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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008836
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】外反拇趾用サポータ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/06 20060101AFI20220106BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20220106BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A41D13/06
A61F13/06 A
A61F5/01 N
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163534
(22)【出願日】2021-10-04
(62)【分割の表示】P 2017242372の分割
【原出願日】2017-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】308019874
【氏名又は名称】株式会社TOSCOM
(71)【出願人】
【識別番号】500309964
【氏名又は名称】有限会社サンエスケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 俊
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一仁
【テーマコード(参考)】
3B011
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA14
3B011AB18
4C098AA02
4C098BB12
4C098BC03
4C098BC04
4C098DD22
(57)【要約】
【課題】 製造を容易にしてコストダウンに寄与する。着圧力や着圧方向を容易かつより広い範囲で設定可能にするとともに、無用な締め付け感を排除して装着性を高める。
【解決手段】 弾性付着材3の塗布密度Rを段階的又は連続的に異ならせることにより、塗布エリアXa,Xbp,Xbq…に対応する人体Hの部位に対して付与する着圧力Fm…の大きさに係わる所定の分布パターンを設定した着圧パターン部4を形成するに際し、足Hpfの先端側に装着する筒状覆部2を備え、この筒状覆部2の先端に当該足Hpfの親指Hftに装着する親指装着部11を一体に設けるとともに、親指装着部11を設けた側の筒状覆部2の側面に最も着圧力Fmの大きい塗布エリアXaを形成し、かつこの塗布エリアXaから周方向両側に、着圧力Fmが段階的又は連絡的に低くなる塗布エリアXbp,Xbq…を形成した着圧パターン部4を小指Hfs付近まで設ける。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の一部を覆う弾性伸縮する筒状覆部を少なくとも一部に有する外反母趾用サポータにおいて、前記筒状覆部の表面に、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材の塗布により形成するとともに、当該弾性付着材を塗布する全領域に対して設定した異なる塗布エリアに対応して、当該弾性付着材の塗布密度を段階的又は連続的に異ならせることにより、前記塗布エリアに対応する人体の部位に対して付与する着圧力の大きさに係わる所定の分布パターンを設定した着圧パターン部を形成するに際し、足の先端側に装着する前記筒状覆部を備え、この筒状覆部の先端に当該足の親指に装着する親指装着部を一体に設けるとともに、前記親指装着部を設けた側の前記筒状覆部の側面に最も着圧力の大きい塗布エリアを形成し、かつこの塗布エリアから周方向の両側に、着圧力が段階的又は連絡的に低くなる塗布エリアを形成した前記着圧パターン部を小指付近まで設けてなることを特徴とする外反母趾用サポータ。
【請求項2】
前記弾性付着材には、シリコンゴム素材を用いることを特徴とする請求項1記載の外反拇趾用サポータ。
【請求項3】
前記着圧パターン部は、分布パターンに、人体の部位に対して付与する方向を設定可能な着圧力を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の外反拇趾用サポータ。
【請求項4】
前記着圧パターン部は、少なくとも一部の塗布エリアをメッシュにより形成することを特徴とする請求項1,2又は3記載の外反拇趾用サポータ。
【請求項5】
前記メッシュは、ハニカム形状により形成することを特徴とする請求項4記載の外反拇趾用サポータ。
【請求項6】
前記メッシュは、同一の形状及び大きさにより形成するとともに、選定した部位のメッシュをベタ塗り部とすることにより、前記塗布密度を異ならせることを特徴とする請求項4又は5記載の外反拇趾用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の一部を覆う弾性伸縮する筒状覆部を少なくとも一部に有する外反拇趾用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の一部であるふくら脛や足の一部を覆う弾性伸縮する筒状覆部を有することにより血流改善や指の矯正を図ることを目的としたサポータとしては、特許文献1で開示される脚・足ケアサポーター及び特許文献2で開示される外反母趾用サポーターが知られている。
【0003】
特許文献1で開示される脚・足ケアサポーターは、脚の下腿部の足首部から膝下部に向って着圧力と締付力を強から弱へと段階的に変えて押上げることが可能な着圧と締め付けと保温とを同時に行えることを目的としたものであり、具体的には、下腿着圧締付け部の下方部位に、その全周よりも短く且つ主として股部を着圧し締付け可能な着圧力と締付力が最も強の最強着圧締付け部を編成し、最強着圧締付け部の上方部と脚挿入部との間の脛被覆部以外のふくら脛被覆部に、最強着圧締付け部の上方部から膝下側被覆部の方向に行くに従って最強着圧締付け部の着圧力と締付け力が小さく着圧力と締付け力が段階的に漸減し、下腿着圧締付け部の全周よりも短く主として股部を着圧し締付ける弱着圧締付け部を所定間隔おきに複数編成する漸減弱着圧締付け部を形成したものである。
【0004】
また、特許文献2で開示される外反母趾用サポーターは、時間が経過しても矯正力が弱くなり難く、靴を履いた際や歩行時等にユーザが違和感を感じたり、また・靴擦れが発生する恐れも少なく、薄手のストッキング等の下に履いても目立ち難くすることを目的としたものであり、具体的には、少なくとも足の甲の前側と足裏の前側とをカバーする筒状で伸縮性を有するメッシュ生地からなるサポーター本体と、そのサポーター本体の親指(母趾)側から延び、足の親指(母趾)先端に引っ掛る筒状でサポーター本体のメッシュ生地と同じメッシュ生地からなる親指引っ掛け部とが一体で形成され、サポーター本体および親指引っ掛け部の裏側の周縁部に、伸縮性を有しメッシュ生地よりも目が細かい周縁補強弾性材が熱溶着されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-54823号公報
【特許文献2】実用新案登録第3210702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1及び2に開示される従来のサポータは、次のような問題点があった。
【0007】
第一に、特許文献1は、編糸として弾性糸を使用し、その編み方により着圧力を設定するタイプ、具体的には、編糸としてゴム素材糸を使用するとともに、このゴム素材糸の数量を変更して着圧力の大きさを設定するとともに、使用位置を変更して着圧方向を設定するため、製造が繁雑となりコストアップが無視できない。しかも、着圧力や着圧方向を設定できる範囲が限定的になるとともに、柔軟かつ精密(的確)な設定が困難である。
【0008】
第二に、特許文献2は、別途の弾性材を付着させることにより着圧力を設定するタイプ、具体的には、ポリウレタンゴム等を用いたテープをホットメルト接着剤により熱溶着するものである。したがって、単なる補強として補助的に使用するため、引用文献1の場合と同様、着圧力や着圧方向を設定できる範囲が限定的になるとともに、柔軟かつ精密(的確)な設定が困難である。しかも、装着時の快適性を確保する観点からは、必ずしも十分とはいえない。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した外反拇趾用サポータの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、人体Hの一部Hpを覆う弾性伸縮する筒状覆部2を少なくとも一部に有する外反拇趾用サポータ1tを構成するに際して、筒状覆部2の表面に、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材3の塗布により形成するとともに、当該弾性付着材3を塗布する全領域に対して設定した異なる塗布エリアXa,Xbp,Xbq…に対応して、当該弾性付着材3の塗布密度Rを段階的又は連続的に異ならせることにより、塗布エリアXa,Xbp,Xbq…に対応する人体Hの部位に対して付与する着圧力Fm…の大きさに係わる所定の分布パターンを設定した着圧パターン部4を形成するに際し、足Hpfの先端側に装着する筒状覆部2を備え、この筒状覆部2の先端に当該足Hpfの親指Hftに装着する親指装着部11を一体に設けるとともに、親指装着部11を設けた側の筒状覆部2の側面に最も着圧力Fmの大きい塗布エリアXaを形成し、かつこの塗布エリアXaから周方向両側に、着圧力Fmが段階的又は連絡的に低くなる塗布エリアXbp,Xbq…を形成した着圧パターン部4を小指Hfs付近まで設けてなることを特徴とする。
【0011】
この場合、本発明の好適な態様により、弾性付着材3には、シリコンゴム素材3sを用いることができる。また、着圧パターン部4の分布パターンには、人体Hの部位に対して付与する方向Dq,Drを設定可能な着圧力Fm…を含ませることができる。さらに、着圧パターン部4は、少なくとも一部の塗布エリアXbp,Xbq…をメッシュM…により形成することができるとともに、このメッシュM…は、ハニカム形状Mh…により形成することが望ましい。この際、メッシュM…は、同一の形状及び大きさにより形成するとともに、選定した部位のメッシュM…をベタ塗り部Mn…とすることにより、塗布密度Rを異ならせることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る外反拇趾用サポータ1tによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 製造が容易となりコストダウンに寄与できるとともに、着圧力や着圧方向を容易に設定できる。しかも、その設定をより広い範囲で行うことができるとともに、柔軟かつ的確な設定を行うことができる。加えて、無用な締め付け感を排除し、装着性を高めることができる。特に、足Hpfの先端側に装着する筒状覆部2を備えるとともに、この筒状覆部2の先端に当該足Hpfの親指Hftに装着する親指装着部11を一体に備えた外反母趾用サポータ1tに適用したため、親指Hft及びその周辺に対して的確な着圧力Fm…を作用させることができる。これにより、外反母趾の防止又は改善に対して効果的に寄与できる。
【0014】
(2) 好適な態様により、弾性付着材3として、シリコンゴム素材3sを用いれば、汎用的な素材の利用により低コストに実施できるとともに、シリコンゴム素材3sの物性により、前述した本発明に係る作用効果を十分に発揮できる良好な着圧パターン部4を形成することができる。
【0015】
(3) 好適な態様により、着圧パターン部4の分布パターンに、人体Hの部位に対して付与する方向Dq,Drを設定可能な着圧力Fm…を含ませれば、サポートに必要な着圧力Fm…の大きさ及び着圧力Fm…を作用させる方向を併せて設定できるため、良好なサポート効果を得るための最適化を容易に実現することができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、着圧パターン部4における少なくとも一部の塗布エリアXbp,Xbq…をメッシュM…により形成すれば、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材3の塗布により形成した場合であっても、人体Hに作用させる着圧力Fm…の大きさや方向を広い範囲で容易に変更できるため、使用感を含めた、より細かな調整を的確に行うことができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、メッシュM…を、ハニカム形状Mh…により形成すれば、メッシュとしての基本的効果に加え、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した着圧力Fm…を作用させることができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、メッシュM…を、同一の形状及び大きさにより形成するとともに、選定した部位のメッシュをベタ塗り部Mn…とすることにより、塗布密度Rを異ならせれば、塗布密度Rが異なっても着圧パターン部4の層厚を一定にできるため、着圧パターン部4の全領域にわたって平坦性を確保できるとともに、目的の着圧力Fm…を容易に設定することができる。しかも、着圧パターン部4を、筒状覆部2の裏面に設ける場合であっても使用感を大きく低下させる不具合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る外反母趾用サポータの一部抽出拡大図を含む使用状態を示す外観平面図、
図2】同サポータの左側面図、
図3】同サポータの右側面図、
図4】同サポータの図2中A-A線断面図、
図5】同サポータの作用説明図、
図6】同サポータの他の作用説明図、
図7】同サポータのメッシュ形状の変更例を示す図、
図8】同サポータの部位(位置)に対する塗布密度の関係図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る外反母趾用サポータ1t(サポータ1)について、図1図8を参照して説明する。
【0022】
この外反母趾用サポータ1tは、図1及び図4に示すように、人体Hの一部Hpとなる足Hpfの先端側に装着する筒状覆部2を備えるとともに、この筒状覆部2の先端に足Hpfの親指Hftに装着するポケット状の親指装着部11を一体に備える。これにより、靴下と同様の要領で足Hpfの先端側に装着して使用することができる。筒状覆部2及び親指装着部11は、ポリウレタン,ポリエステル,ナイロン,アクリル等の化学繊維、及び絹,木綿等の天然繊維の、一又は二以上の繊維素材により弾性伸縮可能に縫製したものである。したがって、本実施形態に係る外反母趾用サポータ1tのための専用の筒状覆部2及び親指装着部11として製造してもよいし、或いは市販されている一般的な靴下を加工して利用することも可能である。なお、2f,2mは、開口した筒状覆部2の先端と中間部に設けたズレ防止用の縫製した口ゴム部分を示す。
【0023】
一方、筒状覆部2の表面には、ゴム素材又は弾性樹脂素材、望ましくは、シリコンゴム素材3sを用いた弾性付着材3を塗布することにより、図2及び図3に示すような着圧パターン部4を設ける。図2及び図3は、筒状覆部2(外反母趾用サポータ1t)を偏平に畳んだ(潰した)状態であり、図2は左側面側(親指側)を示し、図3は右側面側(小指側)を示す。したがって、図3に現れる着圧パターン部4の右側面部分と図2に現れる着圧パターン部4の左側面部分は、連続形成される単一のパターンとなる。
【0024】
着圧パターン部4は、基本的に、弾性付着材3を塗布する全領域に対して設定した異なる塗布エリアXa,Xbp,Xbq…に対応して、当該弾性付着材3の塗布密度Rを段階的に異ならせることにより、塗布エリアXa,Xbp,Xbq…に対応する人体Hの部位に対して付与する着圧力Fm…の大きさに係わる所定の分布パターンを設定したものである。この場合、着圧力Fm…の大きさに応じて、四種類の着圧部、即ち、最も着圧力Fmの大きい強着圧部4a,二番目に着圧力Fmの大きい中上着圧部4b,三番目に着圧力Fmの大きい中下着圧部4c,四番目に着圧力Fmの大きい弱着圧部4dを備えており、概ね10~35〔hPa〕の範囲で所定の着圧力Fm…を設定することができる。これにより、筒状覆部2自身の着圧力Fmを含め、装着した人体Hの部位に対して5段階の着圧力Fm…を付与することができる。
【0025】
また、着圧パターン部4の形状は、図2及び図3に示すように、親指装着部11を設けた側における筒状覆部2の側面に塗布エリアXaを配するとともに、この塗布エリアXaに対して周方向両側に、塗布エリアXbp,Xbq、塗布エリアXcp,Xcq、塗布エリアXdp,Xdqを順次配する。これにより、着圧パターン部4の全体形状は、細長い短冊状となり、一方の各塗布エリアXbp,Xcp,Xdpを上側に位置させ、かつ他方の各塗布エリアXbq,Xcq,Xdqを下側に位置させるとともに、各塗布エリアXdpとXdqは、図1に示すように、小指Hfs付近に位置させる。また、塗布エリアXcpとXcqは、細長形状に形成し、一端側を塗布エリアXaの近傍であって、前端側に位置させるとともに、他端側を小指Hfs付近であって、後端側に位置させる。そして、塗布エリアXaと塗布エリアXcp間,塗布エリアXaと塗布エリアXcq間に、それぞれ塗布エリアXbp,Xbqを配するとともに、塗布エリアXcp,Xcqに対して小指Hfs側の領域に、塗布エリアXdp,Xdqをそれぞれ配する。
【0026】
この場合、塗布エリアXaは強着圧部4aに形成し、塗布エリアXbp,Xbqは中上着圧部4bに形成し、塗布エリアXcp,Xcqは中下着圧部4cに形成し、塗布エリアXdp,Xdqは弱着圧部4dに形成する。なお、各塗布エリアXa,Xbp,Xbq,Xcp,Xcq,Xdp,Xdqにおける相互の境界部分は連続する。
【0027】
一方、着圧パターン部4を形成するに際しては、強着圧部4aを、いわゆるベタ塗りによる塗布を行うとともに、中上着圧部4b,中下着圧部4c及び弱着圧部4dは、少なくともその一部をメッシュM…により形成する。このように、少なくともその一部をメッシュM…により形成すれば、弾性付着材3の塗布により形成した場合であっても、層厚を異ならせるなどの他の方法と異なり、人体Hに作用させる着圧力Fm…の大きさや方向を広い範囲で容易に変更できるため、使用感を含めた、より細かな調整を的確に行うことができる。
【0028】
また、図1(b)に示すように、メッシュM…は、ハニカム形状Mh…により形成する。このようなハニカム形状Mh…により形成すれば、メッシュとしての基本的効果に加え、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した着圧力Fm…を作用させることができる。
【0029】
さらに、各塗布エリアXbp,Xbq,Xcp,Xcq…における弾性付着材3の塗布密度Rを異ならせるに際しては、図1(a)に示すように、中上着圧部4b,中下着圧部4c及び弱着圧部4dを構成するメッシュM…を、同一形状及び同一の大きさに形成するとともに、選定した部位をメッシュとしないこと、即ち、ベタ塗り部Mn…とすることにより、塗布密度Rを異ならせるようにした。
【0030】
具体的には、弱着圧部4dを、図1(b)に示すようにハニカム形状Mh…のみにより形成し、一方、中下着圧部4cは、ベタ塗り部Mn…とするハニカム形状Mh…の数を疎に配するとともに、中上着圧部4bは、ベタ塗り部Mn…とするハニカム形状Mh…の数を密に配するように形成した。したがって、塗布密度Rが異なっても着圧パターン部4の層厚を一定にできるため、着圧パターン部4の全領域にわたって平坦性を確保できるとともに、目的の着圧力Fm…を容易に設定することができる。しかも、着圧パターン部4を、筒状覆部2の裏面に設ける場合であっても使用感を大きく低下させる不具合を回避することができる。
【0031】
なお、弾性付着材3(シリコンゴム素材3s)を筒状覆部2の表面に塗布するに際しては、曲面印刷用スクリーン印刷機を用いて塗布することができる。
【0032】
具体的には、スクリーン印刷機として、円筒形の曲面に印刷する曲面印刷用スクリーン印刷機を使用することにより、筒状覆部2の表面に印刷(塗布)することができる。
【0033】
まず、スクリーン印刷機に備える円筒プラテンの周面に筒状覆部2をセット(装着)する。また、印刷用スクリーンには、着圧パターン部4を版形成するとともに、この印刷用スクリーンの上にシリコンゴム素材3sを収容する。そして、円筒プラテンを回転させるとともに、印刷用スクリーンを当該回転に同期させて移動させれば、印刷用スクリーン上のシリコンゴム素材3sは、印刷用スクリーン上に当接させたスキージにより刷り込まれ、図4に示すように、筒状覆部2の表面に、シリコンゴム素材3sによる着圧パターン部4を形成(塗布)することができる。したがって、得られる着圧パターン部4の厚さ(層厚)はいずれの部位においても一定となる。
【0034】
そして、印刷が終了したなら、筒状覆部2は円筒プラテンに装着したまま、筒状覆部2に対する乾燥処理を行う。これにより、シリコンゴム素材3sが硬化したなら、円筒プラテンから筒状覆部2を離脱させれば、目的とするサポータ1tを得ることができる。なお、乾燥処理は、自然乾燥処理であってもよいし、加熱による強制乾燥処理であってもよい。また、自然乾燥処理と強制乾燥処理を組み合わせた段階的な乾燥処理であってもよい。
【0035】
他方、外反母趾用サポータ1tを使用する際には、図1に示すように、靴下を履く要領により、足Hpfの先端側を筒状覆部2に挿入するとともに、筒状覆部2の先端開口に設けた口ゴム部分2fから親指Hftを除く四本の指Hfmを露出させるとともに、親指Hftは、袋状の親指装着部11に挿入する。これにより、口ゴム部分2mは足の先端側に圧接し、着圧パターン部4は足Hpfの先端側における目的の定位置にセットされる。
【0036】
ところで、外反母趾は、履いている靴(ハイヒール)などが原因となり、足Hpfの親指Hftがその基の関節(中足趾関節)において第二指の方に屈曲(外反)している場合である。外反母趾用サポータ1tは、図5に示すように、足Hpfの先端側に装着される。図5は、黒丸の大きさにより着圧力Fm…の大きさをイメージ的に示している。この場合、着圧パターン部4は、親指Hft側の側面に強着圧部4aが位置し、上面側及び下面側が共に、小指Hfs側へ行くに従って、着圧力Fm…が段階的に低くなるとともに、図5に仮想線Kfで示す三角形状のように着圧力Fm…が分布し、親指Hft側の側面は、矢印Dq方向に加圧されると同時に矢印Dr方向となる後方にも引張られるベクトルが作用する。
【0037】
また、図6に示すように、親指Hft側の側面における前後方向の位置Ppには、前後方向において相対的に最大となる着圧力Fqmが親指Hft側に対して作用するとともに、小指Hfs側の側面における当該位置Ppに対して後方へ幅Lrだけオフセットした位置Pqには、前後方向において相対的に最大となる着圧力Fpmが小指Hfs側に対して作用する。
【0038】
これにより、着圧パターン部4は、中足趾関節の近傍の位置を加圧することになり、この結果、親指Hftは、反対側の方向、即ち、第二指から離れる矢印De方向に矯正される。即ち、外反母趾の予防(又は改善)が効果的に図られる。
【0039】
このように、本実施形態に係る外反母趾用サポータ1tは、基本構成として、筒状覆部2の表面に、弾性付着材3(シリコンゴム素材3s)の塗布により形成するとともに、当該弾性付着材3を塗布する全領域に対して設定した異なる塗布エリアXa,Xbp,Xbq…に対応して、当該弾性付着材3の塗布密度Rを段階的に異ならせることにより、塗布エリアXa,Xbp,Xbq…に対応する人体Hの部位に対して付与する着圧力Fm…の大きさに係わる所定の分布パターンを設定した着圧パターン部4を形成するに際し、足Hpfの先端側に装着する筒状覆部2を備え、この筒状覆部2の先端に当該足Hpfの親指Hftに装着する親指装着部11を一体に設けるとともに、親指装着部11を設けた側の筒状覆部2の側面に最も着圧力Fmの大きい塗布エリアXaを形成し、かつこの塗布エリアXaから周方向両側に、着圧力Fmが段階的又は連絡的に低くなる塗布エリアXbp,Xbq…を形成した着圧パターン部4を小指Hfs付近まで設けてなるため、製造が容易となりコストダウンに寄与できるとともに、着圧力や着圧方向を容易に設定できる。しかも、その設定をより広い範囲で行うことができるとともに、柔軟かつ的確な設定を行うことができる。加えて、無用な締め付け感を排除し、装着性を高めることができる。特に、外反母趾用サポータ1tとして、足Hpfの先端側に装着する筒状覆部2を備えるとともに、この筒状覆部2の先端に当該足Hpfの親指Hftに装着する親指装着部11を一体に備えるため、親指Hft及びその周辺に対して的確な着圧力Fm…を作用させることができ、外反母趾の防止又は改善に対して効果的に寄与できる。
【0040】
なお、図7(a),(b)は、メッシュM…の形状的な変更例を示す。図7(a)は、メッシュM…の形状を円形に形成した場合を示す。また、図7(b)は、メッシュM…の形状を矩形に形成するとともに、塗布密度Rを変更するに際し、メッシュM…の大きさ(面積)、即ち、同一形状に形成したメッシュM…の一部を埋める(ベタ塗りする)ことにより変更する場合を示す。このように、メッシュM…の形状は、各種形状を選定して実施できるとともに、塗布密度Rの変更も各種態様により実施することができる。
【0041】
また、図8(a),(b)は、着圧パターン部4の、部位(位置)に対する塗布密度Rの設定方法を示している。即ち、例示した実施形態の場合も、着圧パターン部4を形成するに際し、図8(a)に示すように、塗布密度Rを、Rb,Rc,Rdの大きさにより段階的に異ならせる態様を示したが、図8(b)に示すように、連続的、即ち、グラデュエーションにより異ならせる態様であってもよい。
【0042】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0043】
例えば、弾性付着材3としてシリコンゴム素材3sを例示したが、同様の機能を有する各種ゴム素材或いは各種弾性樹脂素材を利用することができる。また、実施形態では、着圧パターン部4として、一部の塗布エリアXbp,Xbq…をメッシュM…により形成した場合を例示したが、全部の塗布エリアXa…をメッシュM…により形成してもよい。さらに、塗布密度Rを異ならせるに際し、メッシュM…を、同一の形状及び大きさにより形成し、選定した部位のメッシュM…をベタ塗り部Mn…とする手法を採用したが、メッシュM…の形状や大きさを変えたり、或いは厚さを変えるなどによる他の手法により塗布密度Rを異ならせる場合を排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る外反拇趾用サポータは、例示した外反母趾用サポータをはじめ、人体の一部を覆う弾性伸縮する筒状覆部を少なくとも一部に有する各種外反拇趾用サポータに利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1t:外反拇趾用サポータ,2:筒状覆部,3:弾性付着材,3s:シリコンゴム素材,4:着圧パターン部,11:親指装着部,Xa:塗布エリア,Xbp:塗布エリア,Xbq:塗布エリア,H:人体,Hp:人体の一部,Hpf:足,Hft:親指,Hfs:小指,R:塗布密度,Fm…:着圧力,Dp:方向,Dr:方向,M…:メッシュ,Mh…:ハニカム形状,Mn…:ベタ塗り部
図1
図2
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図5
図6
図7
図8