(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088449
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】加熱可能な衣服、そのような衣服用の布、および製作の方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20220607BHJP
A41D 31/06 20190101ALI20220607BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220607BHJP
H05B 3/34 20060101ALI20220607BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20220607BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20220607BHJP
【FI】
A41D13/005 101
A41D31/06 100
A41D31/00 502N
H05B3/34
H05B3/14 F
C01B32/194
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022039223
(22)【出願日】2022-03-14
(62)【分割の表示】P 2018557208の分割
【原出願日】2017-01-26
(31)【優先権主張番号】1601370.8
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】513144464
【氏名又は名称】ヘイデール・グラフェン・インダストリーズ・ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】デガネロ,ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】ムーハマド,ユームナ
(72)【発明者】
【氏名】クライポレ,アンドリュー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、加熱パッドを組み込んだ加熱可能な衣服を提供する。
【解決手段】本発明は、衣服本体(3)、および前記衣服本体(3)の少なくとも一部に接着した加熱パッド(5)を備える加熱可能な衣服(1)であって、前記加熱パッド(5)は、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、加熱可能な衣服に関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体、および前記衣服本体の少なくとも一部に接着した加熱パッドを備える加熱可能な衣服であって、前記加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料に分散したグラフェン粒子を含む、加熱可能な衣服。
【請求項2】
前記加熱パッドが、前記衣服本体に直接または間接的に結合した加熱可能な塗膜である、請求項1に記載の加熱可能な衣服。
【請求項3】
前記グラフェン粒子がグラフェンナノ小板である、請求項1または2に記載の加熱可能な衣服。
【請求項4】
前記グラフェンナノ小板が1粒子当たり平均2~100のグラフェン層を有する、請求項3に記載の加熱可能な衣服。
【請求項5】
前記グラフェンナノ小板が1粒子当たり平均2~5のグラフェン層を有する、請求項3に記載の加熱可能な衣服。
【請求項6】
前記グラフェン粒子が官能化グラフェン粒子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項7】
前記グラフェン粒子が、酸素官能化、ヒドロキシ官能化、カルボキシ官能化、カルボニル官能化、アミン官能化、アミド官能化またはハロゲン官能化されている、請求項6に記載の加熱可能な衣服。
【請求項8】
前記加熱パッドが、伝導性材料を複数積み重ねた層を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項9】
前記加熱パッドの平均厚さが300μm以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項10】
前記ポリマーマトリクス材料が弾性材料である、請求項1から9のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項11】
前記加熱パッドにかぶさり且つ結合した電気絶縁カバー層をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項12】
前記電気絶縁カバー層が弾性材料から形成されている、請求項11に記載の加熱可能な衣服。
【請求項13】
前記電気絶縁カバー層がポリウレタンまたはシリコーンから製造されている、請求項11または12に記載の加熱可能な衣服。
【請求項14】
前記加熱パッドが前記衣服本体に直接接着されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項15】
それ自体が前記衣服本体に接着した中間層に前記加熱パッドが接着することで、前記加熱パッドが前記衣服本体に間接的に接着している、請求項1から13のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項16】
前記中間層がポリウレタンから製造されている、請求項15に記載の加熱可能な衣服。
【請求項17】
前記加熱パッドの温度を制御するための温度制御システムを備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項18】
前記加熱可能な衣服が2つ以上の前記加熱パッドを備え、前記制御システムが各加熱パッドの温度の独立制御を可能にするように構成されている、請求項17に記載の加熱可能な衣服。
【請求項19】
異なる筋肉群を対象とする2つ以上の前記加熱パッドを備え、前記制御システムは前記加熱パッドの温度を前記筋肉群に応じて独立して調節可能であるように構成されている、請求項18に記載の加熱可能な衣服。
【請求項20】
前記衣服がズボンまたはショーツである、請求項1から19のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項21】
前記衣服が上半身用である、請求項1から19のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項22】
前記衣服がストラップである、請求項1から19のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の加熱可能な衣服を製造する方法であって、
-衣料を準備すること;および
-前記衣料の少なくとも一部上に伝導性材料の1つまたは複数の層を付着させて加熱パッドを形成すること
を含み、前記伝導性材料は、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、方法。
【請求項24】
-前記衣料を準備すること;
-前記衣料の少なくとも一部上に導電性インクを付着させ、前記インクを前記衣料に少なくとも部分的に浸透させること;
-前記衣料から過剰のインクを除去すること;
-前記伝導性材料の第1の層を形成するように前記インクを硬化させること;および
-任意に、前記伝導性材料の前記第1の層に前記伝導性材料のさらなる層を付着させること
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
-前記衣料を準備すること;
-前記衣料の少なくとも一部上に溶媒を付着させ、前記溶媒を少なくとも部分的に前記衣料に浸透させて濡れた衣料を形成すること;
-前記濡れた衣料の上に導電性インクを付着させること;
-任意に、前記インクを少なくとも部分的に前記衣料に浸透させること;
-前記衣料から過剰のインクを除去すること;および
-前記伝導性材料の第1の層を形成するように前記インクを硬化させること;および
-任意に、前記伝導性材料の前記第1の層に前記伝導性材料のさらなる層を付着させること
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
-前記衣料を準備すること;
-前記衣料の少なくとも一部上に電気絶縁層を付着させること;および
-前記伝導性材料の1つまたは複数の層を前記電気絶縁層上に付着させること
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記伝導性材料の1つまたは複数の層上に電気絶縁カバー層を付着させることをさらに含む、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
布支持体の少なくとも一部に接着した加熱パッドを備え、前記加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、加熱可能な布。
【請求項29】
寝具本体、および前記寝具本体の少なくとも一部に接着した加熱パッドを備える加熱可能な寝具であって、前記加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、加熱可能な寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱可能な衣服、そのような衣服を製造するための布、ならびにそのような衣服および布を製造する方法に関する。本発明はまた加熱可能な寝具を提供する。
【背景技術】
【0002】
最も普及しているスポーツおよび余暇の多くは、低温環境において行われ、身体の体温調節システムに負荷をかける。気温が低下すると、皮膚周辺近くで血管収縮を引き起こし、皮膚への血流が低減し、末梢血流の低下を引き起こす。
【0003】
体温の低下は、不快感の原因になるだけでなく、器用さが減少する原因となる。例えば、皮膚温度が13℃まで冷えると手先の器用さが低下し、低温環境で作業したり低温の製品を扱ったりする人は手の機能低下を示すことが以前に示されている。
【0004】
この器用さの欠如は、スポーツの応用分野において特に顕著である。例えば、手の器用さをなくすと、結果として失敗と成功との分かれ目になり得る間違いを引き起こし得るエリートスポーツにおいて、手の皮膚温度を維持する重要性は明らかである。さらに、筋肉温度、最大出力、繰り返しの運動能力およびその後のスポーツの成績との間に十分に報告された相関性がある。ウォーミングアップ後、控え選手でいる間、またはプレーの中断中に経験されるような、低度から中度の無活動状態の低温環境温度および期間は、筋肉温度の低下を引き起こす恐れがある。例えば、調査によると、筋肉温度が1℃低下する毎に脚の最大出力は4%低下し、中心および筋肉の温度と、パフォーマンスとの間に強い相関があることを示した。これらの作用は、高地および北/南の高緯度で経験されるような極低温で特に著しい。
【0005】
器用さおよび筋肉のパフォーマンスがなくなるとまた、低温作業環境中で著しい問題が起こる恐れがある。これは、建設、積み込みおよび冷蔵倉庫などの手を使う労働を伴う仕事に特に該当する。低温環境に対処するために、作業者が衣類を厚くまたは多層に着用することが一般的である。しかし、そのため器用さの損失をさらに悪化させる恐れがあり、生産性、快適さおよび安全性の水準を低下させる結果となり得る。
【0006】
身体の特定の領域を加熱する試みのために加熱される衣服を提供することは公知である。例えば、国際公開第2005/119930号は、成形された加熱エレメントを形成すること、および接着剤または縫製を使用して衣服へそれらを貼り付けることまたは衣服のポケット内でそれらを保持することを記載している(国際公開第2005/119930号の
図7を参照)。しかし、成形された加熱エレメントを使用すると、加熱エレメントの嵩を増やし、そのようなエレメントを組み込んだ衣服の可撓性に負の影響を与えかねない。
【0007】
別の公知の加熱される衣服は、衣類に従来のワイヤー抵抗加熱器を加えることにより形成されている。そのような衣服には、典型的には、目標領域を横切って供給された熱が広がるように、ワイヤーがいわゆる「蛇行した」経路で、加熱される領域を横切って平行に緊密に詰め込まれている。しかし、この技術は重くて電力を大きく消費するだけでなく、また、屈曲中および一般的な使用中にホットスポットの発生が生じやすく、これらの加熱器が安全に達成することができる温度、その使用寿命および一般的な耐久性が制限される。
【0008】
また、電流の印加で抵抗加熱を提供する、織った伝導性繊維を組み込んだ加熱可能な衣
服を形成することは公知である。そのような衣服に通常使用される繊維は、金属(銅またはニクロム線など)、または伝導性(例えば金属)材料にコーティングされた絶縁材のどちらかである。そのような材料は製造するのが困難で高価になり得、そのような繊維の使用は、負の影響を衣服の可撓性および/または伸縮性に与え得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、改善された加熱可能な衣服およびそのような衣服の製造に適切な布を開発することがまだ必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、衣服本体、および衣服本体の少なくとも一部に接着した加熱パッドを備える加熱可能な衣服であって、加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料に分散したグラフェン粒子を含む、加熱可能な衣服を提供する。
【0012】
「接着した」は、加熱パッドが、衣服本体に直接または間接的に結合されていることを意味する。すなわち、加熱パッドは、いかなる中間層もなしで衣服本体自体に結合されている(すなわち、表面に「直接」接着している)か、または、1つもしくは複数の中間層を介して衣服本体に結合されている(すなわち、表面に「間接的に」接着している)かのいずれかである。
【0013】
「加熱パッド」は、電気的な加熱パッド、すなわち電流の印加で熱を発生することができる電気伝導性材料である。加熱パッドは、衣服本体の表面に接着した1つまたは複数の層の形態をとる。
【0014】
「衣服本体」は、衣服、例えば衣服に一緒に接続された(例えば、縫い合わせた)1つまたは複数の布パネルの構造を形成する衣料を意味する。
【0015】
本発明の加熱可能な衣服は、幾つかの有利な機能を有する。
【0016】
第1に、加熱可能な衣服は、身体を加熱する、費用効果的で簡単な手法を提供する。特に、加熱パッドは、炭素(グラフェン粒子の形態の)およびポリマーから製造され、例えば、銀などの金属系の公知の加熱パッドと比較して、比較的低コストである。
【0017】
第2に、グラフェン粒子は高い伝導性を示し、このことは、それらが、ポリマーマトリクス材料中で比較的低い充填水準で、適切な伝導性の加熱パッドを形成することができることを意味する。この低い充填水準は、加熱パッドの機械的性質を、それほど可撓性でないグラフェン粒子に代えて、相対的により可撓性のポリマーマトリクス材料によって支配することができることを意味する。また、グラフェン粒子が小径であるので、相対的により大きな粒子と比較して、加熱パッドの機械的性質への粒子の影響が低下する。
【0018】
第3に、衣服本体への加熱パッドの接着は、加熱パッドを衣服の着用者の接近した近傍に維持しつつ、加熱パッドが屈曲し衣服の変形に適合するのを助ける。この構成は、例えば加熱パッドが布ポケット内に保持されている衣服より効果的になり得、布ポケット内に保持されている場合、衣服が変形しても、それほど容易に加熱パッドの変形に変換されず、その結果、衣服が変形しても、加熱パッドが衣服の着用者に順応しないことになり得る
。
【0019】
衣服本体への加熱パッドの接着はまた比較的緊密な構造を可能にする。例えば、衣服本体は、加熱パッドの構造的な強化をもたらし、衣服に単純に縫製されたまたはポケットもしくは小袋中に保持された加熱パッドより、相対的に薄く製造することができることを意味する。
【0020】
第4に、加熱可能な衣服の構造は比較的単純である。例えば、その構造は、伝導性繊維を衣服自体の布に形成する必要性を回避し、且つ加熱パッドの組み込みのための、衣服中の別個の小袋またはポケットを形成する必要性を回避する。
【0021】
第5に、屈曲時でさえ、グラフェン系加熱パッドは、印加電圧に対する急速な温度応答および良好な熱安定性を有することができる。例えば、本発明者らは、本発明において使用されているグラフェン系加熱パッドが、およそ20秒後に平衡温度に落ち着き、電圧除去の数秒内に冷却され得ることを見いだした。これは、グラフェンナノ粒子の優れた熱伝導度特性による可能性が非常に高い。これによって、突然の温度上昇は印加電圧を低下させることにより急速に引き下げることができるので、やけどのリスクを低減して、より高温が安全に動物に適用されることになる。
【0022】
第6に、グラフェン系加熱パッドの熱分布の均質性が、伝統的な蛇行したワイヤー加熱器のそれと比較して、より均一/均質な加熱を領域へ与える能力によって改善される。これは、ホットスポットの形成の可能性を減少させるので、やはり動物への使用について、加熱のより安全で、より制御された適用を可能にする。
【0023】
さらに、加熱パッドの所要電力は、ポリマーマトリクスに分散したグラフェン粒子の優れた電気的および熱的性質により、比較的低い。このことは、小さく、軽量で(且つ、その結果、容易に運搬可能である)、永続的な電源を使用して加熱パッドに電力供給することができ、それにより加熱される衣服の「着用性能」および有用性を改善することを意味する。したがって、加熱可能な衣服は、以前の加熱可能な衣服に不適当な応用分野に使用することができる。これは、加熱システムによって得られる恩恵よりも、そのシステムの寸法および重量に関連した欠点が容易に上回る、とりわけ高パフォーマンススポーツの応用分野に当てはまる。
【0024】
本衣服は動物による使用のためのものである。動物は、例えば、ヒトまたは他の哺乳動物(例えばイヌまたは馬)であってもよい。加熱可能な衣服は、好ましくは関連する動物に対して体温に、または体温より少し上に加熱できる。例えば、加熱可能な衣服が哺乳動物によって使用される場合、衣服は、好ましくは35℃~45℃(ヒトが使用するための衣服の場合約37℃)の範囲の温度に加熱することができる。
加熱パッド
好ましくは、加熱パッドは、衣服本体に(直接または間接的に)結合した加熱可能な塗膜である。加熱可能な塗膜の形態の加熱パッドは、後で衣服に接着された成形品の形態の加熱パッドより相対的に薄く製造することができる。有利には、加熱パッドの厚さを減少させることで、パッドの可撓性および伸縮性を改善するのを助ける。好ましくは、加熱可能な塗膜は衣服本体に直接結合されるが、それはその結果、特に緊密な構造になるからである。
【0025】
最も好ましくは、加熱パッドは、衣服本体の一部に塗布されたポリマーマトリクス材料中にグラフェン粒子を含む電気導電性インクの1つまたは複数の層であるか、またはそれを含む。好ましくは、導電性インクは、硬化したら、別の接着剤を必要とせずに衣服表面に直接接着するので衣服本体に直接塗布される。有利には、導電性インクが衣服本体に塗
布される衣服は相対的に緊密に製造することができ、その結果、衣服の機械的性質に最小限の影響しか及ぼさずに済む可能性がある。さらに、加熱パッドは目的の領域にインクを塗布することにより形成することができ、衣服に塗布する前に、望みの形状および寸法の別の部品として加熱パッドを製作しなければならない場合と比較して相対的に直接的である。
【0026】
加熱パッドは、電流を印加する抵抗加熱によって熱を生成する。発生する熱量は、関係式:出力=V2/Rによって求められる。
【0027】
適切な電源から安全で有用な温度を達成するために、典型的には加熱パッドは、500Ω以下、400Ω以下、300Ω以下、200Ω以下、150Ω以下、100Ω以下、75Ω以下、50Ω以下、40Ω以下、30Ω以下、20Ω以下、15Ω以下または10Ω以下の抵抗を有する。有利には、抵抗が小さいほど、望まれる電力水準を達成するのに必要とする電圧は低く、その結果、低電圧バッテリー電源を動かすことができ、安全性を改善し、加熱可能な衣服の重量および嵩を減少させることができる。
【0028】
シート抵抗は、例えば、200Ω/□以下、150Ω/□以下、100Ω/□以下、75Ω/□以下、50Ω/□以下、40Ω/□以下、30Ω/□以下、または20Ω/□以下であってもよい。
【0029】
本発明において使用される加熱パッドは、伝導性材料の単一層であってもよいが、または伝導性材料の複数の積み重ねた層(例えば2、3、4または5層)から形成されてもよい。複数の積み重ねた層をコーティング/印刷して加熱パッドを形成すると、同一の全体厚さの単一層をコーティング/印刷するより均質な厚さ(その結果、より均質な加熱)をもたらすことができる。
【0030】
加熱パッドの平均厚さ(平均値)(すなわち加熱パッドの底面と加熱パッドの上面との間の距離の平均値)は、例えば、300μm未満、200μm未満、150μm未満、好ましくは100未満、または75μm未満であってもよい。加熱パッドの平均厚さの下限は、例えば1μm、3μm、5μmまたは10μmであってもよい。好ましくは、平均厚さは1~100μm、より好ましくは1~75μmである。加熱パッドが多層から形成される事例において、各層は、例えば、50μm、25μm、15μm、10μmまたは5μmの最大平均厚さを有していてもよい。最小平均厚さは、例えば、0.5μm、1μm、3μmまたは5μmであってもよい。好ましくは、各層の平均厚さは1~15μmである。有利には、そのような厚さは、加熱パッドを容易に変形可能にし、相対的に薄い装置の製造を可能にしつつ必要とされる加熱に十分な抵抗を提供する。
【0031】
加熱パッドは、衣服本体の表面を横切って伸長する線、シートまたはパッチの形態をとってもよい。シートの表面積は、例えば、0.5cm2以上、1cm2以上、2cm2以上、3cm2以上、5cm2以上、10cm2以上、15cm2以上または20cm2以上であってもよい。
【0032】
加熱パッドは衣服の外側/外部にあってもよい。有利には、そのような実施形態において、衣服本体を通してなお熱伝達を可能にしつつ、衣服本体は加熱パッドから使用者を電気的に絶縁することができる。
【0033】
代替として、加熱パッドは、使用中に着用者の身体に面するように衣服の内側/内部にあってもよい。有利には、これによって、加熱パッドを、衣服本体の外部に加熱パッドを付帯するときに可能な近傍よりも、着用者により接近した近傍に持ってくることができる。
【0034】
さらなる代替法は、加熱パッドが衣服本体内に接着されていることである。
【0035】
加熱可能な衣服は、1を超える上記加熱パッド、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10の加熱パッドを備えてもよい。例えば、加熱可能な衣服には、身体の異なる筋肉群または身体の異なる血管を対象とする複数の加熱パッドがあってもよい。
グラフェン粒子
本発明において使用されている加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含むか、または本質的にそれからなる。グラフェン粒子は伝導性であり、抵抗(ジュール)加熱によって加熱パッドの加熱を可能にする。
【0036】
グラフェン粒子は、ポリマーマトリクス材料中にランダムに分散されてもよい。例えば、ポリマーマトリクス材料内に包まれた、織った炭素マイクロファイバーシートの形態の代わりに、この形態で炭素を提供することによって製作を単純化し、経費を引き下げる。さらに、グラフェン粒子の伝導性(例えばカーボンブラックおよび黒鉛より高い)は、伝導性加熱パッドが相対的に低い充填率で形成することができることを意味する。その上、この形態の炭素粒子を使用することで、加熱パッドがコーティング(例えば印刷)技法を使用して塗布できるようになり、織った炭素マイクロファイバーの使用と比べて、特に、衣服本体に複雑な形状を形成するために使用された場合と比較して製作を単純化する。
【0037】
適切には、グラフェン粒子は高いアスペクト比を有する。有利には、高いアスペクト比を有するグラフェン粒子は、相対的に低い充填水準で伝導性パスを形成することができ、加熱パッドの可撓性を改善するのを助ける。
【0038】
グラフェン粒子(「グラフェン材料粒子」、または「グラフェン系粒子」と称することができる)は、単層グラフェン(すなわち炭素の単一層)、または多層グラフェン(すなわち複数の積み重ねたグラフェン層からなる粒子)の形態をとってもよい。多層グラフェン粒子は、例えば、1粒子当たり平均(平均値)2~100のグラフェン層を有していてもよい。グラフェン粒子が1粒子当たり2~5のグラフェン層を有する場合、それは「少数層グラフェン」と称することができる。
【0039】
有利には、カーボンナノ粒子のこれらの形態は、極めて高いアスペクト比の伝導性粒子を提供する。この高いアスペクト比は、相対的に低い充填水準での伝導性パスの形成を可能にし、カーボンナノ粒子が占める加熱パッドの体積を減少させ、それにより加熱パッドの可撓性/伸縮性を高める。
【0040】
グラフェン粒子は、本明細書において「グラフェンナノ小板」と称される、多層グラフェン材料の板/薄片/シート/リボンの形態をとってもよい(「ナノ」という接頭辞は横の寸法ではなく、薄さを示す)。
【0041】
グラフェンナノ小板は、100nm未満の小板厚さ、およびその厚さに垂直な主要寸法(長さまたは幅)を有していてもよい。小板厚さは、好ましくは70nm未満、好ましくは50nm未満、好ましくは30nm未満、好ましくは20nm未満、好ましくは10nm未満、好ましくは5nm未満である。主要寸法は、好ましくは厚さの少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1,000倍、より好ましくは少なくとも10,000倍である。長さは、幅の少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍であってもよい。
【0042】
ポリマーマトリクス材料中のグラフェン粒子の充填率は、加熱パッドの全重量の、例えば、0.25重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以
上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上または60重量%以上であってもよい。ポリマーマトリクス材料中のグラフェン粒子の充填率の上限は、例えば、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、または60重量%または70重量%であってもよい。グラフェン粒子の充填率が低すぎると、加熱パッドの抵抗が高くなり、所望の温度を達成するためにより高い電圧が必要になる。充填率が高すぎる場合、これは加熱パッドの機械的性質(特に可撓性および伸縮性)、したがって加熱可能な布の機械的性質に悪影響を及ぼす恐れがある。これらの理由のために、グラフェン粒子の充填率は、例えば、5~50重量%、10~40重量%または20~40重量%の範囲にあることが好ましい。
【0043】
グラフェン粒子は、材料の凝集体(塊)が使用する布の加熱均質性を減少させ得るので、好ましくは均質にポリマーマトリクス材料の全体にわたって分散している。しかしながら、そのような粒子は集まろうとする強い傾向があり、溶媒およびポリマー材料中に分散させるのが困難であるので、グラフェン粒子の適切に均質な分散を達成することは簡単ではない。
【0044】
好ましくは、グラフェン粒子は官能化グラフェン粒子、例えば官能化グラフェン、官能化グラフェンナノ小板である。すなわち、グラフェン粒子は、加熱パッドを形成するために使用される溶媒および/またはポリマーマトリクス材料に対するナノ粒子の親和性を改善する官能基を組み込み、それによって粒子のより均質な分布が達成されるようになる。例えば、グラフェン粒子は、酸素官能化、ヒドロキシ官能化、カルボキシ官能化、カルボニル官能化、アミン官能化、アミド官能化またはハロゲン官能化されてもよい。
【0045】
好ましくは、官能化されたグラフェン粒子はプラズマ官能化されたグラフェン粒子(すなわちプラズマに基づくプロセスを使用して官能化された粒子)である。有利には、プラズマ官能化されたグラフェン粒子は高水準の官能化および均質な官能化を示すことができる。
【0046】
特に、本発明者らは、グラフェン粒子が、WO2010/142953およびWO2012/076853に記載されているように低圧プラズマ中で揺動を使用して調製される場合、上述の目的にとって十分以上の、良好な均質性および水準で、溶媒中での分散およびその後のポリマーマトリクス中での分散、またはポリマー溶融物中に直接での分散を可能にする方式で容易に得られることを見いだした。これは、制御することが非常に厳しく困難である上に粒子自体を破損する、グラフェン粒子を分離および官能化する従来のプロセスと対照的である。
【0047】
具体的には、出発炭素材料-とりわけ黒鉛炭素体-は、粒子を脱凝集、脱集合、剥離、浄化または官能化する粒子処理法にかけ、処理する粒子を処理チャンバー中でプラズマ処理および揺動にかける。好ましくは、処理チャンバーは回転容器または回転ドラムである。好ましくは、処理チャンバーは複数の電気伝導性固体の接触体または接触形成物を含むか含有し、粒子は前記接触体または接触形成物と共に揺動し、処理チャンバー中でプラズマに接する。
【0048】
処理される粒子は、黒鉛からなるかもしくはそれを含む粒子などの炭素粒子、または他のナノ粒子である。
【0049】
好ましくは、接触体は処理チャンバー中で移動可能である。処理チャンバーはドラム、好ましくは回転可能なドラムであってもよく、複数の接触体は、処理される粒子と共に転動または揺動される。処理容器の壁は伝導性であり、処理チャンバーの内部空間に延在す
る電極との対向電極を形成することができる。
【0050】
処理中に、望ましくは、接触体または接触形成物の表面にグロープラズマが形成される。
【0051】
適切な接触体は金属ボールまたは金属コーティングされたボールである。接触体または接触形成物は、ある直径を有するように成形されてもよく、直径は望ましくは少なくとも1mmかつ60mm以下である。
【0052】
処理容器の圧力は通常500Pa未満である。望ましくは、処理中に、ガスが処理チャンバーに供給され、ガスは処理チャンバーからフィルターを通って除去される。すなわち、化学組成を維持するために、および/または必要な場合に汚染の蓄積を回避するために、ガスが供給される。
【0053】
処理される材料、すなわち、その処理の結果として得られる粒子、または脱凝集、脱集合もしくは剥離したその成分は、例えばカルボキシ、カルボニル、ヒドロキシル、アミン、アミド、ハロゲン官能基をその表面に形成するプラズマ形成ガスの成分によって化学的に官能化されてもよい。処理チャンバー中のプラズマ形成ガスは、例えば酸素、水、過酸化水素、アルコール、窒素、アンモニア、アミノ含有有機化合物、フッ素などのハロゲン、CF4などのハロ炭化水素および貴ガスのいずれかであってもよく、またはそれを含んでもよい。酸素または酸素含有ガス中でプラズマ加工された酸素官能化材料が特に好ましい。
【0054】
上述のWO2010/142953およびWO2012/076853に開示されている他の処理条件が、追加でまたは代替で使用されてもよい。または、本発明者らはプラズマ処理材料を強く好むが、炭素粒子を官能化および/または脱凝集する他の手段が、本プロセスおよび材料に使用されてもよい。
【0055】
本目的のために、グラフェン粒子の化学的官能化の種類および程度は、選択されたポリマーマトリクス材料を用いて意図する充填率で効果的な適合性のために選択される。ルーティンの実験はこれを決めるのに有効であり得る。
【0056】
伝導性粒子充填剤の他の形態は、グラフェン粒子の側の加熱パッドに使用されてもよい。例えば、加熱パッドは、カーボンナノチューブ(単一壁もしくは多重壁)、カーボンブラック、または金属粒子(例えば銀粒子)をさらに含んでもよい。
ポリマーマトリクス材料
適切には、加熱パッドのポリマーマトリクス材料は弾性材料である。弾性材料の具体的な選択は、衣服の正常動作条件で十分に弾力的に変形可能であり、グラフェン粒子を所定位置に保持する限り(グラフェン粒子の分布が経時的に変化しないように)、特に限定されない。
【0057】
適切な材料には、例えば、ビニルポリマー(塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのポリマーまたはコポリマーを含む)、ポリエステルポリマー、フェノキシポリマー、エポキシポリマー、アクリルポリマー、ポリアミドポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、cis-1,4-ポリイソプレン、エチレン-プロピレンターポリマー(EPDMゴム)、およびポリウレタン(ポリウレタンゴム)を含む天然および合成ゴムなどのエラストマーが含まれる。ポリマーマトリクス材料は、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニルおよび/またはビニルアルコールのコポリマーであってもよい。
【0058】
ポリマーマトリクス材料は熱可塑性材料であってもよい。代替として、ポリマーマトリクス材料は熱硬化性材料であってもよい。
【0059】
ポリマーマトリクス材料は、ポリウレタン、例えば熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含んでもよく、またはそれであってもよい。有利には、本発明者らは、ポリマーマトリクス材料としてポリウレタン(とりわけ熱可塑性ポリウレタンエラストマー)を使用すると、良好な機械的性質、特に良好な水準の可撓性を有する加熱パッドを生み出すことを見いだした。これは、加熱パッドが、使用中の衣服着用者の身体に順応するのを助ける。
衣服本体
加熱パッドが接着されている衣服本体の部分は衣料、好ましくは布から製造されている。布は、繊維/糸から形成された織り、編み、かぎ針編みした布、または不織布であってもよい。好ましくは、布は織布である。
【0060】
加熱パッドが接着されている衣服本体の部分は天然または合成材料から形成されてもよい。例えば、衣服本体の前記部分は、天然繊維(例えば綿、ウール、亜麻、絹)もしくは革などの天然素材を含むか、またはそれらからなってもよい。追加でまたは代替で、衣服本体の前記部分は、合成繊維(ポリエステル繊維、Lycra(登録商標)などのポリエステルポリウレタンコポリマー、アクリル繊維およびナイロンなどのポリアミド繊維)、または非発泡もしくは(より好ましくは)ネオプレンなどの発泡ポリマーを含むか、またはそれらからなってもよい。
【0061】
好ましくは、衣服本体は可撓性である(すなわち、曲変形し、元の形状に壊れずに戻ることが可能である)。任意に、衣服本体は伸縮できる(すなわち、裂けたり、破断したりせずにより長くまたはより幅広くなることができる)。可撓性および/または伸縮性の材料から形成された衣服は、それが動くのに合わせて、使用者の身体に順応することができる。
【0062】
好ましくは、衣服本体は、加熱パッドを形成するために使用されている材料(例えば導電性インク)に対して、形成中に前記材料が衣服本体に浸透/浸潤するような浸透性がある。例えば、衣服本体は、加熱パッドが構築中に浸透する、織布または不織布から製造されてもよい。これによって、加熱パッドと衣服本体との間の良好な結合を保証することができる。
【0063】
衣服本体が繊維/糸から製造されている場合、繊維/糸は、加熱パッドを形成するために使用されている材料(例えば導電性インク)に対して、形成中に前記材料が繊維/糸に浸透/浸潤するような浸透性があってもよい。やはりこれは、加熱パッドと衣服本体との間の良好な結合を保証する。
【0064】
加熱パッドは、衣服本体の取り外し可能な部分、すなわち衣服本体の他の部分から取り外すことができる衣服本体の一部に接着されてもよい。そのような事例において、衣服本体の取り外し可能な部分が可逆的に取り外し可能であることは好ましい。例えば、加熱パッドが取り外し可能なストラップまたはパッドに設けられてもよい。衣服本体の取り外し可能な部分は、面ファスナ(例えばVelcro(登録商標))、ボタン、スナップ、バックルまたはジップなどの再使用可能なファスナによって適所に保持されてもよい。有利には、そのような構成によって、加熱パッドを交換する(例えば、電力供給が低いもしくは加熱パッドに欠陥がある場合)、または取り除く(例えば浄化のために)ことが可能になる。代替として、加熱パッドは衣服本体の取り外しできない部分に接着されてもよい。カバー層
好ましくは、加熱可能な衣服は、加熱パッドにかぶさり(例えば封入)結合した電気絶
縁カバー層を備える。有利には、電気絶縁カバー層は、加熱可能な衣服の機械的性質を改善するのを助ける。特に、それは、衣服の変形による加熱パッドの亀裂の発生を低減する。さらに、電気絶縁カバー層は、加熱パッドの異なる領域が接触に至る場合、加熱パッドから使用者を電気絶縁するのを助けて、短絡が形成するのを防止する(そうでなければ不均質加熱を引き起こす場合がある)。その上、電気絶縁カバー層は、例えば洗浄プロセス中の水による損傷から、加熱パッドを保護することができ、より高温を達成することができる。
【0065】
電気絶縁カバー層は、加熱パッドに接着されてもよい。最も好ましくは、電気絶縁カバー層は、加熱パッド上にコーティングされている(例えば印刷されている)。
【0066】
好ましくは、電気絶縁カバー層は、弾性材料、例えば弾性ポリマーから形成されている。これによって、衣服の着用者が動くのに合わせて、カバー層が機械的に適合することができ、着用者にとって快適さが増す。
【0067】
適切な材料には、例えば、ビニルポリマー(塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのポリマーまたはコポリマーを含む)、ポリエステルポリマー、フェノキシポリマー、エポキシポリマー、アクリルポリマー、ポリアミドポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、cis-1,4-ポリイソプレン、エチレン-プロピレンターポリマー(EPDMゴム)、およびポリウレタン(ポリウレタンゴム)を含む天然および合成ゴムなどのエラストマーが含まれる。ポリマーマトリクス材料は、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニルおよび/またはビニルアルコールのコポリマーであってもよい。
【0068】
好ましくは、電気絶縁カバー層は、ポリマーインクなどの、コーティング可能な材料から形成されている。例えば、その層は、液体可塑剤(例えば「プラスチゾル(登録商標)」-液体可塑剤中のPVC粒子の懸濁液)中にポリマー粒子の懸濁液を含むポリマーインクによって形成されてもよく、これは印刷し、例えば加熱によって、硬化させることができる。
【0069】
電気絶縁カバー層は、ポリウレタン、例えば熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含んでもよく、またはそれから形成されてもよい。有利には、本発明者らは、電気絶縁カバー層としてポリウレタン(とりわけ熱可塑性ポリウレタンエラストマー)を使用することが、良好な機械的性質、特に良好な水準の可撓性を有する加熱可能な衣服を生み出すことを見いだした。これは、加熱可能な衣服が使用中に衣服の着用者の身体に順応するのを助ける。
【0070】
電気絶縁カバー層は、シリコーンゴムであっても、またはこれを含んでもよいが、それは、これが、亀裂することなく優れた可撓性および変形能を備えることができるという理由による。
【0071】
代替でまたは追加で、加熱可能な衣服は、加熱パッドの真下の衣服本体に結合した電気絶縁カバー層を備えてもよい(すなわち、加熱パッドが設けられる側とは反対側の衣服本体上)。例えば、加熱可能な衣服は、加熱パッドおよび衣服本体が電気絶縁層間に挟まれるように、加熱パッドが設けられた衣服本体の部分における衣服本体の両側に電気絶縁カバー層を有していてもよい。そのような実施形態において、カバー層は、加熱パッドのまわりに防水シールを形成してもよい。
中間層
任意に、加熱可能な衣服は、衣服本体と加熱パッドとの間に中間層を備える。そのよう
な事例において、加熱パッドは衣服本体に間接的に接着され、加熱パッドは、衣服本体にそれ自体が接着された中間層に接着されている。有利には、中間層は、衣服本体への加熱パッドの接着のために均質な表面を提供してもよい。その上、中間層は、とりわけ繊維が互いに対して動くことができる布材料に関して、衣服が変形するときの加熱パッドの機械的ストレスを減少させることができる。
【0072】
中間層は、衣服本体に直接コーティングされて(例えば印刷されて)もよい。例えば、加熱可能な衣服は、衣服本体をコーティングする中間層を有し、加熱パッドは中間層を直接コーティングしてもよい。代替として、中間層は、例えば熱の印加(例えばアイロンから)によって、加熱可能な衣服に接着された材料の予備形成されたシートであってもよい。
【0073】
中間層は電気絶縁中間層であってもよい。
【0074】
好ましくは、中間層は弾性材料、例えば弾性ポリマーから形成されている。適切な材料には、カバー層用に上記に言及したものが含まれる。例えば、中間層は、シリコーンゴムであっても、またはそれを含んでもよいが、それは、これが亀裂することなく優れた可撓性および変形能を備えることができるという理由による。中間層のためのさらなる好ましい材料はポリウレタン、例えば熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。有利には、本発明者らは、ポリウレタン(とりわけ熱可塑性ポリウレタンエラストマー)から形成された中間層を組み込むことは、良好な機械的性質、特に良好な水準の可撓性を有する加熱可能な衣服につながることを見いだした。これは、加熱可能な衣服が、使用中の衣服着用者の身体に順応するのを助ける。
【0075】
電気絶縁カバー層および中間層の両方を備える実施形態において、前記層は両方とも同一の材料、例えばシリコーンゴムまたは好ましくはポリウレタンでできていてもよい。両層がポリウレタン(例えば熱可塑性ポリウレタン)から形成された事例において、加熱可能な衣服は、特に良好な機械的性質(特に、可撓性および順応性)を有することができる。
【0076】
電気絶縁カバー層および中間層の両方を備える実施形態において、電気絶縁カバー層および中間層は加熱パッドを封入してもよい。そのような状況で、電気絶縁カバー層および中間層は、加熱パッドのまわりに防水シールを形成してもよい。
【0077】
中間層は多孔性/浸透性であってもよい。これによって、中間層は水を吸い上げることができ、使用者から、例えば「吸い込み」によって湿気(例えば汗)を遠ざけるのを助けることができる。有利には、汗などの液体を中間層に進入させることができると、中間層の熱伝導度が改善するのを助けることができる。
熱反射層
任意に、衣服は、加熱パッドによって生じた熱を身体へ向けるために熱反射層を備えてもよい。例えば、加熱パッドから身体への熱を反射するために、衣服は衣服の外部に金属箔(例えばアルミ箔)を有していてもよい。
電気コネクタ
加熱可能な衣服は、電力源の接続を容易にするために加熱パッドに(例えば、接する/オーバーレイした)電気コネクタを備えてもよい。例えば、加熱可能な衣服は、加熱パッドへの電気の供給を容易にするために加熱パッドに1つまたは複数の金属(例えば銀)領域を備えてもよい。有利には、これらの電気コネクタは、加熱パッドへの電力の供給を単純化することができ、加熱パッドの抵抗を低減することができる。
【0078】
1つまたは複数の電気コネクタは、任意にパターンに形成された、点または線/トラッ
クの形態をとってもよい。例えば、電気コネクタは、間隔を開けた線の形態をとってもよい。
電源
本発明の加熱可能な衣服は電力源に接続可能である。加熱可能な衣服は、電力源を備えてもよく、または電力源の設置なしで供給されてもよい。
【0079】
電力源は、バッテリー(例えばボタン電池バッテリー)またはスーパーコンデンサであってもよい。
【0080】
好ましくは、加熱可能な衣服は、電源から電力を印加して関連する動物の体温を加熱できる。哺乳動物に関して、このことは、加熱器が35℃~45℃の範囲(ヒトが使用する布の場合、約37℃)の温度に加熱できることを意味する。疑問を回避するために述べると、上記温度は(加熱可能な衣服から離れた温度とは対照的に)、例えば熱画像カメラによって測定した、加熱可能な衣服自体の温度を指す。
【0081】
電源から電力の供給を受ける加熱器によって達成できる最高温度は、通常の体温の200%以下、通常の体温の175%以下、通常の体温の150%以下、通常の体温の125%以下または通常の体温の110%以下(℃で表した体温を使用する計算に基づいて)であってもよい。例えば、電源から電力の供給を受ける加熱器によって達成できる最高温度は、70℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下または40℃以下であってもよい。これらの値は、(装置が機能不全を起こした場合の温度とは対照的に)装置の通常動作に基づく。有利には、上記範囲に最高温度を有するように加熱可能な衣服を設計すると、衣服の着用者に害を及ぼす、加熱可能な衣服の可能性を制限または防止する。
【0082】
最も好ましくは、加熱可能な衣服は、皮膚の熱傷が生じる温度のすぐ下の温度(例えば、2℃未満低い、例えば1~2℃低い)に加熱できる。例えば、ヒトの場合、加熱可能な衣服は42~43℃(ヒトの皮膚の44℃の熱傷温度のすぐ下)の温度に加熱できることが好ましい。加熱可能な衣服は、衣服が加熱することができる最高温度が、皮膚の熱傷が生じる温度のすぐ下、例えば、熱傷温度より0.5~5℃低い、好ましくは1~3℃低い、より好ましくは1~2℃低い温度となるように構成されてもよい。
【0083】
電気絶縁カバー層を備える実施形態において、前記層は電源をカバーしてもよい。加熱パッドが、電気絶縁カバー層および/または中間層によって封入された実施形態において、前記層は電源も封入してもよい。そのような状況で、電気絶縁カバー層および/または中間層は、加熱パッドおよび電源のまわりの防水シールを形成してもよい。そのような実施形態において、電源は電気誘導を介して再充電可能であってもよい。
制御
加熱可能な衣服は、加熱パッドの温度を制御するための温度制御システムを備えてもよい。例えば、制御システムは、加熱パッドへの電力供給量が、例えば段階的または連続的方式で調節できるようにしてもよい。これによって、加熱パッドのスイッチオンオフの切り替えおよび/または低電力設定と高電力設定間の切り替えを制御してもよい。
【0084】
加熱可能な衣服が複数の加熱パッドを備える実施形態において、制御システムは、加熱パッドそれぞれまたはそのサブセットの温度を独立して制御可能にし得る。例えば、異なる筋肉群を対象とする複数の加熱パッドを備える加熱可能な衣服において、制御システムは、加熱パッドの温度を筋肉群に応じて独立して調節可能にし得る。
【0085】
制御システムは、使用者が加熱パッド(複数可)の温度を調節するインターフェース(ボタン、スイッチまたはダイヤルなど)を備えてもよい。追加でまたは代替で、制御シス
テムは所定のプログラムに応じて出力水準を調節するようにプログラム可能であってもよい。このように、加熱可能な衣服によって提供される加熱は、特定の個人または用途にカスタマイズすることができる。
【0086】
好ましくは、制御システムは、加熱パッドの温度が一定の閾値(上記に言及した温度範囲に従って)を越えることができないように構成される。さらに、制御システムは、一定の温度に到達したとき、電源を低減または停止する遮断機能を備えてもよい。
【0087】
制御システムは、電圧制御、正の温度係数(PTC)サーミスタによって、または電源の負荷サイクルを変えることによって加熱パッドの温度を制御するように構成されてもよい。
衣服の種類
加熱可能な衣服は、上着、下着、アームウェア、ネックウェアー、フットウェアまたはヘッドウェアなどのヒトが使用する衣服であってもよい。
【0088】
例えば、衣服は、上半身(例えばベスト、ジャージ、半袖Tシャツおよび長袖Tシャツ、ジャケット)、下半身(例えばショーツ、ズボン、靴下/レッグウェア(ストッキングなど))、下着の品目(例えばアンダーパンツ、ソックス)、ワンピース(例えば水着、レオタード)、靴(例えばトレーナ、ブーツ)、ストラップまたはベルト(例えば、リストバンド、もしくは例えばvelcroなどの器具を使用して使用者のまわりに固定することができるストラップ/ベルト)、頭飾りの品目(例えば帽子、ヘルメットまたはヘッドバンド)、グローブ(例えばサイクリンググローブ、野球のグローブ)、ウェットスーツまたはドライスーツであってもよい。上記用語は、英国の通常の英語用法に基づき、読者である当業者は、米国などの他の英語圏において、ある種の上記品目に異なる名称が使われていることがあることを理解している。
【0089】
最も好ましくは、物品はスポーツ着である。
【0090】
適切には、加熱パッドは、特定の筋肉、血管の部分、靭帯、腱、関節または器官などの身体の1つまたは複数の特定の領域へ加熱を与えるように衣服上に位置する。
【0091】
衣服は、着用されたときに、手首を覆う少なくとも1個の加熱パッドを伴う、使用者の手首をカバーするヒト用(例えば、長袖シャツ、長袖Tシャツおよび長袖ジャケット;リストバンド;またはグローブ)であってもよい。そのような衣服において、加熱パッドは、好ましくは手首(すなわち掌の側または下側)の前方部分を覆うが、それは、この領域の主要な血管をカバーする皮膚が薄いため、身体のこの部分への熱印加が手の温度を引き上げることに特に効果的であるからである。
【0092】
例えば、衣服は、手首の後方部分(すなわち背面側または手首の裏面)を覆う電源に接続した加熱パッドが、手首の前方部分を覆うグローブまたはリストバンドであってもよい。有利には、この構成は、手首の上に重なる薄い皮膚を介して手への血液の加熱を可能にしながら、電源が使用者に刺激をほとんど引き起こさないことを意味する。
【0093】
衣服は、加熱パッドがポケットの小袋に含まれる、使用者の手のためのポケットを備えてもよい。
【0094】
衣服は、加熱パッドが、もも、膝腱および/またはふくらはぎなどの脚の特定の領域を対象とする、1着のズボンまたはショーツであってもよい。
【0095】
衣服は、加熱パッドが手首、二頭筋、三頭筋、肩、背中および/または胸筋などの腕お
よび胴の特定の領域を対象とする上半身用であってもよい。
【0096】
衣服は、身体の特定の部分に(例えば、ぐるりと包んで)付けることができるストラップ/ベルト/バンドであってもよい。そのような衣服は、面ファスナ(例えばVelcro(登録商標))、ボタン、スナップ、バックルまたはジップなどの、適切なファスナを介して身体に付けられてもよい。有利には、そのような衣服は身体の異なる部分間で動かすことができ、固まったまたは損傷した筋肉を対象とするのに特に有用になる。
【0097】
衣服は、馬用毛布またはイヌ用ジャケットなどのヒト以外の用途に使用されてもよい。
【0098】
第2の態様において、本発明は、寝具本体および寝具本体の少なくとも一部に接着した加熱パッドを備える加熱可能な寝具であって、前記加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、加熱可能な寝具を含む。寝具は、例えば、毛布、ベッドシーツ、羽毛布団、キルトまたは寝袋であってもよい。加熱可能な寝具は、第1の態様に関連して上記で論じた機能のいずれかを有していてもよい。
加熱可能な布
第3の態様において、本発明は、第1の態様の加熱可能な衣服または第2の態様の加熱可能な寝具を形成するのに適切な加熱可能な布であって、布支持体の少なくとも一部に接着した加熱パッドを備え、前記加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、加熱可能な布を提供する。
【0099】
好ましくは、加熱パッドは、布支持体に(直接または間接的に)結合した加熱可能な塗膜である。加熱可能な塗膜の形態の加熱パッドは、布支持体に後で接着された成形品の形態の加熱パッドより相対的に薄く製造することができる。有利には、加熱パッドの厚さを減少させると、パッドの可撓性および伸縮性を改善するのを助ける。好ましくは、特に緊密な構造をもたらすので、加熱可能な塗膜は、布支持体に直接結合されている。
【0100】
最も好ましくは、加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料中にグラフェン粒子を含む、布支持体の一部に塗布された電気導電性インクの層であるか、またはそれを含む。この場合、インクが硬化すると、別の接着剤を必要とすることなく布支持体に直接接着することができる。有利には、導電性インクが布支持体に塗布されている布は相対的に緊密にすることができる。
【0101】
好ましくは、加熱可能な布は、加熱パッドにかぶせる(例えば封入する)電気絶縁カバー層を備える。カバー層は、上記で言及したカバー層の任意のまたは好ましい機能のいずれかを有することができる。
【0102】
布支持体は織布または不織布であってもよい。そのような布を作る繊維は、綿、ウール、亜麻、絹、ポリエステル、ポリエステルポリウレタンコポリマー、アクリルまたはポリアミドなどの、天然または合成繊維であってもよい。
【0103】
加熱可能な布の成分は、衣服本体に関連して上記で言及した任意のまたは好ましい機能のいずれかを有することができる。
製作方法
第4の態様において、本発明は、加熱可能な衣服を製造する方法であって、
-衣料を準備すること;および
-前記衣料の少なくとも一部上に伝導性材料の1つまたは複数の層を付着させて加熱パッドを形成すること
を含み、前記伝導性材料は、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、方法を提供する。
【0104】
衣料上に伝導性材料の1つまたは複数の層を付着させる工程は、好ましくは、衣料に導電性インクを付着させる(コーティングする)ことを伴う。適切な付着技法には、例えば、バーコーティング、スクリーン印刷(ロータリースクリーン印刷を含む)、フレキソ印刷、輪転グラビア印刷、インクジェット印刷、パッド印刷およびオフセット印刷が含まれる。導電性インクは、溶媒およびポリマー材料中に分散したグラフェン粒子を含む。
【0105】
多層の導電性インクが印刷される場合、好ましくは、その後の層が加わる前に各層は乾燥される。インクの乾燥を速めるために、各導電性インク層の塗布後、装置は加熱されてもよい。
【0106】
導電性インクを使用する場合、本方法は、好ましくは、印刷用インクを調製する工程を伴う。この調製工程は、インクのポリマー結合剤中でグラフェン粒子を均一に分布させるためにインクを混合または均質化することを伴ってもよい。好ましくは、調製工程はインクを均質化することを伴うが、それは、これが、カーボンナノ粒子の均質な分布を保証しインク中のナノ粒子の集合体を壊すのを助けることができることを本発明者らが見いだしたという理由による。適切な均質化は、例えば、3本ロールミルまたはロータ・ステータ・ホモジナイザー使用して、達成することができる。
【0107】
本方法は、予備形成された衣服で行われてもよく、その場合、本方法は、
-衣料から形成されている衣服本体を準備すること;および
-伝導性材料の1つまたは複数の層を衣服本体の少なくとも一部上に付着させて加熱パッドを形成することを含む。
【0108】
代替として、衣服は伝導性材料の付着後に形成されてもよく、その場合、本方法は、
-衣料を準備すること;
-伝導性材料の1つまたは複数の層を衣料の少なくとも一部上に付着させて加熱パッドを形成すること;および
-衣料を衣服に形成することを含む。
【0109】
伝導性材料が導電性インクである場合、衣料が前記導電性インクに対して浸透性である(すなわち、衣料の表面を超えて衣料に浸透する)ことは好ましい。このことによって、衣料と加熱パッドとの間の結合を改善することができる。
【0110】
そのような実施形態において、本方法は、好ましくは、
-衣料を準備すること;
-衣料の少なくとも一部上に導電性インク(上記に定義された)を付着させ、インクを衣料に少なくとも部分的に浸透させる(すなわち染み込ませる)こと;
-衣料から過剰のインクを除去すること;
-インクを硬化させて伝導性材料の第1の層を形成するようにすること;および
-任意に伝導性材料の第1の層に伝導性材料のさらなる層を付着させることを伴う。
【0111】
導電性インクを衣料に部分的に浸透させることは、衣料と加熱パッドとの間の良好な結合を保証するのを助ける。
【0112】
インクが衣料に浸透する時間(「インク浸透時間」)は、衣料の種類および導電性インクの種類に応じて変化する。インク浸透時間は、例えば、10秒以上、20秒以上、30秒以上、1分以上、2分以上、3分以上、5分以上、10分以上、20分以上または30分以上であってもよい。
【0113】
インクは、例えば、0.2μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、8μm以上、10μm以上、25μm以上、50μm以上または100μm以上の平均深さ(平均値)に浸透してもよい。インクの平均浸透深さ(平均値)の上限は、例えば100μm、250μmまたは500μmであってもよい。
【0114】
インクは、衣料の全体厚さの5%以上、10%以上、25%以上、40%以上、50%以上、または75%以上に相当する平均深さ(平均値)にまで浸透してもよい(インクの侵入領域で測定して)。例えば、インクは、衣料の全体厚さの5~75%、10~50%または10~25%の間に相当する平均深さ(平均値)にまで浸透してもよい。
【0115】
伝導性材料が導電性インクである場合、衣料は、好ましくは、導電性インクと相溶性である(例えば混合可能な)溶媒に対して浸透性であり、導電性インクの付着の前に、衣料を前記溶媒で濡らす。
【0116】
例えば、本方法は、
-衣料を準備すること;
-衣料の少なくとも一部上に溶媒を付着させ、溶媒を少なくとも部分的に衣料に浸透させて、濡れた衣料を形成するようにすること;
-濡れた衣料の上に導電性インク(上記に定義された)を付着させること;
-任意にインクを少なくとも部分的に衣料に浸透させること;
-衣料から過剰のインクを除去すること;
-インクを硬化させて伝導性材料の第1の層を形成するようにすること;および
-任意に伝導性材料の第1の層に伝導性材料のさらなる層を付着させることを伴ってもよい。
【0117】
本発明者らは、導電性インクの塗布の前に溶媒を用いて衣料を「濡らす」ことは、衣料への導電性インクの浸透/侵入を改善することを助け、それにより衣料への加熱パッドの結合を改善することを見いだした。
【0118】
溶媒は、導電性インクと混合可能な有機溶媒であってもよい。溶媒は、例えばアルコール、エーテルおよびエステルから選択されてもよい。特定の例としては、例えば、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチルペンタ-2-オン)などのアルドール;ジメチルエステルの混合物(例えば「Estasol(商標)」-アジピン酸、グルタル酸およびコハク酸のジメチルエステルの混合物)を含むジメチルエステル;またはジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテルが含まれる。
【0119】
衣料に溶媒が浸透するのに要する時間(「溶媒浸透時間」)は、衣料の種類および導電性インクの種類に応じて変化する。インク浸透時間は、例えば、10秒以上、20秒以上、30秒以上、1分以上、2分以上、3分以上、5分以上、10分以上、20分以上または30分以上であってもよい。溶媒は、導電性インクの塗布前に、衣料の全厚さに浸透する(染み通る)だけの十分な時間、放置されてもよい。
【0120】
好ましくは、衣料は伝導性材料の付着中、例えばテンターの使用によって、ぴんと張っているように保持される。特に、衣料が伸縮性の場合、材料が伝導性材料の付着中に引き伸ばされた(例えば、部分的に引き伸ばされた)状態であることが好ましいが、それは、このことが伝導性材料のより均質な付着を可能にするという理由による。
【0121】
上記方法はまた、衣料にエラストマー材料の層を付着させて、その後の伝導性材料の付着のための表面を準備することを伴ってもよい。そのような層は、上記で論じた「中間層
」に相当し、中間層に関する上記の機能のいずれかを有していてもよい。このエラストマー材料は衣料にコーティングされてもよい。代替として、エラストマー材料は、例えば、熱(例えばアイロン)の印加によって衣料に接着される予備形成されたシートであってもよい。
【0122】
上記方法はまた、加熱パッド上の電気絶縁塗膜層を付着させることを伴う。そのような電気絶縁塗膜層は、本発明の第1の態様に関して上記機能のいずれかを有していてもよい。電気絶縁塗膜層は、加熱パッドを覆ってコーティングされてもよい。
【0123】
第5の態様において、本発明は、加熱可能な布を形成する方法であって、
-布支持体を準備すること;および
-布支持体の少なくとも一部を、加熱パッドでコーティング(例えば印刷)すること
を含み、加熱パッドは、ポリマーマトリクス材料中に分散したグラフェン粒子を含む、方法を提供する。
【0124】
加熱可能な布を形成する方法は、加熱可能な衣服の形成のための、任意のおよび好ましい上記機能のいずれかを有していてもよい。例えば、本方法は、加熱パッドの形成後、電気絶縁塗膜層を塗布(例えばコーティング/印刷)する工程、および/または、伝導性材料の塗布前に中間層を衣料に塗布(例えばコーティング印刷)する工程を伴ってもよい。
【0125】
本発明はまた、加熱可能な衣服に関連して上記したものに類似した方法に従う加熱可能な寝具を形成する方法を準備する。
【0126】
ここで、本発明の実施形態を、以下の添付の図面を参照して、例示のみを目的として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1A】
図1Aは、加熱パッドを衣服の手首領域に接着した、本発明による長袖スポーツベストの正面図である。
【
図1B】
図1Bは、加熱パッドを衣服の背中に接着した、本発明による長袖スポーツベストの背面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明によるリストバンドの正面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明によるリストバンドの背面図である。
【
図3】
図3は、導電性インクを用いてオーバープリントした織布を示す、本発明の衣服の断面図である。
【
図4】
図4は、導電性インクを用いてオーバープリントした織布を示す、本発明の衣服の断面図である。
【
図5】
図5は、導電性インクを用いてオーバープリントした織布を示し、インクが布および布を構成する個々の糸に浸透した、本発明の衣服の断面図である。
【
図6】
図6は、2層加熱パッドを用いてオーバープリントした織布を示し、布に浸透しているが布を構成する個々の糸には浸透していない、本発明の衣服の断面図である。
【
図7】
図7は、電気絶縁シリコーン層内に封入された加熱パッドを有する、本発明の衣服の断面図である。
【
図8】
図8は、中間シリコーン層に印刷した加熱パッドを有する、本発明の衣服の断面図である。
【
図9】
図9は、熱可塑性ポリウレタン層内に封入された加熱パッドを有する、本発明の衣服の断面図である。
【
図10】
図10は、導電性インク層の数の増加の、シート抵抗に対する効果を示すプロットである。
【
図11】
図11は、加熱パッドに銀の接触を加えたことの効果を示すプロットである。
【
図12】
図12は、様々な布上の、変形させる前の加熱パッドによって到達した温度を示す。
【
図13】
図13は、様々な布上の、変形させた後の加熱パッドによって到達した温度を示す。
【
図14】
図14は、様々な印刷技法を使用することの、加熱パッドのパフォーマンスに対する効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0128】
図1および2は、手首の前方部分を介して使用者の血液を加熱することができる、本発明による衣服を示す。
【0129】
図1Aは、軽量で可撓性の布ベース材料3から形成された長袖スポーツベスト1(衣服本体)を示す。ベストの各腕の手首領域は、通常の使用中に手首の前方部分を覆うように位置する加熱パッド5を備える。加熱パッド5は、導電性インク(ポリマー結合剤および溶媒中に分散したグラフェンナノ小板を含む)の単一層を衣服の外側の関連部分上にコーティングし、インクを硬化させることにより形成されている。インクの熱的性質を改善し、加熱パッドから着用者を電気絶縁するために、加熱パッドはシリコーンエラストマーの層でカバーされている。
【0130】
図1Bに示すように、加熱パッドは、伝導性トラック7経由で衣服後部のボタン型バッテリー9に連結されている。この場合、トラックは、加熱パッドを形成するために使用されるのと同じ導電性インクから形成されるが、代替として、トラックは、銀のトラックから形成することができ、または布材料に導電線(例えば銅線)を縫い合わせることにより形成することができる。衣服の後部はまた、加熱パッド5と同一の構造の背中の加熱パッド11を備え、カーボンのトラック13を介して同じバッテリーに接続されている。
【0131】
図2Aおよび2Bは、可撓性で伸縮性の布ベース材料103から形成された加熱可能なリストバンド101を示す。使用中の使用者の手首の前方部分を覆って位置するリストバンド(
図2A中に示される)の前方は、加熱パッド105を備え、伝導性トレース107を介してリストバンドの後部のボタン型バッテリーに接続されている(
図2Bに示す)。加熱パッドは、
図1Aおよび1Bのベストに加熱パッドと同一の様式で形成され、同じ手法でシリコーン封入層を用いて覆われている。
【0132】
図3~7は、織布の近接断面図を提供し、導電性インクが布に直接結合した、本発明の加熱可能な衣服の異なる構造を示す。
【0133】
図3は、たて糸203および横糸205を有する非浸透性の布を示し、導電性インク207の単一層から形成された加熱パッドを用いてオーバーコーティングされている。
図4は、
図3と同じ構造であるが、導電性インク207aの層が著しく厚いことを示す。
図5は、浸透性の布にコーティングされた導電性インク207bの層を示し、硬化前に布および布の個々の糸に導電性インク207bを染み通らせ、導電性インク207bと布との間に強い結合を生じている。
図6および7はさらなる代替構造を示し、硬化前に布に導電性インク207cの層を染み通らせ(しかし個々の糸には浸入していない)、次いで、導電性インク209の第2の層(
図6)または封入シリコーン層211(
図7)を用いてコーティングされている。
【0134】
図8は、織布の近接断面図を提供し、導電性インク207dの単一層を用いてコーティングする前にポリマーの層213(「中間」層)で布をカバーしている。この場合、伝導性層207dは、下にある布支持体に間接的に結合されている。
図9は
図8に類似した構
成を示し、導電性インク207dを用いてコーティングする前にポリマー213の第1の層(中間体層)を布に浸透させ、続いてポリマー215のさらなる層(電気絶縁カバー層)を加えている。このようにして、導電性インク層207dはポリマー内に完全に封入される。特にこの実施形態において、ポリマー213およびポリマー215はともに熱可塑性ポリウレタンである。
【実施例0135】
実験結果
実施例1
実験の第1の組において、導電性インクを布に直接印刷する実現可能性を評価した。
【0136】
官能化グラフェンナノ小板(GNP)(Haydale Graphene Industries plc)を含むカーボンナノ粒子を含有する高いパーセンテージの導電性インクを、綿テキスタイルにバーコートして、印刷した場合にインクがまだ伝導性であるか評価した。
【0137】
テキスタイルを引き伸ばし、印刷プロセス中の伸びを最小にするためにテープを使用して適所に固定した。インクの単一層を塗布し、その後、試料を取り出し、オーブン中で乾燥した。乾燥したら、電圧計を使用して試料の伝導性を試験した。ある種の抵抗の存在は、インクが伝導性であることを証明した。試料をしわくちゃにし、次いで再試験した。試料は伝導性のままであった。
【0138】
これらの結果は、テキスタイルに伝導性カーボンインクを成功裡に印刷することができ、しわくちゃにする試験および引き伸ばしに耐え得ることを示した。
【0139】
実施例2
実験の第2の組において、パフォーマンスに対するカーボン充填率の効果を評価した。
【0140】
「より高い炭素含量」の加熱可能な布を、官能化GNP(Haydale Graphene Industries plc)を含むカーボンナノ粒子を含有する導電性インクを用いて綿布見本にバーコートすることによって製造した。インクをオーブン中100℃で乾燥し、次いで、さらなるインク層を用いてオーバープリントした。このプロセスを繰り返して、ポリエステル/綿ブレンド布(67%ポリエステル/33%綿)に3層状の加熱パッドを製造した。
【0141】
次に、炭素含量を減らすために導電性インクをポリエステル熱可塑性ポリウレタンポリマーで希釈し、「低炭素含量」の加熱可能な布を、「高炭素含量」の布と同じプロトコルを使用して製造した。
【0142】
両事例において、結果として得られた試料は、電気を通す可撓性の布であり、以下の抵抗値を有していた。
【0143】
【表1】
これは、より高い炭素含量のインクが、より低い炭素含量のインクより著しく伝導性であることを示した。
【0144】
実施例3
実験の第3の組において、測定した抵抗値に対する布支持体の効果を評価した。実施例2の「より低い炭素含量のインク」試料を作るためのプロトコルを、ポリエステル/綿布より薄く、低デニール繊維および低密度の綿材料を使用して繰り返した。表2に示すように、結果として得られた試料はかなり高い抵抗を示した。
【0145】
【表2】
実施例4
実験の第4の組において、抵抗に対する層数の影響を評価した。
【0146】
綿支持体にアイロンをかけ表面に固定し、その後、54~64メッシュを使用して、高炭素含量のインクを用いてスクリーン印刷をした。結果として得られたコーティングされた支持体をオーブンに100℃で5回通した。さらなる層を構築するためにこのプロセスを繰り返し、適宜、層間の位置合せ精度を保証するために注意した。次いで、試料のシート抵抗を、四探針法を使用して測定した。
【0147】
図10に示す結果は、層の数が増加するにつれてシート抵抗は低下し、1層と2層の試料間で抵抗の最も著しい低下があったことを示す。
【0148】
実施例5
実験の第5の組において、加熱パッドの抵抗率に対する、銀のトラックの効果を評価した。
【0149】
加熱パッドを、ポリエステル(100%ポリエステル)支持体またはポリエステル/綿ブレンド(66%ポリエステル/33%綿)支持体に形成した。5x5cmのブロック形の3、4または5層の導電性インクをスクリーン印刷することによってパッドを作り、各層を塗布した後、試料をオーブンに100℃で5回通した。電気接点を設けるために、銀のトラックを、ステンシル塗装方法によって正方形のブロックの反対末端に塗布した。結果として得られた加熱パッドの抵抗を
図11に示す。
【0150】
これは、加熱パッドへの改善された電子流により、銀接点の設置が試料の抵抗率を約8Ω低下させたことを示す。
【0151】
実施例6
実験の第6の組において、電気絶縁カバーを設ける効果を評価した。
【0152】
加熱パッドを、ポリエステル、ポリエステル/綿ブレンド(67%ポリエステル、33%綿)またはナイロン支持体に形成した。スクリーン印刷またはバーコーティングのいずれかを使用して、5x5cmのブロック形の多層の導電性インクを塗布することによりパッドを作り、各層を塗布した後、試料をオーブンに100℃で5回通した。加熱パッドに
電気接点を設けるために、銀のトラックを、ステンシル塗装方法によって正方形のブロックの反対末端に塗布した。最終的に、加熱パッドを覆っておよび/または加熱パッドの下にある布の裏面に、シリコーンまたはポリウレタンの電気絶縁層を塗布した。作製した正確な試料を表3に要約する。
【0153】
【表3】
次いで、試料に銀の接点を介して3V源から電力を供給し、熱画像カメラを使用して試料の温度をモニターした。ピーク温度を30秒毎に測定して試料の加熱パフォーマンスを評価した。結果として得られた抵抗値を
図12に示す。
【0154】
結果は、加熱器がすべて、電力供給の最初の30秒以内に3Vの電圧から35℃を超える温度に到達し、すべてが、最終的に90秒以内に37℃(人体温度-
図12に直線によって示す)の目標温度に到達したことを示す。温度上昇の速さは、布から形成された衣服が、有用な温度に比較的急速に到達するが、もし加熱パッドが心地悪いほど高温になれば、使用者が反応することができないほど急速ではなく、それによってやけどが起きる危険を減少させることを意味する。最も良好に動作する加熱器はすべてシリコーン封入され、4層以上のインクを有していた。熱画像カメラからの画像は、各加熱パッドにわたって比較的均一な温度分布を示した。
【0155】
次に、衣服が使用中に受ける可能性のある種類の歪をシミュレートするために、直径8cmの丸棒の周りを200回、試料を手による曲変形によって変形させた。次いで、抵抗値をもう一度測定し、変形前の値と比較して熱的性能への変形の影響を評価した。結果として得られた抵抗値を
図13に示し、変形前の値との比較を表4に示す。
【0156】
【表4】
加熱器の変形は、到達温度のわずかな上昇を示した試料6A以外は、到達最高温度のわずかな低下をもたらした。シリコーン封入した試料6Aおよび6D~6Fについて、変形は、加熱器にわたる温度プロフィールの均質性に対して効果をほとんど有しなかったが、均質性のわずかに大きい低下が試料6B~6Cに観察された。
【0157】
これらの結果は、単一または多層の加熱パッドを布に印刷することができること、および、そのような加熱パッドは適度の電圧の印加で人体温度近くの均質な温度を達成することができることを示す。結果はまた、弾性材料中の加熱パッドの封入が、熱的性能を改善し、変形に対する加熱パッドの堅牢性を改善することができることを示す。
【0158】
実施例7
実験の第7の組において、異なる印刷技法を使用する効果を評価した。
【0159】
布(100%ポリエステルまたは66%ポリエステル/33%綿ブレンドのいずれか)に、5cmx5cmx100μmのステンシルを使用して、導電性インクを用いて印刷した。インクをステンシルの空間内に付着させ、過剰のインクはステンシルを横切ってブロックを描くことにより除去し、次いで、インクをオーブン中130℃で5分間乾燥し、加熱パッドを形成した。接着テープを使用して引き伸ばした状態を保持しながら、布に印刷した。次いで、得られた硬化インクのブロックを、ブロックの反対側に沿って銀線を用いて印刷した。インク層はすべて良好な均質性を示し、引き伸ばした場合、良好な可撓性および亀裂に対する耐性を示した。
【0160】
異なる3種類の印刷を実行した。
(i)布の両側への手捺染:
導電性インクの第1の層を布に塗布し、130℃で5分間乾燥した。次いで、布をひっくり返し、布の反対側の第1の層に直接かぶさる導電性インクの第2の層を用いて印刷した。
(ii)インク浸漬技法:
スパチュラを使用してインクの厚い層をステンシル内の布に付着させ、布に5分間染み込ませ、過剰分を除去し、インクを乾燥した。
(iii)溶媒浸漬技法:
布をジアセトンアルコールに染み込ませ、まだ湿っている間に導電性インクを用いて印刷した。これは、導電性インクが印刷中に布に染み込むのを助け、その結果、導電性インクは布全体に深く染み通った。
【0161】
【表5】
銀線を介して加熱パッドを3Vの電源に接続した(両側に印刷した布の場合には、伝導性ブロックの1層のみをエネルギー源に接続した)。実施例6のように、電力の印加中に加熱パッドの温度をモニターし、
図14に示す結果が得られた。
【0162】
結果は、実施例がすべて3Vのエネルギー源から35℃を超える温度に到達することができることを示した。
【0163】
結果は、印刷前にインクまたは溶媒のいずれかを用いて染み込ませておいた布は、染み込ませなかったものより急速に加熱し、より高温が得られたことを示す。前と裏の両方に印刷した布は、表面の異なる側の層間のいかなる相互作用をも示すようには見えなかった。
【0164】
これらの結果は、印刷前にインクまたは溶媒のいずれかを用いて布を染み込ませると、結果として、布の全体の嵩が増加せず、機械的性質に悪影響を及ぼすことなくパフォーマンスが改善されたことを示す。
【0165】
本記載に開示した数的範囲に関して、通常の方法において、上限についての技術的判定基準は下限についての技術的判定基準とは異なる、すなわち、上限および下限は本質的に別個の提案であることは当然理解されよう。
【0166】
疑問を回避するために述べると、一般的な上記記載において、通常の手方で、加熱可能な衣服、布および寝具の異なる機能および上記方法に関する一般的な優先度および選択肢の提案は、それらが結合可能で矛盾がなく同一の文脈で提示される限り、異なる機能に対するそれらの一般的な優先度と選択肢の一般的な組み合わせの提案を構成することが確認される。
【0167】
衣服および寝具に関連して使用された上記用語は、英国の通常の英語用法に基づいており、読者である当業者には、米国などの他の英語圏において、ある種の上記品目に異なる名称が使われることがあることが理解されよう。