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特開2022-88559光学測定システム、光学測定方法および測定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088559
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】光学測定システム、光学測定方法および測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
G01B11/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055889
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2021506348の分割
【原出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲野 大輔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する光学測定システムが提供される。
【解決手段】光学測定システムは、測定光を発生する光源と、測定光をサンプルに照射して生じる反射光または透過光を観測光として受光する受光部と、光源および受光部と光学的に接続され、任意の位置に配置可能なプローブと、受光部による検出結果に基づいて算出される分光反射率または分光透過率からサンプルの膜厚を算出する膜厚算出部と、膜厚算出部により算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する信頼度算出部とを含む。
【選択図】図35
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する光学測定システムであって、
測定光を発生する光源と、
前記測定光を前記サンプルに照射して生じる反射光または透過光を観測光として受光する受光部と、
前記光源および前記受光部と光学的に接続され、任意の位置に配置可能なプローブと、
前記受光部による検出結果に基づいて算出される分光反射率または分光透過率から前記サンプルの膜厚を算出する膜厚算出部と、
前記膜厚算出部により算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する信頼度算出部とを備える、光学測定システム。
【請求項2】
前記信頼度算出部により算出された測定信頼度を通知する出力部をさらに備える、請求項1に記載の光学測定システム。
【請求項3】
前記出力部は、前記測定信頼度の高さに対応した通知音を発生する、請求項2に記載の光学測定システム。
【請求項4】
前記出力部は、前記測定信頼度を示す光および画像の少なくとも一方を出力する、請求項2または3に記載の光学測定システム。
【請求項5】
前記測定信頼度が所定条件を満たす時点の膜厚を測定結果として決定する決定部をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項6】
前記膜厚算出部は、前記分光反射率または前記分光透過率を周波数変換して算出されるスペクトルに現れるピークに基づいて、前記サンプルの膜厚を算出し、
前記信頼度算出部は、前記スペクトルに現れるピークの大きさに基づいて、測定信頼度を算出する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項7】
前記膜厚算出部は、分光反射率または分光透過率を示すモデルのパラメータを、前記観測光に基づいて算出される分光反射率または分光透過率と一致するように、フィッティングすることで、前記サンプルの膜厚を算出し、
前記信頼度算出部は、前記膜厚算出部により決定されたフィッティングの結果に基づいて、測定信頼度を算出する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項8】
前記プローブは、前記サンプルに応じて異なる種類に変更可能に構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項9】
少なくとも前記膜厚算出部および前記信頼度算出部は、前記プローブとは独立した筐体に実装されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項10】
少なくとも前記プローブ、前記光源および前記受光部は、単一の筐体に実装されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項11】
サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する光学測定方法であって、
任意の位置に配置可能なプローブを通じて、光源が発生した測定光を前記サンプルに照射するステップと、
前記測定光を前記サンプルに照射して生じる反射光または透過光を観測光として受光部で受光し、前記受光部による検出結果に基づいて算出される分光反射率または分光透過率から前記サンプルの膜厚を算出するステップと、
算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出するステップとを備える、光学測定方法。
【請求項12】
サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する測定プログラムであって、コンピュータに、
任意の位置に配置可能なプローブを通じて、光源が発生した測定光を前記サンプルに照射したときに生じる反射光または透過光を受光して得られる検出結果に基づいて算出される分光反射率または分光透過率から、前記サンプルの膜厚を算出するステップと、
算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出するステップとを実行させる、測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の光学測定システム、その光学測定システムにおける光学測定方法、ならびにその光学測定方法を実現するための測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造された製品の膜厚を管理したいという要求が存在する。このような要求に対して、膜厚を測定するための測定装置および測定方法が知られている。
【0003】
一例として、電磁誘導または渦電流を利用した測定装置が知られている。例えば、特開平07-332916号公報(特許文献1)は、実用的な周波数の電流を用いて磁性被膜の膜厚を精度良く計測する膜厚計を開示する。また、特開平06-317401号公報(特許文献2)は、鉄基板上の非鉄塗装および導電性の非鉄基板上の非導電性塗装の双方の厚さの測定が可能なハンドヘルド式の併用塗装厚さゲージを開示する。
【0004】
また、超音波を利用した測定装置も知られている。例えば、特開平07-167639号公報(特許文献3)は、被覆内に超音波を放射するとともに超音波を受信し、その超音波信号に比例した変換信号を生成する変換器を備えた厚みゲージを開示する。
【0005】
さらに、光を利用した測定装置も知られている。例えば、国際公開2010/013429号(特許文献4)は、基材面に形成された膜の膜厚を、分光反射率を測定することによって求める膜厚測定装置を開示する。
【0006】
これらの膜厚を測定するための測定装置および測定方法のうち、電磁誘導または渦電流を利用した装置、ならびに、超音波を利用した装置の測定精度は、光を利用した装置に比較して劣る。そのため、膜厚の測定には、光を利用した測定装置を用いることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07-332916号公報
【特許文献2】特開平06-317401号公報
【特許文献3】特開平07-167639号公報
【特許文献4】国際公開2010/013429号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献4に開示される膜厚測定装置は、光源からの光が、膜を備えた測定対象面に垂直に入射し、測定対象面で反射された光が分光センサに入射するように構成されている。光源からの光を測定対象面に垂直に入射させるために、据置型の構成を前提としている。
【0009】
製品の品質管理などを行うためには、例えば、製造ラインの任意の位置で手軽に測定したいという要求が存在する。また、表面が曲面なサンプルや複雑な形状のサンプルを簡便に測定したいという要求も存在する。しかしながら、上述の先行技術は、このような要求を満たすような解決手段を提供するものではない。
【0010】
本発明の一つの目的は、サンプルの膜厚を適切に測定できる光学測定システムなどを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面に従えば、サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する光学測定システムが提供される。光学測定システムは、測定光を発生する光源と、測定光をサンプルに照射して生じる反射光または透過光を観測光として受光する受光部と、光源および受光部と光学的に接続され、任意の位置に配置可能なプローブと、受光部による検出結果に基づいて算出される分光反射率または分光透過率からサンプルの膜厚を算出する膜厚算出部と、膜厚算出部により算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する信頼度算出部とを含む。
【0012】
光学測定システムは、信頼度算出部により算出された測定信頼度を通知する出力部をさらに含んでいてもよい。
【0013】
出力部は、測定信頼度の高さに対応した通知音を発生するようにしてもよい。
【0014】
出力部は、測定信頼度を示す光および画像の少なくとも一方を出力するようにしてもよい。
【0015】
光学測定システムは、測定信頼度が所定条件を満たす時点の膜厚を測定結果として決定する決定部をさらに含んでいてもよい。
【0016】
膜厚算出部は、分光反射率または分光透過率を周波数変換して算出されるスペクトルに現れるピークに基づいて、サンプルの膜厚を算出してもよい。信頼度算出部は、スペクトルに現れるピークの大きさに基づいて、測定信頼度を算出してもよい。
【0017】
膜厚算出部は、分光反射率または分光透過率を示すモデルのパラメータを、観測光に基づいて算出される分光反射率または分光透過率と一致するように、フィッティングすることで、サンプルの膜厚を算出してもよい。信頼度算出部は、膜厚算出部により決定されたフィッティングの結果に基づいて、測定信頼度を算出してもよい。
【0018】
プローブは、サンプルに応じて異なる種類に変更可能に構成されていてもよい。
【0019】
少なくとも膜厚算出部および信頼度算出部は、プローブとは独立した筐体に実装されていてもよい。
【0020】
少なくともプローブ、光源および受光部は、単一の筐体に実装されていてもよい。
【0021】
本発明の別の局面に従えば、サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する光学測定方法が提供される。光学測定方法は、任意の位置に配置可能なプローブを通じて、光源が発生した測定光をサンプルに照射するステップと、測定光をサンプルに照射して生じる反射光または透過光を観測光として受光部で受光し、受光部による検出結果に基づいて算出される分光反射率または分光透過率からサンプルの膜厚を算出するステップと、算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出するステップとを含む。
【0022】
本発明のさらに別の局面に従えば、サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する測定プログラムが提供される。測定プログラムは、コンピュータに、任意の位置に配置可能なプローブを通じて、光源が発生した測定光をサンプルに照射したときに生じる反射光または透過光を受光して得られる検出結果に基づいて算出される分光反射率または分光透過率から、サンプルの膜厚を算出するステップと、算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のある実施の形態によれば、サンプルの膜厚を適切に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態に従う光学測定システムの構成例を示す模式図である。
図2】本実施の形態に従う光学測定システムの機能構成例を示す模式図である。
図3】本実施の形態に従う測定装置に含まれる演算処理部の機能構成例を示す模式図である。
図4】本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるプローブの外観の一例を示す模式図である。
図5】本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるプローブの断面構造の一例を示す模式図である。
図6】本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるペン型のプローブの一例を示す模式図である。
図7】本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるペン型のプローブに装着されるアタッチメントの一例を示す模式図である。
図8】本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるV溝型のプローブの一例を示す模式図である。
図9】本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるL字型のプローブの一例を示す模式図である。
図10】本実施の形態に従う光学測定システムで利用される非接触型のプローブの一例を示す模式図である。
図11】本実施の形態に従う光学測定システムで利用される非接触型のプローブの一例を示す模式図である。
図12】本実施の形態に従う光学測定システムで利用される先端可動式のプローブの一例を示す模式図である。
図13】本実施の形態に従う光学測定システムで利用される曲面用のプローブの一例を示す模式図である。
図14】本実施の形態に従う光学測定システムで利用される液体用のプローブの一例を示す模式図である。
図15】本実施の形態に従う光学測定システムで利用される油膜用のプローブの一例を示す模式図である。
図16】本実施の形態に従う光学測定システムで利用される複数角度のプローブの一例を示す模式図である。
図17】本実施の形態に従う光学測定システムにおける測定装置およびプローブの使用形態の一例を示す図である。
図18】本実施の形態の変形例に従う光学測定システムを示す模式図である。
図19】本実施の形態の別の変形例に従う光学測定システムを示す模式図である。
図20】本実施の形態に従う光学測定システムが膜厚測定の対象とするサンプルの断面構造の一例を示す模式図である。
図21】本実施の形態に従う光学測定システムにおける膜厚測定を不安定にする要因を説明するための図である。
図22】本実施の形態に従う光学測定システムにおける膜厚測定を不安定にする別の要因を説明するための図である。
図23】本実施の形態に従う光学測定システムにおける膜厚測定を不安定にするさらに別の要因を説明するための図である。
図24】本実施の形態に従う光学測定システムにおける測定信頼度を算出する方法の一例を説明するための図である。
図25】本実施の形態に従う光学測定システムにおける測定信頼度を算出する方法の別の一例を説明するための図である。
図26】本実施の形態に従う光学測定システムにおける測定信頼度を算出する方法のさらに別の一例を説明するための図である。
図27図21に示すプローブの各状態において測定される分光反射率の一例を示す図である。
図28】本実施の形態に従う光学測定システムの探索支援モードにおける処理を説明するための図である。
図29】本実施の形態に従う光学測定システムの探索支援モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
図30】本実施の形態に従う光学測定システムの自動測定モードにおける処理を説明するための図である。
図31】本実施の形態に従う光学測定システムの自動測定モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
図32】本実施の形態に従う光学測定システムの探索支援付き自動測定モードにおける処理を説明するための図である。
図33】本実施の形態に従う光学測定システムの探索支援付き自動測定モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
図34】本実施の形態に従う光学測定システムにおける測定信頼度の通知形態の一例を示す模式図である。
図35】本実施の形態に従う光学測定システムが提供する機能構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
<A.光学測定システム>
まず、本実施の形態に従う光学測定システム1の構成例について説明する。光学測定システム1は、光を利用してサンプルの膜厚を測定する光学式の膜厚測定装置である。より具体的には、光学測定システム1は、分光干渉式の膜厚測定装置である。
【0027】
本明細書において、「膜厚」は、任意のサンプルに含まれる特定の層あるいは膜の厚さを意味する。すなわち、光学測定システム1は、サンプルに含まれる層の厚さである膜厚を測定する。
【0028】
以下の説明においては、サンプルに光を照射してその反射光を観測する光学系(反射光観測系)について主として説明するが、サンプルに光を照射してその透過光を観測する光学系(透過光観測系)にも当然に適用可能である。そのため、以下の説明において、特段の説明がない限り、「反射光」との用語は、本来の「反射光」に加えて「透過光」も包含する。同様に、「反射率」との用語は、本来の「反射率」に加えて「透過率」も包含する。
【0029】
(a1:システム構成例)
図1は、本実施の形態に従う光学測定システム1の構成例を示す模式図である。光学測定システム1は、測定装置100と、測定装置100と光学的に接続されたプローブ200とを含む。
【0030】
特に、本実施の形態に従う光学測定システム1は、任意の位置で測定が可能な可搬型として構成される。図1に示す構成例では、ユーザは、一方の手で測定装置100を把持しつつ、他方の手でプローブ200を把持して、任意のサンプルを任意の位置で測定できるようになっている。なお、測定中において、ユーザが測定装置100および/またはプローブ200を常に把持しておく必要はない。このように、プローブ200は、任意の位置に配置可能になっている。
【0031】
測定装置100とプローブ200との間は、光ファイバー10および光ファイバー20を介して接続されている。光ファイバー10の一端と光ファイバー20の一端とは、カプラ28を介して着脱可能に接続されている。
【0032】
サンプルの形状および特性に応じて複数種類のプローブ200が用意されてもよい。この場合には、プローブ200を容易に交換できるようにカプラ28を設けてもよい。カプラ28は、例えば、ワンタッチでプローブ200を着脱できるような構成を採用することが好ましい。カプラ28は、接続、脱離、付替などにより、測定への影響がないような構造が好ましい。但し、1種類のプローブ200のみを利用する構成とする場合には、カプラ28を省略してもよい。
【0033】
光ファイバー10はY型光ファイバーであり、光ファイバー10の分岐部16からは、分岐ファイバー12および分岐ファイバー14が伸びている。
【0034】
(a2:測定装置100の構成例)
図2は、本実施の形態に従う光学測定システム1の機能構成例を示す模式図である。図2を参照して、測定装置100は、サンプルに光を照射し、サンプルに光を照射することで生じる光(反射光または透過光)を受光する。以下の説明においては、サンプルに照射する光を「測定光」(図2に示す測定光22)と称し、サンプルに光を照射することで生じる光を「観測光」(図2に示す観測光24)とも称す。
【0035】
より具体的には、測定装置100は、典型的な構成要素として、光源102と、分光測定部104と、出力部106と、操作部108と、演算処理部110と、電源部130とを含む。測定装置100に含まれる構成要素はパッケージ化されて筐体に収められている。図2に示す構成例においては、演算処理部110は、プローブ200とは独立した筐体に実装されている。
【0036】
プローブ200は、光源102および分光測定部104と光学的に接続される。より具体的には、分岐ファイバー12は、光源102と光学的に接続され、分岐ファイバー14は、分光測定部104と光学的に接続される。分岐ファイバー12は、光源102からの測定光22をサンプルに照射(投光)するとともに、サンプルからの観測光24を分光測定部104に導く。
【0037】
光源102は、例えば、白色LEDや自然光LEDなどの発光体を有しており、測定光22を発生する。光源102が発生する測定光22は、所定の波長範囲に亘る成分を有しているブロードな光であることが好ましい。測定装置100を小型化するために、光源102は、比較的低電圧でも動作するものが好ましい。
【0038】
分光測定部104は、測定光22をサンプルに照射して生じる反射光または透過光を観測光24として受光する受光部に相当する。分光測定部104は、観測光24の波長毎の強度を出力する。典型的には、分光測定部104は、分岐ファイバー14を介して入射する観測光24を回折する回折格子と、回折格子に対応付けて配置される複数チャネルを有する受光素子とを含む。受光素子は、ラインセンサあるいは2次元センサなどで構成され、波長成分毎の強度を検出結果として出力できる。
【0039】
分光測定部104の光学系としては、例えば、Czerny-Turner型、Fastie-Ebert型、Paschen-Runge型などを採用できる。
【0040】
出力部106は、演算処理部110による演算結果をユーザへ出力する。特に、出力部106は、演算処理部110により算出された測定信頼度を通知する。出力部106としては、情報を画像や光でユーザへ通知するディスプレイ、タッチパネル、LEDを採用してもよいし、情報を音声でユーザへ通知する音声発生部(スピーカ)を採用してもよいし、情報を振動でユーザへ通知する振動子を採用してもよい。
【0041】
操作部108は、ユーザ操作を受け付ける。操作部108は、タッチパネル、キーボード、マウス、ペンタブレット、ボタンなどの任意の入力デバイスを採用してもよい。
【0042】
演算処理部110は、膜厚算出機能として、分光測定部104による検出結果(観測光24の波長毎の強度)に基づいて算出される分光反射率(あるいは、分光透過率)からサンプルの膜厚を算出する。演算処理部110は、膜厚算出機能に加えて、信頼度算出機能を有している。すなわち、演算処理部110は、算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する。さらに、演算処理部110は、後述するような各種処理も実行する。
【0043】
サンプルの膜厚を決定するアルゴリズムとしては、FFT(Fast Fourier Transform)法や最適化法などを採用できる。
【0044】
電源部130は、演算処理部110を含む測定装置100の各構成要素に電力を供給する。電源部130は、外部電源から供給される電力の電圧を調整して、測定装置100の各構成要素に提供する。電源部130は、外部電源からの電力供給が遮断しても、測定装置100の各構成要素への電力供給を継続できるように、バッテリ132を内蔵していてもよい。
【0045】
図3は、本実施の形態に従う測定装置100に含まれる演算処理部110の機能構成例を示す模式図である。図3を参照して、演算処理部110は、プロセッサ112と、主メモリ114と、内部インターフェイス116と、汎用インターフェイス117と、ネットワークインターフェイス118と、ストレージ120とを含む。
【0046】
プロセッサ112は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理部であり、ストレージ120に格納されている1または複数のプログラムを主メモリ114に読み出して実行する。主メモリ114は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)といった揮発性メモリであり、プロセッサ112がプログラムを実行するためのワーキングメモリとして機能する。
【0047】
ストレージ120は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなり、各種プログラムやデータを格納する。より具体的には、ストレージ120は、オペレーティングシステム122(OS:Operating System)と、測定プログラム124と、検出結果126と、測定結果128とを格納する。
【0048】
オペレーティングシステム122は、プロセッサ112がプログラムを実行する環境を提供する。測定プログラム124は、プロセッサ112によって実行されることで、本実施の形態に従う光学測定方法などを実現する。検出結果126は、分光測定部104が出力する観測光24の波長毎の強度のデータを含む。測定結果128は、測定プログラム124の実行によって得られるサンプルの膜厚の測定結果を含む。
【0049】
内部インターフェイス116は、測定装置100に含まれる構成要素との間のデータ伝送を仲介する。
【0050】
汎用インターフェイス117は、例えば、USB(Universal Serial Bus)などにより構成され、外部装置との間のデータ伝送を仲介する。ネットワークインターフェイス118は、例えば、有線LANあるは無線LANなどにより構成され、外部装置との間のデータ伝送を仲介する。汎用インターフェイス117および/またはネットワークインターフェイス118は、ストレージ120に格納されている検出結果126の他の情報処理装置への送信、および、他の情報処理装置により処理された測定結果128の受信などを行ってもよい。このような他の情報処理装置とのインターフェイスを用意することで、他の情報処理装置が必要な解析処理の全部または一部を担当することができる。
【0051】
ストレージ120に格納された測定プログラム124などは、任意の記録媒体(例えば、光学ディスクなど)などを介してインストールされてもよいし、ネットワークインターフェイス118などを介してサーバ装置からダウンロードされてもよい。
【0052】
測定プログラム124は、オペレーティングシステム122の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼び出して処理を実行させるものであってもよい。そのような場合、当該モジュールを含まない測定プログラム124についても本発明の技術的範囲に含まれる。測定プログラム124は、他のプログラムの一部に組み込まれて提供されるものであってもよい。
【0053】
なお、演算処理部110のプロセッサ112がプログラムを実行することで提供される機能の全部または一部をハードワイヤードロジック回路(例えば、FPGA(field-programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)など)によって実現してもよい。また、CPUやGPUなどのプロセッサに加えて、DSP(Digital Signal Processor)およびISP(Image Signal Processor)などを一体化したSoC(System on Chip)を用いて実現してもよい。
【0054】
(a3:プローブ200の構成例)
図4は、本実施の形態に従う光学測定システム1で利用されるプローブ200の外観の一例を示す模式図である。図4に示されるプローブ200は、測定装置100から供給される測定光22を照射するとともに、サンプルで生じる観測光24を受光する投受光部202を有している。プローブ200の端面は平坦な円形になっており、円形の中心部分に形成された窪みに投受光部202が形成されている。
【0055】
図5は、本実施の形態に従う光学測定システム1で利用されるプローブ200の断面構造の一例を示す模式図である。
【0056】
図5(A)に示すように、プローブ200の内部には、光ファイバー20と光学的に接続された導光路204が形成されている。導光路204は、光ファイバー20を介して供給された光を投受光部202に導くとともに、投受光部202に入射した光を光ファイバー20へ導く。
【0057】
測定状態において、図5(A)に示すプローブ200の端面をサンプル4に接触させた状態で、サンプル4に測定光22を照射する。サンプル4で生じる観測光24が測定装置100で解析処理されて、サンプル4の膜厚が測定される。
【0058】
図5(B)に示すように、プローブ200に装着されるレファレンスキャップ30が用意されてもよい。レファレンスキャップ30は、光学測定システム1の校正のために使用される。また、レファレンスキャップ30は、プローブ200の保管時にホコリなどの侵入を防止するために用いることもできる。
【0059】
レファレンスキャップ30は、プローブ200に装着した状態で、プローブ200の投受光部202と対向する位置にミラー32が設けられている。ミラー32は、投受光部202から照射される測定光22を反射して、観測光24として投受光部202へ戻す。プローブ200にレファレンスキャップ30を装着した状態で測定される観測光24は、反射率の基準(レファレンス)として用いられる。すなわち、プローブ200にレファレンスキャップ30を装着した状態で測定される観測光24は、レファレンスシグナルとして取得される。
【0060】
上述したように、サンプル4の形状および特性に応じて複数種類のプローブ200が用意されてもよい。ユーザは、サンプル4に応じて、複数種類のプローブ200のうち適切なプローブ200を、カプラ28を介して測定装置100と光学的に接続する。このように、プローブ200は、サンプル4に応じて異なる種類に変更可能に構成されている。
【0061】
複数種類のプローブ200の一例としては、(1)聴診器型プローブ、(2)ペン型プローブ、(3)V溝型プローブ、(4)L字型プローブ、(5)ミニスポットプローブ、(6)非接触プローブ、(7)先端可動式プローブ、(8)曲面用プローブ、(9)液体中プローブ、(10)油膜用プローブ、(11)複数角度プローブ、などが挙げられる。
【0062】
(1)聴診器型プローブは、上述の図4に示すような形状を有しており、測定面に押し当てることができるようなサンプル4の膜厚を測定するのに適している。例えば、透明あるいは半透明な平面状サンプル(例えば、食品包装用ラップ、PETフィルム、ガラス基板、半導体などの平面状基板、平面状基板上に形成されたコーティング層など)の膜厚を測定するために用いることができる。聴診器型プローブは、平坦な端面を有しているため、サンプル4に押し当てることで、測定面に対する光照射角度の垂直出し(入射角および反射角を0°にする光軸調整)を容易に実現できる。すなわち、ユーザが意識することなく、測定光22を測定面に対して垂直に照射できる。
【0063】
(2)ペン型プローブは、主として、サンプル4の局所的な膜厚を測定するために用いられる。
【0064】
図6は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるペン型のプローブ200Cの一例を示す模式図である。図6を参照して、プローブ200Cは、含まれる局所的な立体構造を有するサンプル4の膜厚を測定する。ペンと同様の形状とすることで、ユーザの把持性および作業性を高めることができる。
【0065】
プローブ200Cの先端には、サンプル4に応じたアタッチメントを装着できるようにしてもよい。
【0066】
図7は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるペン型のプローブ200Cに装着されるアタッチメントの一例を示す模式図である。図7(A)には、先端ほど広くなるアタッチメント210の例を示す。アタッチメント210を装着することで、サンプル4の測定面が平坦であるような場合に、プローブ200Cを押し当てやすくなる。図7(B)には、先端ほど細くなるアタッチメント212の例を示す。アタッチメント212を装着することで、サンプル4の測定面が狭い場合であっても、プローブ200Cを押し当てやすくなる。このように、プローブ200Cの先端に装着可能なアタッチメントを用意することで、様々な形状のサンプル4に対応できる。
【0067】
(3)V溝型プローブは、主として、円筒状のサンプル4(例えば、カテーテルや金属管など)の外側に形成されたコーティング層の膜厚を測定するために用いられる。
【0068】
図8は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるV溝型のプローブ200Dの一例を示す模式図である。図8を参照して、プローブ200Dは、サンプル4を支持する一対のサポート部材214を含む。サポート部材214間には、測定光22および観測光24が通過する間隔が設けられている。
【0069】
V溝型のプローブ200Dのサポート部材214でサンプル4を支持することで、サンプル4の曲面上の測定領域部分(微小面)に対する光照射角度の垂直出しを容易に実現できる。なお、サンプル4の曲率に合わせて、サポート部材214の開き角度を調整できるような機構を採用してもよい。具体的には、V字状の溝を構成するサポート部材214の間にばねなどを配置して、サンプル4を押し当てる力の大きさに応じて開き角度が調整できるような機構を採用してもよい。
【0070】
(4)L字型プローブは、主として、円筒状サンプルの内側に形成されたコーティング層の膜厚を測定するために用いられる。L字型プローブは、サンプルの上部に限られた空間しかない場合でもアクセスできるように折り曲げ形状に構成されている。
【0071】
図9は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用されるL字型のプローブの一例を示す模式図である。図9(A)を参照して、L字型のプローブ200Eの内部には、光ファイバー20と光学的に接続された導光路204と、ミラー216とが設けられている。導光路204から照射された測定光22は、ミラー216で伝搬方向が90°変化して、サンプル4の測定面に照射される。同様に、サンプル4からの観測光24は、ミラー216で伝搬方向が90°変化して導光路204へ導かれる。
【0072】
図9(B)には、図9(A)に示すプローブ200Eの外周側にサポート部材218が設けられたプローブ200Fを示す。プローブ200Fのサポート部材218は、サンプル4の内径に合わせて選択されることで、円筒状のサンプル4内でプローブ200Fを容易に回転させることができる。これによって、サンプル4の内側に形成されたコーティング層の膜厚を全周に亘って測定することができる。
【0073】
(5)ミニスポットプローブは、主として、聴診器型プローブでは、表面が荒れたサンプル、表面に凹凸のあるサンプル、表面が光拡散性のサンプルなどの膜厚を測定するために用いられる。ミニスポットプローブは、測定光22の照射領域(受光領域)が微小なスポットになっているため、観測光24に含まれるノイズ成分を低減できる。
【0074】
(6)非接触プローブは、サンプル上の測定位置からプローブまでの距離が比較的長くても測定可能に設計された光学系を有しており、サンプルに直接接触せずに測定が可能になっている。
【0075】
図10は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用される非接触型のプローブ200Gの一例を示す模式図である。図10を参照して、プローブ200Gは、レンズ220およびレンズ222を含み、導光路204から照射された測定光22をサンプル4上に収束させる。同様に、レンズ220およびレンズ222は、サンプル4からの観測光24を導光路204へ導く。このような光学系を採用することで、プローブ200Gをサンプル4に直接接触させなくても、サンプル4の膜厚を測定できる。
【0076】
非接触プローブは、ユーザにより把持されて使用されるため、光学測定システム1により提供される測定モード(後述する)がより有効である。
【0077】
なお、図10には、焦点位置が固定された構成例を示すが、焦点位置を可変にしてもよい。
【0078】
図11は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用される非接触型のプローブ200Hの一例を示す模式図である。図11(A)および図11(B)を参照して、プローブ200Hにおいて、レンズ222は光軸方向の位置を変更可能に構成される。レンズ222をレンズ220から遠ざけることによって、焦点位置は長くなり(図11(A)参照)、レンズ222をレンズ220に近付けることによって、焦点位置は短くなる(図11(B)参照)。
【0079】
(7)先端可動式プローブは、例えば、入口が狭い構造体の内部の膜厚やアクセス経路が曲がっているサンプルの膜厚などを測定するために用いられる。
【0080】
図12は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用される先端可動式のプローブ200Iの一例を示す模式図である。図12を参照して、プローブ200Iの先端は、図9に示すL字型のプローブと同様に、測定光22および観測光24の伝搬方向を変化させるミラー(図示しない)が設けられている。そして、図12(A)および図12(B)に示すように、プローブ200Iの先端部は、ユーザが操作することで先端が自在に曲がる構造になっている。これによって、ユーザがプローブを直接押し当てることができないような場合に有効である。
【0081】
(8)曲面用プローブは、主として、測定位置が曲面になっているサンプルの膜厚などを測定するために用いられる。
【0082】
図13は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用される曲面用のプローブ200Jの一例を示す模式図である。図13を参照して、プローブ200Jの先端には、屈曲可能なフレキシブル部226が設けられている。フレキシブル部226は、柔らかい素材で構成されている。ユーザは、プローブ200Jをサンプル4の任意の測定位置に対して押し当てることで、フレキシブル部226が変形して、適切な状態(すなわち、測定面に対する光照射角度の垂直出しがされた状態)を実現できる。
【0083】
フレキシブル部226の先端には、サンプル4と接触する接触部228が設けられている。接触部228の中心部には投受光部202が設けられるとともに、接触部228の露出面の外周にはゴムパッキン230が設けられている。ゴムパッキン230を設けることで、サンプル4との接触性を高めることができる。
【0084】
(9)液体中プローブは、主として、液体中に存在するサンプルの膜厚などを測定するために用いられる。
【0085】
図14は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用される液体用のプローブ200Kの一例を示す模式図である。図14を参照して、プローブ200Kは、一例として、聴診器型プローブと同様の形態を採用しているが、液体中でも使用できるように、各部が密封されている。
【0086】
(10)油膜用プローブは、プローブ先端の測定位置と接触する部分が針状に形成されており、油膜をはじめとする液体の膜の膜厚を容易に測定できる。
【0087】
図15は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用される油膜用のプローブ200Lの一例を示す模式図である。図15を参照して、プローブ200Lは、一例として、聴診器型プローブと同様の形態を採用しているが、油膜への影響を低減できるように、針部234が設けられている。
【0088】
(11)複数角度プローブは、サンプル4に対する測定光22の入射角を異ならせることができる構成を採用する。
【0089】
図16は、本実施の形態に従う光学測定システムで利用される複数角度のプローブ200Mの一例を示す模式図である。図16を参照して、プローブ200Mは、サンプル4の測定面に対して垂直ではない角度で測定光22を入射できるようになっている。また、サンプル4からの観測光24もサンプル4の測定面に対して垂直ではない角度で伝搬するので、そのような観測光24も受信できるように構成されている。
【0090】
上述の図1および図2には、測定装置100とプローブ200とが別体になっている構成例を示したが、測定装置100とプローブ200とを連結できるようにしてもよいし、測定装置100とプローブ200とを一体化してもよい。
【0091】
図17は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける測定装置100およびプローブ200の使用形態の一例を示す図である。
【0092】
図17(A)には、測定装置100とプローブ200とを連結して一体化する構成例を示す。プローブ200が測定光22を上方向に照射するように構成することで、フィルムなどのサンプル4の膜厚を測定するのに適した卓上型の光学測定システムを実現できる。
【0093】
図17(B)を参照して、測定装置100とプローブ200とを一体化した構成例を示す。このような一体化した構成を採用することで、光学測定システムの全体構成を簡素化できる。
【0094】
(a4:変形例その1:一体型)
図18は、本実施の形態の変形例に従う光学測定システム1Aを示す模式図である。図18を参照して、光学測定システム1Aは、図1および図2に示す測定装置100とプローブ200との機能をパッケージ化した測定装置100Aを含む。
【0095】
より具体的には、測定装置100Aは、典型的な構成要素として、光源102と、分光測定部104と、出力部106と、操作部108と、演算処理部110と、電源部130と、プローブ200とを含む。プローブ200は、サンプルと接触できるように、測定装置100Aの筐体から露出した部分に配置されている。このように、図18に示す構成例において、プローブ200、光源102および分光測定部104は、単一の筐体に実装されている。
【0096】
図18に示す各構成要素は、図2に示す同じ参照符号が付された構成要素と実質的に同一の機能を有しているので、ここでは、詳細な説明は行わない。但し、光源102は、測定装置100Aの筐体内に配置された光ファイバー52を介してプローブ200と光学的に接続されており、分光測定部104は、測定装置100Aの筐体内に配置された光ファイバー54を介してプローブ200と光学的に接続されている。
【0097】
(a5:変形例その2:無線接続構成)
上述の図1および図2には、測定装置100とプローブ200とが光学的に接続された構成例を示したが、測定装置100とプローブ200とを無線化してもよい。
【0098】
図19は、本実施の形態の別の変形例に従う光学測定システム1Bを示す模式図である。図19を参照して、光学測定システム1Bは、測定装置100Bと、高機能化プローブ200Bとを含む。
【0099】
測定装置100Bは、典型的な構成要素として、出力部106と、操作部108と、演算処理部110と、電源部130と、通信部134とを含む。測定装置100Bに含まれる構成要素はパッケージ化されて筐体に収められている。
【0100】
高機能化プローブ200Bは、プローブ200に加えて、光源102と、分光測定部104と、電源部130と、通信処理部136とを含む。高機能化プローブ200Bに含まれる構成要素はパッケージ化されて筐体に収められている。このように、図19に示す構成例において、プローブ200、光源102および分光測定部104は、単一の筐体に実装されている。
【0101】
測定装置100Bの通信部134と高機能化プローブ200Bの通信処理部136とは、分光測定部104による検出結果(観測光24の波長毎の強度)を無線通信によりやり取りする。無線通信としては、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、4Gや5Gなどの公衆無線回線などの任意の方式を採用できる。
【0102】
通信処理部136は、高機能化プローブ200Bにおける各種処理に加えて、分光測定部104による検出結果を無線送信する。通信部134は、通信処理部136により無線送信された分光測定部104による検出結果を演算処理部110へ出力する。
【0103】
図19に示すその他の各構成要素は、図2に示す同じ参照符号が付された構成要素と実質的に同一の機能を有しているので、ここでは、詳細な説明は行わない。
【0104】
高機能化プローブ200Bの動作状態を測定装置100Bからの指令によって制御できるようにしてもよい。例えば、測定装置100Bからの指令に応じて、高機能化プローブ200Bの光源102からの測定光22の照射を有効化/無効化するようにしてもよいし、高機能化プローブ200Bの通信処理部136の無線送信を有効化/無効化するようにしてもよい。
【0105】
高機能化プローブ200Bを使用する際には、外部電源からの電力供給ではなく、電源部130のバッテリ132からの電力供給で動作するようにしてもよい。
【0106】
(a6:実装方法)
上述した測定装置100,100A,100Bは、小型のパーソナルコンピュータを用いて実装してもよい。この場合、測定装置100,100A,100Bに含まれる多くの構成要素は、パーソナルコンピュータに含まれることになる。あるいは、上述した測定装置100,100A,100Bをスマートフォンやタブレットなどを用いて実装してもよい。
【0107】
本実施の形態に従う光学測定システム1の実装方法は、どのような形態であってもよく、各時代において利用可能な技術を用いて適宜実装すればよい。
【0108】
<B.膜厚測定の処理例>
次に、本実施の形態に従う光学測定システム1による膜厚測定の処理例について説明する。
【0109】
図20は、本実施の形態に従う光学測定システム1が膜厚測定の対象とするサンプル4の断面構造の一例を示す模式図である。説明の便宜上、図20には、基板層42上にコーティング層41が形成されたサンプル4を示す。コーティング層41は、空気層40と接しているとする。
【0110】
図20を参照して、プローブ200から照射された測定光22がコーティング層41と基板層42との界面で反射して生じる反射光について考える。以下の説明では、添え字iを用いて各層を表現する。すなわち、空気層40を添え字「0」、サンプルのコーティング層41を添え字「1」、基板層42を添え字「2」とする。また、各層における屈折率を添え字iを用いて、屈折率nと表す。
【0111】
互いに異なる屈折率nをもつ層の界面では光の反射が生じるため、屈折率の異なるi層とi+1層との間の各境界面でのP偏光成分およびS偏光成分の振幅反射率(Fresnel係数)r(P) i,i+1,r(S) i,i+1は次のように表わすことができる。
【0112】
【数1】
【0113】
ここで、φはi層における入射角である。この入射角φは、以下のようなSnellの法則によって、最上層の空気層40における測定光22の入射角から計算できる。
【0114】
sinφ=Nsinφ
光が干渉可能な膜厚をもつ層内では、上式で表される振幅反射率で反射する光が層内を何度も往復する。そのため、隣接する層との界面で直接反射した光と層内を多重反射した後の光との間ではその光路長が異なるため、位相が互いに異なったものとなり、コーティング層41の表面において光の干渉が生じる。このような、各層内における光の干渉効果を示すために、i層の層内における光の位相角βを導入すると、以下のように表わすことができる。
【0115】
【数2】
【0116】
ここで、dはi層の膜厚を示し、λは入射光の波長を示す。
【0117】
より単純化するために、サンプル4に対して垂直に光が照射される場合、すなわち入射角φ=0とすると、P偏光とS偏光との区別はなくなり、各層間の界面における振幅反射率および膜厚の位相角βは以下のようになる。
【0118】
【数3】
【0119】
さらに、図20に示すサンプル4についての反射率Rは、以下のようになる。
【0120】
【数4】
【0121】
上式において、位相角βについての周波数変換(フーリエ変換)を考えると、位相因子(Phase Factor)であるcos2βは反射率Rに対して非線形となる。そこで、この位相因子cos2βについて線形性を有する関数への変換を行う。一例として、この反射率Rを以下の式のように変換し、独自の変数である波数変換反射率R’を定義する。
【0122】
【数5】
【0123】
この波数変換反射率R’は、位相因子cos2βについての1次式となり、線形性を有することになる。ここで、式中のRは波数変換反射率R’における切片であり、Rは波数変換反射率R’における傾きである。すなわち、この波数変換反射率R’は、各波長における反射率Rの値を周波数変換に係る位相因子cos2βに対して線形化するための関数である。なお、このような位相因子について線形化するための関数としては、1/(1-R)という関数を用いてもよい。
【0124】
したがって、対象とするコーティング層41内の波数Kは以下のように定義できる。
【0125】
【数6】
【0126】
ここで、コーティング層41内の電磁波の伝搬特性は波数Kに依存する。すなわち、真空中において波長λをもつ光は、層内ではその光速度が低下するため、波長もλからλ/nまで長くなることがわかる。このような波長分散現象を考慮して、波数変換反射率R’を以下のように定義する。
【0127】
【数7】
【0128】
この関係から、波数変換反射率R’を波数Kについて周波数変換(フーリエ変換)すると、コーティング層41の膜厚dに相当する周期成分にピークが現れることにより、このピーク位置を特定することで、コーティング層41の膜厚dを算出できる。
【0129】
すなわち、サンプル4から測定される分光反射率と各波長における反射率との対応関係を、各波長から算出される波数と上述の関係式に従って算出される波数変換反射率R’との対応関係(波数分布特性)に変換し、この波数Kを含む波数変換反射率R’の関数を波数Kについて周波数変換してスペクトルを算出し、この算出されたスペクトルに現れるピークに基づいて、サンプル4を構成するコーティング層41の膜厚dを算出する。これは、波数分布特性に含まれる各波数成分の振幅値を取得し、このうち振幅値の大きな波数成分に基づいて、コーティング層41の膜厚dを算出することを意味する。
【0130】
波数分布特性から振幅値の大きな波数成分を解析する方法としては、FFTなどの離散的なフーリエ変換を用いるFFT法や、最大エントロピー法(Maximum Entropy Method)などの最適化法を用いる方法を採用できる。
【0131】
<C.測定信頼度>
次に、本実施の形態に従う光学測定システム1が提供する測定信頼度について説明する。
【0132】
本実施の形態に従う光学測定システム1は、ユーザが把持して任意の位置で測定が可能な可搬型として構成される。また、光学測定システム1が採用する反射光観測系を用いた分光干渉式では、プローブ200から照射される測定光22がサンプル4で生じ得る観測光24をプローブ200で受光する必要がある。そのため、ユーザが把持する状態に応じて、測定が不安定になり得る。以下、膜厚測定を不安定にするいくつかの要因について説明する。
【0133】
図21は、本実施の形態に従う光学測定システム1における膜厚測定を不安定にする要因を説明するための図である。図21には、サンプル4の測定面に対する測定光22の入射角が不適切になる例を示す。
【0134】
図21を参照して、プローブ200がサンプル4の測定面に対して正対している場合には、プローブ200から照射された測定光22により生じる観測光24は、プローブ200に入射することになる。
【0135】
しかしながら、プローブ200がサンプル4の測定面に対して傾いている場合には、プローブ200から照射された測定光22により生じる観測光24がプローブ200に適切に入射できない。
【0136】
特に、非接触プローブや曲面用プローブを使用する場合には、ユーザは測定中にプローブ200を把持しておかなければならないので、サンプル4の測定面に対する測定光22の入射角を適切に維持しておくことが難しいので、測定が不安定になり得る。
【0137】
また、サンプル4の表面が曲面である場合や複雑な形状である場合にも同様に、サンプル4の測定面に対する測定光22の入射角を適切に維持しておくことが難しいので、測定が不安定になり得る。
【0138】
図22は、本実施の形態に従う光学測定システム1における膜厚測定を不安定にする別の要因を説明するための図である。図22には、サンプル4の測定面に対する測定光22の焦点が不適切になる例を示す。
【0139】
図22を参照して、プローブ200とサンプル4の測定面との距離が適切である場合には、プローブ200から照射された測定光22は、サンプル4の測定面で焦点を結ぶので、サンプル4からは適切な観測光24が生じて、プローブ200に入射することになる。
【0140】
しかしながら、プローブ200とサンプル4の測定面との距離が遠すぎるあるいは近すぎる場合には、プローブ200から照射された測定光22は、サンプル4の測定面から離れた位置で焦点を結ぶので、適切な観測光24を生じない。
【0141】
特に、非接触プローブや曲面用プローブを使用する場合には、ユーザは測定中にプローブ200を把持しておかなければならないので、プローブ200とサンプル4の測定面との距離を適切に維持しておくことが難しいので、測定が不安定になり得る。
【0142】
また、サンプル4の表面が曲面である場合や複雑な形状である場合にも同様に、プローブ200とサンプル4の測定面との距離を適切に維持しておくことが難しいので、測定が不安定になり得る。
【0143】
図23は、本実施の形態に従う光学測定システム1における膜厚測定を不安定にするさらに別の要因を説明するための図である。図23には、サンプル4の微細構造に起因する例を示す。
【0144】
図23を参照して、基板層42上にコーティング層41が形成されたサンプル4を想定すると、コーティング層41に微細な凹凸が存在する場合がある。あるいは、コーティング層41の表面にも微細な凹凸が存在する場合がある。さらに、一部の領域のみが測定可能な構造を有しているサンプル4なども想定される。
【0145】
サンプル4で生じ得る観測光24をプローブ200で受光する必要があるため、このようなサンプル4では、測定位置によっては、膜厚を適切に測定できない場合がある。
【0146】
図23を参照して、サンプル4の測定面がプローブ200の端面とほぼ平行である場合には、プローブ200から照射された測定光22により生じる観測光24は、プローブ200に入射することになる。
【0147】
しかしながら、サンプル4の測定面がプローブ200の端面から大きく傾いている場合には、プローブ200から照射された測定光22により生じる観測光24がプローブ200に適切に入射できない。
【0148】
そこで、上述したような不安定な状態で測定された膜厚が出力されることを防止するために、光学測定システム1は、膜厚測定に係る測定信頼度を算出する。
【0149】
本明細書において、「測定信頼度」は、測定あるいは算出される測定結果(例えば、膜厚)がどの程度適切に測定されたものであるかを示す度合いを意味する。
【0150】
測定信頼度の算出方法としては、任意の方法を採用できるが、典型例として、いくつかの算出方法について説明する。
【0151】
(c1:FFT法による測定信頼度の算出方法)
まず、FFT法による膜厚を算出する場合に適した方法を説明する。
【0152】
図24は、本実施の形態に従う光学測定システム1における測定信頼度を算出する方法の一例を説明するための図である。図24には、FFT法によりサンプルの膜厚を算出する場合における測定信頼度を算出する方法を示す。
【0153】
図24を参照して、サンプル4から測定された観測光24から分光反射率を算出し、上述したような波数変換反射率R’に変換した上で、波数Kについて周波数変換(フーリエ変換)することで、横軸を膜厚とし、縦軸をパワーとするスペクトル(以下、「パワースペクトル」とも称す。)を算出できる。
【0154】
このように、FFT法では、分光反射率または分光透過率を周波数変換して算出されるスペクトルに現れるピークに基づいて、サンプル4の膜厚を算出する。
【0155】
算出されたパワースペクトルについて、サンプル4の膜厚に相当する位置に現れるピークに基づいて、測定信頼度を算出できる。すなわち、適切な測定状態であるほど、パワースペクトルには大きくかつ鋭いピークが現れる。そこで、ピークの大きさあるいは鋭さに応じて、測定信頼度を算出できる。
【0156】
例えば、図24に示すように、サンプル4の膜厚に相当する位置に現れるピークが示す面積(ピーク面積)と、それ以外の部分の面積(ノイズ面積)とを算出し、算出した面積の比を測定信頼度としてもよい。具体的には、以下のような式に従って、測定信頼度を算出できる。
【0157】
測定信頼度=ピーク面積/ノイズ面積
あるいは、以下に示すいずれかの式を採用してもよい。
【0158】
測定信頼度=ピーク面積/(ピーク面積+ノイズ面積)
測定信頼度=(ピーク面積-ノイズ面積)/(ピーク面積+ノイズ面積)
さらにあるいは、ピークの高さ(パワーの大きさ)に基づいて測定信頼度を算出してもよい。具体的には、以下に示すいずれかの式に従って、測定信頼度を算出できる。
【0159】
測定信頼度=ピーク高さ/ノイズ高さ
測定信頼度=ピーク高さ/(ピーク高さ+ノイズ高さ)
測定信頼度=(ピーク高さ-ノイズ高さ)/(ピーク高さ+ノイズ高さ)
このように、FFT法によりサンプルの膜厚を算出する場合には、算出されるパワースペクトルに現れるピークの大きさに基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0160】
(c2:最適化法による測定信頼度の算出方法)
次に、最適化法による膜厚を算出する場合に適した方法を説明する。
【0161】
最適化法は、分光反射率を示すモデルのパラメータを、実測された分光反射率(あるいは、実測された分光反射率を変換して得られた波数変換反射率R’)と一致するようにフィッティングする方法である。
【0162】
このように、最適化法では、分光反射率または分光透過率を示すモデルのパラメータを、観測光24に基づいて算出される分光反射率または分光透過率と一致するように、フィッティングすることで、サンプルの膜厚を算出する。
【0163】
最適化法により決定されたパラメータにより定義されたモデルにより算出される分光反射率(理論値)が実測された分光反射率とどの程度一致しているか(すなわち、実測された分光反射率との一致度、あるいは、実測された分光反射率からの乖離度合い)に基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0164】
より具体的には、実測された分光反射率と最適化法により決定されたパラメータにより定義されたモデルにより算出される分光反射率(理論値)との相関係数を測定信頼度として決定してもよい。
【0165】
あるいは、実測された分光反射率と最適化法により決定されたパラメータにより定義されたモデルにより算出される分光反射率(理論値)との間の二乗誤差の逆数を測定信頼度として決定してもよい。
【0166】
このように、最適化法によりサンプルの膜厚を算出する場合には、決定されたパラメータにより定義されたモデルにより算出される分光反射率と実測された分光反射率との一致の度合いに基づいて、測定信頼度を算出できる。すなわち、最適化法によりサンプルの膜厚を算出する場合には、決定されたフィッティングの結果に基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0167】
(c3:反射率に基づく測定信頼度の算出方法)
図25は、本実施の形態に従う光学測定システム1における測定信頼度を算出する方法の別の一例を説明するための図である。
【0168】
図25(A)には、測定状態が悪い場合の分光反射率の一例を示し、図25(B)には、測定状態が適切な場合の分光反射率の一例を示す。図25に示すように、適切な測定状態においては、分光反射率の振幅(反射率の最大値と最小値との差)は、相対的に大きくなる。そのため、分光反射率の振幅の大きさに基づいて、測定信頼度を算出するようにしてもよい。例えば、レファレンスキャップ30を装着した状態で測定される分光反射率の振幅を基準として、基準となる振幅に対する比率を測定信頼度として算出してもよい。
【0169】
このように、サンプルの膜厚を算出するアルゴリズムに依存せず、測定された分光反射率の振幅に基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0170】
また、反射率(振幅反射率)の値から測定信頼度を算出するようにしてもよい。例えば、反射率をそのまま測定信頼度として出力してもよいし、反射率を所定の関数(例えば、反射率に対して出力が単調増加する関数)に入力して測定信頼度を算出するようにしてもよい。
【0171】
サンプルに対するプローブ200の角度あるいは距離が適切ではない場合や、サンプル表面での光拡散が大きい場合などには、算出される反射率(振幅反射率)は小さくなり、これは測定信頼度が低いことを意味する。
【0172】
このように、サンプルの膜厚を算出するアルゴリズムに依存せず、測定された反射率(振幅反射率)の大きさに基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0173】
さらに、反射率(振幅反射率)のばらつきから測定信頼度を算出するようにしてもよい。例えば、ユーザのプローブ200の把持が安定しておらず、プローブ200の角度あるいは距離が変動する場合や、サンプル表面に微細な膜厚分布が存在する場合などには、算出される反射率(振幅反射率)のばらつきは大きくなり、これは測定信頼度が低いことを意味する。
【0174】
図26は、本実施の形態に従う光学測定システム1における測定信頼度を算出する方法のさらに別の一例を説明するための図である。
【0175】
図26(A)には、測定が不安定な場合の反射率の一例を示し、図26(B)には、測定が安定している場合の反射率の一例を示す。図26に示すように、測定が安定している場合には、測定される反射率も安定するので、ばらつきは相対的に小さくなる。そのため、反射率のばらつきの大きさに基づいて、測定信頼度を算出するようにしてもよい。
【0176】
より具体的には、直近の測定から所定回数分の反射率の標準偏差あるいは分散から、測定信頼度を算出するようにしてもよい。
【0177】
このように、サンプルの膜厚を算出するアルゴリズムに依存せず、測定された反射率(振幅反射率)のばらつきに基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0178】
(c4:レファレンスシグナルに基づく測定信頼度の算出方法)
プローブ200にレファレンスキャップ30を装着した状態で測定される観測光24であるレファレンスシグナルに基づいて、測定信頼度を算出するようにしてもよい。
【0179】
例えば、使用による光源102の劣化などがあると、光源102が発生する測定光の光量が低下する。このような状態になると、測定信頼度が低下しているとみなすことができる。そこで、製品出荷前あるいは製品出荷直後のリファレンスシグナルの大きさと、実際に測定する際のリファレンスシグナルの大きさとに基づいて、測定信頼度を算出してもよい。
【0180】
より具体的には、製品出荷前あるいは製品出荷直後のリファレンスシグナルの大きさに対する実際に測定する際のリファレンスシグナルの大きさの比率を測定信頼性として算出してもよい。
【0181】
このように、サンプルの膜厚を算出するアルゴリズムに依存せず、測定されたリファレンスシグナルの大きさに基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0182】
(c5:測定結果のばらつきに基づく測定信頼度の算出方法)
測定結果(例えば、膜厚)のばらつきから測定信頼度を算出するようにしてもよい。例えば、ユーザのプローブ200の把持が安定しておらず、プローブ200の角度あるいは距離が変動する場合や、サンプル表面に微細な膜厚分布が存在する場合などには、測定あるいは算出される測定結果のばらつきは大きくなり、これは測定信頼度が低いことを意味する。
【0183】
上述の図26(A)および図26(B)と同様に、測定が安定している場合には、測定あるいは算出される測定結果も安定するので、ばらつきは相対的に小さくなる。そのため、測定あるいは算出される測定結果のばらつきの大きさに基づいて、測定信頼度を算出するようにしてもよい。
【0184】
より具体的には、直近の測定から所定回数分の測定結果の標準偏差あるいは分散から、測定信頼度を算出するようにしてもよい。
【0185】
このように、サンプルの膜厚を算出するアルゴリズムに依存せず、測定あるいは算出される測定結果のばらつきに基づいて、測定信頼度を算出できる。
【0186】
(c6:複数種類の測定信頼度を利用する方法)
上述したように、測定信頼度は、複数の方法で算出できる。そのため、異なる方法で算出された複数の測定信頼度を組み合わせて最終的な測定信頼度として算出するようにしてもよい。この場合、対象の複数の測定信頼度を正規化した上で、単純平均することで、最終的な測定信頼度として算出してもよい。
【0187】
あるいは、対象の複数の測定信頼度に対して、それぞれ対応する重み係数を乗じて、最終的な測定信頼性として算出してもよい。さらにあるいは、条件に応じて、重み係数を変化させてもよい。
【0188】
このように、複数種類の測定信頼度を利用して、最終的な測定信頼性を決定することで、測定信頼性の正確性を高めることができる。
【0189】
<D.膜厚の測定モード>
本実施の形態に従う光学測定システム1においては、上述したような測定信頼度を利用して、以下のような測定モードを実装してもよい。
【0190】
(d1:探索支援モード)
探索支援モードは、測定信頼度をリアルタイムで算出するとともに、算出した測定信頼度をユーザへ通知することで、ユーザが適切な測定状態を見つけやすくする測定モードである。
【0191】
図27は、図21に示すプローブ200の各状態において測定される分光反射率の一例を示す図である。図27(A)および図27(C)に示す膜厚測定が不安定な状態においては、測定される分光反射率の振幅も小さくなる。これに対して、図27(B)に示すような適切な測定状態であれば、測定される分光反射率の振幅も大きくなる。
【0192】
ユーザは、プローブ200から測定光22が照射されている状態で、サンプル4の測定面に対するプローブ200の角度、距離、位置(測定位置)を変化させる。測定装置100は、サンプル4で生じる観測光24から分光反射率を算出し、フーリエ変換などを経てサンプル4の膜厚を算出する処理を繰り返す。併せて、測定装置100は、測定信頼度も算出する。さらに、測定装置100は、算出された測定信頼度をユーザへ順次通知する。
【0193】
ユーザへの測定信頼度の通知は、どのような方法であってもよいが、ユーザがプローブ200を把持して走査している状態において測定信頼度を認識しやすいように、測定信頼度を示す通知音を用いてもよい。例えば、以下のように、測定信頼度の高さを通知音の発生周期あるいは発生頻度に対応付けてもよい。
【0194】
測定信頼度:低 ピ (無音) ピ
測定信頼度:中 ピピ (無音) ピピ
測定信頼度:高 ピピピ (無音) ピピピ
このように、測定信頼度の高さに対応した通知音を発生してもよい。このような通知音によって、ユーザは、測定信頼度をリアルタイムに把握できるので、プローブ200を適切な角度、距離、位置(測定位置)に調整できる。このような調整によって、適切な測定状態におけるサンプル4の膜厚を取得できる。
【0195】
なお、ユーザは、適切な測定状態と判断した時点で、操作部108(例えば、トリガスイッチ)に対する操作を行うようにしてもよい。測定装置100は、ユーザにより操作部108が操作された時点の膜厚を適切な測定結果として出力あるいは格納する。
【0196】
図28は、本実施の形態に従う光学測定システム1の探索支援モードにおける処理を説明するための図である。図28を参照して、ユーザは、通知音38により測定信頼度を確認しながら、プローブ200を把持した状態で角度、距離、位置(測定位置)を調整する。このとき、プローブ200からは測定光22が連続的または間欠的に照射されているとする。そして、ユーザは、測定信頼度が十分に高いと判断した状態にプローブ200を維持して、サンプル4の膜厚を測定する。
【0197】
以上のような測定モードを利用することで、ユーザは、適切な測定状態でサンプル4の膜厚を測定できる。
【0198】
図29は、本実施の形態に従う光学測定システム1の探索支援モードにおける処理手順を示すフローチャートである。図29に示す各ステップは、典型的には、測定装置100の演算処理部110のプロセッサ112が測定プログラム124を実行することで実現される。
【0199】
図29を参照して、測定装置100は、測定開始が指示されると(ステップS100においてYES)、光源102に駆動指令を与えて、光源102からの測定光22の照射を有効化する(ステップS102)。このように、測定装置100は、任意の位置に配置可能なプローブ200を通じて、光源102が発生した測定光22をサンプル4に照射する。
【0200】
そして、測定装置100は、サンプル4からの観測光24が分光測定部104に入射して出力される検出結果(観測光24の波長毎の強度)に基づいて、サンプル4の膜厚を算出する(ステップS104)。このように、測定装置100は、測定光22をサンプル4に照射して生じる反射光(あるいは、透過光)を観測光として分光測定部104で受光し、分光測定部104による検出結果に基づいて算出される分光反射率(あるいは、分光透過率)からサンプル4の膜厚を算出する。
【0201】
また、測定装置100は、サンプル4の膜厚を算出する過程で利用したデータに基づいて、測定信頼度を算出する(ステップS106)。このように、測定装置100は、算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する。そして、測定装置100は、算出した測定信頼度の高さに対応する通知音を発生する(ステップS108)。
【0202】
測定装置100は、トリガスイッチなどによる測定結果の出力が指示されると(ステップS110においてYES)、今回の演算周期において算出したサンプル4の膜厚を測定結果として決定する(ステップS112)。測定結果の出力が指示されなければ(ステップS110においてNO)、ステップS112の処理はスキップされる。
【0203】
測定装置100は、測定終了が指示されると(ステップS114においてYES)、膜厚測定の処理を終了し、そうでなければ(ステップS114においてNO)、ステップS104以下の処理を繰り返す。
【0204】
以上のような探索支援モードを利用することで、ユーザは、適切な測定状態を探索することができる。
【0205】
(d2:自動測定モード)
自動測定モードは、測定開始から測定終了までの間で測定信頼度が高い測定結果を自動的に抽出する測定モードである。
【0206】
ユーザは、プローブ200から測定光22が照射されている状態で、サンプル4の測定面に対するプローブ200の角度、距離、位置(測定位置)を変化させる。測定装置100は、サンプル4で生じる観測光24から分光反射率を算出し、フーリエ変換などを経てサンプル4の膜厚を算出する処理を繰り返す。併せて、測定装置100は、それぞれの膜厚に対応する測定信頼度も算出する。
【0207】
一連の膜厚測定が完了すると、測定装置100は、算出された膜厚のうち、対応する測定信頼度が高いものを測定結果として決定する。
【0208】
図30は、本実施の形態に従う光学測定システム1の自動測定モードにおける処理を説明するための図である。図30を参照して、測定装置100は、測定開始から測定終了までの間にサンプル4の膜厚および対応する測定信頼度を算出するとともに、算出された測定信頼度のうち所定条件(例えば、測定信頼度が高い)を満たす1または複数の測定信頼度を抽出する。測定装置100は、抽出した1または複数の測定信頼度に対応する膜厚を測定結果として決定する。
【0209】
図30に示すように、測定開始から測定終了までの間に算出された測定信頼度の最大値(すなわち、1つの測定信頼度)を抽出してもよいし、所定のしきい値を超える1または複数の測定信頼度を抽出するようにしてもよい。また、測定信頼度の最大値を抽出する場合であっても、測定信頼度の最大値が所定のしきい値を超えることを追加の条件としてもよい。
【0210】
このように、測定信頼度の抽出は、どのような方法を採用してもよい。
【0211】
図31は、本実施の形態に従う光学測定システム1の自動測定モードにおける処理手順を示すフローチャートである。図31に示す各ステップは、典型的には、測定装置100の演算処理部110のプロセッサ112が測定プログラム124を実行することで実現される。
【0212】
図31を参照して、測定装置100は、測定開始が指示されると(ステップS200においてYES)、光源102に駆動指令を与えて、光源102からの測定光22の照射を有効化する(ステップS202)。このように、測定装置100は、任意の位置に配置可能なプローブ200を通じて、光源102が発生した測定光22をサンプル4に照射する。
【0213】
そして、測定装置100は、サンプル4からの観測光24が分光測定部104に入射して出力される検出結果(観測光24の波長毎の強度)に基づいて、サンプル4の膜厚を算出する(ステップS204)。このように、測定装置100は、測定光22をサンプル4に照射して生じる反射光(あるいは、透過光)を観測光として分光測定部104で受光し、分光測定部104による検出結果に基づいて算出される分光反射率(あるいは、分光透過率)からサンプル4の膜厚を算出する。
【0214】
また、測定装置100は、サンプル4の膜厚を算出する過程で利用したデータに基づいて、測定信頼度を算出する(ステップS206)。このように、測定装置100は、算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する。
【0215】
測定装置100は、測定終了が指示されると(ステップS208においてYES)、ステップS210以下の処理を実行し、そうでなければ(ステップS208においてNO)、ステップS204以下の処理を繰り返す。
【0216】
ステップS208において、測定装置100は、測定開始から測定終了までに算出された測定信頼度のうち所定条件を満たす1または複数の測定信頼度を抽出する(ステップS210)。そして、測定装置100は、抽出した1または複数の測定信頼度にそれぞれ対応する膜厚を測定結果として出力する(ステップS212)。そして、処理は終了する。
【0217】
以上のような自動測定モードを利用することで、ユーザは、測定信頼度などを意識することなく、適切な測定状態で膜厚を測定できる。
【0218】
(d3:探索支援付き自動測定モード)
探索支援付き自動測定モードは、測定信頼度の改善をユーザへ通知しつつ、測定開始から測定終了までの間で測定信頼度が高い測定結果を自動的に抽出する測定モードである。
【0219】
ユーザは、プローブ200から測定光22が照射されている状態で、サンプル4の測定面に対するプローブ200の角度、距離、位置(測定位置)を変化させる。測定装置100は、サンプル4で生じる観測光24から分光反射率を算出し、フーリエ変換などを経てサンプル4の膜厚を算出する処理を繰り返す。併せて、測定装置100は、それぞれの膜厚に対応する測定信頼度も算出する。さらに、測定装置100は、算出された測定信頼度が改善方向にあるか否かをユーザへ順次通知する。
【0220】
ユーザへの測定信頼度が改善方向にあるか否かの通知は、どのような方法であってもよいが、ユーザがプローブ200を把持して走査している状態において測定信頼度の改善を認識しやすいように、測定信頼度の高さを示す通知音を用いてもよい。例えば、測定信頼度がそれ以前の測定信頼度より高い方向に変化した場合に限って、通知音を発生させるようにしてもよい。さらに、発生させる通知音についても算出された測定信頼度の高さに応じたものとしてもよい。
【0221】
あるいは、測定信頼度が改善したときに通知音を発生するとともに、測定信頼度が低下したときには別の通知音を発生させるようにすることで、ユーザは、自身の調整によって、測定信頼度が改善方向にあるか否かを容易に認識できる。
【0222】
一連の膜厚測定が完了すると、測定装置100は、算出された膜厚のうち、対応する測定信頼度が高いものを測定結果として決定する。
【0223】
図32は、本実施の形態に従う光学測定システム1の探索支援付き自動測定モードにおける処理を説明するための図である。図32を参照して、測定装置100は、測定開始から測定終了までの間にサンプル4の膜厚および対応する測定信頼度を算出するとともに、算出された測定信頼度が改善した場合にユーザへ通知する。
【0224】
一連の膜厚測定が完了すると、測定装置100は、算出された測定信頼度のうち所定条件(例えば、測定信頼度が高い)を満たす1または複数の測定信頼度を抽出する。測定装置100は、決定した1または複数の測定信頼度に対応する膜厚を測定結果として決定する。
【0225】
図32に示すように、測定開始から測定終了までの間に算出された測定信頼度に現れるピークを抽出してもよいし、所定のしきい値を超える1または複数の測定信頼度を抽出するようにしてもよい。また、測定信頼度に現れるピークを抽出する場合であっても、ピークの値が所定のしきい値を超えることを追加の条件としてもよい。
【0226】
このように、測定信頼度の抽出は、どのような方法を採用してもよい。
【0227】
図33は、本実施の形態に従う光学測定システム1の探索支援付き自動測定モードにおける処理手順を示すフローチャートである。図33に示す各ステップは、典型的には、測定装置100の演算処理部110のプロセッサ112が測定プログラム124を実行することで実現される。
【0228】
図33を参照して、測定装置100は、測定開始が指示されると(ステップS300においてYES)、光源102に駆動指令を与えて、光源102からの測定光22の照射を有効化する(ステップS302)。このように、測定装置100は、任意の位置に配置可能なプローブ200を通じて、光源102が発生した測定光22をサンプル4に照射する。
【0229】
そして、測定装置100は、サンプル4からの観測光24が分光測定部104に入射して出力される検出結果(観測光24の波長毎の強度)に基づいて、サンプル4の膜厚を算出する(ステップS304)。このように、測定装置100は、測定光22をサンプル4に照射して生じる反射光(あるいは、透過光)を観測光として分光測定部104で受光し、分光測定部104による検出結果に基づいて算出される分光反射率(あるいは、分光透過率)からサンプル4の膜厚を算出する。
【0230】
また、測定装置100は、サンプル4の膜厚を算出する過程で利用したデータに基づいて、測定信頼度を算出する(ステップS306)。このように、測定装置100は、算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する。
【0231】
測定装置100は、算出された測定信頼度が改善方向にあれば(ステップS308においてYES)、測定信頼度が改善方向にあることを示す通知音を発生する(ステップS310)。算出された測定信頼度が改善方向になければ(ステップS308においてNO)、ステップS310の処理はスキップされてもよい。
【0232】
そして、測定装置100は、測定終了が指示されると(ステップS312においてYES)、ステップS314以下の処理を実行し、そうでなければ(ステップS312においてNO)、ステップS304以下の処理を繰り返す。
【0233】
ステップS310において、測定装置100は、測定開始から測定終了までに算出された測定信頼度のうち所定条件を満たす1または複数の測定信頼度を抽出する(ステップS314)。そして、測定装置100は、抽出した1または複数の測定信頼度にそれぞれ対応する膜厚を測定結果として出力する(ステップS316)。そして、処理は終了する。
【0234】
以上のような探索支援付き自動測定モードを利用することで、ユーザは、適切な測定状態を探索することができる。
【0235】
(d4:通知の方法)
上述の説明においては、測定信頼度の高さを通知音の発生周期あるいは発生頻度に対応付けた通知形態について例示したが、これに限らず任意の通知方法を採用できる。
【0236】
音により測定信頼度を通知する場合(すなわち、ユーザが聴覚で測定信頼度を認識する場合)には、算出される測定信頼度の高さに応じて、音量、音程、音色のうち1または複数を変化させるようにしてもよい。ユーザは、通知音の音量、音程、音色のいずれかが変化することで、測定信頼度の変化を容易に認識できる。
【0237】
さらに、音による通知に限らず、振動、光、画像などによる通知を採用することもできる。
【0238】
例えば、振動により測定信頼度を通知する場合(すなわち、ユーザが触覚で測定信頼度を認識する場合)には、測定装置100および/またはプローブ200に振動子を設けるとともに、算出される測定信頼度の高さに応じて、振動子の振動強さ、振動周期、振動間隔のうち1または複数を変化させるようにしてもよい。ユーザは、自身が感じる振動が変化することで、測定信頼度の変化を容易に認識できる。
【0239】
また、光あるいは画像により測定信頼度を通知する場合(すなわち、ユーザが視覚で測定信頼度を認識する場合)には、測定装置100および/またはプローブ200に任意の発光デバイスを設けるとともに、算出される測定信頼度の高さに応じて、発光デバイスの発光状態を変化させるようにしてもよい。すなわち、出力部106から測定信頼度を示す光および画像の少なくとも一方を出力するようにしてもよい。ユーザは、目に入る光や画像によって、測定信頼度の変化を容易に認識できる。
【0240】
図34は、本実施の形態に従う光学測定システム1における測定信頼度の通知形態の一例を示す模式図である。図34(A)~図34(C)には、測定装置100の出力部106として、ディスプレイ1060を採用した場合の通知形態の一例を示す。
【0241】
図34(A)に示す測定装置100のディスプレイ1060には、膜厚の測定値1062と、測定信頼度を示すステータスバー1064とが表示されている。ユーザは、測定信頼度を示すステータスバー1064を確認することで、測定信頼度を認識しながら、膜厚の測定値1062を得ることができる。
【0242】
図34(B)に示す測定装置100のディスプレイ1060には、膜厚の測定値1062と、測定信頼度を示す数値1066とが表示されている。ユーザは、測定信頼度を示す数値1066を確認することで、測定信頼度を認識しながら、膜厚の測定値1062を得ることができる。
【0243】
図34(C)に示す測定装置100のディスプレイ1060には、膜厚の測定値1062が表示されるとともに、測定装置100には測定信頼度を示すインジケータ1068が設けられている。インジケータ1068は、算出される測定信頼度の高さに応じた数だけ点灯する。ユーザは、測定信頼度を示すインジケータ1068を確認することで、測定信頼度を認識しながら、膜厚の測定値1062を得ることができる。
【0244】
図34(A)~図34(C)に示す通知形態に限らず、任意の形態で測定信頼度をユーザへ通知できる。
【0245】
<E.機能ブロック図>
図35は、本実施の形態に従う光学測定システム1が提供する機能構成の一例を示す模式図である。図35に示す各機能は、典型的には、測定装置100の演算処理部110のプロセッサ112が測定プログラム124を実行することで実現される。
【0246】
図35を参照して、測定装置100は、機能構成として、バッファ150と、波数変換部152と、フーリエ変換部154と、ピーク探索部156と、膜厚決定部158と、測定信頼度算出部160と、出力処理部162とを含む。
【0247】
バッファ150は、分光測定部104からの検出結果(観測光24の波長毎の強度)を格納する。
【0248】
波数変換部152は、バッファ150に格納される観測光24の波長毎の強度から分光反射率を算出し、算出した分光反射率から波数変換反射率を算出する。
【0249】
フーリエ変換部154は、波数変換部152により算出された波数変換反射率をフーリエ変換する。
【0250】
ピーク探索部156は、フーリエ変換部154によるフーリエ変換により算出されたパワースペクトルに含まれるピークを探索し、探索したピークに対応するパワースペクトルの位置(膜厚)を出力する。すなわち、ピーク探索部156は、分光測定部104による検出結果に基づいて算出される分光反射率(あるいは、分光透過率)からサンプルの膜厚を算出する膜厚算出部に相当する。
【0251】
測定信頼度算出部160は、ピーク探索部156により算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を算出する。より具体的には、測定信頼度算出部160は、フーリエ変換部154によるフーリエ変換により算出されたパワースペクトルに基づいて測定信頼度を算出する。
【0252】
膜厚決定部158は、所定条件が満たされると、ピーク探索部156から出力される膜厚を測定結果として決定する。所定条件としては、ユーザが操作部108を操作したこと、所定期間における測定信頼度が最大値となること、測定信頼度が所定のしきい値を超えること、などを含んでいてもよい。このように、膜厚決定部158は、典型的には、測定信頼度が所定条件を満たす時点の膜厚を測定結果として決定する。
【0253】
出力処理部162は、ピーク探索部156から出力される膜厚、測定信頼度算出部160から出力される測定信頼度、膜厚決定部158から出力される測定結果(膜厚)などを出力部106から出力する処理を担当する。出力処理部162は、測定信頼度算出部160により算出された測定信頼度を出力部106によりユーザへ通知する。
【0254】
なお、図35には、典型例としてFFT法による膜厚を算出する場合の構成例を示したが、最適化法による膜厚を測定する場合には、サンプルの膜厚をパラメータとして含むモデルと、実測された反射率(あるいは、透過率)とをフィッティングするフィッティング部を設けてもよい。
【0255】
<F.変形例>
上述の説明においては、光学測定システム1の測定装置100が必要な処理を実行する構成例について説明したが、これに限らず、例えば、複数の処理装置で処理を分担してもよいし、一部の処理をプローブ200が担当するようにしてもよい。さらに、図示しないネットワーク上のコンピューティングリソース(いわゆるクラウド)が必要な処理の全部または一部を担当するようにしてもよい。
【0256】
多くのコンピューティングリソースを利用できる場合には、過去に取得された測定結果、および/または、他の光学測定システム1により取得された測定結果を利用して機械学習を行い、機械学習によって得られた学習済モデルを用いて、膜厚測定に係る最適な条件をユーザへ通知するようにしてもよい。
【0257】
<G.まとめ>
本実施の形態に従う光学測定システムにおいては、任意の位置に配置可能なプローブを通じて取得される観測光に基づいて光学的にサンプルの膜厚を算出するため、膜厚の測定精度を高めることができる。
【0258】
また、本実施の形態に従う光学測定システムにおいては、算出される膜厚がどの程度適切に測定されたものであるかを示す測定信頼度を併せて算出するので、サンプルの膜厚をより適切に測定できる。
【0259】
さらに、本実施の形態に従う光学測定システムは、任意の位置に配置可能なプローブを任意のサンプルを配置して測定できるので、生産現場や製造ラインなどにおいて手軽に膜厚を測定できる。また、表面が曲面なサンプルや複雑な形状のサンプルであっても、簡便に測定できる。
【0260】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0261】
1,1A,1B 光学測定システム、4 サンプル、10,20,52,54 光ファイバー、12,14 分岐ファイバー、16 分岐部、22 測定光、24 観測光、28 カプラ、30 レファレンスキャップ、32,216 ミラー、38 通知音、40 空気層、41 コーティング層、42 基板層、100,100A,100B 測定装置、102 光源、104 分光測定部、106 出力部、108 操作部、110 演算処理部、112 プロセッサ、114 主メモリ、116 内部インターフェイス、117 汎用インターフェイス、118 ネットワークインターフェイス、120 ストレージ、122 オペレーティングシステム、124 測定プログラム、126 検出結果、128 測定結果、130 電源部、132 バッテリ、134 通信部、136 通信処理部、150 バッファ、152 波数変換部、154 フーリエ変換部、156 ピーク探索部、158 膜厚決定部、160 測定信頼度算出部、162 出力処理部、200,200C,200D,200E,200F,200G,200H,200I,200J,200K,200L,200M プローブ、200B 高機能化プローブ、202 投受光部、204 導光路、210,212 アタッチメント、214,218 サポート部材、220,222 レンズ、226 フレキシブル部、228 接触部、230 ゴムパッキン、234 針部、1060 ディスプレイ、1062 測定値、1064 ステータスバー、1066 数値、1068 インジケータ。
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