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特開2022-88446基礎原料油およびそれを含有する潤滑油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088446
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】基礎原料油およびそれを含有する潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 101/02 20060101AFI20220607BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20220607BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20220607BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220607BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20220607BHJP
【FI】
C10M101/02
C10N30:10
C10N30:02
C10N40:25
C10N40:00 A
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022038383
(22)【出願日】2022-03-11
(62)【分割の表示】P 2018551323の分割
【原出願日】2017-03-27
(31)【優先権主張番号】62/315,808
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/468,380
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/356,749
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/468,406
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ラグベド・ピー・パタレ
(72)【発明者】
【氏名】リサ・アイ-チン・イェー
(72)【発明者】
【氏名】ヨギー・ブイ・シュクラ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エル・ベイカー・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・イー・ハジー
(72)【発明者】
【氏名】デブラ・エイ・シシン
(72)【発明者】
【氏名】ケンドール・エス・フラッチー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】潤滑油調合物へのより多くの添加剤の添加なしに調合油の酸化性能および低温性能を改善する、基礎原料油を提供する。
【解決手段】少なくとも90重量%の飽和化合物と、0.015 l/(g・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と、を含み、80~120の粘度指数(VI)と、4~6cStの100℃での動粘度とを有し、前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、前記芳香族化合物が、-4X-クラスのナフテノ芳香族種および-6X-クラスのナフテノ芳香族種を含む、基礎原料油。および、主成分としてこの基礎原料油と、副成分として1種以上の添加剤とを有する潤滑油。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90重量%の飽和化合物と、
0.015 l/gm-cm未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と、
を含み、
80~120の粘度指数(VI)と、1.05超のシクロパラフィン性能比と、4~6cStの100℃での動粘度とを有する、
基礎原料油。
【請求項2】
0.15 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
0.013 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
0.005 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
0.006 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;および
0.0017 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項1に記載の基礎原料油。
【請求項3】
0.15 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
0.007 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
0.013 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
0.005 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
0.006 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
0.0017 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
0.0013 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
0.00014 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項1に記載の基礎原料油。
【請求項4】
シクロパラフィン性能比が、1.2超である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項5】
前記飽和化合物が、0X-クラスのモノシクロパラフィン種を含み、
前記モノシクロパラフィン種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、41重量%超である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項6】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-2X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の2+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、35.7重量%未満である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項7】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-4X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の3+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、11重量%未満である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項8】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-6X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の4+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、3.7重量%未満である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項9】
少なくとも90重量%の飽和化合物と、
0.020 l/gm-cm未満の280~320nmの間での吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、
80~120の粘度指数(VI)と、1.05超のシクロパラフィン性能比と、10~14cStの100℃での動粘度とを有する、
基礎原料油。
【請求項10】
0.11 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
0.011 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
0.013 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
0.017 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;および
0.008 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項9に記載の基礎原料油。
【請求項11】
0.11 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
0.008 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
0.011 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
0.013 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
0.017 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
0.008 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
0.006 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
0.0007 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項9に記載の基礎原料油。
【請求項12】
前記シクロパラフィン性能比が、1.4超である、請求項9~11のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項13】
前記飽和化合物が、0X-クラスのモノシクロパラフィン種を含み、
前記モノシクロパラフィン種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、39重量%超である、
請求項9~12のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項14】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、ナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、75重量%未満である、
請求項9~12のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項15】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-2X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の2+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、39重量%未満である、
請求項9~12のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項16】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-4X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の3+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、10.8重量%未満である、
請求項9~12のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項17】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-6X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の4+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、3.2重量%未満である、
請求項9~12のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項18】
主成分として請求項1~8のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む組成を有する、潤滑油。
【請求項19】
主成分として請求項9~17のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む組成を有する、潤滑油。
【請求項20】
ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定される潤滑油の酸化性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項1~8のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含み、前記方法が、シクロパラフィン性能比を制御して1.05超の比を達成することを含む、方法。
【請求項21】
ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定される潤滑油の酸化性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項9~17のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含み、前記方法が、シクロパラフィン性能比を制御して1.05超の比を達成することを含む、方法。
【請求項22】
ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(MRV)によって測定される潤滑油の低温性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項1~8のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含み、前記方法が、
シクロパラフィン性能比を制御して1.05超の比を達成すること、
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、44重量%超にモノシクロパラフィン種を制御すること、および/または
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、21重量%超にイソ-パラフィン種を制御すること
を含む、方法。
【請求項23】
ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(MRV)によって測定される潤滑油の低温性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項9~17のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含み、前記方法が、
シクロパラフィン性能比を制御して1.05超の比を達成すること、
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、39重量%超にモノシクロパラフィン種を制御すること、および/または
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、25重量%超にイソ-パラフィン種を制御すること
を含む、方法。
【請求項24】
請求項1~8のいずれか一項に記載の5~95重量%の第1基礎原料油と、
請求項9~17のいずれか一項に記載の5~95重量%の第2基礎原料油と
を含む、基礎原料油ブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本開示は、基礎原料油(又はベースストック(base stock))、基礎原料油のブレンド、基礎原料油を含有する調合潤滑油組成物、および基礎原料油の使用に関する。本開示はまた、組成的に恵まれた基礎原料油によって調合潤滑油組成物の酸化性能および低温性能を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
エンジンオイルは、自動車エンジンおよびディーゼルエンジンでの使用を意図される完成クランク室潤滑油であり、2つの一般的な成分、すなわち、基礎原料油または基油(1つの基礎原料油または基礎原料油のブレンド)および添加剤からなる。基油は、これらの完成潤滑油中の主要な構成成分であり、エンジンオイルの特性に大いに寄与する。一般に、2、3の潤滑基油が、個別の潤滑基油と個別の添加剤との混合物を変えることによって様々なエンジンオイルの製造に使用されている。
【0003】
運営協会(例えば、米国石油協会)は、エンジンオイルについての規格を定めるのに役立っている。ますます、エンジンオイルについての規格は、優れた低温特性および高い酸化安定性を持った製品を要求している。現在のところ、エンジンオイルへ混ぜ込まれる基油のほんのわずかが、要求の厳しいエンジンオイル規格の最も厳しいものを満たすことができるにすぎない。現在のところ、調合物は、それらの製品を調合するためにグループI、II、III、IV、およびVを含む範囲にわたる様々な基礎原料油を使用している。
【0004】
基油は、減圧蒸留操作から回収されるより高い沸騰留分から一般に回収される。それらは、石油由来供給原料か合成原油由来供給原料かのいずれかから調製され得る。添加剤は、それが完成潤滑油の品位についての最小性能基準を満たすように完成潤滑油におけるある種の特性を改善するために添加される化学物質である。例えば、エンジンオイルに添加される添加剤は、潤滑油の安定性を改善する、その粘度を増加させる、粘度指数を上げる、および沈着を制御するために使用され得る。添加剤は、高価であり、完成潤滑油において混和性問題を引き起こし得る。こういう訳で、エンジンオイルの添加剤含有量を、適切な要件を満たすために必要な最少量に下げることが一般に望ましい。
【0005】
調合物は、品質改善のニーズによって駆られる変化を受けている。変化は、優れた低温特性および酸化安定性の必要性とともにエンジンオイルにおいて見られ、これらの変化は、新たなエンジンオイル・カテゴリーが開発されつつあるので続いている。工業潤滑油もまた、酸化安定性、清浄度、界面特性、および沈着制御の点で品質改善を強く求められている。
【0006】
潤滑基油および潤滑油調合技術の進歩にもかかわらず、酸化性能(例えば、より長い寿命を有するエンジンオイルおよび工業潤滑油のための)および調合油の低温性能を改善する必要性が存在する。特に、潤滑油調合物へのより多くの添加剤の添加なしに調合油の酸化性能および低温性能を改善する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本開示は、基礎原料油(又はベースストック(base stocks))に関し、さらに、この基礎原料油を含有する調合潤滑油組成物(又は処方潤滑油組成物(formulated lubricant compositions))に関する。本開示は、また、組成的に恵まれた基礎原料油による調合潤滑油組成物の酸化性能(oxidation performance)および低温性能(low temperature performance)を改善する(又は向上させる)方法に関する。
【0008】
本開示は、一つには、約4~約6cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油に関する。これらの基礎原料油は、また、本開示では、低粘度基礎原料油(low viscosity base stocks)、低粘度潤滑油基礎原料油(low viscosity lubricating oil base stocks)または低粘度生成物(low viscosity products)とも言われる。
基礎原料油は、
約90重量%以上の飽和化合物(saturates)と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数(又は吸光率又は吸光性能又は吸光性(absorptivity))を含む、紫外(線)(UV)分光法(spectroscopy)によって測定(又は決定)される量および分布の芳香族化合物(aromatics)と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比(cycloparaffin performance ratio)と、約4~約6cStの100℃での動粘度(kinematic viscosity)とを有する。
【0009】
本開示は、一つには、約5~約6cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油に関する。これらの基礎原料油は、また、本開示では、低粘度基礎原料油、低粘度潤滑油基礎原料油または低粘度生成物とも言われる。
基礎原料油は、
約90重量%以上の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、100超または好ましくは110超の粘度指数(Viscosity Index)を有し、約1.05超のシクロパラフィン性能比と、約5~約6cStの100℃での動粘度とを有する。
【0010】
本開示は、また、一つには、主成分(又はメジャー成分(major component))として基礎原料油と、副成分(又は微量成分又はマイナー成分(minor component))として1種以上の添加剤とを含む組成(又はコンポジション(composition))を有する潤滑油(lubricating oil)に関する。
基礎原料油は、約4~約6cStの100℃での動粘度を有し、
約90重量%以上の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05以上のシクロパラフィン性能比を有する。
【0011】
ある実施形態において、本開示の約4~約6cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油を含む潤滑油は、ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(rotating pressure vessel oxidation test)(RPVOT)によって測定されるように、本開示の基礎原料油以外の基礎原料油を含有する潤滑油の酸化性能と比べて改善された(又は向上した)酸化性能を有する。
【0012】
別の実施形態において、本開示の約4~約6cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油を含む潤滑油は、B10酸化試験によって測定されるように、本開示の基礎原料油以外の基礎原料油を含有する潤滑油の酸化安定性と比べて、改善された(又は向上した)酸化安定性を有する。
【0013】
さらなる実施形態において、本開示の約4~約6cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油を含む潤滑油は、ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(mini-rotary viscometer)(MRV)によって測定されるように、本開示の基礎原料油以外の基礎原料油を含有する潤滑油の低温性能と比べて、改善された(又は向上した)低温性能を有する。
【0014】
本開示は、さらに、一つには、ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定される潤滑油の酸化性能を改善する(又は向上させる)方法に関する。
潤滑油は、
主成分として約4~約6cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油と
副成分として1種以上の添加剤と
を含む。
基礎原料油は、
約90重量%以上の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比を有する。
本方法は、シクロパラフィン性能比を制御(又は調節)して約1.1超の比を達成すること(又は工程)を含む。
【0015】
本開示は、その上、さらに、一つには、ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(MRV)によって測定される潤滑油の低温性能を改善する方法に関する。
潤滑油は、
主成分として約4~約6cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む。
基礎原料油は、
約90重量%以上の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比を有する。
本方法は、
シクロパラフィン性能比を制御(又は調節)して約1.1超の比を達成すること(又は工程)、
モノシクロパラフィン種(monocycloparaffinic species)を、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、約41重量%超に制御(又は調節)すること(又は工程)、および/または
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、約21重量%超にイソ-パラフィン種を制御(又は調節)すること(又は工程)
を含む。
【0016】
本開示は、一つには、約10~約14cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油に関する。これらの基礎原料油は、また、本開示では、高粘度基礎原料油(high viscosity base stocks)、高粘度潤滑油基礎原料油(high viscosity lubricating oil base stocks)または高粘度生成物(high viscosity products)とも言われる。
基礎原料油は、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比と、約10~約14cStの100℃での動粘度とを有する。
【0017】
本開示は、一つには、約10~約14cStの100℃での動粘度、約80~120の粘度指数(VI)、好ましくは約100~120のVI、および約-12℃未満の流動点を有する基礎原料油に関する。
基礎原料油は、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比と、約10~約14cStの100℃での動粘度とを有する。
【0018】
本開示は、また、一つには、主成分として基礎原料油と、副成分として1種以上の添加剤とを含む組成を有する潤滑油に関する。
基礎原料油は、約10~約14cStの100℃での動粘度を有し、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比を有する。
【0019】
本開示は、また、一つには、主成分として基礎原料油と、副成分として1種以上の添加剤とを含む組成を有する潤滑油に関する。
基礎原料油は、約10~約14cStの100℃での動粘度と、約80~約120の粘度指数(VI)と、約-12℃未満の流動点とを有し、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比を有する。
【0020】
ある実施形態において、本開示の約10~約14cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油を含む潤滑油は、ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定されるように、本開示の基礎原料油以外の基礎原料油を含有する潤滑油の酸化性能と比べて、改善された(又は向上した)酸化性能を有する。
【0021】
別の実施形態において、本開示の約10~約14cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油を含む潤滑油は、B10酸化試験(oxidation test)によって測定されるように、本開示の基礎原料油以外の基礎原料油を含有する潤滑油の酸化安定性と比べて、改善された(又は向上した)酸化安定性を有する。
【0022】
さらなる実施形態において、本開示の約10~約14cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油を含む潤滑油は、ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(MRV)によって測定されるように、本開示の基礎原料油以外の基礎原料油を含有する潤滑油の低温性能と比べて、改善された(又は向上した)低温性能を有する。
【0023】
さらなる実施形態において、5~95重量%の第1基礎原料油と、5~95重量%の第2基礎原料油とを含む基礎原料油ブレンド(又はベースストックブレンド(base stock blend))が提供される。
第1基礎原料油は、約90重量%以上の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.1超のシクロパラフィン性能比と、約4~約6cStの100℃での動粘度とを有する。
第2基礎原料油は、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比と、約10~約14cStの100℃での動粘度とを有する。
【0024】
本開示は、さらに、一つには、ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定される潤滑油の酸化性能を改善する(又は向上させる)方法に関する。
潤滑油は、
主成分として約10~約14cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油と、副成分として1種以上の添加剤とを含む。
基礎原料油は、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比と、約10~約14cStの100℃での動粘度とを有する。
本方法は、シクロパラフィン性能比を制御(又は調節)して約1.05超の比を達成すること(又は工程)を含む。
【0025】
本開示は、さらに、一つには、ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定される潤滑油の酸化性能を改善する(又は向上させる)方法に関する。
潤滑油は、
主成分として、約10~約14cStの100℃での動粘度、約80~約120の粘度指数(VI)、および約-12℃未満の流動点を有する基礎原料油と、副成分として1種以上の添加剤とを含む。
基礎原料油は、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.3超のシクロパラフィン性能比と、約10~約14cStの100℃での動粘度とを有する。
本方法は、シクロパラフィン性能比を制御(又は調節)して約1.05超の比を達成すること(又は工程)を含む。
【0026】
本開示は、その上、さらに、一つには、ASTM D4684によりミニロータリー粘度計(MRV)によって測定される潤滑油の低温性能を改善する(又は向上させる)方法に関する。
潤滑油は、主成分として約10~約14cStの100℃での動粘度を有する基礎原料油と、副成分として1種以上の添加剤とを含む。
基礎原料油は、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比と、約10~約14cStの100℃での動粘度とを有する。
本方法は、
シクロパラフィン性能比を制御(又は調節)して約1.05超の比を達成すること(又は工程)、
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、約39重量%超にモノシクロパラフィン種を制御(又は調節)すること(又は工程)、および/または
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、約25重量%超にイソ-パラフィン種を制御(又は調節)すること(又は工程)
を含む。
【0027】
本開示は、その上、さらに、一つには、ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(MRV)によって測定される潤滑油の低温性能を改善する方法に関する。
潤滑油は、主成分として、約10~約14cStの100℃での動粘度、約80~約120の粘度指数(VI)、および約-12℃未満の流動点を有する基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む。
基礎原料油は、
少なくとも約90重量%の飽和化合物、好ましくは98重量%超の飽和化合物と、
約0.020 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm(又はl/gm・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、約1.05超のシクロパラフィン性能比と、約10~約14cStの100℃での動粘度とを有する。
本方法は、
シクロパラフィン性能比を制御(又は調節)して約1.05超の比を達成すること(又は工程)、
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、約39重量%超にモノシクロパラフィン種を制御(又は調節)すること(又は工程)、
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、約25重量%超にイソ-パラフィン種を制御(又は調節)すること(又は工程)
を含む。
【0028】
本開示に従って、調合油(又は調製油又は処方油(formulated oil))の酸化性能は、調合油をブレンドするために使用される基油(又はベースオイル(base oil))中の全シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族含有量(naphthenoaromatic content)、または多環シクロパラフィン種(multi-ring cycloparaffin species)およびナフテノ芳香族種(naphthenoaromatic species)の相対量のいずれかを制御(又は調節)することによって改善(又は向上)できることが意外にも見いだされた。さらに、本開示に従って、調合油の低温性能は、イソ-パラフィンおよびモノシクロパラフィン種の量を増やすこと、および/または調合油をブレンドするために使用される基油中のイソ-パラフィン種を変更(又は修飾)することによって改善(又は向上)できることが意外にも見いだされた。
【0029】
本開示の他の目的および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の実施形態による多段階反応系の例を概略的に示す。
図2】本開示の実施形態による多段階反応系の例を概略的に示す。
図3】第1反応段階用の触媒配置構成の例を概略的に示す。
図4】第2反応段階用の触媒配置構成の例を概略的に示す。
図5】本開示の代わりの実施形態による3段階反応系の例を概略的に示す。
図6】本開示の代わりの実施形態による4段階反応系の例を概略的に示す。
図7】本開示の代わりの実施形態によるさらにその上別の3段階反応系の例を概略的に示す。
図8】本開示の実施形態によるX-クラスおよびZ-クラスの例示的な多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物を示す。
図9】対照低粘度基礎原料油の組成と比較して本開示の模範的な低粘度基礎原料油の組成および特性を示す。
図10】対照高粘度基礎原料油の組成と比較して本開示の模範的な高粘度基礎原料油の組成および特性を示す。
図11】本開示の高粘度基礎原料油および典型的な市販の基礎原料油試料についての示差走査熱量測定法(DSC)加熱曲線を示す。
図12】本開示の基礎原料油および対照基礎原料油を使用して調合された20W-50エンジンオイルについての流動点に対するASTM D4684により測定されるミニロータリー粘度計(MRV)見かけ粘度を示す。
図13】品質差を示すために本開示の高粘度グループII基礎原料油対類似品質競合高粘度基礎原料油でのタービン油調合物に関してASTM D2272により測定された比較RPVOT時間をグラフによって示す。
図14】品質差を示すために本開示の低粘度グループII基礎原料油対類似品質競合低粘度基礎原料油でのタービン油調合物に関してASTM D2272により測定された比較RPVOT時間をグラフによって示す。
図15】本開示の模範的な低粘度および高粘度基礎原料油の、物理的特性および紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の分布を示す。
図16】潤滑油基礎原料油(すなわち、米国特許出願公開第2013/0264246号明細書の4.5cSt基礎原料油、米国特許出願公開第2013/0264246号明細書に開示されるような4.5cSt最先端基礎原料油、本開示の5cSt基礎原料油、および本開示の11+cSt基礎原料油)中の、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(詳細な説明)
本明細書での詳細な説明および特許請求の範囲内のすべての数値は、示された値を「約」または「おおよそ」で修飾され、当業者に公知であろう実験誤差およびばらつきを考慮に入れている。
【0032】
潤滑油の粘度-温度関係は、特定の用途向けに潤滑油を選択するときに考慮されなければならない決定的に重要な判断基準の一つである。粘度指数(VI)は、所与の温度範囲内での油の粘度の変化率を示す経験的な、無名数である。温度とともに比較的大きい粘度の変化を示す流体は、低い粘度指数を有すると言われる。低いVI油は、例えば、高いVI油よりも速く高温でまばらになるであろう。通常、高いVI油は、より高い温度でより高い粘度を有し、それはより良好なまたはより厚い潤滑膜および接触機械要素のより良好な保護をもたらすので、高いVI油がより望ましい。
【0033】
別の態様において、油動作温度が低下するにつれて、高いVI油の粘度は、低いVI油の粘度ほど多く増加しないであろう。これは、低いVI油の過度の高い粘度が作業機械の効率を低下させ得るので有利である。したがって、高いVI(HVI)油は、高温および低温操作の両方で性能利点を有する。VIは、ASTM方法D 2270-93[1998]に従って測定される。VIは、ASTM方法D 445-01を用いて40℃および100℃で測定される動粘度に関連している。
【0034】
本明細書で用いるところでは、用語「主成分(又はメジャー成分(major component))」は、約50重量パーセント超の量で本開示の潤滑油中に存在する成分(例えば、基礎原料油)を意味する。
【0035】
本明細書で用いるところでは、用語「副成分(又はマイナー成分(minor component))」は、約50重量パーセント未満の量で本開示の潤滑油中に存在する成分(例えば、1種以上の潤滑油添加剤)を意味する。
【0036】
潤滑油基礎原料油
本開示に従って、市販の基礎原料油について以前に知られたものとは異なる相対量のモノシクロパラフィンおよび多環シクロパラフィン種ならびにナフテノ芳香族種を有する基油組成物または潤滑油基礎原料油が提供される。本開示の様々な実施形態によれば、基礎原料油は、APIグループIIまたはグループIII基礎原料油、特にAPIグループII基礎原料油である。また、本開示に従って、調合油をブレンドするために使用される基油中の全シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族含有量か、多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の相対量かのいずれかを制御することによって調合油の酸化性能を改善する方法が提供される。さらに、本開示に従って、調合油をブレンドするために使用される基油中のイソ-パラフィンおよびモノシクロパラフィン種の量を増やすおよび/またはイソ-パラフィン種を変更することによって調合油の低温性能を改善する方法が提供される。
【0037】
本明細書に記載される方法は、エンジンオイル調合物においては改善された低温特性およびタービン油調合物においては酸化性能を提供する独特の潤滑油基礎原料油を製造するために用いられる。独特の潤滑油基礎原料油の組成利点は、異性体からなる分子配列を含めて飽和化合物部分の分布に由来すると考えられる。本開示は、恵まれた種の含有量を高めるかまたは本明細書で特定される悪く振る舞う種の含有量を制御することによって、ASTM D4684により測定される低温性能についての調合油MRV(ミニロータリー粘度計)、またはASTM D2272により測定される酸化性能についての調合油RPVOT(回転圧力容器酸化試験)などの、潤滑油基礎原料油の低温および酸化性能を制御する方法を提供する。本開示の潤滑油は、乗用車エンジンオイル(PVEO)製品として特に有利である。
【0038】
本開示の潤滑油基礎原料油は、典型的な従来の潤滑油基礎原料油よりも、ASTM D4684により測定されるMRV見かけ粘度などのエンジンオイルでの改善された低温特性と、タービン油でのASTM D2272により測定されるRPVOT酸化安定性時間などの改善された酸化性能とを含むが、それらに限定されないいくつかの利点を提供する。本開示で用いられる水素化分解プロセスは、基礎原料油中の炭化水素分子の追加の環飽和、開環、水素化分解および異性化に柔軟性を提供する。
【0039】
本明細書で用いるところでは、多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物は、X-クラスおよびZ-クラスに分類することができる。図8は、本開示の実施形態に従ったX-クラスおよびZ-クラスの例示的な多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物を示す。図8を参照すると、任意の環構造へのパラフィン側鎖の追加は、X-クラスを変更しないであろう。これは、飽和アルキル側鎖が式C2mのものであるような、主たる種において見ることができる。だから、C2mのC2n+xへの追加=依然として式C2n+xのものであるC(n+m)2(n+m)+xである。
【0040】
さらに、図8を参照すると、アルキルナフテノ芳香族種は、Z=2(環+二重結合-1)の式C2n+zに従い;Z-クラスの分子を与える。Z-クラスは、ラップアラウンドによってX-クラスに変わる。だから、Z=-10まで、X-クラスおよびZ-クラスは同一である。しかし、-12のZ-クラスは、+2のX-クラスと同じであり;-14のZ-クラスは、0のX-クラスと同じであるなど;2、0、-2、-4、-6、-8または-10のX-クラスが得られるように、式:14(の倍数)マイナスZ-クラスで与えられる。Z-クラスはまた、式C2n+zY(ここで、Yはヘテロ原子(S、Nなど)である)を有するヘテロ-ナフテノ芳香族種にも応用されるであろう。これらは、ヘテロ原子の炭化水素種の含有量が非常に少ないグループII基礎原料油である。Z-クラスの定義は、Klaus H.AltgeltおよびMieczyslaw M.Boduszynski,Composition and Analysis of Heavy Petroleum Fractions,CRC Press,1993によって記載されている。
【0041】
本開示に従って、独特の組成のグループII基礎原料油(図9および10での例)は、供給原料(すなわち、約20~約45の溶媒脱ろう油供給物粘度指数を有する減圧ガスオイル供給原料)を使用する水素化分解プロセスによって生み出され、3.5cst~13cstの様々な基礎原料油粘度を示す。組成の差は、シクロパラフィンおよびナフテノ芳香環種の分布の差を含み、多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物と比べてより大きい相対量の1環につながる。図9および10は、それぞれにおいて行14を参照すると、本開示の低粘度基礎原料油においては1.1を超え、そして本開示の高粘度基礎原料油においては1.2を超えるシクロパラフィン性能比を示す。
【0042】
8cSt超の100℃での動粘度を有する基礎原料油についてのシクロパラフィン性能比、すなわち、本開示の高粘度基礎原料油のシクロパラフィン性能比は、試験試料としての0.3cSt以内の100℃での動粘度を持った2016年以前に商業的に入手可能な重質中性グループIIでの同じ比と比べて、前記基礎原料油中のモノシクロパラフィン種(0の水素不足X-クラス)対多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種(-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの種の合計)の比として計算された(ここで、モノシクロパラフィン種から多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種までの量はすべて、同じ較正で同じ機器でのGCMSを用いて測定される)。
【0043】
同様に、8cStよりも低い100℃での動粘度を持った基礎原料油について、すなわち、本開示の低粘度基礎原料油のシクロパラフィン性能比は、試験試料としての0.3cSt以内の100℃での動粘度を持った2016年以前に商業的に入手可能な軽質中性グループIIでの同じ比と比べて、前記基礎原料油中のモノシクロパラフィン種(0の水素不足X-クラス)対多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種(-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの種の合計)の比として計算された(ここで、モノシクロパラフィン種から多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種までの量はすべて、同じ較正で同じ機器でのGCMSを用いて測定される)。
【0044】
その上、本開示の基礎原料油において、2+、3+、4+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物について、図9および10、それぞれの行15、16、および17に示されるような多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の絶対値は、粘度範囲にわたって商業的に公知の基礎原料油と比べて本開示の基礎原料油においてより低い。具体的には、本開示の実例基礎原料油は、低粘度生成物では、35.7%未満の図8に示されるような-2X-クラスの種、主に2X-クラスの2+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、11.0%未満の図8に示されるような-4X-クラスの種、主に4X-クラスの3+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、および3.7%未満の図8に示されるような-6X-クラスの種、主に6X-クラスの4+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、ならびに高粘度生成物については、39%未満の図8に示されるような-2X-クラスの種、主に2X-クラスの2+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、10.8%未満の図8に示されるような-4X-クラスの種、主に4X-クラスの3+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、および3.2%未満の図8に示されるような-6X-クラスの種、主に6X-クラスの4+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物を示す。多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物のより低い量はまた、3環種の個別の数(図9および10、それぞれの行7);低粘度生成物については7.8%未満および高粘度生成物については7.9%未満に注目することによって理解することができる。その上、本開示の基礎原料油はまた、フル粘度範囲にわたってモノシクロパラフィン種のより高い量;低粘度基礎原料油については40.7%超および高粘度基礎原料油については38.8%超を示す。さらに、本開示の基礎原料油は、好ましくは5%未満の総量、より好ましくは2%未満の総量の、相応して図8に示されるのと同じX-クラスのナフテノ芳香族種を含むことができる。
【0045】
さらに、ワイドカット供給物を使用すると、より重質の基礎原料油がより軽質の基礎原料油と併産されるという利点を有する。図10、その行4に見られるように、高粘度基礎原料油は、平均すると80%に近い、市販の基礎原料油と比べてかなりより低い全シクロパラフィン含有量(75%未満)を示す。
【0046】
その上、低および高粘度基礎原料油は両方とも、より高いVIを示し、本開示の高粘度基礎原料油は、106~112範囲、例えば、109以下~112範囲のVIを有する。さらに、本開示の低および高粘度基礎原料油は、合計して95重量%超の飽和化合物、または98重量%超もしくは99重量%超の飽和化合物を有し得る。
【0047】
その上、高粘度基礎原料油は、13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり13.3個超のイプシロン炭素原子によって明らかなようにこれらの種のイソ-パラフィン部分上により低い程度の分岐、および13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり2.8個超のアルファ炭素原子によって明らかなようにこれらの種のイソ-パラフィン部分上により大きい数の長いアルキル分岐を示す(図10、行18および20)。特性のいくつかの独特の組み合わせはまた、高粘度生成物と併産される低粘度基礎原料油において特に見られる。例えば、本開示の低粘度基礎原料油は、110超の粘度指数を保持しながら12%未満のイプシロン炭素含有量を有する(図9、行18および3)。
【0048】
図9および10に含まれる本開示の模範的な基礎原料油の組成特性の詳細な要約が、以下に示される。
【0049】
100℃で範囲4~6cSt、または100℃での5~6cStの動粘度を持った基礎原料油について、組成物は好ましくは、
GCMSにより測定されるように、モノシクロパラフィン種が、全種の44%または46%または48%超;全種の好ましくは46%超、より好ましくは47%超、さらに一層好ましくは48%超を構成し;
GCMSより測定されるように、類似の商業的に入手可能な水素処理基礎原料油における同じ比と比べてモノシクロパラフィン種(0の水素不足X-クラス)対多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種(-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの種の合計)の比(シクロパラフィン性能比(CPR))が、1.05超、または1.1超、または1.2超、または1.3超、または1.4超、または1.5超、または1.6超;GCMSにより測定されるように好ましくは1.2超、より好ましくは1.4超、さらに一層好ましくは1.6超であり;
GCMSにより測定されるように、-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、2+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の34%未満または33%未満または31%未満または30%未満;好ましくは34%未満、より好ましくは33%未満、さらに一層好ましくは30%未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、3+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の10.5%未満または9.5%未満または9%未満または8.5未満;好ましくは10.5%未満、より好ましくは10%未満、さらに一層好ましくは9%未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、4+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の2.9%未満または2.7%未満または2.6%未満;好ましくは2.95%未満、より好ましくは2.7%未満、さらに一層好ましくは2.5%未満を構成し;
13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり1.1個超の第三級またはペンダントプロピル基;13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり好ましくは1.2個超、より好ましくは1.25個超の第三級またはペンダントプロピル基によって明らかにされるこれらの種のイソ-パラフィン/アルキル部分上のより長い分岐;ならびに
GCMSにより測定されるように、モノメチルパラフィン種が、全種の1.3%未満、または1.1%未満、または0.9%未満、または0.8%未満、または0.7%未満;好ましくは1.3%未満、より好ましくは0.8%未満、さらに一層好ましくは0.6%未満を構成する
ものである。
【0050】
100℃で範囲10~14cStの動粘度を持った基礎原料油について、組成物は好ましくは、
GCMSにより測定されるように、モノシクロパラフィン種が、全種の39%超または39.5%超または40%超または41%超;全種の好ましくは39%超、より好ましくは40%超、さらに一層好ましくは41.5%超を構成し;
シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種、すなわち、0、-2、-4、-6、-8、および-10の水素不足X-クラスの全種の合計が、全種の73%未満または72%未満または71%未満;好ましくは73%未満、より好ましくは72%未満、さらに一層好ましくは70.5%未満を構成し;
類似の商業的に入手可能な水素処理基礎原料油における同じ比と比べてモノシクロパラフィン種(0の水素不足X-クラス)対多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種(-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの種の合計)の比(シクロパラフィン性能比)が、GCMSより測定されるように1.05超、または1.1超、または1.2超または1.3超または1.4超;GCMSにより測定されるように好ましくは1.2超、より好ましくは1.4超、さらに一層好ましくは1.6超であり;
GCMSにより測定されるように、-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、2+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の36%未満または35%未満または34%未満または32%未満または30%未満;好ましくは36%未満、より好ましくは32%未満、さらに一層好ましくは30%未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、3+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の10.5%未満、または10%未満または9%未満または8%未満;好ましくは10.5%未満、より好ましくは9%未満、さらに一層好ましくは8%未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、4+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の2.8%以上;好ましくは2.8%未満、より好ましくは2.7%未満、さらに一層好ましくは2.5%未満を構成し;
13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり13個超、または14個超または14.5個超のイプシロン炭素原子;13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり好ましくは13個超、より好ましくは14個超、さらに一層好ましくは14.5個超のイプシロン炭素原子によって明らかにされるこれらの種のイソ-パラフィン/アルキル部分上のより高程度の分岐;
13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり2.7個超、または2.8個超、または2.85個超、または2.9個超、または2.95個超のアルファ炭素原子;13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり好ましくは2.8個超、より好ましくは2.9個超、さらに一層好ましくは2.95個超のアルファ炭素原子によって明らかにされるこれらの種のイソ-パラフィン/アルキル部分上のより大きい数の長いアルキル分岐;ならびに
DSC法による微晶質ワックスの溶融での速い熱流量増加率(0.0005~0.0015W/g.T)で特徴づけられる残存ワックス分布
であるものである。
【0051】
本開示の基礎原料油は、典型的なグループII基礎原料油と比べてより低い全シクロパラフィン含有量を有する。これは、競合基礎原料油を上回る本開示の基礎原料油のVI利点を提供すると考えられる。意外にも、本開示の基礎原料油はまた、より低い全体シクロパラフィン含有量およびナフテノ芳香族種含有量にもかかわらず、X-クラス0環種(モノシクロパラフィン種に相当する)のより高い含有量を有する。理論に制約されるわけではないが、多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物のより低い量に対する1つの仮説は、低い多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物につながる開環反応が、本開示の基礎原料油を製造するために用いられるプロセス条件下で高い選択性を有し得るというものである。本開示の基礎原料油を製造するために用いられるプロセススキームは、VIを潜在的に改善する開環反応に有利に働き得る低い硫黄(スイート)処理条件下で酸性部位を有する貴金属触媒のより多い活用を可能にする。
【0052】
本開示に従って、イソ-パラフィンおよびモノシクロパラフィン種の量を増やすことによってASTM D4684により測定されるMRVを改善する方法が提供される。本明細書に記載されるように、本開示の基礎原料油は、低温性能の改善に寄与し得る、より低い多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族含有量ならびにより高いモノシクロパラフィン含有量を有する。これは、シクロパラフィン含有量の比較的小さい変化が低温性能に影響を及ぼすとは予期され得ないので意外である。寄与し得るシクロパラフィンおよび/または分岐の長鎖パラフィンなどの飽和種の興味深い分布があると考えられる。したがって、ある実施形態において、本開示は、より厳しい処理により多環シクロパラフィンをモノシクロパラフィンへと変換し、次にこの基油を低い多環シクロパラフィン種とブレンドして調合物にすることによってASTM D4684により測定されるMRV性能を改善する方法を提供する。
【0053】
本開示に従って、多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種を減らすことによってASTM D2272により測定される回転圧力容器酸化試験(RPVOT)を改善するための方法が提供される。本開示の基礎原料油、特により高粘度基礎原料油は、類似粘度APIグループII基礎原料油よりも一方向に低い量のシクロパラフィンを示す。また、そのような基礎原料油における個別シクロパラフィン型分子分布は、類似粘度競合グループII基礎原料油についてのものとは異なる。本開示の基礎原料油における全体組成差は、タービン油調合物に関してASTM D2272によりRPVOTによって測定されるように一方向により良好な酸化安定性をもたらす。理論に制約されるわけではないが、ある種のタイプのシクロパラフィン分子は、酸化開始反応での阻止によってか、酸化生成物を溶液中にたぶん保つかのいずれかによってより良好な酸化安定性を提供するので、他のタイプのシクロパラフィン分子を上回って好ましいものであり得るとまた考えられる。イソ-パラフィン分子はシクロパラフィン型分子よりもさらに一層好ましいかもしれないとまた考えられる。これは、より高いRPVOT平均時間をもたらす。したがって、本開示は、次のとおり組成空間当たりの多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種を特に減らすことによって酸化安定性を制御する方法を提供する:
競合基礎原料油よりも2~7%低い全体シクロパラフィン分子含有量;
単環クラスのシクロパラフィン分子が2~4%より高かった;
2環クラスのシクロパラフィン分子が2~5%より低かった;
3環クラスのシクロパラフィン分子が1~6%より低かった;そして
すべての4水素不足クラスおよびナフテノ芳香族分子の合計が、約2~6%より低い約10%である。
【0054】
基油は、本開示のエンジンまたは他の機械構成部品潤滑油組成物の主成分を構成し、典型的には、組成物の総重量を基準として、約50~約99重量パーセント、好ましくは約70~約95重量パーセント、より好ましくは約85~約95重量パーセントの範囲の量で存在する。本明細書に記載されるように、添加剤は、本開示のエンジンまたは他の機械構成部品潤滑油組成物の微量成分を構成し、典型的には、組成物の総重量を基準として、約50重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、より好ましくは約15重量パーセント未満の範囲の量で存在する。
【0055】
例えば、基礎原料油成分と共基礎原料油成分との基油の混合物が、必要ならば使用されてもよい。共基礎原料油成分は、約1~約99重量パーセント、好ましくは約5~約95重量パーセント、より好ましくは約10~約90重量パーセンの量で本開示の潤滑油中に存在する。本開示の好ましい態様において、低粘度および高粘度基礎原料油は、5~95重量%の低粘度基礎原料油と、5~95重量%の高粘度基礎原料油とを含む基礎原料油ブレンドの形態で使用される。好ましい範囲は、10~90重量%の低粘度基礎原料油と、10~90重量%の高粘度基礎原料油とを含む。15~85重量%の低粘度基礎原料油と、15~85重量%の高粘度基礎原料油との、好ましくは20~80重量%の低粘度基礎原料油と、20~80重量%の高粘度基礎原料油との、より好ましくは25~75重量%の低粘度基礎原料油と、25~75重量%の高粘度基礎原料油との基礎原料油ブレンドが最も通常、エンジンまたは他の機械構成部品潤滑油組成物に使用される。
【0056】
本開示の第1の好ましい態様において、本開示の低粘度基礎原料油は、組成物の総重量を基準として、約50~約99重量パーセント、好ましくは約70~約95重量パーセント、より好ましくは約85~約95重量パーセントの範囲の量で、または例えば唯一の基油としてエンジンまたは他の機械構成部品潤滑油組成物に使用される。本開示の第2の好ましい態様において、本開示の高粘度基礎原料油は、組成物の総重量を基準として、約50~約99重量パーセント、好ましくは約70~約95重量パーセント、より好ましくは約85~約95重量パーセントの範囲の量で、または例えば唯一の基油としてエンジンまたは他の機械構成部品潤滑油組成物に使用される。
【0057】
潤滑油のための水素化分解プロセスは、本開示の秀でた低温および酸化性能を持った組成的に恵まれた基礎原料油を生み出すために用いることができる。供給原料(すなわち、約20~約45の溶媒脱ろう油供給物粘度を有する減圧ガスオイル供給原料)は、主に、粘度指数(VI)を増加させ、そして硫黄および窒素を除去する水素化処理装置である第1段階によって処理される。これに、より低い沸点の分子が除去されるストリッピングセクションが続く。より高沸点留分は次に、水素化分解、脱ろう、および水素化仕上げが行われる第2段階に入る。供給原料とプロセスアプローチとのこの組み合わせは、独特の組成特性を持った基礎原料油を生み出す。これらの独特の組成特性は、生み出されたより低粘度およびより高粘度基礎原料油の両方で観察される。
【0058】
潤滑油基礎原料油は、供給原料(すなわち、減圧ガスオイル供給原料(すなわち、約20~約45の溶媒脱ろう油供給物粘度指数を有する減圧ガスオイル供給原料)を、従来法で処理された低粘度基礎原料油と比べて独特の組成特性を持った低粘度生成物をもたらす低粘度カットの従来VI目標を達成するために水素化分解プロセスで処理することによって生み出すことができる。潤滑油基礎原料油組成は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、カーボン-13核磁気共鳴(13C NMR)、プロトン核磁気共鳴(プロトン-NMR)、および示差走査熱量測定法(DSC)などの進歩した分析技術の組み合わせを用いて測定することができる。本開示の実施形態による、そして4~6cStの範囲の100℃での動粘度を有するグループII低粘度潤滑油基礎原料油の例は、図9に記載される。潤滑油および潤滑基礎原料油の動粘度は、ASTM試験方法D445に従って測定される。参考のために、本開示の低粘度潤滑油基礎原料油が、同じ粘度範囲を有する典型的なグループII低粘度基礎原料油と比較される。
【0059】
上記方法からの処理高粘度生成物はまた、本明細書に記載される独特の組成特性を示すことができる。10~14cStの範囲の100℃での動粘度を有するそのようなグループII高粘度潤滑油基礎原料油は、図10に記載される。参考のために、本開示の高粘度潤滑油基礎原料油が、同じ粘度範囲を有する典型的なグループII高粘度基礎原料油と比較される。
【0060】
重質留出物またはガスオイル型供給物などの、より重質の供給物を処理する1つの選択肢は、水素化分解を用いて供給物の一部を変換することである。700°F(371℃)部分などの、特定の沸点よりも下で変換される供給物の部分は、ナフサおよびディーゼル燃料生成物に使用することができ、そして一方、残りの未変換部分は、潤滑油基礎原料油として使用することができる。
【0061】
ディーゼルおよび/または潤滑油基礎原料油収率の改善は、一つには、脱ろう触媒の使用によって可能にされる代わりの配置構成に基づくことができる。例えば、ゼオライトYベースの水素化分解触媒は、環状および/または分岐炭化水素の分解にとって選択的である。分岐の少ないまたは分岐のないパラフィン分子は、所望レベルの変換を達成するために厳しい水素化分解条件を必要とし得る。これは、供給物中の環状および/またはより高分岐分子の過分解をもたらし得る。接触脱ろうプロセスは、パラフィン分子の分岐を増やすことができる。これは、後続の水素化分解段階が分岐数の増えたパラフィン分子をより低沸点種に変換する能力を増加させることができる。
【0062】
様々な実施形態において、ナフサおよび他の価値がより少ない種へのより高沸点分子の変換を最小限にしながら、スイートまたはサワー環境での使用に好適である脱ろう触媒を選択することができる。脱ろう触媒は、供給物の最初の水素化処理、水素化処理供給物の水素化分解、および水素化分解からの流出物の脱ろう、および任意選択の最終水素化処理を含む第1段階での統合プロセスの一環として使用することができる。あるいは、脱ろう段階は、水素化分解前の水素化処理供給物に関して行うことができる。任意選択的に、水素化分解段階は省略することができる。処理供給物は次に、700°F(371℃)よりも下などの、特定の温度よりも下で沸騰する供給物の部分を分離するために分留することができる。第2段階を次に、分留装置からの未変換ボトムを処理するために用いることができる。ボトムフラクションは、さらなる変換のために水素化分解する、任意選択的に水素化仕上げする、および任意選択的に脱ろうすることができる。
【0063】
従来のスキームでは、任意の接触脱ろうおよび/または水素異性化は、別個の反応器で行われる。これは、従来の触媒が、水素化分解流出物中に典型的に存在するヘテロ原子汚染物質(HS NH、有機硫黄および/または有機窒素などの)によって被毒されるという事実による。したがって、従来のスキームでは、分離工程が、ヘテロ原子汚染物質の量をまず減らすために用いられる。水素化分解装置流出物から様々なカットを分離するために蒸留がまた行われる必要があるので、分離は、蒸留と同時に、それ故脱ろうの前に行われてもよい。
【0064】
様々な実施形態において、脱ろう触媒の層は、分離段階を必要とせずに、第1段階での水素化処理および/または水素化分解工程の後に含めることができる。汚染物質耐性触媒を使用することによって、穏和な脱ろう工程を、全の水素化処理、水素化分解、または水素化処理および水素化分解流出物に関して行うことができる。これは、流出物中に存在するすべての分子が穏和な脱ろうに曝されることを意味する。この穏和な脱ろうは、より長鎖分子の沸点を変更し、こうして普通はボトムとして蒸留工程を出得る分子が潤滑油基礎原料油に好適な分子に変換されることを可能にする。同様に、潤滑油基礎原料油に好適ないくつかの分子が、ディーゼル範囲分子に変換されるであろう。
【0065】
脱ろう工程を第1サワー段階に有することによって、第1段階からの流出物の低温流れ特性を改善することができる。これは、第1ディーゼル生成物が第1段階後に分留から生成することを可能にすることができる。第1段階後の分留によるディーゼル生成物の産出は、1つ以上の利点を提供することができる。これは、第1ディーゼル生成物の水素化分解へのさらなる暴露を回避することができ、それ故、ディーゼルと比べて生成するナフサの量を減らす。第1段階後の分留装置からのディーゼル生成物の取り出しはまた、第2またはその後の段階で処理される流出物の容積を減らす。さらに別の利点は、第1段階からのボトム生成物が、脱ろう機能なしの第1段階と比べて改善された品質を有することであり得る。例えば、第2段階用のインプットとして使用されるボトムフラクションは、改善された低温流れ特性を有することができる。これは、所望の生成物規格を達成するために第2段階で必要とされる厳しさを減らすことができる。
【0066】
第2段階は、様々なやり方で配置構成することができる。1つの選択肢は、ディーゼル産出を強調することであり得る。このタイプの選択肢では、第2段階からの未変換ボトムの部分は、第2段階にリサイクルすることができる。これは任意選択的に、ディーゼル産出を最大限にするために、消滅するまで行うことができる。あるいは、第2段階は、ボトムから少なくともいくらかの潤滑油基礎原料油を生み出すために配置構成することができる。
【0067】
さらに別の利点は、いくつかの実施形態によって提供される柔軟性であり得る。第1段階および第2段階の両方での脱ろう能力の包含は、プロセス条件が、触媒を潜在的な被毒から保護するための条件を選択することとは対照的に、所望の生成物に基づいて選択されることを可能にし得る。
【0068】
本開示に従って使用される脱ろう触媒は、硫黄供給物の存在下で従来の脱ろう触媒と比べて活性利点を提供することができる。脱ろうとの関連で、硫黄供給物は、少なくとも100重量ppmの硫黄、または少なくとも1000重量ppmの硫黄、または少なくとも2000重量ppmの硫黄、または少なくとも4000重量ppmの硫黄、または少なくとも40,000重量ppmの硫黄を含有する供給物を表すことができる。供給物および水素ガス混合物は、1,000重量ppm以上の硫黄、または5,000重量ppm以上の硫黄、または15,000重量ppm以上の硫黄を含むことができる。その上別の実施形態において、硫黄は、ガスのみに、液体のみにまたは両方に存在してもよい。本開示については、これらの硫黄レベルは、水素処理供給原料基準で重量により百万当たりの部(ppm)で脱ろう段階に供給される液体およびガス形態のすべての合わせた硫黄と定義される。
【0069】
この利点は、その両方が微小孔表面積対全表面積の高い比を得るために選択される、低表面積の金属酸化物耐熱性バインダーと組み合わせた10員環細孔、1次元ゼオライトを含む触媒の使用によって達成することができる。あるいは、ゼオライトは、低いシリカ対アルミナ比を有する。別の代案として、触媒は、非結合の10員環細孔、1次元ゼオライトを含むことができる。脱ろう触媒は、VI族またはVIII族金属、好ましくはVIII族貴金属などの金属水素化機能をさらに含むことができる。好ましくは、脱ろう触媒は、ZSM-48またはZSM-23などの、1次元10員環細孔触媒である。
【0070】
外部表面積および微小孔表面積は、触媒の全表面積を特徴づける1つの方法を意味する。これらの表面積は、表面積測定のためのBET法を用いる窒素ポロシメトリーデータの解析に基づいて計算される。例えば、Johnson,M.F.L.,Jour.Catal.,52,425(1978)を参照されたい。微小孔表面積は、脱ろう触媒中のゼオライトの1次元細孔による表面積を意味する。触媒中のゼオライトのみが、表面積のこの部分に寄与するであろう。外部表面積は、触媒内のゼオライトかバインダーかのいずれかによることができる。
【0071】
本開示のプロセス配置構成は、先行技術グループII基礎原料油と比べて独特の組成特性を有する高粘度、高品質グループII基礎原料油を生み出す。組成利点は、組成物の飽和化合物およびナフテノ芳香族部分に由来し得る。その上、組成利点は、特に比較的より低い流動点で、適用できる対照と比べて予想を下回るNoack(ノアク)揮発性を高粘度材料に与える。
【0072】
本開示の基礎原料油は、2cSt以上、または4cSt以上、または6cSt以上、または8cSt以上、または10cSt以上、または12cSt以上、または14cSt以上の100℃での動粘度をもたらす。これは、本発明のグループII基礎原料油が、先行技術グループII基礎原料油で達成できたものよりも高い粘度を要求する新規潤滑油用途のホストに使用されることを可能にする。その上、11cSt超の100℃での動粘度で、分留中により狭いカットを取る必要なしに、従来の触媒処理によって得られるものよりも低いNoack揮発性を達成することができる。
【0073】
本開示の基礎原料油は、本明細書に開示される統合された水素化分解および脱ろうプロセスによって生み出される。本明細書に開示される統合された水素化分解および脱ろうプロセスについては、酸性部位が脱水素、分解、異性化、および脱アルキル化を触媒し、そして一方、金属部位が水素化、水素化分解、および異性化を促進する。酸機能が主役となるシステムは、過度の分解をもたらし、そして一方、高濃度の金属の触媒システムは、主として水素化につながる。酸性酸化物上に担持された貴金属は、選択的開環のための最も活性な触媒であるが、これらの触媒は、石油供給原料中の硫黄化合物による被毒に敏感である。これは、基礎原料油分子のより都合のよいバランスにつながる。特に、開環反応は潜在的に、いくつかの潤滑油品質尺度(例えば、VI)を改善するベース処理と比べて最高の選択性増加を有する。しかしながら、これはまた、開環で起こることが期待されない粘度保持利点をもたらす。本明細書に開示される統合された水素化分解および脱ろうプロセスによって生み出されたグループII基礎原料油について起こるこの粘度増加は、意外であり、予想外である。
【0074】
さらに、本基礎原料油は、粘度指数、Noack揮発性/CCS粘度(Cold Crank Simulator(コールドクランク・シミュレータ)粘度)によって測定されるようなブレンド性、Noack揮発性によって測定されるような揮発性、流動点によって測定されるような低温性能、RPVOTによって測定されるような酸化安定性、沈着形成および毒性を含むが、それらに限定されない、完成潤滑油特性の改善をもたらす。より特に、本発明のグループII基礎原料油を含む潤滑油組成物は、80~120、または90~120、または100~120、または90~110の粘度指数をもたらす。本発明のグループII基礎原料油を含む潤滑油組成物のRPVOT試験(25.4psi圧力降下までの分単位の時間についてのASTM 11)2272試験により測定されるような酸化安定性は、820~1000、または875~1000、または875~950分の範囲である。少なくとも10cStのKV100粘度についてのグループII基礎原料油のASTM B3952またはD5800、方法B試験により測定されるようなNoack揮発性は、4重量%未満、または3重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満、または0.5重量%未満である。本発明のグループII基礎原料油を含む潤滑油組成物のASTM B3983またはD5950-1試験により測定されるような流動点は、-10℃~-45℃の範囲、または-12℃未満、または-15℃未満、-20℃未満、または-30℃未満、または-40℃未満である。
【0075】
本明細書に開示される統合された水素化分解および脱ろうプロセスによって生み出される本開示の基礎原料油は、増加した粘度および他の有益な特性をもたらす、ナフテンおよびナフテノ芳香族種の分布によって測定されるような新規の組成構造を有する。
【0076】
本開示の4~6または5~6または5~7cSt(KV100)潤滑油基礎原料油の独特の組成特徴は、また、UV吸光係数によって定量化され得る。100℃で範囲4~6cSt、または好ましく5~6cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、約0.020 l/gm-cm未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm未満の280~320nmの間の吸光係数である。
【0077】
ある実施形態において、100℃で範囲4~6cSt、または100℃で5~6cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.16 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.014 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.006 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.007 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;および
約0.0018 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数
である。
【0078】
別の実施形態において、100℃で範囲4~6cSt、または100℃で5~6cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.16 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.008 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
約0.014 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.006 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.007 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
約0.0018 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
約0.0014 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
約0.00015 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
である。
【0079】
その上別の実施形態において、100℃で範囲4~6cSt、または100℃で5~6cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.15 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.007 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
約0.013 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.005 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.006 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
約0.0017 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
約0.0013 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
約0.00014 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
である。
【0080】
さらに別の実施形態において、100℃で範囲4~6cSt、または100℃で5~6cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.14 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.006 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
約0.012 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.004 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.005 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
約0.0016 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
約0.0012 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
約0.00013 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
である。
【0081】
本開示の6~14cSt(KV100)潤滑油基礎原料油の独特の組成特徴は、また、UV吸光係数によって定量化され得る。100℃で範囲6~14(好ましくは10~14)cSt、または100℃で10~13cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、約0.020 l/gm-cm未満、好ましくは約0.015 l/gm-cm未満の280~320間の吸光係数である。
【0082】
ある実施形態において、100℃で範囲6~12(好ましくは10~14)cSt、または100℃で10~13cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.12 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.012 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.014 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.018 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;および
約0.009 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数
である。
【0083】
別の実施形態において、100℃で範囲6~12(好ましくは10~14)cSt、または100℃で10~13cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.12 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.009 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
約0.012 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.014 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.018 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
約0.009 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
約0.007 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
約0.0008 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
である。
【0084】
その上別の実施形態において、100℃で範囲6~12(好ましくは10~14)cSt、または100℃で10~13cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.11 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.008 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
約0.011 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.013 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.017 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
約0.008 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
約0.006 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
約0.0007 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
である。
【0085】
さらに別の実施形態において、100℃で範囲6~14(好ましくは10~14)cSt、または100℃で10~13cStの動粘度を持った基礎原料油について、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布は、
約0.10 l/g-cm未満の226nmでの吸光係数;
約0.007 l/g-cm未満の254nmでの吸光係数;
約0.010 l/g-cm未満の275nmでの吸光係数;
約0.012 l/g-cm未満の302nmでの吸光係数;
約0.016 l/g-cm未満の310nmでの吸光係数;
約0.007 l/g-cm未満の325nmでの吸光係数;
約0.005 l/g-cm未満の339nmでの吸光係数;および
約0.0006 l/g-cm未満の400nmでの吸光係数
である。
【0086】
本明細書に開示される統合された水素化分解および脱ろうプロセスによって生み出される本開示の基礎原料油はまた、水素化仕上げの前に少ない芳香族化合物を有する。その開示が参照により本明細書に援用される)、米国特許第8,114,678号明細書に記載されるようなSTAR 7試験方法により測定されるように、飽和化合物は、90重量%以上、または95重量%以上、または97重量%以上であり、そして一方、芳香族化合物は、10重量%以下、または5重量%以下、3重量%以下である。
【0087】
広範囲の石油および化学物質供給原料を、本開示に従って水素処理することができる。好適な供給原料には、全体および常圧蒸留原油、大気圧および減圧残油、プロパン脱アスファルト化残油、例えば、ブライトストック、サイクルオイル(ライトサイクル)、FCCタワーボトム、大気圧および減圧ガスオイルならびにコーカーガスオイルなどの、ガスオイル、生バージン留出物などの軽質から重質留出物、水素化分解物、水素化処理油、脱ろう油、スラックワックス、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックス、ラフィネート、ならびにこれらの物質の混合物が含まれる。典型的な供給物には、例えば、約593℃(約1100°F)以下、通常約350℃~約500℃(約660°F~約935°F)の範囲で沸騰する減圧ガスオイルが含まれ、この場合には、生み出されるディーゼル燃料の割合は、相応してより大きい。いくつかの実施形態において、供給物の硫黄含有量は、少なくとも100重量ppmの硫黄、または少なくとも1000重量ppmの硫黄、または少なくとも2000重量ppmの硫黄、または少なくとも4000重量ppmの硫黄、または少なくとも40,000重量ppmの硫黄であり得る。
【0088】
本開示の方法に有用な、特に好ましい供給原料成分には、約20~約45、好ましくは約25~約40、より好ましくは約30~約35の溶媒脱ろう油供給物粘度指数を有する減圧ガスオイル供給原料(例えば、中減圧ガスオイル供給物(MVGO))が含まれる。
【0089】
サワー処理環境に耐性がある段階については、処理段階での硫黄の部分は、水素処理ガス流れ中の含有硫黄であり得ることが指摘される。これは、例えば、不純物としてHSを含有する水素処理反応からの流出物水素流れが、HSのいくらかまたはすべての除去なしにサワー環境プロセスへの水素インプットとして使用されることを可能にすることができる。不純物としてHSを含有する水素流れは、本開示による方法の段階の1つからの部分的にきれいにされたリサイクル水素流れであり得るし、または水素流れは、別の精製プロセスからのものであり得る。
【0090】
本明細書で用いるところでは、段階は、単一反応器または複数の反応器に相当し得る。任意選択的に、多数の平行反応器を、本プロセスの1つ以上を行うために使用することができるし、または多数の平行反応器を、段階でのすべてのプロセスのために使用することができる。各段階および/または反応器は、水素処理触媒を含有する1つ以上の触媒床を含むことができる。触媒の「床」は部分的な物理的触媒床を意味できることが指摘される。例えば、反応器内の触媒床は、水素化分解触媒で部分的に、そして脱ろう触媒で部分的に充填されることができよう。説明において便宜上、2種の触媒が単一触媒床に一緒に積み重ねられてもよいけれども、水素化分解触媒および脱ろう触媒はそれぞれ、概念的に別個の触媒床と言うことができる。
【0091】
様々なプロセスフロースキームが、本開示の様々な実施形態に従って利用可能である。一例では、供給物は最初に、供給物を水素化処理触媒の1つ以上の床に曝すことによって水素化処理することができる。全体水素化処理供給物は、分離なしに、次に水素化分解触媒の1つ以上の床の存在下で水素化分解することができる。全体水素化処理、水素化分解供給物は、分離なしに、次に脱ろう触媒の1つ以上の床の存在下で脱ろうすることができる。任意選択の第2水素化処理触媒床をまた、水素化分解プロセスか脱ろうプロセスかのいずれかの後に含めることができる。中間分離なしに水素化処理プロセス、水素化分解プロセス、および脱ろうプロセスを行うことによって、これらのプロセスを行うために必要とされる装置は、単一段階に含めることができる。
【0092】
別の例では、供給物は最初に、供給物を水素化処理触媒の1つ以上の床に曝すことによって水素化処理することができる。全体水素化処理供給物は、分離なしに、次に脱ろう触媒の1つ以上の床の存在下で脱ろうすることができる。全体水素化処理、脱ろう供給物は、分離なしに、次に任意選択的に水素化分解触媒の1つ以上の床の存在下で水素化分解することができる。任意選択の第2水素化処理触媒床をまた含めることができる。中間分離なしに水素化処理プロセス、脱ろうプロセス、および水素化分解プロセスを行うことによって、これらのプロセスを行うために必要とされる装置は、単一段階に含めることができる。
【0093】
サワー環境での水素化処理、脱ろう、および/または水素化分解後に、水素処理供給物は、様々な生成物へと分留することができる。分留の1つの選択肢は、水素処理供給物を、700°F(371℃)などの、所望の変換温度よりも上および下で沸騰する部分へと分離することであり得る。この選択肢では、371℃よりも下で沸騰する部分は、ナフサ沸騰範囲生成物、ディーゼル沸騰範囲生成物、ナフサ沸騰範囲生成物よりも軽い炭化水素、ならびにHSおよびNHなどの水素処理中に生成した汚染物質ガスに相当する。任意選択的に、これらの様々な生成物流れの1つ以上は、分留によって異なる生成物として分離することができるし、または371℃よりも下で沸騰する部分からのこれらの生成物の分離は、後の分留工程で起こり得る。任意選択的に、371℃よりも下で沸騰する部分は、灯油生成物をまた含めるために分留することができる。
【0094】
371℃よりも上で沸騰する部分は、ボトムフラクションに相当する。このボトムフラクションは、1種以上のタイプの水素処理触媒を含む第2水素処理段階へ通すことができる。第2段階は、水素化分解触媒の1つ以上の床、脱ろう触媒の1つ以上の床、および任意選択的に水素化仕上げまたは芳香族飽和触媒の1つ以上の床を含むことができる。第2段階での水素処理のための反応条件は、第1段階で用いられる条件と同じまたは異なるものであることができる。第1段階での水素化処理プロセスおよび分留のために、ボトムフラクションの硫黄含有量は、合わせたガスおよび液体硫黄基準で、1000wppm以下、または約500wppm以下、または約100wpm以下、または約50wpm以下、または約10wppm以下であり得る。
【0095】
さらに別の選択肢は、別個の第3段階および/または反応器に水素化仕上げまたは芳香族飽和触媒の1つ以上の床を含むことであり得る。以下の考察において、水素化仕上げへの言及は、水素化仕上げか芳香族飽和かのいずれかを、または別個の水素化仕上げおよび芳香族飽和プロセスを有することを意味すると理解される。水素化仕上げプロセスが供給物中の芳香族化合物の量を減らすために望ましい状況では、先行水素処理段階での温度よりも低い温度で水素化仕上げプロセスを操作することが望ましくあり得る。例えば、300℃よりも上の温度で脱ろうプロセスを操作し、そして一方、280℃よりも下の温度で水素化仕上げプロセスを操作することが望ましいかもしれない。脱ろうおよび/または水素化分解プロセスと、その後の水素化仕上げプロセスとの間に温度差を有することを容易にする1つの方法は、触媒床を別個の反応器に収納することである。水素化仕上げまたは芳香族飽和プロセスは、水素処理供給物の分留前か分留後かのいずれかに含めることができる。
【0096】
図1は、本開示の様々な実施形態に用いるのに好適な2つの反応または水素化処理段階を利用する一般的な反応系の例を示す。図1で、第1反応または水素化処理段階(R1)および第2反応または水素化処理段階(R2)を含む反応系が示される。第1反応段階(R1)および第2反応段階(R2)は両方とも単一反応器として図1では表されている。あるいは、任意の都合のよい数の反応器を、第1段階(R1)および/または第2段階(R2)のために用いることができる。第2反応または水素化処理段階(R2)からの流出物は、第1大気圧分留装置または分離段階に通される。第1分離段階は、少なくともディーゼル生成物留分、ジェット生成物留分、およびナフサ留分を生成することができる。任意選択的に、第1分離段階はまた、HSまたはNHなどの汚染物質ならびにC~C炭化水素などの低沸点種を両方とも含むことができる気相フラクションを生み出すことができる。さらに、第1分離段階は任意選択的に、灯油留分を生み出すことができる。
【0097】
第1分離段階からのボトムフラクションは、第2水素流れと一緒に、第1水素化分解段階へのインプットとして使用される。第1分離段階からのボトムフラクションは、この段階で水素化分解される。第1水素化分解段階からのボトムフラクションは、第2脱ろう段階へのインプットとして使用される。第1水素化分解段階からのボトムフラクションは、この段階で水素化分解される。脱ろう段階からのボトムは、水素化仕上げ段階へのインプットとして使用される。脱ろう段階からのボトムフラクションはさらに、この段階で水素化分解される。水素化処理段階からの流出物の少なくとも一部は、第2ナフサ生成物および第2ジェット/ディーゼル生成物などの、1種以上の生成物の産出のための第2大気圧分留装置または分離段階に送ることができる。第2分離段階からのボトムフラクションは、第3ディーゼル生成物、軽質潤滑油、および重質潤滑油などの、1種以上の生成物の産出のための減圧分留装置または分離段階へのインプットとして使用される。
【0098】
水素化処理、分留、水素化分解および脱ろうに関するプロセス条件(例えば、温度、圧力、接触時間など)は、変わり得るし、そのような条件の任意の好適な組み合わせを、本開示の処理スキームについて本明細書に記載されるように用いることができる。任意の好適な触媒を、本開示の処理スキームについて本明細書に記載されるように水素化処理、分留、水素化分解および脱ろうのために用いることができる。
【0099】
図2は、本開示の様々な実施形態での使用に好適な2つの反応段階を利用する一般的な反応系の別の例を示す。図2で、第1反応段階110、分離段階120、および第2反応段階130を含む反応系が示される。第1反応段階110および第2反応段階130は両方とも、単一反応器として図2では表されている。あるいは、任意の都合のよい数の反応器を、第1段階110および/または第2段階130のために用いることができる。分離段階120は、第1段階によって生成した流出物からディーゼル燃料生成物を分離することができる段階である。
【0100】
好適な供給原料115が、水素含有流れ117と一緒に第1反応段階110へ導入される。供給原料は、有効な条件下に1つ以上の触媒床の存在下で水素処理される。第1反応段階110からの流出物119は、分離段階120へ通される。分離段階120は、少なくともディーゼル生成物留分124、ボトムフラクション126、および気相フラクション128を生み出すことができる。気相フラクションは、HSまたはNHなどの汚染物質ならびにC~C炭化水素などの低沸点種を両方とも含むことができる。任意選択的に、分離段階120はまた、ナフサ留分122および/または灯油留分(示されていない)を生み出すことができる。分離段階からのボトムフラクション126は、第2水素流れ137と一緒に、第2水素処理段階130へのインプットとして使用される。ボトムフラクションは、第2段階130で水素処理される。第2段階130からの流出物の少なくとも一部は、第2ナフサ生成物142、第2ディーゼル生成物144、または潤滑油基油生成物146などの、1種以上の生成物の産出のための分留装置140に送ることができる。分留装置140からのボトムの別の部分は任意選択的に、第2段階130にリサイクルして戻す147ことができる。
【0101】
図5は、本開示の代わりの実施形態での使用に好適な3つの反応段階を利用する一般的な反応系の例を示す。図5で、第1反応段階210、第1分留段階220、第2反応段階230、第2分留段階240、および第3反応段階250を含む反応系が示される。第1反応段階210、第2反応段階230および第3反応段階250は、単一反応器として図5では表されている。あるいは、任意の都合のよい数の反応器を、第1段階210、第2段階230および/または第3段階250のために用いることができる。好適な供給原料215が、水素含有流れ217と一緒に第1反応段階210へ導入される。供給原料は、有効な条件下に1つ以上の触媒床の存在下で水素処理される。1つの形態において、第1反応段階210は、有効な水素化処理条件で動作する従来型の水素化処理反応器であってもよい。第1反応段階流出物219は、第1分留装置220に供給される。第1分留装置220は、第1燃料/ディーゼル範囲物質228および第1潤滑油範囲物質226を取り出すことができる段階である。分留装置からの第1潤滑油範囲物質226は、第2水素流れ237と一緒に第2反応段階/水素処理段階230へのインプットとして使用される。第1潤滑油範囲物質226は、第2反応段階で水素処理される。
【0102】
1つの形態において、第2反応段階230は、脱ろう触媒を装填された、そして有効な脱ろう条件下に操作される水素化脱ろう反応器であってもよい。第2反応段階230からの第2流出物239は、第2分留装置240へ通される。第2分留装置240は、第2燃料/ディーゼル範囲物質238および第2潤滑油範囲物質236を生み出すことができる。第2分留装置からの第2潤滑油範囲物質236は、第3水素流れ247と一緒に、第3反応段階/水素処理段階250へのインプットとして使用され得る。第2潤滑油範囲物質236は、第3反応段階250で水素処理される。
【0103】
1つの形態において、第3反応段階230は、水素化分解触媒を装填された水素化分解反応器であってもよい。第3反応段階250からの流出物259の少なくとも一部は次に、ナフサ生成物242、燃料/ディーゼル生成物244、または潤滑油基油生成物246などの、1種以上の生成物の産出のための分留装置(示されていない)に送ることができる。第3反応段階250からのボトム261の別の部分は任意選択的に、リサイクル流れ263によって第2反応段階230か、リサイクル流れ265によって第2分留段階240かのいずれか、またはそれらの組み合わせにリサイクルして戻すことができる。リサイクル流れ263は、第3反応段階250からの生成物がディーゼル生成物244または潤滑油基油生成物246の低温流れ特性規格を満たさず、規格を満たすためにさらなる脱ろうが必要である場合に利用される。リサイクル流れ265は、第3反応段階250からの生成物が、ディーゼル生成物244または潤滑油基油生成物246の低温流れ特性規格を満たすためにさらなる脱ろうを必要としない場合に利用される。
【0104】
別の形態において、図5のプロセス配置構成は、第3反応段階後および分留装置前に水素化仕上げ反応器をさらに含んでもよい。水素化仕上げ反応器は、水素化仕上げ触媒を装填し、有効な反応条件で動作し得る。
【0105】
図5のプロセス配置構成は、3段階水素化分解装置での燃料/ディーゼル収率を最大限にする。この配置構成は、秀でた低温流れ特性を有するディーゼル生成物を生み出す。最新技術とは対照的に、水素化分解装置から来るディーゼル生成物は、理想的な低温流れ特性を持ったディーゼルを生み出さない可能性があり、製品品質を改善するためにその後脱ろうされなければならないであろう。図5のプロセス配置構成で、ディーゼル生成物はすべて、低温流れ特性要件を満たすためにシステムを出る前に十分に脱ろうされるであろう。
【0106】
図6は、本開示の代わりの実施形態での使用に好適な4つの反応段階を利用する一般的な反応系の例を示す。図6で、第1反応段階310、第1分留段階320、第2反応段階330、第2分留段階340、第3反応段階350、および任意選択の第4反応段階360を含む反応系が示される。第1反応段階310、第2反応段階330、第3反応段階350および第4反応段階360は、単一反応器として図6では表されている。あるいは、任意の都合のよい数の反応器を、第1段階310、第2段階330、第3段階350および/または第4段階360のために用いることができる。好適な供給原料315が、水素含有流れ317と一緒に第1反応段階310へ導入される。水素含有流れはまた、それぞれ、流れ337、347および357として第2反応段階330、第3反応段階350および第4反応段階360へ導入されてもよい。
【0107】
第1反応段階310は、有効な水素化処理条件下で動作する水素化処理反応器であるが、水素異性化触媒および/または水素化分解触媒での積み重ね床をまた任意選択的に含んでもよい。第1反応段階流出物319は、第1分留装置320に供給される。第1分留装置320は、第1燃料/ディーゼル範囲物質328および第1潤滑油範囲物質326を取り出すことができる段階である。第2反応段階330で、第1潤滑油範囲物質326は、有効な水素化分解条件下でのナフテンの分解によってVIを上げるために水素化分解される。この第2反応段階330は、第1分留装置320からのボトム326のための最初の水素化分解装置として役立つ。任意選択的に、第2反応段階330内に、水素化分解触媒の上または下に脱ろう触媒を利用する積み重ね配置構成がまたあってもよい。
【0108】
最大潤滑油生成のために、水素化分解触媒が、第2反応段階330での脱ろう触媒の前に置かれるであろう。第2反応段階流出物339は、第2分留装置340に供給される。第2分留装置340は、第2反応段階330を出る第2潤滑油範囲物質336から第2燃料/ディーゼル範囲物質338を分離する。第2燃料/ディーゼル範囲物質338は次に、第4反応段階360に任意選択的に通されてもよい、合わせた燃料/ディーゼル範囲物質351を形成するために第1燃料/ディーゼル範囲物質328と組み合わせられ、第4反応段階は典型的には、有効な水素化仕上げ条件で動作する水素化仕上げ反応器または有効な脱ろう条件で動作する水素化脱ろう反応器である。
【0109】
第4反応段階360は、第1潤滑油範囲物質326および第2燃料/ディーゼル範囲物質338または合わせた燃料/ディーゼル範囲物質351の少なくとも1つの低温流れ特性を改善するための異性化反応器として役立つ。あるいは、第2燃料/ディーゼル範囲物質338か、合わせた燃料/ディーゼル範囲物質351かのいずれかは、低温流れ改善がまったく必要とされない場合、第4反応段階360をバイパスしてもよい。第3反応段階350で、反応器は、第2潤滑油範囲物質336の性能を改善するために用いられる。第3反応段階350は、脱ろう触媒、芳香族飽和触媒または両方を含んでもよく、低温流れ特性を改善するために動作する。第3反応段階流出物343は、第3潤滑油範囲物質343をもたらす。
【0110】
図6で、流路342は、第2分留装置340からの第2潤滑油範囲物質336が、第3反応段階350をバイパスすることによって芳香族飽和および/または脱ろうによる改善された潤滑油性能を必要としない場合に選ばれるであろう。この配置構成は、第3反応段階350を排除する。流路341は、第2分留装置340からの第2潤滑油範囲物質336が、第3反応段階350を通過することによって芳香族飽和および/または脱ろうによる改善された潤滑油性能を必要とする場合に選ばれるであろう。流路352は、第1および第2分留装置からの合わせた燃料/ディーゼル範囲物質351が、第4反応段階360を通っての脱ろうによる改善された低温流れ特性を必要とする場合に選ばれるであろう。最後に、流路353は、第1および第2分留装置からの合わせた燃料/ディーゼル範囲物質351が、第4反応段階360を通っての脱ろうによる改善された低温流れ特性を必要としない場合に選ばれるであろう。この配置構成は、第4反応段階360を排除する。
【0111】
図7は、本開示の代わりの実施形態に用いるのに好適な3つの反応段階を利用する一般的な反応系の例を示す。図7で、第1反応段階410、第1分留段階420、第2反応段階430、第3反応段階440、および第2分留段階450を含む反応系が示される。第1反応段階410、第2反応段階430および第3反応段階440は、単一反応器として図7では表されている。あるいは、任意の都合のよい数の反応器を、第1段階410、第2段階430および/または第3段階440のために用いることができる。好適な供給原料415が、水素含有流れ417と一緒に第1反応段階410へ導入される。供給原料は、有効な条件下に1つ以上の触媒床の存在下で水素処理され、1つの形態において、第1反応段階410は、有効な水素化処理条件で動作する従来型の水素化処理反応器であってもよい。第1反応段階流出物419は、第1分留装置420に供給される。第1分留装置420は、第1燃料/ディーゼル範囲物質428および第1潤滑油範囲物質426を取り出すことができる段階である。分留装置からの第1潤滑油範囲物質426は、第2水素流れ427と一緒に第2反応段階/水素処理段階430へのインプットとして使用される。第1潤滑油範囲物質426は、第2反応段階430で水素処理される。
【0112】
1つの形態において、第2反応段階430は、水素化分解触媒を装填された水素化分解反応器であってもよい。第2反応段階430からの第2流出物436は、第3反応段階440へ通される。1つの形態において、第3反応段階440は、脱ろう触媒を装填され、そして有効な水素化脱ろう条件下に動作する、インプット水素含有流れ437での水素化脱ろう反応器であってもよい。第3反応段階からの流出物445は次に、第2分留装置450にインプットされてもよい。第2分留装置450は、第2燃料/ディーゼル範囲物質444および第2潤滑油範囲物質446を生み出すことができる。第2分留装置450は、ナフサおよびLPG生成物442、燃料/ディーゼル生成物444、または潤滑油基油生成物446などの、1種以上の生成物を生み出し得る。任意選択的に、第1分留装置420からの第1燃料/ディーゼル範囲物質428の少なくとも一部は、燃料/ディーゼル生成物の低温流れ特性の改善が望まれる場合には、フローライン438によって第3反応段階440にリサイクルされてもよい。あるいは、第1分留装置420からの第1燃料/ディーゼル範囲物質428の一部またはすべてが、第3反応段階にリサイクルされてもよい(フローライン439を参照されたい)。第1および第2燃料/ディーゼル範囲物質439および444は次に、合わせた燃料/ディーゼル生成物448を形成するために組み合わせられてもよい。図7の反応系は、限定された量のナフサおよびLPGを生み出しながら、良好な低温特性を持ったディーゼルおよび潤滑油を併産するのに特に好適である。
【0113】
図3は、サワー条件下での第1段階に用いることができる4つの触媒配置構成(A~D)の例を示す。配置構成Aは、水素化処理触媒を含む第1反応段階を示す。配置構成Bは、水素化処理触媒および脱ろう触媒の床を含む第1反応段階を示す。配置構成Cは、水素化処理触媒、水素化分解触媒、および脱ろう触媒の床を含む第1反応段階を示す。配置構成Dは、水素化処理触媒、脱ろう触媒、および水素化分解の床を含む第1反応段階を示す。ここで、触媒の「床」への言及は、触媒が段階内の物理的床の部分として提供される実施形態を含み得ることに留意されたい。
【0114】
配置構成A、B、C、またはDからの配置構成の選択は、生成物の所望のタイプに基づくことができる。例えば、配置構成Bは、水素化処理触媒および脱ろう触媒を含む。配置構成Bに基づくサワー反応段階は、配置構成Aと比べて改善された低温流れ特性を持った流出物を生み出すために有用であり得る。配置構成Bでの処理から生み出されたディーゼル燃料は、改善された曇り点を有することができる。ディーゼル燃料の収率はまた、ボトムの量を減らしながら改善されるであろう。配置構成Bからのボトムはまた、改善された流動点を有することができる。ディーゼル燃料生成物などの生成物、ならびにHSおよびNHなどの汚染物質ガスを分離するための分留後に、ボトムは、第2段階でさらに処理することができる。
【0115】
配置構成Cはまた、改善された曇り点と一緒に、配置構成Aと比べてより高いディーゼル生成物の収率を提供することができる。その上、水素化分解触媒の存在に基づき、配置構成Cは、ボトム部分から潤滑油生成物を生み出すのに便益を有する。配置構成Aと比べて、ボトムの流動点は、より高いかまたはより低いものであり得る。脱ろうプロセスは、ボトムフラクションの流動点を低くする傾向があろうし、そして一方、水素化分解プロセスは、流動点を上げる傾向があり得る。配置構成Dは、ボトムの量の相当する減少とともに、配置構成Cと比べてより大きいディーゼルの収率を提供することができる。配置構成Dにおいて、脱ろう触媒は、供給物におけるパラフィン分子中の分岐を増やすことができ、それは、水素化分解触媒がパラフィン分子をより低い沸点種に変換する能力を高めることができる。
【0116】
代案として、配置構成CおよびDは、水素化処理触媒、引き続き水素化分解触媒を含有する従来型の反応器に匹敵し得る。配置構成CおよびDは両方とも、脱ろう触媒の存在のために、従来水素化処理/水素化分解配置構成と比べて改善された曇り点を持ったディーゼル生成物を提供することができる。配置構成CおよびDにおけるボトムについての流動点は、従来型の水素化処理/水素化分解プロセスについてのボトムよりも低いものであり得る。
【0117】
配置構成B、C、またはDの1つに相当する配置構成を有する段階での処理からのボトムは次に、第2段階で処理することができる。分留のために、第2段階は、合わせた気相および液相硫黄基準で約1000wppm未満の硫黄含有量で、クリーンサービス段階であり得る。図4は、第2段階で用いることができる触媒配置構成(E、F、G、およびH)を示す。配置構成Eは、脱ろう触媒および水素化分解触媒の床を含む第2反応段階を示す。配置構成Fは、水素化分解触媒および脱ろう触媒の床を含む第2反応段階を示す。配置構成Gは、脱ろう触媒、水素化分解触媒、および追加の脱ろう触媒の床を含む第2反応段階を示す。配置構成Gにおいて、第2セットの脱ろう触媒の床は、第1グループの床と同じタイプの脱ろう触媒または異なるタイプの触媒を含み得ることに留意されたい。
【0118】
任意選択的に、水素化仕上げ触媒の最終床を、配置構成E、F、またはGのいずれにも追加することができよう。配置構成Hは、水素化分解触媒、脱ろう触媒、および水素化仕上げ触媒の床を持った、このタイプの配置構成を示す。上に指摘されたように、各段階は、1つ以上の反応器を含むことができ、だから、1つの選択肢は、配置構成E、F、またはGについて示される触媒から離して別個の反応器に水素化仕上げ触媒を収納することであり得る。この別個の反応器は、配置構成Hに概略的に表される。水素化仕上げ床は、第2(または非サワー)反応段階からの流出物の分留前か分留後かのいずれかに含め得ることに留意されたい。結果として、水素化仕上げは、必要ならば、第2段階からの流出物の一部に関して行うことができる。
【0119】
配置構成E、F、およびGは、第1サワー段階のボトムから燃料生成物および潤滑油基油生成物を両方とも製造するために用いることができる。ディーゼル燃料生成物の収率は、配置構成Eと比べて配置構成Fについてより高く、配置構成Gについてさらにより高いものであり得る。もちろん、配置構成の相対的なディーゼル収率は、さらなる変換のためにボトムの一部をリサイクルすることによってなど、修正することができる。
【0120】
配置構成B、C、またはDのいずれかは、図2に示される2段階システムなどの、2段階反応系での配置構成E、F、またはGのいずれかとマッチさせることができる。上記組み合わせのいずれかの第2段階からのボトム部分は、グループII、グループII+、またはグループIII基礎原料油などの、潤滑油基礎原料油としての使用にとっての適切な流動点を有することができる。しかしながら、芳香族化合物含有量は、供給物の種類および選択された反応条件次第では高すぎ得る。それ故、水素化仕上げ段階を任意選択的に、組み合わせのいずれかと一緒に用いることができる。
【0121】
配置構成B、C、またはDと、配置構成F、F、またはGからの配置構成とのいくつかの組み合わせが、第2段階の最初の床に似たタイプの触媒のものである第1段階の最終床をもたらすであろうことが指摘される。例えば、配置構成Cと配置構成Gとの組み合わせは、第1段階の最後の床および第2段階の最初の床の両方に脱ろう触媒を有するという結果になるであろう。この状況は、逐次段階が、低温流れ特性の所望レベルの改善を依然として達成しながら、それほど厳しくない反応条件が各段階で選択されることを可能にし得るので、依然として有益である。これは、第1段階に脱ろう触媒を有するという便益に加えて、第1段階の流出物から分離されたディーゼル生成物の低温流れ特性を改善することである。
【0122】
配置構成B、C、およびDは、配置構成Aと比べていくつかの利点を有するが、いくつかの実施形態において、配置構成Aもまた、第1段階のために用いることができる。特に、配置構成Aは、脱ろう触媒に水素化分解触媒が続く、配置構成EまたはGとともに用いることができる。
【0123】
配置構成E、F、G、または、任意選択的に、さらにより多くの触媒床を含むために拡張できることに留意されたい。例えば、1つ以上の追加の脱ろうおよび/または水素化分解触媒床を、配置構成に示されている最終脱ろう又は触媒床の後に含めることができる。追加の床は、任意の都合のよい順に含めることができる。例えば、配置構成Eについての1つの可能な拡張は、脱ろう触媒と水素化分解触媒との一連の交互床を有することであろう。一連の4つの床に関して、これは、一連の脱ろう-水素化分解-脱ろう-水素化分解をもたらすことができよう。配置構成Fの類似の拡張は、一連の水素化分解-脱ろう-水素化分解 脱ろうを行うために用いることができよう。水素化仕上げ触媒床を次に、最終の追加の水素化分解または脱ろう触媒床の後に追加することができよう。
【0124】
配置構成の組み合わせの一例は、配置構成Bと、配置構成E、F、G、もしくはHのいずれかとの組み合わせ、または特に配置構成FもしくはHとの組み合わせであり得る。これらのタイプの配置構成は潜在的に、ナフサの量を減らし、そして潤滑油基油の妥当な収率を維持しながら、供給原料からのディーゼル収率を増加させるために有利であり得る。配置構成Bは、水素化分解段階を含まず、だから水素化処理および脱ろうのみの後に供給物中に存在するあらゆるディーゼル沸騰範囲分子が、水素化分解前に取り出される。第2段階は次に、最初の供給物中に存在するいかなるディーゼル分子の過分解もなしにディーゼル沸騰範囲分子への所望レベルの変換を引き起こすために操作することができる。
【0125】
配置構成の組み合わせの別の例は、配置構成Dと、配置構成E、F、G、もしくはHのいずれかとの組み合わせ、または特に配置構成EもしくはUとの組み合わせであり得る。これらのタイプの配置構成は潜在的に、供給原料からのディーゼル収率を最大限にするために有利であり得る。配置構成Dにおいて、最初の脱ろう触媒床は、供給原料中のより長鎖パラフィンを次の水素化分解触媒によりアクセスしやすいものにするために使用することができる。これは、温度または水素分圧の上昇を用いる代わりに水素化分解を容易にするために脱ろう触媒が使用されるので、より穏和な条件下により多い量の変換を可能にすることができる。変換プロセスは、第2段階で続行することができる。このタイプの配置構成は、ディーゼル産出をさらに増やすために第2段階にリサイクルループを含み得ることに留意されたい。これは、潤滑油生成物がまったく望まれない場合には消滅リサイクルを含むことができよう。
【0126】
配置構成の組み合わせのその上別の例は、配置構成Cと、配置構成E、F、G、もしくはHのいずれかとの組み合わせ、または特に配置構成FもしくはHとの組み合わせであり得る。これらのタイプの配置構成は潜在的に、減少した設置面積反応器での潤滑油基油産出を強調するために有利であり得る。最初の水素化分解段階後に配置構成Cにおいて脱ろう触媒を有することは、供給物中のパラフィン分子への影響が減って最初の水素化分解が起こることを可能にする。これは、第1反応段階から脱ろうしたディーゼル燃料生成物を生み出すという便益を依然として有しながら、潤滑油基油収率のより大きい量を保つことができる。
【0127】
潤滑油基礎原料油生成物が望まれる場合、潤滑油基礎原料油生成物は、複数の生成物を形成するためにさらに分留することができる。例えば、2cStカット、4cStカット、6cStカット、および/または6cStよりも高い粘度を有するカットに相当する潤滑油基礎原料油生成物を製造することができる。例えば、少なくとも2cStの粘度を有する潤滑油基油生成物フラクションは、変圧器油、低温油圧オイル、または自動車トランスミッション液などの低流動点用途での使用に好適なフラクションであり得る。少なくとも4cStの粘度を有する潤滑油基油生成物フラクションは、フラクションが、0W-または5W-または10W-グレードでSAE J300に従って製造されるエンジンオイルに好適であるような、制御された揮発性および低い流動点を有するフラクションであり得る。この分留は、第2段階からのディーゼル(または他の燃料)生成物が潤滑油基礎原料油生成物から分離される時点で行い得るか、または分留は後で起こり得る。いかなる水素化仕上げおよび/または芳香族飽和も、分留前か分留後かのいずれかで起こり得る。分留後に、潤滑油基油生成物フラクションは、エンジンオイルとしての使用または別の潤滑サービスでの使用のために適切な添加剤と組み合わせることができる。
【0128】
本開示で有用な例示的プロセスフロースキームは、それらの開示がそれらの全体を参照により本明細書に援用される、米国特許第8,992,764号明細書および米国特許出願公開第2013/0264246号明細書に開示されている。
【0129】
水素化処理は典型的には、供給物の硫黄、窒素、および芳香族含有量を減らすために用いられる。水素化処理条件は、200℃~450℃、または315℃~425℃の温度;250psig(1.8MPa)~5000psig(34.6MPa)または300psig(2.1MPa)~3000psig(20.8MPa)の圧力;0.2~10h-1の液空間速度(LHSV);および200scf/B(35.6m/m)~10,000scf/B(1781m/m)、または500scf/B(89m/m)~10,000scf/B(1781m/m)の水素処理率を含むことができる。
【0130】
水素化処理触媒は典型的には、VIB族金属(Fisher Scientificによって出版された周期表に基づいて)、ならびにVIII族非貴金属、すなわち、鉄、コバルトおよびニッケルならびにそれらの混合物を含有するものである。これらの金属または金属の混合物は典型的には、耐熱性金属酸化物担体上に酸化物または硫化物として存在する。好適な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナまたはチタニア、好ましくはアルミナなどの低酸性酸化物が含まれる。好ましいアルミナは、50~200Å、または75~150Åの平均細孔サイズ;100~300m/g、または150~250m/gの表面積;および0.25~1.0cm/g、または0.35~0.8cm/gの細孔容積を有するガンマまたはエータなどの多孔質アルミナである。担体は好ましくは、ハロゲンが一般に担体の酸性度を増加させるので、フッ素などのハロゲンで活性化されない。
【0131】
好ましい金属触媒には、アルミナ上のコバルト/モリブデン(酸化物として1~10%Co、酸化物として10~40%Mo)、ニッケル/モリブデン(酸化物として1~10%Ni、酸化物として10~40%Co)、またはニッケル/タングステン(酸化物として1~10%Ni、酸化物として10~40%W)が含まれる。好適なニッケル/モリブデン触媒の例としては、KF-840、KF-848、またはKF-848もしくはKF-840とNebula-20との積み重ね床が挙げられる。
【0132】
あるいは、水素化処理触媒は、バルク金属触媒、または担持された触媒の積み重ね床とバルク金属触媒との組み合わせであり得る。バルク金属とは、触媒が非担持であることを意味し、ここで、バルク触媒粒子は、金属酸化物として計算される、バルク触媒粒子の総重量を基準として、30~100重量%の少なくとも1種のVIII族非貴金属および少なくとも1種のVIB族金属を含み、そしてここで、バルク触媒粒子は、少なくとも10m/gの表面積を有する。本明細書で使用されるバルク金属水素化処理触媒は、金属酸化物として計算される、粒子の総重量を基準として、約50~約100重量%、さらに一層好ましくは約70~約100重量%の、少なくとも1種のVIII族非貴金属および少なくとも1種のVIB族金属を含むことがさらに好ましい。VIB族およびVIII族非貴金属の量は、VIB TEM-EDXによって容易に測定することができる。
【0133】
1種のVIII非貴金属および2種のVIB族金属を含むバルク触媒組成物が好ましい。この場合、バルク触媒粒子は難焼結性であることが分かった。したがって、バルク触媒粒子の活性表面積は、使用の間ずっと維持される。VIB族対VIII族非貴金属のモル比は一般に、10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3の範囲である。コア-シェル構造化粒子の場合、これらの比は、もちろん、シェル中に含有される金属に適用される。2種以上のVIB族金属がバルク触媒粒子中に含有される場合、異なるVIB族金属の比は一般に、決定的に重要であるわけではない。2種以上のVIII族非貴金属(Group VIII Don-noble metal)が適用される場合に同じことが言える。モリブデンおよびタングステンがVIB金属として存在する場合には、モリブデン:タングステン比は好ましくは、9:1~1:9の範囲にある。好ましくは、VIII族非貴金属は、ニッケルおよび/またはコバルトを含む。VIB族金属がモリブデンとタングステンとの組み合わせを含むことがさらに好ましい。好ましくは、ニッケル/モリブデン/タングステンおよびコバルト/モリブデン/タングステンおよびニッケル/コバルト/モリブデン/タングステンの組み合わせが使用される。これらのタイプの沈殿物は難焼結性であるように思われる。したがって、沈殿物の活性表面積は、使用の間ずっと維持される。金属は好ましくは、相当する金属の酸化物化合物として、または触媒組成物が硫化されている場合には、相当する金属の硫化物化合物として存在する。
【0134】
本明細書で使用されるバルク金属水素化処理触媒は、少なくとも50m/gの、より好ましくは少なくとも100m/gの表面積を有することがまた好ましい。バルク金属水素化処理触媒の細孔サイズ分布は、従来型の水素化処理触媒の1つとおおよそ同じものであることがまた望ましい。バルク金属水素化処理触媒は、窒素吸着によって測定される0.05~5ml/gの、または0.1~4ml/gの、または0.1~3ml/gの、または0.1~2tagの細孔容積を有する。好ましくは、1nmよりも小さい細孔は存在しない。バルク金属水素化処理触媒は、少なくとも50nm、または少なくとも100nmの中央径を有することができる。バルク金属水素化処理触媒は、5000μm以下、または3000μm以下の中央径を有することができる。ある実施形態において、中央粒子径は、0.1~50μmの範囲に、最も好ましくは0.5~50μmの範囲にある。
【0135】
任意選択的に、水素化処理触媒の1つ以上の床を、第1段階で水素化分解触媒床および/または脱ろう触媒床の下流に置くことができる。水素化処理触媒のこれらの任意選択の床については、水素化処理条件は、上記の条件に似ているように選択することができるか、または条件は、独立して選択することができる。
【0136】
水素化分解触媒は典型的には、非晶質シリカアルミナ、ゼオライトX、ゼオライトY、ZSM-5、モルデナイト、BEA、ZSM-20、ZSM-4、ZSM-50、もしくはZSM-12などの、しかしそれらに限定されないクラッキングゼオライト、または酸性化アルミナなどの、酸性担体上の硫化卑金属またはPtおよび/もしくはPdのようなVIII族貴金属を含有する。多くの場合、これらの酸性担体は、アルミナ、チタニアまたはシリカなどの他の金属酸化物と混合されるまたは結合させられる。
【0137】
第1段階での(またはさもなければサワー条件下での)水素化分解プロセスは、200℃~450℃の温度、250psig~5000psig(1.8MPa~34.6MPa)の水素分圧、0.2h-1~10h-1の液空間速度、および35.6m/m~1781m/m(200SCF/B~10,000SCF/B)の水素処理ガス率で実施することができる。典型的には、ほとんどの場合に、条件は、300℃~450℃の範囲の温度、500psig~2000psig(3.5MPa~13.9MPa)の水素分圧、0.3h-1~2h-1の液空間速度および213m/m~1068m/m(1200SCF/B~6000SCF/B)の水素処理ガス率を有するであろう。
【0138】
第2段階での(またはさもなければ非サワー条件下での)水素化分解プロセスは、第1段階水素化分解プロセスについて用いられたものと類似の条件下に行うことができるか、または条件は異なることができる。ある実施形態において、第2段階での条件は、第1(サワー)段階での水素化分解プロセスほど厳しくない条件を有することができる。水素化分解プロセスでの温度は、第1段階での水素化分解プロセスについての温度よりも20℃低い、または30℃低い、または40℃低いものであり得る。第2段階での水素化分解プロセスについての圧力は、第1段階での水素化分解プロセスよりも100psig(690kPa)低い、または200psig(1380kPa)低い、または300psig(2070kPa)低いものであり得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、水素化仕上げおよび/または芳香族飽和プロセスをまた提供することができる。水素化仕上げおよび/または芳香族飽和プロセスは、最後の水素化分解または脱ろう段階後に起こることができる。水素化仕上げおよび/または芳香族飽和は、分留前か分留後かのいずれかに起こることができる。水素化仕上げおよび/または芳香族飽和が分留後に起こる場合、水素化仕上げは、1つ以上の潤滑油基礎原料油部分に関して行われるなどの、分留生成物の1つ以上の部分に関して行うことができる。あるいは、最後の水素化分解または脱ろうプロセスからの全体流出物を水素化仕上げするおよび/または芳香族飽和を受けることができる。
【0140】
いくつかの状況では、水素化仕上げプロセスおよび芳香族飽和プロセスは、同じ触媒を使用して行われる単一プロセスを意味することができる。あるいは、1つのタイプの触媒または触媒系を、芳香族飽和を行うために提供することができ、そして一方、第2触媒または触媒系を、水素化仕上げのために使用することができる。典型的には、水素化仕上げおよび芳香族飽和プロセスは、水素化仕上げまたは芳香族飽和プロセスのためのより低い温度の使用を容易にするなどの、実用的な理由から、脱ろうまたは水素化分解プロセスとは別個の反応器で行われるであろう。しかしながら、水素化分解または脱ろうプロセス後の、しかし分留前の追加の水素化仕上げ反応器は依然として、概念的に反応系の第2段階の部分と考えることができよう。
【0141】
水素化仕上げおよび/または芳香族飽和触媒は、VI族金属、VIII族金属、およびそれらの混合物を含むことができる。ある実施形態において、好ましい金属は、強い水素化機能を有する少なくとも1種の金属硫化物を含む。別の実施形態において、水素化仕上げ触媒は、Pt、Pd、またはそれらの組み合わせなどの、VIII族貴金属を含むことができる。金属の混合物がまた、金属の量が触媒を基準として約30重量%以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。好適な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナまたはチタニア、好ましくはアルミナなどの低酸性酸化物が含まれる。芳香族飽和のための好ましい水素化仕上げ触媒は、多孔質担体上の比較的強い水素化機能を有する少なくとも1種の金属を含むであろう。典型的な担体材料には、アルミナ、シリカ、およびシリカ-アルミナなどの非晶質または結晶性酸化物材料が含まれる。担体材料はまた、ハロゲン化、または特にフッ素化によってなど、改質されてもよい。触媒の金属含有量は多くの場合、非貴金属については約20重量パーセントほどに高い。ある実施形態において、好ましい水素化仕上げ触媒は、M41Sクラスまたは系統の触媒に属する結晶性材料を含むことができる。M41S系統の触媒は、高いシリカ含有量を有するメソ多孔性材料である。例としては、MCM-41、MCM-48およびMCM-50が挙げられる。このクラスの好ましいメンバーはMCM-41である。別個の触媒が芳香族飽和および水素化仕上げのために使用される場合、芳香族飽和触媒は、芳香族飽和に対する活性および/または選択性に基づいて選択することができ、そして一方、水素化仕上げ触媒は、生成物の色および多核芳香族の還元などの、生成物仕様を改善するための活性に基づいて選択することができる。
【0142】
水素化仕上げ条件は、約125℃~約425℃、好ましくは約180℃~約280℃の温度、約500psig(3.4MPa)~約3000psig(20.7MPa)、好ましくは約1500psig(10.3MPa)~約2500psig(17.2MPa)の全圧、および約0.1hr-1~約5hr-1LHSV、好ましくは約0.5hr-1~約1.5hr-1の液空間速度を含むことができる。
【0143】
様々な実施形態において、接触脱ろうは、第1段階での(またはさもなければサワー環境での)水素処理の一環として含めることができる。分離は第1段階で起こらないので、この段階の開始時の供給物中のいかなる硫黄も、いくつかの形態での接触脱ろう工程に通される流出物中に依然として存在するであろう。例えば、水素化処理触媒、水素化分解触媒、および脱ろう触媒を含む第1段階を考えられたい。この段階への供給物中の有機硫黄の一部は、水素化処理および/または水素化分解中にHSに変換されるであろう。同様に、供給物中の有機窒素は、アンモニアに変換されるであろう。しかしながら、分離工程なしでは、水素化処理中に形成されたHSおよびNHは、流出物とともに接触脱ろう段階に行くであろう。分離工程の欠如はまた、水素化分解中に形成されたいかなる軽質ガス(C~C)も流出物中に依然として存在するであろうことを意味する。有機液体形態および気相(硫化水素)の両方での水素化処理プロセスからの全総硫黄は、1,000重量ppm超、または少なくとも2,000重量ppm、または少なくとも5,000重量ppm、または少なくとも10,000重量ppm、または少なくとも20,000重量ppm、または少なくとも40,000重量ppmであり得る。本開示のためには、これらの硫黄レベルは、水素化処理供給原料基準で重量による百万当たりの部(ppm)単位で脱ろう段階に供給される液体およびガス形態での全総硫黄の観点から定義される。
【0144】
第1反応段階での分離工程の排除は、一つには、脱ろう触媒が高レベルの窒素および硫黄の存在下で触媒活性を維持する能力によって可能にされる。従来型の触媒は多くの場合、硫黄含有量を2、3百ppm未満まで減らすために供給物流れの前処理を必要とする。対照的に、4.0重量%以上までの硫黄を含有する炭化水素供給物流れは、本発明の触媒を使用して効果的に処理することができる。ある実施形態において、水素含有ガスおよび水素化処理供給原料の液体およびガス形態での全総硫黄含有量は、少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.2重量%、または少なくとも0.4重量%、または少なくとも0.5重量%、または少なくとも1重量%、または少なくとも2重量%、または少なくとも4重量%であり得る。硫黄含有量は、標準ASTM方法D2622により測定され得る。
【0145】
水素処理ガス循環ループおよびメークアップガスを配置構成し、いくつもの方法で制御することができる。直接カスケードでは、処理ガスは、水素化処理反応器に入り、ワンススルーであり得るか、または装置の水素化分解および/または脱ろうセクションの後端での高圧フラッシュドラムから圧縮機によって循環させることができる。循環モードでは、メークアップガスは、高圧回路のどこででも装置へ、好ましくは水素化分解/脱ろう反応器ゾーンへ入れることができる。循環モードでは、処理ガスは、HSおよびNHを除去するために、アミン、または任意の他の好適な溶液で浄化されてもよい。別の形態では、処理ガスは、クリーニングまたはスクラビングなしにリサイクルすることができる。あるいは、液体流出物は、HS含有ガスを含むがそれに限定されない、任意の水素含有ガスと組み合わせられてもよい。
【0146】
好ましくは、本開示による脱ろう触媒は、主として炭化水素供給原料を異性化することによって脱ろうを行うゼオライトである。より好ましくは、触媒には、1次元細孔構造のゼオライトである。好適な触媒には、EU-1、ZSM-35(またはフェリエライト)、ZSM-11、ZSM-57、NU-87、SAPO-11、およびZSM-22などの、10員環細孔ゼオライトが含まれる。好適な触媒には、10員環細孔ゼオライトが含まれる。好ましい材料は、EU-2、EU-11、ZBM-30、ZSM-48、またはZSM-23である。約20:1~約40:1のシリカ対アルミナ比の、ZSM-23構造を有するゼオライトは時々SSZ-32と言われ得ることに留意されたい。上記の材料と同形である他のモレキュラーシーブには、Theta-1、NU-10、EU-13、KZ-1、およびNU-23が含まれる。
【0147】
様々な実施形態において、本開示による触媒は、金属水素化成分をさらに含む。金属水素化成分は典型的には、VI族および/またはVIII族金属である。好ましくは、金属水素化成分は、VIII族貴金属である。好ましくは、金属水素化成分は、Pt、Pd、またはそれらの混合物である。代わりの好ましい実施形態において、金属水素化成分は、VIII族非貴金属とVI族金属との組み合わせであり得る。好適な組み合わせは、Ni、Co、またはFeと、MoまたはWとを、好ましくはNiとMoまたはWとを含むことができる。
【0148】
金属水素化成分は、任意の都合のよい方法で触媒に添加され得る。金属水素化成分を添加する1つの技術は、初期湿潤による。例えば、ゼオライトとバインダーとを組み合わせた後に、合わせたゼオライトとバインダーとを触媒粒子へと押し出すことができる。これらの触媒粒子を次に、好適な金属前駆体を含有する溶液に曝すことができる。あるいは、金属は、イオン交換によって触媒に添加することができ、ここで、金属前駆体は押出前にゼオライト(またはゼオライトおよびバインダー)の混合物に添加される。
【0149】
触媒中の金属の量は、触媒を基準として少なくとも0.1重量%、または触媒を基準として、少なくとも0.15重量%、または少なくとも0.2重量%、または少なくとも0.25重量%、または少なくとも0.3重量%、または少なくとも0.5重量%であり得る。触媒中の金属の量は、触媒を基準として20重量%以下、または10重量%以下、または5重量%以下、または2.5重量%以下、または1重量%以下であり得る。金属がPt、Pd、別のVIII族貴金属、またはそれらの組み合わせである実施形態については、金属の量は、0.1~5重量%、好ましくは0.1~2重量%、または0.25~1.8重量%、または0.4~1.5重量%であり得る。金属がVII族非貴金属とVI族金属との組み合わせである実施形態については、金属の総量は、0.5重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または2.5重量%~10重量%であり得る。
【0150】
本開示による方法に有用な脱ろう触媒もまたバインダーを含むことができる。いくつかの実施形態において、本開示による方法に使用される脱ろう触媒は、低表面積バインダーを使用して配合され、低表面積バインダーは、100m/g以下、または80m/g以下、または70m/g以下の表面積のバインダーを表す。
【0151】
あるいは、バインダーおよびゼオライト粒径は、微小孔表面積対全表面積の所望の比を触媒に提供するために選択される。本開示に従って使用される脱ろう触媒において、微小孔表面積は、脱ろう触媒中のゼオライトの1次元細孔からの表面積に相当する。全表面は、微小孔表面積プラス外部表面積に相当する。触媒に使用されるいかなるバインダーも、微小孔表面積に寄与しないであろうし、触媒の全表面積を有意に増加させないであろう。外部表面積は、全触媒の表面積マイナス微小孔表面積の残余を表す。バインダーおよびゼオライトは両方とも、外部表面積の値に寄与することができる。好ましくは、脱ろう触媒についての微小孔表面積対全表面積の比は、25%以上であろう。
【0152】
ゼオライトは、任意の都合のよい方法でバインダーと組み合わせることができる。例えば、結合触媒は、両方とも粉末のゼオライトおよびバインダーから出発し、粉末を組み合わせ、水を添加してミルにかけて混合物を形成し、次に混合物を押し出して所望のサイズの結合触媒を生み出すことによって製造することができる。ゼオライトおよびバインダー混合物の押出流動特性を修正するために押出助剤をまた使用することができる。触媒中の骨組みアルミナの量は、0.1~3.33重量%、または0.1~2.7重量%、または0.2~2重量%、または0.3~1重量%の範囲であってもよい。
【0153】
その上別に実施形態において、2種以上の金属酸化物からなるバインダーをまた使用することができる。そのような実施形態において、低表面積バインダーの重量百分率は好ましくは、より高表面積バインダーの重量百分率よりも大きい。
【0154】
あるいは、混合金属酸化物バインダーを形成するために使用される金属酸化物は両方とも、十分に低い表面積を有し、バインダー中の各金属酸化物の割合は、それほど重要ではない。2種以上の金属酸化物がバインダーを形成するために使用される場合、2種の金属酸化物を、任意の都合のよい方法によって触媒中へ組み入れることができる。例えば、1種のバインダーを、噴霧乾燥中などの、ゼオライト粉末の形成中にゼオライトと混合することができる。噴霧乾燥したゼオライト/バインダー粉末を次に、押出前に第2金属酸化物バインダーと混合することができる。
【0155】
その上別の実施形態において、脱ろう触媒は、自己結合しており、バインダーを含有しない。
【0156】
サワー環境での接触脱ろうゾーンのプロセス条件は、200~450℃、好ましくは270~400℃の温度、1.8~34.6mPa(250~5000psi)、好ましくは4.8~20.8mPaの水素分圧、0.2~10v/v/hr、好ましくは0.5~3.0の液空間速度、および35.6~1781m/m(200~10,000scf/B)、好ましくは178~890.6m/m(1000~5000scf/B)の水素循環率を含むことができる。
【0157】
第2段階(または他の非サワー環境)での脱ろうについて、脱ろう触媒条件は、サワー環境についてのものと類似であり得る。ある実施形態において、第2段階での条件は、第1(サワー)段階での脱ろうプロセスほど厳しくない条件を有することができる。脱ろうプロセスでの温度は、第1段階での脱ろうプロセスについての温度よりも20℃低い、または30℃低い、または40℃低いものであり得る。脱ろう段階でより低い温度を達成する1つの方法は、液体急冷を用いることである。脱ろうされたおよび任意選択的に水素化仕上げされた生成物を、全反応器流出物としてか、より低い温度に冷却される特有の沸騰範囲へと分離されてかのいずれかで、リサイクルすることによって、脱ろうへの全供給物温度を低くすることができる。脱ろう供給物温度を下げる別の方法は、脱ろう段階への供給物を取り出し、そしてより冷たい流れまたは大気と熱交換することによって任意選択の水素化分解工程からの全反応器流出物に関して外部冷却を用いることである。脱ろう反応器温度を下げる別の方法は、水素などの、より冷たいガスを添加し、そして脱ろう触媒供給物と混合することによる。第2段階での脱ろうプロセスについての圧力は、第1段階での脱ろうプロセスよりも100psig(690kPa)低い、または200psig(1380kPa)低い、または300psig(2070kPa)低いものであり得る。
【0158】
本開示の1つの形態において、接触脱ろう触媒は、0.1重量%~3.33重量%の骨組みアルミナ、0.1重量%~5重量%のPt、100m/g以下の表面積の200:1~30:1SiO:Al比および少なくとも1つの低表面積の、耐熱性金属酸化物バインダー[FKS1]を含む。
【0159】
潤滑油添加剤
本開示で有用な調合潤滑油は、耐摩耗添加剤、洗剤、分散剤、粘度調整剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、抗けいれん剤、ワックス改質剤、他の粘度調整剤、流動性損失添加剤、密封適合性剤、潤滑剤、汚染防止剤、発色剤、消泡剤、乳化破壊剤、乳化剤、高密度化剤、湿潤剤、ケル化剤、粘着付与剤、着色剤などを含むが、それらに限定されない他の一般に使用される潤滑油性能添加剤の1種以上を含有してもよい。多くの一般に使用される添加剤のレビューについては、「Lubricant Additives,Chemistry and Applications」,L.R.Rudnick編,Marcel Dekker,Inc.270 Madison Ave.New York,N.J.10016,2003、およびKlamann in Lubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0-89573-177-0を参照されたい。Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ(1973)によって出版された、M.W.Ranneyによる「Lubricant Additives」もまた言及され;その開示がその全体を本明細書に援用される、米国特許第7,704,930号明細書もまた参照されたい。これらの添加剤は、5重量パーセント~50重量パーセントの範囲であってもよい各種量の希釈油を使って一般に配送される。
【0160】
本開示で有用な添加剤は、潤滑油に溶けなくてもよい。ステアリン酸亜鉛などの油に不溶性の添加剤は、本開示の潤滑油に分散させることができる。
【0161】
潤滑油組成物が、1種以上の添加剤を含有する場合、添加剤は、それがその意図される機能を果たすのに十分な量で組成物へ混ぜ込まれる。添加剤は典型的には、微量成分として、典型的には、組成物の総重量を基準として、50重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、より好ましくは約15重量パーセント未満の量で、潤滑油組成物中に存在する。添加剤はほとんどの場合、少なくとも0.1重量パーセント、好ましくは少なくとも1重量パーセント、より好ましくは少なくとも5重量パーセントの量で潤滑油組成物に添加される。本開示で有用なそのような添加剤の典型的な量は、下の表1に示される。
【0162】
添加剤の多くは、一定量の基油希釈剤とともに、1種以上の添加剤を一緒に含有する、コンセントレートとして添加剤製造業者から出荷されていることが指摘される。したがって、下の表1の重量、ならびに本明細書で述べられる他の量は、活性成分(すなわち、非希釈部分の成分)の量を対象とする。下に示される重量パーセント(重量%)は、潤滑油組成物の総重量を基準としている。
【0163】
【表1】
【0164】
前述の添加剤はすべて、商業的に入手可能な物質である。これらの添加剤は、独立して添加されてもよいが、通常は、潤滑油添加剤の供給業者から得ることができるパッケージにあらかじめ混合されている。様々な成分、割合および特性の添加剤パッケージが入手可能であり、適切なパッケージの選択は、究極的な組成物の必須の使用を考慮に入れるであろう。
【0165】
本開示の潤滑油基礎原料油は、混合制限なしで潤滑油基礎原料油として好適であり、そしてさらに、本潤滑油基礎原料油生成物はまた、潤滑油調合物用の潤滑油添加剤と相溶性である。本開示の潤滑油基礎原料油は任意選択的に、潤滑油を形成するために他の潤滑油基礎原料油とブレンドすることができる。有用な潤滑油共基礎原料油には、グループI、III、IVおよびV基礎原料油ならびにガス・トゥ・リキッド(GTL)油が含まれる。共基礎原料油の1種以上が、全潤滑油組成物を基準として、0.1~50重量%、または0.5~40重量%、1~35重量%、または2~30重量%、または5~25重量%、または10~20重量%で潤滑油基礎原料油を含む潤滑油組成物に混ぜ込まれてもよい。
【0166】
本開示の基礎原料油を含む潤滑油組成物は、先行技術グループII基礎原料油を含む類似の潤滑油組成物よりも改善された酸化安定性を有する。
【0167】
潤滑油基礎原料油および潤滑油組成物は、移動するおよび/または相互作用する機械部品、構成要素、または表面の潤滑を必要とするデバイスまたは装置用の潤滑油またはグリースなどの、様々な潤滑関連最終使用に本開示で用いることができる。有用な装置には、エンジンおよび機械が含まれる。本開示の潤滑油基礎原料油は、自動車クランクケース潤滑油、自動車ギアオイル、トランスミッションオイル、循環潤滑油、工業ギア潤滑油、グリース、圧縮機油、ポンプオイル、冷蔵潤滑油、油圧潤滑油、金属作動流体などの多くの工業用潤滑油の調合に使用するのに最も好適である。さらに、本開示の潤滑油基礎原料油は、再生可能な資源から誘導され;それは、持続可能な製品と考えられ、異なる業界群または政府規制によって設定された「持続可能性」基準を満たすことができる。
【0168】
以下の非限定的な実施例は、本開示を例示するために提供される。
【実施例0169】
本明細書に記載されるように、図1は、本開示の秀でた低温および酸化性能を持った組成的に恵まれた基礎原料油を生み出すために用いられた潤滑油のための水素化分解プロセスの略図である。実施例で用いられる方法は、本明細書に開示される。約20~約45の溶媒脱ろう油供給物粘度指数を有する供給物(すなわち、減圧ガスオイル供給原料(すなわち、中減圧ガスオイル供給物(MVGO))が、粘度指数(VI)を増加させ、そして硫黄および窒素を除去する、主として水素化処理装置である第1段階によって処理された。これに、ライトエンドおよびディーゼルが取り出されるストリッピングセクションが続いた。重質潤滑油フラクションが次に、水素化分解、脱ろう、および水素化仕上げが行われる第2段階に入った。供給物とプロセスアプローチとのこの組み合わせは、独特の組成特性を持った基礎原料油を生み出すことが分かった。これらの独特の組成特性は、生み出されたより低およびより高粘度基礎原料油の両方で観察された。
【0170】
潤滑油基礎原料油は、従来法で処理された低粘度基礎原料油と比べて独特の組成特性を持った低粘度生成物をもたらす低粘度カットの従来型VI標的に達するために、約20~約45)の溶媒脱ろう油供給物粘度指数を有する供給物(すなわち、減圧ガスオイル供給原料(すなわち、中減圧ガスオイル供給物(MVGO))を共処理することによって生み出された。潤滑油基礎原料油組成は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、カーボン-13核磁気共鳴(13C NMR)、プロトン核磁気共鳴(プロトン-NMR)、および示差走査熱量測定法(DSC)などの進歩した分析技術の組み合わせを用いて測定された。本開示の、そして4~6cStの範囲の100℃での動粘度を有するグループII低粘度潤滑油基礎原料油の例が、図9に記載される。参考のために、本開示の低粘度潤滑油基礎原料油が、同じ粘度範囲を有する典型的なグループII低粘度基礎原料油と比較される。
【0171】
上記方法からの共処理高粘度生成物はまた、本明細書に記載される独特の組成特性を示した。10~12cStの範囲の100℃での動粘度を有する、そのようなグループII高粘度潤滑油基礎原料油の例が、図10に記載される。参考のために、本開示の高粘度潤滑油基礎原料油が、同じ粘度範囲を有する典型的なグループII高粘度基礎原料油と比較される。
【0172】
図9および10で用いるところでは、「飽和化合物X-0」は、ワン(1)環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の量を意味し;「飽和化合物X-2」は、ツー(2)環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の量を意味し;「飽和化合物X-4」は、スリー(3)環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の量を意味し;「飽和化合物X-6」は、フォー(4)環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の量を意味し;「飽和化合物X-8」は、ファイブ(5)環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の量を意味し;「飽和化合物X-10」は、シックス(6)環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の量を意味し;「飽和化合物X2」は、イソパラフィンの量を意味する。「MMパラフィン」は、モノメチルパラフィンを意味する。「DMパラフィン」は、ジメチルパラフィンを意味する。「全シクロパラフィン」は、シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の総量を意味する。図9および10で用いるところでは、シクロパラフィンは、ナフテノ芳香族化合物を含む。
【0173】
図9および10で用いるところでは、粘度指数(VI)は、ASTM方法D 2270-93[1998]に従って測定された。VIは、ASTM方法D 445-01を用いて40℃および100℃で測定される動粘度に関係する。
【0174】
図10で用いるところでは、流動点は、ASTM B3983またはD5950-1により測定された。
【0175】
水素化分解プロセスによって生み出された独特の組成を持ったグループII基礎原料油(図9および10の例)は、3.5cst~13cstの範囲の基礎原料油粘度を示す。組成におけるこれらの差は、シクロパラフィン環およびナフテノ芳香族環種の分布の差を含み、多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物と比べて1環のより大きい相対量につながる。図9および10は、それぞれの行14を参照すると、商業的に入手可能な水素処理基礎原料油と比べて、低粘度生成物について本開示の基礎原料油において1.1を超え、本開示の基礎原料油において高粘度生成物では1.2を超える、1環シクロパラフィン種対多環シクロパラフィン種の比を示す。組成のこの差は、恵まれていると考えられる。
【0176】
その上、本開示の基礎原料油において、2+、3+、4+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物について、図9および10、それぞれの行15、16、および17に示されるような多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物の絶対値は、粘度範囲にわたって商業的に公知の基礎原料油と比べて本開示の基礎原料油においてより低い。具体的には、本開示の実例基礎原料油は、低粘度生成物では、35.7%未満の図8に示されるような-2X-クラスの種、主に2X-クラスの2+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、11.0%未満の図8に示されるような-4X-クラスの種、主に4X-クラスの3+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、および3.7%未満の図8に示されるような-6X-クラスの種、主に6X-クラスの4+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、ならびに高粘度生成物について、39.0%未満の図8に示されるような-2X-クラスの種、主に2X-クラスの2+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、10.8%未満の図8に示されるような-4X-クラスの種、主に4X-クラスの3+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、および3.2%未満の図8に示されるような-6X-クラスの種、主に6X-クラスの4+環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物を示した。多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物のより低い量はまた、3環種の個別の数(図9および10、それぞれの行7);低粘度生成物については7.8%未満および高粘度生成物については7.9%未満に注目することによって理解することができる。その上、本開示の基礎原料油はまた、フル粘度範囲にわたってモノシクロパラフィン種のより高い量;低粘度基礎原料油については40.7%超および高粘度基礎原料油については38.8%超を示した。さらに、本開示の基礎原料油は、好ましくは5%未満の総量、より好ましくは2%未満の総量で、相応して図8に示されるのと同じX-クラスのナフテノ芳香族種を含むことができる。
【0177】
さらに、特有の供給物(すなわち、約20~約45の溶媒脱ろう油供給物粘度指数を有する減圧ガスオイル供給原料(すなわち、中減圧ガスオイル供給物(MVGO))を使用すると、より軽質の基礎原料油と併産されるより重質の基礎原料油に関して追加の利点を与える。図10、その行4に見られるように、本開示の高粘度基礎原料油は、平均すると80%に近い、市販の基礎原料油と比べてかなりより低いシクロパラフィン含有量(75%未満)を示す。これはまた、106.2を超える、より高いVIによっても証明され、ここで、本開示の基礎原料油は、106~112範囲のVIを有する。
【0178】
その上、高粘度基礎原料油は、13C-NMRにより測定されるような100個の炭素原子当たり13.3個超のイプシロン炭素原子によって明らかなようにこれらの種のイソ-パラフィン部分上のより低い程度の分岐、および13C-NMRにより測定されるような100個の炭素原子当たり2.8個超のアルファ炭素原子によって明らかなようにこれらの種のイソ-パラフィン部分上のより大きい数の長いアルキル分岐を示した(図10、行18および20)。特性のいくつかの独特の組み合わせがまた、高粘度生成物と併産された低粘度基礎原料油においても具体的に見られた。例えば、本開示の低粘度基礎原料油は、110超の粘度指数を保持しながら11.3%未満のイプシロン炭素含有量を有することが見られた(図9、行18および3)。
【0179】
図9および10に含まれる本開示の模範的な基礎原料油の組成特性の詳細なまとめが以下に示される。
【0180】
100℃で範囲4~6cStの動粘度を持った基礎原料油について、組成物は、
GCMSにより測定されるように、モノシクロパラフィン種が、全種の44%超または46%超または48%超を構成し;
類似の商業的に入手可能な水素処理基礎原料油における同じ比と比べてモノシクロパラフィン種(0の水素不足X-クラス)対多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種(-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの種の合計)の比(シクロパラフィン性能比)が、GCMSより測定されるように1.1超または1.2超または1.3超または1.4超または1.5超または1.6超であり;
GCMSにより測定されるように、-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、2+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の34%未満または33%未満または31%未満または30%未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、3+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の10.5%未満または9.5%未満または9%未満または8.5未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、4+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の2.9%未満または2.7%未満または2.6%未満を構成し;
13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり1.1個超の第三級またはペンダントプロピル基によって明らかにされるこれらの種のイソ-パラフィン/アルキル部分上のより長い分岐;ならびに
GCMSにより測定されるように、モノメチルパラフィン種が、全種の1.3%未満、または1.1%未満、または0.9%未満、または0.8%未満、または0.7%未満を構成する
ものである。
【0181】
100℃で範囲10~14cStの動粘度を持った基礎原料油について、組成物は、
GCMSにより測定されるように、モノシクロパラフィン種が、全種の39%超または39.5%超または40%超または41%超を構成し;
シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種、すなわち、0、-2、-4、-6、-8、および-10の水素不足X-クラスの全種の合計が、全種の73%未満または72%未満または71%未満を構成し;
類似の商業的に入手可能な水素処理基礎原料油における同じ比と比べてモノシクロパラフィン種(0の水素不足X-クラス)対多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種(-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの種の合計)の比(シクロパラフィン性能比)が、GCMSより測定されるように1.05超、または1.1超、または1.2超、または1.3超、または1.4超であり;
GCMSにより測定されるように、-2、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、2+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の36%未満または35%未満または34%未満または32%未満または30%未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-4、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、3+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の10.5%未満、または10%未満または9%未満または8%未満を構成し;
GCMSにより測定されるように、-6、-8および-10の水素不足X-クラスの全種、すなわち、4+環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種の合計が、全種の2.8%以上を構成し;
13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり13個超、または14個超または14.5個超のイプシロン炭素原子によって明らかにされるこれらの種のイソ-パラフィン/アルキル部分上のより高程度の分岐;
13C-NMRにより測定されるように100個の炭素原子当たり2.7個超、または2.8個超、または2.85個超、または2.9個超、または2.95個超のアルファ炭素原子によって明らかにされるこれらの種のイソ-パラフィン/アルキル部分上のより大きい数の長いアルキル分岐;ならびに
DSC法による微晶質ワックスの溶融での速い熱流量増加率(0.0005~0.0015W/g.T)で特徴づけられる残存ワックス分布
であるものである。
【0182】
本開示の模範的な基礎原料油が典型的なグループII基礎原料油と比べて全シクロパラフィンのより低い含有量を有することは注目に値する。これは、対照試料を上回って見られる本開示の基礎原料油のVI利点を提供すると考えられる。意外にも、本開示の基礎原料油はまた、より低い全体シクロパラフィン含有量およびナフテノ芳香族含有量にもかかわらず、X-クラス0環種(モノシクロパラフィン種に相当する)のより高い含有量を有する。理論に制約されるわけではないが、多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物のより低い量に対する1つの仮説は、低い多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物につながる開環反応が、本開示の基礎原料油を製造するために用いられるプロセス条件下で高い選択性を有し得ることである。本開示の基礎原料油を製造するために用いられるプロセススキームは、VIを潜在的に改善する開環反応に有利に働き得る低硫黄(スイート)処理条件での酸性部位を有する貴金属触媒の活用を可能にする。
【0183】
その上、本開示の基礎原料油(すなわち、図10で107.7のVIを有する本発明の基礎原料油(図11で「発明A」と言われる)、およびまた図10で106.3のVIを有する本発明の基礎原料油(図11で「発明B」と言われる)がまた、温度の関数として残存ワックスの総量および残存ワックスの分布を測定するために示差走査熱量測定法(DSC)を用いて特性評価された。基礎原料油の加熱曲線を、当該基礎原料油から調合された完成エンジンオイルのASTM D4684により測定されたMRV見かけ粘度と相関させることによって、DSC残存ワックス分布を用いて基礎原料油の低温性能を測定する方法は、米国特許出願公開第2010/0070202号明細書に記載されている。DSC冷却および加熱曲線が、本開示の基礎原料油について得られた。とりわけ、加熱曲線は、試料が完全に固化しているほぼ-80℃の低温から出発し、次に試料を約10℃/分で加熱することによって生成した。温度が上昇するにつれて、典型的には、熱流量は、温度が約-25℃になるまで急速に減少する。加熱トレースは、約-30℃~-20℃で極小値を通過する。-20℃と約+10℃との間で、熱流量の率は、微晶質ワックスが溶融するので増加する。典型的な増加率は、0.00025~0.00040W/g.Tであり、それに対して、意外にも、本開示の基礎原料油は、独特の組成および残存ワックス/パラフィン種の含有量を示す0.0005~0.0015W/g.Tの率での熱流量のより迅速な変化を有した。図11は、本開示の基礎原料油および典型的な市販の試料(すなわち、図10で96.9のVIを有するExxonMobil基礎原料油(図11では「典型的なExxonMobil HN Example A」と言われる、図10で、96.8のVIを有するExxonMobil基礎原料油(図11では「典型的なExxonMobil HN Example B」と言われる、ならびに、また、図10での比較HN A、比較HN B、比較HN C、および比較HN D市販基礎原料油)についてのDSC加熱曲線を示す。
【0184】
本開示の基礎原料油は、20W-50自動車エンジンオイル調合物においてASTM D4684によるMRV見かけ粘度によって測定されるように秀でた低温性能を示す。ASTM D4684により測定される完成潤滑油MRV性能は、流動点によって普通は測定される基礎原料油残存ワックスと相関性がある。意外にも、類似の流動点での基礎原料油を使って、ASTM D4684により測定される完成潤滑油MRV性能の25%減少が本開示の基礎原料油を使用して達成できることが分かった。例を図12に示す。図12は、本開示の基礎原料油(すなわち、図10で107.7のVIを有する本発明の基礎原料油)および対照基礎原料油(すなわち、図10で96.9のVIを有するExxonMobil基礎原料油)を使用して調合された20W-50エンジンオイルについてASTM D4684により測定されるMRV見かけ粘度対流動点を示す。
【0185】
本開示に従って、イソ-パラフィンおよびモノシクロパラフィン種の量を増やすことによってASTM D4684により測定されるMRVを改善する方法が提供される。本明細書に記載されるように、本開示の基礎原料油は、低温性能の改善に寄与し得る、より低い多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族含有量ならびにより高いモノシクロパラフィン含有量を有する。これは、シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族含有量の比較的小さい変化が低温性能に影響を及ぼすことは予期され得ないので意外である。寄与し得るシクロパラフィンおよび/または分岐の長鎖パラフィンなどの飽和種の興味深い分布があると考えられる。したがって、ある実施形態において、本開示は、より厳しい処理によって多環シクロパラフィンをモノシクロパラフィンへと変換すること、および次にこの基油を低い多環シクロパラフィン種とブレンドして調合物にすることによってASTM D4684により測定されるMRV性能を改善する方法を提供する。
【0186】
その上、13C NMR分光法は、本開示の高粘度基礎原料油が、典型的な基礎原料油と同じ平均炭素数(範囲30~40個の)を有しながら、イプシロン炭素(13%超)およびアルファ炭素(2.8%超)の含有量がより高い種からなることを示す。本開示の基礎原料油についてのイプシロンおよびアルファ炭素含有量の観察結果の例は、図10で行18および20に示される。アルファ炭素種のより高い含有量は、飽和種におけるより高程度の分岐を示唆するが、より低いイプシロン炭素含有量(長い非分岐パラフィン鎖を示す)につながると予期される。本開示の基礎原料油はまた、アルファ炭素のより高い含有量と一緒に、イプシロン炭素種のより高い含有量を示すので、より長い分岐およびより多い数の分岐を持った種の興味深い分布が存在すると考えられる。
【0187】
本開示に従って、多環シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族種を減らすことによってASTM D2272により測定される回転圧力容器酸化試験(RPVOT)を改善する方法が提供される。本開示の基礎原料油、特により高粘度基礎原料油は、類似粘度の他のAPIグループII基礎原料油よりも一方向に低い量のシクロパラフィンを示した。また、そのような基礎原料油における個別シクロパラフィン型分子分布は、他の類似粘度競合グループII基礎原料油についてのものとは異なった。本開示の基礎原料油におけるこの組成差は、タービン油調合物に関してASTM D2272によりRPVOTによって測定されるように一方向により良好な酸化安定性をもたらした。理論に制約されるわけではないが、ある種のタイプのシクロパラフィン分子は、酸化開始反応での阻止によってか、酸化生成物を溶液中にたぶん保つかのいずれかによってより良好な酸化安定性を提供するので、他のタイプのシクロパラフィン分子を上回って好ましいと考えられる。イソ-パラフィン分子がシクロパラフィン型分子よりもさらに好ましいものであり得るとまた考えられる。これは、より高いRPVOT平均時間をもたらす。したがって、本開示は、次のとおり組成空間当たりの多環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種を特に減らすことによって酸化安定性を制御する方法を提供する:
競合基礎原料油よりも2~7%低い全体シクロパラフィン分子含有量;
単環クラスのシクロパラフィン分子が2~4%より高かった;
2環クラスのシクロパラフィン分子が2~5%より低かった;
3環クラスのシクロパラフィン分子が1~6%より低かった;そして
すべての4水素不足クラスおよびナフテノ芳香族分子の合計が、約2~6%より低い約10%である。
【0188】
類似品質競合高粘度基礎原料油(すなわち、図13で「対照1」と言われる図10で96.9のVIを有するExxonMobil基礎原料油、図13で「対照2」と言われる図10で96.8のVIを有するExxonMobil基礎原料油、および図13で「対照3」と言われる図10で94.7のVIを有するExxonMobil基礎原料油)に対して本開示の高粘度グループII基礎原料油(すなわち、図10で107.7のVIを有する本発明の基礎原料油)でのタービン油調合物に関してASTM D2272により測定される比較RPVOT時間が品質差を示すために図13でグラフによって示される。
【0189】
また、類似品質競合低粘度基礎原料油(すなわち、図14で「対照1」と言われる図9で115.0のVIを有するExxonMobil基礎原料油、および図14で「対照3」と言われる図9で114.5のVIを有するExxonMobil基礎原料油)に対して本開示の低粘度グループII基礎原料油(すなわち、図9で110.5のVIを有する本発明の基礎原料油)でのタービン油調合物に関してASTM D2272により測定される比較RPVOT時間が、品質差を示すために図14でグラフによって示される。
【0190】
追加の潤滑油基礎原料油は、従来法で処理された低粘度基礎原料油と比べて独特の組成特性を持った低粘度生成物をもたらす低粘度カットの従来型VI標的に達するために、約20~約45の溶媒脱ろう油供給物粘度指数を有する供給物(すなわち、減圧ガスオイル供給原料(すなわち、中減圧ガスオイル供給物(MVGO))、または減圧ガスオイル(例えば、中減圧ガスオイル供給物(MVGO))を有する混合供給原料を共処理することによって生み出された。潤滑油基礎原料油組成は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、カーボン-13核磁気共鳴(13C NMR)、プロトン核磁気共鳴(プロトン-NMR)、紫外分光法、および示差走査熱量測定法(DSC)などの進歩した分析技術の組み合わせを用いて測定された。本開示の、そして4~6cStの範囲の100℃での動粘度を有するグループII低粘度潤滑油基礎原料油の例は、図15に記載される。
【0191】
上記方法からの共処理高粘度生成物はまた、本明細書に記載される独特の組成特性を示した。10~14cStの範囲の100℃での動粘度を有するそのようなグループII高粘度潤滑油基礎原料油の例もまた、図15に記載される。
【0192】
図16は、潤滑油基礎原料油(すなわち、米国特許出願公開第2013/0264246号明細書の4.5cSt基礎原料油、米国特許出願公開第2013/0264246号明細書に開示されているような4.5cSt最先端基礎原料油、本開示の5cSt基礎原料油、および本開示の11+cSt基礎原料油)中の、紫外(UV)分光法によって測定されるような、芳香族化合物の量および分布の比較を示す。
【0193】
本明細書で用いられるGCMSについては、おおよび50ミリグラムの基礎原料油試料が、標準2ミリリットルのオートサンプラーバイアルに添加され、バイアルを一杯にするために塩化メチレンで希釈された。バイアルは、セプタムキャップで密封された。試料は、オートサンプラーを備えたAgilent 5975C GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を用いて試験された。非極性GCカラムが、蒸留またはGCの炭素数溶出特性をシミュレートするために使用された。使用されたGCカラムは、Restek Rxi-1msであった。カラム寸法は、固定相コーティングについて0.25ミクロン・フィルム厚さで長さ30メートル×内径0.32mmであった。GCカラムは、スプリット/スプリットレス注入ポート(360℃に保持され、スプリットレスモードで操作される)に連結された。一定圧力モード(約7PSI)でのヘリウムが、GCキャリア相のために使用された。GCカラムの出口は、350℃で保持された移送ラインを通って質量分析計に流し込まれた。GCカラムについての温度プログラムは次のとおりである:100℃で2分保持、1分当たり5℃でプログラム、350℃で30分保持。質量分析計は、電子衝撃イオン化源(250℃で保持された)を使用して操作され、標準条件(70eVイオン化)を用いて操作された。機器制御およびマススペクトルデータ取得は、Agilent Chemstationソフトウェアを用いて得られた。質量較正および機器チューニング性能は、機器自動調整特性に基づいて供給業者供給標準を用いて正当性を立証された。
【0194】
試料についてのGCMS保持時間は、既知のノルマルパラフィンを含有する標準試料の分析に基づくノルマルパラフィン保持と比べて測定された。次にマススペクトルが平均化された。特有のフラグメントイオンに基づく飽和化合物フラクションについてのグループタイプ分析が行われた。グループタイプ分析は、次の飽和化合物および芳香族分子タイプの重量%をもたらした:全シクロパラフィンおよびナフテノ芳香族化合物、1~6環シクロパラフィン種およびナフテノ芳香族種、n-パラフィン、モノメチルパラフィン(すなわち、MMパラフィン)、およびジメチルパラフィン(すなわち、DMパラフィン)。この手順は、業界標準方法ASTM D2786-Standard Test Method for Hydrocarbon Types Analysis of Gas-Oil Saturates Fractions by High Ionizing Voltage Mass Spectrometry(高イオン化電圧質量分析法によるガス-オイル飽和化合物の炭化水素タイプ分析のための標準試験方法)に似ている。
【0195】
本明細書で用いられるSFCについては、市販のSFC(超臨界流体クロマトグラフ)システムが、潤滑油基礎原料油の分析のために用いられた。このシステムは、次の構成要素を備えていた:超臨界二酸化炭素移動相の配送のための高圧ポンプ;温度制御されたカラムオーブン;移動相への試料物質の配送のための高圧液体注入弁付きのオートサンプラー;フレームイオン化検出器;移動相スプリッター(低い死容積ティー);COを超臨界状態に保つための背圧調整器;ならびに構成要素の制御およびデータ信号の記録のためのコンピュータおよびデータシステム。分析のために、おおよそ75ミリグラムの試料が、2ミリリットルのトルエンに希釈され、標準セプタムキャップオートサンプラーバイアルに装填された。試料は、高圧サンプリング弁を通ってベースとして導入された。SFC分離は、直列に連結された(長さ250mm 2mmまたは4mm IDのいずれか)マルチプル市販シリカ充填カラム(60または30オングストローム細孔のいずれかで5ミクロン)を用いて行われた。カラム温度は、典型的には35または40℃で保持された。分析のために、カラムの上部圧力は典型的には、250バールであった。液体CO流量は典型的には、2mm IDカラムについては0.3ml/分または4mm IDカラムについては2.0ml/分であった。試料ランはほとんどすべて、トルエン溶媒前に溶出し得る飽和化合物であった。SFC FID信号は、パラフィンおよびナフテン領域に積分された。SFC(超臨界流体クロマトグラフ)は、全パラフィンおよび全ナフテンのスプリットについて潤滑油基礎原料油を分析するために用いられた。典型的な分子タイプを用いる様々な標準を、定量化のためパラフィン/ナフテンスプリットを較正するために用いることができる。
【0196】
本明細書で用いられる13C NMRのために、試料が、緩和剤として7%クロム(III)アセチルアセトナートを添加してCDCl中25~30重量%で調製された。13C NMR試験は、プロトン共鳴周波数が400MHzであるJEOL ECS NMRスペクトロメーターで行われた。定量的13C NMR試験は、45°フリップ角、パルス間6.6秒、64Kデータ点および2400スキャンでインバースゲートデカップリング試験を用いて27℃で行われた。すべてのスペクトルは、0ppmのTMSを基準とした。スペクトルは、0.2~1Hzの線幅拡大で処理され、ベースライン補正がマニュアル積分前に適用された。全体スペクトルは、次のとおり異なる積分面積のモル%を求めるために積分された:170~190ppm 芳香族C;30~29.5ppm イプシロン炭素(長鎖メチレン炭素);15~14.5ppm 末端およびペンダントプロピル基(%T/P Pr);14.5~14ppm 長鎖端でのメチル;ならびに12~10ppm ペンダントおよび末端エチル基(%P/T Et)。
【0197】
本明細書に引用されるすべての特許および特許出願、試験手順(ASTM方法、UL方法など)、ならびに他の公文書は、そのような開示が本開示と矛盾しない程度に、そしてそのような援用が許されるすべての権限のために参照により完全に援用される。
【0198】
数の下限および数の上限が本明細書でリストアップされる場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が考えられる。本開示の例示的な実施形態が特異的に記載されてきたが、様々な他の変更が当業者に明らかであろうし、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって容易に行われ得ることは理解されるであろう。したがって、本明細書に添付されるクレームの範囲が本明細書に示される実施例および説明に限定されることは意図されず、むしろクレームが、本開示が関係する技術分野の当業者によってその等価物のように扱われるだろうすべての特徴を含めて、本開示中に存在する特許性のある新規性の特徴をすべて包含すると解釈されることが意図される。
【0199】
本開示は、多数の実施形態および具体的な実施例に関連して上に記載されてきた。多くの変形が、上に詳述された説明を踏まえて当業者に連想されるであろう。すべてのそのような明らかな変形は、添付特許請求の範囲の完全に意図される範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎原料油であって、
少なくとも90重量%の飽和化合物と、
0.015 l/(g・cm)未満の280~320nmの間の吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と、
を含み、
80~120の粘度指数(VI)と、4~6cStの100℃での動粘度とを有
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-4X-クラスのナフテノ芳香族種および-6X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の3+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、11重量%未満であり、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の4+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、3.7重量%未満である、
基礎原料油。
【請求項2】
0.15 l/(g・cm)未満の226nmでの吸光係数;
0.013 l/(g・cm)未満の275nmでの吸光係数;
0.005 l/(g・cm)未満の302nmでの吸光係数;
0.006 l/(g・cm)未満の310nmでの吸光係数;および
0.0017 l/(g・cm)未満の325nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項1に記載の基礎原料油。
【請求項3】
0.15 l/(g・cm)未満の226nmでの吸光係数;
0.007 l/(g・cm)未満の254nmでの吸光係数;
0.013 l/(g・cm)未満の275nmでの吸光係数;
0.005 l/(g・cm)未満の302nmでの吸光係数;
0.006 l/(g・cm)未満の310nmでの吸光係数;
0.0017 l/(g・cm)未満の325nmでの吸光係数;
0.0013 l/(g・cm)未満の339nmでの吸光係数;および
0.00014 l/(g・cm)未満の400nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項1に記載の基礎原料油。
【請求項4】
前記飽和化合物が、0X-クラスのモノシクロパラフィン種を含み、
前記モノシクロパラフィン種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、41重量%超である、
請求項1~のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項5】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-2X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の2+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、35.7重量%未満である、
請求項1~のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項6】
基礎原料油であって、
少なくとも90重量%の飽和化合物と、
0.020 l/(g・cm)未満の280~320nmの間での吸光係数を含む、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物と
を含み、
80~120の粘度指数(VI)と、10~14cStの100℃での動粘度とを有
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-4X-クラスのナフテノ芳香族種および-6X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の3+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、10.8重量%未満であり、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の4+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、3.2重量%未満である、
基礎原料油。
【請求項7】
0.11 l/(g・cm)未満の226nmでの吸光係数;
0.011 l/(g・cm)未満の275nmでの吸光係数;
0.013 l/(g・cm)未満の302nmでの吸光係数;
0.017 l/(g・cm)未満の310nmでの吸光係数;および
0.008 l/(g・cm)未満の325nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項6に記載の基礎原料油。
【請求項8】
0.11 l/(g・cm)未満の226nmでの吸光係数;
0.008 l/(g・cm)未満の254nmでの吸光係数;
0.011 l/(g・cm)未満の275nmでの吸光係数;
0.013 l/(g・cm)未満の302nmでの吸光係数;
0.017 l/(g・cm)未満の310nmでの吸光係数;
0.008 l/(g・cm)未満の325nmでの吸光係数;
0.006 l/(g・cm)未満の339nmでの吸光係数;および
0.0007 l/(g・cm)未満の400nmでの吸光係数
を含み、紫外(UV)分光法によって測定される量および分布の芳香族化合物を含む、請求項に記載の基礎原料油。
【請求項9】
前記飽和化合物が、0X-クラスのモノシクロパラフィン種を含み、
前記モノシクロパラフィン種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、39重量%超である、
請求項のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項10】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、ナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、75重量%未満である、
請求項のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項11】
前記飽和化合物が、シクロパラフィン種を含み、
前記芳香族化合物が、-2X-クラスのナフテノ芳香族種を含み、
前記シクロパラフィン種および前記ナフテノ芳香族種の2+環種が、すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、39重量%未満である、
請求項のいずれか一項に記載の基礎原料油。
【請求項12】
主成分として請求項1~のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む組成を有する、潤滑油。
【請求項13】
主成分として請求項11のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む組成を有する、潤滑油。
【請求項14】
ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定される潤滑油の酸化性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項1~のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む、方法。
【請求項15】
ASTM D2272による回転圧力容器酸化試験(RPVOT)によって測定される潤滑油の酸化性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項11のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含む、方法。
【請求項16】
ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(MRV)によって測定される潤滑油の低温性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項1~のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含み、前記方法が
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、44重量%超にモノシクロパラフィン種を制御すること、および/または
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、21重量%超にイソ-パラフィン種を制御すること
を含む、方法。
【請求項17】
ASTM D4684によるミニロータリー粘度計(MRV)によって測定される潤滑油の低温性能を改善する方法であって、前記潤滑油が、
主成分として請求項11のいずれか一項に記載の基礎原料油と、
副成分として1種以上の添加剤と
を含み、前記方法が
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、39重量%超にモノシクロパラフィン種を制御すること、および/または
すべての飽和化合物および芳香族化合物の総重量%を基準として、25重量%超にイソ-パラフィン種を制御すること
を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~のいずれか一項に記載の5~95重量%の第1基礎原料油と、
請求項11のいずれか一項に記載の5~95重量%の第2基礎原料油と
を含む、基礎原料油ブレンド。
【外国語明細書】