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特開2022-88522弁クリップ切除のための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088522
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】弁クリップ切除のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/128 20060101AFI20220607BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022052956
(22)【出願日】2022-03-29
(62)【分割の表示】P 2018569005の分割
【原出願日】2017-07-06
(31)【優先権主張番号】62/418,571
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/359,121
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/642,245
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518459802
【氏名又は名称】エバルブ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ハイルハハン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】心臓弁の対向する弁尖に接近する移植されたクリップを切除するためのシステムを提供する。
【解決手段】システムは、クリップC1,C2の片側の弁尖に近接して導入されるように構成された、捕捉カテーテル10と、クリップの反対側の弁尖に近接して導入されるように構成された、移送カテーテル34と、捕捉および移送カテーテル間に配備され、弁線のうちの少なくとも1つの組織に対して係合し、クリップを切除するように構成された、切断具と、を含む。除去カテーテルは、心臓からクリップを除去するために、任意選択的に使用され得る。
【選択図】図7D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁の対向する1対の弁尖に接近するクリップを切除するための方法であって、前記方法は、
クリップの片側の弁尖に隣接する心腔内に捕捉カテーテルを導入するステップと、
クリップの反対側の弁尖に隣接する心腔内に移送カテーテルを導入するステップと、
弁尖のうちの少なくとも1つの組織に対して切断要素を配置するために、移送カテーテルから捕捉カテーテルまで切断要素を配備するステップと、
弁尖組織に対して切断部材を係合させるステップと、
切断部材を使用して少なくとも1つの弁尖からクリップを切除するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
心腔が左心房であり、心臓弁が僧帽弁である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
心腔が左心室であり、心臓弁が僧帽弁である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
心腔が右心房であり、心臓弁が三尖弁である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
心腔が右心室であり、心臓弁が三尖弁である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
切断要素を配備するステップが、両方のカテーテルの先端を近傍に持って行くために、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルのうちの少なくとも1つの先端を操縦するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
切断部材を配備するステップが、切断部材上の磁気要素に対して捕捉カテーテル上の磁気要素を係合させるステップと、弁を通過して切断部材を引っ張るステップと、をさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
切断要素を配備するステップが、切断部材の自由端の上に捕捉カテーテルのループを係合させるステップと、弁を通過して切断部材を引っ張る、ステップと、をさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
切断要素を配備するステップが、弁を通過する経路を形成するために捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの先端をまとめるステップと、経路上で切断部材を前進させるステップと、をさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
クリップが1つの弁尖のみから切除される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
クリップが対向する対の両方の弁尖から切除される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの弁尖からクリップを切除するステップが、切断部材を通じて高周波電流を供給するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの弁尖からクリップを切除するステップが、切断部材を用いて弁組織を機械的に切断または摩耗するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
心腔内にクリップ除去カテーテルを導入するステップと、切断部材を使用して少なくとも1つの弁尖からクリップを切除する間にクリップに対してクリップ除去カテーテルの遠位端を係合させるステップと、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
両方の対向する弁尖からクリップを切除するステップと、クリップ除去カテーテルを用いてクリップを除去するステップと、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルが経中隔的に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルが経心尖的に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
心臓弁の対向する弁尖に接近する移植されたクリップを切除するためのシステムであって、前記システムは、
クリップの片側の弁尖に隣接する心腔内に導入されるように構成された、捕捉カテーテルと、
クリップの反対側の弁尖に隣接する心腔内に導入されるように構成された、移送カテーテルと、
クリップを切除するために弁尖のうちの少なくとも1つの組織に対して切断要素を配置するために、移送カテーテルから捕捉カテーテルまで配備されるように構成された、切断部材と、
を備えるシステム。
【請求項19】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルのうちの少なくとも1つが操縦可能な遠位先端を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの各々が操縦可能な遠位先端を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
捕捉カテーテルが磁気遠位先端を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
切断部材が、移送カテーテルによって担持されており、心腔内のカテーテル位置の操作によって捕捉カテーテルが切断部材を捕捉できるように、移送カテーテルの遠位端に露出した磁気要素を有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
クリップと係合して捕捉するように構成された遠位端を有するクリップ除去カテーテルをさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
切断部材が、弁組織の通電切断のための高周波電極を備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
切断部材が、弁組織を機械的に切断するための機械的に摩耗するまたは鋭利な刃を備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
切断部材が、放射線不透過性マーカによって画定された切断ゾーンを備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルを心腔内に導入するように構成された送達シースをさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
送達シースが、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの両方を同時に収容するようにサイズ決めされている内腔を備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項29】
送達シースが経中隔シースを備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項30】
送達シースが経心尖シースを備える、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年7月6日に出願された米国特許仮出願第62/359,121号明細書(代理人整理番号第50494-703.101)および2016年11月7日に出願された米国特許仮出願第62/418,571号明細書(代理人整理番号第50494-703.102)の恩典を主張する、2017年7月5日に出願された米国特許出願第15/642,245号明細書(代理人整理番号第50494-703.201)の優先権を主張し、これらの全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1.技術分野。本発明は、概して医療用装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、クリップまたはその他の移植されたプロテーゼを心臓弁から除去するための装置、システム、キット、および方法に関する。
【0003】
僧帽弁逆流(Mitral regurgitation)は、よく見られる弁膜症であり、有病率は年齢とともに上昇する。この状態では、心臓収縮の間に左心室から左心房内に血液が異常に逆流し、この状態は、左室機能不全による心不全、心房細動、肺高血圧症、および死亡などの有害な結果をもたらす可能性がある。公表されているガイドラインは、臨床状態を改善するために、僧帽弁逆流の外科的または経カテーテル矯正を推奨している。
【0004】
僧帽弁クリップ(具体的には、Abbott VascularのMitraClip(R)システム)の移植による僧帽弁逆流の経カテーテル矯正は、切開外科的矯正処置手術のリスクが高い患者にとって標準的な治療法になっている。このようなクリップ移植手術は、右大腿静脈に挿入される案内カテーテルを通じて行われる。1つ以上の僧帽弁クリップは、案内カテーテルを通じて送達され、僧帽弁前尖および後尖を再接近させるために移植される(しばしば「エッジツーエッジ」修復と称される)。MitraClip(R)僧帽弁クリップは、コバルトクロム合金で作られ、布メッシュで覆われている。
【0005】
これまでに、MitraClip(R)弁クリップを使用した45,000件を超える手術が世界中で行われ、現在は毎月1000件近い手術が行われている。MitraClip(R)手術は、非常に安全な手術であることが判明しており、外科的リスクが高い患者に治療上の選択肢を提供する。
【0006】
しかしながら、従来の僧帽弁クリップ技術にはいくつかの重大な制限がある。第一に、一旦僧帽弁クリップが移植されると、除去は典型的には、切開による外科的切除を必要とする。第二に、技術的な課題のため、全ての患者が手術の際に満足のいくMR減少を達成するわけではない。最後に、最大5人に1人の患者は、重大なMRが再発するか、またはMitraClip(R)手術から6ヶ月以内に反復介入の必要性を有することがある。
【0007】
患者が僧帽弁クリップ術後に再発性MRになった場合、追加治療のための現在の選択肢は限られている。1つの選択肢は別の僧帽弁クリップを配置することであるが、これは僧帽弁狭窄症を発症する懸念のためにしばしば不可能である(僧帽弁クリップはしばしば弁を狭くして、弁が適切に開かなくなる)。
【0008】
他の選択肢は、利用可能になりつつある様々な僧帽弁修復および置換技術を含む。非常に興味深いのは、拡張可能なフレーム上に実装されたバイオプロテーゼ僧帽弁が欠陥のある生来の僧帽弁内に配備される、経カテーテル僧帽弁置換術である。このような経カテーテル「置換」弁は、僧帽弁逆流の完全な排除を提供し、選ばれた患者の僧帽弁置換の外科的な「ゴールドスタンダード」を模倣するだろう。
【0009】
現時点では、僧帽弁クリップが干渉して新しい弁の完全な拡張を許容しないので、以前の僧帽弁クリップ術が行われたときには、経カテーテル僧帽弁を移植することは困難であるか、または不可能であるかも知れない。したがって、クリップおよび他の移植されたプロテーゼを心臓弁から除去するための装置、システム、キット、および方法を提供することが望ましいだろう。このようなクリップおよび他の移植されたプロテーゼを心臓弁から除去するための装置、システム、キット、および方法が、弁の病態を治療するために、心臓弁をプロテーゼ弁移植などその後の経カテーテル術を受ける状態にしておくことが、特に望ましいだろう。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、本明細書に説明される発明によって達成されるだろう。
【0010】
2.背景技術の説明。米国特許出願公開第2014/0228871号明細書、米国特許出願公開第2015257883号明細書、米国特許出願公開第2014135799号明細書、米国特許第8500768号明細書、米国特許第7955340号明細書、米国特許第5895404号明細書、ならびに以下のガイドラインおよび刊行物を参照されたい:Nishimura RA,Otto CM,Bonow RO et al.2014 AHA/ACC guideline for the management of patients with valvular heart disease:executive summary:a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines.J Am Coll Cardiol 2014;63:2438-88;Feldman T,Kar S,Elmariah S et al.Randomized Comparison of Percutaneous Repair and Surgery for Mitral Regurgitation:5-Year Results of EVEREST II.J Am Coll Cardiol 2015;66:2844-54;およびMaisano F, Alfieri O,Banai S et al.The future of transcatheter mitral valve interventions:Competitive or complementary role of repair vs.replacement?,Eur Heart J 2015;36:1651-9。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0228871号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/257883号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/135799号明細書
【特許文献4】米国特許第8500768号明細書
【特許文献5】米国特許第7955340号明細書
【特許文献6】米国特許第5895404号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nishimura RA,Otto CM,Bonow RO et al.2014 AHA/ACC guideline for the management of patients with valvular heart disease:executive summary:a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines.J Am Coll Cardiol 2014;63:2438-88
【非特許文献2】Feldman T,Kar S,Elmariah S et al.Randomized Comparison of Percutaneous Repair and Surgery for Mitral Regurgitation:5-Year Results of EVEREST II.J Am Coll Cardiol 2015;66:2844-54
【非特許文献3】Maisano F, Alfieri O,Banai S et al.The future of transcatheter mitral valve interventions:Competitive or complementary role of repair vs.replacement?,Eur Heart J 2015;36:1651-9
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、生来の僧帽弁尖組織から1つ以上の僧帽弁クリップを分離および場合により除去するために使用可能な、経カテーテル器具および手術を提供する。このような手術では、医師は、左心房または左心室のいずれかから特別に設計されたカテーテルを挿入することができる。ガイドワイヤは、以前に移植された僧帽弁クリップに隣接する弁尖および弁組織の周りに配置されてもよい。機械的な切断またはアブレーション、もしくは高周波エネルギーを利用して、前尖または後尖のいずれか、もしくはその両方から僧帽弁クリップが切除され、生来の弁オリフィスを復元し、将来の修復または置換治療を可能にすることができる。生来の弁尖組織から僧帽弁クリップを分離した後、僧帽弁逆流の程度は急激に悪化すると予想される。対照的に、本発明の分離術は経カテーテル弁移植、または別の経カテーテル矯正手術の直前に実行可能である。たとえば、新しい経カテーテル僧帽弁の配備に経心尖アクセスが使用される場合には、僧帽弁クリップを解放するために経中隔アクセスが使用可能であり、その逆もまたあり得る。
【0014】
本発明の第1の態様において、心臓弁の対向する1対の弁尖に接近するクリップを切除するための方法は、クリップの片側の弁尖に隣接する心腔内に捕捉カテーテルを導入するステップを備える。移送カテーテルはまた、クリップの反対側の弁尖に隣接する心腔内にも導入され、切断部材は、弁尖のうちの少なくとも1つの組織に対して切断部材を配置または係合するために、移送カテーテルと捕捉カテーテルとの間に配備される。切断番号はその後、固定を解除して弁尖の分離を可能にするために弁尖のうちの少なくとも1つからクリップを切除するために、使用される。
【0015】
本発明の切除方法は、癒合を強化するためまたは他の理由でクリップが配置された、あらゆる心臓弁において有用である。最も典型的には、心臓弁は僧帽弁であり、カテーテルは弁の上の左心房内に経中隔的に導入されてもよく、または僧帽弁の下の左心室内に経心尖的に導入されてもよい。他の例では、標的心臓弁は三尖弁であり、カテーテルは三尖弁の上の右心房内に、または三尖弁の下の右心室内に導入されてもよい。
【0016】
例示的な実施形態において、切断部材を配備するステップは、両方のカテーテルの先端を弁クリップの近傍に持って行くために、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルのうちの少なくとも1つ、通常は両方の先端を操縦するステップを備える。典型的には、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルのうちの少なくとも1つは、固定された弁クリップに隣接する弁尖の間の開口部を通じて前進させられてもよく、前進したカテーテルはその後、弁クリップの反対側の周りで操縦され、弁クリップの反対側の弁尖の間の空間を通じて引き上げられてもよい。切断部材はその後、切除される弁尖の標的領域にまたがるように、移送カテーテルと捕捉カテーテルとの間に通されてもよい。カテーテルはその後、弁の片側の弁尖の一部を切除するために切断部材が位置決めされるように、弁クリップの側面を通過して切断部材を延在させるように操作されてもよい。以下により詳細に説明されるように、弁クリップは対向する弁尖内に移植されたままであってもよく、対向する弁尖にクリップが取り付けられたままで後続の介入手術が実行されてもよい。あるいは、捕捉および移送カテーテルは、クリップを完全に解放して、心臓弁に後続の介入を実行する前に心臓からクリップを除去できるようにするため、対向する弁尖がクリップから切除されるように、弁クリップの反対側に切断部材を再位置決めするために使用されてもよい。弁クリップを解放および除去するときは、当然ながら、典型的には本明細書で以下に説明されるような除去カテーテルによって、弁クリップが拘束される必要があるだろう。
【0017】
さらなる具体例において、切断部材は、切断部材上の磁気要素に対して捕捉カテーテル上の磁気要素を係合することによって、配備されてもよい。磁気要素は典型的には、捕捉カテーテルの先端および切断部材の末端にあり、1つまたは複数のカテーテルは、クリップを解放するため弁尖組織から切除するために、弁クリップの片側または両側を通過して切断部材を引っ張るように操作されてもよい。
【0018】
代替の実施形態において、切断要素は、切断部材の自由端を捕捉するために使用されるループを備えてもよく、捕捉カテーテルはその後、切断部材の自由端の上にループを前進させ、クリップを超えて弁組織内に切断部材を通すために、操作されてもよい。
【0019】
さらなる実施形態において、切断部材を配備するステップは、弁クリップを通過する経路を形成するために捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの先端をまとめるステップと、経路上で要素を前進させるステップと、を備えてもよい。切断部材のこのような前進および位置決めの後、捕捉カテーテルおよび/または移送カテーテルは、クリップを解放するため弁組織を切除するように切断部材を操作するために、操作されてもよい。
【0020】
上述のように、本発明の方法のいくつかの実施形態では、1つまたは複数のクリップは、1つまたは複数のクリップを対向する弁尖内に移植したままで、1つの弁尖からのみ切除される。少なくとも1つの弁尖からの1つまたは複数のクリップの解放は、少なくともいくつかの場合においては、対向する弁尖を解放して、後続の弁置換またはその他の介入手術の実行を可能にするのに、十分である。しかしながら、他の例では、後続の弁移植またはその他の介入を実行する前に1つまたは複数の弁クリップを心臓弁から完全に除去することが、好ましいだろう。このような場合、切除中に1つまたは複数のクリップを拘束または捕捉し、それ以上のあらゆる介入の前に切除された1つまたは複数のクリップを心腔から抜去するために、除去カテーテルまたはその他の装置が典型的に使用される。
【0021】
本発明の方法のさらに別の特定の実施形態では、1つまたは複数のクリップは、様々な方法で弁尖組織から切除され得る。たとえば、切断部材は、高周波(RF)切断電流を組織に供給することが可能な、電極セグメントまたは導電性領域を備えてもよい。具体的には、切断部材が弁クリップに隣接する弁組織を切除できるように、RF電流が切断モードで供給される。他の例では、切断部材は、弁組織を機械的に切り開くために使用可能な、鋭利な領域または摩耗領域を備えることができる。たとえば、鋭利な切断領域または摩耗切断領域は、弁を切除するために組織を「鋸で切る」ように、往復することができる。他の周知の組織切断モダリティも採用され得る。
【0022】
これまでに説明されたように、捕捉カテーテル、移送カテーテル、および切断部材は、弁クリップを対向する弁尖に取り付けられたままにして、単一の弁尖から組織を切除するために使用される。単一の弁尖からの弁の除去は、その後のプロテーゼ弁移植またはその他の矯正手術のための弁尖の十分な開口を可能にするが、対向する弁尖の両方から弁クリップを除去することが望ましい場合もある。そのような場合、最終的に除去される弁クリップを安定させるために、クリップ除去カテーテルを心腔内に導入することが好ましいだろう。クリップ除去カテーテルの遠位端は、クリップに対して係合されることが可能であり、切断部材を使用してクリップが1つまたは両方の弁尖から切除される間、通常はクリップに取り付けられている。
【0023】
さらなる例示的な実施形態では、捕捉カテーテル、移送カテーテル、および任意選択的にクリップ除去カテーテルは、通常は経中隔カテーテルまたはシースを通じて同時に、経中隔的に導入されることが可能である。さらに別の特定の実施形態では、捕捉カテーテル、移送カテーテル、および任意選択的にクリップ除去カテーテルは、通常は経心尖シースまたはカテーテルを通じて同時に、経心尖的に導入されることが可能である。
【0024】
本発明の第2の態様において、心臓弁の対向する弁尖に接近する移植されたクリップを切除するためのシステムは、捕捉カテーテル、移送カテーテル、および切断部材を備える。捕捉カテーテルは、クリップの片側の弁尖に隣接する心腔内に導入されるように構成されている。移送カテーテルは、クリップの反対側の弁尖に隣接する心腔内に導入されるように構成されており、切断部材は、クリップを切除するために弁尖のうちの少なくとも1つの組織に対して切断要素を配置するために、移送カテーテルから捕捉カテーテルまで配備されるように構成されている。
【0025】
システムの特定の態様において、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルのうちの少なくとも1つは操縦可能な先端を有し、通常は両方とも操縦可能な先端を有する。捕捉カテーテルは、切断部材の遠位端に設けられた磁気要素と係合してこれを捕捉するように構成された磁気遠位先端を有することが多い。このようにして、捕捉カテーテル上の磁気先端は、切断部材が捕捉カテーテルと移送カテーテルとの間に配備され得るように、切断部材の磁気末端を引きつけてこれと係合するために使用されることが可能である。したがって、切断部材の切断領域は、切断領域が組織を切断してクリップを摘出するために使用され得るように、弁クリップに隣接する弁尖組織と係合するように位置決めされることが可能である。たとえば、切断領域は、弁組織を機械的に切断するために使用可能な、鋭利な領域または摩耗領域を備えることができる。あるいは、切断領域は、クリップに隣接する弁尖組織を切除するための切断電流によって電力供給され得る、RF電極を備えることができる。
【0026】
本発明のシステムは、本発明のカテーテルを心腔に送達するための導入シース、典型的には経中隔シースまたは経心尖シースをさらに備えてもよい。通常、導入シースは、少なくとも捕捉カテーテルおよび移送カテーテルを同時に収容できるほど十分な大きさとなる。多くの場合、システムは除去カテーテルをさらに備え、導入シースは捕捉カテーテル、移送カテーテル、および除去カテーテルの各々を同時に収容するのに十分な大きさになるようサイズ決めされる。
【0027】
本発明のクリップ除去カテーテルは、典型的には、クリップと係合してこれを捕捉するように構成された遠位端を有する。MitraClip(R)弁クリップなどの特定の弁クリップは、弁クリップの心房または心室面のいずれかと「ドッキング」するために、クリップ除去および任意選択的に本発明のその他の、カテーテルによって、使用可能な「ドッキング」機能を提供する、固有の形状を有する。1つまたは複数の弁クリップの形状は、典型的には、除去手術の間に、除去またはその他の、カテーテルを標的としてこのカテーテルをクリップとドッキングさせることを容易にする、蛍光透視法で識別しやすい。このようなドッキングは、いくつかの利点を有する。第一に、ドッキングは、カテーテルシステムに対して弁クリップを安定させることができるが、これは拍動心臓手術の間に弁が動いているので有利である。第二に、ドッキングは、上述の磁気またはスネア(snare)技術のいずれかを使用してクリップを囲むように輪にするなど、切断部材の位置を改善するために1つまたは複数のカテーテルを配向することを、容易にする。第三に、除去またはその他の、カテーテルを弁クリップとドッキングさせることにより、カテーテルおよび切断部材は弁クリップのごく近傍に安定的に位置決めされることが可能であり、こうして弦装置(chordal apparatus)がループワイヤまたはその他の切断部材に絡まったりあるいは引っかかったりする危険性を最小限に抑える。第四に、ドッキングは、心房面または心室面のどちらからでも実行可能である。たとえば、心房ドッキングは、MitraClip(R)クリップの「Y」部分の上部にある溝内にドッキングすることによって実現可能である。心室ドッキングは、MitraClip(R)クリップの「Y」部分の底部にドッキングすることによって実現可能である。ドッキングは、たとえば締まりばめを介して受動的であってもよく、もしくは、除去またはその他の、カテーテルがMitraClip(R)クリップをしっかり取り付けるための「把持」機能を有して能動的であってもよい。ドッキングは、各弁クリップに対して個別に実行されるか、またはドッキング機能を変更して同時にいくつかに対して実行されることが可能である。
【0028】
本発明の除去カテーテルは、クリップの周りにスネアを配置するために、MitraClip(R)またはその他の弁クリップとドッキングするように設計されてもよい。前述のカテーテルを使用して、クリップが前尖および後尖の両方(または三尖弁の場合には中隔尖)から解放された後、クリップは、除去カテーテルによってアクセスシースを通じて身体から除去されることが可能である。それが身体から除去され得るように両方の弁尖から解放された後にそれを保持するために、弁クリップを固定する、スネア、生検型鉗子、またはジョーなどの様々なクリップ把持機能のうちのいずれか1つを除去カテーテルが有してもよい。捕捉および/または移送カテーテルはまた、弁クリップとドッキングするように構成されてもよく、たとえば弁クリップの形状を補完する形状を有する遠位先端を有してもよい。クリップを除去するカテーテルは、経静脈経中隔アプローチ、または左心室経心尖アプローチを介して配置されることが可能である。いくつかの例では、除去カテーテルは、弁クリップが適切な配向でカテーテル内に引き込まれるようにするために漏斗形状を有して設計されることが可能である。
【0029】
本発明のカテーテルシステムは、ペースメーカまたは除細動器のリード線を囲んで除去するために使用されることも可能である。たとえば、リード線の長さに沿ってリード線を囲むループを摺動させることによって、リード線は、それが埋め込まれていた心臓または血管組織から切除されることが可能である。具体的には、本発明のカテーテルは、腋窩静脈、腕頭静脈、および/または上大静脈などの血管静脈組織からリード線を解放するために使用されることが可能である。本発明のカテーテルは、三尖弁または右心室の心筋からリード線を解放するために使用されることも可能である。具体的には、リード線は、リード線が三尖弁逆流(TR)を生じる可能性がある状況で、三尖弁から解放され得る。任意選択的に、リード線はTRを軽減するように再位置決めすることができる。三尖弁位置への経カテーテル弁の配置を容易にするために望ましいようにリード線が三尖弁オリフィス内に再位置決めされ得るようにリード線を解放するために、カテーテルが使用されることも可能である。
【0030】
説明例の特性と考えられる新規な特徴は、添付請求項に明記されている。しかしながら、説明例は、以下の添付図面と合わせて読まれたときに、本開示の説明例の以下の詳細な説明を参照することで、最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】僧帽弁クリップの移植後の僧帽弁の解剖学的構造を示す図である。
図1A】僧帽弁クリップの移植後の僧帽弁の解剖学的構造を示す図である。
図2A】まっすぐな構成で示された、操縦可能な遠位領域を有して本発明の原理にしたがって構築された捕捉カテーテルを示す図である。
図2B】偏向構成で示された、操縦可能な遠位領域を有して本発明の原理にしたがって構築された捕捉カテーテルを示す図である。
図3】本発明の原理にしたがって構築された移送カテーテルを示す図である。
図4】本発明の方法において捕捉および移送カテーテルとともに使用される切断部材を示す図である。
図5A】捕捉カテーテル上の磁気先端および切断部材上の磁気遠位要素の実施形態を示す図である。
図5B】捕捉カテーテル上の磁気先端および切断部材上の磁気遠位要素の異なる実施形態を示す図である。
図5C】捕捉カテーテル上の磁気先端および切断部材上の磁気遠位要素の異なる実施形態を示す図である。
図5D】捕捉カテーテル上の磁気先端および切断部材上の磁気遠位要素の異なる実施形態を示す図である。
図5E】捕捉カテーテル上の磁気先端および切断部材上の磁気遠位要素の異なる実施形態を示す図である。
図6】その遠位端に捕捉ループを有する捕捉カテーテルを含む、本発明による代替システムを示す図である。
図7A】本発明の原理にしたがって僧帽弁内に移植された1対のクリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図7B】本発明の原理にしたがって僧帽弁内に移植された1対のクリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図7C】本発明の原理にしたがって僧帽弁内に移植された1対のクリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図7D】本発明の原理にしたがって僧帽弁内に移植された1対のクリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図7E】本発明の原理にしたがって僧帽弁内に移植された1対のクリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図7F】本発明の原理にしたがって僧帽弁内に移植された1対のクリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図8】本発明の原理にしたがって僧帽弁内の弁クリップを切除するための、左心房内への捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの経心尖導入を示す図である。
図9A】本発明の原理にしたがって三尖弁から弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図9B】本発明の原理にしたがって三尖弁から弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図9C】本発明の原理にしたがって三尖弁から弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図10A】本発明の原理にしたがって僧帽弁から単一の弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図10B】本発明の原理にしたがって僧帽弁から単一の弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図10C】本発明の原理にしたがって僧帽弁から単一の弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図10D】本発明の原理にしたがって僧帽弁から単一の弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
図10E】本発明の原理にしたがって僧帽弁から単一の弁クリップを除去するための方法における、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、僧帽弁およびその他の心臓弁尖から1つ以上の弁クリップを分離するための装置および方法を提供する。弁クリップは、弁接合平面(中央、内側、外側、または交連)に沿ってどこにでも位置することができる。いくつかの実施形態では、弁クリップは、接合弁尖のうちの他方の所定位置に残っている間に接合弁尖のうちの1つから除去される。他の実施形態では、弁クリップは、両方の弁尖から除去されて、心臓から完全に引き抜かれる。
【0033】
本発明の機器は、左心房面から(経中隔または直接心房アクセス)、または左心室面から(経心尖、直接心室穿刺、または逆行性大動脈アクセス)、配備されることが可能である。切断作業は、「輪縄」、鋏状の装置、「チーズカッタ」と類似のワイヤベースのカッタ、高周波電極切断要素などによって、提供され得る。いくつかの例では、僧帽弁クリップは、前尖および後尖の両方から除去されてもよく、スネア、生検鉗子型装置、またはその他の除去カテーテルは、僧帽弁クリップを身体から完全に除去するために使用され得る。本発明は、僧帽弁だけでなく三尖弁から弁クリップを除去するために使用されてもよく、カテーテルは、典型的には手術に使用される全てのカテーテルを同時に収容するのに十分な大きさの経中隔および経心尖案内カテーテルを通じて配置され得る。
【0034】
ここで図1および図1Aを参照すると、弁クリップCは心臓H内の僧帽弁MVならびに三尖弁TVの弁尖に移植されている。僧帽弁MVは左心房LAを左心室LVから分離し、三尖弁TVは右心房RAを右心室RVから分離する。完全を期すために、血液は、左心室LVから大動脈弁AVを通って大動脈Aに流れることに留意されたい。図1Aにより詳細に示されるように、僧帽弁MVのクリップCは、前尖ALと後尖PLとの間の弁開口部の中央付近に位置している。しかしながら、クリップCは、弁開口部の中央から離れた弁尖間の他の位置に移植されることも可能である。
【0035】
ここで図2Aおよび図2Bを参照すると、捕捉カテーテル10は、近位端14および遠位端16を有するシャフト12を備える。制御ハンドル18がシャフトの近位端に取り付けられており、偏向ノブ20がハンドルの遠位に位置している。捕捉カテーテル10は、典型的にはフラッシュポート22を含み、その遠位端に変形可能な先端26を有するガイドワイヤ24を受容するようになっている中央内腔を有する。特に図2Bに示されるように、カテーテルシャフト12の遠位領域28は、図示されるようにこの領域が180°まで偏向され得るように、能動的に偏向可能または「操縦可能」となる。このような偏向は偏向ノブ20によって制御され、適切な偏向機構は、プルワイヤ、シャフトの遠位端のスロット領域、またはその他いずれか従来のカテーテル偏向技術を含んでもよい。
【0036】
ここで図3を参照すると、移送カテーテル34は、近位端38および遠位端40を有するシャフト36を含む。制御ハンドル42がシャフトの近位端に取り付けられ、偏向ノブ44が制御ハンドル42の遠位端に設けられている。移送カテーテル34はまた、フラッシュポート46を含んでもよく、典型的には、捕捉カテーテル10について上述されたものと類似の操縦可能な遠位先端48を有する。
【0037】
ここで図4を参照すると、切断部材50は、典型的には移送カテーテル34の前進用内腔を通じて供給されるようにワイヤ状の構成(以下に説明されるように電気手術用切断部材の場合は典型的に導電性である)を有する、細長い本体52を備える。切断部材50は、典型的には0.5cmから数センチメートルの長さを有する、典型的には細長い本体の長さの中央付近の領域にまたがり、典型的には放射線不透過性マーカ56と両側を接する、切断領域54をさらに含む。電気手術用切断部材の場合、この部材は、切断領域は絶縁されず、切断領域の両側の領域は電気的に絶縁されている、導電性ワイヤを備えてもよい。磁気遠位要素58は、典型的には細長い本体52の一端に位置し、図3に示されるように、切断部材50が移送カテーテル34に装着されると、磁気遠位要素58は、以下に説明されるように捕捉カテーテル10の磁気先端30を磁気的に引きつけるために露出されて利用可能となるように、カテーテルの遠位先端40から外向きに延在する。
【0038】
図5Aから5Eに示されるように、捕捉カテーテル10の磁気先端30は様々な形態を取り得る。磁気先端30a(図5A)は、捕捉カテーテルのガイドワイヤを収容するための貫通内腔を有する弾丸形状を有する。磁気先端30bは、円盤形状を有し、やはり捕捉カテーテルのガイドワイヤを収容するための貫通内腔を有する。
【0039】
切断部材50の磁気遠位要素58もまた、様々な構成を有してよい。最も簡単には、磁気遠位要素58は、図5Eに示されるような球形を有する。あるいは、磁気遠位要素は、図5Bに示されるような弾丸形状58a、または図5Dに示されるような円盤形状58bを有してもよい。
【0040】
これまでに説明されたように、捕捉カテーテル10および切断部材50は各々、捕捉カテーテル50による切断部材の捕捉を可能にするための磁気要素を有する。これは好ましい設計であるが、様々な他の捕捉機構もまた採用されることが可能である。たとえば、図6に示されるように、捕捉カテーテル62はその遠位端に捕捉ループ66を担持してもよい。すると、移送カテーテル64によって担持される切断部材72の自由端70を捕捉するために、捕捉ループが使用され得る。捕捉カテーテルによる切断部材の捕捉を可能にするために、フック、バーブ、コイルターゲットなどの使用もまた可能であろう。
【0041】
ここで図7Aから7Fを参照して、中隔アプローチを介して僧帽弁MVから1対のクリップC1およびC2を除去するための捕捉カテーテル10および移送カテーテル34の使用が説明される。ガイドワイヤ24の操縦可能な遠位先端28は、まず、経中隔シース74を通じて僧帽弁の上の左心房内に導入される。先端28は、心臓が拍動している状態で、蛍光透視による案内の下でクリップC1およびC2の間を前進することができる。任意選択的に、カテーテル10がガイドワイヤ上を前進する前にクリップ間にガイドワイヤ24を配置するのを支援するために、捕捉カテーテル10が使用可能である。ガイドワイヤは受動的でも能動的でもよい。
【0042】
図7Aに示されるように、ガイドワイヤが配置された後、捕捉カテーテル10は、図7Bに示されるように、クリップC1およびC2の上に位置するように、ガイドワイヤ24上を前進することができる。その後、捕捉カテーテル10の遠位端は、図7Cに示されるように、磁気先端が左心室に侵入するように、クリップC1およびC2の間を前進する。その後、移送カテーテル34は、捕捉カテーテル10と平行して経中隔シース74内を誘導され、捕捉カテーテル10上の磁気先端30と係合するように切断部材50上の磁気遠位要素58bを前進させるために操縦される。たとえば、移送カテーテル34の操縦可能な遠位領域48は、前尖ALと後尖PLとの間を下方に前進し、磁気先端30に対して磁気遠位要素58bを係合するために操作されることが、可能である。
【0043】
切断部材50および捕捉カテーテル10が互いに結合された後、図7Eに示されるように、捕捉カテーテル10は切断領域54を露出するために引き戻されて、カテーテルは第2の弁クリップC2に対して切断領域54を係合するために操作される。切断領域54はその後、クリップC2を包囲する後尖PLの組織を鋸で切るかまたは電極外科的に切断するために、操作されることが可能である。その後、図7Fに示されるように、後尖PLから第1のクリップC1を切除するために手順が繰り返され、プロテーゼ弁移植またはその他の介入を行えるようにする僧帽弁の開口を生じる。後尖の切除は図7Aから図7Fに示されているが、いくつかの例では、1つまたは複数のクリップを後尖に取り付けられたままにして前尖組織を切除することが好ましいだろう。
【0044】
ここで図8を参照すると、僧帽弁MVからの弁クリップCの切除もまた、経心尖シース78を通じて捕捉カテーテル10および移送カテーテル34を使用して実行され得る。経心尖アプローチを使用して、カテーテル10および34の遠位先端は、左心室LVから左心房LAまで上方に前進し、その後組織は、前述のように一般的にカテーテルを使用して切除されることが可能である。
【0045】
ここで図9Aから図9Cを参照して、三尖弁TVの前尖ALと中隔尖SLとの間に移植された弁クリップCの切除が説明される。捕捉カテーテル10および移送カテーテル34は、図9Bに示されるように、アクセスシース80を通じて三尖弁の上の右心房内に導入されることが可能である。カテーテル10および34は、図9Cに示されるように、中隔尖SL内のクリップCの側面に切断部材50の切断領域54を位置決めするために使用されることが可能である。切断部材50はその後、図9Cに示されるように、クリップCを解放して三尖弁を開くために中隔尖SLの組織を切除するため、先に説明された方法のいずれかで操作されることが可能となる。弁に対して後続の介入を実行する前に、前尖内に移植されたクリップCの一部が切除されることも可能であり、またはクリップが所定位置に残されることも可能である。
【0046】
ここで図10Aから10Eを参照すると、概して前述したように、経中隔シース74を使用して捕捉カテーテル10および移送カテーテル34を左心房内に導入することによって、単一の弁クリップCが僧帽弁MVから除去されることが可能である。加えて、クリップCを係合および安定させるために、捕捉カテーテル10および移送カテーテル34と同時に経中隔シース74を通じてクリップ除去カテーテル90が導入されることが可能である。図10Aに示されるように、操作ワイヤ92の遠位端のクリップ捕捉要素94は、クリップCの上面を捕捉するためにクリップ除去カテーテル90の内腔を通じて送達され得る。切断番号50の切断領域54はその後、クリップがクリップ除去カテーテル90によって保持および安定化されたままでいる間、前尖AL内の組織を切除するために使用され、こうして前尖からクリップを解放する。これは図10Bに示されるとおりである(ここでは説明を容易にするために、捕捉カテーテル10および移送カテーテル34は省略されている)。捕捉カテーテル34および移送カテーテル10は、図10Cに示されるように、切断部材50の切断領域54が後尖PLに対して位置決めされるように再位置決めされてもよく、切断領域はその後、図10Dに示されるように、クリップを解放するために後尖内の組織を切除するように操作されることが可能である。クリップCを保持し続けるクリップ除去カテーテル90はその後、図10Eに示されるように、僧帽弁からクリップCを抜去するために使用可能となる。そして僧帽弁MVは、僧帽弁プロテーゼを受容するために、または別の矯正介入を実行させるために、移植されたクリップから完全に解放される。
【0047】
本開示の特定の実施形態が詳細に説明されてきたが、本明細書に説明された特徴および利点の全てを提供しない実施形態を含む、特定の変形例および修正例が、当業者にとって明らかとなるだろう。本開示は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替または付加的な実施形態および/または使用、ならびにそれらの明白な修正例および等価物に及ぶことは、当業者によって理解されるだろう。加えて、多数の変形例が様々な詳細で示され説明されてきたが、本開示の範囲に含まれるその他の修正例は、本開示に基づいて当業者にとって容易に明らかとなるだろう。実施形態の特定の特徴および態様の様々な組み合わせまたはサブコンビネーションがなされてもよく、それでもなお本開示の範囲に含まれることもまた、企図される。したがって、本開示の様々なモードを形成するために、開示された実施形態の様々な特徴および態様が組み合わせられ、または互いに置き換えられてもよいことは、理解されるべきである。このため、本明細書に開示された本開示の範囲は、上述の特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが、意図される。上述の実施形態の全てについて、いずれの方法のステップも連続して実行される必要はない。
図1
図1A
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
【手続補正書】
【提出日】2022-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁の対向する弁尖に接近する移植されたクリップを切除するためのシステムであって、前記システムは、
クリップの片側の弁尖に隣接する心腔内に導入されるように構成され、磁気遠位先端を有する捕捉カテーテルと、
クリップの反対側の弁尖に隣接する心腔内に導入されるように構成された、移送カテーテルと、
クリップを切除するために弁尖のうちの少なくとも1つの組織に対して切断部材を配置するために、移送カテーテルから捕捉カテーテルまで配備されるように構成された、切断部材と、
を備え、
切断部材は、移送カテーテルによって担持されており、移送カテーテルの操作が切断部材を配置することで、捕捉カテーテルが切断部材を捕捉できるように、移送カテーテルの遠位端に露出した磁気要素を有する、システム。
【請求項2】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルのうちの少なくとも1つが操縦可能な遠位先端を有する、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの各々が操縦可能な遠位先端を有する、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
捕捉カテーテルが磁気遠位先端を有する、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
切断部材が、移送カテーテルによって担持されており、心腔内のカテーテル位置の操作によって捕捉カテーテルが切断部材を捕捉できるように、移送カテーテルの遠位端に露出した磁気要素を有する、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
クリップと係合して捕捉するように構成された遠位端を有するクリップ除去カテーテルをさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
切断部材が、弁組織の通電切断のための高周波電極を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
切断部材が、弁組織を機械的に切断するための機械的に摩耗するまたは鋭利な刃を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
切断部材が、放射線不透過性マーカによって画定された切断ゾーンを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
捕捉カテーテルおよび移送カテーテルを心腔内に導入するように構成された送達シースをさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
送達シースが、捕捉カテーテルおよび移送カテーテルの両方を同時に収容するようにサイズ決めされている内腔を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
送達シースが経中隔シースを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
送達シースが経心尖シースを備える、請求項に記載のシステム。
【外国語明細書】