(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088349
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】特に二輪車用の遠心アセンブリ付きクラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 43/06 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
F16D43/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195595
(22)【出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】102020000029468
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】398029304
【氏名又は名称】エンデュランス アドラー ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルフィオ エルシリオ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ マルディーニ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】十分に設定された動作を有し、ユーザに快適な使用を提供する遠心クラッチを提供する。
【解決手段】本発明は、固定ハブ(101)と、可動ハブ(102)と、トルクを選択的に伝達するために挿入された複数のプレート(103)とを備えるクラッチに関する。遠心圧力プレートアセンブリ(200)は、質量キャリア(201)と、複数の半径方向に移動可能な質量要素(202)を備える。各質量要素(202)は、ピボット(203)を備え、遠心圧力プレートアセンブリ(200)のスラスト面(204)に軸方向推力を加えて、可動ハブ(102)を固定ハブ(103)に近づけ、可変の軸方向荷重を増大させるように構成されている。各質量要素(202)は、スラスト面(204)と接触している少なくとも1つのそれぞれの転動要素を備える。スラスト面(204)は、外部位置に向かって傾斜して高くなる外形を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチであって、前記クラッチが、
固定ハブ(101)と、可動ハブ(102)と、前記固定ハブ(101)と前記可動ハブ(102)との間に挿入された複数のプレート(103)とを備え、
前記固定ハブ(101)および前記可動ハブ(102)が、共に回転するように構成され、さらに、それぞれ軸方向にスライドして、離れまたは近づき、前記複数のプレート(103)に可変の軸方向荷重を伝達し、および前記クラッチに作用するトルクを選択的に伝達するように構成され、
前記クラッチがさらに、前記可変の軸方向荷重を少なくとも部分的に制御するための遠心圧力プレートアセンブリ(200)を備え、前記遠心圧力プレートアセンブリ(200)が、
前記クラッチと共に回転するように構成された質量キャリア(201)と、
前記遠心圧力プレートアセンブリ(200)内で半径方向に移動可能な複数の質量要素(202)であって、各質量要素(202)が、遠心効果の下での外部位置に向かった変位のために前記質量キャリア(201)に接続されたピボット(203)を備える、複数の質量要素(202)と、を備え、
遠心効果の下での前記変位により、前記複数の質量要素(202)がさらに、前記遠心圧力プレートアセンブリ(200)のスラスト面(204)に軸方向推力を加えて、前記可動ハブ(102)を前記固定ハブ(103)に近づけ、前記可変の軸方向荷重を増加させるように構成され、
各質量要素(202)が、前記スラスト面(204)と接触する少なくとも1つのそれぞれの転動要素(205)を備え、
前記スラスト面(204)が、前記外部位置に向かって高くなる傾斜した外形を備える、クラッチ。
【請求項2】
前記傾斜した外形が湾曲部(301)を備え、前記湾曲部(301)が前記外部位置に向かって大きくなる傾斜を有する、請求項1に記載のクラッチ。
【請求項3】
前記湾曲部(301)が複数の圧力角(401;402;403)を画定し、前記圧力角が、前記可変の軸方向荷重の方向と、前記それぞれの転動要素(205)と前記スラスト面(204)との間で伝達される荷重の方向との間に画定され、前記圧力角(401;402;403)が、前記外部位置に向かって増大することによって変化する、請求項2に記載のクラッチ。
【請求項4】
前記湾曲部(301)が、前記クラッチの回転速度と前記可変の軸方向荷重との間に安定した相関関係を提供するように構成されている、請求項2または3に記載のクラッチ。
【請求項5】
前記固定ハブ(101)が第1のスライド要素(501)を備え、前記可動ハブが第2のスライド要素(502)を備え、前記第1のスライド要素(501)および前記第2のスライド要素(502)が、前記可変の軸方向荷重を少なくとも部分的に変更するように、前記クラッチに作用するトルクを受けたときに互いに係合し、相互にスライドするように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のクラッチ。
【請求項6】
前記第1のスライド要素(501)および前記第2のスライド要素(502)が、前記第1のスライド要素(501)を前記第2のスライド要素(502)上でそれぞれスライドさせ、前記可動ハブ(102)を前記固定ハブ(101)に近づけることで、前記複数のプレート(103)への前記可変の軸方向荷重を増加させるように、第1の螺旋に従って傾斜し、前記固定ハブ(101)が牽引トルクを受けたときに一致するように構成された、牽引トルクのための第1のそれぞれのスライド面(510)を含む、請求項5に記載のクラッチ。
【請求項7】
前記第1のスライド要素(501)および前記第2のスライド要素(502)が、前記第1のスライド要素(501)を前記第2のスライド要素(502)上でそれぞれスライドさせ、前記可動ハブ(102)を前記固定ハブ(101)に近づけることで、前記複数のプレート(103)への前記可変の軸方向荷重を増加させるように、前記第1の螺旋に対して反対の回転の第2の螺旋に従って傾斜し、前記固定ハブ(101)が前記牽引トルクとは反対の逆トルクを受けたときに一致するように構成された、前記逆トルクのための第2のそれぞれのスライド面(520)をさらに含む、請求項6に記載のクラッチ。
【請求項8】
前記可動ハブ(102)が王冠状の延伸要素(530)をさらに備え、前記複数のプレート(103)が前記延伸要素(530)の周りに組み立てられ、
前記延伸要素(530)が、前記複数のプレート(103)のうち従動プレートの内部歯と連結するように形作られた外面を備え、
前記可動ハブ(102)の前記第2のスライド要素(502)が前記延伸要素(530)の内面に隣接しており、前記第2のスライド要素(502)が略三角形または略台形の凸部である、請求項7に記載のクラッチ。
【請求項9】
前記固定ハブ(101)の前記第1のスライド要素(501)が、その上部に開口部を有する凹部であり、前記開口部は、前記可動ハブ(102)が前記固定ハブ(101)上に組み立てられるときに、前記第2のスライド要素(502)が通過するように構成され、前記第1のスライド要素(501)が略台形の凹部である、請求項8に記載のクラッチ。
【請求項10】
前記遠心圧力プレートアセンブリ(200)が、前記それぞれのピボット(203)と前記質量キャリア(201)との間に複数のインターフェース要素(213)をさらに備え、前記複数のインターフェース要素(213)が、摩擦および/または摩耗の局所的な減少のために構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のクラッチ。
【請求項11】
前記クラッチが、前記固定ハブ(101)の外部にあり、回転軸を中心に回転可能であるハウジング(11)をさらに備え、前記固定ハブ(101)が、前記回転軸と同軸のシャフト(10)と連結するように構成され、前記可動ハブ(102)が、前記固定ハブ(101)上の前記回転軸に沿って軸方向に取り付けられている、請求項1~10のいずれか1項に記載のクラッチ。
【請求項12】
前記各質量要素(202)が、少なくとも1つの転動要素(205)を含む本体(206)を備え、さらに、前記ピボット(203)を前記本体(206)に接続し、および遠心力効果の下で前記変位の際にレバーアームを増加させるように構成されている、実質的に細長い柱要素(207)を備える、請求項1~11のいずれか1項に記載のクラッチ。
【請求項13】
前記質量要素(202)が前記本体(206)内部に質量中心を有し、前記柱要素(207)が、前記回転軸に対して前記質量中心よりも半径方向外側にあるピボット(203)を画定する、請求項12に記載のクラッチ。
【請求項14】
前記遠心圧力プレートアセンブリ(200)が、前記クラッチのカバーと前記質量キャリア(201)との間に挿入された少なくとも1つのオーバーストロークばね(220)をさらに備え、前記少なくとも1つのオーバーストロークばね(220)が、閾値に達したときに前記可変の軸方向荷重を部分的に打ち消すように構成されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のクラッチ。
【請求項15】
前記少なくとも1つのオーバーストロークばね(220)が、前記複数の質量要素(202)において、切り欠き(221)が前記質量キャリア(201)のそれぞれの凸部と係合するように構成されている、外形を含む、請求項14に記載のクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ、特に二輪車用クラッチに関する。
【0002】
概して、本発明は、固定ハブおよび可動ハブを含むクラッチに関するものであり、固定ハブと可動ハブとの間に、互いに向かって軸方向に押されると、トルクを伝達することを可能にする複数のクラッチプレートが挿入されている。クラッチには、クラッチの回転速度に応じて、固定ハブおよび可動ハブを軸方向に押して近づけるように適合された遠心アセンブリが含まれる。
【背景技術】
【0003】
アドラー ソシエタ ペル アチオニの文献EP2400177(A1)は、自動係合装置を備え、同時に手動操作装置を備えたクラッチについて言及している。クラッチには遠心アセンブリが含まれ、ここで、クラッチの接続条件を達成するために、回転自在に連結された質量が、遠心効果の下で変位を受け、圧力リングと協働して、プレートパックの軸方向の圧縮を引き起こす。
【0004】
文献GB995989(A)は、圧力プレートに作用する遠心ウェイトを備える、遠心メカニズムによって作動するクラッチについて言及している。
【0005】
アドラー ソシエタ ペル アチオニの文献WO2019/101342(A1)は、質量ホルダ内に半径方向に配置された複数の質量要素を含む、遠心アセンブリを備えたクラッチであって、各質量要素が、本体と、ピボット点に接続された柱状要素とを備える、クラッチについて言及している。
【0006】
文献EP2175154(A2)は、クラッチハウジングと共に回転することによって遠心力を受け、クラッチシャフトの軸心から離れる方向に移動するように構成されている遠心ウェイトと、遠心ウェイトと接触することによって遠心力を軸方向の力に変換するように構成されているカム機構と、を備える遠心マルチプレート摩擦クラッチについて言及している。
【0007】
文献JP2012241804(A)は、従動軸の回転により生成された遠心力の効果によって駆動プレートと従動プレートを押し付けて互いに摩擦連結させる遠心ローラを含むマルチプレート自動遠心クラッチ装置について言及している。
【0008】
文献DE1087460(B)は、特に自動車用の、遠心ウェイトとしての転動要素を備えた遠心クラッチであって、各遠心ウェイトが、異なる直径のいくつかの回転自在に相互接続されたローラ状の転動要素からなり、遠心ウェイトが、2つの相互に傾斜した制御面間で移動自在に配置されている、遠心クラッチについて言及している。
【0009】
先行技術の解決策は、遠心クラッチの自動係合および係合解除を可能にする。
【0010】
しかし、先行技術による遠心クラッチは、特に二輪車での乗り心地を改善するために、操作の滑らかさの点で完全なものにされ得る。
【0011】
特に、先行技術の解決策は、より広い範囲の回転速度に対する係合の滑らかさの点で完全なものにされ得る。特に二輪車用の自動遠心クラッチにおけるトルク伝達もさらに最適化され得る。
【0012】
たとえば、係合中の遠心クラッチの挙動は、係合解除中の同じ遠心クラッチの挙動とは異なる運転感覚を提供し、ユーザの運転体験を悪化させ得る。これらの動作の違いは、クラッチプレートの摩耗が進むにつれてさらに悪化し得る。
【0013】
概して、既知の遠心クラッチには、摩擦の問題があり、その結果、遠心圧力プレートアセンブリがハブに作用することを含む動作のヒステリシスが生じる。ヒステリシスの問題は、クラッチによって伝達されるトルクが、rpmの数だけでなく、運転条件にも依存するため、常に線形であるとは限らないことを意味している。特に、同じ速度では、遠心クラッチは、加速中またはスロットルを開いているときにスリップする傾向があり、減速時またはスロットルを閉じるときにブロックする傾向があり得る。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、先行技術の特定の問題を解決することである。
【0015】
本発明の1つの特定の目的は、十分に設定された動作を有し、ユーザに快適な使用を提供する遠心クラッチを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる特定の目的は、好ましくはより広い範囲の回転速度に対して、係合および係合解除の滑らかさの点から遠心クラッチを完全なものとすることである。
【0017】
本発明のさらなる特定の目的は、低回転速度から高回転速度への遷移の間、およびその逆の高回転速度から低回転速度への遷移の間でさえ、トルク伝達を最適化するクラッチを提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の特定の目的は、遠心クラッチにおける摩擦の問題およびその結果としての動作ヒステリシスを緩和することである。
【0019】
さらに特定の目的は、特に二輪車での効果的な使用のための、自動および手動の両方の操作を可能にする、改良された遠心クラッチを提供することである。
【0020】
本発明の別の特定の目的は、信頼できる動作を提供するクラッチを提供することである。
【0021】
本発明のさらなる特定の目的は、特に二輪車での効果的な使用のためのコンパクトなクラッチを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる特定の目的は、エンジンブレーキ状況での動作が改善されるクラッチを提供することである。
【0023】
これらおよび他の目的は、この説明の不可欠な部分を形成する添付の特許請求の範囲に明記されているように、クラッチおよび関連する伝達システムによって達成される。
【0024】
本発明の背後にある解決案は、クラッチプレートにかかる可変の軸方向荷重を少なくとも部分的に制御することができる、遠心圧力プレートアセンブリを備える遠心クラッチを提供することである。
【0025】
遠心圧力プレートアセンブリは、クラッチと共に回転するように構成された質量キャリアと、遠心圧力プレートアセンブリ内の半径方向に移動可能な複数の質量要素とを備え、ここで、各質量要素は、質量キャリアに接続されたピボットを備え、それゆえ、遠心効果の下で外部位置に変位するように構成されている。
【0026】
遠心効果の下でのこの変位によって、質量要素はさらに、遠心圧力プレートアセンブリのスラスト面に軸方向推力を加えて、可動ハブを固定ハブに近づけ、可変の軸方向荷重を増加させるように構成されている。
【0027】
各質量要素は、スラスト面と接触している少なくとも1つのそれぞれの転動要素を備える。利点として、転動要素の存在は、質量要素とスラスト面との間の滑り摩擦を低減することを可能にする。このようにして、ヒステリシス効果は、利点として、エンジン回転数が変化するにつれて減少し、特に始動中に、伝達されたトルクに対する動作が改善され、クラッチの調節可能性を向上させる。
【0028】
スラスト面は、外部位置に向かって傾斜して高くなる外形を備えている。好ましくは、この外形は湾曲部を含み得る。利点として、傾斜した外形は、クラッチの回転角速度が軸方向荷重と安定して相関することを可能にし、クラッチによるトルクの伝達のより良好な制御を可能にし、特に始動中の急激ではないクラッチの最初の係合を可能にする。
【0029】
全体として、本発明の遠心クラッチは、ユーザにとってのよりスムーズでより快適な操作を可能にする。
【0030】
特に、本発明の遠心クラッチは、低回転速度から高回転速度への遷移中、およびその逆の高回転速度から低回転速度への遷移中のトルク伝達を最適化する。
【0031】
好ましくは、遠心クラッチは、第1のスライド要素を備える固定ハブと第2のスライド要素を備える可動ハブとを有し、これらは、可変の軸方向荷重を少なくとも部分的に変更するように、クラッチに作用するトルクを受けたときに互いに係合し、相互にスライドするように構成されている。
【0032】
このようにして、利点として、プレートパックのさらなる閉鎖効果を達成することが可能であり、急加速またはエンジンブレーキのいずれかの状態でクラッチによって伝達され得るトルクを増加させる。利点として、本発明による遠心クラッチは、遠心圧力プレートアセンブリがクラッチプレートを開く傾向にあるときに、加速条件下でクラッチによって伝達可能なトルクの増加を改善するが、同時に、ブレーキまたは減速の状態でのエンジンブレーキの望ましくない損失を防ぐ。
【0033】
概して、本発明による遠心クラッチの十分に設定された動作は、二輪車、特に高性能二輪車での用途に特に利点があり、優れた乗り心地を可能にする。
【0034】
さらなる特徴および利点は、本発明の好ましい非限定的な実施形態の以下の詳細な説明、および本発明の好ましい特に利点のある実施形態を概説する従属請求項から明らかになるであろう。
【0035】
本発明は、限定しない例として提供される以下の図を参照して例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明によるクラッチの実施形態の断面図を示している。
【
図2】本発明によるクラッチ用の質量要素の実施形態の三次元図を示している。
【
図3】本発明によるクラッチ遠心圧力プレートアセンブリの拡大した断面図を示している。
【
図4】第1の閉じた構成での遠心圧力プレートアセンブリの第1の断面を示している。
【
図5】第1の閉じた構成での
図4の遠心圧力プレートアセンブリの第2の断面を示している。
【
図6】第2の中間構成での遠心圧力プレートアセンブリの第1の断面を示している。
【
図7】第2の中間構成での
図6の遠心圧力プレートアセンブリの第2の断面を示している。
【
図8】第3の開いた構成での遠心圧力プレートアセンブリの第1の断面を示している。
【
図9】第3の開いた構成での
図8の遠心圧力プレートアセンブリの第2の断面を示している。
【
図10】本発明によるクラッチハブアセンブリのサブアセンブリの部分的な三次元図を示している。
【
図11】本発明によるクラッチの固定ハブおよび可動ハブの三次元図を示している。
【
図12】本発明によるクラッチのさらなる実施形態の断面図を示している。
【
図13】本発明によるオーバーストロークばねの実施形態の三次元図を示している。
【0037】
異なる図面において、同様の要素が同様の参照番号を使用して示される。同じタイプのいくつかの要素が同じ図面に示されている場合、それらのうちの1つまたは一部のみがそれぞれの参照番号で明示される一方で、他の要素は類推によって含まれていると見なされる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明によるクラッチ100の実施形態の断面図を示している。
【0039】
本実施形態では、クラッチ100は、車両、特に二輪車のクラッチハウジングに接合された駆動シャフトと一次ギアとの間の回転運動の係合を制御するために使用される。
【0040】
クラッチ100は、クラッチが取り付けられている車両の回転シャフト10と連結するように特別に構成された固定ハブ101を備える。固定ハブ101は、好ましくは、ギアボックスの一次シャフト10に取り付けられる。
【0041】
そのとき、クラッチ100は、固定ハブ101上で軸方向に沿って取り付けられるように構成された可動ハブ102を備える。
【0042】
クラッチ100は、固定ハブ101と可動ハブ102との間に挿入されている複数のプレート103を備える。この意味で、クラッチ100は「マルチプレートクラッチ」タイプである。
【0043】
本実施形態では、プレート103は、複数のクラッチプレートまたは駆動プレート、特にコーティングされたプレートを含み、これらは、クラッチハウジング11と連結するように構成された突出要素を含み、クラッチハウジング11は、順に、好ましくは車両の駆動シャフトに接続される。プレート103はまた、可動ハブ102と連結するように構成された内部歯を含み、駆動プレートに対して交互に配置される、複数の従動プレートを含む。
【0044】
概して、クラッチハウジングは、回転軸を中心に回転する固定ハブ101の外側にハウジング11を有する。固定ハブ101は、回転軸と同軸のシャフト10と連結するように構成されている。可動ハブ102は、回転軸に沿って固定ハブ101に軸方向に取り付けられている。
【0045】
また、好ましくは、クラッチ100は、複数のプレート103のうちの第1のプレート上で、かつ可動ハブ102上のフランジの近位に位置づけられた、環状形状のジャダースプリング104を備える。一変形例では、ジャダースプリング104は、各々がジャダースプリング104と比較してストロークが半分に減少した二重ばねシステムに置き換えられ得、このようにして、クラッチの初期の係合の滑らかさを改善することが可能になる。
【0046】
固定ハブ101および可動ハブ102は、軸方向に取り付けられたときに共に回転するように形作られており、それゆえ、固定ハブ101および可動ハブ102は、トルクを受けるように適合されている。
【0047】
また、固定ハブ101および可動ハブ102は、プレート103への軸方向荷重の強度を低下または増大させるような方法で、それぞれ軸方向にスライドして、離れて移動するかまたはより近づくように形作られている。
【0048】
このようにして、固定ハブ101および可動ハブ102は、プレート103に可変の軸方向荷重を加え、それにより、プレート103が軸方向荷重によって共に圧縮されるときに、クラッチ100により、トルクはハウジングとエンジンの回転シャフトとの間で伝達されることが可能になり、一方で、軸方向荷重が減少し、プレート103が互いの上を自由にスライドするときに、固定ハブ101および可動ハブ102は十分に間隔を空けて配置されているため、クラッチは実質的にトルクが伝達されることなく係合を解除される。
【0049】
このようにして、クラッチ100は、外部制御に従って、2つの回転シャフト間でトルクを選択的に伝達することができる。この外部制御は、手動、レバーまたはペダルで作動するか、またはサーボ機構によって実装されるタイプのものであり得る。
【0050】
また、クラッチ100はさらに、プレート103に作用する可変の軸方向荷重を少なくとも部分的に制御するための遠心圧力プレートアセンブリ200を備える。
【0051】
遠心圧力プレートアセンブリ200は、クラッチ100と一緒に回転するように構成された質量キャリア201を備える。
【0052】
遠心圧力プレートアセンブリ200はさらに、遠心圧力プレートアセンブリ200内で半径方向に移動可能である複数の質量要素202を備える。各質量要素202は、質量キャリア201に接続されたピボット203を備え、遠心効果の下で質量要素202を外部位置に変位させることが可能になる。
【0053】
遠心効果の下での変位により、質量要素202はさらに、遠心圧力プレートアセンブリ200のスラスト面204に軸方向推力を加えて、可動ハブ102を固定ハブ101に近づけ、プレート上103に作用する可変の軸方向荷重を増加させるように構成されている。
【0054】
このため、クラッチ100は遠心式クラッチと定義されており、これは、クラッチ100が、遠心圧力プレートアッセンブリ200による自動操作を含むが、同時に、ギアチェンジ中の手動操作が可能であることを意味している。
【0055】
概して、本発明に基づくクラッチが、湿式クラッチまたは乾式クラッチのタイプのいずれかであり得ることが理解されるべきである。
【0056】
図2は、本発明によるクラッチの質量要素202の実施形態の三次元図を示している。
【0057】
クラッチ100における各質量要素202は、スラスト面204と接触するように構成されている少なくとも1つのそれぞれの転動要素205を備える。
【0058】
本実施形態では、質量要素202におけるそれぞれの軸上で枢動される一対のローラタイプの転動要素205が存在する。転動要素205の異なるバージョンが、たとえば追加のローラベアリングと共に、または質量要素上で直接枢動されて提供され得る。1つのみの転動要素205を備えるバージョンも想定され得る。
【0059】
見てわかるように、質量要素202は、転動要素205を備える本体206を備え、さらに、ピボット203を本体206に接続する実質的に細長い柱要素207を備える。
【0060】
柱要素207は、レバーアームを増加させるように構成され、これは、遠心圧力プレートアセンブリ200における質量要素202の遠心効果の下での変位に有益である。
【0061】
図3は、本発明による遠心圧力プレートアセンブリ200の拡大した断面図を示している。この断面図では、転動要素205の1つが見えるが、ピボット203は見えず、これは実際には異なる断面にある。
【0062】
説明したように、遠心効果の下での変位によって、質量要素202は、遠心圧力プレートアセンブリ200のスラスト面204に軸方向推力を加えるように構成されている。このようにして、遠心効果を利用して、可動ハブ102を固定ハブ101に近づけ、プレート103に作用する可変の軸方向荷重を増加させることが可能である。
【0063】
スラスト面204は、遠心圧力プレートアセンブリ200における質量要素202によって想定される最も外側の位置に向かって傾斜して高くなる外形を備える。
【0064】
傾斜して高くなる外形によって、質量要素202が開くことによりプレートに作用する軸方向荷重を徐々に増加させることが可能であり、これが転動要素205の相互作用を介してスラスト面に作用する。
【0065】
概して、スラスト面204の傾斜した形状により、クラッチの回転角速度を軸方向荷重と相関させることが可能になるが、これは、質量要素202に対する遠心作用が角速度に依存するためであり、遠心圧力プレートアセンブリ200において開いているこれらの要素は、徐々に増加し、プレート103に作用する固定ハブ101および可動ハブ102の閉鎖に寄与する荷重を提供する。
【0066】
好ましくは、傾斜した外形は、遠心圧力プレートアセンブリ200における質量要素202によって想定された最も外側の位置に向かって大きくなる傾斜を有する湾曲部301を備える。換言すれば、湾曲部301は、転動要素205が係合する凹面を有するように見える。
【0067】
この湾曲部301は、遠心効果により質量要素202が開くときに、スラスト面204上の転動要素205のスラスト角が大きくなるように構成されている。これは、プレート103に作用する軸方向荷重が質量要素202の遠心力開放中に確立される漸進性を改善する助けとなる。
【0068】
以下の図を参照して説明されるように、湾曲部301の動作および効果は、遠心圧力プレートアセンブリ200の異なる動作構成を検討するときにより明白になる。
【0069】
図4は、質量要素が最も内側にある第1の閉じた構成での、転動要素205が見える、遠心圧力プレートアセンブリ200の第1の断面を示している。この第1の閉じた構成は、特にアイドル速度で回転するエンジンに対する、軸方向荷重がプレート103に作用することのない、クラッチ100が実質的に係合解除される動作条件に対応している。
【0070】
第1の閉じた構成では、湾曲部301は、プレート103に作用する可変の軸方向荷重の軸方向と、転動要素205とスラスト面204との間で伝達される荷重の方向との間に画定される、第1の圧力角401を画定し、後者の方向は、接触点でスラスト面204に対する接線に対して垂直であり、接触点は実質的に内部にある。
【0071】
図5は、依然として第1の閉じた構成での、質量要素202の本体206および柱要素207が見える、
図4の遠心圧力プレートアセンブリの第2の断面を示している。
【0072】
この図では、質量要素202が本体206内に質量中心を有し、柱要素207が、クラッチ100上の回転軸の軸方向に対して、質量中心よりも半径方向外側にあるピボット203を画定することが理解され得る。これは、質量要素202によって提供される遠心効果および推力を増加させる助けとなる。
【0073】
図6は、質量要素が半径方向の変位を開始した第2の中間構成での、
図4に対応する遠心圧力プレートアセンブリ200の第1の断面を示している。この第2の中間構成は、典型的にスタンディングスタートの状況に対応している、特にアイドル速度のすぐ上から中速までのエンジン速度に対する、クラッチ100が係合され始めて、プレート103に作用する中規模の軸方向荷重を生じさせる動作条件に対応している。
【0074】
第2の中間構成では、湾曲部301は、プレート103に作用する可変の軸方向荷重の軸方向と、転動要素205とスラスト面204との間で伝達される荷重の方向との間に依然として画定される、第2の圧力角402を画定し、後者の方向は、接触点でスラスト面204に対する接線に対して垂直であり、接触点はより外部にある。
【0075】
第2の中間構成における第2の圧力角402は、第1の閉じた構成における第1の圧力角401よりも大きい。
【0076】
図7は、すでに説明した第2の中間構成での遠心圧力プレートアセンブリ200の
図5に対応する第2の断面を示している。
【0077】
図8は、質量要素が半径方向の変位を完全に完了した第3の開いた構成での、
図4および
図6に対応する遠心圧力プレートアセンブリ200の第1の断面を示している。この第3の開いた構成は、典型的に走行および/または加速状況に対応する、特に中エンジン速度から高エンジン速度に対する、クラッチ100が完全に係合されて、クラッチに作用するトルクを十分に伝達するプレート103に作用する軸方向荷重を提供する動作条件に対応している。
【0078】
第3の開いた構成では、湾曲部301は、プレート103に作用する可変の軸方向荷重の軸方向と、転動要素205とスラスト面204との間で伝達される荷重の方向との間にまた画定される、第3の圧力角403を画定し、後者の方向は、接触点でスラスト面204に対する接線に対して垂直であり、接触点はより一層外部にある。
【0079】
第3の開いた構成での第3の圧力角403は、第1の閉じた構成での第1の圧力角401および第2の中間構成での第2の圧力角402よりも大きい。
【0080】
図9は、上記の第3の開いた構成での遠心圧力プレートアセンブリ200の
図5および
図7に対応する第2の断面を示している。
【0081】
この第3の開いた構成では、遠心圧力プレートアセンブリ200は、その遠心開放を実質的に完了している。
【0082】
特に、質量キャリア201は、質量要素202の半径方向の変位を制限して、クラッチ100の所定の回転速度で最大の開いた構成を達成するように構成されている。具体的には、質量キャリア201は、質量要素202に対する半径方向の変位を制限するものとして作用する、質量要素よりも外側にある当接部分を含む。より具体的には、好ましい実施形態において、当接部分は、質量要素202の柱要素207のそれぞれの部分と相互作用することによって半径方向の変位を停止するように構成されている。代替的に、当接部分は、質量要素の異なる部分と相互作用して、半径方向の変位のその最終位置を制限するように構成され得る。
【0083】
上記の図面を考慮することにより、湾曲部301が、概して可変の軸方向荷重の方向と、転動要素205とスラスト面204との間で伝達される荷重の方向との間に画定される圧力角である複数の圧力角、たとえば、401、402、および403を画定していることが分かる。
【0084】
これらの圧力角401、402、および403は変化し、外部位置に向かって移動しながら増大する。換言すれば、湾曲部301は、遠心圧力プレートアセンブリ200内の質量要素202によって想定される最も外側の位置に向かって増大する勾配を有し、これにより、質量要素202によって生成される荷重の軸方向および半径方向の分布に影響を与える圧力の角度が増大する。
【0085】
概して、湾曲部301が、それゆえ、クラッチ100の回転速度とプレート103に作用する可変の軸方向荷重との間に安定した相関関係を提供するように構成されていると言うことができる。
【0086】
図10は、固定ハブ101、可動ハブ102、および介在プレート103の三次元図を示しており、これらの一部は図面から除去されて、クラッチ100の内部を見ることが可能になる。
【0087】
固定ハブ101は第1のスライド要素501を備え、可動ハブ102は第2のスライド要素502を備える。第1のスライド要素501および第2のスライド要素502は、プレート103に作用する可変の軸方向荷重を少なくとも部分的に変更するために、クラッチ100に作用するトルクを受けたときに互いに係合し、相互にスライドするように構成されている。
【0088】
図11は、互いに分解された固定ハブ101および可動ハブ102の三次元図を示しており、第1のスライド要素501および第2のスライド要素502の動作をさらに説明している。
【0089】
第1のスライド要素501および第2のスライド要素502は、第1のスライド要素501を第2のスライド要素502上でそれぞれスライドさせ、可動ハブ102を固定ハブ101に近づけることで、プレート103への可変の軸方向荷重を増加させるために、第1の螺旋に従って傾斜し、固定ハブ101が牽引トルクを受けたときに互いに噛み合うように構成された、牽引トルクのためのそれぞれの第1のスライド面510を含む。
【0090】
第1のスライド要素501および第2のスライド要素502はさらに、第1のスライド要素501を第2のスライド要素502上でそれぞれスライドさせて可動ハブ102を固定ハブ101に近づけることで、プレート103に作用する可変の軸方向荷重を増加させるために、第1の螺旋と比較して反対の回転の第2の螺旋に従って傾斜し、固定ハブ101が逆トルク、すなわち牽引トルクとは反対のトルクを受けたときに互いに噛み合うように構成された、逆トルクのためのそれぞれの第2のスライド面520を含む。
【0091】
利点として、プレート103に作用する軸方向荷重に対するスライド要素501および502の効果が、上記の遠心圧力プレートアセンブリ200の効果と相乗的に組み合わされることに留意されたい。
【0092】
牽引トルクのための第1のスライド面510の第1の傾斜螺旋が、逆トルクのための第2のスライド面520の第2の傾斜螺旋とは反対の回転であるため、スライド面は、クラッチ100の軸の基準軸方向に対して、2つの反対の角度で傾斜している。
【0093】
可動ハブ102は王冠状の延伸要素530をさらに備え、複数のプレート103は延伸要素530の周りに組み立てられている。特に、延伸要素530は、複数のプレート103のうち、従動プレート、好ましくはすべての従動プレート上の内部歯と連結するように形作られた外面を備える。特に、延伸要素530は、軸方向において互いに平行な複数の溝を有する。延伸要素530上にすべての従動プレートを収容することで、クラッチ100のより大きな調節可能性およびより効果的なトルクの伝達が得られる。実際、王冠状の延伸要素530内にすべての従動プレートを収容するという予防措置は、係合中に、より高い螺旋ピッチでのスライド面510または520による動作を可能にし、クラッチ100のより良好な調節可能性の利点をもたらす。
【0094】
好ましくは、可動ハブ102の第2のスライド要素502は延伸要素503の内面に隣接しており、好ましくは、第2のスライド要素502は略三角形または略台形の凸部である。
【0095】
利点として、クラッチ内部の要素のより良好な潤滑が達成され、冷却が改善されるかつ摩耗が少なくなるという利点がある。
【0096】
固定ハブの第1のスライド要素501は、上部に開口部を備えた凹部であり、これらの開口部は、可動ハブ102が固定ハブ101上に組み立てられるときに、第2のスライド要素502が通過するように構成されており、好ましくは、第1のスライド要素501は略三角形または略台形の凹部である。
【0097】
説明したように、第1のスライド面510は、クラッチ100の軸方向に対して第1の角度に従って傾斜され、第2のスライド面520は、その軸方向に対して第2の角度に従って傾斜され、第2の角度は第1の角度とは反対の傾斜を有している。
【0098】
したがって、第1のスライド面510および第2のスライド面520は、固定ハブ101が車両のホイールによって生成され得る逆トルクを受けるときにエンジンブレーキを提供し、プレート103に作用する軸方向荷重を増加させることで、車両のエンジンによって吸収することができるエンジンブレーキトルクを増加させるように構成されている。
【0099】
この「エンジンブレーキ」は、車両を減速させるために、ディスク、ドラム、または同様のブレーキシステムなどの外部ブレーキ機構を使用するのではなく、エンジン内部の遅延させる引きずり力を使用する状態である。「エンジンブレーキ」は、特に、ギアとクラッチを係合させたままスロットルを開放したときに、ガソリンエンジン、特に4ストロークエンジンで発生する。
【0100】
利点として、第2のスライド面520は、「モータリング」状態下、特にエンジンブレーキ状態で軸方向荷重を生成するように構成され、低いエンジン回転数で高いギア比が使用されているときに、特に下り坂およびクルージングでのエンジンブレーキの使用を可能にする。
【0101】
第1のスライド面510のおかげで、加速によって、すなわち、クラッチに牽引トルクを提供することによって、可動ハブ102および固定ハブ101は、互いに「近づく」傾向があり、上記の遠心圧力プレートアセンブリ200によって生成される軸方向荷重に加えられるプレートパック103に作用する軸方向荷重を増加させる。
【0102】
このようにして、車両の加速状態の下で、より大きなトルクをクラッチ100を介して伝達することができる。
【0103】
解放中、すなわちクラッチ100に逆トルクを提供している間でさえ、再び、可動ハブ102および固定ハブ101は、エンジンブレーキ状態下で互い「近づく」傾向があり、プレートパック103に作用する軸方向荷重を増加させる。このとき、第2のスライド面520は、回転速度が低下するにつれて、上記の遠心圧力プレートアセンブリ200が閉じる傾向にあるときに、プレート103に作用する軸方向荷重の減少を補償するようなものである。
【0104】
このようにして、利点として、エンジンがアイドリング状態で実質的にエンジンブレーキがない状態で、車両の停止に近づく際の遠心クラッチの係合解除の自動動作を維持しながら、解放およびエンジンブレーキの状態下で、プレートパックに対する追加の閉鎖効果を達成することが可能である。
【0105】
一実施形態では、逆トルクのための第2のスライド面520間の角度は、牽引トルクのためのスライド面510の第1の角度に等しい傾斜を有し、そのため、第1の螺旋のピッチは第2の螺旋のピッチに対応している。本実施形態では、エンジン回転数と最大伝達可能トルクとの間の同じ特性曲線が、加速状態(駆動トルク、すなわち、水平面を走行するための上昇または安定したエンジン回転数に関する)およびエンジンブレーキ状態(逆トルク、すなわち、水平面を走行するためのエンジン回転数の減少)の両方で生じる。
【0106】
代替の好ましい実施形態では、第2の角度、すなわち逆トルクのためのスライド面520の1つは、第1の角度、すなわち牽引トルクのためのスライド面510の1つよりも低い傾斜を有し、そのため、第2の螺旋のピッチは第1の螺旋のピッチよりも大きい。この代替の実施形態では、エンジン回転数と最大伝達トルクとの間に異なる特性曲線が生じ、加速状態では、ハブ101および102が互いに接近する効果があり、これは、低いエンジン回転数と高いギア条件下でのそれほど積極的でないクラッチ挙動に起因するように、エンジンブレーキ状態よりも顕著である。
【0107】
図12は、本発明によるクラッチの追加の実施形態100’の断面図を示している。
【0108】
遠心圧力プレートアセンブリ200は、それぞれのピボット203と質量キャリア201との間に複数のインターフェース要素213をさらに備える。
【0109】
これらのインターフェース要素213は、質量要素202がピボット203を中心に回転することによって移動するときの摩擦および/または摩耗の局所的な減少のために構成されている。これは、鋳造アルミニウム製の質量キャリア201の場合に特に効果的である。
【0110】
遠心圧力プレートアセンブリ200はまた、クラッチ100’のカバーと質量キャリア201との間に挿入された少なくとも1つのオーバーストロークばね220を備える。少なくとも1つのオーバーストロークばね220は、荷重閾値に達したときに、可変の軸方向荷重を部分的に打ち消すように構成されている。
【0111】
図13は、本発明による、オーバーストロークばね220の実施形態の三次元図を示している。
【0112】
本実施形態では、少なくとも1つのオーバーストロークばね220は、皿ばねのタイプであり、上記複数の質量要素202において、切り欠き221が質量キャリア201のそれぞれの凸部と係合するように構成されている、外形を含む。
【0113】
一変形例では、少なくとも1つのオーバーストロークばねは、より小さな直径の1つまたは複数のスモーリーウェーブスプリングによって提供され得る。
【0114】
本明細書で与えられた説明を考慮して、当業者は、不定および特定のニーズを満たすために、さらなる修正および変形を設計してもよい。それゆえ、本明細書に記載される実施形態は、本発明の例示的かつ非限定的な例として理解されるべきである。
【外国語明細書】