることとしたが、各部が設けられるコネクタの形式はこれに限られず、例えば、挿抜方向規制部及び傾斜規制部をプラグコネクタに設け、挿抜方向被規制部及び傾斜被規制部をレセプタクルコネクタに設けてもよい。
【0081】
本実施形態では、相手コネクタIIの抜出時に、端子配列方向Xにおける相手コネクタIIのX1側の端部がもち上がるように傾斜する場合について説明したが、相手コネクタIIのX2側の端部がもち上がるように傾斜する場合には、X2側が一端側、X1側が他端側となり、相手コネクタIIの所定角より大きい傾斜は本実施形態について説明したのと同様の要領で規制される。
【0082】
本実施形態では、コネクタIの端壁21Bの傾斜面21B-1は、傾斜姿勢となった相手コネクタIIの傾斜被規制部50B-1がコネクタIの傾斜規制部12Aに当接するのと同時に、相手コネクタIIの中央壁50Dの端面50D-2が傾斜面21B-1に当接(接面)するような傾斜角度(上下方向Zに対する傾斜角度)をもって形成されていた。しかし、傾斜面の角度は、さらに大きい傾斜角度をもって形成されていてもよい。このように大きい傾斜角度で傾斜面が形成された場合、相手コネクタの傾斜被規制部がコネクタの傾斜規制部に当接した状態にあるとき、相手コネクタの中央壁の端面はコネクタの端壁の傾斜面に当接(接面)しておらず、上記端面と上記傾斜面との間に端子配列方向で隙間が形成された状態となる。つまり、この場合、相手コネクタの所定角より大きい傾斜は、コネクタの傾斜規制部のみによって規制され、上記傾斜面によっては規制されない。
【符号の説明】
【0083】
10 固定ハウジング(ハウジング)
12A 傾斜規制部
20 可動ハウジング
21A 側壁(端子配列壁)
21B 端壁
21B-1 傾斜面
21C 底壁(挿抜方向規制部)
23 受入空間
30 端子
I コネクタ(回路基板用電気コネクタ)
II相手コネクタ
X 端子配列方向
Y コネクタ幅方向
Z 上下方向(コネクタ挿抜方向)