(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088232
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】アルミ化粧部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220607BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B32B15/08 H
E04F13/07 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200553
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 淳一
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10A
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK19E
4F100AK25D
4F100AN00D
4F100AT00B
4F100CB00C
4F100CB02E
4F100JB16D
4F100JB16E
4F100JN01D
4F100JN01E
(57)【要約】
【課題】白化の発生を抑制できる安価なアルミ化粧部材を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる基材層1の一方の面側に、透明接着剤層3、及び二層以上の透明熱可塑性樹脂層6がこの順に積層された化粧シート7を作成する。また平板状のアルミ板11にロールフォーミングによる曲げ加工を施し、アルミ部材8を成形する。そしてアルミ部材8の一方の面に、化粧シート7の他方の面を貼り付けてアルミ化粧部材9を作成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材層の一方の面側に、接着剤層、及び2層以上の透明熱可塑性樹脂層がこの順に積層された化粧シートを作成する工程と、
平板状のアルミ板にロールフォーミングによる曲げ加工を施し、アルミ部材を成形する工程と、
前記アルミ部材の一方の面に、前記化粧シートの他方の面を貼り付けてアルミ化粧部材を作成する工程と、を含むことを特徴とするアルミ化粧部材の製造方法。
【請求項2】
前記アルミ板は、厚さが0.5mm以上1.2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミ化粧部材の製造方法。
【請求項3】
前記アルミ部材と前記化粧シートとを、2液硬化性ウレタン系接着剤で接着することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミ化粧部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ化粧部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、内外装の建築部材として、アルミの板材に化粧シートを貼り付けた意匠性の高いアルミ化粧部材がある。アルミ化粧部材は、先ず平板状のアルミ板に化粧シートを貼り付け、それから所定の形状へと曲げ加工を行なって製造される。しかしながら、アルミ板に化粧シートを貼り付けて形成されるアルミ化粧板に曲げ加工を行なうと、フォーミングローラの接触により、化粧シートの表面を傷めてしまう可能性がある。また、折り曲げ部で化粧シートの表面が伸ばされることにより、白化現象が生じる可能性もあり、0.8mmを超えるような板厚には適用できない。
【0003】
一方、押出し成型したアルミ部材に、化粧シートを貼り付ける手法もあるが、コストが増大するだけでなく、押出し成型品は一般に板厚が1.2mmを超えるため、強度を必要としない場所への使用は過剰品質となる。例えば、天井材として使用されるスパンドレルには強度は不要であり、軽量化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような点に着目したもので、白化の発生を抑制できる安価なアルミ化粧部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様であるアルミ化粧部材の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる基材層の一方の面側に、接着剤層、及び二層以上の透明熱可塑性樹脂層がこの順に積層された化粧シートを作成する工程と、平板状のアルミ板にロールフォーミングによる曲げ加工を施し、アルミ部材を成形する工程と、アルミ部材の一方の面に、化粧シートの他方の面を貼り付けてアルミ化粧部材を作成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、先ず平板状のアルミ板にロールフォーミングによる曲げ加工を施し、それから化粧シートを貼り付けるため、折り曲げ部に白化現象が生じることを抑制できる。また押出し成型に比べて安価に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(実施形態)
(アルミ化粧部材の構成)
本実施形態のアルミ化粧部材9は、
図1に示すように、基材層1の一方の面側に、2枚の透明熱可塑性樹脂層6が積層されて化粧シート7が作成され、基材層1の他方の面側がアルミ部材8に接着剤によって貼り合わされている。
本実施形態の化粧シート7は、基材層1と透明熱可塑性樹脂層6との間に絵柄模様層2を有し、絵柄模様層2を設けた基材層1と透明熱可塑性樹脂層6とを透明接着剤層3で接着した場合を例示している。なお、この絵柄模様層2、及び透明接着剤層3を省略しても良い。
【0011】
(基材層)
基材層1は熱可塑性樹脂からなるシート状の層である。熱可塑性樹脂は着色されていることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル(代表的には1、4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である通称PET-G)等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6、6-ナイロン、6、10-ナイロン、12-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体や混合物、複合体が例示できる。基材層1は、このような熱可塑性樹脂からなる積層体で構成されていても良い。
【0012】
特に、溶融押し出し装置での生産性、環境適合性、床材としての機械強度、耐久性、価格などを考慮すれば、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
基材層1を着色することで、化粧シート7を貼り合せる基材(アルミ部材8)を隠蔽し、また絵柄模様層2の下地色として色相を適宜、選択することができる。例えば、顔料などの着色剤を混合、練りこむなどしておくことで着色ができる。あるいは絵柄模様層2を設ける前にベタインキ層として、コーティングあるいは印刷の手法を用いて絵柄模様層2の下に着色層を設けることもできる。
【0013】
(絵柄模様層)
絵柄模様層2は化粧材としての意匠性を付与するものである。意匠としての絵柄としては、木目の他、たとえばコルク、石目、タイル、焼き物、抽象柄など用いる箇所に適した所望の印刷柄を選ぶことができる。
印刷に使用される印刷インキについても、印刷適性や耐候性などを考慮すれば、特に限定するものではない。絵柄に用いる顔料としては、例えば、イソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラックの少なくとも一つを用いる。またこれら顔料を組み合わせ配合する事で、絵柄の表現を豊かな表現とする事が可能となる。また、紫外線吸収剤や光安定剤等を添加して耐候性を向上させても良い。
【0014】
また印刷方法については、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、など既知の印刷方法を用いることができ、全面に着色を施す場合には印刷方法のほかコーティングの手法や装置を用いてもよい。
【0015】
(透明接着剤層)
本実施形態の透明接着剤層3は、透明性のある接着剤であれば適用できる。例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などの硬化性樹脂等から構成される。また、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等であっても良い。本実施形態では、透明接着剤として、アクリル-ポリエステル-塩化酢酸ビニル系樹脂などのヒートシール剤を使用する。
【0016】
(透明熱可塑性樹脂層)
透明熱可塑性樹脂層6は、最外層5と、その内側に設けられた内側層4と、を備える。内側層4は2層以上積層しても良い。但し、透明熱可塑性樹脂層6の総厚みが20μm以上80μm以下の範囲となるように設計されている。
最外層5の厚みと内側層4の総厚みとの層厚の比率を10:90から40:60の範囲に設定することが好ましい。すなわち、内側層4側の方が厚くなっている。
最外層5は、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)からなる。ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDFのTgは-39℃)は、折り曲げ白化性、アクリル樹脂層との密着性の点で優れている。
【0017】
内側層4は、ポリメチルメタクリレート樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂系ゴムのポリメチルメタクリレート樹脂混合物からなる。その混合比率は、ポリメチルメタクリレート樹脂が40質量%以上70質量%以下であり、ポリメチルメタクリレート樹脂系ゴムが30質量%以上60質量%以下に設定されている。なお、ポリメチルメタアクリレート樹脂のTgは-20℃程度である。ポリメチルメタクリレート樹脂に公知の紫外線吸収剤を添加しても良い。
【0018】
「混合比率は、ポリメチルメタクリレート樹脂が40質量%以上70質量%以下であり、ポリメチルメタクリレート樹脂系ゴムが30質量%以上60質量%以下」とは、ポリメチルメタクリレート樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂系ゴムとの混合比率が、質量比で、4:6~7:3を指す。
【0019】
(アルミ部材)
アルミ部材8はアルミ合金であっても良い。アルミ部材8は、平板状のアルミ板にロールフォーミングによる曲げ加工を施して成形されており、曲げ加工を施す前のアルミ板の厚みを0.5mm以上に設定している。より好ましくは、1.2mm以下に設定する。これは、圧延材として提供されるアルミ板が0.5mm以上1.2mm以下であるためである。加工性や経済性の検討が必要となるが、ロールフォーミングによる曲げ加工が可能であれば、アルミ板の板厚が1.2mmを超えるものにも適用が可能である。
(その他の構成)
化粧シート7の表面に凹凸模様を付加しても良い。凹凸模様は、例えば熱エンボス加工などの公知の手段を採用して付加すれば良い。
【0020】
(アルミ化粧部材の製造方法)
図2は、アルミ化粧部材の製造方法を示す図である。
図中の(a)は、平板状のアルミ板11を示している。アルミ板11には、ロールフォーミングによる曲げ加工も施されておらず、化粧シート7も貼り付けられていない。この状態でストック場に保管されている。
【0021】
図中の(b)は、アルミ板11にロールフォーミングによる曲げ加工を施して成形されたアルミ部材8を示している。ロールフォーミングとは、直列に並べられた多数の成形スタンドに長尺の金属板を通し、回転するローラによって段階的に曲げ加工を施し、任意の断面形状の製品を連続的に生産する成形方法である。ここでは、一例として天井材に使用されるスパンドレルを成形している。
【0022】
図中の(c)は、アルミ部材8における意匠側の面に、化粧シート7を貼り付けたアルミ化粧部材9を示している。ここでは、化粧シート7を便宜的に破線で示している。アルミ部材8と化粧シート7とは、2液硬化性ウレタン系接着剤(乾燥状態での塗布量:24.2±2.2g/m2)で接着する。
【0023】
(効果)
次に、本実施形態の主要な作用効果について説明する。
(1)熱可塑性樹脂からなる基材層1の一方の面側に、透明接着剤層3、及び2層以上の透明熱可塑性樹脂層6がこの順に積層された化粧シートを作成する工程と、平板状のアルミ板11にロールフォーミングによる曲げ加工を施し、アルミ部材8を成形する工程と、アルミ部材8の一方の面に、化粧シートの他方の面を貼り付けてアルミ化粧部材9を作成する工程と、を含む。このように、先ず平板状のアルミ板にロールフォーミングによる曲げ加工を施し、それから化粧シートを貼り付けるため、折り曲げ部に白化現象が生じることを抑制できる。また押出し成型に比べて安価に製造することが可能となる。
【0024】
(2)アルミ板11は、厚さが0.5mm以上1.2mm以下である。これにより、圧延材として提供される一般的なアルミ板を使用することができ、コストの面で有利である。また、所定の強度を確保しつつ折り曲げ加工が容易となる。また、厚さが1.2mm以下のアルミ板11は、例えば天井材として使用されるスパンドレルのように、強度が不要で、且つ軽量化が求められるような建築資材に好適である。
【0025】
(3)アルミ部材8と化粧シート7とを、2液硬化性ウレタン系接着剤で接着する。このように、2液硬化性ウレタン系接着剤を使用することにより、耐剥離性、耐衝撃性、振動吸収性、耐湿性、応力緩和性等に優れ、しかも安価である。
【0026】
次に、他の作用効果についても説明する。
まず、透明熱可塑性樹脂層6の最外層5に、ポリフッ化ビニリデン樹脂が使用されている。このように、最外層5にフッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂)を使用することで、不燃性を向上することができる。
【0027】
また、最外層5にポリフッ化ビニリデン樹脂を使用することにより、その内側層4のアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)との密着性が良く、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、耐汚染性を向上させることができる。
【0028】
また、内側層4を、ポリメチルメタクリレート樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂系ゴムの混合物とし、その混合比率を、ポリメチルメタクリレート樹脂が40質量%以上70質量%以下であり、ポリメチルメタクリレート樹脂系ゴムが30質量%以上60質量%以下とする。更に、透明熱可塑性樹脂層6の総厚みを20μm以上80μm以下とする。これによって、耐折曲げ白化性を向上させることが可能となる。
【0029】
また、透明熱可塑性樹脂層6の最外層5とその内側層4との層厚の比率が10:90から40:60の範囲とする。これによって、より確実に不燃性にも優れたものとすることが可能となる。例えば、ISO5660-1に準拠したコーンカロリー燃焼試験機による発熱性試験において、(1)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり(2)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200KW/m2を超えず(3)加熱開始後20分間、防火上有害な亀裂及び穴がない条件を満たすだけの不燃性を確実に満たすことが可能となる。
また、化粧シート7の表面に凹凸模様を形成するなら、意匠性が向上する。
【0030】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0031】
1 基材層
2 絵柄模様層
3 透明接着剤層
4 内側層
5 最外層
6 透明熱可塑性樹脂層
7 化粧シート
8 アルミ部材
9 アルミ化粧部材
11 アルミ板