(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088541
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】デジタルホログラフィ顕微鏡検査および無傷の(untouched)末梢血白血球を用いる高精度の5部鑑別(5-part Differential)
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20220607BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220607BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20220607BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220607BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20220607BHJP
G06V 20/69 20220101ALI20220607BHJP
【FI】
G01N15/14 D
G01N15/14 C
G01N15/14 A
G01N33/48 M
G01N33/483 C
G06T7/00 630
G06T7/00 350C
G06V10/82
G06V20/69
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022054769
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2018548662の分割
【原出願日】2017-01-26
(31)【優先権主張番号】16160664.5
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16182979.1
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ノハ・ユースリー・エル-ゼヒリー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ハイデン
(72)【発明者】
【氏名】アリ・ケイメン
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・シュタンツェル
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ウーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ・ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】ガビー・マルクアルト
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・シュミット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多数の白血球を特により高いスループットで識別する、改良され信頼性のある、ラベルフリーの、好ましくは定量的な方法が必要である。
【解決手段】第1の態様において、媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のための方法であって、少なくとも1つの細胞を含む媒体をマイクロ流体デバイスに流す工程と、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスにより、マイクロ流体デバイス内の少なくとも1つの細胞の画像を取得する工程であって、画像は6μm未満の被写界深度で取得される工程と、少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定する工程とを含む。さらに、媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のためのデバイスであって、6μm未満の被写界深度を有するデジタルホログラフィ顕微鏡デバイスと;マイクロ流体デバイスと;少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定するように構成された検出システムとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のための方法であって、
少なくとも1つの細胞を含む媒体をマイクロ流体デバイスに流す工程と、
デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスにより、マイクロ流体デバイス内の少なくとも1つの細胞の画像を取得する工程であって、画像は6μm未満の被写界深度で取得される工程と、
少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定する工程と
を含む前記方法。
【請求項2】
画像は、0.6μm未満の方位分解能で取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検出は、少なくとも1つの細胞を含む媒体をマイクロ流体デバイスに流しながら実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
マイクロ流体デバイス内のフローは、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域で、少なくとも層流である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域にマイクロチャネルを含み、該マイクロチャネル内で少なくとも1つのシースフローによって層流が生じる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの参照および/または検出ビームの波面に垂直なマイクロチャネルの表面は、基本的に平面である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの視野は、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域におけるマイクロ流体デバイスの幅の1.0倍以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの細胞は血球である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
血球は白血球である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定する工程は、ディープラーニングネットワークを使用して実行される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの参照ビームおよび検出ビームは軸外である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のためのデバイスであって、
6μm未満の被写界深度を有するデジタルホログラフィ顕微鏡デバイスと;
マイクロ流体デバイスと;
少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定するように構成された検出システムと
を含む前記デバイス。
【請求項13】
デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスは、0.6μm未満の方位分解能を有する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域にマイクロチャネルを含み、マイクロ流体デバイスは、マイクロチャネル内に層流を生じさせる手段をさらに含む、請求項12または13に記載のデバイス。
【請求項15】
検出システムはディープラーニングネットワークを含む、請求項12~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体およびデジタルホログラフィ顕微鏡検査を使用する、媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のための改良された方法、ならびに特に方法を実行するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血球の試験管内診断の1つの重要な部分は、白血球(WBC)の鑑別および計数である。WBCの細胞タイプは、通常、リンパ球、単球、および顆粒球とされ、これらを血液検査結果においてWBCの3部鑑別と呼ぶ。顆粒球は、さらに3タイプの顆粒球、すなわち、好中球、好酸球、および好塩基球に分類することができる。したがって、5部鑑別とは、5つの主な末梢血白血球のタイプを指す。
【0003】
通常、ミー散乱分析などのラベルフリー法により、3部鑑別が実現可能であるが、これでは顆粒球のタイプを識別することはできない。通常、個々の標的細胞の低角度および高角度でのミー散乱を使用して、3部鑑別のために白血球を識別する。赤血球の散乱を最小限にするために、赤血球の溶血が行われる。5部鑑別の結果を得るには、細胞核および顆粒を追加でラベル付けして、好酸球および好塩基球を好中球から識別する必要がある。追加のラベル付けにより、散乱および吸収測定に基づいて、5部鑑別のために顆粒球をさらに識別することが可能になる。この方法を自動化して、フローサイトメータと共に動作する血液分析器で使用することができる。
【0004】
一般に、血液分析は、自動血液分析器を用いて行われ、不明瞭な結果(フラグ付けされた結果)の場合には、顕微鏡スライド上のギムザ染色された血液サンプルの顕微鏡検査を行って、手動で鑑別診断する。自動血液分析器の欠点は、データ分析のための規定のゲートが必要であるため、病理がゲートの限度を超える散乱情報の移動につながるものである場合、フラグ付きサンプルが生じることである。加えて、血液分析器を用いる場合、ユーザには、血小板白血球凝集体または病理形態などのWBCのX鑑別情報を可能にする画像情報がない。
【0005】
同様の制限が、顕微鏡検査スライド上の固定された、例えばパンクロマチック(panchromatically)染色された細胞の顕微鏡検査分析に存在しており、通常、最大で100~200のWBCの分析に限定される。しかしながら、病理学的な場合、対象のWBC細胞濃度は5桁超(0.1~10,000の細胞/μl)にわたることがあり、異なるWBC母集団についての十分な統計には大量の血液が必要である。さらに、ギムザ染色されたサンプルには、顕微鏡スライド上の全血サンプルの固定、乾燥、パンクロマチック染色、すなわち追加の分析工程が必要である。
【0006】
全体として、統計的検出力の低い血液スミア分析によって大きい動的濃度範囲を扱うことはできない。加えて、インピーダンスまたはミー散乱分析に基づく血液分析器は、形態学情報を提供することができない。
【0007】
血液計数器の基礎として使用される特許文献1では、偏光解消側散乱と偏光側散乱とを比較したプロットにより、固定されず染色されていない好酸球顆粒球を好中球から識別する。これは非特許文献1にも記載されている。しかしながら、一般に染色は参照方法であり、5部鑑別に適用される。
【0008】
さらに、白血球識別に関するデジタルホログラフィ顕微鏡検査(DHM)が、例えば、デジタルホログラフィ顕微鏡検査を使用する白血球識別に関して、参照によって本明細書に組み入れる特許文献2;固定された細胞を使用するDHMによる3部鑑別を報告している非特許文献2;および5部鑑別を達成できる方法を明記せずに白血球鑑別のためのDHMを報告している特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,017,497号(deGrooth、Terstappen他)
【特許文献2】DE102014200911A
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0220622(A1)号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】SHAPIRO、HOWERD M.、「Practical Flow Cytometry」、第4版、278~279頁、
図7-2;第3版、236~237頁、
図7-2
【非特許文献2】VERCRUYSEE、DRIES他:「Three-part differential of unlabeled leukocytes with a compact lens-free imaging flow cytometer」、Lab Chip.、2015年、第15巻、1123頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、多数の白血球を特により高いスループットで識別する、改良され信頼性のある、ラベルフリーの、好ましくは定量的な方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、マイクロ流体を使用する顕微鏡手法を最適化して、上記の問題を解決し、末梢血のサンプル中の血球をオンラインでモニタリングし鑑別するためのシステムを得た。
【0013】
第1の態様において、本発明は、媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のための方法であって、少なくとも1つの細胞を含む媒体をマイクロ流体デバイスに流す工程と、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスにより、マイクロ流体デバイス内の少なくとも1つの細胞の画像を取得する工程であって、画像は6μm未満の被写界深度で取得される工程と、少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定する工程とを含む方法に関する。
【0014】
本発明はさらに、媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のためのデバイスであって、
6μm未満の被写界深度を有するデジタルホログラフィ顕微鏡デバイスと;
マイクロ流体デバイスと;
少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定するように構成された検出システムとを含むデバイスに関する。
【0015】
本発明のさらなる態様および実施形態が従属請求項に開示され、これらは、限定されることなく、以下の記述、図面、および実施例から理解することができる。
【0016】
添付図面は、本発明の実施形態を示し、そのさらなる理解を伝えるべきである。記述に
関連し、図面は本発明の概念および原理を説明する役割を果たす。他の実施形態および記載される利点の多くを、図面との関連で引き出すことができる。図面の要素は必ずしも互いに縮尺通りではない。同一の、機能的に等価な、等しく作用する構成、および構成要素は、特記しない限り、図面において同一の参照数字で示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】異なる提供者の白血球の例示的な流体力学直径および量を示す図である。
【
図2】白血球およびフローセル内での白血球の位置決めに関する被写界深度(DOF)の考察を、
図2の小さいリンパ球および
図3の大きい単球についての考察と共に概略的に示す図である。図示したように、平均してWBC量の最低2/3が物理的DOF内にあり、好ましくは、最小の白血球に対して約+/-2μmのzの公差を可能にすべきである。
【
図3】白血球およびフローセル内での白血球の位置決めに関する被写界深度(DOF)の考察を、
図2の小さいリンパ球および
図3の大きい単球についての考察と共に概略的に示す図である。図示したように、平均してWBC量の最低2/3が物理的DOF内にあり、好ましくは、最小の白血球に対して約+/-2μmのzの公差を可能にすべきである。
【
図4】WBC分析の必要に適合した、赤血球(RBC)についてのDOFおよびフローセルの位置決めの考察を概略的に示す図である。配向(orientation)効果を層流により達成することができる。
【
図5】WBC分析の必要に適合した、赤血球(RBC)についてのDOFおよびフローセルの位置決めの考察を概略的に示す図である。配向(orientation)効果を層流により達成することができる。
【
図6】異なる波長、対物レンズおよび照明開口数(NA)、ならびに異なる方位分解能を使用する軸外DHMシステムにより取得したWBC画像を示す図である。
【
図7】異なる波長、対物レンズおよび照明開口数(NA)、ならびに異なる方位分解能を使用する軸外DHMシステムにより取得したWBC画像を示す図である。
【
図8】異なる波長、対物レンズおよび照明開口数(NA)、ならびに異なる方位分解能を使用する軸外DHMシステムにより取得したWBC画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の態様において、本発明は、媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のための方法であって、少なくとも1つの細胞を含む媒体をマイクロ流体デバイスに流す工程と、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスにより、マイクロ流体デバイス内の少なくとも1つの細胞の画像を取得する工程であって、画像は6μm未満の被写界深度で取得される工程と、少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定する工程とを含む方法に関する。
【0019】
方法および本デバイスにおいて、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスは特に限定されず、任意の適切なデジタルホログラフィ顕微鏡を使用することができる。特に、1つの画像からデータを再現可能なデジタルホログラフィ顕微鏡が、高スループットのために好ましい。
【0020】
WBCなどの細胞のラベルフリー識別、例えば、5部鑑別およびそれ以上(凝集体、芽細胞、アポトーシス細胞;腫瘍細胞、活性化WBCなどの追加の識別に基づくX鑑別)のために、デジタルホログラフィ顕微鏡検査(DHM)が適用される。したがって、WBC分類ワークフローは以下の通りとなり得る:透過顕微鏡検査を使用して画像を取得し、試料、すなわち細胞の干渉位相パターンを記録する。この情報から、細胞の画像を再現し、データを分析して、細胞コンパートメントなどの生体情報も取得する。また、例えば特許文献2に記載されているように、細胞濃度、吸収、および散乱または蛍光情報などのさら
なる情報を判定することができる。
【0021】
透過またはオプションの反射によるDHMを、例えば、Natan Shaked/Tel Aviv University、Ovizio/Belgium、Anand/University Barodaにより使用されているような一般的なビーム構成を参照的に用いて行うことができる。コントラストは、媒体と細胞との間、ならびに細胞内成分間のかすかな屈折率変化の散乱効果によるものである。細胞内成分の定量的および積分位相(integral phase)情報は、フローサイトメトリのミー散乱測定に関連する。しかしながら、DHMおよび無染色ワークフローによる画像分析によって、生体内の状況に近い「生存」細胞の血液分析を行うことができる。
【0022】
デジタルホログラフィ顕微鏡は、例えば軸上、軸外、垂直などの異なる構成において適切に設定可能な参照ビームおよび検出ビームを使用して動作する。好ましくは、測定は軸外で実行されて、より簡単でロバストな干渉構成を達成することができ、測定距離が短く、これによりノイズが最小限になるようにする。したがって、ある実施形態によれば、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの参照ビームおよび検出ビームは軸外である。また、好ましくは、測定は透過モードで行われる。
【0023】
被写界深度は、好ましくは5.7μm以下、より好ましくは4.7μm以下、例えば3または2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。被写界深度を浅くすると、良好な方位分解能も達成することができ、細胞の識別が容易になる。被写界深度が浅いと、白血球の顆粒(granulae)などの細胞のさらなる細胞コンパートメントを容易に観察して識別することができるため、細胞の識別を向上させることができる。また、被写界深度が浅いと、位相情報などのさらなる情報をより良好に取得することができる。
【0024】
したがって、マイクロ流体デバイスを使用すると、検出予定の細胞を絞り込むことが可能になるため、浅い被写界深度を通して細胞を容易に案内することができ、浅い被写界深度内でも細胞を適切に並べて識別することができるため、好ましくは、流れている状態でも定量化することができる。被写界深度は、深く設定されすぎると、高度な機械学習プログラムを使用しても適切な分類率が達成されない。したがって、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの開口数がより高いことは、必ずしも被写界深度の向上につながらない。
【0025】
ある実施形態によれば、画像は、0.6μm未満、好ましくは0.55μm未満、さらに好ましくは0.52μm未満、特に0.5μm以下、例えば0.45μm以下、またはさらには0.4μm以下の方位分解能で取得される。方位分解能が高いと、検出された細胞のより多くの特徴(feature)を取得することができ、それと共に、位相変化などの情報の大きさも取得することができる。
【0026】
したがって、被写界深度および方位分解能は、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスのいくつかの因子、例えば焦点距離、ビーム配置、対物レンズおよび/または照明開口数NA、ビームの波長、ビーム照射角度などに応じて決まり、かつ適切に設定することができる。
【0027】
ある実施形態によれば、検出は、少なくとも1つの細胞を含む媒体をマイクロ流体デバイスに流しながら実行される。例えば照明時間などに応じた、ぶれのない画像を撮影して十分なコントラストを有する画像を取得することのできる速度で、細胞がデジタルホログラフィ顕微鏡デバイスを通って流れる限り、フローは特に限定されない。また、十分なスループットを達成するために、好ましくは、遅すぎるフローは避けるべきである。フローは、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスおよびマイクロ流体デバイスのパラメータ、例えば、マイクロ流体チャネルの寸法、その表面状態などに応じて適切に設定することがで
きる。
【0028】
ある実施形態によれば、マイクロ流体デバイス内のフローは、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域で、少なくとも層流である。層流により、細胞を好ましい配向に設定することができるため、細胞を容易に検出することができる。層流を、例えば、マイクロ流体デバイス内の寸法に応じて、適切に設定することができる。
【0029】
ある実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域にマイクロチャネルを含み、マイクロチャネル内で少なくとも1つのシースフローによって層流が生じる。マイクロチャネルにより、フローを容易に設定し判定することができるため、定量化を簡単にすることができる。また、シースフローをマイクロチャネル内で容易に実施することができる。好ましくは、シースフローをマイクロチャネル内の少なくとも2つの対向部位について実施して、検出予定の細胞を絞り込む。さらに好ましくは、シースフローを、マイクロチャネル内、特に矩形のマイクロチャネル内の2つの、特に4つの、好ましくは垂直な方向(例えば、上、下、左、および右)から実施して、適切な絞込みおよび細胞配向を達成する。シースフローを、例えば、さらなるマイクロ流体フローをメインチャネルと比べて異なる入口から流すことにより実施することができる。好ましくは、速度フロー(speed flow)の流速は、細胞配向を変化させ得る乱流を避けるために、メインチャネル内のフローとほとんど変わらない。シースフロー速度は、チャネルの幾何形状などに基づいて容易かつ適切に決定することができる。
【0030】
好ましくは、マイクロ流体デバイス、特にマイクロチャネル内で細胞をフローにより絞り込んで、細胞がデジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの被写界深度の中央で案内されるようにする。
【0031】
ある実施形態によれば、マイクロチャネルは、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの参照および/または検出ビームの波面に垂直な少なくとも1つの表面、好ましくは少なくとも2つの表面を含む。
【0032】
ある実施形態によれば、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの参照および/または検出ビームの波面に垂直なマイクロチャネルの表面は、基本的に平面である。これにより、外乱ならびに/または参照ビームおよび/もしくは検出ビームの波面の反射を避けることができるため、信号の分析および画像の再現が容易になると共に、基本的にそのような外乱、反射などによる計算の調節をすることなく、位相情報などのさらなる情報が得られる。
【0033】
ある実施形態によれば、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスの視野は、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域におけるマイクロ流体デバイスの幅の1.0倍以下である。
【0034】
ある実施形態によれば、少なくとも1つの細胞は血球、特に白血球である。本方法およびデバイスによれば、特に白血球を識別することができ、すなわち、好塩基球、好酸球、好中球、リンパ球、および/または単球という、さらに特に全5タイプの白血球を識別することができ、5部鑑別が可能になる。しかしながら、赤血球、血小板、および細胞凝集体などの他の細胞を検出および識別することができるため、すべての血球の分析が実現可能である。
【0035】
細胞タイプの判定は、機械学習プログラムの支援により行うことができ、この機械学習プログラムでは、いくつかの参照細胞タイプの異なる配向におけるいくつかの画像を使用してプログラムをトレーニングすることができる。
【0036】
特にWBC鑑別用の画像分析を行うために、機械学習に基づく技法を使用する。そのような技法では、分析は、一般に、2つの主な段階:トレーニング段階および検査段階で行われる。
【0037】
トレーニング段階では、画像のサブセットを使用して、異なる細胞タイプを鑑別するよう分類器をトレーニングする。トレーニングモデルへの入力は、判定予定の細胞の各カテゴリーを表す画像と各画像の対応するラベルとのセットである。トレーニングプロセスは、対応する画像がある場合に、特定のラベルの確率を最大化するモデルを構築することを目的としている。
【0038】
トレーニングプロセスの出力は、分類モデルである。
【0039】
検査段階では、モデルを使用して不可視のデータを分類する。すなわち、検査段階の入力は、分類モデルと入力画像(未知のラベルを含む)とから構成され、出力は、細胞、例えばWBCタイプを表す分類ラベルである。
【0040】
以下で、トレーニング用のデータ準備を行う方法について、白血球の識別の場合を例として説明するが、本発明は白血球のみの分析に限定されない。その後、トレーニングおよび検査の例示的な詳細を提示する。
【0041】
最初に、前処理パイプラインを使用して、分類器のトレーニング工程のためのトレーニングパッチを準備することができる。これは、画像を閾値化して、細胞である可能性の高い輝点を捕捉することによって開始することができる。閾値化した後、連結成分の分析を閾値化の出力に適用することができる。連結成分ごとに成分サイズを計算し、サイズが所定の閾値t1、t2未満またはこれを超える場合に成分を拒絶することができる。拒絶された成分は、トレーニングおよび検査において除外される。その後、残りの成分を含むパッチ(パッチは連結成分を含む矩形のボックスである)を使用して、分類器をトレーニングすることができる。
【0042】
ある実施形態によれば、少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定する工程は、ディープラーニングネットワークを使用して実行される。そのようなディープラーニングネットワークにより、特に末梢血またはそれに由来するサンプルなどのより複雑なサンプル、例えば全血、末梢血などの分画を測定するときに、細胞鑑別のためにマイクロ流体デバイス内の細胞の配向を容易に考慮することができる。
【0043】
ディープラーニングネットワークは、これにより特に限定されない。
【0044】
例示として、ここでもディープラーニングネットワークの使用が白血球について示されるが、本方法はこれに限定されない。
【0045】
学習用の分類器を構築するには、任意の分類器を使用し、かつ、例えば、GHESU FLORIN C.他、「Marginal space deep learning:Efficient architecture for detection in
volumetric image data」、MICCAI、2015年、710~718頁;およびZheng他、「Four-chamber heart modeling and automatic segmentation for 3-D cardiac CT volumes using marginal space learning and steerable features」、IEEE Transactions on Medical Imaging、第27巻、第11号、
1668~1681頁、2008年により開発された、マージナルスペースディープラーニング(MSDL)アーキテクチャなどの最新の検出方法を使用して、白血球の5タイプ分類を行うことができる。機械学習分類方法の大部分が対の分類器を構築するが、MSDLは本来、マルチラベル分類器である。したがって、マルチラベル分類の問題について、畳込みネットワークを直接トレーニングすることができる。例えば、500の細胞、例えば各カテゴリーにつき100の細胞をトレーニングに使用することができ、残りの細胞を検査に使用することができる。
【0046】
この適用について、オートエンコーダ畳込みニュートラルネットワーク(CNN)または他の適切なネットワークを使用して、マージナルスペースラーニング(MSL)分類器をトレーニングすることができる。その構造は、例えば、オートエンコーダ(AE)として使用される、1つ(またはそれ以上)の隠蔽層を有するフィードフォワードニュートラルネットワークであってよい。バイアス項を無視すると、入出力層は同数のノードを有する。
【0047】
そのようなオートエンコーダの目的は、入力層(画像を表す特徴)と出力層(画像のラベル)との間の伝達関数を学習することである。隠蔽層が入力層のサイズ以上のサイズを有する場合、AEは恒等変換を学習する可能性がある。そのような自明な解を防ぐために、AEは、予め、入力よりもノードの少ない隠蔽層を有して構成される。最近、より有意な入力の表現を学習するノイズ除去オートエンコーダ(DAE)が提案された。特定の百分率(例えば、50%)の入力ノードをランダムに選んで妨害(例えば、値をゼロに設定)することができ、DAEは、観察品質が低下した場合に、元の入力ベクトルを再現することができる。DAEにより、隠蔽層は、オーバーコンプリート表現を達成するために、入力よりも多くのノードを有することがある。AEのトレーニング後、出力層を廃棄し、既にトレーニングされた隠蔽層の活性化反応を新しいAEへの入力として使用して、別のAEを積み重ねることができる。このプロセスを繰り返して、ネットワークを層ごとにトレーニングし拡張することができる。事前トレーニング後、隠蔽層の出力を高度な画像特徴として処理して、分類器をトレーニングすることができる。あるいは、ターゲット出力用にもう1つの層またはそれ以上の層を追加し、バックプロパゲーションを使用してネットワーク全体を改良することができる。
【0048】
機械学習を使用して多くの特徴を抽出することができる。これらの特徴は、必ずしも各細胞の物理的特性に対応せず、細胞を鑑別する際に重要な役割を果たすことができる。
【0049】
分類精度に影響を与える特徴の数が増加する様子を示すために、例えば、2つの特徴および3つの特徴(データは図示せず)に基づくWBC鑑別を示す散乱プロットを作成することができる。
【0050】
そのような場合、2D散乱プロットは、細胞の投影表面積を使用して、単球をリンパ球から略分離可能であることを示す。他方、平均光学的高さを使用して、好塩基球を好酸球から略分離可能である。しかしながら、好酸球と好中球とは、2D散乱プロットに基づいて重なっており、容易に分離することができない。これは、好中球母集団が高い異質性(heterogeneity)を示すことに部分的に関連する。
【0051】
3D散乱プロットにおいて細胞直径の特徴を追加すると、好酸球と好中球との分離可能性がはるかに良好になる。
【0052】
これは単に、より多くの特徴を追加すると、異なる細胞タイプを鑑別する能力を高めるのに役立つことを示す。画像のすべての可能な特徴を抽出するディープラーニング技術を使用することにより、例えば、異なる白血球の良好な5部鑑別を有効にすることができる
。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、媒体中の少なくとも1つの細胞の細胞タイプのマーカフリー検出のためのデバイスであって、
6μm未満の被写界深度を有するデジタルホログラフィ顕微鏡デバイスと;
マイクロ流体デバイスと;
少なくとも1つの細胞の細胞タイプを判定するように構成された検出システムとを含むデバイスに関する。
【0054】
本発明のデバイスを特に本方法で使用することができるため、デバイスの構成要素は、本方法に関して説明したものであってよい。
【0055】
ある実施形態によれば、デジタルホログラフィ顕微鏡デバイスは、0.6μm未満の方位分解能を有する。
【0056】
ある実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域にマイクロチャネルを含み、マイクロ流体デバイスは、例えば、前述したように、シースフローを使用してマイクロチャネル内に層流を生じさせる手段をさらに含む。
【0057】
ある実施形態によれば、検出システムは、例えば、前述したように、ディープラーニングネットワークを含む。
【実施例0058】
以下で、本発明について、いくつかの実施例を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0059】
細胞識別の検査を、健康な提供者から入手したEDTA血液について、特に白血球(WBC)について、異なる構成を使用して行った。
【0060】
最初に、コールタカウンタを参照方法として使用した。
【0061】
図1は、コールタカウンタを用いて入手した4人の異なる提供者の、異なる数NのWBC(好塩基球(BA)、好酸球(EO)、単球(MO)、好中球(NE)、リンパ球(LY)、および一般に末梢血単核細胞(PBMC))の流体力学直径d(および細胞体積V)を示しており、これは、DHMにより、全細胞体積(低開口数(NA))または細胞のスライスのみ(高NA)をイメージングするのに必要な焦点深度を示す。理想的には、コントラストに富んだ核をイメージングするために、スライスを、特に高い確率で細胞の中心を通って測定すべきである。これは、細胞直径の分散、および中~高NAでの絞込みのそれぞれの調節のため、基質表面の細胞を有する重要な作業である。シースフローにより層流に適切な細胞が絞り込まれているマイクロ流体溶液中で、WBC細胞の中心を、細胞直径とは関係なく互いに並べることができる。
【0062】
これにより、その後、50μmのチャネル幅および深さを有し、4つの側面すべてにシースフローを有する矩形のマイクロチャネルを含む構成を使用して、異なるデジタルホログラフィ顕微鏡を用いるイメージングを行う。層流が、WBCのオンライン観察用にマイクロチャネル内に設定された。DHMの画像は、全体として、マイクロチャネルの全幅、および場合により、さらに大きい面積、例えば130μm×130μmを含むものであった。DHMは、NAおよび照明波長が変化する一般的な軸外構成における透過構成により実行された。
【0063】
自動血液分析器が赤血球(RBC)およびWBCの分析を行う必要があるため、自動分析構成におけるマイクロチャネル内の細胞分析および細胞配向に関するDHMイメージングについて以下の考察を行った。
【0064】
マイクロ流体サンプル移送システムを有する高スループットDHM分析器について、WBCの高い分類率とRBCの定量的情報との両方を得るために、トレードオフを見つけるべきである。さらに、システムは、マイクロ流体流中の血球の位置決めのわずかな変化に対応するよう、十分な柔軟性を有するべきである。最後に、RBCの配向は、好ましくは光軸に垂直とすべきであるが、ディープネットワークラーニングによっても、斜めに配向された細胞の画像を含む対応するトレーニングの後に、そのような斜めの細胞の分析が有効になる。
【0065】
図2~
図5は、血球のサイズおよび形態に関する流体溶液、ならびにフローセル内での血球の位置決めについての概略的な状況を示す。一般に、赤血球および白血球の両方の分析が可能なマイクロ流体の状態に関心が示される。好ましい状態は約5μmのDOFで観察され、このDOFは、層流(z方向の、すなわち観察ビームに沿ったシース-サンプル-シースフロー)を含むマイクロ流体チャネルにおけるサンプルフローの厚さと同一に設定することができる。
図2は、異なる白血球の直径についての考察を示し、ここでは、単球が、通常約15μm以下の直径を有し、リンパ球が、通常約5μm以上の直径を有する。これらの細胞について、0.55の対物レンズNA(例えば、40倍のレンズ)および530nmの波長の照明で約5μmのDOFを達成することができ、約0.5μmの方位分解能が有効になる。
図3は、下部および上部シースフローSを有するマイクロチャネル内の位置決め(Fはフロー方向を示す)、マイクロチャネル内での細胞の軸方向の絞込みの変化、ならびに5および1μmのそれぞれの異なるDOFでの細胞の観察についてのその効果を示す側面図である。この画像では、50μmのチャネル内に5μmのサンプルフロー高さが想定されている。見てわかるように、特により浅いDOFによる、マイクロチャネル内での良好な細胞の絞込みが有利である。層流により、およそ2次元のサンプルフローを達成することができる。
【0066】
このような構成により、平均してWBC量の最低2/3が物理的DOF内にあり、最小の白血球に対して+/-2μmのzの公差を可能にする。
【0067】
図4および
図5に示す赤血球Eについても、
図2および
図3と同様の考察がなされる。ここでも、0.55の対物レンズNA(例えば、40倍のレンズ)および530nmの波長の照明で約5μmのDOFを達成することができ、約0.5μmの方位分解能が有効になる。これも図面において想定される。赤血球の場合、~6μm×2μmの寸法が、断面図に示す通常の形状に関して想定される。
【0068】
さらに、そのような細胞を斜めに観察する影響も、1つの赤血球が斜めに流れている状態で示される。配向効果が、サンプルフロー速度よりも高いシースフロー速度で層流により達成される。
【0069】
図6~
図8は、異なる物理的被写界深度および方位分解能に対応して変化する対物レンズNA、照明NA、および照明波長で取得した、異なるWBC細胞タイプの例示的な画像を示す。
【0070】
図6には、上行および下行の再現された透過像が、好塩基球(BA)、好酸球(EO)、単球(MO)、好中球(NE)、およびリンパ球(LY)について、1.3の対物レンズNA、0の照明NA(平面波)、532nmの波長の低コヒーレンス、および~1μmの被写界深度で示される。
【0071】
図7には、同じ細胞タイプの画像が、0.55の対物レンズNA、0.4の照明NA、530nmの波長の低コヒーレンス、および~4μmの被写界深度で示される。
図8では、画像が、0.55の対物レンズNA、0の照明NA(平面波)、650nmの波長の低コヒーレンス、および~6μmの被写界深度で観察された。
【0072】
図6~
図8からわかるように、画像パターンは、主に核および顆粒による細胞内構造によって特徴が豊富になるため、被写界深度(DOF)が浅くなり方位分解能が高くなるにつれてWBC細胞タイプの分類率が高くなる。
【0073】
表1は、集束光および平面波照明を用いる、40倍の一定の対物レンズ倍率での開口数(NA)および照明波長に応じた、白血球の3部および5部鑑別分類の分類率を示す。鑑別のアルゴリズムのトレーニングが、5人の健康な提供者の血液サンプルを用いて行われた。媒体(PBS緩衝液)の回折指数は1.334であった。
【0074】
【0075】
表において、3部鑑別とは、リンパ球、単球、および顆粒球の鑑別を指し、5部鑑別とは、リンパ球、単球、好中球、好酸球、および好塩基球の鑑別を指す。
【0076】
全体精度>75%を達成するためには、<5.7μmの物理的被写界深度(DOF)(焦点を合わせる細胞のスライス高さに対応する)が必要である。DOF<4.7μmで、全体精度>85%が観察された。
【0077】
ラベルフリー法に特有のものである、100%に達する好酸球および好塩基球細胞の対の識別が観察された。そのような高い精度が、固定されず染色されていない細胞を用いて、光源の波長とは関係なく得られた。これらの細胞は、免疫磁性細胞分離を使用した陰性除去(negative depletion)(対象の細胞はラベル付けされず、磁気的にラベル付けされた望ましくない細胞の除去後も浮遊したままである)により、>90%まで富化された。「生体内」の本来の白血球形態学情報のためには、EDTA血液サンプルは、好ましくは、最大24時間を超えるべきではない。この場合、画像アルゴリズムのトレーニングのための品質を維持することができる。実施例に示した5部および3部鑑別の結果については、採血からDHMイメージングまでの時間は常に8時間未満であった。
【0078】
表2は、細胞間の識別のために使用可能なWBCの主な形態差を強調している。これにより、屈折率を変化させる細胞内成分が「物理的」な光学的厚さに影響することが予想される。
【0079】
【0080】
表3は、前述したように異なる被写界深度(DOF)を使用した分類率を示し、これにより、異なる分解能を達成する。両方の場合に、WBCのスライスのみに焦点を合わせている。
【0081】
【0082】
マイクロチャネルおよびDHM、さらにアルゴリズムトレーニングを使用する構成に関する本発明の新規性は、4つの部分からなる:
【0083】
第1に、WBCをラベル付けするギムザ染色を行うのとは対照的に、白血球の画像ベースのラベルフリー5部鑑別分析を行うことができる。
【0084】
第2に、主に前方および垂直光散乱に依存する従来の血液分析器とは対照的に、ディープラーニング技術の使用により、分類の際に使用予定の特徴の領域が豊富になる。
【0085】
ディープラーニングシステムでは、隠蔽層が入力画像から特徴を抽出することができる。隠蔽層の組成に基づいて、低度および高度な特徴が抽出される。そのような特徴は、画像強度およびその統計のように簡単な場合も、エッジ、コーナなどの形成のように、より
複雑な場合もある。
【0086】
さらに、多くの特徴を抽出することができる。これらの特徴は、必ずしも各細胞の物理的特性に対応せず、細胞を鑑別する際に重要な役割を果たすことができる。
【0087】
第3に、<5.7μmのDOFおよび<0.6μmの方位分解能限界により、高い白血球鑑別精度(>75%)を認めることができ、この方位分解能限界は、対物レンズNAおよび細胞のイメージングに使用される波長の境界状態を設定する。
【0088】
最後に、最も重要なのは、白血球が、生体内の本来の状態、例えば室温で保存された、1日を超えないEDTA安定化血液サンプル内にあってよいことである。固定または染色を行う必要がなく、白血球は、血漿または等張緩衝液中で直接イメージングされる。これは、高スループットのワークフロー(一般的に、1サンプルにつき60秒、~2μlの全WBCの統計値))に適合する設定である。
【0089】
先行技術と比べて最も重要なのは、顆粒球(好中球、好酸球、および好塩基球)を識別できることである。これは、通常、他のラベルフリー法(例えば2光子顕微鏡検査、従来の位相コントラスト顕微鏡検査、強度値に基づく通常の顕微鏡検査;ミー散乱またはインピーダンス分析による血液分析)では現在達成することができない。
マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの細胞の画像が取得される領域にマイクロチャネルを含み、マイクロ流体デバイスは、マイクロチャネル内に層流を生じさせる手段をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。