IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イノファーマックス インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-88622がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン
<>
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図1
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図2
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図3
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図4
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図5
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図6
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図7
  • 特開-がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088622
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】がん療法のためのメトロノミック経口ゲムシタビン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7068 20060101AFI20220607BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61P35/00
A61K9/48
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/14
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062568
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2018562559の分割
【原出願日】2017-06-02
(31)【優先権主張番号】62/344,660
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511259692
【氏名又は名称】イノファーマックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ハオ ウェイ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】シュエ シュー-ピイン
(72)【発明者】
【氏名】シュー チャン-シャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非経口投与の欠点(例えば、不快感および専門的な投与の必要性)およびプロドラッグ投与の不安定性(例えば、患者間のプロドラッグ代謝の可変性)の両方を回避し、代わりに有効量の抗がん治療剤を経口投与形態で送達する方法を提供する。
【解決手段】ヒトなどの患者における腫瘍の退縮を誘導するか、または腫瘍の増殖を阻害することなどの治療のための、自己乳化経口投与剤形に含まれるゲムシタビンの使用。ゲムシタビンはメトロノミック様式で経口投与される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある種の対象におけるゲムシタビン感受性腫瘍を治療する方法であって、経口摂取時に、前記種についてのゲムシタビン(GEM)の最大耐量(MTD)の半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中の治療有効量のゲムシタビン(GEM)を含む剤形を、前記対象に経口投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記製剤が、軽度の機械的撹拌下で37℃にて水性媒体と接触すると、エマルションを自然に形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製剤が、前記対象の胃腸管内でエマルションを自然に形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記製剤が、
(a)親水性溶媒中に溶解したGEMと、
(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系と、
(c)GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する親水性担体と、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記剤形を前記対象に複数回投与する工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記剤形の連続投与の間の間隔が3日以内である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記剤形の連続投与の間の間隔が2日以内である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記剤形の連続投与の間の間隔が、GEMのMTDが前記対象に投与される通常の間隔よりも短い、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記製剤が、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/10、1/12、1/15、1/20および1/40からなる群から選択される画分以下の、前記種についてのMTDの画分を放出する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記剤形がカプセルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記剤形が軟質カプセルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記剤形が、GEMまたはGEMの薬学的に許容される塩、水、グリセロール、PEG、ポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象がヒトである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍が、乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺の腫瘍からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ヒト患者におけるGEM感受性腫瘍の退縮を誘導する方法であって、経口摂取時に、前記患者についてのGEMのMTDの半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中の治療有効量のGEMを前記患者に経口投与する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記製剤が、軽度の機械的撹拌下で37℃にて水性媒体と接触すると、エマルションを自然に形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記製剤が、対象の胃腸管内でエマルションを自然に形成する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記製剤が、
(a)親水性溶媒中に溶解したGEMと、
(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系と、
(c)GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する親水性担体と、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
剤形を対象に複数回投与する工程をさらに含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記製剤が、1/3、1/4、1/5、1/7、1/10、1/12、1/15および1/20からなる群から選択される画分以下の、種についてのMTDの画分を放出する、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
剤形が、GEMまたはGEMの薬学的に許容される塩、水、グリセロール、PEG、ポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍が、乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺の腫瘍からなる群から選択される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ヒト患者における腫瘍の増殖を阻害する方法であって、経口摂取時に、前記患者についてのGEMのMTDの半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中の治療有効量のGEMを前記患者に経口投与する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記製剤が、軽度の機械的撹拌下で37℃にて水性媒体と接触すると、エマルションを自然に形成する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤が、対象の胃腸管内でエマルションを自然に形成する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤が、
(a)親水性溶媒中に溶解したGEMと、
(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系と、
(c)GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する親水性担体と、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
剤形を対象に複数回投与する工程をさらに含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記製剤が、1/3、1/4、1/5、1/7、1/10、1/12、1/15および1/20からなる群から選択される画分以下の、種についてのMTDの画分を放出する、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
剤形が、GEMまたはGEMの薬学的に許容される塩、水、グリセロール、PEG、ポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドを含む、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍が、乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺の腫瘍からなる群から選択される、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ある種の対象におけるゲムシタビン感受性腫瘍を治療するか、またはGEM感受性腫瘍の退縮を誘導するのに使用するためのゲムシタビン(GEM)であって、GEMが、経口摂取時に、前記種についてのGEMの最大耐量(MTD)の半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で前記対象に経口投与される、使用するためのゲムシタビン(GEM)。
【請求項32】
前記製剤が、軽度の機械的撹拌下で37℃にて水性媒体と接触すると、エマルションを自然に形成する、請求項31に記載の使用するためのGEM。
【請求項33】
前記製剤が、前記対象の胃腸管内でエマルションを自然に形成する、請求項31または32に記載の使用するためのGEM。
【請求項34】
前記製剤が、
(a)親水性溶媒中に溶解したGEMと、
(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系と、
(c)GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する親水性担体と、
を含む、請求項33に記載の使用するためのGEM。
【請求項35】
GEMが前記対象に複数回投与される、請求項31~34のいずれか一項に記載の使用するためのGEM。
【請求項36】
剤形の連続投与の間の間隔が3日以内である、請求項35に記載の使用するためのGEM。
【請求項37】
剤形の連続投与の間の間隔が2日以内である、請求項35に記載の使用するためのGEM。
【請求項38】
剤形の連続投与の間の間隔が、GEMのMTDが前記対象に投与される通常の間隔よりも短い、請求項35に記載の使用するためのGEM。
【請求項39】
前記製剤が、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/10、1/12、1/15、1/20および1/40からなる群から選択される画分以下の、前記種についてのMTDの画分を放出する、請求項31~38のいずれか一項に記載の使用するためのGEM。
【請求項40】
GEMがカプセルで投与される、請求項31~39のいずれか一項に記載の使用するためのGEM。
【請求項41】
GEMが軟質カプセルで投与される、請求項40に記載の使用するためのGEM。
【請求項42】
前記製剤が、GEMまたはGEMの薬学的に許容される塩、水、グリセロール、PEG、ポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドを含む、請求項31~41のいずれか一項に記載の使用するためのGEM。
【請求項43】
前記対象がヒトである、請求項41または42に記載の使用するためのGEM。
【請求項44】
前記腫瘍が、乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺の腫瘍からなる群から選択される、請求項43に記載の使用するためのGEM。
【請求項45】
ヒト患者における腫瘍の増殖を阻害するのに使用するためのゲムシタビン(GEM)であって、GEMが、経口摂取時に、前記患者についてのGEMのMTDの半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で前記患者に経口投与される、使用するためのゲムシタビン(GEM)。
【請求項46】
患者における腫瘍を治療するか、または患者における腫瘍の増殖を阻害するのに使用するためのゲムシタビン(GEM)であって、GEMが、0.83mg/kg以下、好ましくは0.67mg/kg未満、さらに好ましくは0.33mg/kg未満の用量単位で前記患者に経口投与される、使用するためのゲムシタビン(GEM)。
【請求項47】
GEMが、0.067~0.67mg/kgの用量単位で経口投与される、請求項46に記載の使用するためのGEM。
【請求項48】
GEMが、
(a)親水性溶媒中に溶解したGEMと、
(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系と、
(c)GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する親水性担体と、
を含む製剤中で投与される、請求項46または47に記載の使用するためのGEM。
【請求項49】
前記腫瘍が、乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺の腫瘍からなる群から選択される、請求項46~48のいずれか一項に記載の使用するためのGEM。
【請求項50】
ある種の対象におけるゲムシタビン感受性腫瘍を治療するため、またはゲムシタビン感受性腫瘍の退縮を誘導するための医薬の製造のためのゲムシタビン(GEM)の使用であって、GEMが、経口摂取時に、前記種についてのGEMの最大耐量(MTD)の半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で前記対象に経口投与される、ゲムシタビン(GEM)の使用。
【請求項51】
ヒト患者における腫瘍の増殖を阻害するための医薬の製造のためのゲムシタビン(GEM)の使用であって、GEMが、経口摂取時に、前記患者についてのGEMのMTDの半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で前記患者に経口投与される、ゲムシタビン(GEM)の使用。
【請求項52】
患者における腫瘍を治療するため、または患者における腫瘍の増殖を阻害するための医薬の製造のためのゲムシタビン(GEM)の使用であって、GEMが、0.83mg/kg以下、好ましくは0.67mg/kg未満、さらに好ましくは0.33mg/kg未満の用量単位で、前記患者に経口投与される、ゲムシタビン(GEM)の使用。
【請求項53】
GEMが、0.067~0.67mg/kgの用量単位で経口投与される、請求項52に記載のGEMの使用。
【請求項54】
GEMが、
(a)親水性溶媒中に溶解したGEMと、
(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系と、
(c)GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する親水性担体と、
を含む製剤中で投与される、請求項52または53に記載のGEMの使用。
【請求項55】
前記腫瘍が、乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺の腫瘍からなる群から選択される、請求項52~54のいずれか一項に記載のGEMの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/344,660号に対する優先権を与えられる。その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、ある特定の腫瘍の治療のためのゲムシタビンを含む経口治療剤の使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
経口投与は、固体または液体懸濁液の形態の薬物投与の便利で使いやすい様式であり、薬物送達技術の分野において優勢であり続けている。たとえ多くの種類の薬物が許容される効力で経口投与され得るとしても、いくつかのクラスの薬物、とりわけ、良好な溶解性を有することが知られているが、肝臓において広範に代謝され、腸上皮によって容易に排出されるか(不十分な透過性)、または胃粘膜に刺激性であるもの、例えば米国食品医薬品局(FDA)によって提供されるBiopharmaceutics Classification System(BCS)のクラスIII薬物について課題が残ったままである。それらの薬物の1つである治療剤ゲムシタビン(GEM)について、注射投与が、許容される薬物吸収およびバイオアベイラビリティを達成するための主要な選択肢となるが、これは危険性および費用の増加をもたらし、さらに患者にとって痛みを伴う。
【0004】
GEMなどの比較的親水性の薬物の経口投与のための医薬組成物が記載されている。例えば、Innopharmax,Inc.の特許文献1は、良好なバイオアベイラビリティ(すなわち、静脈内注射によって達成されるものに匹敵する)および薬物の貯蔵安定性を示す、このような薬物の自己乳化調製物を記載している。
【0005】
GEMは、種々のがん腫を治療するための使用について記載されている。最大の抗腫瘍効果を達成するために、GEMは、多くの場合、患者によって耐容されるか、または耐容される可能性がある最大用量(「MTD」)で静脈内に投与される。既存のGEM療法の欠点は、薬物が、特にMTDで使用される場合に患者の血球産生を抑制し得ることである。
【0006】
「メトロノミック」化学療法が他に記載されている(例えば、非特許文献1)。この名称は、長期の休薬期間なしに(一般的に)低用量の化学療法薬の慢性的なほぼ等間隔の投与を言及している。メトロノミック療法は、それらのMTDより十分に低い薬物の投与を含む。GEMのメトロノミック投与は他に記載されているが、GEMを注射するか、または摂取後にGEMを形成するように代謝されることを意図したプロドラッグ(LY2334737と称される)を経口投与するかのいずれかの状況においてのみ記載されている。例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8を参照のこと。GEM自体の経口メトロノミック投与は、おそらく広範な初回通過代謝に起因する低いバイオアベイラビリティのために、有効性は示されていない。非特許文献9。
【0007】
非経口投与の欠点(例えば、不快感および専門的な投与の必要性)およびプロドラッグ投与の不安定性(例えば、患者間のプロドラッグ代謝の可変性)の両方を回避し、代わりに有効量の抗がん治療剤を経口投与形態で送達する有効な抗がん療法が開発されれば、有益であろう。本開示はそのような療法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0273730号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sharovskyら、2009、Curr.Oncol.16(2):7-15
【非特許文献2】Yappら、2016、Angiogenesis 19:229-244
【非特許文献3】Hasnisら、2014、Neoplasia 16:501-510
【非特許文献4】Vivesら、2013、Int.J.Cancer 133:2464-2472
【非特許文献5】Prattら、2013、Mol.Cancer Ther.12:481-490
【非特許文献6】Franciaら、2012、Mol.Cancer Ther.11:680-689
【非特許文献7】Chamら、2010、Br.J.Cancer 103:52-60
【非特許文献8】Laquenteら、2008、Mol.Cancer Ther.7:638-647
【非特許文献9】Veltkampら、2008、Clin.Cancer Res.14:3477-3486
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、ある種の対象におけるGEM感受性腫瘍を治療する方法に関する。これらの方法は、経口摂取時に、その種についてのGEMの最大耐量(MTD)の半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中の治療有効量のGEMを含む剤形を対象に経口投与する工程を含む。例えば、製剤は、軽度の機械的撹拌(すなわち、ヒト対象の胃腸管内のような状態)下で37℃にて水性媒体と接触すると、エマルションを自然に形成するものであり得る。製剤は、連続投与の間に2日または3日の間隔などで複数回、対象に投与されてもよい。
【0011】
好ましい実施形態において、製剤は、少なくとも3つの成分、すなわち、(a)親水性溶媒中に溶解したGEM;(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系;および(c)GEM-溶媒溶液および界面活性剤系の両方と適合する親水性担体を含む。例として、本明細書に記載される1つのこのような製剤(「GEMORAL」)は、GEM(またはGEMの薬学的に許容される塩)、水、グリセロール、PEG、ポリソルベート、およびオレオイルポリオキシルグリセリドの組み合わせである。本明細書に記載される製剤は、軟質カプセルなどのカプセルの形態で投与されてもよい。
【0012】
本明細書に記載される組成物は、乳房、膀胱、膵臓、および胆管の腫瘍、ならびにヒトにおける非小細胞肺腫瘍などのGEM感受性腫瘍を治療するに有用である。ヒトにおけるこのような腫瘍を治療するために、GEMは、同じ経路によって投与される場合、例えば、ヒトについてのGEMのMTDの1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/10、1/12、1/15、1/20、または1/40以下を放出する製剤中で投与されてもよい。
【0013】
本明細書に開示されるものの別の態様は、ヒト患者におけるGEM感受性腫瘍の退縮を誘導する方法である。これらの方法は、上記の方法と実質的に同様に実施され、すなわち、経口摂取時に、患者についてのGEMのMTDの半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中の治療有効量のGEMを患者に経口投与することによって実施される。
【0014】
本開示が教示するもののさらに別の態様において、ヒト患者における腫瘍の増殖を阻害する方法である。これらの方法は同様に、経口摂取時に、患者についてのGEMのMTDの半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中の治療有効量のGEMを患者に経口投与することによって実施される。
【0015】
本発明はまた、ある種の対象におけるGEM感受性腫瘍を治療するか、またはGEM感受性腫瘍の退縮を誘導するのに使用するためのGEMも開示し、GEMは、経口摂取時に、本明細書に記載される種についてのGEMのMTD未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で対象に経口投与される。また、ある種の対象におけるGEM感受性腫瘍を治療するため、またはGEM感受性腫瘍の退縮を誘導するための医薬の製造のためのGEMの使用も提供され、GEMは、経口摂取時に、本明細書に記載される種についてのGEMのMTD未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で対象に経口投与される。
【0016】
本発明はまた、ヒト患者における腫瘍の増殖を阻害するのに使用するためのGEMも開示し、GEMは、経口摂取時に、本明細書に記載される患者についてのGEMのMTD未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で対象に経口投与される。また、ヒト患者における腫瘍の増殖を阻害するための医薬の製造のためのGEMの使用も提供され、GEMは、経口摂取時に、本明細書に記載される患者についてのGEMのMTD未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で対象に経口投与される。
【0017】
本開示はまた、本明細書に記載される方法を実施するのに有用な医薬の製造に関する。すなわち、経口摂取時に、ある種についてのGEMのMTDの半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中の治療有効量のGEMを含む経口投与可能な製剤を製造するための方法が開示される。このような製剤は、軽度の機械的撹拌(すなわち、ヒト対象の胃腸管内のような状態)下で37℃にて水性媒体と接触するとエマルションを自然に形成するものであり得る。製剤は、連続投与の間に2日または3日の間隔などで複数回、対象に投与されてもよい。
【0018】
本明細書に記載されるように製造され得る製剤は、少なくとも3つの成分、すなわち、(a)親水性溶媒中に溶解したGEM;(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系;および(c)GEM-溶媒溶液および界面活性剤系の両方と適合する親水性担体を含んでもよい。例として、本明細書に記載される1つのこのような製剤(「GEMORAL」)は、GEM(またはGEMの薬学的に許容される塩)、水、グリセロール、PEG、ポリソルベート、およびオレオイルポリオキシルグリセリドの組み合わせである。本明細書に記載される製剤は、軟質カプセルなどのカプセルの形態で製造されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】患者由来のヒト胆管がんが異種移植されている動物についての経時的な腫瘍体積のグラフである。さらなる詳細は実施例2に記載される。
図2】実施例2に記載される試験の動物についての生存率のグラフである。
図3】ヒト胆管がん細胞株HuCCT1が異種移植されている動物についての経時的な腫瘍体積のグラフである。さらなる詳細は実施例3に記載される。
図4】実施例3に記載される試験の動物についての生存率のグラフである。
図5】ヒト膵臓がん細胞株CFPAC-1が異種移植されている動物についての経時的な腫瘍体積のグラフである。さらなる詳細は実施例4に記載される。
図6】実施例4に記載される試験の動物についての生存率のグラフである。
図7】ヒト膵臓がん細胞株CFPAC-1が異種移植されている動物についての経時的な腫瘍体積のグラフである。さらなる詳細は実施例5に記載される。
図8】実施例5に記載される試験の動物についての生存率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、対象における腫瘍を治療するためにゲムシタビン(GEM)を対象に経口投与するための組成物および方法に関する。このような治療は、例えば、腫瘍の体積、質量、または増殖速度を低減させることを含んでもよく、また、腫瘍の退縮を誘導することを含んでもよい。
【0021】
抗がん剤としてのGEMの使用は長い間知られている。しかしながら、GEMの使用は、薬物の注射またはGEMを生じるように患者の体内で代謝されることが望まれる/期待されるプロドラッグの経口投与に長い間制限されてきた。
【0022】
GEM自体が、単独療法または別の抗腫瘍療法に対する補充のいずれかとしてメトロノミック様式で経口投与され得、効果的な抗腫瘍効果を発揮することを実証するデータが本明細書に記載される。本明細書に提示されるデータは、ヒト胆管がんおよび膵臓がんの非ヒト動物異種移植モデルを使用して収集されたが、当業者は、このデータがヒト患者におけるこれらの腫瘍を治療または軽減するための本明細書に記載される療法の有用性を示すことを理解するであろう。当業者はさらに、GEMの経口メトロノミック投与が、GEM療法に反応することが知られているか、または後に発見される全てのヒト腫瘍(例えば、少なくとも特定の乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺がんを含む、注射されるGEMに反応するもの)に対して好ましい抗腫瘍効果を発揮することが期待され得ることを本明細書に提示される情報から認識するであろう。
【0023】
本発明者らは、GEMのより高い用量(例えば、最大耐量、MTDまたはその付近の用量)での注射(例えば、腹腔内または静脈内)、続いて実質的により低い用量のGEMのメトロノミック経口投与が、注射単独よりも大きな腫瘍退縮を生じ得ることを発見した。経口用量は、例えば、米国特許出願公開第2010/0273730号に記載されているものなどのGEMの自己乳化調製物であってもよく、GEMのMTDの画分、例えば、GEMのMTDの1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/10、1/12、1/20、または1/40を含んでもよい。
【0024】
本発明者らはまた、GEMの注射がなくても、または5-フルオロウラシル(5FU)などの異なる抗腫瘍剤による治療の後でさえ、MTDよりも実質的に低い用量でのGEMのメトロノミック経口投与が腫瘍退縮を誘導することができることを発見した。
【0025】
GEMのメトロノミック経口投与
本明細書に記載される主題の重要な態様は、GEMが、生物学的に利用可能な形態で、GEMの最大耐量(MTD)よりも実質的に低い投薬量で経口投与された場合、特に、長期間(例えば、数週間、数ヶ月、または数年)にわたって定期的に投与された場合に、有意な抗腫瘍効果を示すという発見である。このような投与は一般に「メトロノミック」投与と称され、いくつかの他の抗腫瘍剤のための有効な治療レジメンとして考慮されている。しかしながら、本開示以前には、GEMが、メトロノミックレジメンの一部として経口投与された場合に有意な抗腫瘍効果を示すかどうか、およびGEMメトロノミックレジメンがどのように作用するかは知られていなかった。
【0026】
GEMは、MTDに近い用量で経口投与された場合、腫瘍増殖を阻害することが以前に示されている。しかしながら、MTD-GEM経口投与の中止後、腫瘍増殖速度は、他の点では同様のビヒクル処置(すなわち、GEM投与なし)動物における腫瘍増殖速度とほぼ等しい速度に回復する。MTD-GEM経口投与に起因する有害な効果のために、このような療法は、限られた期間のみ提供され得る。経口メトロノミックGEM療法は、より長い期間のGEM介在性腫瘍増殖速度の阻害を可能にする。単独の療法として投与されるか、他の抗腫瘍療法と共に投与されるかに関わらず、経口メトロノミックGEM療法は抗腫瘍効力の期間を延長する。
【0027】
GEMなどの特定の抗腫瘍薬は、非経口経路(例えば、非経口または経上皮)によって投与され得ることが周知である。しかしながら、経口経路は、大多数の患者が比較的長期間(例えば、数日、数週、数ヶ月、数年、または生涯の間にさえ)にわたる薬物投与に耐えることができ、薬物投与の遵守が高い傾向にある経路である。さらに、経口経路による薬物の投与は典型的には非臨床環境(例えば、家庭または旅行中)で実施することができ、一方、他の経路による投与(および/またはMTDもしくはその近くでの薬物の投与)は、臨床施設への訪問または臨床施設への収容期間を必要とすることがある。本明細書に記載される治療方法はMTD以下の量でのGEMの経口投与のみを含み得るので、このような治療方法を受ける対象は施設に収容されず、独立したままであり得る。これらの方法においても、本明細書に記載される方法は、以前から知られている抗腫瘍方法を超える有意な進歩を示す。
【0028】
薬物のMTDは一般的に、受容者において薬物に起因する許容できない副作用を引き起こさない薬物の最高用量であると考えられる。実際には、MTDは、通常、臨床的に薬物を受けると予想される患者に類似する個体に漸増用量の薬物を投与すること、および投与後にこれらの個体が経験する副作用を観察することによって経験的に決定される。MTDは、投与される個体の十分に少ない画分(例えば、個体の1/2、1/4、または10%未満)において許容できない副作用を誘導する最大用量を観察することによって選択され得る。MTDは、種間、投与経路間で変動し得るので、MTDは同じ経路によって臨床的に薬物を受容すると予想される患者と類似する個体集団についての対応する経路によって決定されることが重要である。
【0029】
例として、実施例2に記載される異種移植マウスのGEMについてのMTDを評価するために、本発明者らは、実施例1に記載されるGEMORAL組成物を、5匹のBALB/cヌードマウスの群(初期10週齢)に、1日あたり3もしくは5mg/kgの用量レベルで、または種々の群について1日おきに10もしくは20mg/kgの用量レベルで、28日間経口投与した。4週間の試験期間中、生存率および体重減少を追跡した。GEMORALの毎日および1日おきの投与のMTDは、それぞれ3mg/kgおよび10mg/kgと決定された。全ての用量は、GEM遊離塩基当量1kg当たりのミリグラムとして表される。
【0030】
GEMについては、ヒトがん患者についてのMTD値を決定した者もいる。例えば、Fossellaら(1997、J.Clin.Oncol.15:310~316)は、GEM静脈内注入レジメンについて2,400mg/m/週のMTDを推定した(64.88mg/kgに等しいヒト患者の3,893mg/60kgに相当する2,400mg/m)。GEMZAR(Eli Lilly and Co.)の商標名で市販されている市販のGEM製品についての標識は、1,000または1,250mg/mの静脈内投与量を推奨する。詳細には、GEMZAR用量投与は、21日サイクルの1日および8日または1日、8日および15日に投与して、27.03mg/kgに等しいヒト患者の1,622mg/60kgに相当する1,000mg/mの用量で、または28日サイクルの1日、8日および15日に投与して、33.78mg/kgに等しいヒト患者の2,027mg/60kgに相当する1,250mg/mの用量で行う。
【0031】
例として、MTDを決定する試みにおいて、実施例6に記載されるように、GEMをヒトがん患者に経口投与した。試験したGEM用量範囲(0~80mg)にわたって用量制限毒性(DLT)が観察されなかったため、これらの実験ではMTDは決定されなかった。MTDを決定する方法は周知であり、当業者は、GEMORAL製剤において経口投与されるGEMについてのMTDを容易に決定することができる。実施例6に記載される実験は、このMTDが使用した投薬レジメンにおいて80mgより大きいことを実証し、この値が本明細書に記載される目的のためのMTDの(低)推定値として使用され得ることを意味する。すなわち、この用量の画分をメトロノミック用量として選択することができる。
【0032】
本明細書に使用される場合、対象へのGEMの経口製剤の「メトロノミック」投与とは、GEM応答性腫瘍に罹患した患者への経口GEM製剤の反復投与を指し、経口GEM製剤の各々の用量は、このような対象のためのGEMのMTDの画分のみ、例えば、GEMのMTDの半分、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、10分の1、12分の1、15分の1、20分の1、または40分の1を含む。このような用量を計算するために使用されるMTD値は、類似対象について当該分野において報告される値、このような対象(例えば、第I相試験参加者)の類似体について経験的に決定される値、異なるGEM応答性腫瘍に罹患した対象についての値と比較して推定される値、またはこれらの組み合わせであり得る。例として、異種移植ヒト腫瘍組織を有するマウスにおける本明細書に記載される試験において、10mg/kgの経口メトロノミック用量が1日おきに投与され、これは、類似のマウスに3日ごとに経口投与されるGEMのMTDの約1/6~1/12の用量に相当する。
【0033】
別の実施形態において、本発明によるメトロノミック投与に適した経口用量、すなわち、経口摂取時に、種についてのGEMの最大耐量(MTD)の半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出するGEM製剤の用量は、最高の既知の「安全」用量の(上記のような)画分を使用することによって選択することができる。したがって、MTDは、その状況下で1人または複数の対象が安全に耐えられる最高用量を観察することによって推定することができ、その最高安全耐量は、本明細書に記載される目的のためのMTDについての推定値として使用することができる。例として、GEMORAL製剤中の80mgのGEMの用量を週3回(1日目、3日目、5日目、8日目、10日目、および12日目)経口投与すると、進行性胆道がんに罹患したヒト患者(平均重量約60kg)にとって安全であることが実証された(実施例6を参照のこと;平均ヒト重量60kgの場合、80mg用量は1.33mg/kgに等しい)。したがって、例えば、この既知の安全な用量の画分を、MTDの代わりに、この患者集団におけるメトロノミック経口投与に使用することができる。メトロノミック用量は、処置されるべき腫瘍に対して少なくともいくらかの治療効果を示すはずである。したがって、例えば、腫瘍に対する少なくともいくらかの最小の治療効果(例えば、腫瘍増殖速度の減少または腫瘍塊もしくは体積の縮小)が観察可能である限り、少なくともメトロノミック投与後、少なくとも1ヶ月間継続される。
【0034】
特に、乳房、膀胱、膵臓、胆管、および非小細胞肺の腫瘍のうちの1つ以上に罹患している患者などのヒト患者(平均体重約60kg)において、本発明によるGEMの適切な経口用量は、1.33mg/kg、例えば、0.67mg/kg、0.45mg/kg、0.33mg/kg、0.27mg/kg、0.18mg/kg、0.13mg/kg、0.11mg/kg、0.088mg/kg、0.067mg/kgの画分に相当する、例えば、80mg、例えば、40、27、20、16、11、8、6.7、5.3、または4.0mgの画分を含む。したがって、対象、好ましくはヒト患者における腫瘍、好ましくはGEM感受性腫瘍の治療に使用するためのGEMが提供され、ここで、GEMは、50mg(0.83kg/mg)以下、好ましくは40mg(0.67kg/mg)未満、さらに好ましくは20mg(0.33kg/mg)未満の用量単位で経口投与される。好ましい実施形態において、GEMは、4~40mg(0.067mg/kg~0.67kg/mg)の用量単位で経口投与されてもよい。いくつかの実施形態において、GEMは、メトロノミック用量あたり120mg(2.00mg/kg)以下、100mg(1.67mg/kg)以下、または80mg(1.33mg/kg)以下で経口投与されてもよい。このような経口用量は、例えば2~4日毎に反復して投与されてもよい。好ましくは、GEMは、以下に記載される自己乳化組成物、好ましくは(a)親水性溶媒中に溶解したGEM;(b)約8~約17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系;ならびに(c)GEM-溶媒溶液および界面活性剤系と適合する親水性担体中に製剤化される。好ましくは、組成物は、例えば実施例1の組成物におけるような、少なくともそのような界面活性剤およびポリエチレングリコール(PEG)を含む。好ましくは、治療は、少なくとも2週間もしくは3週間、または少なくとも1ヶ月、1ヶ月から6ヶ月、またはさらには数年、例えば1年から2年間継続する。特定の実施形態において、用量は実施例6に記載される投薬レジメンで投与される。あるいは、GEMの適切なメトロノミック経口用量は、所望の投薬レジメン(実施例6で概説される投薬レジメンについて実施例6で行われたように)についてのMTD(またはMTDの低い推定値として使用可能なDLTを含まない用量)を決定し、MTDの画分(または最高の決定されたDLTを含まない用量)を所望のレジメンのための適切な用量として選択することによって決定され得る。
【0035】
メトロノミック投与は、無期限にまたは持続期間にわたって重大な中断または「休薬」なしに規則的なスケジュールで一般に進行する反復用量投与を口語的に指す。本明細書に使用される場合、GEMの「メトロノミック」経口投与は、規則的な中断されないスケジュールでのGEMの分画MTD経口製剤の反復投与を意味する。このようなスケジュールは、例えば、1日3回、1日2回、1日1回(QD)、1日おき(すなわちQ2D)、3日毎(すなわちQ3D)、4日毎(すなわちQ4D)、5日毎(すなわちQ5D)、週1回、週2回、または週3回の投与スケジュールなどの投与頻度を含んでもよい。投与計画は、所望される限り、長時間、または最大の回数の用量で、対象が耐えることができる限り、維持され得る。望ましくは、このようなメトロノミック投与は、数ヶ月または数年(または無期限)などの長期間にわたって抗腫瘍治療効果(例えば、腫瘍増殖の減少、停止、または反転)を発揮することができる。
【0036】
本明細書に記載される、メトロノミック投与される経口GEM製剤の物理的形態は重要ではない。米国特許出願公開第2010/0273730号に記載されている剤形のいずれかなどの、実質的に、生物学的に利用可能な形態で対象の胃腸管にGEMを送達する任意の経口剤形を、本明細書に記載される量およびスケジュールで利用することができる。好ましくは、経口GEM製剤は、米国特許出願公開第2010/0273730号に記載されている物質を含有するカプセルの形態で投与される。一例として、そのような物質は実施例1の表に記載された成分を有することができる。
【0037】
GEMの経口製剤の対象へのメトロノミック投与は、例えば、対象に、全用量を含有する単一のカプセルもしくは軟質カプセルを投与することによって、それぞれ全用量の一部を含有する複数のカプセルもしくは軟質カプセルを投与することによって、錠剤を投与することによって、または液状エマルションを投与することによって達成され得る。GEMのメトロノミック経口投与は、腫瘍を治療する(例えば、腫瘍の増殖を阻害する、腫瘍の大きさを減少させる、または腫瘍を排除する)ための単剤療法として使用され得る。GEMのメトロノミック経口投与はまた、GEMまたは別の抗腫瘍剤を使用する別の抗腫瘍処置の前、後、またはそれと重複する補助的処置として実施されてもよい。例として、対象は、MTD付近(例えば、1/2のMTDより多い)の量のGEMまたは別の抗腫瘍剤で処置されてもよく、このような処置の中断後、GEMのメトロノミック経口投与が本明細書に記載されるように実施されてもよい。あるいは、GEMのメトロノミック経口投与は、MTD付近の処置と同時に開始され、その中断を超えて耐えることができる。さらに別の代替として、GEMのメトロノミック経口投与を実施することができ、別の抗腫瘍治療を、GEMのメトロノミック経口投与が行われる期間の一部のみの間に実施することができる。GEMのメトロノミック経口投与が補助的処置として実施される場合、他の処置は、GEMまたは別の抗腫瘍剤の経口投与を伴う処置、GEMまたは別の抗腫瘍剤の非経口(例えば、静脈内または腫瘍内注射)、または非薬物処置(例えば、腫瘍切除手術)を伴う処置であってもよい。
【0038】
自己乳化経口医薬組成物
本明細書に記載される主題は、経口投与のためのGEMの自己乳化医薬(SEP)組成物を含む。GEMに加えて、SEP組成物は、GEMを溶解してGEM溶媒溶液を形成するための1種以上の溶媒を含む。SEP組成物はまた、界面活性剤系も含む。界面活性剤系は、約8~約17の範囲の親水性-親油性バランス(HLB)値を示す1種以上の界面活性剤である。SEP組成物において、GEM-溶媒溶液および界面活性剤系は、GEM溶媒溶液および界面活性剤系の両方と適合する1種以上の親水性担体と組み合わされる。経口SEP組成物で経口投与した場合、GEMの優れた生物学的利用能が観察される。驚くべきことに、このように経口投与されるGEMの用量は本明細書に記載される有益な腫瘍治療応答を提供することができる。GEMの経口SEP組成物はまた、良好な貯蔵安定性も示す。
【0039】
したがって、一態様において、本発明は、ヒトに投与するための経口自己乳化医薬組成物であって、以下を含む医薬組成物を提供する:
(a)治療有効量のGEMまたはGEMの薬学的に許容される塩、その量は、同一(または実質的に類似)のSEP組成物中でヒトに経口投与される場合、GEMについてのMTDの画分(すなわち半分未満)である、
(b)GEM溶媒溶液を形成するために薬物または塩を溶解することができる1種以上の溶媒、
(c)1種以上の界面活性剤を含む界面活性剤系であって、約8~約17のHLB値を示す界面活性剤系、ならびに
(d)GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する1種以上の親水性担体。
【0040】
「自己乳化」という用語は、本明細書において、米国特許出願公開第2010/0273730号と同じ意味で使用される。すなわち、この用語は、製剤が水性媒体と接触したとき(軽いかき混ぜまたは回転などの軽度の機械的撹拌下で37℃および1気圧で水と混合したときなど)に微細な油-水エマルションを生成する製剤を記述するために使用される。好ましくは、SEP組成物がそのような水性媒体と接触すると、800nm未満(より好ましくは400nm未満、200nm未満、または100nm未満、例えば約10nm)の平均粒径を有するエマルションを形成する。
【0041】
本明細書に使用される場合、「治療有効量」という用語は、治療効果を与えるのに有効なGEMの用量、特に、胃腸(GI)管の壁を通して体内に吸収された後に、組成物が投与される対象のGEM感受性腫瘍に対して検出可能な治療抗腫瘍効果を与える薬物の用量を意味する。通常、当業者は、組成物に含まれるGEMの量が、例えば、対象の種、大きさ、年齢、および状態を含むがこれらに限定されない特定の条件によって変化することを理解する。
【0042】
本明細書に使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、GEMの生物学的有効性および特性を実質的に保持する酸付加塩を含むが、これらに限定されない。このような酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を用いて形成することができる。
【0043】
SEP組成物において、1種以上の溶媒が、GEM溶媒溶液を形成するためにGEMまたはGEM塩を溶解するために使用される。好ましくは、溶媒の各々は、溶媒100部(または30、10もしくは1部)未満にGEMまたは塩の約1部(重量部)を溶解することができる。適切な溶媒の例としては、水、エタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、イソプロパノール(IPA)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、グリセロール、酢酸、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例として、溶媒は、SEP組成物の重量を基準として約2.5%~約60%(w/w)の範囲の量で存在することができる。
【0044】
SEP組成物の界面活性剤系は、1種以上の界面活性剤を含み、約8~約17の範囲のHLB値を示す。HLB値は、界面活性剤の親水性部分と親油性部分との間のバランスに従って界面活性剤をランク付けするために当該技術分野において公知であり、HLB値が高いほど、界面活性剤は親水性が高く、HLB値が低いほど、界面活性剤は親水性が低い。約8~約17の範囲のHLB値を有する単一の界面活性剤がSEP組成物に使用されてもよい。あるいは、高いHLBの界面活性剤と低いHLBの界面活性剤との組み合わせが使用されてもよい。界面活性剤または界面活性剤の組み合わせが約8~約17の範囲のHLB値を示す限り、界面活性剤の正確な選択および同一性は重要ではない。適切な界面活性剤には、カチオン性、アニオン性、および非イオン性界面活性剤が含まれる。適切な界面活性剤の例には、ポリソルベート、ポロキサマー、オレオイルポリオキシルグリセリド(商標名LABRAFIL(商標)M1944CSとして販売されているものなど)、リノレオイルポリオキシルグリセリド(LABRAFIL(商標)M2125CSなど)、カプリロカプロイルポリオキシルグリセリド(Labrasolなど)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(PEG40硬化ヒマシ油、商標名CREMOPHOR(商標)ELまたはCREMOPHOR(商標)RHとして販売されているものなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商標名BRIJ(商標)として販売されているものなど)、ソルビタン脂肪酸エステル(商標名SPANS(商標)として販売されているものなど)、モノオレイン酸グリセリル(商標名PECEOL(商標)として販売されているものなど)、モノリノール酸グリセリル(商標名MAISINE(商標)35-1として販売されているものなど)、中鎖トリグリセリド、オレイン酸ポリグリセリル(商標名PLUROL OLEIQUE(商標)CC497として販売されているものなど)、ラウロイルポリオキシルグリセリド(商品名GELUCIRE(商標)44/14として販売されているものなど)、ステアロイルポリオキシルグリセリド(商品名GELUCIRE(商標)50/13として販売されているものなど)、プロピレングリコールジカプリロカプレート(商品名LABRAFAC(商標)PGとして販売されているものなど)、プロピレングリコールラウレート(商品名LAUROGLYCOL(商標)FCCとして販売されているものなど)、プロピレングリコールモノラウレート(商品名LAUROGLYCOL(商標)90として販売されているものなど)、プロピレングリコールカプリレート(商品名CAPRYOL(商標)PGMCとして販売されているものなど)、およびプロピレングリコールモノカプリレート(商品名CAPRYOL(商標)90として販売されているものなど)などが含まれる。これらの界面活性剤は、本明細書に記載されるHLB特性にされて、単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。より好ましくは、約9~約13、さらにより好ましくは約10~約12のHLB値を有する界面活性剤がSEP組成物に含まれる。例えば、SEP組成物は、界面活性剤系としてポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドの混合物を含んでもよい。界面活性剤系の正確な同一性および量は重要ではないが、系は好ましくはSEP組成物の重量に基づいて約20%~約75%(w/w)の量で存在する。
【0045】
SEP組成物は、GEM溶媒溶液および界面活性剤系と適合する1種以上の親水性担体を含む。本明細書に使用される場合、「適合する」とは、広範な混合または他の処理を必要とせずに安定な均質な溶液を形成するように親水性担体がGEM溶媒溶液および界面活性剤系と混合され得るかまたは分散され得ることを意味する。好ましくは、各々の親水性担体は、1部のGEMまたはGEM塩が約10~10,000部(重量部)の親水性担体と均質に混合されるような量で、SEP組成物の他の成分と混合可能である。好適な親水性担体の例としては、ポリソルベート、エタノール、ポリエチレングリコール(PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG2000、PEG3000、PEG4000、PEG6000、またはPEG8000などのPEG)、グリセロール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、プロピレンカーボネート(PC)、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル(商標名TRANSCUTOL(商標)HPとして販売されているものなど)が挙げられる。親水性担体は、好ましくは、SEP組成物の重量に基づいて約2%~約60%(w/w)の量で存在する。
【0046】
SEP組成物は、任意選択で、抗酸化剤(例えば、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル、TPGS)などの他の成分を含んでもよい。SEP組成物のpHは、好ましくは、GEMの解離定数(pKa)を超えるpH(すなわち、pH4.0超)、例えば5~8のpHを有するように調節される。
【0047】
SEP組成物の成分および量は、保存中に良好な安定性を示すように(例えば、実験的に)選択されるべきであり、このことは、特に、1、3、6、または12ヶ月の期間などの選択された保存期間中に、その中に含まれるGEMの実質的な相分離、物質沈殿、テクスチャ変化、または分解がないことを意味する。「GEMの実質的な分解なし」とは、選択された期間、保存された後に組成物中で治療的に不活性になるGEMの量が、元の量の約20%未満、好ましくは約10%未満であることを意味する。
【0048】
いくつかの実施形態において、溶媒および親水性担体は、特に、本発明の医薬組成物の重量に基づいて、約25%~約65%(w/w)、より具体的には約40%~約60%(w/w)、さらにより具体的には約50%(w/w)の範囲の量で一緒に存在する。特に、溶媒および親水性担体は本発明の医薬組成物中に約1:0.1~約1:9の重量比で存在する。より具体的には、本発明の医薬組成物が経口溶液の形態である場合、溶媒および親水性担体は、本発明の医薬組成物中に約1:0.1~約1:2の重量比で存在し;本発明の医薬組成物がカプセルの形態である場合、溶媒および親水性担体は、本発明の医薬組成物中に約1:1~約1:9の重量比で存在する。他方で、親水性担体および界面活性剤系は、特に、本発明の医薬組成物の重量に基づいて、約50%~約95%(w/w)、より具体的には約65%~約85%(w/w)、さらにより具体的には約75%(w/w)の範囲の量で一緒に存在する。具体的には、親水性担体および界面活性剤系は、本発明の医薬組成物中に約1:0.3~約1:32.5、より具体的には約1:1~約1:20、さらにより具体的には約1:1.5の重量比で存在する。
【0049】
一つの実施形態において、溶媒、親水性担体および界面活性剤系は、本発明の医薬組成物中に約2:3:4.5の重量比で存在する。
【0050】
特定の実施形態において、本発明の自己微小乳化医薬組成物は、ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩、水、グリセロール、PEG、ポリソルベート、およびオレオイルポリオキシルグリセリドを含む。特定の例において、ゲムシタビンは医薬組成物の重量に基づいて約2.00%(w/w)の量で存在し;水は医薬組成物の重量に基づいて約20.00%(w/w)の量で存在し;グリセロールおよびPEGは医薬組成物の重量に基づいて約32.30%(w/w)の量で一緒に存在し;ポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドは医薬組成物の重量に基づいて約45.70%(w/w)の量で一緒に存在する。
【0051】
特定の実施形態において、本発明の自己乳化医薬組成物は、ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩、水、プロピレングリコール、PEG、ポリソルベート、およびオレオイルポリオキシルグリセリドを含む。特定の例において、ゲムシタビンは医薬組成物の重量に基づいて約2.00%(w/w)の量で存在し、水は医薬組成物の重量に基づいて約20.00%(w/w)の量で存在し、プロピレングリコールおよびPEGは医薬組成物の重量に基づいて約32.30%(w/w)の量で一緒に存在し、ポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドは医薬組成物の重量に基づいて約45.70%(w/w)の量で一緒に存在する。
【0052】
特定の実施形態において、本発明の自己乳化医薬組成物は、ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩、水、グリセロール、PEG、ポリソルベート、オレオイルポリオキシルグリセリド、およびTPGSを含む。特定の例において、ゲムシタビンは医薬組成物の重量に基づいて約1.98%(w/w)の量で存在し、水は医薬組成物の重量に基づいて約19.8%(w/w)の量で存在し、グリセロールおよびPEGは医薬組成物の重量に基づいて約31.98%(w/w)の量で一緒に存在し、ポリソルベートおよびオレオイルポリオキシルグリセリドは医薬組成物の重量に基づいて約45.25%(w/w)の量で一緒に存在し、TPGSは医薬組成物の重量に基づいて約0.99%(w/w)の量で存在する。
【0053】
本発明の医薬組成物は、必要に応じて、結合剤、充填剤、充填剤/結合剤、吸着剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤および類似物などの当該技術分野において公知の医薬賦形剤を含有してもよい、カプセル、錠剤、粉末またはコーティングされた顆粒剤を含むがこれらに限定されない、任意の経口的に許容される剤形で経口投与されてもよい。
【0054】
本発明の特定の実施形態において、医薬組成物は、密封された軟質カプセルまたは硬質カプセルにカプセル化される。カプセルは、GI管の特定の領域で溶解する、例えば、その内容物をそこで放出する、任意の公知の種類であってもよい。このようなカプセルの例は、腸溶コーティング軟質または硬質ゼラチンカプセルである。腸溶コーティングは、公知のように、胃液中での溶解に抵抗するが、腸内で崩壊する物質または物質の組み合わせでコーティングされる。
【0055】
本明細書に記載されるSEP組成物は、本開示を考慮して当該技術分野において一般に使用される任意の標準的な方法を使用して、GEMを1種以上の溶媒、1種以上の親水性担体、および界面活性剤系と混合することによって調製され得る。いくつかの実施形態において、GEMは、1種以上の溶媒および1種以上の親水性担体と最初に混合され、次いで界面活性剤系とさらに混合される。調製の詳細は以下の実施例に記載される。
【0056】
GEMのSEP組成物は、Innopharmax,Inc.の米国特許出願公開第2010/0273730号(例えば、その公報における「Formulation IV」を参照のこと)に記載されており、これらの製剤は、メトロノミック投薬量を送達するように調節されて、本明細書に記載される方法に使用され得る。
【実施例0057】
本開示の主題をここで以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は例示のみのために提供され、主題はこれらの実施例に限定されず、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかである全ての変形を包含する。
【0058】
以下の略語を実施例において使用する:
「GEM」はゲムシタビンを意味する。
「5FU」は5-フルオロウラシルを意味する。
「Q3D」は3日毎のその従来の意味を有する。
「Q2D」は2日毎のその従来の意味を有する。
「GEMORAL」は、本明細書に記載される経口投与のために製剤化されたGEMの自己乳化調製物を意味する。
【0059】
実施例1
GEMORAL調製物
本明細書に記載されるGEMORAL組成物は、単位用量あたり80mgのGEM遊離塩基を含有することを意図した製剤についての単位用量あたりの量として表される、以下の組成を有した:
【0060】
【表1】
【0061】
本明細書に記載されるGEMORAL組成物は以下のように作製した。グリセリンおよびPEG400を秤量し、液体表面に目に見える渦が形成されるように蓋なし(オープントップ(open-top))容器中で十分に混合した。少なくとも成分が、もはや別々に区別できなくなるまで混合を続けた。約5分間にわたって混合を続けながら、この溶液に、示した量のGEM HClをグリセリン/PEG400混合物に徐々に添加し、添加後、少なくとも約15分間混合を続けた。混合を継続しながら、混合物のpHを5NのNaOHの添加により6.00±0.10に調整した。撹拌を継続しながら、水を混合物に添加した。さらに10分間撹拌を継続し、次いで停止した。この時点までの全ての工程は、温度制御を課さずにほぼ室温の試薬を使用して室温(約20℃)にて実施した。
【0062】
LABRAFIL(登録商標)およびTWEEN(登録商標)80(界面活性剤)を合わせ、液体表面に目に見える渦が形成されるように30℃にて均一に見えるように十分に混合した。混合を継続しながら、GEM HCl含有混合物を界面活性剤混合物と合わせ、混合物の温度を30℃に制御しながら約30分間混合を継続し、次いで混合を停止し、合わせた混合物(GEMORAL組成物)を(例えば、バイアル中に)充填し、保存した(例えば、20~25℃)。
【0063】
いくつかの実験では、GEMORAL組成物を充填し、個々のバイアルに保存し、その各々は約4.6グラムのGEMORAL組成物を含有した。他の実験では、多量のGEMORAL組成物を使用前にバルクで保存した。GEMORAL製剤は軟質ゲル型カプセルを含む様々な剤形に含めるのに適している。例えば、40mgのGEM(遊離塩基ベースで)を含有するGEMORAL製剤の量を、単独で、または他の賦形剤と混合して、経口投与用の軟質ゲルカプセルに組み込むことができる。
【0064】
本明細書に記載される異種移植マウス試験で使用される投与溶液(遊離塩基ベースで1および0.3mg/mlのGEM)を作製するために、上記のGEMORAL製剤を室温(約25℃)にし、室温にて撹拌しながら脱イオン水と合わせた。
【0065】
10mg/kgのGEM経口投与溶液を作製するために、6.289グラムの1.6mg/kgのGEMORAL溶液(GEMORAL製剤80mgを脱イオン水で希釈して、遊離塩基ベースで1.6mg/mlのGEMを含有する組成物を得ることによって作製した)を、10ミリリットルのメスフラスコ中で水と合わせた。撹拌後、体積を10.0ミリリットルにし(1mgのGEM/ml溶液を得た)、調製の4時間以内に、個々のマウス体重に基づいて、個々の異種移植マウスに溶液を経口投与した。
【0066】
3mg/kgのGEM経口投与溶液を作製するために、1.6mg/kgのGEMORAL溶液1.887グラムを、10ミリリットルメスフラスコ中の水と合わせた。撹拌後、体積を10.0ミリリットルにし(0.3mgのGEM/ml溶液を得た)、調製の4時間以内に、個々のマウス体重に基づいて、個々の異種移植マウスに溶液を経口投与した。
【0067】
実施例2
ヒト胆管がんの異種移植マウスモデルにおける高用量のGEM注射および/またはGEMORAL投与のin vivo有効性
この実施例は、ヒト患者由来胆管がんの一部が異種移植されたマウスに対するゲムシタビンの効果の試験を記載する。次いで異種移植マウスを5つの処置レジメンのうちの1つで処置し、結果を観察した。
【0068】
本試験で使用する異種移植マウスを準備するために、ヒト患者から得た原発性ヒト胆管がん断片を「ストック」雄BALB/cヌードマウスに注射した。続いて、腫瘍断片(約2~3mm直径)を「ストック」マウスから採取し、他の雄BALB/cヌードマウスの右側腹部に皮下接種した。次いで、接種されたマウスにおける腫瘍の発生を観察し、40匹のそのようなマウスを、それらの腫瘍体積が約180立方ミリメートルに達したときに、この試験に含めるために選択した(体積は、腫瘍長さに1/2(腫瘍幅の2乗)を掛けることによって評価し(すなわち、L×W/2)、長さおよび幅はカリパスを使用して測定した)。マウスを、試験のために各々8匹のマウスの5つのグループに分け、各グループにおける全てのマウスは、ほぼ等しいサイズの腫瘍を有した。マウスが最初に投薬された日を試験の「1日目」と指定し、試験を76日間継続した。マウスをグループ1、2、3、4および5に分けた。各群のマウスを同様に処置した。
【0069】
グループ1のマウスに、試験の1、4、7、および10日目に60mg/kgのGEMを腹腔内注射し(すなわち、Q3D×4)、その後さらに処置しなかった。
【0070】
グループ2のマウスに、試験の1、4、7、および10日目に、60mg/kgのGEMを腹腔内注射した(すなわち、Q3D×4)。試験の13日目に開始して、マウスに、GEMORAL組成物中の10mg/kgのGEM(本明細書以下、「10mg/kgのGEMORAL」)を、試験の終わりまで1日おきに経口投与した(すなわち、Q2D×32)。
【0071】
グループ3のマウスに、試験の1、4、7、および10日目に、60mg/kgのGEMを腹腔内注射した(すなわち、Q3D×4)。また、試験の1日目に開始して、マウスに、10mg/kgのGEMORALを、試験の終わりまで1日おきに経口投与した(すなわち、Q2D×38)。
【0072】
グループ4のマウスに、10mg/kgのGEMORALを1日おきに経口投与し(すなわち、Q2D×38)、試験の1日目に開始し、試験の終わりまで延長した。
【0073】
グループ5のマウスは対照であり、GEMを投与しなかった。それらに、試験の1、4、7および10日目に生理食塩水を腹腔内注射した(すなわち、Q3D×4)。試験の13日目から始めて、マウスに、蒸留脱イオン水を、試験の終わりまで1日おきに経口投与した(すなわち、Q2D×32)。
【0074】
この試験を76日目まで継続し、種々のグループのマウスの体重減少を観察した。グループ1および2の各々について、8匹のマウスのうち4匹が76日目までに死亡した(「死亡した」は、死亡したマウスおよび腫瘍サイズ>1000立方ミリメートルを示すマウスの両方を含む)。この試験に使用したマウスの生存率を図2に示す。グループ3では、10日目までに8匹のマウスのうち6匹が死亡した。グループ4では、全てのマウスが76日目まで生存したことから明らかなように処置は十分に許容された(対照グループ5では、対照的に、全てのマウスが約62日目までに死亡した)。
【0075】
図1に示すように、グループ1、2、3および4の各々からのマウスは、グループ5の対照マウスと比較して、有意な腫瘍退縮(すなわち、抗腫瘍反応)を示した。
【0076】
腫瘍体積に対する種々の処置の効果を図1に示す。ビヒクルグループ(グループ5)と比較して、グループ1、2、3および4のマウスは有意な抗腫瘍反応を示した。異なる試験日における、ビヒクル処置と比較した抗腫瘍反応を反映する値を表1に示す(T/C%、処置グループにおける平均腫瘍体積対対照群{グループ5}における平均腫瘍体積の比率として計算した、パーセンテージとして表す)。グループ1のマウス(すなわち、GEMのMTD、60mg/kgのQ3D×4;累積用量=240mg/kg)は、14日目に有意な抗腫瘍反応(T/C=52%)を示した。グループ2および4のマウスは14日目に同様の反応(58%および57%のT/C値)を示した;14日目までに、グループ4についてのGEMの累積用量がグループ1の約25%に過ぎなかったことは注目に値する。
【0077】
グループ1における動物は、グループ1における予定された投与の完了後(すなわち、11日後)に顕著な腫瘍増殖を示した。対照的に、グループ2および4の動物は、0日目の元の腫瘍体積よりも42日目から76日目までに小さな腫瘍体積を示した。単剤としてのGEMORALまたはGEM-MTD処置後に、ビヒクル処置と比較して有意な抗腫瘍反応が生じた(グループ2および4の各々についてT/C=3%、76日目にp<0.05)。さらに、グループ2および4における腫瘍体積は、42日目から76日目までのMTDスケジュール(グループ1)よりも有意に大きい腫瘍増殖阻害を示した(p<0.05)。
【0078】
【表2】
【0079】
GEM注射に加えてGEMORALを与えられた腫瘍異種移植マウス(グループ2および3)、またはGEMORALのみを与えられた腫瘍異種移植マウス(グループ4)は、GEMのみを注射されたマウス(グループ1)よりも大きな腫瘍退縮を示した。試験の最初の10日間にゲムシタビンの経口投与と注射の両方を受けたマウスは、注射した薬物のみを受けたマウスよりも高い死亡率を示した(潜在的な薬物毒性効果)。ゲムシタビンの経口投与のみを受けたマウスは、試験の最後まで、薬物の注射のみまたは経口投与および注射の両方を受けたマウスよりも低い死亡率を示した。
【0080】
これらの結果は、経口メトロノミックゲムシタビンが、少なくとも胆管がんの退縮を誘導するために、ゲムシタビン注射と一緒に、またはゲムシタビン注射なしで効果的に使用され得ることを示す。
【0081】
実施例3
ヒト胆管がんの第2の異種移植マウスモデルにおける高用量のGEM注射および/またはGEMORAL投与のin vivo有効性
実施例3は、ヒト胆管がん細胞株HuCCT1の細胞が異種移植されたマウスに対するGEMの効果の試験である。次いで異種移植マウスを5つの処置レジメンのうちの1つで処置し、結果を90日の試験期間にわたって観察した。
【0082】
この試験に使用する異種移植マウスを準備するために、1×10のHuCCT1ヒト胆管がん細胞を、6週齢の雄BALB/cヌードマウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍増殖を週に1回観察し、腫瘍体積をカリパスによりL×W/2として測定した。次いで異種移植マウスにおける腫瘍発生を観察し、40匹のそのようなマウスを、それらの腫瘍体積が約124立方ミリメートルに達したときに、この試験に含めるために選択した。マウスを、試験のために各々8匹のマウスの5つのグループに分けた。マウスが最初に投薬された日を試験の「0日目」と指定し、試験を90日間継続した。
【0083】
グループ1のマウスに、試験の0、3、6、および9日目に60mg/kgのGEMを腹腔内注射し(すなわち、Q3D×4)、その後さらに処置しなかった。
【0084】
グループ2のマウスに、試験の0、3、6、および9日目に、60mg/kgのGEMを腹腔内注射した(すなわち、Q3D×4)。試験の13日目に開始して、マウスに、GEMORAL組成物中の10mg/kgのGEM(本明細書以下において「10mg/kgのGEMORAL」)を、試験の終わりまで1日おきに経口投与した(すなわち、Q2D×40)。
【0085】
グループ3のマウスに、試験の0、3、6、および9日目に、60mg/kgのGEMを腹腔内注射した(すなわち、Q3D×4)。また、試験の1日目に開始して、マウスに、10mg/kgのGEMORALを、試験の終わりまで1日おきに経口投与した(すなわち、Q2D×46)。
【0086】
グループ4のマウスに、10mg/kgのGEMORALを1日おきに経口投与し(すなわち、Q2D×46)、試験の1日目に開始し、試験の終わりまで延長した。
【0087】
グループ5のマウスは対照であり、GEMを投与しなかった。それらに、試験の0、3、6および9日目に生理食塩水を腹腔内注射した(すなわち、Q3D×4)。試験の13日目から始めて、マウスに、蒸留脱イオン水を、試験の終わりまで1日おきに経口投与した(すなわち、Q2D×40)。
【0088】
この試験を90日目まで継続し、種々のグループのマウスの体重減少を観察した。グループ3では、全てのマウスが12日目までに20%を超える体重が減少した。処置は他の全ての処置グループ(すなわち、図4に示す生存率によって示されるグループ1、2および4)において許容された。Kaplan-Maier分析を使用して生存率を計算すると、90日目の生存率はグループ1で50%(4/8匹のマウス)、グループ2で87.5%(7/8匹のマウス)、グループ3で0%(0/8匹のマウス)、グループ4で87.5%(7/8匹のマウス)、グループ5で37.5%(3/8匹のマウス)であった。グループ1、2、3、4および5におけるマウスについての平均生存時間(MST)は、それぞれ、69、>90、8、>90および79日であった。グループ2および4におけるマウスについてのMSTは、ビヒクル処置(グループ5)と比較して、わずかに有意に延長した。MSTは、グループ1、3および5におけるマウスの間で有意に異ならなかった。
【0089】
図3に示すように、グループ1、2、3および4の各々からのマウスはグループ5の対照マウスと比較して、有意な腫瘍退縮(すなわち、抗腫瘍反応)を示した。異なる試験日におけるビヒクル処置と比較した抗腫瘍反応を反映する値を表2に示す(T/C%)。グループ1、2および4のマウスは、それぞれ、6日目から30日目まで、6日目から90日目まで、および12日目から76日目までに有意な抗腫瘍反応を示し、最大腫瘍増殖阻害値は、グループ1については27日目で47%、グループ2については37日目で27%、およびグループ4については37日目で36%であった。12日目までに、グループ4についてのGEMの累積用量はグループ1の約25%に過ぎなかったことは注目に値する。
【0090】
【表3】
【0091】
本試験において、本発明者らは、GEMをほぼMTDで腹腔内注射すると、GEMのメトロノミック経口投与を注射と一緒にまたは注射後、投与するか、しないかに関わらず、in vivoで胆管がん腫瘍増殖を有意に阻害できること;経口メトロノミックGEMはまた、GEMの注射なしでin vivoで胆管がん腫瘍増殖を有意に阻害できることを見出した。しかしながら、GEM注射は、30日後にグループ1のマウスで観察された腫瘍増殖において示されるように、GEM注射を停止した後も有意な抗腫瘍活性を示し続けなかった。腫瘍再発は、少なくとも時々、臨床化学療法後に起こることが知られており、これらのデータはその経験を反映しているようである。本発明者らは、非経口GEM療法と併用した経口メトロノミックGEMが、より長期間にわたって腫瘍増殖を抑制できるかどうかを評価した。結果は、非経口GEM療法と併用した経口メトロノミックGEMが、少なくとも34日目から58日目まで注射GEM単剤療法と比較して、有意に腫瘍増殖阻害を延長したことを示す。さらに、経口メトロノミックGEM単剤療法(すなわち、グループ4)または非経口GEM療法後(すなわち、グループ2)の場合、それぞれ、少なくとも76日目および90日目まで、ビヒクル処置と比較して有意な抗腫瘍活性を生じた。さらに、単剤療法として、または非経口GEM療法後の経口メトロノミックGEM単剤療法は、ビヒクル処置と比較して生存期間を有意に延長した。
【0092】
まとめると、この実施例に示された結果は、単剤療法として、または非経口GEM療法後の経口メトロノミックGEM単剤療法が、HuCCT1胆管がん腫瘍増殖を阻害し、in vivoでの生存期間を延長したことを示し、これらの療法が、少なくとも胆管がんおよびGEMに感受性のある他の腫瘍を治療するための新たな手法を提供し得ることを示唆する。
【0093】
実施例4
ヒト膵臓がんの異種移植マウスモデルにおける高用量GEM注射および/またはGEMORAL投与のin vivo有効性
実施例4は、ヒト膵臓がん細胞株CFPAC-1の細胞が異種移植されたマウスに対するGEMの効果の試験である。次いで異種移植マウスを6つの処置レジメンのうちの1つで処置し、結果を91日間の試験期間にわたって観察した。
【0094】
この試験に使用する異種移植マウスを準備するために、1×10のヒトCFPAC-1膵臓がん細胞を、6週齢の雄BALB/cヌードマウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍増殖を週に1回観察し、腫瘍体積をカリパスによりL×W/2として測定した。次いで異種移植マウスにおける腫瘍発生を観察し、48匹のそのようなマウスを、それらの腫瘍体積が約141立方ミリメートルに達したときに、この試験に含めるために選択した。マウスを、試験のために各々8匹のマウスの6つのグループに分けた。マウスが最初に投薬された日を試験の「0日目」と指定し、試験を91日間継続した。
【0095】
グループ1のマウスに、0日目およびその後66日目まで3日毎に(すなわち、Q3D×23)、120mg/kgのGEMを腹腔内注射し、その後さらに処置しなかった。
【0096】
グループ2のマウスに、試験の0、3、6、および9日目に(すなわち、Q3D×4)、120mg/kgのGEMを腹腔内注射した。試験の12日目に開始して、マウスに、GEMORAL組成物中の10mg/kgのGEM(本明細書以下において「10mg/kgのGEMORAL」)を、66日目まで1日おきに(すなわち、Q2D×28)経口投与し、その後、マウスをさらに処置しなかった。
【0097】
グループ3のマウスに、試験の0、3、6、および9日目に(すなわち、Q3D×4)、120mg/kgのGEMを腹腔内注射した。試験の12日目に開始して、マウスに、GEMORAL組成物中の3mg/kgのGEM(本明細書以下において「3mg/kgのGEMORAL」)を、66日目まで毎日(すなわち、QD×55)経口投与し、その後、マウスをさらに処置しなかった。
【0098】
グループ4のマウスに、試験の0日目に開始し、試験の終わりまで延長して、3mg/kgのGEMORALを毎日(すなわち、QD×92)経口投与した。
【0099】
グループ5のマウスに、10mg/kgのGEMORALを1日おきに(すなわち、Q2D×46)経口投与し、試験の0日目に開始し、試験の終わりまで延長した。
【0100】
グループ6のマウスは対照であり、GEMを投与しなかった。それらに、試験の0、3、6および9日目(すなわち、Q3D×4)に生理食塩水を腹腔内注射した。試験の13日目から始めて、マウスに、試験の終わりまで1日おきに(すなわち、Q2D×28)、蒸留脱イオン水を経口投与した。
【0101】
試験を91日目まで継続した。試験に使用したマウスの生存率を図6に示す。生存率は、Kaplan-Maier分析を使用して評価した(「死亡」は、死亡したマウスおよび腫瘍の大きさ>2500立方ミリメートルを示すマウスの両方を含んだ)。グループ1、2、3、4、5、および6におけるマウスについてのMSTは、それぞれ、>91、>91、>91、53.5、>91、および60日であった。グループ1、2、3および5におけるマウスについてのMSTは、ビヒクル処置(グループ6)と比較してわずかに有意に延長した。MSTは、グループ4におけるマウスとビヒクル群(グループ6)におけるマウスとの間で有意差はなかった。
【0102】
各群におけるマウスについての腫瘍増殖を図5に示す。グループ1、2、3、4および5の各々におけるマウスは、ビヒクル処置(グループ6)と比較して14日目から91日目までに有意な抗腫瘍反応を示した。最大抗腫瘍反応は、グループ1のマウスについて81日目(T/C0%)、グループ2のマウスについて39日目(T/C0.8%)、グループ3のマウスについて67日目(T/C0%)、グループ4のマウスについて74日目(T/C0.1%)、およびグループ5のマウスについて77日目(T/C3%)に観察された。さらに、ビヒクル処置群(グループ6)のマウスにおける腫瘍体積と比較して、各々の処置群におけるマウスは処置の1~2週間後に腫瘍退縮を示した。いくつかの処置群における少なくとも数匹のマウスは、グループ1のマウスについては44~91日目(6/8匹のマウスは91日目に腫瘍がない)、グループ2のマウスについては32~91日目(6/8匹のマウスは91日目に腫瘍がない)、グループ3のマウスについては28~91日目(5/8匹のマウスは91日目に腫瘍がない)、およびグループ4のマウスについては39~91日目(2/8匹のマウスは91日目に腫瘍がない)に腫瘍がなかった。
【0103】
一部のマウスは部分反応率を示し、これは腫瘍体積(親腫瘍体積と比較して)の少なくとも30%の減少が観察されたことを意味する。このようなマウスの割合は、グループ3で13%(1/8匹のマウス)、グループ4で25%(2/8匹のマウス)、およびグループ5で38%(3/8匹のマウス)であった。
【0104】
この試験において、本発明者らは、GEMの経口メトロノミック投与、ほぼMTDのGEMの腹腔内注射、およびこれらの療法の組み合わせが、マウスに異種移植されたヒト膵臓がん細胞株に対してin vivo有効性を示すことを見出した。これらのデータは、これらの処置がヒトにおける膵臓がんを処置するために使用され得ることを示す。
【0105】
実施例5
ヒト膵臓がんの異種移植マウスモデルにおける5-フルオロウラシル注射、その後のGEMORAL投与のin vivo有効性
5-フルオロウラシル(5FU)注射を使用した膵臓がん単剤療法が知られている。しかしながら、一部の膵臓腫瘍は5FU療法に反応しない(または強く反応しない)。本発明者らは、異種移植モデルを使用して5FU非反応性膵臓腫瘍における第二選択処置としての経口メトロノミックGEM投与を調べた。
【0106】
この試験に使用する異種移植マウスを準備するために、1×10のヒトCFPAC-1膵臓がん細胞を、6週齢の雄BALB/cヌードマウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍増殖を週に1回観察し、カリパスによって腫瘍体積をL×W/2として測定し、マウスを、それらの腫瘍体積が約131立方ミリメートルに達したときにこの試験に含めるために選択した。マウスを、試験のために各々6~8匹のマウスの4つのグループに分けた。マウスが最初に投薬された日を試験の「0日目」と指定し、試験を112日間継続した。
【0107】
グループ1のマウスに、10mg/kgのGEMORALを1日おきに(すなわち、Q2D×56)経口投与し、試験の0日目に開始し、試験の終わりまで延長した。
【0108】
グループ2のマウスに、0日目に開始し、試験の最初の9週間継続して、20mg/kgの5FUを週3回腹腔内注射した。試験の63日目に開始して、マウスに、10mg/kgのGEMORALを、試験の終わりまで1日おきに(すなわち、Q2D×25)経口投与した。
【0109】
グループ3のマウスに、0日目に開始し、試験の最初の3週間継続して、20mg/kgの5FUを週3回腹腔内注射した。試験の21日目に開始して、マウスに、10mg/kgのGEMORALを、試験の終わりまで1日おきに(すなわち、Q2D×46)経口投与した。
【0110】
グループ4のマウスは対照であり、5FUまたはGEMを投与しなかった。それらに、試験の0、3、6および9日目(すなわち、Q3D×4)に生理食塩水を腹腔内注射した。試験の13日目から開始して、マウスに、蒸留脱イオン水を、試験の終わりまで1日おきに(すなわち、Q2D×51)経口投与した。
【0111】
試験を112日目まで継続した。この試験に使用したマウスの生存率を図8に示し、Kaplan-Maier分析を使用して評価した(「死亡」は、死亡したマウスおよび腫瘍サイズ>2500立方ミリメートルを示すマウスの両方を含む)。グループ1、2、3および4におけるマウスについてのMSTは、それぞれ、>112、>112、>112および60日であった。グループ1、2、および3におけるマウスについてのMSTは、ビヒクル処置(グループ4)と比較してわずかに有意に延長した。
【0112】
各群におけるマウスについての腫瘍増殖を図7に示す。グループ1、2および3の各々におけるマウスは、ビヒクル処置(グループ4)と比較して、グループ1について11~112日目、グループ2について74~112日目、およびグループ3について32~112日目に有意な抗腫瘍反応を示した。最大抗腫瘍反応は、グループ1のマウスについて77日目(T/C3%)、グループ2のマウスについて105日目(T/C39%)、グループ3のマウスについて112日目(T/C8%)に観察された。
【0113】
5FU処置に起因する有意な抗腫瘍反応はグループ2および3のマウスにおいて観察されなかった。しかしながら、経口メトロノミックGEMに起因する抗腫瘍反応は、GEMORAL投与の開始直後に観察可能であった(抗腫瘍反応はビヒクル処置マウスとは有意に異なり、グループ2について少なくとも74日目までに開始し、グループ3について32日目までに開始する)。
【0114】
グループ3の1匹のマウスは112日目までに腫瘍がなかった。
【0115】
これらの結果は、経口メトロノミックGEM投与が、5FU処置膵臓がんのための、または5FU処置に反応しないこのようながんの主要な処置のための第二選択処置として使用され得ることを示す。
【0116】
実施例6
ヒト患者におけるメトロノミック用量選択のためのGEMORALについてのMTDの決定
用量漸増試験を、GEMORAL製剤で経口投与されるGEMについてのMTDを決定する目的で、各々3~6人のヒト患者(平均体重約60kg)の連続コホートにおいて実施した。試験した用量範囲にわたって、GEMORALについてはDLTは観察されなかった。これらの実験は、GEMORAL製剤で経口投与したGEMについてのMTDが、試験した投薬スケジュールにおける80mg用量(1.33mg/kgに相当)より大きいことを実証する。
【0117】
これらの試験の第1段階において、GEMORALを、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80mgのGEMの用量(GEM遊離塩基ベースで表す)(0.033mg/kg、0.083mg/kg、0.17mg/kg、0.33mg/kg、0.50mg/kg、0.67mg/kg、0.83mg/kg、1.00mg/kg、1.17mg/kg、1.33mg/kgに相当する)のうちの1つで個々のヒト患者に経口投与した。選択した用量を、21日間の試験サイクルの1、3、5、8、10および12日目(すなわち、合計6用量)に各患者に経口投与した。各コホートにおいて、投薬レジメンは耐容性が良好であった。いずれの用量コホートについてのいずれの患者においてもDLTは生じなかった。したがって、MTDは同定されなかったが、80mgがこの投薬レジメンのための安全な用量であると決定された。
【0118】
進行性胆道がんに対する主要な化学療法または併用化学放射線療法後のGEMORALの非盲検、多施設共同試験を評価する。この試験は以下の2部で実施する:用量漸増相(パート1)および用量増量相(パート2)。
【0119】
パート1およびパート2の両方において、適格な患者を、21日サイクルの1、3、5、8、10、12、15、17および19日目(1サイクルあたり9用量)に軟質ゲル剤形でGEMORALを経口投与するように割り当てる。サイクル間に空白はなく、すなわち、次のサイクルは前のサイクルの21日後の翌日(すなわち、2回目のサイクルについては全体として22日目)に直ちに開始するが、ただし、連続する2日間の投与は許可されず、投与間に少なくとも1日が存在する。
【0120】
パート1:用量漸増相(第1b相)
試験のパート1は、所定の用量レベルで3+3用量漸増スキームに従う。コホート当たり40mg(0.67mg/kg)、80mg(1.33mg/kg)および120mg(2.00mg/kg)の用量を増加させた、各々3~6人の患者の連続したコホートが存在する。患者内の用量の増加はない。サイクル1(21日)は、用量制限毒性(DLT)評価期間として定義される。120mg(2.00mg/kg)への用量漸増後にMTDが同定されなかった場合、100mg(1.67mg/kg)の中間用量レベルも評価できる。中間用量レベルが評価される場合、6人までのさらなる患者がその用量レベルで登録される。
【0121】
パート2:用量増量相(第2相)
コホートの6人の患者のうちの2人未満がDLTを経験する、試験したGEMORAL軟質ゲル剤形の最高用量レベルは試験のパート2で拡大する。さらに、パート1で選択された最高用量レベルは治療中の累積毒性につながる可能性があるため、パート1で評価された最高用量レベルより次に低い用量レベル(6人の患者のうち少なくとも2人がDLTを経験した)もパート2での評価のために拡大する。MTDが試験のパート1で同定されなかった場合、パート2で使用した2つの用量レベルは、120mg(2.00mg/kg)および80mg(1.33mg/kg)、または中間用量の100mg(1.67mg/kg)をパート1で評価した場合、120mg(2.00mg/kg)および100mg(1.67mg/kg)とする。
【0122】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
この主題は具体的な実施形態を参照して開示されているが、他の実施形態および変形が、本明細書に記載される主題の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲には、そのような実施形態および均等な変形は全て含まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある種の対象におけるゲムシタビン感受性腫瘍を治療するため、またはゲムシタビン感受性腫瘍の退縮を誘導するための医薬の製造のためのゲムシタビン(GEM)の使用であって、GEMが、経口摂取時に、前記種についてのGEMの最大耐量(MTD)の半分未満を生物学的に利用可能な形態で放出する製剤中で前記対象に経口投与され、
前記製剤が、自己乳化医薬(SEP)組成物であり、
前記組成物が、
(a)親水性溶媒中に溶解したGEM若しくはGEMの薬学的に許容される塩と、
(b)8~17の親水性-親油性バランス(HLB)値を示し、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤系と、
(c)GEM溶媒溶液及び前記界面活性剤系と適合する親水性担体と、
を含む、ゲムシタビン(GEM)の使用。
【請求項2】
前記溶媒が、水、エタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、イソプロパノール(IPA)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、グリセロール、酢酸、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
前記界面活性剤系が、ポリソルベート、ポロキサマー、オレオイルポリオキシルグリセリド、リノレオイルポリオキシルグリセリド、カプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、中鎖トリグリセリド(MCT)、オレイン酸ポリグリセリル、ラウロイルポリオキシルグリセリド、ステアロイルポリオキシルグリセリド、プロピレングリコールジカプリロカプレート、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールカプリレート、プロピレングリコールモノカプリレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含み、
前記親水性担体が、ポリソルベート、エタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
前記製剤の総重量を基準として、前記溶媒は、2.5%~60%(w/w)の範囲の量で存在し、前記界面活性剤系は20%~75%(w/w)の量で存在し、前記親水性担体は、2%~60%(w/w)の量で存在する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記製剤が、下記(i)~(iii)よりなる群から選択される製剤である、請求項1又は2に記載の使用。
(i)GEM若しくはGEMの薬学的に許容される塩を2.00%(w/w)の量で含有し、水を20.00%(w/w)の量で含有し、グリセロール及びPEGを32.30%(w/w)の量で含有し、ポリソルベート及びオレオイルポリオキシルグリセリドを45.70%(w/w)の量で含有し、前記%(w/w)の値は、製剤の総重量を基準とする値である、製剤
(ii)GEM若しくはGEMの薬学的に許容される塩を2.00%(w/w)の量で含有し、水を20.00%(w/w)の量で含有し、プロピレングリコール及びPEGを32.30%(w/w)の量で含有し、ポリソルベート及びオレオイルポリオキシルグリセリドを45.70%(w/w)の量で含有し、前記%(w/w)の値は、製剤の総重量を基準とする値である、製剤
(iii)GEM若しくはGEMの薬学的に許容される塩を1.98%(w/w)の量で含有し、水を19.8%(w/w)の量で含有し、グリセロール及びPEGを31.98%(w/w)の量で含有し、ポリソルベート及びオレオイルポリオキシルグリセリドを45.25%(w/w)の量で含有し、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(TPGS)を0.99%(w/w)の量で含有し前記%(w/w)の値は、製剤の総重量を基準とする値である、製剤
【請求項4】
前記製剤は、数週間、数か月間、又は数年間、前記対象に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記剤形の連続投与の間の間隔は3日以内、又は、前記剤形の連続投与の間の間隔は2日以内である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記製剤は、投与後、GEMのMTDの1/3~1/40を放出する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記GEMがカプセルで投与されるための、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記GEMが軟質カプセルで投与されるための、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記製剤が、GEM若しくはGEMの薬学的に許容される塩、水、グリセロール、PEG、ポリソルベート及びオレオイルポリオキシルグリセリドを含むか、又は、
前記製剤が、GEM若しくはGEMの薬学的に許容される塩、水、プロピレングリコール、PEG、ポリソルベート及びオレオイルポリオキシルグリセリドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記対象がヒトである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記腫瘍が、乳房、膀胱、膵臓、胆管、及び非小細胞肺の腫瘍からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
GEM若しくはGEMの薬学的に許容される塩の用量は、前記対象の単位体重kg当たり、2.00mg/kg以下、1.67mg/kg以下及び1.33mg/kg以下よりなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬が、腫瘍増殖阻害の延長、及び、生存期間の延長を提供かつ腫瘍再発を防ぐ、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【外国語明細書】