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2022-88459垂直カーボンナノチューブおよびリチウムイオンバッテリーの化学
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088459
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】垂直カーボンナノチューブおよびリチウムイオンバッテリーの化学
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220607BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/64 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022041260
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2018525660の分割
【原出願日】2017-01-20
(31)【優先権主張番号】62/286,075
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/286,083
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/287,497
(32)【優先日】2016-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/308,740
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】イザベル エム ダロレス
(72)【発明者】
【氏名】アジン ファイミ
(72)【発明者】
【氏名】コン ワン
(72)【発明者】
【氏名】アドリアヌス アイ アリア
(72)【発明者】
【氏名】ルチアーナ センドン
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ ガリブ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギー密度が大幅に改善された電気化学セルを提供する。
【解決手段】基材;前記基材で支持された負電極であって、該負電極は、アノード活物質が支持されるカーボンナノチューブの第一のアセンブリを含み、アノード活物質がカーボンナノチューブの第一のアセンブリの各ナノチューブを被覆している、負電極;前記基材で支持された正電極であって、該正電極は、カソード活物質が支持されるカーボンナノチューブの第二のアセンブリを含み、カソード活物質がカーボンナノチューブの第二のアセンブリの各ナノチューブを被覆している、正電極;および前記正電極および前記負電極の間に配置された電解質であって、電荷担体の伝導が可能な電解質を含み、前記カーボンナノチューブの第一のアセンブリと前記カーボンナノチューブの第二のアセンブリとが、互いに物理的に分離されている、電気化学セルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の活物質を組み込むカーボンナノチューブが支持される第一の基材を含むアノード

第二の活物質を組み込むカーボンナノチューブが支持される第二の基材を含むカソード
;および
第一の基材および第二の基材の間に電気的絶縁体として設けられる固形ポリマー構造体

アノードおよびカソードのそれぞれのカーボンナノチューブの間に電解質として設けら
れる別個の固形ポリマー
を含む、電気化学セル。
【請求項2】
第一および第二の基材には、ステンレス鋼が含まれる、請求項2の電気化学セル。
【請求項3】
電気化学セル製造にあたり、
第一の活物質を組み込むカーボンナノチューブが支持される第一の基材を含むアノード
を形成すること;
第二の活物質を組み込むカーボンナノチューブが支持される第二の基材を含むカソード
を形成すること;
前記アノードおよびカソード基材の間に密着するように構成される固形ポリマー絶縁体
を形成すること;および
アノード、カソードおよび固形ポリマー絶縁体をぴったりと合った関係に組み立てるこ

を含む、方法。
【請求項4】
固形電解質形状はフォトリソグラフィーによって形成される、請求項3の方法。
【請求項5】
アノードおよびカソードの間にポリマー電解質ペーストを充填することをさらに含む、
請求項3の方法。
【請求項6】
ポリマー電解質を固形状態に硬化させることをさらに含む、請求項5の方法。
【請求項7】
組立後にアノードおよびカソードの間を充填することをさらに含む、請求項5の方法。
【請求項8】
ポリマー電解質には、官能化ポリ(エチレングリコール)、リチウム塩、イオン液体、
およびグラフェンオキシドが含まれる、請求項5の方法。
【請求項9】
第一の活物質を組み込むカーボンナノチューブが支持される第一のセラミック基材を含
むアノード;
第二の活物質を組み込むカーボンナノチューブが支持される第二のセラミック基材を含
むカソード;および
アノードおよびカソードの間に設けられる固形電解質
を含む、電気化学セル。
【請求項10】
第一および第二の基材上にパターン化された金属をさらに含む、請求項9の電気化学セ
ル。
【請求項11】
セラミックはAl2O3である、請求項10の電気化学セル。
【請求項12】
フィラーとして機能化ポリ(エチレングリコール)、リチウム塩、イオン液体、および
グラフェンオキシドを含む、ポリマー電解質。
【請求項13】
電気化学セルを製造するにあたり、
フィラーとして機能化ポリ(エチレングリコール)、リチウム塩、イオン液体およびグ
ラフェンオキシドを含むポリマー電解質を電極間にペーストとして適用すること;および
ペーストを固形ポリマーに硬化させること
を含む、方法。
【請求項14】
シリコンを組み込むアノード;および
シリコンを組み込んだアノード上のポリ(エチレン)オキシドビス(アジド)固形電解
質界面(SEI)層
を含む、電気化学セルのアノード部分。
【請求項15】
シリコン活物質を支持し、およびポリ(エチレン)オキシドビス(アジド)に包まれた
カーボンナノチューブの第一のアセンブリを含むアノード;
第二の活物質を支持するカーボンナノチューブの第二のアセンブリを含むカソード;お
よび
アノードおよびカソードの間に設けられる電解質
を含む、電気化学セル。
【請求項16】
第二の活物質はイオウである、請求項15の電気化学セル。
【請求項17】
バッテリーアノードおよびカソードの少なくとも一方上に形成されるグラフェンおよび
ポリ(乳酸)(PLA)層を含む、電気化学セルの一部分。
【請求項18】
第一の活物質を組み込むカーボンナノチューブの第一のアセンブリが含まれるアノード

第二の活物質を組み込むカーボンナノチューブの第二のアセンブリが含まれるカソード

アノードおよびカソードの間に設けられる電解質;および
グラフェンおよびPLA複合体において包まれる活物質を支持する個々の一つのカーボン
ナノチューブを有するアノードおよびカソードの少なくとも一方
を含む、電気化学セル。
【請求項19】
第一の活物質には、シリコンが含まれ、および第二の活物質には、イオウが含まれる、
請求項1-11または18のいずれかの電気化学セル。
【請求項20】
リチウムイオンを含み、およびハウジングにおいて封入される、請求項19の電気化学セ
ル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、リチウムイオン(Li-イオン)電気化学セル(即ち、バッテリー)、特に
二次(即ち、再充電可能な)Li-イオンバッテリー(LiBs)に関する。
【背景技術】
【0002】
LIBsは電気エネルギーを蓄える卓越した手段となっている。二次電池の中で、LIBsは、
いくつかの顕著な利益、例えば、高い容量および重量エネルギー密度、長い貯蔵寿命およ
び操作のボーダー温度範囲(boarder temperature range)などのようなものを提供する
。LIBsの商業化により、ラップトップコンピュータおよび高性能スマートフォンの実現が
可能になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目下の商業上のリチウムイオンバッテリーの大部分は、正極またはカソードとしてのリ
チウム含有遷移金属酸化物、および負極またはアノードとしての炭素質材料(特にグラフ
ァイト)との組合せに基づく。そのように構成された、既存のLIBsの比エネルギーは、多
くの用途、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、およびスマートグ
リッドコミュニティシステムなどのようなものでは、電極材料の比電荷キャパシティが限
られているため、依然として不十分である。
【0004】
LIBsのエネルギー密度を大幅に改善するために、シリコンアノードおよびLi2Sカソード
の使用が構想された。シリコンは4,200mAh/gの理論電荷キャパシティを有し、それは、37
2mAh/gの理論キャパシティを有する目下のグラファイトアノードの10倍よりも高い。その
豊富さ、低コスト、および高い理論キャパシティのために、イオウ系材料は最も有望なカ
ソードの1つと考えられた。有害な遷移金属化合物と比較したとき、イオウはなおより一
層環境にやさしいと考えられる。
【0005】
シリコンアノードおよびLi2Sカソード化学は、1550Wh/kgの理論的比エネルギーを有す
るLIBをもたらし、それは既存のLIBsの理論的比エネルギーの4倍である。それにもかかわ
らず、イオウカソードおよびシリコンアノードには、それらの実用化が妨げられる欠点が
ある。
【0006】
イオウの主な欠点は、高溶解性ポリスルフィド種が充放電サイクル中に液状電解質にお
いて形成されることである。その結果、いわゆる「シャトル効果」が生じ、それは陽イオ
ウ電極から活物質を除去し、およびまたアノード表面領域を損傷または不活性化する。さ
らに、イオウ系バッテリーは、低い電子伝導性を、付随する非効率性と共に有する。
【0007】
シリコーンアノード使用の欠点は、サイクリングの際に生じる大きな容量変化(>400%
)である。この問題は、集電体からのシリコンの破砕、亀裂および断絶を引き起こし、サ
イクリング中のキャパシティの損失につながる。それに加え、容量変化はまた、固形電解
質界面(SEI)フィルムの不可逆的および連続的な形成を引き起こす。この表面フィルム
は、アノード表面を不動態化し、および電解質溶液のさらなる分解を防止する。しかしな
がら、電気化学的サイクル中にシリコンが経験する大量の変化は、SEI層を連続的に弱化
させ、および破砕し得、各サイクル毎に新鮮なシリコンが電解質に露出する。
【0008】
ナノ構造(例えば、ナノワイヤ)支持体をリチオ化/脱リチオ化する際に、活物質を粉
砕から保護する努力は、その関連で有効であることが証明された。しかしながら、そのよ
うな作用は、ナノ構造材料の表面積が増大するため、サイクリングの際のSEIの持続性の
破壊/再形成に関連する問題を増大させる。シリコン粒子上にコーティングされた薄い炭
素層は、SEIの機械的安定性を高め、およびアノードの寿命を改善することが示唆された
。しかしながら、薄い炭素層の形成は、炭化ケイ素の形成をもたらす高温アニーリングを
要し、シリコンの一部分を不活性にする。
【0009】
現在まで、全体的な解決策は特定されていない。むしろ、上述した問題は、シリコンア
ノードおよびイオウカソードLIBsを様々に制限し、それらが、急速なキャパシティフェー
ディング、乏しいサイクル寿命、低いシステム効率および/または大きな内部抵抗に広く
悩まされることになる。
【0010】
LIBsが安全性の問題を提起することがあることも知られる。特に、エネルギーがますま
すセルに充填されるとき(シリコンアノードおよびイオウカソード化学でのように)、安
全性が優先される。多くのLIBsは目下、有機溶媒電解質を用い、それらは揮発性で、およ
び可燃性である。したがって、過充電、内部短絡、物理的損傷、または他の故障メカニズ
ムによってセルが過熱される場合、それが熱暴走を起こし、それは火災や爆発の重大な危
険につながることがある。これらの電解質の安全性を改善する試みは、ポリマーまたはセ
ラミック/ガラス固形電解質を用いて固形状態のバッテリーを作り出すことに焦点が当て
られた。
【0011】
最も有望な結果は、ポリ(エチレンオキシド)およびLi塩のブレンドに基づくシステム
で得られた。しかしながら、これらの材料は非常に乏しいイオン伝導性しか有さず、それ
はそれらの可能性を制限する。ポリマー電解質へのイオン液体またはセラミックフィラー
の添加は、イオン伝導性の顕著な向上を示した。5×10-4 S/cm程度の高い導電性値が室温
で達成されたが、これは液状電解質と競合するには低すぎるため、それらの適用が高温で
の操作に制限される。また、イオン伝導性の上昇は、ポリマー電解質の機械的特性を低下
させることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここでの実施形態は、前述の性能および/または安全性の考慮事項に様々に対処する。
そのようなものとして、それらは、以下の点を考慮して、記載されたような、または当業
者には理解されるような利益を提示する。
概略
【0013】
第一のセットの実施形態は、三次元(3D)バッテリーアーキテクチャーのための固形ポ
リマー電解質を包含する。本ポリマー電解質は、官能化ポリ(エチレン)オキシドまたは
ポリ(エチレングリコール)で、それは官能化ポリ(エチレン)オキシドに、その分子量
が20,000g/mol(何れの場合も、PEG)未満であるときに言及されるためで、リチウム塩、
イオン液体、およびフィラーとしてのグラフェンオキシドの組合せである。いわゆる「3D
」バッテリーは、それらのアーキテクチャーを、米国特許出願公開第(USPPN)2015/0010
788号において記載されたものと共有することができ、それらは参照によりここに組み込
まれる。
【0014】
以下に詳述する他のアーキテクチャーおよび/または関連する製造方法も同様に使用す
ることができる。これらの実施形態はまた、参照によりここにもまた組み込まれる’788
公報に記載されるシリコンおよびイオウ(すなわちSi/S)ならびに他の関連する化学物質
を利用または共有してもよい。
【0015】
しかしながら、構成されたように、本ポリマー電解質は、本システムにおいていくつか
の重要な役割または機能を果たす。すなわち、それは、優れたバッテリー性能を提供する
ために、実施形態に依存して、単独でまたは組み合わせて以下の手段を提供する:(1)
アノードおよびカソードの間のLiイオン輸送;(2)アノードおよびカソードの接触を回
避する電極間の物理的障壁(そうでなければ電気的経路の短絡をもたらす);(3)ポリ
マー電解質が揮発性および可燃性の有機溶媒を含まないように電池の安全性を確保するこ
と;(4)電極の緩衝応力および歪みによる電極の容量変化に適応すること;(5)ポリス
ルフィド溶解およびポリスルフィドシャトル機構を防止すること;および(6)アノード
表面上に安定なSEIを、Si表面に結合し、およびそれによって安定化される可能性がある
ポリマーと共に形成することである。
【0016】
第二のセットの実施形態は、3Dバッテリー生産のための製造方法またはプロセスを包含
する。一つの方法では、インターレースまたはインターリーブされたアノードおよびカソ
ード(すなわち、負電極および正電極)集電体構造を分離するために、マイクロスケール
ポリマー構造が製造される。介在したマイクロ構造ポリマー要素(群)の配置は、電気的
短絡を回避する。
【0017】
別の方法では、寸法的に安定なセラミック基材が生成され、それは、インターレースま
たはインターリーブされたアノードおよびカソードが、垂直配向の(縦に整列したとも言
う)カーボンナノチューブ(VACNT)の成長用に、導電性成長基材(例えば、ニッケル)
をその上に適用する際に提供されるようにするためである。一旦VACNTsにて電気的に活性
な材料を組み込みおよび/または堆積させると、電気的短絡なしに(上述したマイクロ構
造の絶縁の有無にかかわらず)セルを組み立てることができ、残りのギャップは液状また
は固形電解質で満たされる。
【0018】
第三のセットの実施形態は、シリコンアノードのサイクル中に安定なSEIを形成するた
めに、ポリ(エチレン)オキシドビス(アジド)(PEO-N3)を使用する組成物および方法
を包含する。高いLiイオン伝導性およびシリコン表面(群)への良好な結合により、ポリ
マー層は良好なバッテリー性能を可能にしながらシリコンを保護する。具体的には、薄い
層(例えば、約10nmないし約100nmの間から)は低い抵抗性(例えば、約103から約104Ω.
cmまで)を提供し、バッテリー性能はほとんど影響を受けず、その一方でポリマーは電解
質分解を有効に防止する。これらの実施形態は、VACNTアーキテクチャーに関連して有利
に採用され-下記にさらに詳述されるように3D配置、または2次元(2D)配置で採用され
てもよい。
【0019】
第四のセットの実施形態は、グラフェンポリ(乳酸)(PLA)複合体がセルのカソード
および/またはアノード材料を覆う組成物および方法を包含する。第三のセットの実施形
態の場合と同様に、これらは、VACNTアーキテクチャーに関連して有利に使用され-2Dま
たは3D配置で採用されるか問わない。
【0020】
主題の化学、アーキテクチャー、ハーフセル(半電池とも言う)および/またはそこか
ら構成される個々のまたは単体のセル、セルのグループ、キットで、それにはそれらが含
まれ(アセンブリ(集合体とも言う)を伴うか、または伴わずに)、使用および製造の方
法は、すべてが本開示の範囲内に含まれる。同じもののいくつかの態様は、上記で説明さ
れ、およびより一層詳細な議論は、以下に図に関連して提示する。ここに記載する主題の
他のシステム、デバイス、方法、特長および利益は、以下の図および詳細な記載を検討す
ることにより、当業者には明らかになるであろう。
【0021】
すべてのそのような追加のシステム、デバイス、方法、特長および利益は、この明細書
内に含まれ、ここに記載される主題の範囲内であり、および添付の請求の範囲によって保
護されることが意図される。例示的な実施形態の特長は、請求の範囲におけるそれらの特
長の明示的な記載がない限り、添付の請求の範囲を制限するものと決して解釈されるべき
ではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここに記載する主題の詳細は、その構造および操作の双方に関して、添付の図面の検討
によって明らかになり得、そこでは、同様の参照番号は同様の部分を指す。図面において
構成要素は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに主題の原理を例示することに重点を置
く。さらに、すべての実例は概念を伝えることが意図され、そこでは、相対的な大きさ、
形状および他の詳細な属性は、文字通りや、または正確にではなくむしろ模式的に例示さ
れ得る。
【0023】
図1図1A-図1Cは、3Dバッテリーアーキテクチャーの実施形態の上面図、側面図および斜視図である。
図2図2Aおよび図2Bは、それぞれ、図1A-1Cの実施形態についてのペーストおよび硬化した(as-cured)固体形態の電解質である。
図3】固形ポリマー電解質の実施形態の導電性を比較するグラフである。
図4】ここでの様々な実施形態に適用可能な電極(アノードまたはカソード)構成の詳細な垂直断面図である。
図5】電極要素の光学顕微鏡図である。
図6】マイクロ構造絶縁要素のより一層高い倍率での挿入図(インセットとも言う)の詳細を伴う光学顕微鏡図である。
図7図5および6においての要素のアセンブリを示す光学顕微鏡図である。
図8図5-7に関連して記載される構成要素を含む実施形態の製造方法を詳述するフローチャートである。
図9図9Aおよび9Bは、それぞれ、その上にニッケル集電体を堆積する前および後のセラミック基材の上面図である。
図10図9Aおよび9Bに関連して記載される構成要素を含む実施形態の製造方法を詳述するフローチャートである。
図11】別の実施形態におけるSEI生産またはPEO-N3による製造を詳細に示すフローチャートである。
図12】G/PLAトラップを伴うか、または伴わないS-VACNT電極の性能のサイクリングを示すグラフである。
図13図13Aおよび13Bは、それぞれ、グラフェンPLA複合体を用いたポリスルフィドトラップ型カソードおよびアノードの生産を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な記載
様々な例または実施形態を以下に説明する。これらの例を非制限的な意味で参照し、そ
れはそれらが、デバイス、システム(系とも言う)および方法のより一層広範に適用可能
な態様を例示するために提供されることに留意すべきだからである。これらの実施形態に
対して様々な変化を為し得、および様々な実施形態の真の精神および範囲から離れること
なく等価なものを置換することができる。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセス
、プロセスアクト(プロセス行為とも言う)(群)(群は複数もあり得ることを示す)ま
たはステップ(群)を本発明の目的(群)、精神または範囲に適合させるために、多くの
修飾を行うことができる。そのような修飾はすべて、本開示の範囲内にあることを意図す
る。
【0025】
本主題を詳細に説明する前に、この開示が記載された特定の例の実施形態に制限されず
、それ自体、もちろん、変えられ得ることが理解されるべきである。ここに使用する術語
は、特定の実施形態を説明するだけの目的のためのものであり、および制限することを意
図するものではなく、それは本開示の範囲が添付の請求の範囲によってだけ制限されるか
らであることも理解すべきである。
【0026】
ここに提供される任意の実施形態に関して説明されるすべての特長、要素、構成要素、
機能、行為およびステップは、任意の他の実施形態からのものと自由に組み合わせ可能で
あり、および置き換え可能であることが意図される。一定の特長、要素、構成要素、機能
、またはステップがただ一つだけの実施形態に関して記載される場合、そのときその特長
、要素、構成要素、機能、行為またはステップは、明確に記載されない限り、またはさも
なければ不可能でない限り、ここに記載のあらゆる他の実施態様と共に使用することがで
きる。したがって、この段落は、請求の範囲の導入のための先行する基礎および書面によ
る支持としてはたらき、どんなときにも、それは異なる実施形態からの特長、要素、構成
要素、機能、行為およびステップを組み合わせるか、または、一の実施態様からの特長、
要素、構成要素、機能、行為およびステップを別のもののそれらと置き換え、それは、以
下の記載が、特定の例においてそのような組合せまたは置換が可能であることを明示的に
述べていない場合でもそうである。逆に、任意の随意な要素(例えば、上記で重大である
と示されない任意の要素)を除外するために、請求の範囲をドラフトすることができる。
そのようなものとして、この記述は、請求項要素の暗唱、または任意の他のタイプの「否
定的な」制限の直接的な使用と関連して、または暗に、任意の与えられる要素に関する「
からなる(consisting)」という用語を使用することによる含意によって「専ら」、「だ
け」およびその他同種類のものなどのような排他的な術語の使用のための先行する基礎と
して役立つことを意図する。すべての可能な組合せおよび置換えまたは排除の明示的な暗
唱は、過度に負担となり、およびそれによりカバーされる。
【0027】
実施形態の第1のセット
上記に概略した第1のセットの実施形態では、Si/S LIBバッテリー化学に基づくことが
できる3Dバッテリーアーキテクチャーと共に使用するために「高性能」ポリマー電解質を
記載する。ポリマー電解質(高分子電解質とも言う)は、フィラー(充填剤とも言う)と
して官能化ポリ(エチレングリコール)(PEG)、リチウム塩、イオン液体(イオン性液
体とも言う)、およびグラフェンオキシド(酸化グラフェンとも言う)の組合せである。
【0028】
全体的な組合せは、シリコン(ケイ素とも言う)およびイオウ(硫黄とも言う)の有益
なエネルギー特性を活用し、その一方、寿命およびコストの問題も考慮に入れる。また、
ポリマー電解質は、有毒な、および不安定な材料の不存在、ならびに可燃性有機溶媒の不
存在のため、安全性を提供する。
【0029】
図1A-1Cは、ポリマー電解質を用いる3D Si/Sバッテリー10の基本的構成を例示する。カ
ソード12およびアノード14は、インターレース様式において組み立てられるとき、双方の
電極要素(即ち、アノードおよびカソード)が同じ平面になるように、櫛の「ティース(
歯とも言う)」または交互の「フィンガー(指とも言う)」を有する櫛タイプ立体構成に
おいてパターン化される。ポリマー電解質16は、電極表面の間の空間を充填する(以下に
参照するように任意の随意なマイクロ(微細とも言う)構造絶縁性の特色と共に)。
【0030】
図1Aおよび図1Bに示すような十分または完全なアセンブリ(集合体とも言う)では、こ
れらの要素はケーシング18内に収容またはセットされ、およびVNCTsがセットされる集電
体(電流コレクタとも言う)部分20をさらに含むことができる(この関連において、「セ
ット」は、成長、付着またはさもなければそれに取り付けることを意味する)。
【0031】
示されるように、電極は同じ平面内でインターレースされる。代替的に、それらは、互
いに逆方向にまたは対向して設置されてもよい。
【0032】
前者の配置は、電極12および14の表面または要素をインターフィットのとき相互に非常
に近接して置き、従ってイオンの拡散長さまたは距離が減少される。介在されたポリマー
電解質16は、アノードおよびカソードの間のLiイオン輸送を保証し、および電極要素間の
物理的バリアとして作用する。
【0033】
電解質は、フィラーとして官能化ポリ(エチレングリコール)(PEG)、リチウム塩、
イオン液体、および酸化グラフェンの組合せを含むか、または(随意に)それらからなる
。電解質16は、図2Aにおいて示すように、室温でペーストとして調製される。それは、こ
のスラリーまたはペースト形態において3Dアーキテクチャーのチャネル22にて導入するこ
とができる。それは次に硬化されるか、またはさもなければ物質の固形状態に固くされる
【0034】
架橋後、組成物は、ペーストから伸縮性の独立フィルムとして機能することができる状
態に変換するその意図された機械的特性を発現する。バッテリーにおいてチャネルの外側
で、これは図2Bに見ることができる。
【0035】
ポリマー電解質の調製プロセスおよび電極システムへのその組込みは、有機溶媒を使用
せずに達成することができる。一旦目的の電極がモールドに組み立てられると、ポリマー
電解質を組み込むことができる。
【0036】
1つの例では、すべての化合物は、約60℃またはそれよりも高い(約60℃以上とも言う
)(例えば、最大値として約80℃までで、そこでは、随意に精巧に作られた会合された成
分のアジド官能基が分解し始めるより下まで)で、混合物が均質になるまで一緒に混合さ
れる(すなわち、約60℃未満のポリ(エチレングリコール)の低融点を利用する)。次に
、混合物を図1Cに見られる電極システム24の上部に注ぐ。
【0037】
その流動性のために、少なくとも約60℃の温度で、ポリマー電解質混合物は電極システ
ムに注入することができる(is able infuse into)。このプロセスは、バキュームまた
は不活性(例えば、希ガスまたはN2)雰囲気下で行うことができる。
【0038】
続いてポリマー電解質を硬化させる。紫外線(UV)光、炉またはオーブンの熱および/
またはマイクロ波エネルギーによる硬化は、ポリマーの架橋および機械的強度の顕著な増
加をもたらす。ポリマー電解質の機械的特性(例えば、可撓性、弾性および/または変形
性)は、成分比を変動することによって最適化することができる。実例の化合物には、y
モル比EO/Liおよびxモル比BMP/Liを有するPEOyLiTFSIxBMPTFSIが含まれ、式中、PEO=ポリ
(エチレン)オキシド、LiTFSI=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)リチウム塩およ
びBMPTFI(イオン液体)=1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルス
ルホニル)イミドであり、およびYは10から20まで、およびxは0から4まで変動することが
できる。x=0を伴い、ポリマー電解質フィルムは粘着性がなく、剛性で、および伸縮性で
はない。図3に示される導電性について試験されたそのような化合物の例を以下のテーブ
ルに示す:
【0039】
【表1】
いずれにしても、選定された材料は相乗的に作用する。
【0040】
すなわち、硬化の際、PEGの官能基は架橋を受け、その結果、機械的特性(上記のよう
な)が顕著に増加する。異なる組合せの塩(例えば、上記のもの)および/またはイオン
液体(例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル
)イミド(EMI-TFSI)、N-メチル,N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタン
スルホニル)イミド(MPP-TFSI)、N-ブチル,N-プロピルピロリジニウムビス(トリフル
オロメタンスルホニル)イミド(BMP-TFSI)、N-ブチル,N-プロピルピロリジニウムトリ
ス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート(BMP-FAP)およびN-ブチル,N-プ
ロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(BMP-FSI)および/またはここ
に参照することによりその全体において組み込まれる米国特許出願公開第(USPPN)20150
380767号に記載されているようなもの)の組込みは、ポリマー電解質のイオン伝導性を著
しく高める。グラフェンオキシド(GO)シートは、優れた機械的特性を有し、およびポリ
マー電解質の引張強さを増加させるPEGと強く相互作用する。さらに、GO酸素基はイオン
輸送を促進し、およびイオン伝導性を改善する。したがって、この特定のポリマー電解質
は、非常に良好な機械的特性および良好なイオン伝導性の双方を所有する。
【0041】
ポリマー電解質のいくつかの組成物のイオン伝導性の例(上記のテーブル1に示す例A-D
)を、温度の関数として図3に示す。示されるように、1mS/cmに近いイオン伝導性は室温
で達成することができ、それは固形電解質にとって高いと考えられる。比較のために、ガ
ラスセラミック電解質は、10-5ないし10-4S/cmの範囲においてイオン伝導性を有し、およ
びPEOベースの電解質は、10-5S/cmの範囲において伝導性を有する。
【0042】
さらに、導電性は、典型的な液状電解質、例えば、エチレンカルボナート/ジメチルカ
ルボナートにおける慣習的な1Mリチウムヘキサフルオロホスファート(EC/DMC中1MのLiPF
6)などのようなものより約1桁低いままである。選定されたバッテリーアーキテクチャー
および随意のSi/S化学物質とともに、非常に良好な性能を有する二次電池である(例えば
、以下に詳述するようである)。
【0043】
3Dアーキテクチャーは、電解質を通して活物質(群)間の短いイオン輸送長さを可能に
する。実例の距離(以下による)は、アノードからカソードへの迅速なイオン輸送をもた
らし、および逆もまた同様である。導電性の異なる電解質(すなわち、対象ポリマー電解
質を用いて1mS/cm、1MのLiPF6液状電解質を用いて10mS/cm)を有する様々なインターレー
ス(組み合わせるとも言う)電極の「フィンガー」幅において構成された500μm高さのVA
CNTsを有する3D Si/Li2Sバッテリーアーキテクチャーを考え、以下の値をモデル化した:
【0044】
【表2】
あるいはまた、それぞれの固形電解質の選択肢を有する与えられた厚さの2D Si/Li2Sバ
ッテリーアーキテクチャー(すなわち、対向する電極面を有する)を考慮して、以下の値
をモデル化した:
【0045】
【表3】
いずれの場合も、得られた値は、25μmの電解質の厚さを含み、電解質の厚さが3Dの場
合においてフィンガー間のギャップであり、および電極の厚さが2Dの例の場合でテーブル
3において代表されるCNTの高さに等しいモデルについてであった。
実施形態の第2のセット
【0046】
3D電極アーキテクチャーおよびそれらの製造のためのプロセスが(必ずしもそうとは限
らないが)、上記の固形電解質に関連して使用するために企図される。電極配置はバッテ
リーを作成する際の重要な考慮事項の1つである。2Dジオメトリーを備えた目下のLi-イオ
ンバッテリーは大キャパシティを達成するために大きなフットプリント領域を必要とし、
それに対して、3Dバッテリーアーキテクチャーは面外寸法を使用する利益を有する。この
ことは、与えられたフットプリント領域内の電極材料の量を増加させることによって面積
キャパシティ(areal capacity)を増加させることができる。また、より一層短いイオン
拡散距離を有するより一層利用しやすい表面を可能にすることによって、電気化学的特性
を改善することもできる。
【0047】
実例の電極アーキテクチャーを図4において示す。シリコン26およびイオウ28は、活性
電極材料を提供することができる。VACNT構造30は、スキャフォールド(足場とも言う)
および(随意の)グラフェンエンクロージャー(グラフェン封入とも言う)32をそれぞれ
提供する。図1A-1Cにおいて示す構成で採用するとき、これにより、充電および放電サイ
クル中に、バッテリー化学物質が自由に膨張および収縮することが可能になる(例えば、
シリコンおよびイオウ)。
【0048】
ここでの実施形態は、高アスペクト比の電極要素、例えば、図1A-1Cおよび4に示すもの
などのようなものを用いた生産のための2つの新しい3Dバッテリー製造プロセスを含む。
「高アスペクト比」によって、意味されるものは2および約25の間であり、そこでは、最
大VACNTの高さが、約25から約200μmまでの与えられたフィンガーの幅を伴う約500μmで
あってよい。
【0049】
対象のプロセスは、各電極の分離し、および独立した調製を可能にする。これは、異な
るアノードおよびカソード活物質を各VACNTアレイに組み込むことが異なる手法に関係す
るため、有利である。
【0050】
双方のプロセスにおいて、カソードおよびアノード構造は、電極が交互のアノードおよ
びカソードと互いにかみ合うことを可能にする特定の構造においてパターン形成される。
この構成の例を図1A-1Cおよび5-7に示す。
【0051】
組み立てられるとき、電極は同じ平面内にある(随意に、それらの基材支持表面と共に
)が、しかし、互いに接触することなく位置される。電極は、充放電サイクル中の容量変
化によって誘発される応力および歪みに適応するために(すなわち、Si/S化学でも)、図
1Cおよび4に示すように、それらの間に十分なチャネル空間またはギャップ22を有し、そ
の一方、高い出力密度は、短い電子およびイオン輸送長さを、活物質において(典型的に
は100μm未満)および電解質において(典型的には100μm未満、および好ましくは約30μ
mまで下に)維持することによって達成され得る。
【0052】
これらの実施形態では、含まれる電流コレクタの形状は、カソードおよびアノードの双
方の形状を決定する。製造プロセスは、電流コレクタを分離し、材料の単体からのそれら
の機械加工によって開始することができる。非接触高速レーザーまたは放電機械加工(ED
M)技術を用いて、正確な電極を作成することができる。あるいはまた、個々の(対して
、対形成された)部分を機械加工し得る。
【0053】
図5に示すように、組立てバッテリー構造において集電体(群)20として、ニッケル(N
i)および触媒(示していない)で被覆されたステンレス鋼(SS)を使用することができ
る。この例では、各集電体「フィンガー」要素は、長さ1.44cmおよび幅335μmであり、お
よび約30μmのインターリーブ(混ぜ入れるとも言う)部分の間のチャネル22のために構
成される。
【0054】
特に、ニッケル(Ni)は、触媒特性またはその他の点で望ましい場合、切断の前または
後にステンレス鋼上に(よく知られる微細加工技術、例えば、リソグラフィー、物理蒸着
(PVD)または電気メッキなどのようなものを用いて)堆積させることができる。触媒の
添加により、VACNT足場(図5において示していない)は次いで、パターン形成された電流
コレクタ上にCVD堆積技術によって直接成長させられる。SiおよびS(またはLi2S)は、各
電極上のVACNT足場中に別々に組み込まれてもよい。次に、Si/VACNTおよびS/VACNT(また
はLi2S/VACNT)をラップまたはコーティングするために、グラフェン(またはグラフェン
およびPLA複合体)を使用することができる。特に、VACNT足場の使用は、それらの内部電
気抵抗をエスカレートさせることや、または出力密度に影響を及ぼすことなく、シリコン
およびイオウ活物質の非常に厚いフィルム(膜とも言う)(例えば、数mmまで)の使用を
可能にする。
【0055】
アセンブリ(集合とも言う)の際、電流コレクタ部分の間の電気的絶縁のために、微細
構造ポリマー要素(群)を使用することができる。フォトリソグラフィー技術は、エポキ
シベースのフォトレジストを使用して微細構造の「モールド」を製造するために用いるこ
とができる(例えば、SU-8/2002/2100またはSU-8/2002/2150)。この要素は、アノードお
よびカソードを分離するために使用される(例えば、上述の30μmのチャネルまたはギャ
ップの例に適合する)。フォトリソグラフィープロセスは、フォトレジストパターニング
のために使用され、概して、スピンコーティング、ソフトベーク、近UV曝露、現像、およ
びポストベークを含む。
【0056】
SU-8微細構造は、ガラスまたは酸化ケイ素基材または任意のタイプの非導電性基材上に
形成し得る。基材への良好な付着および全体的な高アスペクト比の微細構造(例えば、約
5ないし約25のオーダーで)のために、SU-8/2002をベース層として使用し、続いてSU-8 2
100または2150を適用することができる。
【0057】
図6は、リソグラフィー技術によって作成された酸化ケイ素ウェハ上のSU-8微細構造素
子40を示す。ギャップ22に収まる各「ライン(線とも言う)」の幅は10μmであり、およ
び全体の厚さは約250μmである。この厚さは、約25μmないし約250μmの電流コレクタ20
の厚さと協調する。言い換えれば、図7に示すように位置され、または据え付けられたも
のである場合、微細構造要素または要素群は、典型的にはステンレス鋼電流コレクタの厚
さと一致するように、電気的短絡から電極基材または電流コレクタを絶縁する。さらに、
ポリマー微細構造または微細構造要素40は、電極の基部を単独に分離する。それらの相互
(平面)表面上、電解質はVACNTs30および関連する活物質26、28および/またはエンケー
シング(包囲体とも言う)32を分離する。SU-8材料要素40の例の電気抵抗は2.8×10 16Ω
.cmである。
【0058】
図8は、上記に関連するプロセスを詳細に示す。プロセス100は102にて開始される。作
用の一つのラインに沿って、104にて、上記のモールドの微細構造要素(群)が参照され
る。
【0059】
他のラインに沿って、電流コレクタ部分が106にて、随意に、上述したように切断され
る。108にて、VACNTsは基材または電流コレクタ電極部分上で成長する。
【0060】
アノード「側」またはバッテリーの一部分について、SiをCNT足場において110で組み込
むことができる。カソード側用に、そのCNTsにおいて112でLi2Sを組み込むことができる
【0061】
114では、アノードおよびカソードは、微細構造「モールド」要素(群)と一緒に組み
立てられる。116にて、このサブアセンブリは、上述のように(または他の方法で)ポリ
マー電解質で満たされ、および/またはそこに封入される。例示していないが、次いでハ
ウジングおよび様々な電気的接続を(例えば、図1Aおよび1Bに関連して例示するように)
適用することができる。
【0062】
このセット(設定とも言う)の実施形態の別の例では、製造プロセスは、レーザー切断
または他の方法によって、規定されたパターン(例えば、前述の「櫛」または「ブラシ」
形状)を用いて、セラミック(例えば、Al2O3)基材を切断することを包含する。そのよ
うな取り組みは、互いに挿入されるセラミック基材片50、52と共に図9Aに例示される。図
9Bは、ニッケル電流コレクタ20の材料堆積後のセラミック基材の2つの部分を示す。セラ
ミックまたは非導電性ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのような
ものを基材として使用することは、次の:1)寸法安定性、2)切断からのゆがみに対する
抵抗性、3)より一層微細な特長分解能(feature resolution)を達成する能力および/ま
たは4)熱影響ゾーンがないことを含む潜在的な利益を提供する。
【0063】
再び、VACNT足場は次に、CVD堆積技術によって、パターン化された電流コレクタ(群)
上に成長させることができる。SiおよびLi2Sはまた、切断された電極の各側にてVACNT足
場中に個別に組み込むこともできる。次に、グラフェンはVACNTsをラップまたはコート(
cote)するために用いられ得る。最後に、上記のように、電極(カソードおよびアノード
)は互いに挿入される。
【0064】
より一層詳細には、図10で、一旦プロセス120が122にて開始すると、それは124にてセ
ラミック基材を切断することを含む。基材は次いで、金属(例えば、ニッケル)を用いて
コーティングまたはパターン化される。128において、VACNTsは、パターン化された金属
上に成長され、それはセラミック基材にわたり電流コレクタとして働く。
【0065】
上記のように、活物質が、VACNTsにおいて、130および132にて組み込まれる。随意に、
134にて、負荷されたVACNTsは、グラフェンフィルムにおいて336および138にて封入され
てもよい。
【0066】
アノードおよびカソードは次いで、140で(微細構造モールドの分離を必要とせずに)
組み立てられ、および142で(随意に)ポリマー電解質で充填される。上記のようにして
、ポリマー電解質を次に硬化させることができる。さらに、電極は、上記のようにカプセ
ル封入されてもよく、および/または他の最終的なバッテリー製造行為またはステップ、
例えば、構造を包むこと、等などのようなものが完了してもよい。
実施形態の第3のセット
【0067】
第3のセットの実施形態は、ポリ(エチレン)オキシドビス(アジド)(PEO-N3)ポリ
マーを用いてシリコンアノード上に予め形成された安定なSEIを生成することを含む(例
えば、図4においてアノード14上のコーティング32におけるようである)。そのようにし
て製造されたシリコン表面26上の薄い(例えば、約2nmおよび100nmの間の)保護層は、高
性能で、および良好なサイクル寿命(good cyclability)のリチウムイオンバッテリーに
寄与する(例えば、理論値の80%のキャパシティを維持することが10サイクルを超えて得
られた)。
【0068】
適用(例えば、以下にさらに記載するように)、および硬化させると、ポリマーのアジ
ド官能基は高度に反応性のニトレン(ナイトレンとも言う)ラジカルに変換され、ポリマ
ーの架橋を、およびその機械的特性の著しい増加をもたらす。これらの機械的特性は、ポ
リマーマトリクス中にグラフェン、イオン液体、または有機低分子の小量(例えば、全体
組成の約1ないし約2重量%)を組み込むことによって増強することができる。したがって
、ポリマー層は、シリコン電極の容量変化に適合するのに役立つことができる(すなわち
、それは電極の応力および歪みを緩衝する)。
【0069】
アジド基の別の重要な特長は、それらがUV照射を受けるとき、シリコン表面に結合する
それらの能力である。この特長は、シリコン表面を保護し、および各サイクルにおいて電
解質のさらなる分解を防止する。一緒になって、これらの特長または態様は、シリコンア
ノードのサイクリング(循環とも言う)中に安定なSEIを形成するポリマー層を提供する
。本対象のポリマーはまた、高いリチウムイオン伝導性(例えば、約1mS/cm)を提供する
。特に、ポリ(エチレン)オキシドベースのポリマーは、それらのよく知られる高いイオ
ン伝導性のために、固形状態のリチウムイオンバッテリーにおいて広く使用される。した
がって、ポリマー層はシリコン表面を保護する一方、それはまた、アノード材料への、お
よびそれからのリチウムイオン輸送を可能にする。
【0070】
高温(例えば、約80℃以下)を適用することなく、図11において例示するように、ポリ
マー層を形成するためのプロセス150を達成し得る。具体的に、152において、PEO-N3を有
機溶液にて溶解する。次いで、154において、シリコンアノードをPEO-N3溶液中に浸漬被
覆する。156にて、薄い(例えば、約10μmないし100μm、より一層好ましくは10μmない
し20μmの)ポリマー層が続いて硬化される。UV光、対流熱(例えば、約250℃にて)また
はマイクロ波を硬化のために使用することができる。
実施形態の第4のセット
【0071】
さらに別のセットの実施形態では、いわゆる「ポリスルフィドトラップ」がリチウムイ
オウバッテリー用に生産される。実例のリチウムイオウセルは、リチウム含有アノード、
カソードおよびリチウム含有アノードとイオウ含有カソードとの間のセパレータを含む。
活物質の損失を防止し、およびポリスルフィドのアノード側への移動を停止するために、
イオウ活物質28の電極(カソード)12を、グラフェンおよび熱可塑性ポリマー(例えば、
ポリ(乳酸)(PLA))複合体層32を用いて図4におけるようにカバーする(少なくとも部
分的に)。グラフェンおよびPLAの複合体層は効果的なリチウムポリスルフィドトラップ
を示し、さもなければバッテリー内で生じるであろうシャトル機構(すなわち、電解質に
おけるリチウムポリスルフィドの溶解)を防止する。イオウバッテリーにおける乏しいサ
イクル寿命、低い比キャパシティおよび低いエネルギー効率をもたらす以前の問題は、イ
オウと、グラフェンおよびPLA複合体で被覆またはカバーされたVACNTsとの複合体を含む
カソードにより対処される。VACNTsは、Sベースのカソードの導電性を高めるために採用
されるが、その一方、グラフェンおよびPLA複合体は、ポリスルフィドを助け、またはそ
の電解質への溶解を全体で防止し、およびグラフェンおよびPLAのエンクロージャー内の
イオウ粒子の破壊を最小にする。別な方法で述べると、グラフェンおよびPLAは、グラフ
ェンシートの柔軟な構造のために、ポリスルフィドにとって理想的なトラップである。同
様に、グラフェンシートは、剛性および強度において改善につながるPLA鎖閉じ込め効果
に寄与する可能性がある。
【0072】
充放電サイクル中、グラフェンおよびPLA複合体のエンクロージャーは、電解質と、VAC
NTsにおいて形成されるポリスルフィドとの間の直接接触を防止する。このようにして、
電解質中へのポリスルフィドの溶解は(上述のように)回避され、その一方で同時に、電
気化学反応が起こることを可能にすることができる。この活性は、最終的にバッテリーサ
イクル寿命を改善し、全体のキャパシティを改善し、および図12においてG/PLAトラップ1
60を伴い、対して158では伴わないデータに見られるように、S-VACNTのキャパシティにお
いてフェーディング(減退とも言う)を最小限にする。明らかに、著しくより一層高い初
期キャパシティおよび全体のキャパシティは観察されるが、G/PLAトラップが適用される
とき、10サイクル後に見てわかるほどの減衰は観察されない。さらに、グラフェンエンク
ロージャーはまた、VACNTsの内部抵抗も低減し、最終的にはバッテリー効率を全体的に向
上させる。
【0073】
図13Aは、そのようなカソード調製のためのプロセス162を例示する。164で、溶融イオ
ウおよびイオウ含有溶液が調製される。それらは166で、上からの溶融、およびVACNTの空
所中への流れによってイオウを注入し、その一方で、電解質が通過できるように被覆され
たCNTsの間にいくらかの空間を可能にする)。イオウは炭素と非常に良好な親和性を有す
るので、CNTは容易に被覆され、各個々のCNTを被覆することが可能にされる。好首尾なイ
オウ注入プロセスは、VACNT構造の約300%ないし約350重量%(またはイオウとVACNTとの
比約60%)の間の変化をもたらす。一旦VACNT足場がイオウによって注入されると、グラ
フェンおよびPLA複合体は168にてVACNTsを(浸漬、スピンコーティングまたは他の方法を
介して)カプセル化する。
【0074】
グラフェンおよびPLA溶液の異なる濃度は、典型的には、Siの1%ないし10重量%を有す
るG/PLAコーティングを得る目的で、グラフェンおよびPLAペレットまたはワイヤを塩素化
溶媒中に溶解することによって得られる。グラフェンおよびPLA溶液は、スピンコーティ
ング、ドロップキャスティングまたはスプレーコーティング法によってVACNT/S電極上に
堆積される。
【0075】
同じ方法はバッテリーアノードの調製において用いることができる。そのような実施形
態では、図4に関して説明したアノード14およびカソード12のそれぞれのためのコーティ
ング32は、グラフェンおよびPLA複合体を含む。1つの特定の実例の実施形態では、そのコ
ーティング32は、グラフェンおよびPLA複合体だけを含み、そして他の物質は含まない。S
i-VACNTアノードをグラフェンおよびPLAとハイブリッド化することは、非常に大きな容量
変化による構造的損傷を回避しながら、Siの高い理論キャパシティを利用するための解法
を提供する。
【0076】
そのようなコーティングは、上記のごとく形成された安定なSEI層にわたり適用するこ
とができる。この場合を除いて、図13Bのプロセス170において、CVD法または別の技術に
よって、シリコーン(Silicone)がアノードに、172にて組み込まれる。次に、Si-VACNT
カソードは、グラフェンおよびPLA複合体で、174にて封入される。
実施形態のバリエーション
【0077】
対象の方法は、使用および/または製造の方法を含め、論理的に可能な事象の任意の順
序だけでなく、暗唱された事象の任意の順序で遂行されてもよい。さらに、ある範囲の値
が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のあらゆる介在値および記載された範囲
において任意の他の記載または介在値が本発明内に包含されることが理解される。また、
記載された創意に富む実施形態または変形の任意の随意の特長は、ここに記載される任意
の1以上の特長と、無関係に、または組み合わされて説明され、および請求され得ること
が企図される。
【0078】
本発明を、いくつかの例を参照し、随意に様々な特長を組み込んで記載したが、本発明
は、本発明の各変形に関して企図されるように、記載され、または示されたものに制限さ
れるものではない。本発明の真の精神および範囲から離れることなく、記載された本発明
に対して様々な変化がなされてもよく、および等価なもの(ここに暗唱されているか、ま
たはいくらか簡潔にするために含まれていないものかにかかわらず)を置換することがで
きる。
【0079】
単数品目への言及には、複数の同じ品目が存在する可能性を含む。より一層具体的には
、ここに、および添付の請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「said
」および「the」は、特に別なように明記しない限り、複数の指示対象を含む。換言すれ
ば、これらの物品を使用することにより、上記の明細ならびに下記の請求の範囲における
対象項目の「少なくとも1つ」が考慮される。
【0080】
同様に、請求の範囲において用語「含む」の使用は、任意の追加の要素の包含--与えら
れる数の要素が請求項に列挙されているかどうかにかかわらず、または請求の範囲に説明
された要素の性質を転換すると見なされ得る特長の付加を含めることを可能にするもので
なければならない。ここに特に規定される場合を除き、ここに使用されるすべての技術的
および科学的用語は、クレームの妥当性を維持しながら、普通に理解される意味で可能な
限り広く与えられるべきである。いずれの場合にも、ここに記載された異なる創意に富む
実施形態または態様の幅は、提供された例および/または対象の明細に対してではなく、
むしろ発行された請求項の言語の範囲によってだけ制限される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材;
前記基材で支持された負電極であって、該負電極は、アノード活物質が支持されるカーボンナノチューブ第一のアセンブリを含み、アノード活物質がカーボンナノチューブの第一のアセンブリの各ナノチューブを被覆している、負電極
前記基材で支持された正電極であって、該正電極は、カソード活物質が支持されるカーボンナノチューブ第二のアセンブリを含み、カソード活物質がカーボンナノチューブの第二のアセンブリの各ナノチューブを被覆している、正電極;および
前記正電極および前記負電極の間に配置された電解質であって、電荷担体の伝導が可能な電解質
を含み、
前記カーボンナノチューブの第一のアセンブリと前記カーボンナノチューブの第二のアセンブリとが、互いに物理的に分離されている、電気化学セル。
【請求項2】
前記負電極が更に第一の集電体を含み、前記正電極が更に第二の集電体を含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの第一のアセンブリは、前記負電極の第一の集電体上に垂直に配向されている、請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの第一のアセンブリは、前記負電極の第一の集電体上に直接成長している、請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブの第二のアセンブリは、前記正電極の第二の集電体上に垂直に配向されている、請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブの第二のアセンブリは、前記正電極の第二の集電体上に直接成長している、請求項4に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記負電極および前記正電極が、インターレースされている、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記負電極および前記正電極が、同じ平面内でインターレースされている、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記インターレースされた負電極および正電極が、レーザーを用いて製造されている、請求項7に記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記アノード活物質が、前記カーボンナノチューブの第一のアセンブリ上に堆積している、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記カソード活物質が、前記カーボンナノチューブの第二のアセンブリ上に堆積している、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記アノード活物質が、シリコンを含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記カソード活物質が、イオウを含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【外国語明細書】