(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088287
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】発光制御システム及び発光制御方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20220607BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20220607BHJP
F21L 4/00 20060101ALI20220607BHJP
F21S 10/02 20060101ALI20220607BHJP
F21S 10/06 20060101ALI20220607BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20220607BHJP
F21V 23/04 20060101ALI20220607BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220607BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/19
F21L4/00 600
F21L4/00 440
F21S10/02
F21S10/06 300
F21V23/00 140
F21V23/00 110
F21V23/04 500
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200654
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】猪子 寿之
【テーマコード(参考)】
3K014
3K273
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014GA03
3K273QA01
3K273RA14
3K273RA16
3K273SA02
3K273SA07
3K273SA11
3K273SA19
3K273SA31
3K273SA58
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA28
3K273TA30
3K273TA32
3K273TA41
3K273TA54
3K273TA66
3K273UA15
3K273UA22
3K273UA24
(57)【要約】
【課題】発光装置同士が相互に作用する演出に適した発光制御システムを提供する。
【解決手段】発光制御システム100は、複数の発光装置10と、これらと無線通信可能な管理装置50を備える。管理装置は、発光装置の位置情報を検出する位置検出部41と、発光装置の位置情報に基づいて発光装置ごとに点滅周期や点滅位相などの発光状態の目標値を算出する目標値算出部31cを含む。発光装置は、発光状態のデフォルト値を記憶しており、自己のセンサによって所定の状態変化の検知した場合に、発光状態をデフォルト値に戻して管理装置に通知する。管理装置は、第1の発光装置からデフォルト値に戻ったことの通知を受けた場合に、第1の発光装置及びそれ以外の第2の発光装置の目標値を算出して各発光装置に対して算出した目標値を送信する。各発光装置は、この目標値となるように自己の発光状態を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光装置と、前記発光装置と無線通信可能な管理装置を備える発光制御システムであって、
前記管理装置は、
前記発光装置の位置情報を検出する位置検出部と、
前記発光装置の位置情報に基づいて、前記発光装置ごとに点滅周期、点滅位相、発光色、及び発光強度の一種以上の発光状態の目標値を算出する目標値算出部を含み、
前記発光装置は、
前記発光状態のデフォルト値を記憶した記憶部と、
前記発光装置又はそれが搭載された物品の所定の状態変化を検知するセンサと、
前記発光装置の発光状態を制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記センサが前記所定の状態変化の検知した場合に、前記発光状態を前記デフォルト値に戻すとともに、そのことを前記管理装置に通知し、
前記管理装置は、第1の発光装置から前記デフォルト値に戻ったことの通知を受けた場合に、前記第1の発光装置及びそれ以外の第2の発光装置の前記目標値を算出し、前記第1の発光装置及び前記第2の発光装置に対して算出した前記目標値を送信し、
前記第1の発光装置及び前記第2の発光装置は、前記目標値となるように自己の前記発光状態を制御する
システム。
【請求項2】
前記目標値算出部は、所定距離内に存在する前記発光装置の点滅周期と点滅位相が少なくとも一致するように前記目標値を算出する
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記発光装置は、コップに搭載されたものであり、
前記コップ内に注がれた液体を検知する液体検出センサと、
前記コップの傾きを測定する加速度センサを有し、
前記液体検出センサが前記コップ内の液体を検知したときに発光を開始し、
前記加速度センサによって測定された前記コップの傾きが所定の閾値を超えたときに発光を停止する
請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記発光装置の所定の状態変化を検知する前記センサは、前記加速度センサであり、
前記加速度センサは、前記状態変化として前記発光装置の加速度の変化を検出する
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
発光装置を備えたコップであって、
前記発光装置は、
前記コップ内に注がれた液体を検知する液体検出センサと、
前記コップの傾きを測定する加速度センサを有し、
前記液体検出センサが前記コップ内の液体を検知したときに発光を開始し、
前記傾きセンサによって測定された前記コップの傾きが所定の閾値を超えたときに発光を停止する
コップ。
【請求項6】
複数の発光装置と、前記発光装置と無線通信可能な管理装置とによって実行される発光制御方法であって、
前記管理装置は、
前記発光装置の位置情報を検出する位置検出部と、
前記発光装置の位置情報に基づいて、前記発光装置ごとに点滅周期、点滅位相、発光色、及び発光強度の一種以上の発光状態の目標値を算出する目標値算出部を含み、
前記発光装置は、
前記発光状態のデフォルト値を記憶した記憶部と、
前記発光装置又はそれが搭載された物品の所定の状態変化を検知するセンサと、
前記発光装置の発光状態を制御する制御部を含み、
前記方法は、
前記発光装置が、前記センサによって前記所定の状態変化の検知した場合に、前記発光状態を前記デフォルト値に戻すとともに、そのことを前記管理装置に通知する工程と、
前記管理装置が、第1の発光装置から前記デフォルト値に戻ったことの通知を受けた場合に、前記第1の発光装置及びそれ以外の第2の発光装置の前記目標値を算出し、前記第1の発光装置及び前記第2の発光装置に対して算出した前記目標値を送信する工程と、
前記第1の発光装置及び前記第2の発光装置が、前記目標値となるように自己の前記発光状態を制御する工程を含む
発光制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光装置の発光状態を制御するシステム及び方法に関する。より具体的に説明すると、本発明は、例えば各発光装置がコップに搭載されており、一定距離内にいる発光装置同士が互いに呼応して、それらの点滅周期や点滅位相が徐々に一致していくというような光演出に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光装置を備えるコップが知られている(特許文献1,特許文献2)。例えば特許文献1に記載のコップは、コップ内に注がれている飲料水の適正濃度、腐敗程度及び適正温度を使用者に視覚的に示すために、飲料水の濃度や腐敗程度、温度に応じて発光装置の発光状態(オン/オフ,点滅)を制御することを特徴としている。また、特許文献2には、コップに注がれている内容物の温度及び量に従ってメロディーと光を発散することで、利用者は内容物の温度及び量を知らせることができるコップが開示されている。
【0003】
また、本願出願人は、複数の発光装置の発光状態を制御するための技術として、例えば特許文献3に記載の発明を提案している。特許文献3に記載の発明は、複数のペンライトによる照明演出をイベントの内容や状況に応じて柔軟に変更することを目的としたものであり、制御システムが複数の発光装置に対して発光データを送信し、各発光装置が当該発光データに従って発光部(LED等)を発光させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-318672号公報
【特許文献2】特開2006-55570号公報
【特許文献3】特開2015-11981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1及び2に記載の発光装置付きのコップは、個々の発光装置が完全に独立したものとなっており、複数の発光装置が相互に作用し合うことはない。また、特許文献3に記載のシステムは、制御システムが複数の発光装置を集中制御することを前提としたものであり、各発光装置は制御システムから発光データを受けて発光状態を変化させることはあっても、発光装置同士が互いに影響を与え合うような演出を想定したものではなかった。
【0006】
一方で、発光装置をコップに搭載することを考えた場合、例えば複数人で食事をする状況においては、一つの食卓に複数のコップが並べて置かれたり、コップ同士を触れ合わせてて乾杯をしたりするといったような場面がある。その際にコップに搭載された発光装置が互いに呼応するように相互に作用し合う演出を行うことができれば、食卓を華やかにすることができるといえる。特に、発光装置がバラバラに点滅したり発光したりするのではなく、例えば同じ食卓に置かれた発光装置同士が同期して、それらの発光状態が次第に一致していく演出を行うことができれば、食卓を囲む者が共感し合って親睦が深まっていくようなイメージを与えることができる。
【0007】
そこで、本発明は、発光装置同士が相互に作用する演出に適した発光制御技術を提供することを主たる目的とする。より具体的には、本発明は、一定距離内に存在する発光装置同士の点滅周期や位相が徐々に一致していくという光演出を行うことを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、発光制御システムに関する。本発明に係るシステムは、複数の発光装置と、これらの発光装置と無線通信可能な管理装置を備える。発光装置と管理装置は、インターネットなどの情報通信回線を通じて接続されたものであってもよいし、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)といった公知の無線通信規格によって無線通信するものであってもよい。
【0009】
管理装置は、位置検出部と目標値算出部を含む。位置検出部は、発光装置の位置情報を検出する。目標値算出部は、各発光装置の位置情報に基づいて、発光装置ごとに発光状態の目標値を算出する。なお、「発光状態」とは、点滅の周期、点滅の位相、発光色、及び発光強度(明るさ)の一種又は二種以上の状態を意味する。
【0010】
各発光装置は、記憶部、センサ、及び制御部を含む。記憶部には、少なくとも発光状態のデフォルト値が記憶されている。なお、このデフォルト値は、管理装置によって決定され、各発光装置に送信されて、各発光装置の記憶部に記憶されたものであってもよい。センサは、発光装置又はそれが搭載された物品の所定の状態変化を検知する。センサの例は、加速度の変化及び/又は傾きの変化を検知する加速度センサ高度の変化を検知する高度センサ、温度の変化を検知する温度センサ、振動の変化を検知する振動センサである。また、センサは、例えば、発光装置が搭載された物品(例えばコップ)が人手によって把持されたときの圧力の変化を検知する圧力センサであってもよいし、あるいは物品の周囲の明度の変化を検知する明度センサであってもよい。制御部は、発光装置の発光状態を制御する。
【0011】
ここで、発光装置の制御部は、センサが所定の状態変化の検知した場合に、発光装置の発光状態をデフォルト値に戻すとともに、そのことを無線通信手段を介して管理装置に通知する。また、管理装置は、ある発光装置(第1の発光装置)からデフォルト値に戻ったことの通知を受けた場合に、その発光装置(第1の発光装置)とそれ以外の一又は複数の発光装置(第2の発光装置)のそれぞれの目標値を算出する。つまり、ここにいう第1の発光装置は、他の発光装置に対して影響を与える装置であり、第2の発光装置は、第1の発光装置から影響を受ける側の装置である。また、管理装置は、各発光装置(第1の発光装置及び第2の発光装置)に対して、ここで算出した目標値を送信する。そして、各発光装置(第1の発光装置及び第2の発光装置)は、管理装置から受信した目標値となるように自己の発光状態を制御する。例えば、第1の発光装置は、デフォルト値から目標値に向けて自己の発光状態を徐々に変遷させていく。また、第2の発光装置は、現在の発光状態(現在値)から目標値に向けて自己の発光状態を徐々に変遷させていくこととなる。
【0012】
上記のように構成することで、ある発光装置の状態変化(例えばコップを持ち上げるといった動作)がきっかけとなって、他の発光装置へとその影響が波及するといったような相互作用的な演出を実現することができる。
【0013】
本発明に掛かるシステムにおいて、管理装置の目標値算出部は、各発光装置の位置情報に基づいて、所定距離内に存在する発光装置の点滅周期と点滅位相が少なくとも一致するように、各発光装置の目標値を算出することが好ましい。例えば発光装置がコップに搭載されたものである場合、同じ食卓に置かれたコップの発光装置については目標値を一致させればよい。あるいは、最も近い距離にある2つの発光装置でペアを形成し、このペアとなった発光装置の目標値を一致させることとしてもよい。このように、各発光装置の位置情報に基づいて、2以上の発光装置の目標値を一致させることで、近くに存在する発光装置の発光状態が徐々に揃っていき、最終的には一致させるといった演出を行うことができる。
【0014】
本発明に係るシステムにおいて、発光装置は、コップに搭載されたものであることが好ましい。この場合に、発光装置は、コップ内に注がれた液体を検知する液体検出センサと、コップの傾きを測定する加速度センサ(傾き測定手段)を少なくとも備えることが好ましい。また、発光装置は、液体検出センサがコップ内の液体を検知したときに発光を開始し、加速度センサによって測定されたコップの傾きが所定の閾値を超えたときに発光を停止することが好ましい。このように、コップ内の液体が注がれたときに発光装置を発光させることで、コップ内の液体が照明され、この液体を美しく見せることができる。他方で、発光停止のトリガーを液体検出センサが液体を検知しなくなったときに設定すると、コップ内部にはほとんど液体は入っていないにも関わらず、コップの内面のうち液体検出センサの検出部位付近に少しでも水滴が残っていると発光が停止しないというエラーが発生しやすいという問題がある。そこで、本発明の好ましい形態では、加速度センサによって測定されたコップの傾きが所定の閾値を超えたときに発光を停止することとしている。例えば、コップを手に持って内部の液体を飲み干すのに必要な角度を閾値として設定しておくで、コップの中の液体を飲みきったときに発光を停止させることができる。このように、発光停止のトリガーをコップの傾きとすることで、仮にコップ内部に多少水滴が残っていても、確実に発光装置の発光を停止させることが可能となる。なお、このようにコップの傾きによって発光を停止させることは、コップを手で持って液体を飲むことを想定したものであるため、ストローなどは使わないようにすることが好ましい。
【0015】
本発明に係るシステムにおいて、発光装置の所定の状態変化を検知するセンサは、加速度センサであり、この加速度センサによって発光装置の加速度の変化を前記状態変化として検知することが好ましい。これにより、例えばコップが持ち上げられたときや、あるいは複数のコップを接触させて乾杯をおこなったときに、各発光装置の発光状態をデフォルト値に戻すことができる。
【0016】
本発明の第2の側面は、発光装置を備えたコップである。発光装置は、コップ内に注がれた液体を検知する液体検出センサと、コップの傾きを測定する加速度センサ(傾き測定手段)を有し、液体検出センサがコップ内の液体を検知したときに発光を開始し、加速度センサによって測定されたコップの傾きが所定の閾値を超えたときに発光を停止する。前述したとおり、発光停止のトリガーをコップの傾きとすることで、仮にコップ内部に多少水滴が残っていても、確実に発光装置の発光を停止させることができる。
【0017】
本発明の第3の側面は、発光制御方法に関する。発光制御方法は、複数の発光装置と、これらの発光装置と無線通信可能な管理装置とによって実行される。管理装置は、発光装置の位置情報を検出する位置検出部と、発光装置の位置情報に基づいて発光装置ごとに発光状態(点滅周期、点滅位相、発光色、及び発光強度の一種以上)の目標値を算出する目標値算出部を含む。発光装置は、発光状態のデフォルト値を記憶した記憶部と、発光装置又はそれが搭載された物品の所定の状態変化を検知するセンサと、発光装置の発光状態を制御する制御部を含む。ここで、発光制御方法では、まず、発光装置が、センサによって所定の状態変化の検知した場合に、発光状態をデフォルト値に戻すとともに、そのことを管理装置に通知する。次に、管理装置が、第1の発光装置からデフォルト値に戻ったことの通知を受けた場合に、第1の発光装置及びそれ以外の第2の発光装置の目標値を算出し、第1の発光装置及び第2の発光装置に対して算出した目標値を送信する。次に、第1の発光装置及び第2の発光装置が、目標値となるように自己の発光状態を制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発光装置同士が相互に作用する演出に適した発光制御システム及び発光制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係る発光制御システムの概要を示した模式図である。
【
図2】
図2(a)は、発光装置を搭載したコップの断面図であり、
図2(b)は、発光装置の機能構成を示したブロック図である。
【
図3】
図3は、位置管理装置と中央管理装置を含む管理装置の機能構成を示したブロック図である。
【
図4】
図4は、発光装置の発光フローの一例を示している。
【
図5】
図5は、各発光装置の発光同期処理の制御フローの一例を示している。
【
図6】
図6は、発光同期処理における各発光装置の発光パターンの例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光制御システム100の全体構成を模式的に示している。
図1に示されるように、本実施形態に係る発光制御システム100は、複数の発光装置10と、これらの発光装置10をそれぞれ搭載した複数のコップ20と、中央管理装置30と、位置管理装置40を含む。なお、本願明細書では、中央管理装置30と位置管理装置40とを含めた装置を管理装置50と表現している。コップ20に搭載された発光装置10と管理装置50は互いに無線通信することが可能に構成されている。例えば、各発光装置10と管理装置50はWi-Fi(登録商標)などの公知の規格に準じた無線LANで接続されていればよい。
【0022】
本発明に係る発光制御システム100では、例えばカフェやレストランなどの飲食店においてコップの発光による演出を行うことが想定されている。一例を挙げて説明すると、飲食店の店内には複数の食卓が配置されており、各食卓には複数のコップ20が並べられ、各コップ20には発光装置10が搭載されている。管理装置50は、各コップ20の位置情報を定期的に取得しており、これによりコップ20同士の距離などを常に把握している。そして、管理装置50は、例えば各食卓に設けられたコップ20同士の発光状態を同期させることにより、食卓ごとにコップ20の発光演出に統一感をもたせる。具体的には、ある食卓に設けられたコップ20が持ち上げられると、そのコップ20が点滅し始めるとともに、同じ食卓に並べられている他のコップ20も、持ち上げられたコップ20に呼応するように点滅を開始し、最終的には同じ食卓のすべてのコップ20の点滅の周期や位相が一致するようになる。本発明の発光制御システム100によればこのような光による演出を実現できる。
【0023】
図2は、コップ20の断面図(a)と発光装置10のブロック図(b)を示している。コップ20は、ガラスやプラスチックなどの公知の素材で形成されており、発光装置10から発せられた光が透過するように透明又は半透明に構成されている。
図2(a)に示されるように、コップ20は、通常のコップと同様に側壁21と底面22とを有し、側壁21の上部に液体を注ぎ入れる開口部が形成されているとともに、側壁21の中腹辺りに隔壁23が設けられている。これにより、飲料水などの液体が注がれる液体用空間24が側壁21と隔壁23によって区画されているとともに、発光装置10を収納するための装置用空間25が側壁21と隔壁23と底面22によって区画されている。すなわち、装置用空間25は液体用空間24の下部に位置し、これらの空間24,25は隔壁23によって隔てられている。また、本実施形態において、隔壁23は、液体用空間24側に向かってその中心部が凸状となるようにドーム状(半球形状)に湾曲したものとなっている。これにより、発光装置10から発せられた光が隔壁23を透過する際に効率的に拡散して、液体用空間24内の液体とその周囲の側壁21とを全体的に照明できるようになる。なお、コップ20の形状は、図示したものに限定されず、その他種々の構造を採用することができる。例えば、コップ20の側壁21の外面にハンドル(取っ手)を取り付けることも当然に可能である。
【0024】
発光装置10は、コップ20及びそこに注がれた液体を、コップ20の内部から照明するための装置である。
図2(b)に示されるように、発光装置10は、制御部11、発光部12、ICタグ13、記憶部14、通信部15、放音部16、液体検知センサ17、及び加速度センサ18を備える。なお、図示は省略しているが、発光装置10は、独自に発光部12を発光させることができるようにバッテリーを備えている。
【0025】
制御部11は、他の要素12~19の制御を行うための要素である。制御部11は、例えばプロセッサとメモリから構成される。プロセッサの例は公知のCPUやその他の制御回路であり、メモリに格納されたプログラムに従って所定の演算処理を行い、その演算結果をメモリの作業空間に書き出しながら各種の制御処理を実行する。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリから構成され、上記したプロセッサによる演算処理に利用される。本実施形態において、制御部11は、メモリに記憶されたプログラムを読み出し、このプログラムに従って、主に発光部12を発光させたり放音部16から音を出力するための処理を行う。
【0026】
発光部12は、制御部11による制御に基づいて発光するように構成されている。発光部12は、例えばLEDなどの発光素子を有する。発光素子は、例えば赤色に発光する赤色LED、緑色に発光する緑色LED、及び青色に発光する青色をそれぞれ一又は複数個ずつ有していることが好ましい。発光素子は、例えば点滅の周期や位相、発光強度(明るさ)、発光色を変化させることが可能なものを採用することが好ましい。ただし、発光素子はLEDに限られず、白熱電球などの公知のものを採用することもできる。例えば白熱電球であっても点滅の周期や位相、発光強度は調整可能である。
【0027】
ICタグ13は、コップ20(具体的には発光装置10)の位置を特定するための無線信号を発信する電子機器である。ICタグ13は、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)やBluetooth(登録商標)などの無線信号発信機によって実現されるものであり、電磁界や電波等を用いた非接触型の近距離無線通信によって、位置管理装置40との交信を行う。なお、本発明において、ICタグ10の回路は、例えばパッシブ型、セミパッシブ型、又はこれに準ずる構造を有するものを採用できる。
【0028】
ICタグ13は、基本的に、ICチップと発信回路とを備える。ICチップは、ICタグ13固有またはそれが取り付けられた対象物固有のID情報(タグID)を記憶した記憶回路を有しており、このタグIDを含む無線信号を発信回路を介して発信する。例えば、パッシブ型のICタグ13は、位置管理装置40から発信された電波を受信し、受信した電波をアンテナのコイルやショットキーダイオードにより起電力に変換し、この起電力によってICチップを起動する。ICチップは、起動すると、記憶回路に保持されている固有のタグIDを読み出して、読み出したタグIDを発信回路を介して位置管理装置40に対して発信する。また、ICタグ13は、セミパッシブ型を使用することも可能である。セミパッシブ型のICタグ13は、位置管理装置40から発信された電波を受信し、これを契機として内部の電源を作動させる。そして、電源から得た電力を利用して、ICチップを起動し、位置管理装置40に対して、記憶回路に記憶されている固有のタグIDを発信する。ICタグ13から発せられた無線信号は、例えば半径1m~15m程度まで到達させることができ、その無線信号の到達範囲は適宜調整可能である。
【0029】
記憶部14は、主に発光状態を制御するための発光データを記憶するための要素である。記憶部14は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリから構成される。なお、制御部11は、管理装置50から発光装置10が新しい発光データを受信した場合、古い発光データを記憶部14から消去して、新しい発光データを記憶部14に書き換えることが好ましい。なお、記憶部14は必須の要素ではなく、制御部11が備えるメモリを、ここで説明した記憶部14の代わりとして利用することも可能である。すなわち、制御部11のメモリに発光データを記憶しておくこともできる。
【0030】
通信部15は、管理装置50との間で各種データの送受信を行うための要素である。通信部15は、管理装置50と無線LAN(Local Area Network)方式で無線通信を行うための機能を有する。具体的には、通信部15、無線通信を行うための搬送波を送信及び受信するアンテナを有している。通信部15によって受信されるデータの例は、発光部12の発光状態を制御するための発光データである。制御部11は,通信部15を介して発光データを受け取ると、その発光データを記憶部14やメモリに記録する。
【0031】
放音部16は、音声や効果音などの音を出力するための要素である。任意の要素であり、放音部16としては、空気を媒介にして音波(空気振動)を放出する一般的なスピーカを用いればよい。放音部16は、例えば発光部12による光の演出とともに、効果音等を出力する。放音部16は任意の要素であり、必ずしも発光部12に搭載する必要はない。
【0032】
液体検知センサ17は、コップ20の液体用空間24に液体が存在することを検知するためのセンサである。液体検知センサ17の例は、静電容量式センサや光電式センサであるが、特に静電容量センサを用いることが好ましい。静電容量センサは、その測定面がコップ20の隔壁23と対面するように設けられている。静電容量式センサは、物質の比誘電率の相違により発生する位相差を利用して液体の有無を検知する。例えば液体検知センサ17が光電式センサである場合は、液体用空間24に貯留された液体自体の色や液体に当たる光の色が変化すると検知が不安定となるという問題があるが、静電容量式センサは、液体の色や光の色が変化しても安定した検知が可能である。
【0033】
加速度センサ18は、発光装置10が搭載されたコップ20の動作の加速度を測定するための要素である。加速度センサ18からの加速度測定データを制御部11によって処理することにより、例えば発光装置10の加速度、振動、及び傾きを算出できる。加速度センサ18は、例えば3次元空間で移動したコップ20の加速度、移動した時間、移動した方向を測定する。また、加速度センサ18は、発光装置10が搭載されたコップ20の傾倒角度を測定する用途でも用いられる。加速度センサ18は、例えばコップ20に働く重力加速度を向き情報として取得することで、このコップ20の傾倒角度を測定する。
【0034】
図2は、管理装置50を構成する中央管理装置30と位置管理装置40のブロック図を示している。中央管理装置30と位置管理装置40は、バスによって接続されており、互いに情報の授受を行う。これらの中央管理装置30と位置管理装置40は一体として構成されていてもよいが、本実施形態では便宜上、2つのコンピュータ装置にそれらの機能を分散している。このため、ここで説明する中央管理装置30と位置管理装置40の機能ブロックは一例であり、例えば中央管理装置30が備える要素を位置管理装置40に設けたり、反対に位置管理装置40が備える要素を中央管理装置30に設けたりすることも可能である。
【0035】
中央管理装置30は、基本的に複数の発光装置10の発光状態を制御する機能を担う。具体的には、中央管理装置30は、各発光装置10を制御するための発光データを生成し、これを各発光装置10に発信する。中央管理装置30は、コンピュータ型の装置であり、中央制御部31とデータベース32を有する。
【0036】
中央制御部31は、位置管理装置40を制御するとともに、発光データの生成に必要な演算などを行う。中央制御部31は、例えばプロセッサとメモリから構成される。プロセッサの例は公知のCPUやその他の制御回路であり、メモリに格納されたプログラムに従って所定の演算処理を行い、その演算結果をメモリの作業空間に書き出しながら各種の制御処理を実行する。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリから構成され、上記したプロセッサによる演算処理に利用される。本実施形態において、中央制御部31は、プログラムを実行することにより、テーブル更新部31a、デフォルト値決定部31b、目標値算出部31c、途中値算出部31d、及び発光データ発信部31eとして機能する。これらの各機能部31a~31eの機能の詳細については、
図5のフロー図を参照して後述する。
【0037】
データベース32は、各発光装置10の発光状態を制御するための情報を登録するためのテーブルデータを記憶している。このテーブルデータの情報は中央制御部31によって随時更新される。このテーブルデータに登録されている情報の一部又は全部が各発光装置10へと送信される。各発光装置10は、テーブルデータに登録されている情報を抽出して、これを自己の発光状態を制御するための発光データとして利用することとなる。
【0038】
図3には、テーブルデータの一例を示している。
図3に示されるように、テーブルデータは、発光装置10固有のID情報(識別用IDやMACアドレスなど)をキー項目として、発光装置10の位置情報や、発光状態の現在値、デフォルト値、途中値、及び目標値に関する情報を登録するためのフィールドを有している。位置情報フィールドには、発光装置10の位置情報が記録される。位置情報は、後述する位置検出部41によって定期的に取得されるものであり、例えばX座標及びY座標の二次元座標で表される座標値などが登録される。
【0039】
テーブルデータの現在値フィールド、デフォルト値フィールド、途中値フィールド、及び目標値フィールドには、それぞれ、各発光装置10の発光状態の現在値、デフォルト値、途中値、及び目標値に関する情報が登録される。詳しくは後述するが、各発光装置10は、管理装置50から目標値を受け取ると、途中値を経由して、目標値に到達するように発光状態を遷移させて、一定期間は目標値にて発光状態を制御することになるが、目標値での発光期間が経過した後、次の目標値が管理装置50から送られてくるまでの間は、現在値フィールドに登録された現在値で発光状態を制御する。デフォルト値は、発光装置10がトリガーとなる所定の状態変化を検知したときに、その発光状態を制御するための情報である。本実施形態では、ある発光装置10がトリガーとなる状態変化を検知してその発光状態がデフォルト値に変更されると、その発光装置10とその周囲の他の発光装置10とが目標値に向けて発光状態を遷移させていく。このため、通常は、発光状態がデフォルト値から途中値を経て目標値に到達する発光装置10(第1の発光装置)と、現在値から途中値を経て目標値に到達する発光装置10(第2の発光装置)とに区別される。
【0040】
現在値、デフォルト値、途中値、及び目標値のそれぞれの情報には、例えば、発光部12の点滅の周期や位相、発光強度、及び発光色に関する情報の1種又は2種以上を含めることができる。また、デフォルト値、途中値、及び目標値に関しては、その値で発光を制御する期間(すなわち時間の長さ)や時刻(すなわち開始時刻及び/又は終了時刻)に関する情報を含めることとしてもよい。また、途中値に関しては、目標値に到達するまでの時間や時刻に関する情報(例えば何秒以内に目標値到達せよ、あるいは何時何分何秒までに目標値に到達せよという情報)を含めることとしてもよい。なお、各値は、発光部12の発光状態に関する制御値だけでなく、放音部16から出力される音のリズムや音量に関する情報や、あるいは機械の作動周期に関する情報を含めることもできる。
【0041】
位置管理装置40は、基本的に複数の発光装置10と同じ空間内(部屋など)に設置されて、各発光装置10から位置情報を取得する役割を担う。例えば、位置管理装置40は、発光装置10付きのコップ20を利用してサービスを提供する飲食店内、具体的には天井や壁面、あるいは床面に設置することが好ましい。また、位置管理装置40に各発光装置10との通信機能を持たせてもよい。例えば、位置管理装置40は、位置検出部41と通信部42を持つ。なお、この通信部42は中央管理装置30側に設けることも可能である。
【0042】
位置検出部41は、発光装置10のICタグから発信される無線信号を受信するリーダを備える。例えば、無線信号のリーダは天井や壁面に複数設置されており、各リーダにおいて、1つの発光装置10のICタグから発信された無線信号の強度を検出することにより、各リーダからICタグまでの距離を測定する。位置検出部41は、複数のリーダから1つの発光装置10までの距離を求めることで、三角測量法などによってその発光装置10の座標値(X,Y)を求めることができる。なお、ICタグから発信される無線信号には、各発光装置10のID情報が含まれているため、位置検出部41は、このID情報に基づいて、上記のようにして測定した座標値に存在する発光装置10を特定することが可能である。位置検出部41は、このようにして各発光装置10の位置情報(座標値)を定期的に取得して、中央制御部31へと伝達する。中央制御部31は、位置検出部41から受信した位置情報をデータベース32内のテーブルに登録する。
【0043】
通信部42は、各発光装置10との間で各種データの送受信を行うための要素である。通信部42は、前述した発光装置10の通信部15と同様に、無線LAN(Local Area Network)方式で無線通信を行うための機能を有する。通信部42によって送信されるデータの例は、発光部12の発光状態を制御するための発光データである。
【0044】
次に、
図4を参照して、コップ20に搭載された発光装置10の基本的な発光フローの一例について説明する。
図4に示されるように、本実施形態では、発光装置10の制御部11は、液体検知センサ17によってコップ20内の液体が検知されたときに、発光部12の発光を開始する(ステップS1-1,S1-2)。この段階では、発光部12の発光状態は、前述した「現在値」に基づいて制御される。なお、コップ20内の液体が注がれてない状態では、発光部12の発光は開始されず、常時消灯したままとなる。また、発光開始時に放音部16から所定の効果音を出力することも可能である。また、発光期間の間、放音部16からBGMを出力し続けることとしてもよい。
【0045】
次に、発光装置10の制御部11は、加速度センサ18によって所定の閾値以上の加速度が検出されたときに、発光部12の発光状態を変化させる(ステップS1-3,S1-4)。加速度の閾値は、例えばコップ20が人手によって持ち上げられたときの加速度や、コップ20が横に移動させられるときの加速度として一般的に想定される値に設定すればよい。閾値以上の加速度が検出された場合、制御部11は、例えば、発光部12の点滅を開始したり、点滅の周期を変化させたり、発光色を変化させたりすることができる。この段階では、発光部12の発光状態は、前述した「デフォルト値」に基づいて制御される。また、発光状態を変化させるとともに、放音部16から所定の効果音を出力したり、あるいは既にBGMが出力されている場合には、BGMのテンポや音量を変化させたり、BGM自体を切り替えたりすることも可能である。
【0046】
なお、本実施形態では、発光状態を変化させるトリガーを、所定の加速度の検出時としたが、トリガーは加速度に限定されない。例えば、コップ20の傾きの変化を検知したときや、コップ20の高度の変化を検知したとき、コップ20内の液体の温度の変化を検知したとき、コップ20の振動を検知したときなどを、発光状態を変化させるトリガーとすることも可能である。また、コップ20が人手によって把持されたときや、コップ20の周囲の明度が変化したときなどを、発光状態を変化させるトリガーとすることも可能である。この場合、上記のトリガーの検出に適したセンサ(傾きセンサ、高度センサ、温度センサ、振動センサ、圧力センサ、明度センサ等)を発光装置10に搭載すればよい。
【0047】
次に、発光装置10の制御部11は、加速度センサ18によって所定の閾値以上のコップ20の傾きが検出されたときに、発光部12の発光を停止させる(ステップS1-5,S1-6)。傾きの閾値は、コップ20を手で持って、そこに注がれた液体を飲み切るのに必要とされるコップ20の角度に設定すればよい。なお、本実施形態では、前述のように、発光状態を変化させるトリガーをコップ20が人手によって持ち上げられたときの加速度に設定している関係上、利用者がコップ20の中の液体を飲むときにストローを使用することは想定しておらず、このコップ20を直接手で持って飲むことを想定している。手で持ってコップ20内の液体を飲み切ろうとすると、必ずコップ20の傾きをある角度以上とすることが必要となるため、このときの角度を閾値に設定すればよい。閾値以上のコップ20の傾きが検出されるまでは、発光部12は点灯したままとなる。このように、発光停止のトリガーをコップ20の傾きとすることで、仮にコップ20内部に多少水滴が残っていても、確実に発光部12の発光を停止させることが可能となる。
【0048】
図4のフロー図に示されるように、発光部12の発光を開始時(ステップS1-2)から発光停止時(ステップS1-6)までの間が発光装置10の発光期間となる。そして、発光期間中となっている発光装置10については、発光期間中にある他の発光装置10と発光状態を同期する処理が行われる。この発光同期処理について
図5及び
図6を参照してさらに詳しく説明する。
【0049】
図5は、発光期間中における発光装置10と管理装置50(中央管理装置30及び位置管理装置40)の処理を示している。本願明細書では、便宜的に、発光状態を変化させるトリガーとなる状態変化が検出され、発光状態がデフォルト値に変更された発光装置10(ステップS1-3,S1-4)を「第1の発光装置」とし、それ以外の発光装置10を「第2の発光装置」としている。すなわち、第1の発光装置は、一又は複数の第2の発光装置に対して影響を与える側の装置であり、第2の発光装置は、第1の発光装置から影響を受ける側の装置である。また、
図6は、第1の発光装置と第2の発光装置の発光パターンの例を模式的に示している。
【0050】
図5に示されるように、第1及び第2の発光装置10は、現在値に基づいて発光状態を制御する(ステップS2-1)。ここでの発光状態は、基本的には
図4に示したステップS1-2と同様である。各発光装置10の現在値は、管理装置50によって決定したものであってもよいし、各発光装置10が固有に有するものであってもよい。管理装置50において現在値を決定する場合、管理装置50の中央制御部31は、各発光装置10の現在値を例えばランダムに決定して、予め各発光装置10に送信しておく。このとき、中央制御部31は、データベース32に登録されているテーブルデータのうち、全ての発光装置10のID情報と現在値情報を抽出して、各発光装置10に対して一斉送信(ブロードキャスト)しておけばよい。そして、各発光装置10は、自己のID情報に紐付けられた現在値情報を抽出して、発光状態の制御に利用する。これにより、管理装置50から発光装置10に対して個別に通信を行う場合と比較して、通信量を節減することができる。
【0051】
続いて、第1及び第2の発光装置10と管理装置50との間で定期的に行われる処理について説明する。この定期処理では、各発光装置10のICタグ13から位置測定用の無線信号が発信され(ステップS2-2)、管理装置50の位置検出部41はこの無線信号に基づいて各発光装置10の位置情報を取得する(ステップS2-3)。各発光装置10の位置情報は中央制御部31に伝達される。
【0052】
次に、管理装置50のデフォルト値決定部31bは、各発光装置10のデフォルト値を決定する(ステップS2-4)。デフォルト値は、ランダムに決定されるものであってもよいし、各発光装置10の位置情報に基づいて決定されるものであってもよい。例えば、所定の距離内に位置する発光装置10については、同一のデフォルト値を設定することとしてもよいし、その他の光演出の都合に応じたデフォルト値を設定することもできる。例えば、同じ食卓に並べられている発光装置10については、点滅の周期は同じで、それぞれ発光色の異なるデフォルト値を設定するなど、適宜光演出の都合に応じてデフォルト値を調することが可能である。また、例えば、最も距離の近い2つの発光装置10同士でペアを形成し、このペアごとにデフォルト値を決定することもできる。例えばペアを組んだ発光装置10については、点滅の周期を統一しつつ、点滅の位相を反転させたり、発光色を変えたりしたデフォルト値を割り当てることもできる。
【0053】
次に、管理装置50のテーブル更新部31aは、データベース32に記録されているテーブルデータを更新する(ステップS2-5)。具体的には、ステップS2-3で取得した各発光装置10の最新の位置情報の位置情報フィールドに登録する。また、ステップS2-4で決定した各発光装置10の新しいデフォルト値をデフォルト値フィールドに登録する。このように、テーブル更新部31aによってテーブルデータ内の情報は随時更新されることなる。
【0054】
次に、管理装置50の発光データ発信部31eは、各発光装置10のデフォルト値の変更があった場合に、すべて発光装置10に対して最新のデフォルト値を含む発光データを通信部42を介して一斉送信(ブロードキャスト)する(ステップS2-6)。具体的には、管理装置50の中央制御部31は、データベース32に登録されているテーブルデータのうち、全ての発光装置10のID情報とデフォルト値を抽出して、各発光装置10に対して一斉送信しておけばよい。そして、各発光装置10は、自己のID情報に紐付けられたデフォルト値を抽出して、発光状態の制御に利用する。これにより、管理装置50から発光装置10に対して個別に通信を行う場合と比較して、通信量を節減することができる。各発光装置10は、管理装置50から新しいデフォルト値を含む発光データを受信すると、これをメモリ又は記憶部14に保存する(ステップS2-7)。なお、デフォルト値に特に変更がない場合には、この一斉送信処理(ステップS2-6,S2-7)は省略することができる。
【0055】
ここまでが、各発光装置10と管理装置50との間で定期的かつ自動的に実行される処理となる。この定期処理を実行する周期は適宜調整可能であるが、例えば5分毎、10分毎、15分毎、20分毎、25分毎、又は30分毎など周期で定期処理を行うことが好ましい。
【0056】
続いて、第1の発光装置10において所定の状態変化(本実施形態では閾値以上の加速度)が検出された場合のインタラクション処理について説明する。このインタラクション処理は、前述した定期処理(ステップS2-2~S2-7)とは異なり、トリガーとなる所定の状態変化が検出される度に実行されるものである。言い換えると、トリガーととなる所定の状態変化が検出されない限りは、このインタラクション処理は実行されない。
【0057】
まず、第1の発光装置10において、所定の閾値以上の加速度が検出されると、第1の発光装置10の発光状態がデフォルト値に変更される。これにより、インタラクション処理が開始される。例えば、第1の発光装置10が搭載されたコップ20が食卓から持ち上げられると、発光装置10の発光状態がデフォルト値に変更される。第1の発光装置10は、発光状態がデフォルト値に変更された場合、その旨を通信部15を介して管理装置50に通知する(ステップS2-8)。
【0058】
次に、管理装置50は、第1の発光装置10からデフォルト値への変更通知を取得する(ステップS2-9)。この場合、管理装置50の目標値算出部31cは、すべて発光装置10の位置情報に基づいて、各発光装置10の目標値を算出(決定)する演算を行うステップS2-10)。本実施形態において、所定の距離範囲内に存在する発光装置10は、次第に発光状態が近づいていき、最終的には同じ発光状態となる演出を行うことを目標にしている。このため、管理装置50の目標値算出部31cは、所定距離内に存在する発光装置10の点滅周期と点滅位相が一致するように、各発光装置10の目標値を算出することが好ましい。また、近くに存在する発光装置10の点滅周期と位相だけでなく、発光色や発光強度を一致させることもできる。ただし、発光装置10と点滅周期と位相だけを揃えて、発光色や発光強度を異ならせるような演出を行うことも可能である。例えば、同じ食卓に並べられたコップ20の発光装置10については目標値を統一すればよい。また、最も近い距離に位置する発光装置10同士でペアを形成し、このペアを組んだ発光装置10の目標値を一致させることとしてもよい。
【0059】
次に、管理装置50の途中値算出部31dは、各発光装置10について、現在の発光状態(現在値又はデフォルト値)から、ステップS2-9で決定された目標値に至るまでの途中値を算出する(ステップS2-11)。途中値は、現在の発光状態から目標値に至る過程が不自然な発光状態とならないように、現在の発光状態から目標値までの中間的な発光状態を規定する情報である。このため、途中値は、現在の発光状態(現在値又はデフォルト値)と目標値の中間的な値とすればよい。また、途中値には、目標値に到達するまでの時間や時刻に関する情報(例えば何秒以内に目標値到達せよ、あるいは何時何分何秒までに目標値に到達せよという情報)を含めることもできる。
【0060】
次に、管理装置50のテーブル更新部31aは、データベース32に記録されているテーブルデータを更新する(ステップS2-12)。具体的には、ステップS2-10で算出した各発光装置10の新しい目標値を目標値フィールドに登録する。また、ステップS2-11で決定した各発光装置10の新しい途中値を途中値フィールドに登録する。このように、インタラクション処理においても、テーブル更新部31aによってテーブルデータ内の情報は随時更新される。
【0061】
次に、管理装置50の発光データ発信部31eは、各発光装置10の目標値及び途中値に変更があった場合に、すべて発光装置10に対して最新の目標値及び途中値を含む発光データを通信部42を介して一斉送信(ブロードキャスト)する(ステップS2-13)。具体的には、管理装置50の中央制御部31は、データベース32に登録されているテーブルデータのうち、全ての発光装置10のID情報、目標値、及び途中値を抽出して、各発光装置10に対して一斉送信しておけばよい。そして、各発光装置10は、自己のID情報に紐付けられた目標値及び途中値を抽出して、発光状態の制御に利用する。これにより、管理装置50から発光装置10に対して個別に通信を行う場合と比較して、通信量を節減することができる。各発光装置10は、管理装置50から新しい目標値及び途中値を含む発光データを受信すると、これをメモリ又は記憶部14に保存する(ステップS2-14)。
【0062】
次に、第1の発光装置10及び第2の発光装置20は、管理装置50から新しい目標値及び途中値を含む発光データを受信すると、それぞれ、現在の発光状態(現在値又はデフォルト値)から新しい途中値を経由して新しい目標値に到達するように、自己の発光状態の制御を行う(ステップS2-15,S2-16)。
図6には、発光状態(発光パターン)の変化の一例が示されている。第1の発光装置10は、最初は、現在値で規定されるパターン(点滅周期、位相、及び強度)で発光していたが、コップ20が食卓から持ち上げられたことで加速度が閾値を超えたため、デフォルト値で規定されるパターンでの発光状態に変更される。その後、第1の発光装置10は、デフォルト値と目標値の中間的な途中値のパターンを経て、最終的には目標値で規定されるパターンでの発光を開始する。他方で、第2の発光装置10は、第1の発光装置10の所定距離範囲内に位置するものであるが、現在値で規定されるパターンの発光を続けており、コップ20が食卓から持ち上げられるといったような状態変化もおきていない。ただし、第1の発光装置10の発光状態がデフォルト値に変更されたことに伴って、この第2の発光装置についても途中値及び目標値が管理装置50から送信されてくる。このため、第2の発光装置も、現在値と目標値の中間的な途中値のパターンを経て、最終的には目標値で規定されるパターンでの発光を開始するようになる。第1の発光装置と第2の発光装置の目標値のパターンは一致しており、目標値での発光期間中は、第1の発光装置と第2の発光装置の点滅周期、位相、及び強度が一致することとなる。
【0063】
なお、目標値での発光期間に制限を設けておき、一定期間の間目標値で発光した後は、各発光装置の発光状態は個々の現在値に戻るように設定されていてもよい。また、途中値及び目標値での発光期間中に、コップ20が食卓から持ち上げられるといったような状態変化が生じた場合、その時点で、発光装置10の発光状態はデフォルト値に変更されることとなる。デフォルト値への変更がなされると、前述したインタラクション処理(ステップS2-8~S2-16)が開始されることとなる。
【0064】
上記フローに従って、第1の発光装置と第2の発光装置の発光状態を制御することで、それぞれの姿勢や位置の変化によって互いの発光状態が相互に影響し合う光演出を実現することができる。飲食店で利用されるコップ20等に発光装置10を搭載しておくことで、食卓を華やかにすることができる。また、飲食店での利用に限られず、本発明は、その他の屋内又は屋外で開催されるイベントなどにおいても好適に利用し得る。
【0065】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0066】
10…発光装置 11…制御部
12…発光部 13…ICタグ
14…記憶部 15…通信部
16…放音部 17…液体検知センサ
18…加速度センサ 20…コップ
21…側壁 22…底面
23…隔壁 24…液体用空間
25…装置用空間 30…中央管理装置
31…中央制御部31 31a…テーブル更新部
31b…デフォルト値決定部 31c…目標値算出部
31d…途中値算出部 31e…発光データ送信部
40…位置管理装置 41…位置検出部
42…通信部 50…管理装置
100…発光制御システム