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  • 特開-二次電池用電解銅箔及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008856
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】二次電池用電解銅箔及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20220106BHJP
   C25D 1/04 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01M4/66 A
C25D1/04 311
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021163961
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2019524170の分割
【原出願日】2017-03-28
(31)【優先権主張番号】10-2016-0150350
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】イルジン マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ILJIN MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,テジン
(72)【発明者】
【氏名】パク,スルギ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,キドク
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS10
5H017BB16
5H017BB19
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE06
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電解銅箔の製造過程において、真空乾燥前と後の銅箔の物性変化が少なく、高密度陰極で電池テストするときにサイクル寿命が優れ、クラックの発生を防止することができる二次電池用電解銅箔を提供する。
【解決手段】本発明の実施例は、TOC、亜鉛及び鉄を含むめっき液で、ドラムを利用して製造された二次電池用電解銅箔であって、前記電解銅箔に含まれるTOCと亜鉛及び鉄の割合は、下記式1に従う、二次電池用電解銅箔を含む。
式1:TOC/(亜鉛+鉄)=1.3~1.5
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TOC(総有機炭素;Total organic carbon)、亜鉛及び鉄を含むめっき液で、ドラムを利用して製造された二次電池用電解銅箔であって、
前記電解銅箔を溶かした後に測定された前記電解銅箔に含まれるTOCと亜鉛及び鉄の割合は、下記の式1:
TOC/(亜鉛+鉄)=1.3~1.5
に従う、前記二次電池用電解銅箔。
【請求項2】
前記電解銅箔は、陰極活物質を塗布後に真空乾燥され、前記陰極活物質が塗布された電解銅箔真空乾燥前後の引張強度及び延伸率の割合は、下記の式2:
((真空乾燥後の引張強度/真空乾燥前の引張強度)/(真空乾燥後の延伸率/真空乾燥前の延伸率))×真空乾燥後の引張強度=28~50
に従う、請求項1に記載の二次電池用電解銅箔。
【請求項3】
前記真空乾燥前後の引張強度は、下記の式3:
真空乾燥後の引張強度/真空乾燥前の引張強度=0.8~1.01
に従う、請求項1に記載の二次電池用電解銅箔。
【請求項4】
前記真空乾燥前後の延伸率は、下記の式4:
真空乾燥後の延伸率/真空乾燥前の延伸率=0.9~1.4
に従う、請求項1に記載の二次電池用電解銅箔。
【請求項5】
前記めっき液中に含まれるTOCの濃度は、100ppm以上である
請求項1に記載の二次電池用電解銅箔。
【請求項6】
前記電解銅箔の常温引張強度は、40kgf/mm乃至51kgf/mmである、請求項1に記載の二次電池用電解銅箔。
【請求項7】
前記電解銅箔の厚さは、4μm乃至12μmである、請求項1に記載の二次電池用電解銅箔。
【請求項8】
前記電解銅箔の延伸率は、2%乃至18%である、請求項1に記載の二次電池用電解銅箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関し、更に詳細には、電解銅箔の製造過程において、真空乾燥前と後の銅箔の物性変化が少なく、高密度陰極で電池テストするときにサイクル寿命が優れ、クラック(Crack)の発生を防止することができる二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電解銅箔は、電気/電子産業分野で使用されるPCB(Printed Circuit Board:プリント回路基板)の基礎材料として広く使用されるものであり、スリム型ノートパソコン、個人携帯端末(PDA)、電子ブック、MP3プレーヤー、次世代携帯電話、超薄型フラットパネルディスプレイなどの小型製品を中心に、その需要が急速に増大している。また、電解銅箔の物性を改善して、二次電池の陰極集電体としても広く使用されている。
【0003】
通常、電解銅箔は、電気分解の方法で生成され、チタンからなる円筒状の陰極(ドラムとも呼ばれる)と一定の間隔を維持する形の鉛合金又はイリジウム酸化物が被覆されたチタンからなる陽極、電解液及び電流の電源を含む電解槽で製造される。電解液は、硫酸及び/または硫酸銅からなり、円筒形陰極を回転させながら陰極と陽極との間に直流電流を流すと、陰極に銅が電着(electrodeposited)されて、連続的な電解銅箔の生産が可能となる。このように、電気分解の方法で銅イオンを金属に還元させる工程を製箔工程という。
【0004】
その後、製箔工程で得られた銅箔は、必要に応じて、絶縁基板との接着力を向上させるために、よどみ処理工程(Nodule処理工程とも呼ばれる)、銅イオンの拡散を防止する拡散防止処理、外部からの酸化を防止するための防錆処理、絶縁基板との接着力を補完させる化学的接着力の向上処理などの追加的な表面処理工程を経ることができる。表面処理工程を経ると、ロープロファイル(low profile)印刷回路用銅箔になり、表面処理工程の中で防錆処理のみを行うと二次電池用銅箔になる。
【0005】
電着された銅箔は、プリント回路用に使用される場合には、表面処理された後、絶縁基板と接着された形態(ラミネート)でPCB加工業者に供給される。これに比べて二次電池用として使用する場合には、防錆処理のみを経て二次電池生産業者に供給される。
【0006】
電解銅箔を二次電池用陰極集電体として使用する場合には、銅箔の両面に電極活物質を被覆して使用する。この場合、電解銅箔の両面の粗さが異なる場合には、電池特性が異なるため、電解銅箔の両面の粗さが同一かまたは同等なレベルを維持する必要がある。
【0007】
これらの電解銅箔を用いた二次電池の製造工程では、銅箔を真空乾燥するステップを経るが、真空乾燥は、高温で長時間実行されるプロセスであるため、銅箔を真空乾燥するステップで銅箔と活物質のコーティング面との接着力と応力が変化して、電池の寿命を低下させたりクラックが発生する問題がある。
【0008】
従って、真空乾燥過程後も電池の寿命と性能に影響を与えないように、長時間高温放置後にも物性変化を最小限に抑えることができる二次電池用電解銅箔が求められているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、銅電解液にTOC及び金属添加剤である亜鉛及び鉄を一定の含有量で存在するようにして、グレインサイズ及び結晶構造の変化を最小化して、電池の寿命を向上させることができる二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、電解銅箔の製造時に真空乾燥後にも銅箔の物性変化を最小限に抑えて、電池のサイクル寿命及び特性を向上させ、クラックの発生を防止することができる二次電池用電解銅箔及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、本発明の実施例は,TOC(Total organic carbon)、亜鉛及び鉄を含むめっき液で、ドラムを利用して製造された二次電池用電解銅箔であって、前記電解銅箔に含まれるTOCと亜鉛及び鉄の割合は、下記式1に従う、前記二次電池用電解銅箔を含む。
【0012】
式1:TOC/(亜鉛+鉄)=1.3~1.5
前記電解銅箔は、陰極活物質を塗布後に真空乾燥され、真空乾燥前後の引張強度及び延伸率の割合は、下記式2に従うことを特徴とする。
【0013】
式2:((真空乾燥後の引張強度/真空乾燥前の引張強度)/(真空乾燥後の延伸率/真空乾燥前の延伸率))×真空乾燥後の引張強度=28~50
前記真空乾燥前後の引張強度は、下記式3を従うことを特徴とする。
【0014】
式3:真空乾燥後の引張強度/真空乾燥前の引張強度=0.8~1.01
前記真空乾燥前後の延伸率は、下記式4に従うことを特徴とする。
【0015】
式4:真空乾燥後の延伸率/真空乾燥前の延伸率=0.9~1.4
前記めっき液中に含まれるTOCの濃度は、100ppm以上であることを特徴とする。
【0016】
前記電解銅箔の常温引張強度は、40kgf/mm乃至51kgf/mmであることを特徴とする。
【0017】
前記電解銅箔の厚さは、4μm乃至12μmであることを特徴とする。
【0018】
前記電解銅箔の延伸率は、2%乃至18%であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一側面によれば、本発明の実施例は, 二次電池用電解銅箔の製造方法であって、(1)銅、TOC、亜鉛及び鉄を含むめっき液を用意するステップと、(2)温度が30℃乃至70℃である条件で、電流密度30ASD乃至150ASDを加え、ドラムを利用して電解めっきを実行するステップと、及び (3)前記電解めっきによって形成された電解銅箔を真空乾燥するステップとを含み、前記電解銅箔に含まれるTOCと亜鉛及び鉄の割合は、下記式1に従う、前記二次電池用電解銅箔の製造方法を含む。
【0020】
式1:TOC/(亜鉛+鉄)=1.3~1.5
前記真空乾燥前後の引張強度及び延伸率の割合は、下記式2であることを特徴とする。
【0021】
式2:((真空乾燥後の引張強度/真空乾燥前の引張強度)/(真空乾燥後の延伸率/真空乾燥前の延伸率))×真空乾燥後の引張強度=28~50
前記めっき液中に含まれるTOCの濃度は、100ppm以上であることを特徴とする。
【0022】
前記電解銅箔の常温引張強度は、40kgf/mm乃至51kgf/mmであることを特徴とする。
【0023】
前記電解銅箔の厚さは、4μm乃至12μmであることを特徴とする。
【0024】
前記電解銅箔の延伸率は、2%乃至18%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、銅電解液にTOC及び金属添加剤である亜鉛及び鉄の含有量を一定の含有量で存在するようにして、グレインサイズ及び結晶構造の変化を最小化し、電池の寿命を向上させることができる。
【0026】
また、本発明によれば、電解銅箔の製造時、真空乾燥後にも銅箔の物性変化を最小限に抑え、電池のサイクル寿命及び特性を向上させ、クラックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例による二次電池用電解銅箔の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施例によるドラムを利用して、電解銅箔を製造するステップを示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【0029】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付される図面とともに、詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものでなく、お互いに異なる多様な形態で具現されることができ、以下の説明で、ある部分が他の部分と接続されているとする場合、これは直接に接続されている場合だけではなく、その中間に他の媒体を挟んで接続されている場合も含む。また、図面で本発明と関係のない部分は、本発明の説明を明確にするために省略しており、明細書全体を通じて類似した部分については同一の符号を付けた。
【0030】
以下、添付された図面を参照して、本発明について説明する。
【0031】
次は、本発明の一実施例に係る二次電池用電解銅箔についてさらに詳細に説明する。
【0032】
本発明の一実施例に係る二次電池用電解銅箔は、ドラムを利用して製造された二次電池用電解銅箔として、前記電解銅箔は、陰極活物質を塗布後に真空乾燥され、前記真空乾燥前後の引張強度及び延伸率の割合は、下記式2であることができる。
【0033】
式2:((真空乾燥後の引張強度/真空乾燥前の引張強度)/(真空乾燥後の延伸率/真空乾燥前の延伸率))×真空乾燥後の引張強度=28~50
また、前記真空乾燥前後の引張強度は、下記式3であることができ、前記真空乾燥前後の延伸率は、下記式4であることができる。
【0034】
式3:真空乾燥後の引張強度/真空乾燥前の引張強度=0.8~1.01
式4:真空乾燥後の延伸率/真空乾燥前の延伸率=0.9~1.4
電池の製造工程で電解銅箔を真空乾燥する場合、前記電解銅箔を高温で長時間放置した場合、電解銅箔のグレインサイズ及び結晶構造に変化が起きるが、これは後で電池の充放電時の活物質の脱離及びクラックを発生させて、電池の寿命を落とす。従って、真空乾燥後にも電解銅箔の物性変化を最小限に抑えてこそ電池の寿命を優秀にすることができる。
【0035】
本発明では、真空乾燥後にも銅箔の物性変化を最小化するために、銅電解液にTOC含有量が100ppm以上存在するようにして、銅箔を高温で長時間真空乾燥してもグレインサイズが異常成長したり、結晶構造が変化することを防止することができる。
【0036】
TOCとは、Total Organic Carbonの略称として、全体の有機炭素を指し、めっき液中に含まれる有機物中の炭素量を意味し、銅電解液に含まれてグレインサイズを小さくする役割をする。もし、銅電解液にTOCでないTIC(Total inorganic Carbon)と呼ばれる溶解された二酸化炭素(dissolved carbon dioxide)が存在するか、銅電解液に銅イオンに吸着された炭素が存在する場合には、真空乾燥で高温で長時間放置したとき、粒の中に存在する添加剤が結晶粒界(Grain boundary)に拡散され、グレインの異常成長と結晶構造の変化を起こす。真空乾燥後、上記のように表示される銅箔の物性変化は、活物質のコーティング面との接着力と応力を変化させて、電池の充放電時の活物質の脱離及びクラックの発生を引き起こすことができる。
【0037】
従って、本発明では、TOCを銅電解液に100ppm以上存在するようにして真空乾燥した後、銅箔の物性変化を防止し、最適化させ、高密度陰極で電池テストするときにサイクル寿命と特性を向上させることができる。
【0038】
本発明に係る二次電池用電解銅箔の真空乾燥前後の引張強度と延伸率との間の割合は、前記式2乃至式4の範囲内であることが好ましく、前記真空乾燥前後の引張強度と延伸率が前記範囲を外れた場合、銅箔で活物質コーティング面との接着力と応力が変化して、電池の性能が低下することができる。
【0039】
図1は、本発明の一実施例による二次電池用電解銅箔の製造方法を示すフローチャートである。図1を参照すると、本発明に係る二次電池用電解銅箔の製造方法は、(1)銅イオン(Cu2+)60g/L乃至140g/L、硫酸70g/L乃至200g/L、塩素10ppm乃至90ppm、TOC100ppm以上、金属添加剤として亜鉛及び鉄を含むめっき液を用意するステップ(S100)と、(2)温度が30℃乃至70℃である条件で、電流密度30ASD~150ASDを加え、ドラムを利用して、電解めっきを実行するステップ(S200)と、及び(3)前記電解めっきによって形成された電解銅箔を真空乾燥するステップ(S300)を含む。
【0040】
ステップ(1)(S100)では、めっき液を用意するステップとして、銅イオン(Cu2+)60g/L乃至140g/L、硫酸70g/Lから200g/L、塩素10ppm乃至90ppm、TOC100ppm以上、金属添加剤として亜鉛及び鉄を含むめっき液を用意する。前記めっき液で、TOCは電解銅箔の製造後に実行される真空乾燥ステップで電解銅箔を高温で長時間維持しても、電解銅箔のグレインサイズ及び結晶構造の変化を最小限にする役割をする。本発明では、TOCを100ppm以上めっき液に含んで、電解銅箔を製造することにより、真空乾燥時、電解銅箔が高温で長時間放置されてもグレインサイズ及び結晶構造の変化を最小化し、後で電池の充放電時の活物質の脱離とクラックを防止することができる。
【0041】
また、本発明では、真空乾燥後に電解銅箔の物性変化を最小化するために、TOC以外に金属添加剤として亜鉛及び鉄をさらに含む。前記電解銅箔は、めっき液を電解めっきして製造することができるが、前記めっき液中でTOCは、一定の含有量で含まれることができ、前記亜鉛は50mg/L乃至700mg/Lで含まれ、鉄は400mg/L乃至1100mg/Lで含まれることができる。
【0042】
前記TOC、亜鉛及び鉄を含むめっき液を電解めっきして形成された電解銅箔では、前記TOCの含有量は、100ppm以上であることが好ましく、前記亜鉛及び鉄の含有量は、下記式1に対応するように備えられることができる。
【0043】
めっき液を電解めっきして電解銅箔を製造する場合には、めっき液中に含まれる添加剤、例えばTOC、亜鉛及び鉄などの濃度は、電解めっきによって製造される電解銅箔と常に同じではなく、同じかより少なく含まれることができる。
【0044】
前記亜鉛及び鉄は、電解めっき時の銅のめっき速度を調節して電解銅箔の表面を平坦にし、電解銅箔の内部の炭素含有量が過度に増加することを調節する。従って、電解銅箔内の亜鉛及び鉄とTOCの割合が下記式1の範囲であるとき、真空乾燥後に電解銅箔の物性変化が最小限に抑えられる。
【0045】
式1:TOC/(亜鉛+鉄)=1.3~1.5
前記割合が1.3未満である場合、めっき液に投入される亜鉛及び鉄の含有量が増加して、めっき液内のTOCが、グレインが異常成長するのを防止する効果を抑制するので、好ましくなく、前記割合が1.5を超える場合、電解銅箔内の過多なTOC含有量によりグレイン内に応力が発生して、電解銅箔が真空乾燥時に、高温に露出されると電解銅箔内のグレインが異常成長して真空乾燥した後、物性変化がひどくなることができる。従って、高温に長時間露出されてもグレインサイズ及び結晶構造の変化を最小限にするために、TOC、亜鉛及び鉄の割合は、前記式1のように1.3乃至1.5の間の範囲を維持することが好ましい。
【0046】
前記めっき液で銅イオン及び硫酸イオンが前記範囲を外れた場合、以後実行される電解めっき時に銅箔が正しく析出されなかったり、銅箔の硬さが低下されることがある問題がある。
【0047】
また、前記めっき液で、塩素は10ppm乃至90ppmを含み、塩素は電解めっき時に、結晶粒界界面に形成されるCuClの析出物が高温に加熱時、結晶成長を抑制して、高温での熱的安定性を向上させるようにする。塩素濃度が10ppm乃至90ppmの範囲を外れた場合、電解銅箔の引張強度が低下し、高温での熱的安定性が低下されることができる。
【0048】
ステップ(2)(S200)では、前記ステップ(1)で用意しためっき液を、温度が30℃乃至70℃である条件で、電流密度30ASD(Ampere per Square Deci-metre)乃至150ASDを加え、ドラムを利用して電解めっきを実行する。ちなみに、図2は、本発明の一実施例によるドラムを利用して、電解銅箔を製造するステップを示す図である。めっき温度及び電流密度が前述した範囲を外れる場合には、めっきが正常に行われず、電解銅箔の表面が均一に形成されなかったり、引張強度及び延伸率が低下されて電池性能の低下の原因になることができる。
【0049】
ステップ(3)(S300)では、前記電解めっきによって形成された電解銅箔を真空乾燥するステップを含む。真空乾燥は110℃乃至150℃の範囲で6時間乃至10時間の間実行することが好ましい。真空乾燥温度が前記範囲を外れた場合、電解銅箔の乾燥が正常に行われなかったり、高温により電解銅箔の変形が起こることがある。また、真空乾燥時間が6時間未満の場合には、電解銅箔の乾燥が完了されない可能性があり、乾燥時間が10時間を超える場合には、過度の乾燥により電解銅箔の性能が低下されることができる。
【0050】
また、本発明に係る二次電池用電解銅箔の常温引張強度は40kgf/mm乃至51kgf/mmであることが好ましい。前記引張強度が40kgf/mm未満の場合には、電解銅箔が破断されて陽極と陰極が短絡される問題が発生することができる。二次電池の充放電時には、グラファイトなどの他の活物質がリチウムイオンのやりとり過程で、二次電池の体積が膨張または収縮するようになるが、この時、活物質層が電解銅箔と密着するため、膨張または収縮による応力が発生する。従って、引張強度が40kgf/mm未満の場合には、電解銅箔が応力に耐えられず、破断されて電池性能を維持することができず、破断により変形して陽極と陰極が短絡される問題が発生することができる。
【0051】
また、本発明に係る二次電池用電解銅箔の厚さは、4μm乃至12μmであることが好ましい。前記電解銅箔の厚さが4μm未満の場合には、薄い厚さにより電解銅箔が容易に破断されることができ、電解銅箔の厚さが12μmを超える場合には、製造される二次電池の体積及び重量が増加して好ましくない。
【0052】
また、本発明に係る二次電池用電解銅箔の延伸率は2%乃至18%であることが好ましい。電解銅箔の延伸率が高い場合には、電極の製造工程で活物質のコーティング時、張力に耐えて、工程上の破断を防止することができ、電極を巻く工程で受けるストレスで破断を防止することができる利点がある。また、電池の充放電サイクル時に、効率低下を防止し、破断を防止して電池の性能を向上させる。しかし、延伸率が18%を超える場合には、充放電時、二次電池の変形がひどくなり、短絡されることができ、延伸率が2%未満である場合には、電解銅箔が容易に破断することができる。
【0053】
前述した引張強度及び延伸率は互いに反比例して、引張強度が増加すると、延伸率は低下し、引張強度が減少すると、延伸率は増加することになるので、破断を防止しながらも、高い引張強度を有する電解銅箔を製造するためには、適正範囲の引張強度及び延伸率を維持することが重要である。従って、引張強度は、40kgf/mm乃至51kgf/mmを維持することが好ましく、延伸率は2%乃至18%の範囲を維持してこそ二次電池の変形時、陽極と陰極の短絡を防止することができる。
【0054】
以下、本発明の実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例だけであり、本発明の権利範囲が下記の実施例により制限されるものではない。
【0055】
TOC濃度及び真空乾燥前後の物性変化に伴う電池寿命テスト
*(実施例1)
銅イオン90g/L、硫酸120g/L、塩素30ppm、TOC360ppm、亜鉛0.375g/L、鉄0.75g/L(亜鉛及び鉄の合計0.243g/L)を含むめっき液を用意して、55℃、90ASDの電流密度で、ドラムを利用して電解めっきを実行した。その後、電解めっきによって形成された電解銅箔を、120℃で7時間真空乾燥した。
【0056】
(実施例2乃至実施例8)
めっき液内に含まれるTOCの濃度、亜鉛及び鉄の量を下記表2及び表3のように実行することを除いて実施例1と同様に製造した。
【0057】
(比較例1乃至比較例3)
比較例1乃至比較例3は、めっき液の製造の時、TOCの濃度、亜鉛及び鉄の量を下記表2及び表3のように実行することを除いて実施例1と同じ条件で電解銅箔を製造した。
【0058】
実施例1乃至実施例8及び比較例1乃至比較例3の実験条件は、上記と同じであり、前記方法で製造されたそれぞれの二次電池用電解銅箔の真空乾燥前の引張強度及び延伸率、真空乾燥後の引張強度及び延伸率、銅箔を溶かした後のTOCと亜鉛及び鉄の割合値、300サイクル後の電池寿命を測定して、下記表2及び表3に記載した。
【0059】
引張強度及び延伸率は、実施例1乃至実施例8及び比較例1乃至比較例3から得られた電解銅箔を幅12.7mm×ゲージの長さ50mmで引張試験片を採取した後、50.8mm/minのクロスヘッド速度での引張試験でIPC-TM-6502.4.18B規格に基づいて実施して測定される引張強度の最大荷重を引張強度とし、破断時の延伸率を延伸率とした。
【0060】
また、銅箔を溶かした後TOCと亜鉛及び鉄の割合値は、実施例1乃至実施例8及び比較例1乃至比較例3から得られた電解銅箔を塩酸(35%)60ml、過酸化水素水(30%)40mlに溶かした後、ICP(Inductively coupled plasma mass spectrometry)を利用して分析した。TOCと亜鉛及び鉄の割合値は、前述した式1を用いて計算し、下記表3にその結果を記載した。
【0061】
電池評価条件は、下記のように設定して実験し、Cellの設計、陽極、陰極、セパレーター(separator)、電解液の条件は、下記表1のように設定して実験した。
【0062】
1)定電流充電:電流値1C、充電終止電圧4.2V
2)20分間休止
3)定電流放電:電流値1C、充電終止電圧:2.5V cut off
4)1C=487mAh
5)Cycle:300cycle評価、温度:55℃
【0063】
【表1】


表2及び表3を参照すると、TOC濃度が100ppm未満である比較例1乃至比較例3は、式2の引張強度及び延伸率の真空乾燥前後の割合がすべて28未満に低く現れたことを確認することができ、一方、TOC濃度がすべて100ppm以上である実施例1乃至実施例8は、式2の引張強度及び延伸率の真空乾燥前後の割合がすべて28乃至50の間の範囲であることを確認することができる。電解銅箔の製造時、真空乾燥は、100℃以上の高温で長時間行われるため、高温により電解銅箔内のグレインサイズ及び結晶構造の変化が現れることができ、このような電解銅箔の物性変化は、電池の寿命を低下させる原因になることができる。TOCは、電解銅箔の物性変化を防止する役割をして、実施例1乃至実施例8のようにTOCを100ppm以上に維持した場合、高温の真空乾燥過程を経た後でも、物性の変化が少なく、これにより、電池の寿命も優れて現れることがわかる。
【0064】
また、TOC/(亜鉛+鉄)の割合がすべて1.3未満である比較例1乃至比較例3を見ると、真空乾燥前後の物性変化が実施例1乃至実施例8よりも大きく現れ、電池寿命も非常に低く現れたことを確認することができる。TOC/(亜鉛+鉄)の割合が1.3以下では、金属添加剤の含有量が増加し、めっき液内のTOCがグレインの異常成長を防止する効果を起こすことに問題となって、真空乾燥後に電解銅箔の物性変化が大きく起きるように見える。
【0065】
また、前記表3から300サイクル後の容量を確認した実施例1乃至実施例8と比較例1乃至比較例3による電池を、電解銅箔(陰極板として作用した)の状態を確認するために解体した。このとき、実施例1乃至実施例8による電解銅箔の場合には、外観不良がなく、最初と同じであることを確認できた。一方、比較例1乃至比較例3の場合には、電解銅箔の一部が破断または剥離されることを確認することができ、比較例1の場合には、陰極活物質が電解銅箔から剥離される部分が存在することを確認することができ、比較例2及び比較例3で電解銅箔の外側部分に破断された部分が形成されるのが確認できた。
【0066】
当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されることができることを理解できるだろう。従って、以上で記述した実施例は、すべての方面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりも、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
【外国語明細書】