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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088308
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】立体造形物色入れ方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220607BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220607BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20220607BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20220607BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220607BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220607BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B33Y80/00
B41J2/01 305
B05C13/02
B05C5/00 101
B05D7/00 K
B05D7/00 N
B05D3/00 G
B05D1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137019
(22)【出願日】2021-08-25
(62)【分割の表示】P 2020200271の分割
【原出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】516145574
【氏名又は名称】ウェッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】細矢 伸人
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA07
2C056EC12
2C056EC35
2C056FA10
2C056FA15
2C056FB10
2C056HA29
2C056HA60
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC86
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE03
4D075BB08X
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075DA31
4D075DB01
4D075DB31
4D075DC18
4D075DC38
4D075DC41
4D075EA05
4D075EA21
4D075EA33
4D075EC30
4F041AA01
4F041AA17
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA23
4F042AA01
4F042AA28
4F042AB00
4F042BA08
4F042CB03
4F042DF05
4F042DF07
4F042DF12
(57)【要約】
【課題】立体形状のワークの凹部に高精度な色入れを効率的に行う。
【解決手段】立体形状のワーク110の凹部110cに色入れを行う立体造形物色入れシステム100において、水平方向に移動しながらインクを凹部に向けて吐出するインクヘッド102と、インクヘッドの移動方向に対して垂直方向に移動するワークテーブル104と、ワークの位置決めをして保持するワーク保持孔106a1が複数設けられており、ワークテーブルに固定される保持治具106と、保持治具をワークテーブルに対して固定する複数の固定ねじ108と、を備え、インクヘッドは、ワークの凹部にのみインクを吐出するように移動及び吐出の動作が制御されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状のワークの凹部に色入れを行う立体造形物色入れ方法において、
前記ワークを、前記ワークの保持治具に位置決めをして設置する工程と、
前記ワークを設置した前記保持治具をインクジェットプリンターのワークテーブルに固定する工程と、
前記インクジェットプリンターのインクヘッドを作動させて前記凹部に向けてインクを吐出させる工程と、を有し、
前記保持治具と前記ワークテーブルは、前記保持治具を前記ワークテーブルの同じ位置に繰り返し固定可能に構成されている、
立体造形物色入れ方法。
【請求項2】
前記保持治具を前記ワークテーブルに固定する際に、皿ねじの座面を前記保持治具のテーパ面に当接させつつ前記皿ねじを前記ワークテーブルに締結することにより、前記保持治具を前記ワークテーブルの同じ位置に繰り返し固定可能とする、
請求項1記載の立体造形物色入れ方法。
【請求項3】
立体造形物において、
請求項1又は2に記載の立体造形物色入れ方法により色入れした凹部を有する、
立体造形物。
【請求項4】
色入れした凹部を有する立体造形物の製造方法において、
請求項1又は2に記載の立体造形物色入れ方法を実行することにより立体造形物を得る、
立体造形物の製造方法。
【請求項5】
インクジェットプリンターのワークテーブルに固定され、立体形状のワークの凹部に色入れを行う立体造形物の色入れに用いる前記ワークの保持治具において、
前記ワークテーブルに固定する際に、相互に当接することで位置決めされる一対の斜面によって前記ワークテーブルの同じ位置に繰り返し固定可能に構成される、
保持治具。
【請求項6】
前記一対の斜面は、前記保持治具を前記ワークテーブルに固定する皿ねじの座面と、前記保持治具に設けるねじ穴のテーパ面である、
請求項5記載の保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形物に色入れする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電化製品やレジャー用品、容器、部品、日用品、文房具等の立体造形物に各種カラーの印刷や色入れによる加飾デザインを施す際に、インクジェットプリンターによるフルカラー印刷が使用されることがある。インクジェットプリンターによるフルカラー印刷は、データを用いて無製版での印刷が可能なため、立体造形物の加飾デザインをする際におけるコストや労力、時間の低減を図るためにも使用される。
【0003】
立体造形物の加飾デザインにインクジェットプリンターを使用した関連技術として、例えば、特許文献1には、被印刷物が搭載される移載治具に設けられた位置決め手段により被印刷物の相互の位置関係の位置決めをして、完成される立体形状印刷物の印刷品質を高められる立体形状印刷物用印刷治具が開示されている。一方、特許文献2には、複数の開孔を有する被印刷物載置手段に各種形状の被印刷物取り付け手段を用いて、各種形状の被印刷物をインクジェットプリンターで加飾印刷を可能にする立体印刷物用印刷治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-136764号公報
【特許文献2】特開2012-000603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェットプリンターを用いて立体造形物に加飾デザインを繰り返し施すことによって、加飾部位の位置ずれが発生することがあった。特に、立体形状のワークに施す加飾デザインとして、文字や模様等を構成する凹部に所望のカラーのインクを色入れする場合に、加飾部位の位置ずれが生じない高精度な色入れを行うためには、より多くの労力と時間を要するものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、立体形状のワークの凹部に高精度な色入れを効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、立体形状のワークの凹部に色入れを行う立体造形物色入れシステムにおいて、水平方向に移動しながらインクを前記凹部に向けて吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドの移動方向に対して垂直方向に移動するワークテーブルと、前記ワークの位置決めをして保持するワーク保持孔が複数設けられており、前記ワークテーブルに固定される保持治具と、前記保持治具を前記ワークテーブルに対して固定する複数の固定ねじと、を備え、前記インクヘッドは、前記ワークの前記凹部にのみ前記インクを吐出するように移動及び吐出の動作が制御されている。
【0008】
本発明の一態様によれば、複数の立体形状のワークを保持治具に高精度に位置決め固定してから、ワークの凹部にのみインクを吐出するインクヘッドにより色入れを行うため、複数の立体形状のワークの凹部に精度よく効率的に色入れを行えるようになる。
【0009】
また、本発明の他の態様は、立体形状のワークの凹部に色入れを行う立体造形物色入れ方法において、前記ワークの位置決めをして保持するワーク保持孔が複数設けられている保持治具の前記ワーク保持孔に前記ワークをそれぞれ設置する工程と、前記保持治具の前記ワーク保持孔のそれぞれに前記ワークが設置されているかを確認する工程と、前記ワーク保持孔のそれぞれに前記ワークを設置した前記保持治具をインクジェットプリンターのワークテーブルに固定する工程と、前記インクジェットプリンターのインクヘッドを作動させて前記ワークの前記凹部に向けてインクを吐出させる工程と、を有する。
【0010】
本発明の他の態様によれば、複数の立体形状のワークを保持治具にそれぞれ固定してから、ワークの凹部にのみインクを吐出するインクヘッドにより色入れを行うため、複数の立体形状のワークの凹部に精度よく効率的に色入れを行えるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立体形状のワークの凹部に高精度な色入れを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムの概略構成を示す斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムに備わる治具の概略構成を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムによる色入れ対象となるワークの構成を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムの概略構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムの概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1のA-A線断面図である。なお、図1では、本実施形態の立体造形物色入れシステムの概略構成を説明するために、立体造形物色入れシステムの構成要素のうち、要部のみを取り上げて図示するものとなっている。
【0015】
本実施形態の立体造形物色入れシステム100は、主に産業用の中型・大型のインクジェットプリンター101を用いて、立体形状のワーク110の凹部110cに所望のカラーのインクの色入れを行う際に適用される。立体造形物色入れシステム100は、図1に示すように、インクヘッド102と、ワークテーブル104と、保持治具106と、固定ねじ108と、を備えている。すなわち、立体造形物色入れシステム100は、インクジェットプリンター101のワークテーブル104に保持治具106を固定ねじ108で固定して構成されている。
【0016】
インクヘッド102は、複数のインクジェットノズルを備えており、不図示の移動手段に沿って水平方向(図1に示すY軸方向)に移動しながら、インクを色入れ対象物となるワーク110の凹部110cに向けて吐出する機能を有する。インクヘッド102は、ユーザの入力データに基づいて、所望の部位にインクを吐出して色入れを行うために、水平方向への移動と、凹部110cへのインクの吐出の動作が不図示の制御部で制御されている。
【0017】
本実施形態では、インクヘッド102は、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、Bk(ブラック)、W(ホワイト)の各色のインクをそれぞれ吐出する複数のインクジェットノズルが設けられている。また、本実施形態では、色入れ対象となる立体形状のワーク110が樹脂や金属等で構成されるため、UVインクやUV硬化インク等の油系インクが用いられている。
【0018】
本実施形態では、インクヘッド102は、前述したように、ワーク110の凹部110cにのみインクを吐出するように移動及び吐出の動作が制御されている。その際に、インクヘッド102は、水平方向の双方向に移動する際にインクを凹部110cに向けて吐出するように動作制御がされている。すなわち、インクヘッド102は、ワークテーブル104の幅方向を往復移動する際に、往路及び復路の何れの方向での移動でもインクを吐出するように制御されている。また、本実施形態では、インクヘッド102は、インクとして白色インクをワーク110の凸状面110aに形成されている凹部110cに吐出してから、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、Bk(ブラック)等の他色インクを凹部110cに吐出するように制御されている。
【0019】
ワークテーブル104は、水平方向(図1に示すY軸方向)に移動するインクヘッド102の動きに連動して、色入れ対象となるワーク110を送り出すテーブルとしての機能を有する。本実施形態では、ワークテーブル104は、不図示の移動機構によってインクヘッド102の移動方向(図1に示すY軸方向)に対して垂直方向(図1に示すX軸方向)に移動するように制御されている。また、ワークテーブル104には、保持治具106を固定するための固定ねじ108と嵌合するねじ孔104a(図2参照)が四隅と中央に形成されている。
【0020】
保持治具106は、ワークテーブル104に固定されており、ワーク110の位置決めをして保持する機能を有する。保持治具106は、図1に示すように、複数のワーク保持孔106a1が規則的に形成されている板状の保持板部106aと、保持板部106aの外縁に立設する側壁枠106bと、を備える。保持板部106aには、四隅と中央に固定ねじ108が嵌合される嵌合孔106a2が形成されている。嵌合孔106a2は、図2に示すように、保持板部106aの上面から底面に向けて縮径するように形成されており、外縁がテーパ面106a3となっている。なお、保持治具106の構成の詳細については、後述する。
【0021】
固定ねじ108は、保持治具106をワークテーブル104に対して固定する機能を有する。本実施形態では、固定ねじ108は、図2に示すように、上面側が平らで座面108cが円すい形の頭部108aと、ワークテーブル104のねじ孔104aに嵌合される軸部108bとを備える皿ねじで構成されるボルトである。なお、本実施形態では、固定ねじ108は、保持治具106の保持板部106aの四隅と中央に取り付けられて固定されているが、保持治具106の保持板部106aを定位置に固定するためには、少なくとも3カ所に取り付けられていればよい。
【0022】
次に、本実施形態の立体造形物色入れシステムに備わる保持治具の構成について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムに備わる保持治具の構成を示す斜視図である。
【0023】
本実施形態では、保持治具106は、SUS等の硬質な金属で形成されており、色入れ対象となる複数のワークの位置決めをして、安定的に保持できるように構成されている。保持治具106は、図3に示すように、保持板部106aと、側壁枠106bと、を備える構成となっている。なお、保持治具106の材質は、SUS以外の他の金属や樹脂等でもレーザ加工機でのレーザカットが可能な材質であれば、適用可能である。
【0024】
保持板部106aは、ワークの位置決めをして保持するワーク保持孔106a1が複数形成されている板状部材である。本実施形態では、保持板部106aは、図3に示すように、矩形形状であるが、その形状は、矩形形状に限定されず、他の形状としてもよい。
【0025】
保持板部106aに形成されているワーク保持孔106a1は、図3に示すように、保持板部106aの縦方向(図3に示すX軸方向)及び横方向(図3に示すY軸方向)にそれぞれ一定の間隔で配置されている。また、ワーク保持孔106a1は、位置精度を高めるために、保持板部106aをレーザ加工機によりレーザカット孔を形成することによって構成されている。
【0026】
側壁枠106bは、図3に示すように、保持板部106aの外縁に立設するように設けられている。本実施形態では、側壁枠106bは、保持板部106aの外縁を内側に折り曲げて保持板部106aに対して立設するように形成されている。具体的には、側壁枠106bは、矩形形状の板状部材となる保持板部106aの各辺を内側に折り曲げて加工することによって形成されている。なお、本実施形態では、側壁枠106bは、保持板部106aの外縁を内側に折り曲げて形成されているが、保持板部106aの輪郭と同じ形状の枠部材を側壁枠106bとして作成してから、後付けて保持板部106aの外縁に接着等により取り付けて構成してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の立体造形物色入れシステムの色入れ対象となるワークの構成について、図面を使用しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムによる色入れ対象となるワークの構成を示す斜視図である。
【0028】
立体造形物色入れシステム100の色入れ対象となるワーク110は、ABS、ABS/PC、PC、PMMA等の樹脂や鉄・非鉄金属等の金属から形成され、図4に示すように、底面110bに対して上方に曲面形状に突出した凸状面110aが設けられている構成となっている。本実施形態では、ワーク110は、例えば、底面110bが5~10mm四方の矩形で高さが2mm程度の薄型の凸状面110aを有する立体造形物となっている。
【0029】
ワーク110の凸状面110aには、所定の造形デザインを施した凹部110cが掘削等により形成されている。本実施形態では、凹部110cは、図4に示すように、凸状面110aのうち、凸状面110aの頂部から底面110bの外縁に至るまでの高さ方向が異なる段差を有する片斜曲面に数mm四方の範囲内に連続的に形成されている。すなわち、凹部110cは、高さ方向に段差を有する構成となっている。なお、ワーク110の凸状面110aに形成される凹部110cの構成は、図4に示す例に限定されず、凸状面110aの範囲内に形成されていれば、例えば、文字や数字、その他各種形状の図形や模様等の構成としてもよい。
【0030】
また、本実施形態の立体造形物色入れシステム100の色入れ対象となるワーク110の形状は、図4に示す構成に限定されない。すなわち、ワーク110は、上方に突出した凸状面110aが設けられており、当該凸状面110aに高さ方向に段差を有する凹部110cが形成されている構成となっていれば、他の構成としても、本実施形態の立体造形物色入れシステム100の色入れ対象として適用可能である。例えば、直方体や立方体、円柱、円錐台等の立体の頂面側に斜面や曲面からなる凸状面が設けられているワークの凸状面に高さ方向に段差を有する凹部が形成されているような形状のワークにも適用される。
【0031】
次に、本実施形態の立体造形物色入れシステムの動作の詳細について、図面を使用しながら説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステムの動作説明図である。
【0032】
本実施形態の立体造形物色入れシステム100は、前述したように、色入れ対象が数ミリ単位の大きさのワーク110である。そして、立体造形物色入れシステム100は、インクジェットプリンター101(図1参照)を使用しながら、そのワーク110の凸状面110aに形成されている高さ方向に段差を有する凹部110cに位置ずれすることなく、精度よく色入れするものとなっている。
【0033】
本実施形態では、ワーク110は、例えば、底面110bが5~10mm四方の矩形で高さh2が2mm程度の薄型の凸状面110aを有する立体造形物となっており、図5に示すように、その凸状面110aの片側に凹部110cが高さ方向に段差を有するように、形成されている。このような構成のワーク110に対して、インクヘッド102が例えば500~600mm/秒の速度で移動しながら、ワーク110の底面からの高さh1が2.5~3.0mm、すなわち、ワーク110の凸状面110aの頂部からの高さh3が0.5~1.0mmの距離からインクを凸状面110aの凹部110cに向けて吐出すると、インクヘッド102から吐出したインクが凹部110cから位置ずれすることなく、色入れが行えるものとなっている。
【0034】
次に、本実施形態の立体造形物色入れシステム100を使用して、立体形状のワーク110の凹部110cに色入れを行う立体造形物色入れ方法について説明する。
【0035】
本実施形態の立体造形物色入れ方法は、前述した立体造形物色入れシステム100を使用して、立体形状のワーク110の凹部110cに色入れを行う。具体的には、本実施形態の立体造形物色入れ方法は、産業用の中型・大型のインクジェットプリンター101を用いて、複数の立体形状のワーク110の凹部110cにまとめて色入れを行う。
【0036】
本実施形態では、まず、保持治具106のワーク保持孔106a1にそれぞれワーク110を設置する。本実施形態では、保持治具106の保持板部106aに複数のワーク保持孔106a1が形成されているので、ワーク保持孔106a1のそれぞれにワーク110を嵌合させて設置する。
【0037】
保持治具106のワーク保持孔106a1のそれぞれにワーク110を設置したら、次にワーク保持孔106a1のそれぞれにワーク110が完全に設置されているかを確認する。本実施形態では、ワーク110が所望の向きを向いて設置されているかの確認と、ワーク110の下端側がワーク保持孔106a1に最後まで嵌合されて設置されているかの確認とを目視により行う。
【0038】
ワーク110がワーク保持孔106a1のそれぞれに完全に設置されているかの確認が済んだら、次に、ワーク110を設置した保持治具106をインクジェットプリンター101のワークテーブル104に固定する。本実施形態では、皿ねじで構成されるボルトからなる固定ねじ108を用いて、保持治具106をワークテーブル104に固定する。
【0039】
保持治具106をワークテーブル104に固定したら、次に、インクジェットプリンター101のインクヘッド102を作動させて、ワーク110の凹部110cに向けてインクを吐出させる。本実施形態では、インクジェットプリンター101を用いて、ユーザが事前に入力したデータに基づいて、保持治具106に設置された複数のワーク110の凹部110cのそれぞれに向けてインクを吐出させることによって、ワーク110の凹部110cに色入れを行っている。
【0040】
このようにして、本実施形態の立体造形物色入れ方法では、インクジェットプリンター101を用いて、ユーザが事前に設定したデータに基づいて複数の立体形状のワーク110の凸状面110aに形成されている凹部110cに色入れを効率的に行えるようになる。特に、本実施形態では、インクジェットプリンター101のワークテーブル104に取り付けられる保持治具106がワーク110を所定の位置に精度よく設置してから、ずれないように確実に保持するので、効率的に立体形状のワーク110の凹部110cに高精度な色入れを行えるようになる。
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る立体造形物色入れシステム100及び立体造形物色入れ方法の作用・効果について説明する。
【0042】
本実施形態の立体造形物色入れシステム100では、複数の立体形状のワーク110を保持治具106に高精度に位置決め固定してから、インクヘッド102が各ワーク110の凹部110cのそれぞれにのみインクを吐出することによって色入れを行うように、動作制御されている。このため、インクジェットプリンター101を用いてユーザが事前に設定したデータに基づいて、複数の立体形状のワーク110の凹部110cに対して効率的に高精度な色入れを容易に行えるようになる。
【0043】
また、本実施形態では、保持治具106の保持板部106aに設けられているワーク保持孔106a1は、レーザ加工機により形成されているレーザカット孔により構成されている。このため、ワーク保持孔106a1は、±5/100mm、すなわち、0.1mmのレンジでの位置精度が担保されるようになる。
【0044】
さらに、本実施形態では、ワーク保持孔106a1は、保持板部106aの縦方向及び横方向にそれぞれ一定の間隔で規則的に配置されている。このため、保持治具106の各ワーク保持孔106a1のそれぞれにワーク110を嵌合させて設置した際に、それぞれのワーク110が各ワーク保持孔106a1に向きと嵌合具合を目視により容易に確認し易くなる。これによって、ワーク110の凹部110cに対する位置ずれを生じない高精度な色入れを確実に行えるようになる。
【0045】
また、本実施形態では、保持治具106は、ワーク保持孔106a1が形成されている板状の保持板部106aの外縁に側壁枠106bが立設するように設けられている。保持治具106を応力のある金属板から製造する場合には、加工の際の熱やプレスエネルギーによって、ワーク保持孔106a1が形成される保持板部106aが反ってしまうことが懸念されていた。
【0046】
このため、本実施形態では、保持治具106を製造する際に、保持板部106aの外側の4辺からなる外縁を内側に折り曲げて立設するようにして、保持板部106aの外縁に側壁枠106bを設けるようにしている。これによって、ワーク110を保持する保持治具106は、保持板部106aの反りが抑制されて、ワーク保持孔106a1が形成されている保持板部106aの平坦性を確保できるようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、ワークテーブル104に保持治具106を固定する固定ねじ108が皿ねじであり、保持治具106の保持板部106aに設けられている固定ねじ108の嵌合孔106a2が保持板部106aの上面から底面に向けて縮径するように形成されている。このため、皿ねじからなる固定ねじ108の座面108cが保持板部106aの嵌合孔106a2のテーパ面106a3に当接するようになるので、より確実に保持治具106をワークテーブル104に対してずらさずに、同じ位置に固定して、保持治具106に設置されたワーク110の位置精度を向上させるので、繰り返し精度の担保を図れるようになる。
【0048】
さらに、本実施形態では、インクヘッド102は、水平方向の双方向に移動する際にインクをワーク110の凹部110cに向けて吐出するように動作制御されている。このため、インクヘッド102の一方向の移動時のみにインクを吐出する場合と比べて、インクヘッド102の速度を落としても、確実にワーク110の凹部110cにインクを吐出することができ、位置精度を高められるようになる。その結果、複数のワーク110の凹部110cへの高精度な色入れを行うトータル時間も短縮できるようになる。
【0049】
また、本実施形態では、インクヘッド102は、インクとして白色インクを凹部110cに吐出してから、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、Bk(ブラック)からなる他色インクを凹部110cに吐出するように制御されている。このように、最初に白色インクで凹部110cに色入れをしてから、他色インクで凹部110cに色入れをすることによって、色入れ対象のワーク110が黒色等の有色の場合でも、より鮮明に所望のカラーで高精度な色入れが行えるようになる。
【0050】
このように、本実施形態の立体造形物色入れシステム100及び立体造形物色入れ方法を適用することによって、色入れ対象がミリ単位の立体造形物のワーク110に対して、短時間で効率的に高精度な色入れを行えるようになる。すなわち、従来では、色入れ対象がミリ単位の立体造形物のワーク110に対しては、精度よく色入れを行うためには、専ら注射器を使ってインクや塗料を凹部に流し込み、インク等が硬化したら溶剤ではみ出た部分を拭き取るような手作業で行われることが多かった。このため、同じ立体造形物の量産品のワークに対して、位置ずれすることなく高精度な色入れを行うには、多くの労力と時間を要するものとなっていた。
【0051】
これに対して、本実施形態の立体造形物色入れシステム100及び立体造形物色入れ方法では、複数の立体形状のワーク110を保持治具106に設置してから、インクジェットプリンター101を用いて、色入れ作業を行っている。その際に、ユーザが事前に入力したデータに基づいて、インクヘッド102が所望のカラーのインクをワーク110の凹部110cにのみ吐出するように動作制御を行うことによって、短時間で効率よく複数のワーク110の凹部110cに対して色入れ作業を行えるようになっている。具体的には、16分で285個の色入れが行えることから、1個当たり3.4秒でワーク110の凹部110cに色入れを行えるようになっている。
【0052】
また、本実施形態では、皿ねじからなる固定ねじ108を用いて、ワーク保持孔106a1をレーザカット孔とした保持治具106をワークテーブル104に固定するので、色入れ対象となるワーク110の位置精度と、色入れ作業の繰り返し精度の双方とも高められるようになる。すなわち、インクジェットプリンター101と、ワーク110を保持するワーク保持孔106a1の位置精度と、ワークテーブル104に対して同じ場所に固定できる繰り返し精度が高い保持治具106とを用いて、まとめて複数の立体形状のワーク110の凹部110cに色入れが行えるようになるので、量産品に対しても、高精度な色入れを効率よく行えるようになる。
【0053】
特に、本実施形態では、色入れ対象となるワーク110が上方に突出した凸状面110aに段差のある凹部110cが形成されている複雑な構成であり、かつ、ミリ単位の精緻な構成の場合でも、凹部110cからインクが位置ずれすることなく、より高精度な色入れを効率的に行えるようになる。本実施形態の立体造形物色入れシステム100及び立体造形物色入れ方法は、このような精緻で複雑な構成の立体造形物のワーク110に対しても、インクジェットプリンター101と保持治具106とを用いて、効率的に高精度な色入れが行えるので、極めて大きな工業的価値を有する。
【0054】
なお、上記のように、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0055】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、立体造形物色入れシステム及び立体造形物色入れ方法の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 立体造形物色入れシステム
102 インクヘッド
104 ワークテーブル
104a ねじ孔
106 保持治具
106a 保持板部
106a1 ワーク保持孔
106a2 嵌合孔
106a3 テーパ面
106b 側壁枠
108 固定ねじ
108a 頭部
108b 軸部
108c 座面
110 ワーク
110a 凸状面
110b 底面
110c 凹部
h1 (ワークの底面からインクヘッドまでの)高さ
h2 (ワークの)高さ
h3 (ワークの凸状面の頂部からインクヘッドまでの)高さ
図1
図2
図3
図4
図5