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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088641
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】細菌株を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20220607BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20220607BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20220607BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20220607BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220607BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 39/085 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 39/104 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 39/108 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 39/112 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220607BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220607BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220607BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220607BHJP
【FI】
A61K35/741
A61K31/19
A61K31/192
A61K31/20
A61K31/201
A61K31/202
A61K31/203
A61K35/742
A61K35/744
A61K35/745
A61K35/747
A61K39/02
A61K39/08
A61K39/085
A61K39/104
A61K39/108
A61K39/112
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N1/20 A
C12N1/20 E
C12N15/11 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063189
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2019568002の分割
【原出願日】2018-06-14
(31)【優先権主張番号】1805991.5
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1805990.7
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1805989.9
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1806779.3
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1806780.1
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1709468.1
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1709534.0
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1712851.3
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1803826.5
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514079985
【氏名又は名称】フォーディー ファーマ リサーチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】4D PHARMA RESEARCH LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】ムルダー イムケ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】エトール アンナ
(72)【発明者】
【氏名】アーメッド スアード
(72)【発明者】
【氏名】フォティアドウ パルセナ
(72)【発明者】
【氏名】ユイール サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】ウルシア ジョセフ ロビー イリンガン
(72)【発明者】
【氏名】サヴィニャック ヘレン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】神経変性障害を治療及び予防するための、共生細菌株及び有機酸を含む組成物ならびに疾患の治療におけるその使用を提供する。
【解決手段】(i)共生細菌株、及び(ii)以下の式:Rn-COOHを有する1又は2以上の有機酸;又はその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む、組成物による。(式中、Rnはアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基等を含む)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の消化管から単離された細菌株を含む組成物、及び疾患の治療におけるそのような組成物の使用の分野にある。
【背景技術】
【0002】
ヒト腸管は、子宮内で無菌と考えられているが、出生後直ぐに非常に多様な母体及び環境微生物に曝される。その後、微生物の定着及び連鎖の動的期間があるが、この定着及び連鎖は、分娩様式、環境、食事、及び宿主の遺伝子型などの因子により影響を受け、それらの因子は全て、特に幼少期において、腸内微生物叢の組成に影響を与える。その後、微生物叢は安定し、成体様になる[1]。ヒト腸内微生物叢は、500~1000を超える様々な系統型を含んでおり、この系統型は本質的に2つの主要な細菌分類、Bacteroidetes門及びFirmicutes門に属する[2]。細菌のヒト腸への定着から生じる共生関係が成功することにより、多種多様な代謝的、構造的、保護的、及び他の有益な機能がもたらされる。定着された腸の増強された代謝活性により、本来なら難消化性の食事成分が、副産物の放出と共に確実に分解され、重要な栄養源が宿主に与えられる。同様に、腸内微生物叢が免疫学的に重要であることも十分に認識されており、例えば、共生細菌株の導入後に機能的に再構成される免疫系に障害がある無菌動物において示されている[3~5]。
【0003】
微生物叢組成物の劇的な変化が、炎症性腸疾患(IBD)などの胃腸障害において記録されてきた。例えば、ClostridiumクラスターXIVa細菌のレベルは、IBD患者において低減しているが、E.coliの数は増加しており、腸内の共生生物と病原性共生生物とのバランスがシフトしていることが示唆される[6~9]。
【0004】
ある特定の細菌株が動物の腸に与え得る潜在的な肯定的効果の認識において、様々な株が、様々な疾患の治療での使用のために提案されている(例えば、[10~13]を参照されたい)。さらに、ある特定の株、例えば、ほとんどのLactobacillus及びBifidobacterium株は、腸管と直接関連しない様々な炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療に使用することが提案されている([14]及び[15]の総説を参照されたい)。しかしながら、異なる疾患と異なる細菌株との間の関係、特定の細菌株が腸及び全身レベル並びに何らかの特定の種類の疾患へ与える正確な効果は、特に、神経変性障害において、十分に特徴付けられていない。
【0005】
近年、ヒト脳の疾患において病態生理学的な役割を果たし得る腸内微生物叢の変更に関する関心が、当該技術分野において増加している[16]。前臨床及び臨床エビデンスは、脳の発達と微生物叢との間の関連を強く示唆している[17]。複数の神経分泌及び内分泌シグナル伝達系を伴う、脳と腸内微生物叢との間の双方向通信を実証する前臨床文献が相次いでいる。実際、微生物叢におけるClostridium種のレベルの増加は、脳障害に関連しており[18]、Bacteroidetes門とFirmicutes門の不均衡は、脳の発達障害にも関与していた[19]。Bifidobacterium、Lactobacillus、Sutterella、Prevotella及びRuminococcus属のもの、及びAlcaligenaceaeファミリーのものを含む、腸内共生生物のレベルの変化が、免疫介在性中枢神経系(CNS)障害に関与するという提案は、患者と健康な対象との間の微生物の変更の欠如を示唆する研究によって疑問視されている[19]。さらに、プロバイオティックの投与が、神経障害の治療において有益であり得ると提案されている。しかしながら、これらの研究は、プロバイオティック組成物自体が、神経変性の治療に対して治療効果を達成できるとの結論には至らず、
いずれかの特定の細菌にいずれかの有用な効果を示さなかった[20、21]。これは、微生物叢とヒト脳疾患との関連の実用的な効果が、現在のところ、十分に特徴付けられていないことを示唆する。したがって、神経変性障害に対する微生物叢の変更の治療的効果を同定するためのより直接的な分析的研究が必要とされている。
【0006】
神経変性障害を治療する新しい方法が、当該技術分野において必要とされている。さらに、腸内細菌を使用した新しい治療を開発できるような腸内細菌の潜在的効果を特徴付けることが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、神経変性障害を治療して予防する新しい治療法を開発した。特に、本発明者らは、ある特定の有機酸を産生する共生細菌株が、神経保護活動を有し、かつ、神経変性疾患の治療に有効であり得ることを確認した。これに関連して、本発明者らはまた、共生細菌株を含む組成物に有機酸を添加すること、または共生細菌株と組み合わせて有機酸を使用することが、特に、神経変性障害の治療において、治療効果の増強をもたらし得ることを確認した。
【0008】
本発明者らは、式:R-COOHを有する1または2以上の有機酸を産生する共生細菌株(式中、Rは、4~11個の範囲で炭素を含むアルキル基を含み、またはRは、置換基のヒドロキシル基を有するフェニル基を含み、任意に、ヒドロキシル基は、4位である)が、神経変性疾患の治療に有効であり得ることを確認した。本発明の別の態様では、本発明者らは、共生細菌株及び有機酸の組み合わせが、神経変性疾患の治療または予防に有効であり得ることを見出した。本明細書で使用する場合、用語「本発明の組み合わせ」、「本発明の治療上の組み合わせ」、及び「治療上の組み合わせ」は、交換可能に使用され得、(a)共生細菌株を含む組成物;及び(b)有機酸を含む組成物、の治療上の組み合わせを指す。用語「組み合わせ」は、治療上の組み合わせの文脈において、組み合わせの成分(a)及び(b)が必ずしも同じ組成物中に存在しないこと及び/または必ずしも同時に投与されないことを理解されたい。
【0009】
実施例に記載されるように、Megasphaera massiliensisを含む組成物の投与は、活性酸素種に対して防御し、炎症を予防することで、神経保護物質として作用することができる。本発明者らは、Megasphaera massiliensisが、ある特定の有機酸、例えば、ヘキサン酸、吉草酸、及び4-ヒドロキシフェニル酢酸を産生することを確認した。また、本発明者らは、Megasphaera massiliensisによる治療が、LPS及び変異体α-シヌクレインによって、炎症性分子、例えば、NFκB及びIL-6の活性化を低下させることができることを確認した。また、本発明者らは、Megasphaera massiliensisが、炎症性サイトカインIL-8の活性化を増加することができ、ニューロンの髄鞘化の促進に役立つことができることを見出した。また、本発明者らは、Megasphaera massiliensis及びレチノイン酸の組み合わせによる治療が、脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌を増加することができ、神経発生及び神経突起形成の促進及び/または細胞死の予防に役立つことができることを確認した。本発明者らは、Megasphaera massiliensisによる治療が、酸化ストレスを軽減し、ヒストン脱アセチル化活性及び脂質過酸化をインビトロで減少することができ、細胞死及びアポトーシスの減少に役立つことができることを確認した。特に、本発明者らは、吉草酸を産生することができるMegasphaera massiliensisによる治療が、ヒストン脱アセチル化を減少することができ、細胞死及びアポトーシスの減少に役立つことができることを確認した。また、本発明者らは、Megasphaera massiliensisが、インドールを産生することができ、炎症及び酸化ストレスを軽減することができることを確認した。また、本発明者らは、Megasphaera massil
iensisによる治療が、キヌレニンレベルを増加させることができることを実証した。さらに、また、本発明者らは、Megasphaera massiliensisが、ヘキサン酸を産生することができ、例えば、神経突起伸長を促進することによって、神経保護または神経修復することができることを見出した。本発明者らは、ヘキサン酸を産生することができるMegasphaera massiliensisが、MAP2(微小管関連タンパク質2)の発現を増加させ、神経突起形成における微小管形成に不可欠であると考えられることを見出した。従って、本発明者らは、ヘキサン酸を産生することができるMegasphaera massiliensisを使用して、神経突起伸長を促進することができることを見出した。従って、Megasphaera massiliensis、及び、ヘキサン酸、吉草酸、及び4-ヒドロキシフェニル酢酸のような有機酸を産生する他の細菌は、神経変性障害の治療に有用であり得る。
【0010】
従って、第1の態様では、本発明は、神経変性障害の治療または予防方法に使用される共生細菌株を含む組成物を説明し、株は、以下の式:R-COOHを各々が有する1または2以上の有機酸を産生し、Rは、少なくとも4個の炭素を含むアルキル基を含み、またはRは、置換基のヒドロキシル基を有するフェニル基を含み、任意に、ヒドロキシル基は、4位である。
【0011】
第2の態様では、本発明は、共生細菌株、及び式:R-COOHを有する1または2以上の有機酸を含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを提供する。好ましい実施形態では、組成物は、有機酸:バルプロ酸、吉草酸、ヘキサン酸、レチノイン酸、及び4-ヒドロキシフェニル酢酸のうちの1つ以上、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む。実施例は、かかる組み合わせが治療効果を有することを示している。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における疾患の治療または予防方法に使用される共生細菌株を含む組成物を説明し、組成物は、1または2以上の有機酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルと組み合わせて投与される。実施例は、かかる組み合わせが特に有効であり得ることを示している。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における疾患の治療または予防方法に使用される、1または2以上の有機酸を含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを説明し、組成物は、共生細菌株と組み合わせて投与される。実施例は、かかる組み合わせが特に有効であり得ることを示している。
【0014】
本発明の両方の態様の好ましい実施形態は、以下及び出願全体を通して説明される。
【0015】
いくつかの実施形態では、共生細菌株は、短鎖脂肪酸を産生する。短鎖脂肪酸は、酪酸であるのが好ましい。酪酸は、血液脳関門の不透過性の低下に寄与し得、神経保護効果を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物は、疾患の治療または予防方法に使用される。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は、神経変性障害の治療または予防方法に使用される。
【0018】
特定の実施形態では、組成物は、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベンソン症候群;多発性硬化症;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症
;ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患;プリオン病;脊髄小脳変性症;脊髄性筋萎縮症;認知症、例えば、レビー小体、脳血管性及び前頭側頭型認知症;原発性進行性失語;軽度認知障害;HIV関連認知障害、進行性炎症性ニューロパチー、及び大脳皮質基底核変性症からなる群から選択される疾患または状態の治療または予防方法に使用される。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病、例えば、全身の炎症状態に関連する環境性、家族性またはパーキンソン病の治療または予防方法に使用される。本発明者らは、本発明の組成物による治療が、環境性及び家族性パーキンソンのインビトロモデルにおいて、LPS及び変異体α-シヌクレインによって炎症性分子、例えば、NFκB及びIL-6の活性化を低下させることができることを確認した。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、早期発症型の神経変性疾患の治療または予防方法に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の発症または進行の予防または遅延方法に使用される。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明は、パーキンソン病の治療に使用される、Megasphaera massiliensis種の細菌株、及びヘキサン酸、吉草酸、バルプロ酸、レチノイン酸または4-ヒドロキシフェニル酢酸からなる群から選択される有機酸を含む組み合わせを提供する。Megasphaera massiliensis及びヘキサン酸を用いる組み合わせは、神経変性疾患、特に、パーキンソン病の治療方法における使用に特に有効であり得る。本発明の好ましい組成物は、共生細菌株及びレチノイン酸を含む。本発明のさらに好ましい組成物は、共生細菌株及びヘキサン酸を含む。本発明のさらに好ましい組成物は、共生細菌株及び吉草酸を含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、共生細菌株は、Bacteroides、Enterococcus、Escherichia、Klebsiella、Bifidobacterium、Staphylococcus、Lactobacillus、Megasphaera、Clostridium、Proteus、Pseudomonas、Salmonella、Faecalibacterium、Peptostreptococcus、またはPeptococcus、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される属由来である。いくつかの実施形態では、共生細菌株は、Megasphaera属由来である。いくつかの好ましい実施形態では、株は、Megasphaera massiliensis種である。近縁株、例えば、Megasphaera massiliensisの細菌株の16S rRNA配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を使用してもよい。細菌株は、配列番号2に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有するのが好ましい。本発明において使用される細菌株は、配列番号2によって表される16S rRNA配列を有するのが好ましい。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明において使用される株は、以下の式:R-COOHを各々が有する1または2以上の有機酸を産生し、Rは、少なくとも4個の炭素を含むアルキル基を含み、またはRは、置換基のヒドロキシル基を有するフェニル基を含み、任意に、ヒドロキシル基は、4位であり、有機酸は、神経変性障害の治療または予防において有効である。いくつかの実施形態では、本発明において使用される株は、ヘキサン酸、吉草酸、バルプロ酸、レチノイン酸または4-ヒドロキシフェニル酢酸からなる群から選択される有機酸を産生する。本発明の株は、IL-8の活性化を増加させ、IL-6の活性化を低下させることができるのが好ましい。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物の共生細菌株は、本発明の有機酸を産生する
ように操作されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、経口投与用である。本発明の株、及び該当する場合、本発明の有機酸の経口投与は、神経変性障害に有効であり得る。また、経口投与は、患者及び医療専門家に対して便利であり、腸管に送達及び/または部分または全体的に定着することができる。
【0026】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、1または2以上の薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、凍結乾燥されている共生細菌株を含む。凍結乾燥は、細菌を送達することができる安定した組成物を調製するために有効かつ便利な技術である。
【0028】
ある特定の実施形態では、本発明は、上述のような組成物のいずれかを含む食品を提供する。
【0029】
ある特定の実施形態では、本発明は、上述のような組成物を含むワクチン組成物を提供する。
【0030】
加えて、本発明は、以下の式:R-COOHを各々が有する1または2以上の有機酸を産生する共生細菌株を含む組成物を投与することを含む、神経変性疾患の治療または予防方法を提供し、Rは、少なくとも4個の炭素を含むアルキル基を含み、またはRは、置換基のヒドロキシル基を有するフェニル基を含み、任意に、ヒドロキシル基は、4位である。
【0031】
また、本発明は、共生細菌株及び有機酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの組み合わせを投与することを含む、神経変性疾患の治療または予防方法を提供する。
【0032】
上記発明の開発において、本発明者らは、治療に特に有用な細菌株を同定し、特徴付けた。本発明のMegasphaera massiliensis株は、本明細書に記載されている疾患、例えば、神経変性疾患の治療に有効であることを示す。従って、別の態様では、本発明は、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株の細胞またはその派生物(derivative)を提供する。また、本発明は、かかる細胞、またはかかる細胞の生物学的に純粋な培養を含む組成物を提供する。また、本発明は、特に、本明細書に記載されている疾患の治療に使用される、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株の細胞またはその派生物を提供する。
【0033】
本発明のいずれかの態様のある特定の実施形態では、組成物は、脳損傷の治療に使用される。本発明の組成物の神経保護活性、及びヒストン脱アセチル化酵素活性(HDAC)のレベルを低下させる能力により、脳損傷の治療に有用にさせ得る。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の治療、例えば、脳卒中がもたらす脳損傷の治療に使用される。
すなわち本発明は以下に関する。
〔1〕(i)共生細菌株、及び (ii)以下の式:
-COOHを有する1または2以上の有機酸;またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル を含む、組成物。
〔2〕Rが、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基を含む、上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕Rが、直鎖、分枝鎖、環状、部分的に環状または芳香族の炭化水素である、上記〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕Rが、少なくとも5個の炭素原子を含む、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕Rが、5~20個の範囲で炭素を含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕Rが、Rであり、Rが、5個の炭素を含むアルキル基である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕Rが、Rであり、Rが、アルキルであり、かつ、5個の炭素原子からなる、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕1または2以上の有機酸が、ヘキサン酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕Rが、Rであり、Rが、フェニル基を含むアリール基を含む、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕フェニル基が、ヒドロキシル置換基を含み、任意に、前記ヒドロキシル基が、4位である、上記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕1または2以上の有機酸が、4-ヒドロキシフェニル酢酸を含む、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔12〕Rが、Rであり、Rが、分枝アルキル基を含む、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の組成物。
〔13〕Rが、Rであり、Rが、少なくとも5個の炭素原子を含み、任意に、Rが、5~9個の範囲で炭素原子を含む、上記〔12〕に記載の組成物。
〔14〕Rが、ブチル基を含む、上記〔12〕または〔13〕に記載の組成物。
〔15〕Rが、プロピル基をさらに含む、上記〔12〕~〔14〕のいずれかに記載の組成物。
〔16〕1または2以上の有機酸が、バルプロ酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む、上記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の組成物。
〔17〕Rが、Rであり、Rが、部分的に環状のアルケニル基を含む、上記〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の組成物。
〔18〕Rが、14~21個の範囲で炭素を含む、上記〔17〕に記載の組成物。
〔19〕Rが、1~8個の範囲で置換基のメチル基を含む、上記〔17〕または〔18〕に記載の組成物。
〔20〕Rが、1~8個の範囲で炭素-炭素の二重結合を含む、上記〔17〕~〔19〕のいずれかに記載の組成物。
〔21〕1または2以上の有機酸が、レチノイン酸もしくはその誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む、上記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の組成物。
〔22〕Rが、Rであり、Rが、4個の炭素原子を含むアルキル基である、上記〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の組成物。
〔23〕Rが、Rであり、Rが、4個の炭素原子からなるアルキル基である、上記〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の組成物。
〔24〕1または2以上の有機酸が、吉草酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む、上記〔1〕~〔23〕のいずれかに記載の組成物。
〔25〕組成物が、神経突起伸長の促進、神経修復の促進、神経保護の促進、ヒストン脱アセチル化の阻害、BDNF活性化の増加、インドール産生の増加、IL-6活性化の低下、及びIL-8活性化の増加からなる群から選択される1または2以上の生理機能を誘発する、上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の組成物。
〔26〕共生細菌株が、短鎖脂肪酸を産生する、上記〔1〕~〔25〕のいずれかに記載の組成物。
〔27〕短鎖脂肪酸が、酪酸である、上記〔26〕に記載の組成物。
〔28〕共生細菌株が、コハク酸を産生する、上記〔1〕~〔27〕のいずれかに記載の組成物。
〔29〕共生細菌株が、Bacteroides、Enterococcus、Escherichia、Klebsiella、Bifidobacterium、Staphylococcus、Lactobacillus、Megasphaera、Clostridium、Proteus、Pseudomonas、Salmonella、Faecalibacterium、Peptostreptococcus、及びPeptococcusからなる群から選択される属由来である、上記〔1〕~〔28〕のいずれかに記載の組成物。
〔30〕株が、Megasphaera属であるか、またはMegasphaera massiliensis種である、上記〔1〕~〔29〕のいずれかに記載の組成物。
〔31〕細菌株が、配列番号2に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%同一である16s rRNA配列を有する、上記〔1〕~〔30〕のいずれかに記載の組成物。
〔32〕共生細菌株が、受託番号NCIMB 42787としてNCIMBに寄託された株である、上記〔1〕~〔31〕のいずれかに記載の組成物。
〔33〕共生細菌株が、胃腸管に投与した場合に、IL-8の活性化を増強することができる、上記〔1〕~〔32〕のいずれかに記載の組成物。
〔34〕医薬に使用するための、上記〔1〕~〔33〕のいずれかに記載の組成物。
〔35〕対象における疾患の治療または予防方法に使用するための、共生細菌株を含む組成物であって、前記組成物が、有機酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルと組み合わせて投与される、前記組成物。
〔36〕対象における疾患の治療または予防方法に使用するための、1または2以上の有機酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む組成物であって、 前記組成物が、共生細菌株と組み合わせて投与される、前記組成物。
〔37〕神経変性疾患の治療または予防方法に使用するための、上記〔1〕~〔36〕のいずれかに記載の組成物。
〔38〕上記〔35〕~〔37〕のいずれかに記載の組成物であって、 上記〔35〕又は〔36〕に従属する場合に、有機酸が、以下の式:R-COOHを有し、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基を含み、4~20個の範囲で炭素原子を含む、前記組成物。
〔39〕対象における神経変性障害の治療または予防に使用するための、共生細菌株を含む組成物であって、 前記株は、以下の式:R-COOHを有する1または2以上の有機酸を産生し、 Rは、4~11個の炭素の範囲で含むアルキル基を含むか、または、置換基のヒドロキシル基を有するフェニル基を含み、任意に、前記ヒドロキシル基は、4位である、前記組成物。
〔40〕対象における脳損傷の治療に使用するための、共生細菌株を含む組成物であって、
前記株は、以下の式:R-COOHを有する1または2以上の有機酸を産生し、 Rは、4~11個の範囲で炭素を含むアルキル基を含むか、または、置換基のヒドロキシル基を有するフェニル基を含み、任意に、前記ヒドロキシル基は、4位である、前記組成物。
〔41〕株が、ヘキサン酸を産生する、上記〔39〕または〔40〕に記載の組成物。
〔42〕株が、4-ヒドロキシフェニル酢酸を産生する、上記〔39〕~〔41〕のいずれかに記載の組成物。
〔43〕株が、吉草酸を産生する、上記〔39〕~〔42〕のいずれかに記載の組成物。
〔44〕株が、ヘキサン酸、吉草酸、及び4-ヒドロキシフェニル酢酸を産生する、上記〔39〕~〔43〕のいずれかに記載の組成物。
〔45〕株が、短鎖脂肪酸も産生する、上記〔39〕~〔44〕のいずれかに記載の組成物。
〔46〕短鎖脂肪酸が、酪酸である、上記〔45〕に記載の組成物。
〔47〕株が、コハク酸も産生する、上記〔36〕~〔46〕のいずれかに記載の組成物。
〔48〕株が、Megasphaera属であるか、またはMegasphaera massiliensis種である、上記〔39〕~〔47〕のいずれかに記載の組成物。
〔49〕細菌株が、配列番号2に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%同一である16s rRNA配列を有する、上記〔39〕~〔48〕のいずれかに記載の組成物。
〔50〕共生細菌株が、胃腸管に投与した場合に、IL-8の活性化を増強することができる、上記〔39〕~〔49〕のいずれかに記載の組成物。
〔51〕共生細菌株が、受託番号NCIMB 42787としてNCIMBに寄託された株である、上記〔39〕~〔50〕のいずれかに記載の組成物。
〔52〕組成物は、共生細菌株の2以上の株を含む、上記〔39〕~〔51〕のいずれかに記載の組成物。
〔53〕組成物は、Parabacteroides distasonis種の株、及びMegasphaera massiliensis種の株を含む、上記〔52〕に記載の組成物。
〔54〕Parabacteroides distasonis種の株が、配列番号17に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有するか、または、配列番号17によって表される16s rRNA配列を有し、かつ、Megasphaera massiliensis種の株が、配列番号2に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%同一である16s rRNA配列を有するか、または、配列番号2によって表される16s rRNA配列を有する、上記〔53〕に記載の組成物。
〔55〕受託番号NCIMB 42787としてNCIMBに寄託された株、及び受託番号NCIMB 42382としてNCIMBに寄託された株を含む、上記〔54〕に記載の組成物。
〔56〕組成物が、神経変性障害の治療に使用するための、上記〔1〕~〔55〕のいずれかに記載の組成物であって、前記神経変性障害が、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベニオン症候群;多発性硬化症;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患;プリオン病;脊髄小脳変性症;脊髄性筋萎縮症;認知症、例えば、レビー小体、脳血管性及び前頭側頭型認知症;原発性進行性失語;軽度認知障害;HIV関連認知障害、進行性炎症性ニューロパチー、及び大脳皮質基底核変性症からなる群から選択される、前記組成物。
〔57〕組成物が、パーキンソン病の治療または予防方法に使用するためのものである、上記〔56〕に記載の組成物。
〔58〕組成物が、早期発症型の神経変性疾患の治療または予防方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔57〕のいずれかに記載の組成物。
〔59〕組成物が、神経変性障害の発症または進行の予防または遅延方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔58〕のいずれかに記載の組成物。
〔60〕組成物が、神経変性疾患の治療または予防において、炎症の低減方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔59〕のいずれかに記載の組成物。
〔61〕組成物が、ニューロン死の低減またはニューロンの保護に使用するためのものである、上記〔1〕~〔60〕のいずれかに記載の組成物。
〔62〕組成物が、神経変性障害の発症または進行の予防もしくは遅延方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔61〕のいずれかに記載の組成物。
〔63〕組成物が、神経変性疾患の治療または予防において、IL-6媒介炎症の低減方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔62〕のいずれかに記載の組成物。
〔64〕組成物が、神経変性障害の治療または予防において、IL-6レベル及び/またはNFκBレベルの低減方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔63〕のいずれかに記載の組成物。
〔65〕組成物が、神経変性疾患の治療または予防において、対象における神経突起形成の増加方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔64〕のいずれかに記載の組成物。
〔66〕組成物が、MAP2活性を誘発することによる神経突起形成の増加方法に使用するためのものである、上記〔1〕~〔65〕のいずれかに記載の組成物。
〔67〕組成物が、対象におけるニューロン死の低減に使用するためのものである、上記〔1〕~〔66〕のいずれかに記載の組成物。
〔68〕組成物が、対象における脳損傷の治療に使用するためのものである、先行上記〔1〕~〔39〕のいずれかに記載の組成物。
〔69〕組成物が、脳損傷の治療に使用するためのものである、上記〔40〕または〔68〕に記載の組成物であって、前記脳損傷が、脳卒中、例えば、脳虚血、限局性脳虚血、虚血性脳卒中または出血性脳卒中である、前記組成物。
〔70〕共生細菌株が、有機酸を産生するように操作されている、上記〔39〕~〔69〕のいずれかに記載の組成物。
〔71〕上記〔34〕~〔37〕、〔39〕、〔40〕、及び〔56〕~〔69〕のいずれかに記載の使用のための、上記〔1〕~〔70〕のいずれかに記載の組成物を含む食品。
〔72〕上記〔34〕~〔37〕、〔39〕、〔40〕、及び〔56〕~〔69〕のいずれかに記載の使用のための、上記〔1〕~〔70〕のいずれかに記載の組成物を含むワクチン組成物。
〔73〕上記〔1〕~〔70〕のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、神経変性障害の治療または予防方法。
〔74〕上記〔1〕~〔70〕のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、脳損傷の治療方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】神経芽腫細胞の細胞生存率
図2】IL-6分泌の下方制御
図3】IL-8の分泌
図4A】α-シヌクレイン誘発IL-6の阻害
図4B】α-シヌクレイン誘発IL-8分泌
図5】α-シヌクレイン誘発NFκBプロモーター活性化の阻害
図6】LPS誘発NFκBプロモーター活性化の阻害
図7A】神経突起伸長の促進:光学顕微鏡及びMAP2遺伝子発現
図7B】ファロイジン免疫蛍光顕微鏡検査
図8】抗酸化能力の変化
図9】総抗酸化能力(脂質酸化)の変化
図10】(A)U373細胞及び(B)SHSY-5Y細胞のROSレベルの変化
図11】神経保護-細胞生存率。図1と同じデータを示す。
図12】ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性の変化
図13】全細胞及び細胞溶解物ヒストン脱アセチル化酵素活性の株誘発変化(A)、ヒストン脱アセチル化酵素活性の酸誘発変化(B)、株による代謝産物の産生(C)
図14A】HDAC1阻害
図14B】HDAC2阻害
図14C】HDAC3阻害
図15】クラスI HDACの阻害(A);HDAC1(B)の阻害;HDAC2の阻害(C);HDAC3の阻害(D)
図16】インドール産生レベル
図17】キヌレニン産生レベル
図18】BDNF産生レベル
図19】代謝産物の産生レベル-脳における神経伝達物質
図20】代謝産物の産生レベル-上清における有機酸
図21】線条体における平均ドーパミン(DA)レベル(A)、DOPACレベル(B)及びHVAレベル(C)。データは、平均+SEMとして示す。
図22A】腸管バリア機能に対する効果
図22B】腸管バリア機能に対する効果
図22C】腸管バリア機能に対する効果
図22D】腸管バリア機能に対する効果
図22E】腸管バリア機能に対する効果
図22F】腸管バリア機能に対する効果
図23】脳における神経伝達物質の産生
図24】海馬受容体発現の変化-A)オキシトシン受容体、B)バソプレシン受容体、C)グルココルチコイド受容体及びD)ミネラルコルチコイド受容体
図25】A)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、B)BDNF発現及びC)TLR4の海馬発現の変化
図26】A)海馬副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(CRFR1)発現及びB)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体2(CRFR2)発現の変化
図27】A)腫瘍壊死因子、B)インターロイキン1b、及びC)IL-6、の海馬発現の変化
図28】A)海馬インテグリンアルファM(CD11b)発現の変化、及びB)海馬セロトニン1A受容体(5-HT1A受容体)発現の変化
図29】A)海馬イオンチャネル型グルタミン酸受容体NMDA型サブユニット2A(Grin2A)及びB)イオンチャネル型グルタミン酸受容体NMDA型サブユニット2B(Grin2B)発現の変化
図30】A)ガンマアミノ酪酸A受容体2(GABA A2)、B)ガンマアミノ酪酸B受容体1(GABA BR1)及びC)ドーパミン受容体1(DRD1)の海馬発現の変化
図31】扁桃体受容体発現の変化-A)オキシトシン受容体、B)バソプレシン受容体、C)グルココルチコイド受容体及びD)ミネラルコルチコイド受容体
図32】A)脳由来神経栄養因子(BDNF)、B)Toll様受容体4(TLR-4)、C)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(CRFR1)、及びD)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体2(CRFR2)の扁桃体発現の変化
図33】A)インテグリンアルファM(CD11b)、B)インターロイキン-6(IL-6)、C)イオンチャネル型グルタミン酸受容体NMDA型サブユニット2A(Grin2A)、及びD)イオンチャネル型グルタミン酸受容体NMDA型サブユニット2B(Grin2B)の扁桃体発現の変化
図34】A)GABA-A受容体アルファ2サブユニット(GABRA2)、B)GABA-A型B受容体1サブユニット(GABBR1)及びC)ドーパミン受容体1(DRD1)の扁桃体発現の変化
図35】A)オキシトシン受容体、B)脳由来神経栄養因子(BDNF)、C)ミネラルコルチコイド受容体、及びD)グルココルチコイド受容体の前頭前皮質発現の変化
図36】A)Toll様受容体4(TLR-4)、B)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(CRFR1)、C)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体2(CRFR2)及びD)インテグリンアルファM(CD11b)の前頭前皮質発現の変化
図37】A)インターロイキン-6(IL-6)、B)イオンチャネル型グルタミン酸受容体NMDA型サブユニット2A(Grin2A)、C)イオンチャネル型グルタミン酸受容体NMDA型サブユニット2B(Grin2B)及びD)GABA-A受容体アルファ2サブユニット(GABRA2)の前頭前皮質発現の変化
図38】A)GABA-A受容体B型受容体サブユニット1(GABBR1)及びB)ドーパミン受容体1(DRD1)の前頭前皮質発現の変化
図39】A)トリプトファンヒドロキシラーゼ-1(Tph1)及びB)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)の結腸発現の変化
図40】A)トリプトファンヒドロキシラーゼ-1(Tph1)及びB)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)の回腸発現の変化
図41】循環トリプトファン代謝産物レベルの変化-A)キヌレニン、B)トリプトファン及びC)代謝のキヌレニン/トリプトファン指数
図42】MRx0029を給餌したマウス由来のマウス脾細胞からのインターフェロン-γ産生に対する効果
図43】脾細胞からのインターロイキン-1β産生に対する効果
図44】脾細胞からのインターロイキン-6産生に対する効果
図45】脾細胞からの腫瘍壊死因子産生に対する効果
図46】脾細胞からのインターロイキン-10産生に対する効果
図47】脾細胞からの化学誘引物質CXCL1産生に対する効果
図48】盲腸の短鎖脂肪酸レベルの変化
図49】MRx0029及びMRX005が誘発する、アクチン、バリン、オクルディンTJP1、TJP2、MAP2、DRD2、GABRB3、SYP、PINK1、PARK7及びNSEの遺伝子発現レベルの変化。
図50】MRx0005及びMRx0029によって誘発されたSHSY5Y細胞分化。(A~C)ファロイジン及びMAP2による免疫標識細胞の代表的な画像。(D~F)DAPI画像と合体したA~Cの画像。(G~I)β3チューブリン免疫標識細胞。(J~L)DAPI画像と合体。倍率×630。SHSY5Y細胞に対するMRx0005及びMRx0029治療の効果のウェスタンブロット分析。ウェスタンブロット膜は、MAP2(M)及びb3チューブリン(N)に対する抗体でプローブした。アクチンは、ローディング・コントロールとして使用した。下パネル:6つの別個の実験のうちの1つからの代表的なブロット;上パネル:相対デンシトメトリー強度。
【発明を実施するための形態】
【0035】
細菌株
本発明の組成物は、疾患の治療または予防に有用な共生細菌株を含む。第1の態様では
、本発明の細菌株は、以下の式:R-COOHを各々が有する1または2以上の有機酸を産生し、Rは、少なくとも4個の炭素を含むアルキル基を含み、またはRは、置換基のヒドロキシル基を有するフェニル基を含み、任意に、ヒドロキシル基は、4位である。第2の態様では、本発明は、共生細菌株、及び式:R-COOHを有する1または2以上の有機酸を含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを提供する。第2の態様の共生細菌株は、本発明による有機酸を産生してもしなくてもよい。
【0036】
本発明者らは、ある特定の共生細菌株が、IL-6などの炎症性サイトカインの活性化を減少させ、炎症性サイトカインIL-8の活性化を増加させることを見出した。IL-8は、髄鞘形成に関与していた。IL-6によって誘発された慢性炎症は、細胞死を最終的にもたらし得る。従って、本発明の細菌株は、神経変性障害の治療または予防において特に有用である。いくつかの実施形態では、共生細菌種は、IL-6の活性化の増強によって特徴付けられた状態の治療において有用である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脱髄によって特徴付けられた神経変性疾患の治療または予防に使用される。多くの神経変性疾患は、脱髄によって特徴付けられる。脱髄は、ニューロン内の活動電位の伝播を妨げ、神経系内の有効な伝達を損なう。IL-8は、髄鞘形成及び修復に積極的に寄与することが示されている[22]。従って、本発明の組成物は、脱髄によって特徴付けられた神経変性障害、例えば、多発性硬化症の治療または予防において特に有益である。
【0037】
本発明者らは、本発明の細菌株が、疾患のモデルにおいて神経変性疾患の症状を軽減することを見出した。例えば、本発明者らは、特定の共生細菌株が、神経突起伸長をインビトロで促進することによって、神経変性疾患の治療または予防のためのニューロンの回復の促進に使用され得ることを見出した。従って、本発明の細菌株は、神経変性疾患の治療または予防に使用される。
【0038】
本発明の第1の態様の共生細菌株は、本発明の有機酸のうちの1つ以上を産生し、本発明の有機酸のうちの1つ以上と組み合わせて投与され得る。
【0039】
神経変性疾患の治療または予防に有益な第2の態様の共生細菌株は、本明細書に記載されている神経修復または神経保護特性を有する有機酸と組み合わせて投与されてよい。
【0040】
本発明の第1及び第2の態様の共生細菌株は、共生細菌株が本発明による有機酸のうちの1つ以上を産生するかどうか、IL-6/IL-8軸にわたって有益な効果を示すものを含む。
【0041】
また、本発明者らは、本発明の細菌株が、BDNFの活性化を増加させることを見出した。BDNFは、ニューロン分化及び生存を増強することを示している神経栄養成長因子である。効果は、共生細菌株を本発明の有機酸と組み合わせて投与する場合に最も顕著に観察される。従って、本発明の組成物は、神経変性疾患の治療または予防においてニューロン生存を増強する方法において使用することができる。
【0042】
本明細書で使用する場合、「活性化」を「増加する」または「減少する」は、好ましくは、胃腸管への投与後に、生理機能の実行に利用可能な生物活性生体分子の濃度を増強または低下することを指す。言い換えれば、「増加する」または「減少する」は、生理的反応が適切に調節されるように、生体分子のレベルを調節することを指す。これは、例えば、生体分子の発現または分泌を調節することによって達成され得る。
【0043】
本発明の組成物は、共生細菌株を含む。共生細菌株は、哺乳動物、例えば、ヒトの胃腸管由来の共生生物である。共生細菌株に由来し得る属の例としては、Bacteroid
es、Enterococcus、Escherichia、Klebsiella、Bifidobacterium、Staphylococcus、Lactobacillus、Megasphaera、Clostridium、Proteus、Pseudomonas、Salmonella、Faecalibacterium、Peptostreptococcus、またはPeptococcusが挙げられる。いくつかの実施形態では、共生細菌株は、Megasphaera属である。本発明において使用されるMegasphaera種は、Megasphaera elsdenii、Megasphaera cerevisiae、Megasphaera massiliensis、Megasphaera indica、Megasphaera paucivorans、Megasphaera sueciensis及びMegasphaera micronuciformisを含むのが好ましい。本発明において使用されるMegasphaera種のさらなる例は、Megasphaera hexanoicaである。Megasphaeraは、反芻及び非反芻哺乳動物、例えば、ヒトの偏性嫌気性、乳酸発酵、胃腸微生物である。細菌株は、組成物を投与することを意図している種由来であるのが好ましい。
【0044】
M.massiliensisの基準株は、NP3(=CSUR P245=DSM 26228)である[23]。M.massiliensis株NP3の16S rRNA遺伝子配列に対するGenBank受託番号は、JX424772.1である(配列番号1と本明細書で開示される)。
【0045】
実施例で試験したMegasphaera massiliensis細菌は、株MRx0029と本明細書で呼ばれる。MRX0029及びMRx0029は、本明細書で交換可能に使用される。試験したMRx0029株に対する16S rRNA配列は、配列番号2で提供される。本発明において使用される細菌は、Megasphaera massiliensis種、特に、株MRx0029であるのが好ましい。
【0046】
株MRx0029は、「Megasphaera massiliensisMRx0029」として、2017年7月13日に4D Pharma Research Ltd.(Life Sciences Innovation Building,Cornhill Road,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって、国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21 9YA,Scotland)に寄託され、受託番号NCIMB
42787が割り当てられた。
【0047】
実施例で試験した株に近縁する共生細菌株はまた、神経変性疾患の治療または予防に有効であると期待される。ある特定の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、Megasphaera massiliensisの細菌株の16S rRNA配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有する。本発明において使用される細菌株は、配列番号2に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有するのが好ましい。本発明において使用される細菌株は、配列番号2によって表される16S rRNA配列を有するのが好ましい。
【0048】
株MRx0029のバイオタイプである共生細菌株はまた、神経変性障害の治療または予防に有効であると期待される。バイオタイプは、同じかまたは非常に類似の生理学的及び生化学的特性を有する近縁株である。
【0049】
MRx0029のバイオタイプであり、かつ、本発明での使用に適している株は、株MRx0029に対する他のヌクレオチド配列をシーケンシングすることで同定され得る。
例えば、実質的に全ゲノムは、配列決定され得、及び本発明において使用されるバイオタイプ株は、その全ゲノムの少なくとも80%にわたって(例えば、少なくとも85%、90%、95%または99%にわたって、またはその全ゲノムにわたって)少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有し得る。バイオタイプ株の同定に使用される他の適切な配列は、hsp60または反復配列、例えば、BOX、ERIC、(GTG)、またはREPを含んでいてよい[24]。バイオタイプ株は、株MRx0029の対応する配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明で有用な共生細菌株は、本発明の有機酸を産生するものである。かかるバイオタイプは、細菌株の代謝産物の産生をプロファイリングすることによって同定され得る。代謝産物プロファイリングを使用して、本発明の神経刺激性有機酸を産生する候補細菌株を同定することができる。代謝産物プロファイリングは、質量分析法によって行うことができる。その後、有機酸を産生し、本明細書に記載されている使用に適している候補株は、実施例に示したような方法及びアッセイを行うことで同定することができる。
【0051】
あるいは、本発明の有機酸を産生することができる適切なバイオタイプは、有機酸を産生する代謝経路を含むものである。かかる株は、ゲノム分析によって、例えば、所望の有機酸の生合成に必要な酵素を細菌株がコードするかどうかを決定することによって同定することができる。例えば、ヘキサン酸産生は、多酵素の存在を必要とする多段階触媒プロセスである。ヘキサン酸の産生における重要なステップは、アセチル-CoA及びブチリル-CoAを濃縮して、C6アシル-CoA中間体、例えば、3-ケトヘキサノイル-CoAを形成することである。C4及びC2-CoA前駆体の産生に必要な酵素は、当業者に周知である。C2及びC4前駆体の濃縮のための適切な酵素の一例は、ベータケトチオラーゼである。C4 CoAの形成のための酵素経路は、C6基質と活性を有することが知られる。従って、C6中間体がいったん形成されると、C4ブチリル-CoAの産生を触媒する酵素は、ヘキサン酸の生成にも適当である。したがって、適切なバイオタイプは、C4-CoA及びC2-CoA産生酵素、及びベータケトチオラーゼ活性を有する酵素をコードするものである。適切な株は、ヘキサン酸の産生に関与する周知の酵素の問い合わせ配列の使用によって、相同性配列検索データベース、例えば、BLASTPまたはUNIPROT KBを用いて同定され得る。
【0052】
以下の記載は、支持参照文献と一緒に、本発明による使用の有機酸を産生することが知られる細菌である。これらのリスト及び参照文献を用いて、神経変性障害の治療に有用なさらなる株及び種が、同定され得る。
【0053】
以下の種及び株は、ヘキサン酸を産生することが知られるため、本発明の組成物で有用であり得る。本発明の組成物は、Megasphaera hexanoica[25]、特に、株Megasphaera hexanoica KFCC11466P(KR101745084B1);Megasphaera sp.MH[26];Megasphaera elsdenii[27]及び[28]、特に、株Megasphaera elsdenii NCIMB 702410[29];Clostridium kluyveri[30];Clostridium sp.BS-1[31]、CPB6(Ruminococcaceae bacterium、Clostridium cluster IV)[32];Lactobacillus sanfranciscensis CB1[33];Pediococcus acidilactici[34];Lysinibacillus spp.Y20[35]またはEubacterium pyruvativorans(I-6)[36]から選択される種の細菌株
を含むのが好ましい。
【0054】
Bacillus cereusは、レチノイン酸を産生することが知られるため、本発明の組成物で有用であり得る[37]。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、種Bacillus cereusの株を含む。
【0055】
以下の属、種、及び株は、(4)-ヒドロキシフェニル酢酸を産生することが知られるため、本発明の組成物で有用であり得る。本発明の組成物は、属Clostridiaの細菌株[38]及び[39]、好ましくは、種C.difficileの細菌株[40]及び[41]、特に、株C.difficile CDC A567[42]、C.difficile DSM 101085[43]、C.difficile DSM 102978[43]、C.difficile DSM 102860[43]、及びC.difficile DSM 28666[43];C.putrefaciens[44]);C.stricklandii[44]及び Great Plains Lab、Organic Acid Test、Nutritional及びMetabolic Profile、Clostridia BacterialMarkers);C.lituseburense[44]及びGreat Plains Lab、Organic Acid Test、Nutritional及びMetabolic Profile、Clostridia BacterialMarkers;C.subterminale[45]、[46]及び[44];C.propionicum[44][46];C.clostridiiforme[46];C.cochlearium[46];C.glycolicum[46];C.hastiforme[46];C.irregularis[46];C.perfringens[47];またはC.botulinum G型[48]及び[49]を含むのが好ましい。本発明の組成物は、Bacteroides fragilis[50]及び[51]);Bacteroides thetaiotaomicron[51];Bacteroides
eggerthii[51];Bacteroides ovatus[51];Parabacteroides distasonis[51];Eubacterium
hallii[51];Clostridium bartlettii[51];Porphyromonas gingivalis[52];Flavobacterium sp.[53];Desulfitobacterium dehalogenans[54]及び[55];Desulfitobacterium hafniense DCB-2[54];またはStreptomyces sentonii[56]から選択される種の細菌株を含むのが好ましい。
【0056】
神経保護特性を有するが、本発明の第1の態様に従って有機酸を産生しない共生細菌は、有機酸と組み合わせた組成物において、本発明の第2の態様で有用であり得る。本発明の第2の態様の組成物で使用されてよい細菌は、属Roseburia(例えば、Roseburia hominis)、Bacteroides、Parabacteroides(例えば、Parabacteroides distasonis)、Blautia(例えば、Blautia hydrogenotrophica、Blautia stercoris、Blautia wexlerae)、Ruminococcus(例えば、Ruminococcus albus[57])、Clostridium(例えば、Clostridium butyricum[58])、Lactococcus(例えば、Lactococcus lactis、Lactococcus
rhamnosus)、Bifidobacterium(例えば、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium infantis)、Lactobacillus(例えば、Lactobacillus paracasei、Lac
tobacillus delbrueckii、Lactobacillus brevis、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus acidophilus)またはStreptococcus(例えば、Streptococcus thermophilus)([59]、[60])に属するものを含む。
【0057】
あるいは、株MRX0029のバイオタイプであり、本発明での使用に適している株は、株MRX0029及び制限断片分析及び/またはPCR分析を用いて、例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)-PCRフィンガープリンティング、またはタンパク質プロファイリング、または部分的16Sまたは23S rDNAシーケンシングを用いて同定され得る。好ましい実施形態では、かかる技術を使用して、他のMegasphaera massiliensis株を同定してもよい。
【0058】
ある特定の実施形態では、株MRX0029のバイオタイプであり、本発明での使用に適している株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析した場合、例えば、Sau3AI制限酵素を使用した場合、株MRX0029と同じパターンを提供する株である(例示の方法及びガイダンスについて、例えば、[61]を参照されたい)。あるいは、バイオタイプ株は、株MRX0029と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
【0059】
本発明の組成物及び方法に有用である他の共生細菌株、例えば、MRX0029のバイオタイプは、任意の適切な方法または戦略、例えば、実施例に記載のアッセイを用いて同定され得る。例えば、本発明において使用される株は、神経芽腫細胞で培養した後、サイトカインレベル、及び神経保護または神経増殖レベルを評価することで同定され得る。特に、MRX0029に対して同様の増殖パターン、代謝型及び/または表面抗原を有する細菌株は、本発明で有用であり得る。有用な株は、MRX0029と同等の免疫調節活性を有する。特に、バイオタイプ株は、実施例に示す効果に対して、神経変性疾患モデルに対する同等の効果、サイトカインレベルに対する同等の効果を引き出し、実施例に記載される培養及び投与プロトコルを用いて同定され得る。
【0060】
特に好ましい本発明の株は、Megasphaera massiliensis MRX0029株である。これは、実施例で試験した例示の株であり、疾患の治療に有効であることを示す。従って、本発明は、Megasphaera massiliensis株MRX0029の細胞、例えば、単離細胞、またはその派生物を提供する。また、本発明は、Megasphaera massiliensis株MRX0029の細胞を含む組成物、またはその派生物を提供する。また、本発明は、Megasphaera massiliensis株MRX0029の生物学的に純粋な培養を提供する。また、本発明は、特に、本明細書に記載されている疾患の治療に使用される、Megasphaera massiliensis株MRX0029の細胞、またはその派生物を提供する。
【0061】
特に好ましい本発明の株は、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株である。これは、実施例で試験した例示のMRx0029株であり、疾患の治療に有効であることを示す。従って、本発明は、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株の細胞、例えば、単離細胞、またはその派生物を提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株の細胞を含む組成物、またはその派生物を提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株の生物学的に純粋な培養を提供する。また、本発明は、特に、本明
細書に記載されている疾患の治療に使用される、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株の細胞、またはその派生物を提供する。
【0062】
本発明の株の派生物は、娘菌株(子孫)、または原株から培養(サブクローン)された株であり得る。本発明の株の派生物は、生物活性を除去することなく、例えば、遺伝子レベルで修飾してもよい。特に、本発明の株の派生物は、治療的に活性である。派生物株は、MRX0029株と同等の治療活性を有する。特に、派生物株は、実施例に示す効果に対して、神経変性疾患モデルに対する同等の効果、サイトカインレベルに対する同等の効果を引き出し、実施例に記載される培養及び投与プロトコルを用いて同定され得る。MRX0029株の派生物は、概して、MRX0029株のバイオタイプである。
【0063】
Megasphaera massiliensis MRX0029株の細胞への言及は、株MRX0029と同じ安全性及び治療効果特性を有する任意の細胞を包含し、かかる細胞は、本発明に包含される。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、生きており、腸に部分的または全体的に定着することができる。
【0065】
本発明の組成物で使用されてよいさらなる共生細菌株は、Parabacteroides distasonis種である。実施例は、Parabacteroides distasonis及びMegasphaera massiliensisの両方が、神経保護活動を有するが、異なる代謝産物を産生し、異なる作用機序及び特定の神経保護活動を有し得ることを示している。従って、これらの種は、併用する場合に、特に有効であり得る。好ましい実施形態では、組成物は、Parabacteroides distasonis種の株及びMegasphaera massiliensis種の株を含む。また、組成物は、本明細書で定義される有機酸を含む。
【0066】
受託番号NCIMB 42382として寄託されたParabacteroides distasonis細菌は、実施例で試験し、株MRx0005とも本明細書で呼ばれる。MRX0005、MRX005、MRx005及びMRx0005は、本明細書で交換可能に使用される。試験したMRx0005株に対する16S rRNA配列は、配列番号17で提供される。株MRx0005は、「Parabacteroides sp
755」として、2015年3月12日にGT Biologics Ltd.(Life Sciences Innovation Building,Cornhill
Road,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって、国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21 9YA,Scotland)に寄託され、受託番号NCIMB 42382が割り当てられた。GT Biologics Ltd.は、その後、4D Pharma Research Limitedへとその名称を変えた。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明は、好ましくは、治療に使用される、好ましくは、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病の治療に使用される、受託番号NCIMB 42787としてNCIMBに寄託された株またはその派生物もしくはバイオタイプ、及び受託番号NCIMB 42382としてNCIMBに寄託された株またはその派生物もしくはバイオタイプを含む組成物を提供する。
【0068】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Megasphaera属の細菌株を含まない。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Megasphaera massiliensis種の細菌株を含まない。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は
、受託番号NCIMB 42787として寄託されたMegasphaera massiliensis株を含まない。
【0069】
有機酸
実施例に示すように、本明細書に記載されている1または2以上の有機酸は、神経保護及び/または神経修復特性を有する。例えば、本発明の有機酸は、神経突起伸長を促進し得る。神経突起伸長は、神経突起形成のプロセスであり、ニューロンの細胞体から軸索または樹状突起の形成を指す。軸索及び樹状突起は、活動電位の受信と送信の役割を担う。従って、神経突起伸長の増加は、神経系内の神経網内の有効な伝達を修復または維持することができる。従って、いくつかの実施形態では、本発明での使用に適切な有機酸は、神経突起伸長を促進することができるものである。かかる有機酸は、疾患の予防方法に使用されてよい。いくつかの実施形態では、有機酸は、神経変性疾患の治療または予防方法に使用される。
【0070】
1または2以上の有機酸は、以下の式:R-COOHを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、Rは、アルキル基を含む。本明細書で用いられる場合、アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状の飽和炭化水素鎖、またはそれから導出される任意の置換基である。いくつかの実施形態では、Rは、アルケニル基を含む。本明細書で用いられる場合、アルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖、分枝鎖または環状の不飽和炭化水素、またはそれから導出される任意の置換基である。いくつかの実施形態では、Rは、アルキニル基を含む。本明細書で用いられる場合、アルキニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む、直鎖、分枝鎖または環状の不飽和炭化水素、またはそれから導出される任意の置換基である。いくつかの実施形態では、Rは、アリール基を含む。本明細書で用いられる場合、アリール基は、直鎖、分枝鎖または環状の芳香族の炭化水素、またはそれから導出される任意の置換基である。
【0072】
本明細書で用いられる場合、置換基は、親炭化水素鎖の1または2以上の水素を置換する原子または原子群である。いくつかの実施形態では、Rは、1または2以上の置換基を含む。いくつかの実施形態では、1または2以上の置換基は、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、ハロホルミル、カーボネートエステル、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、メトキシ、ヒドロペルオキシ、ペルオキシ、エーテル、ヘミアセタール、ヘミケタール、アセタール、ケタール、オルトエステル、メチレンジオキシ、カルボキサミド、アミン、イミン、ニトレート、ニトリル、ニトライト、ピリジル、スルフヒドリル、スルフィド、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、カルボノチオイル、カテコール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、Rは、少なくとも4個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、Rは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、Rは、4~19個の範囲で炭素原子を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、Rは、4~11個の範囲で炭素を含む。いくつかの実施形態では、Rは、5個の炭素原子からなるアルキル基を含む。いくつかの実施形態では、1または2以上の有機酸は、ヘキサン酸を含む。本発明者らは、ヘキサン酸及びヘキサン酸を産生する本明細書に記載されている細菌株が、神経突起伸長を増強することを見出した。したがって、これらの有機酸を使用して、神経突起伸長を促進することができる。いくつかの実施形態では、神経変性疾患の治療または予防において、これらの有機酸を使用して、神経突起伸長を促進することができる。ヘキサン酸を産生する本発明の例示の細菌株は、Megasphaera属由来のものを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、Rは、4個の炭素原子からなるアルキル基を含む。いくつかの実施形態では、1または2以上の有機酸は、吉草酸を含む。吉草酸及びペンタン酸は、本明細書で交換可能に使用される。本発明者らは、吉草酸及び吉草酸を産生する本明細書に記載されている共生細菌株が、ヒストン脱アセチル化を減少することができることを見出した。特に、本発明者らは、吉草酸が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であることを見出した。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は、クロマチンアセチル化を調節することによって、遺伝子発現を調節する。HDACの異なるアイソフォームの過剰発現は、いくつかの種類の癌細胞並びに神経学的及び炎症性病変で見られた。ヒトでは、合計で13個のHDACがあり、4つの主要なクラス-クラスI(HDAC1、2、3及び8)、クラスIIa(HDAC4,5,7及び9)及びクラスIIb(HDAC6及び10)、クラスIII(sirt1-sirt7)及びクラスIV(HDAC11)に分類される。本発明者らは、吉草酸が、クラス1 HDAC阻害剤であることを見出した。
【0076】
いくつかの実施形態では、Rは、分枝アルキル基を含む。いくつかの実施形態では、Rは、少なくとも5個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、Rは、5~9個の範囲で炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、Rは、ブチリル基を含む。いくつかの実施形態では、Rは、ブチル基及びプロピル基からなる。いくつかの実施形態では、1または2以上の有機酸は、バルプロ酸を含む。本発明者らは、神経突起伸長を増加させることを示したため、神経修復の方法で使用することができる。バルプロ酸は、細菌治療法と併用していないが、PDのラットモデルにおいて神経修復を助けることも示した[62]。バルプロ酸は、MAP2発現を増加させることを示した。
【0077】
いくつかの実施形態では、Rは、アリール基を含む。いくつかの実施形態では、アリール基は、フェニル基である。いくつかの実施形態では、フェニル基は、ヒドロキシル基を含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル基は、2、3、4、5または6環位である。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル基は、4環位である。いくつかの実施形態では、Rは、4-ヒドロキシフェニルアセチル基からなる。いくつかの実施形態では、1または2以上の有機酸は、4-ヒドロキシフェニル酢酸を含む。本発明者らは、この有機酸またはこの有機酸を産生する本明細書に記載されている細菌株を使用して、神経突起伸長を促進することができることを示した。また、4-ヒドロキシフェニル酢酸は、酸化防止剤である。いくつかの実施形態では、4-ヒドロキシフェニル酢酸を含む1または2以上の有機酸は、神経変性障害の治療または予防において使用して、酸化ストレスを減少させることができる。4-ヒドロキシフェニル酢酸は、ドーパミン及びノルエピネフリンの中間体である。ドーパミン及びノルエピネフリン(ノルアドレナリンとしても知られる)は、交感神経系で作用する神経伝達物質である。ドーパミン及びノルエピネフリンのレベルは、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病を罹患している対象において減少する。本発明者らは、4-ヒドロキシフェニル酢酸を産生する本明細書に記載されている共生細菌株が、脳内のノルアドレナリン、セロトニンまたは5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)のレベルを増加させることを見出した。従って、4-ヒドロキシフェニル酢酸は、ノルエフェニフリン、ドーパミン、セロトニンまたは5-ヒドロキシトリプタミンのレベル低下によって特徴付けられた神経変性疾患の治療または予防において有用であり得る。いくつかの実施形態では、4-ヒドロキシフェニル酢酸は、神経変性疾患の治療または予防において有用であり得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、Rは、アルケニル基を含む。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、少なくとも部分的に環状である。本明細書で用いられる場合、「部分的に環状」基は、直鎖部分及び環状鎖部分を含む炭化水素鎖である。いくつかの実施形態では、部分的に環状のアルケニル基は、19個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、Rは、1~8個の範囲でメチル置換基を含む。いくつかの実施形態では、Rは、1~8個の範囲で
炭素-炭素の二重結合を含む。いくつかの実施形態では、有機酸は、レチノイン酸もしく
はその誘導体である。本発明者らは、これらの有機酸が、本発明の細菌株と組み合わせて投与する場合、BDNFの活性化を増加させることを見出した。したがって、いくつかの実施形態では、これらの有機酸を使用して、BDNFの活性化を増加させ得る。いくつかの実施形態では、神経変性疾患の治療または予防において、これらの有機酸を使用して、BDNFの活性化を増加させることができる。
【0079】
本発明において使用される有機酸は、実施例に記載される培養及び投与プロトコルを用いて同定され得る。例えば、本発明において使用される有機酸は、神経芽腫細胞で培養した後、サイトカインレベル、及び神経保護または神経増殖及び神経突起形成レベルを評価することで同定され得る。有用な有機酸は、実施例に示すように、バルプロ酸、ヘキサン酸またはレチノイン酸に少なくとも同等の神経突起伸長活性を増強し得る。特に、有用な有機酸は、本発明の細菌株と組み合わせて有機酸を投与する場合、実施例に示す効果に対して、神経変性疾患モデルに対する同等の効果、サイトカイン及び増殖因子レベルに対する同等の効果を引き出し得る。例えば、適切な有機酸は、本発明の細菌株と組み合わせて投与する場合、レチノイン酸と同等にBDNFの活性化を増加させる。第1の態様では、有機酸は、本発明の細菌株によって産生される。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の適切な有機酸は、本発明の細菌株と一緒に作用して、治療反応を増強させるものである。例えば、実施例は、MRX0029と一緒にバルプロ酸を投与することが、BDNFの分泌を増加させることを示す。BDNFは、既存のニューロンの生存を支えるのに役立つことができ、新しいニューロン及びシナプスの増殖及び発達に役立つ。従って、本発明のある特定の有機酸は、神経保存の方法、または言い換えれば、ニューロン死の予防方法に使用されてよい。
【0081】
本発明の組成物は、短鎖脂肪酸(SCFA)をさらに含んでいてよい。SCFAは、0~4個の炭素原子からなる直鎖または分枝鎖の炭化水素アルキル基に結合したカルボン酸基を含む有機酸である。SCFAは、血液脳関門の透過性を調節することを示した。特に、SCFAは、機能不全のBBB透過性を是正することで、透過性を生理学的に適切なレベルに回復させることを示した。いくつかの実施形態では、SCFAは、ギ酸、エタン酸、プロパン酸、酪酸、2-メチルプロパン酸、イソ吉草酸、またはその塩もしくはエステルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、SCFAは、治療上の組み合わせの一部である。いくつかの実施形態では、SCFAは、本発明の細菌株によって産生される。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明において使用されるSCFAは、酪酸またはその塩である。いくつかの実施形態では、共生細菌株は、酪酸またはその塩を産生する。いくつかの実施形態では、酪酸またはその塩を産生する共生細菌株は、株MRX0029と本明細書で呼ばれるM.massiliensis株である。SCFAを産生する細菌株の適切なバイオタイプは、前節に記載される他の方法、例えば、代謝産物プロファイリング、ゲノム分析、または増幅リボソームDNA制限分析のいずれかを用いて同定することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、コハク酸またはその塩をさらに含んでいてよい。いくつかの実施形態では、共生細菌株は、コハク酸またはその塩を産生する。いくつかの実施形態では、コハク酸を産生する共生細菌株は、株MRX0005と本明細書で呼ばれる株である。コハク酸は、酸化的リン酸化に関与するクレブスサイクル代謝産物である。酸化的リン酸化の機能不全は、アルツハイマー病、パーキンソン病及び脊髄小脳変性症1型を含む神経変性障害で報告されている[63、64])。従って、コハク酸のアベイラビリティの増加は、酸化的リン酸化の欠陥を再生し、ミトコンドリア活性を増加
させて、神経変性疾患、例えば、PDに罹りやすいニューロンの健康を改善し得る[65]。
【0084】
治療用途
実施例に示すように、本発明の細菌組成物は、神経変性障害の治療に有効である。特に、本発明の組成物による治療は、神経増殖または神経突起形成を増加させるかまたは、ニューロン、例えば、ドーパミン作動性ニューロンを破壊する作用物質に対する神経保護物質として作用する。従って、本発明の組成物は、ニューロン死の結果である神経変性疾患の治療または予防に有用であり得る。
【0085】
本発明の組成物は、サイトカイン産生、例えば、IL-1β、IL-1α、IL-18、TNFα及びIL-6を活性化させる、NFκBプロモーターの活性化を減少させることができる。細胞を変異体α-シヌクレインで治療することは、家族性パーキンソンに対するモデルである。アデニンからトレオニンへの53位での点突然変異は、α-シヌクレインミスフォールディングをもたらす。その後、誤って折り畳まれたα-シヌクレインは、不溶性繊維に凝集して、レビー小体を形成する。従って、本発明の組成物は、神経炎症、タンパク質ミスフォールディング及び/または環境暴露の結果である神経変性障害の治療または予防に有用であり得る。本発明の組成物は、家族性パーキンソンの治療に使用することができる。NFκBプロモーターの活性化は、TLR4リガンドを介して媒介される。TLR4は、マウスモデルMPTPにおいて細胞死を媒介することが知られ、パーキンソン病を刺激する。本発明の組成物を使用して、TLR4がNFκBプロモーターを活性化する能力を阻害することができる。PDに対して特に関連のあるもので、TLR2及びTLR4の両方は、PD患者の脳で上方制御されることが分かった[66]。さらに、α-synは、TLR2のリガンドとして記載されており[67]、HEK-TLR4細胞を用いて、α-synがTLR4のリガンドでもあることを実証した[68]。
【0086】
本発明の組成物は、リポ多糖(LPS)によって誘発することができる、炎症性サイトカイン、例えば、IL-6の分泌を減少させる。LPSによる細胞の処理は、環境因子に起因するパーキンソン病を模擬する。本発明の組成物を使用して、IL-6分泌を減少させることができる。本発明の組成物は、環境性パーキンソン病の治療に使用することができる。
【0087】
本発明の組成物は、IL-8の分泌を増加させることができる。IL-8は、ニューロンの髄鞘化に役割を果たすことが示されている。いくつかの実施形態では、本発明の組成物を使用して、IL-8分泌を増加させることができる。
【0088】
本発明の治療用組成物は、BDNFの活性化を増加させることができる。BDNFは、中枢神経系のある特定のニューロン上で作用して、既存のニューロンの生存を支え、新しいニューロン及びシナプスの増殖及び発達に役立つ。BDNFは、海馬、皮質及び前脳基底核で活性であり、長期記憶において重要である。従って、本発明の組成物を使用して、BDNFの分泌を増加させることができる。従って、組成物は、長期記憶の障害に関連する神経変性疾患の治療に使用されてよい。本発明の組成物は、長期記憶の改善、特に、神経変性疾患によって損傷している長期記憶の改善のために使用されてよい。
【0089】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経細胞中のミトコンドリア代謝活性を増加させる。
【0090】
本発明の組成物によって治療される神経変性疾患の例としては、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性
パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベニオン症候群;多発性硬化症;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患;プリオン病;脊髄小脳変性症;脊髄性筋萎縮症;認知症、例えば、レビー小体、脳血管性及び前頭側頭型認知症;原発性進行性失語;軽度認知障害;HIV関連認知障害、進行性炎症性ニューロパチー、及び大脳皮質基底核変性症が挙げられる。
【0091】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、特に、神経変性障害の治療において、ニューロン死の低下に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、特に、神経変性障害の治療において、ニューロンの保護に使用される。
【0092】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、黒質におけるドーパミン作動性細胞の損失の減少または予防に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの変性の減少または予防に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの変性、及びその結果として生じる線条体における突出神経線維の損失の減少または予防に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、黒質線条体ドーパミン作動性ニューロンの損失の減少または予防に使用される。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミンレベルの増加に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、DOPAC(3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸)レベルの増加に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン及びDOPACレベルの増加に使用される。ある特定の実施形態では、ドーパミン及び/またはDOPACレベルは、線条体で増加する。ドーパミン及びDOPACレベルは、放射酵素法、例えば、血漿またはCSF中(例えば、[69]に記載されるような)、または逆相HPLC法、おそらく電気化学検出、例えば、血漿またはCSF中(例えば、[70]に記載されるような)などの当該技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて測定され得る。
【0094】
本発明の組成物の神経保護特性は、実施例に示すように、組成物が、神経変性障害の発症または進行の予防または遅延に特に有効であり得ることを意味する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の発症または進行の遅延に使用される。
【0095】
微生物叢-腸-脳軸の調節
腸と脳の間の通信(微生物叢-腸-脳軸)は、双方向神経液性通信システムを介して生じる。腸に住む微生物叢が、脳の発達を調節し、微生物叢-腸-脳軸を介して行動表現型を産生できることが最近のエビデンスにより示されている。実際、多くの論評が、中枢神経系機能性の維持における微生物叢-腸-脳軸の役割を示唆し、中枢神経系障害及び状態の発症における微生物叢-腸-脳軸の機能不全を含意する[16]、[19]、[71]。
【0096】
脳と腸の間の双方向通信(すなわち、腸-脳軸)は、中枢神経系、神経内分泌及び神経免疫系、例えば、視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)軸、自律神経系(ANS)の交感神経及び副交感神経アーム、例えば、腸管神経系(ENS)及び迷走神経、及び腸内微生物叢を含む。
【0097】
実施例に示すように、本発明の組成物は、微生物叢-腸-脳軸を調節し、神経変性障害に関連する細胞死を減少させることができる。したがって、本発明の組成物は、神経変性障害、特に、微生物叢-腸-脳軸の機能不全に関連するこれらの障害及び状態の治療または予防に有用であり得る。
【0098】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベニオン症候群;多発性硬化症;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患;プリオン病;脊髄小脳変性症;脊髄性筋萎縮症;認知症;例えば、レビー小体;脳血管性及び前頭側頭型認知症;原発性進行性失語;軽度認知障害;HIV関連認知障害、進行性炎症性ニューロパチー、及び大脳皮質基底核変性症からなる群から選択される疾患または状態の治療または予防に有用であり得る。
【0099】
本発明の組成物は、慢性疾患の治療または予防、他の治療法(例えば、レボドパ、ドーパミン作動薬、MAO-B阻害剤、COMT阻害剤、グルタミン酸拮抗薬、及び/または抗コリン薬による治療)に反応しなかった患者における疾患の治療または予防、及び/または微生物叢-腸-脳軸の機能不全に関連する組織の損傷及び症状の治療または予防に特に有用であり得る。
【0100】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、CNSを調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、自律神経系(ANS)を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腸管神経系(ENS)を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、視床下部、下垂体、副腎皮質(HPA)軸を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経内分泌経路を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経免疫経路を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、CNS、ANS、ENS、HPA軸及び/または神経内分泌及び神経免疫経路を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象の共生代謝産物及び/または腸透過性のレベルを調節する。
【0101】
微生物叢-腸-脳軸のシグナル伝達は、神経系によって調節される。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経系におけるシグナル伝達を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、中枢神経系のシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、感覚ニューロンにおけるシグナル伝達を調節する。他の実施形態では、本発明の組成物は、運動ニューロンにおけるシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ANSにおけるシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態では、ANSは、副交感神経系である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、迷走神経のシグナル伝達を調節する。他の実施形態では、ANSは、交感神経系である。他の実施形態では、本発明の組成物は、腸管神経系におけるシグナル伝達を調節する。ある特定の実施形態では、ANS及びENSニューロンのシグナル伝達は、胃腸管の管腔内容物に直接反応する。他の実施形態では、ANS及びENSニューロンのシグナル伝達は、管腔内細菌によって産生された神経化学物質に間接的に反応する。他の実施形態では、ANS及びENSニューロンのシグナル伝達は、管腔内細菌または腸内分泌細胞によって産生された神経化学物質に反応する。ある特定の好ましい実施形態では、ENSのニューロンは、CNSの機能に影響を及ぼす迷走神経求心性を活性化する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腸クロム親和性細胞の活性を調節する。
【0102】
神経変性疾患
パーキンソン病
パーキンソン病は、神経細胞の異種集団(ドーパミン産生細胞)の変性によって神経病理学的に特徴付けられた一般的な神経変性疾患である。パーキンソン病の臨床診断には、運動緩慢、及び以下の中核症状:安静時振戦;筋硬直及び姿勢反射障害のうちの少なくとも1つを必要とする。疾患の進行中に提示または発症し得る他の兆候及び症状は、自律神経障害(唾液漏、脂漏、便秘、排尿障害、性機能、起立性低血圧、多汗症)、睡眠障害及
び嗅覚または温度覚の乱れである。パーキンソン病は、微生物叢-腸-脳軸の機能不全により発症または持続し得る神経変性疾患である。従って、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の治療または予防に使用される。
【0103】
さらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の治療または予防方法に使用される。本発明の組成物は、パーキンソン病のモデルにおける運動及び認知機能を改善し得る。組成物による治療は、中枢、自律、及び腸管神経系におけるシグナル伝達を調節し得る;HPA軸経路の活性を調節し得る;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得る;対象の共生代謝産物、炎症マーカー、及び/または腸透過性のレベルを調節し得る、これらは全て、パーキンソン病の神経病理学に関与している。好ましい実施形態では、本発明は、パーキンソン病の治療または予防方法に使用される、Megasphaera massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。Megasphaera massiliensisを用いる組成物は、パーキンソン病の治療に特に有効であり得る。組成物は、有機酸をさらに含んでいてよい。
【0104】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の症状のうちの1つ以上を予防、減少、または軽減する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の1または2以上の中核症状を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における運動緩慢を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における安静時振戦;筋硬直及び/または姿勢反射障害を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、自律神経障害(唾液漏、脂漏、便秘、排尿障害、性機能、起立性低血圧、多汗症)、睡眠障害及び嗅覚または温度覚の乱れから選択される、パーキンソン病の進行に関連する1または2以上の症状を予防、減少、または軽減する。
【0105】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病と共存するうつ症状を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、言語記憶及び/または遂行機能を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、注意、作動記憶、言語流暢性及び/または不安を改善する。
【0106】
他の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病と共存する認知機能不全を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の進行を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、後の運動合併症を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、後の運動症状の変動を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ニューロン損失を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン型認知症(PDD)の症状を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、遂行機能、注意及び/または作動記憶の障害を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン作動性神経伝達を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン作動性神経伝達障害を予防、減少、または軽減する。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従って、パーキンソン病の症状を改善する。ある特定の実施形態では、パーキンソン病における運動機能の症状の改善を評価する検査は、統一パーキンソン病評価尺度である。特に、UPDRS IIは、日常生活の活動を考慮し、UPDRS IIIは、運動検査を考慮する。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症候性または診断検査及び/または尺度に従って、PDDに関連する症状を改善する。ある特定の実施形態では、検査または尺度は、ホプキンズ言語学習検査-改訂版(HVLT-R);デリスカプラン実行機能システ
ム(D-KEFS)色単語緩衝試験;ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D 17;うつ病);ハミルトン不安評価尺度(HAM-A;不安)及び統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS;PD症状の重篤度)から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、精神及び神経障害を評価するための臨床包括的印象-包括的改善(CGI-I)尺度を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病を有する対象の包括的、社会的、及び職業的障害に対して肯定的効果を示す。
【0110】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経障害、例えば、パーキンソン病の治療または予防に使用され、前記使用は、黒質におけるドーパミン作動性細胞の損失の減少または予防を伴う。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経障害、例えば、パーキンソン病の治療または予防に使用され、前記使用は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの変性の減少または予防を伴う。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経障害、例えば、パーキンソン病の治療または予防に使用され、前記使用は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの変性、及びその結果として生じる線条体における突出神経線維の損失の減少または予防を伴う。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経障害、例えば、パーキンソン病の治療または予防に使用され、前記使用は、黒質線条体ドーパミン作動性ニューロンの損失の減少または予防を伴う。
【0111】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経障害、例えば、パーキンソン病の治療または予防に使用され、前記使用は、ドーパミンレベルの増加を伴う。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経障害、例えば、パーキンソン病の治療または予防に使用され、前記使用は、DOPACレベルの増加を伴う。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経障害、例えば、パーキンソン病の治療または予防に使用され、前記使用は、ドーパミン及びDOPACレベルの増加を伴う。ある特定の実施形態では、ドーパミン及び/またはDOPACレベルは、線条体で増加する。
【0112】
アルツハイマー病及び認知症
DSM-5では、用語「認知症」は、用語「重度神経認知障害」及び「軽度神経認知障害」と置き換えられた。神経認知障害は、異種クラスの精神疾患である。最も一般的な神経認知障害は、アルツハイマー病、続いて、脳血管性認知症、またはその2つの混合形態である。他の形態の神経変性障害(例えば、レビー小体病、前頭側頭型認知症、パーキンソン型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、及びウェルニッケ・コルサコフ症候群)は、認知症に伴う。
【0113】
また、アルツハイマー病及び認知症は、ニューロン損失によって特徴付けられるため、本発明の組成物の実施例に示す神経保護及び神経増殖効果は、それらが、これらの状態の治療または予防に有用であり得ることを示す。
【0114】
DSM-5下の認知症に対する症状の基準は、学習及び記憶;言語;遂行機能;複雑性注意;知覚運動及び社会的認知から選択される1または2以上の認知領域におけるパフォーマンスの前のレベルからの著しい認知機能低下のエビデンスである。認知欠損は、日常活動の独立性に干渉しなければならない。加えて、認知欠損は、譫妄の状況の中で排他的には生じず、かつ、別の精神障害(例えば、MDDまたは統合失調症)によって良く説明されない。
【0115】
一次症状に加えて、神経変性障害を有する対象は、動揺、攻撃性、うつ病、不安、無気
力、精神病及び睡眠覚醒サイクルの乱れを含む行動及び精神症状を示す。
【0116】
神経変性障害は、微生物叢-腸-脳軸の機能不全により発症または持続し得る。従って、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経変性障害の治療または予防に使用される。好ましい実施形態では、神経変性障害は、アルツハイマー病である。他の実施形態では、神経変性障害は、脳血管性認知症;混合型アルツハイマー病及び脳血管性認知症;レビー小体病;前頭側頭型認知症;パーキンソン型認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病;ハンチントン病;及びウェルニッケ・コルサコフ症候群から選択される。
【0117】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経変性障害の症状のうちの1つ以上を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における認知機能低下の発生を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、学習及び記憶;言語;遂行機能;複雑性注意;知覚運動及び社会的認知から選択される1または2以上の認知領域における神経変性障害を有する対象のパフォーマンスのレベルを改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、動揺、攻撃性、うつ病、不安、無気力、精神病及び睡眠覚醒サイクルの乱れから選択される神経変性障害に関連する1または2以上の行動及び精神症状の発生を予防、減少、または軽減する。
【0118】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、前臨床段階において疑われる病原性メカニズムに介入することで、症候性疾患を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、症状進行の減速または停止による疾患緩和を改善する。いくつかの実施形態では、症状進行の減速または停止は、基になる神経病理学的プロセスを遅延するエビデンスと相関する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、強化認知及び機能改善を含む、神経変性障害の症状を改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、認知症(BPSD)の行動及び精神症状を改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害を有する対象が日常活動に着手する能力を改善する。
【0119】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知及び機能の両方を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知エンドポイントを改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における機能的エンドポイントを改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知及び機能的エンドポイントを改善する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における全体臨床反応(グローバルエンドポイント)を改善する。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症候性または診断検査に従って、神経変性障害の症状を改善する。ある特定の実施形態では、アルツハイマー病(及び他の神経変性障害)の症状の改善を評価する検査は、客観的認知、日常生活動作、変化の総合評価、健康に関連した生活の質の検査、及び神経変性障害の行動及び精神症状を評価する検査から選択される。
【0121】
ある特定の実施形態では、症状の改善の評価のための客観的認知検査は、アルツハイマー病評価尺度-認知副尺度(ADAS-cog)、及び古典的なADAS尺度を使用する。ある特定の実施形態では、認知の症状の改善は、アルツハイマー病で使用される神経生理学的試験用バッテリー(NTB)を用いて評価される。
【0122】
いくつかの実施形態では、変化の総合評価検査は、精神及び神経障害を評価するための臨床包括的印象-包括的改善(CGI-I)尺度を使用する。いくつかの実施形態では、
包括的尺度は、臨床面接による認知症変化印象尺度(CIBIC plus)である。いくつかの実施形態では、包括的尺度は、アルツハイマー病共同研究ユニットによる変化に対する臨床医の包括的印象(ADCS-CGIC)である。
【0123】
ある特定の実施形態では、健康に関連した生活の質の尺度は、アルツハイマー病関連QOL(ADRQL)及びQOL-アルツハイマー病(QOL-AD)である。
【0124】
ある特定の実施形態では、神経変性障害の行動及び精神症状を評価する検査は、アルツハイマー病評価尺度(BEHAVE-AD);認知症の行動評価尺度(BRSD);神経精神症状評価表(NPI);及びコーエン・マンスフィールド激越評価表(CMAI)における行動病理学から選択される。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害を治療する別の治療法と併用する場合、神経変性障害の予防、減少、または軽減に特に有効である。ある特定の実施形態では、かかる治療法には、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、ドネペジル(Aricept(登録商標))、ガランタミン(Razadyne(登録商標))及びリバスチグミン(Exelon(登録商標))、及びメマンチンが含まれる。
【0126】
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、脳内のニューロンを囲む髄鞘、及び脊髄が損傷している脱髄疾患である。MSの正確な根本原因は未知であるが、個体間で変化すると考えられる。ある特定の形態のMSは、遺伝性である。環境因子もMSに寄与すると考えられる。いくつかの個体では、遺伝及び環境因子の両方の組み合わせが、MSの発症を引き起こし得る。
【0127】
MSに関連する多種多様の症状が存在する。対象は、自律、視覚、運動または感覚制御の障害に関連するほとんど全ての神経学的症状を示し得る。正確な症状は、ニューロン損傷/脱髄の部位に応じて変化することになる。
【0128】
IL-8は、髄鞘の形成に関与していた。従って、本発明の組成物は、MSを有する対象におけるニューロンの髄鞘再生に使用されてよい。また、本発明の組成物を使用して、ニューロンを脱髄から保護し得る。言い換えれば、本発明の組成物は、ニューロン髄鞘の喪失の回復または予防による多発性硬化症の治療または予防方法に使用されてよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるMSの1または2以上の症状を予防、減少、または軽減する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、対象における倦怠感を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における安静時振戦、筋力低下、筋痙攣、筋肉強直、知覚異常及び/または運動失調を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、自律神経障害:便秘、排尿障害、性機能、嚥下障害、構音障害、失神、めまい及び/または眩暈;睡眠障害;及び嗅覚または温度覚の乱れからなる群から選択される、MS進行に関連する1または2以上の症状を予防、減少、または軽減する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、MSに関連する1または2以上の眼症状を予防、減少、または軽減する。いくつかの実施形態では、眼症状は、対象における失明、眼痛、色盲、複視及び/または眼球の固視微動からなる群から選択される。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、眩暈、めまい、神経因性疼痛、筋骨格痛、認知機能不全、腸失禁、嚥下障害、構音障害、またはそれらの任意の組み合わせを予防、減少、または軽減する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、MSと共存するうつ症状または不安を予
防、減少、または軽減する。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物による症状の改善は、MSを診断する2017年マクドナルド基準を用いて決定される。
【0133】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、MS発生またはMS重篤度の減少をもたらす。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、再発発生または再発重篤度の低下に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、運動機能の低下を予防し、またはMSに関連する運動機能の改善をもたらす。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、運動機能の低下の予防に使用され、またはMSの治療における運動機能の改善に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、MSにおける麻痺の発症を予防する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、MSの治療における麻痺の予防に使用される。
【0134】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、多発性硬化症のリスクがあると同定された、または早期の多発性硬化症または「再発寛解型」多発性硬化症と診断された患者における多発性硬化症の予防に使用される。本発明の組成物は、MSの発症の予防に有用であり得る。本発明の組成物は、MSの進行の予防に有用であり得る。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、MSに対する遺伝的素因、例えば、主要組織適合性複合体(MHC)クラスII表現型、ヒト白血球型抗原(HLA)-DR2またはHLA-DR4を有すると同定された患者に使用される。
【0135】
本発明の組成物は、多発性硬化症の維持または軽減に有用であり得る。本発明の組成物は、多発性硬化症に関連する症状の低下に特に有用であり得る。多発性硬化症の治療または予防は、例えば、症状の重篤度の軽減、または患者に対する問題である悪化頻度またはトリガーの範囲の減少を指し得る。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、疾患の進行を減速または停止する。
【0136】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、再発寛解型MSの治療に使用される。別の実施形態では、本発明の組成物は、進行型MS、例えば、RRMSの診断後に徐々に発症する二次性進行型MS(SPMS)、徐々に継続する神経学的悪化を示す一次性進行型MS(PPMS)、及び、PPMSと同様であるが、重複再発する進行性再発型MS(PRMS)の治療に使用される。
【0137】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、倦怠感、視覚障害、痺れ、刺痛感、筋痙攣、筋肉強直、筋力低下、運動障害、疼痛、思考、学習及び計画の障害、うつ病及び不安、性的障害、膀胱障害、腸障害、発語障害、及び嚥下困難からなる群から選択される、MSの症状のうちの1または2以上の治療に使用される。
【0138】
神経化学的因子、神経ペプチド及び神経伝達物質及び微生物叢-腸-脳軸
上に概説されたように、微生物叢-腸-脳軸は、多くの異なる生理系によって調節される。微生物叢-腸-脳軸は、多くのシグナル伝達分子によって調節される。これらのシグナル伝達分子レベルの変化は、神経変性疾患をもたらす。本発明者らによって行われた実験は、Megasphaer共生細菌株、特に、Megasphaera massiliensisの投与が、インドール及びキヌレニンのレベルを調節することができることを示唆する。これらの代謝産物の調節異常は、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病をもたらし得る。
【0139】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脳内モノアミン及びそれらの代謝産物のレベルを調節する。好ましい実施形態では、代謝産物は、キヌレニンである。ある特定の
実施形態では、本発明の組成物は、キヌレニンを調節する。これは、トリプトファン代謝の主要経路であり、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)産生への経路として機能する。キヌレニンは代謝されて、神経活性化合物、例えば、キヌレン酸(KYNA)及び3-ヒドロキシ-1-キヌレニン(3-OH-1-KYN)になり、さらなるステップで、キノリン酸(QUIN)になることができる。キヌレニン経路の調節異常は、免疫系の活性化、及び潜在的に神経毒性な化合物の蓄積をもたらし得る。キヌレニン代謝の変化は、パーキンソン病の発症に関与し得る。キヌレニンレベルは、PD(パーキンソン病)を有する患者の前頭皮質、被殻、及び黒質緻密部において減少することが示されている[72]。従って、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の治療におけるキヌレニンレベルの増加に使用される。
【0140】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の組成物は、キヌレニンレベルを増加させることができる。キヌレニンレベルの増加は、ヒトドーパミン作動性神経芽腫細胞株におけるMPP+誘発ニューロン細胞死をインビトロで減衰することが示されている[73]。ある特定の実施形態では、キヌレニン及びキヌレン酸は、GIアリール炭化水素受容体(Ahr)及びGPR35受容体を活性化することができる。Ahr受容体の活性化は、IL-22産生を誘発し、局所炎症を阻害することができる。GPR35の活性化は、イノシトール三リン酸の産生、及びCa2+動員を誘発する。
【0141】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、インドールのレベルを調節する。好ましい実施形態では、代謝産物は、キヌレニンである。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、トリプトファン代謝の主要経路であるキヌレニンを調節する。
【0142】
微生物叢-腸-脳軸のシグナル伝達は、神経化学的因子、神経ペプチド、及び神経伝達物質のレベルによって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経化学的因子、神経ペプチド、及び神経伝達物質のレベルを調節する。したがって、ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、CNS生化学を直接変える。
【0143】
微生物叢-腸-脳軸のシグナル伝達は、γ-アミノ酪酸(GABA)のレベルによって調節される。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、GABAレベルを調節する。GABAは、ニューロン興奮性を減少させる抑制性神経伝達物質である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、GABAレベルを増加させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、GABAレベルを減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、GABA作動性神経伝達を変更する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、中枢神経系の異なる領域におけるGABA転写レベルを調節する。ある特定の実施形態では、共生由来GABAは、血液脳関門を交差し、神経伝達に直接影響を与える。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、海馬、扁桃体及び/または青斑核におけるGABAの減少をもたらす。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、皮質領域におけるGABAの増加をもたらす。
【0144】
免疫応答
微生物叢-腸-脳軸のシグナル伝達は、免疫応答及び炎症性因子及びマーカーの変更によって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、免疫応答を調節し得る。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、循環神経免疫シグナル伝達分子の全身レベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、炎症性サイトカイン産生及び炎症を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症状態を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、IL-6産生及び分泌を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、NFκBプロモーターの活性化を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、強力な炎症誘発性エンドトキシンリポ多糖(LPS)によるIL-6産生の活性化を調節することができる
。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、LPS及びα-シヌクレイン変異タンパク質、例えば、A53TによるNFκBプロモーターの活性化を調節することができる。サイトカインの循環レベルの増加は、様々な神経変性障害、例えば、パーキンソン病、認知症及びアルツハイマー病に密接に関連する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の治療において、IL-6レベル及び/またはNFκBレベルの低減に使用される。
【0145】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、IL-8の分泌を増加させる。IL-8は、髄鞘形成を誘発し、有効なニューロン通信を回復または保存することが示されている。従って、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経変性疾患の治療において、髄鞘形成の誘発に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ニューロン通信の回復に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ニューロン通信の保存に使用される。
【0146】
微生物叢-腸-脳軸のシグナル伝達は、共生代謝産物のレベルによって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、微生物叢代謝産物の全身レベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、短鎖脂肪酸(SCFA)のレベルを調節する。ある特定の実施形態では、SCFAのレベルは、増加または減少する。いくつかの実施形態では、SCFAのレベルは、増加する。いくつかの実施形態では、SCFAは、酪酸(BA)(または酪酸)である。いくつかの実施形態では、SCFAは、プロピオン酸(PPA)である。いくつかの実施形態では、SCFAは、酢酸である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、SCFAが血液脳関門を交差する能力を調節する。
【0147】
ヒストンアセチル化及び脱アセチル化は、遺伝子発現の重要なエピジェネティック調節因子である。ヒストンアセチル化及び脱アセチル化の不均衡は、アポトーシスをもたらし得る。かかるヒストン脱アセチル化酵素の調節異常は、加齢による神経変性疾患に関連する病因、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び認知機能低下に関与していた[74]。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を調節することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を減少することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒストンアセチラーゼ活性を減少することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、クラス1ヒストン脱アセチル化酵素活性を減少することができる。
【0148】
神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病及び筋萎縮性側索硬化症を有する患者は、高レベルの脂質過酸化を示す。脂質は、活性酸素種による酸化に対して脆弱であり、脳は、多価不飽和脂肪酸が豊富である。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脂質過酸化を調節することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脂質過酸化を減少することができる。活性酸素種に起因する酸化的損傷の減少を使用して、早期の神経変性疾患を標的にすることができる。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、早期の神経変性の治療に使用される。また、したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の発症の予防に使用される。かかる実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害を発症するリスクがあると同定された患者に使用されてよい。
【0149】
微生物叢-腸-脳軸のシグナル伝達は、腸透過性のレベルによって調節される。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管上皮の完全性を変更する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管の透過性を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管の防御機能及び完全性を調節する。ある特定の実施
形態では、本発明の組成物は、胃腸管運動性を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管内腔から血流への共生代謝産物及び炎症性シグナル伝達分子の転座を調節する。
【0150】
微生物叢-腸-脳軸のシグナル伝達は、胃腸管中の微生物叢組成物によって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管の微生物叢組成物を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、毒性代謝産物(例えば、LPS)の微生物叢共生及び関連の増加を予防する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管中のClostridiumのレベルを調節する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管中のClostridiumのレベルを減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Campylobacter jejuniのレベルを減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、有害な嫌気性細菌の増殖、及びこれらの細菌によって産生された神経毒の産生を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Lactobacillus及び/またはBifidobacteriumの微生物叢レベルを調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Sutterella、Prevotella、Ruminococcus属及び/またはAlcaligenaceaeファミリーの微生物叢レベルを調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Lactobacillus plantarum及び/またはSaccharomyces boulardiiのレベルを増加させる。
【0151】
脳損傷
実施例は、本発明の組成物が、神経保護であり、HDAC阻害活性を有することを示している。HDAC2は、脳卒中からの機能回復の重要な標的であり[75]、HDAC阻害は、白質傷害を予防することができるため[76]、本発明の組成物は、脳損傷の治療に有用であり得る。
【0152】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、脳損傷は、外傷性脳損傷である。いくつかの実施形態では、脳損傷は、後天性脳損傷である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、外傷がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腫瘍がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳出血がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳炎がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳低酸素症がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳無酸素症がもたらす脳損傷の治療に使用される。
【0153】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の治療に使用される。実施例に示す効果は、脳卒中の治療に特に関連する。脳卒中は、脳の少なくとも一部への血流が遮断されると発生する。脳組織に酸素及び栄養素を提供し、脳組織から老廃物を除去するための血液の十分な供給がなくなると、脳細胞は、急速に死に始める。脳卒中の症状は、不十分な血流の影響を受ける脳の領域に依存する。症状には、麻痺、痺れまたは筋肉の衰弱、平衡感覚障害、眩暈、突然の激しい頭痛、発語障害、記憶喪、推論能力の喪失、突然の意識混濁、視力障害、昏睡または死さえが含まれる。脳卒中は、脳発作または脳血管障害(CVA)とも呼ばれる。十分な血流が短時間で回復すれば、脳卒中の症状は短い。しかしながら、不十分な血流がかなりの期間続くと、症状は永続的になり得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、脳卒中は、脳虚血である。脳虚血は、代謝要求を満たすための脳の組織への血流が不十分な場合に生じる。いくつかの実施形態では、脳虚血は、限局性脳虚血、すなわち、脳の特定領域に限局している。いくつかの実施形態では、脳虚血は
、広範囲の脳虚血、すなわち、脳組織の広域を包含している。局所脳虚血は、脳血管が部分的または完全に閉塞され、脳の特定領域への血流が低下している場合に概して生じる。いくつかの実施形態では、限局性脳虚血は、虚血性脳卒中である。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、血栓性、すなわち、脳血管で発症し、血流を制限または遮断する血栓または血餅に起因する。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、血栓性脳卒中である。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、塞栓性、すなわち、血流を介して移動し、その起点から離れた部位で血流を制限または遮断する塞栓または付着していない塊に起因する。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、塞栓性脳卒中である。広範囲の脳虚血は、脳全体への血流が遮断または減少している場合に概して生じる。いくつかの実施形態では、広範囲の脳虚血は、低灌流に起因する、すなわち、発作による。いくつかの実施形態では、広範囲の脳虚血は、心停止の結果である。
【0155】
いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳虚血を罹患しているを罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、限局性脳虚血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、虚血性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、血栓性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、塞栓性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、広範囲の脳虚血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、低灌流を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、心停止を罹患している。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳虚血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、限局性脳虚血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、虚血性脳卒中の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、血栓性脳卒中の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、塞栓性脳卒中の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、広範囲の脳虚血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、低灌流の治療に使用される。
【0157】
いくつかの実施形態では、脳卒中は、出血性脳卒中である。出血性脳卒中は、脳内または脳周囲の出血に起因し、脳の細胞及び組織への腫れ、圧力及び損傷をもたらす。出血性脳卒中は、概して、弱くなった血管が破裂し、脳周囲に出血した結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳内出血、すなわち、脳組織自体内の出血に起因する。いくつかの実施形態では、脳内出血は、実質内出血に起因する。いくつかの実施形態では、脳内出血は、脳室内出血に起因する。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、くも膜下出血、すなわち、脳組織の外で発生するが、まだ頭蓋内の出血である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳アミロイド血管症の結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳動脈瘤の結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳動静脈奇形(AVM)の結果である。
【0158】
いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、出血性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳内出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、実質内出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳室内出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、くも膜下出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳アミロイド血管症を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳動脈瘤を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳AVMを罹患している。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、出血性脳卒中の治療に使用される。いく
つかの実施形態では、本発明の組成物は、脳内出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、実質内出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳室内出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、くも膜下出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳アミロイド血管症の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳動脈瘤の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳AVMの治療に使用される。
【0160】
中断期間後の脳への十分な血流の回復は、脳卒中に関連する症状の軽減に有効であるが、逆説的に、脳組織へのさらなる損傷をもたらし得る。中断期間中、患部組織は、酸素及び栄養素の欠如に苦しみ、血流の突然の回復は、酸化ストレスの誘発を通じて、炎症及び酸化的損傷をもたらし得る。これは、再灌流障害として知られ、脳卒中の後だけでなく、心臓発作の後でも十分に立証されており、すなわち、虚血もしくは酸欠の期間後に血液供給が組織に戻る場合の他の組織損傷である。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳卒中がもたらす再灌流障害を罹患している。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中がもたらす再灌流障害の治療に使用される。
【0161】
一過性脳虚血発作(TIA)は、軽度の脳卒中としばしば呼ばれ、より重篤な脳卒中に対する認識された警告サインである。従って、1または2以上のTIAを罹患している対象は、脳卒中のリスクがより高い。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、TIAを罹患している。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、TIAの治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、TIAを罹患している対象における脳損傷の治療に使用される。
【0162】
高血圧、高血中コレステロール、脳卒中の家族歴、心臓病、糖尿病、脳動脈瘤、動静脈奇形、鎌状赤血球症、血管炎、出血障害、非ステロイド性抗炎症薬の使用(NSAID)、たばこの喫煙、大量のアルコール飲酒、違法薬物使用、肥満、身体活動不足、及び不健康な食事は全て、脳卒中のリスク因子であると考えられる。特に、血圧の低下が、虚血性及び出血性脳卒中の両方を予防することが決定的に示されている[77]、[78]。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の少なくとも1つのリスク因子を有する対象における脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の2つのリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の3つのリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の4つのリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の5つ以上のリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、高血圧を有する。いくつかの実施形態では、対象は、高血中コレステロールを有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の家族歴を有する。いくつかの実施形態では、対象は、心臓病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳動脈瘤を有する。いくつかの実施形態では、対象は、動静脈奇形を有する。いくつかの実施形態では、対象は、血管炎を有する。いくつかの実施形態では、対象は、鎌状赤血球症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、出血障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、非ステロイド性抗炎症薬の使用歴(NSAID)を有する。いくつかの実施形態では、対象は、たばこを喫煙する。いくつかの実施形態では、対象は、大量のアルコールを飲酒する。いくつかの実施形態では、対象は、違法薬物を使用する。いくつかの実施形態では、対象は、肥満である。いくつかの実施形態では、対象は、体重過剰である。いくつかの実施形態では、対象は、身体活動不足を有する。いくつかの実施形態では、対象は、不健康な食事を有する。
【0163】
実施例は、本発明の組成物が、脳損傷の治療、及び障害事象が発生する前に投与した場合に回復を助けるのに有用であり得ることを示す。従って、本発明の組成物は、脳損傷、例えば、脳卒中のリスクがある対象に投与した場合、脳損傷の治療に特に有用であり得る
【0164】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、潜在的な脳損傷、好ましくは、脳卒中に起因する損傷の低減に使用される。組成物は、潜在的な脳損傷が発生する前に投与した場合、特に、脳損傷のリスクがあると同定された患者に投与した場合に起因した損傷を低下させ得る。
【0165】
実施例は、本発明の組成物が、脳損傷の治療、及び障害事象が発生する前に投与した場合に回復を助けるのに有用であり得ることを示す。従って、本発明の組成物は、脳損傷、例えば、脳卒中の後に対象に投与した場合の脳損傷の治療に特に有用であり得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、運動障害の低減によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、運動機能の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、筋力の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、記憶の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、社会的認識の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経学的機能の改善によって脳損傷を治療する。
【0167】
脳損傷の治療は、例えば、症状の重篤度の軽減を指し得る。また、脳損傷の治療は、脳卒中の後の神経学的障害の低減を指し得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、例えば、脳卒中のリスクがあると同定された患者において、脳卒中の発症に先立って対象に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、脳卒中が発生した後、例えば、回復中に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、回復の急性期(すなわち、脳卒中後の1週間まで)中に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、回復の亜急性期(すなわち、脳卒中後の1週間から3ヵ月まで)中に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、回復の慢性期(脳卒中後の3ヵ月から)中に提供され得る。
【0168】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、二次的作用物質と併用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、アスピリンまたは組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)と併用される。他の二次的作用物質には、他の抗血小板物質(例えば、クロピドグレル)、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ワルファリン、アピキサバン、ダビガトラン、エドキサバンまたはリバロキサバン)、抗高血圧薬(例えば、利尿薬、ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬またはアルファ遮断薬)またはスタチンが含まれる。本発明の組成物は、二次的作用物質に対する患者の反応を改善し得る。
【0169】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、組織に対する虚血の影響を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血に起因する組織に対する損傷の量を減少させる。ある特定の実施形態では、虚血によって損傷した組織は、脳組織である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死または壊死細胞数を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、アポトーシスまたはアポトーシス細胞数を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死及びアポトーシス細胞の数を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死及び/またはアポトーシスによる細胞死を予防する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血に起因する壊死及び/またはアポトーシスによる細胞死を予防する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血によって損傷した組織の回復を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死細胞及び/またはアポトーシス細胞のクリアランスの速度を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死細胞及び/またはアポトーシス細胞のクリアランスの有効性を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、組
織内の細胞の置換及び/または再生を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血によって損傷した組織内の細胞の交換及び/または再生を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、(例えば、生検時に)組織の全体組織構造を改善する。
【0170】
投与の形態
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にするために胃腸管に投与されるべきである。概して、本発明の組成物は、経口で投与されるが、これらは、経直腸的に、鼻腔内に、または頬側もしくは舌下経路を介して投与されてよい。いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の株及び有機酸を含む。いくつかの実施形態では、有機酸及び共生細菌株の別々の組成物が提供される。
【0171】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、泡として、スプレーまたはゲルとして投与されてよい。
【0172】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、坐薬、例えば、肛門坐薬として、例えば、カカオ脂(ココアバター)、合成硬質脂肪(例えば、坐剤用基材、ウィテップゾール)、グリセロ-ゼラチン、ポリエチレングリコール、または石鹸グリセリン組成物の形態で投与されてよい。
【0173】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、チューブ、例えば、鼻腔栄養チューブ、経口胃チューブ、胃チューブ、経空腸チューブ(Jチューブ)、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)、またはポート、例えば、胃、空腸及び他の好適なアクセスポートへのアクセスを付与する胸壁ポートを介して胃腸管に投与される。
【0174】
本発明の組成物は、一度で投与されてよく、または治療レジメンの部分として逐次的に投与されてよい。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、連日投与されるべきである。
【0175】
本発明のある特定の実施形態では、本発明による治療は、患者の腸内微生物叢のアセスメントを伴う。治療は、本発明の株の送達及び/またはそれによる部分的もしくは全体的定着が達成されず、その結果、効能が観察されないことになるとき、繰り返されてよく、あるいは、治療は、送達及び/または部分的もしくは全体的定着が成功裏でありかつ効能が観察されるときに中止されてよい。
【0176】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、妊娠した動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトに、その子宮内の胎児及び/または生まれた後の小児において発症する炎症性または自己免疫疾患を予防するために投与されてよい。
【0177】
本発明の組成物は、神経変性疾患と診断された、あるいは神経変性疾患のリスクがあると同定された患者に投与されてよい。組成物は、健常な患者における神経変性疾患の発症を予防するための予防対策として投与されてもよい。
【0178】
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると同定されている患者に投与されてよい。例えば、患者は、Megasphaera、特に、Megasphaera massiliensisによる定着が縮小しているか、または定着がないかであり得る。
【0179】
本発明の細菌を含む組成物は、食品、例えば栄養補助食品として投与されてよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、有機酸の薬学的に許容可能な塩またはエステルを含む組成物は、静脈内に投与されてよい。いくつかの実施形態では、有機酸は、凍結乾燥され、経口投与される。
【0181】
いくつかの実施形態では、共生細菌株を含む組成物、及び有機酸を含む組成物は、同時、別々、または逐次に投与すべきである。異なる組成物の各々は、本明細書に記載されている投与形態の任意の組み合わせによって投与されてよい。概して、本発明の組成物は、ヒトの治療のためのものであるが、単胃哺乳動物、例えば、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマまたはウサギを含めた動物を治療するのに使用されてよい。本発明の組成物は、動物の成長及びパフォーマンスを向上させるのに有用であり得る。動物に投与されるとき、経口胃管栄養法が使用されてよい。
【0182】
組成物
概して、本発明の組成物は、細菌を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、有機酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルをさらに含む。本発明の好ましい実施形態では、組成物は、凍結乾燥形態で調合される。例えば、本発明の組成物は、本発明の細菌株及び/または本発明の有機酸を含む顆粒またはゼラチンカプセル、例えば、硬質ゼラチンカプセルを含んでいてよい。いくつかの実施形態では、本発明の有機酸及び本発明の細菌は、別々の組成物として調合される。いくつかの実施形態では、別々の組成物の各々は、凍結乾燥形態で調合される。本発明の組成物の製剤の一般的なガイダンスは、例えば、Aulton’s Pharmaceutics:The Design and Manufacture of Medicinesに見出すことができる。
【0183】
好ましくは、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含む。細菌の凍結乾燥は、確立された手順であり、関連のガイダンスは、例えば、参照文献[79]、[]、[81]において入手可能である。
【0184】
あるいは、本発明の組成物は、生きている、活性な細菌培養物を含んでいてよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、不活性化されていない、例えば、熱不活性化されていない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、例えば、熱殺傷されていない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、弱毒化されていない、例えば、熱弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、不活性化されていない及び/または弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、生きている。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、生存している。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
【0186】
いくつかの実施形態では、組成物は、生きている細菌株と殺傷されている細菌株との混合物を含む。
【0187】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、腸への細菌株及び/または有機酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの送達を可能にするようにカプセル化されている。カプセル化は、目標箇所に送達するまで、例えば、pHの変化によって引き起こされる場合がある化学的または物理的刺激、例えば、圧力、酵素活性または物理的崩壊による破断を通しての劣化から組成物を保護する。いずれの適切なカプセル化方法が使用されてもよい。例示的なカプセル化技術として、多孔質マトリクス内への取り込み、固体担体表
面への付着または吸着、凝集によるまたは架橋剤を用いた自己会合、及び微多孔膜またはマイクロカプセルの後の機械的拘束が挙げられる。本発明の組成物を調製するのに有用であり得るカプセル化についてのガイダンスは、例えば、参照文献[82]及び[83]において入手可能である。
【0188】
組成物は、経口で投与されてよく、錠剤、カプセルまたは粉末の形態であってよい。カプセル化された製品が好ましい、なぜなら、Megasphaeraが嫌気性生物であるからである。他の成分(例えば、ビタミンCなど)が、インビボでの送達及び/または部分的もしくは全体的定着並びに生存を改善するように脱酸素剤及びプレバイオティック基質として含まれていてよい。あるいは、本発明のプロバイオティック組成物は、食品もしくは栄養製品、例えば、ミルクもしくはホエイベースの発酵乳製品として、または医薬製品として経口で投与されてよい。
【0189】
組成物は、プロバイオティックとして調合されてよい。
【0190】
本発明の組成物は、治療有効量の本発明の細菌株及び/または治療有効量の本発明の有機酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む。治療有効量の細菌株及び/または本発明の有機酸は、患者への有益な効果を発揮するのに十分である。治療有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/または部分的もしくは全体的定着を結果として生じさせるのに十分であり得る。
【0191】
例えば、ヒト成人への細菌の好適な1日量は、約1×10~約1×1011個のコロニー形成単位(CFU);例えば、約1×10~約1×1010CFU;別の例において、約1×10~約1×1010CFUであってよい。
【0192】
ある特定の実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して約1×10~約1×1011CFU/g;例えば約1×10~約1×1010CFU/gの量で細菌株を含有する。用量は、例えば、1g、3g、5g及び10gであってよい。
【0193】
典型的には、プロバイオティック、例えば本発明の組成物は、少なくとも1つの好適なプレバイオティック化合物と任意選択的に組み合わされる。プレバイオティック化合物は、通常、上部消化管において分解または吸収されない、非消化性炭水化物、例えば、オリゴ-もしくは多糖、または糖アルコールである。公知のプレバイオティクスとして、市販品、例えば、イヌリン及びトランスガラクト-オリゴ糖が挙げられる。
【0194】
ある特定の実施形態では、本発明のプロバイオティック組成物は、組成物の合計重量に対して約1~約30重量%(例えば、5~20重量%)の量でプレバイオティック化合物を含む。炭水化物は、フラクト-オリゴ糖(またはFOS)、短鎖フラクト-オリゴ糖、インスリン、イソマルト-オリゴ糖、ペクチン、キシロ-オリゴ糖(またはXOS)、キトサン-オリゴ糖(またはCOS)、β-グルカン、アラビアガム変性及び耐性デンプン、ポリデキストロース、D-タガトース、アカシアファイバ、イナゴマメ、オート麦、並びにシトラスファイバからなる群から選択されてよい。一態様では、プレバイオティクスは、短鎖フラクト-オリゴ糖(簡潔のために、以下本明細書においてFOSs-c.cと示す)であり;前記FOSs-c.c.は消化性炭水化物ではなく、テンサイ糖の転換によって一般に得られ、3つのグルコース分子が結合しているサッカロース分子を含んでいる。
【0195】
いくつかの実施形態では、有機酸は、凍結乾燥されているその塩またはエステルとして提供される。凍結乾燥されている有機酸生成物は、単一剤形で調合されてよい。凍結乾燥されている有機酸は、反復剤形で調合されてよい。凍結乾燥されている有機酸生成物は、
単一剤形で、凍結乾燥されている細菌と共に調合されてよい。あるいは、有機酸生成物は、反復剤形で、凍結乾燥されている細菌と共に調合されてよい。
【0196】
いくつかの実施形態では、有機酸生成物は、「徐放型」または「即時放出型」組成物として調合されてよい。「徐放型」組成物は、有機酸生成物の血清血漿濃度の初期増加は比較的小さいが、より持続した効果を有し、有機酸血漿のレベルの上昇が長く残る。対照的に、「即時放出型」組成物は、有機酸生成物の高い初期用量をもたらすように調合され、より高い初期血漿濃度をもたらすが、効果の継続期間は短い。
【0197】
いくつかの実施形態では、有機酸は、静脈内に投与される。例えば、有機酸は、バルプロ酸ナトリウムであってよく、20mg/分以下の速度で、60分注入で対象に投与されてよい。有機酸またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの典型的な1日用量は、対象の物理的特性、組成物の投与経路、及び/または効果の所望の継続期間に応じて変わるであろう。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の治療または予防のための別の治療用化合物と併用される。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経保護または神経増殖を調節する栄養補助食品と共に投与される。好ましい実施形態では、栄養補助食品は、栄養ビタミン類を含むかまたはそれらからなる。ある特定の実施形態では、ビタミン類は、ビタミンB6、マグネシウム、ジメチルグリシン(ビタミンB16)、及びビタミンCである。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、別のプロバイオティックと組み合わせて投与される。
【0199】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性疾患に対する第2剤の効果の増強に使用される。本発明の組成物の免疫調節効果は、従来の治療、例えば、レボドパ、ドーパミン作動薬、MAO-B阻害剤、COMT阻害剤、グルタミン酸拮抗薬、または抗コリン薬(これらは、本発明の組成物と組み合わせて(逐次または同時に)投与される例示の二次的作用物質である)の影響を脳により受けやすくさせ得る。
【0200】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含んでいてよい。かかる好適な賦形剤の例は、参照文献[84]において見出され得る。治療的使用のための許容可能な担体または希釈剤は、薬剤分野において周知されており、例えば、参照文献[85]において記載されている。好適な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準の薬務に関して選択され得る。医薬組成物は、上記担体、賦形剤または希釈剤として、またはこれに加えて、いずれの好適な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)を含んでいてもよい。好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β-ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成ガム、例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース並びにポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤、安定剤、染料、及びさらなる香味剤が、医薬組成物において付与されていてよい。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、システイン、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。酸化防止剤及び懸濁剤が使用されてもよい。
【0201】
本発明の組成物は、食品として調合されてよい。例えば、食品は、例えば、栄養補助食
品において、本発明の治療効果に加えて、栄養的利益を付与してよい。同様に、食品は、本発明の組成物の風味を向上するように、または組成物を、医薬組成物よりもむしろ、一般食料とより類似することによって、消費するのにより魅力的であるようにするように調合されてよい。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として調合される。用語「ミルクベースの製品」は、変動する脂肪分を有する、いずれの液体または半固体のミルク-またはホエイベースの製品も意味する。ミルクベースの製品は、例えば、ウシのミルク、ヤギのミルク、ヒツジのミルク、スキムミルク、ホールミルク、いずれの処理もしていない粉ミルク及びホエイからの還元ミルク、または加工品、例えば、ヨーグルト、凝固したミルク、カード、酸乳、酸全乳、バターミルク及び他の酸乳製品であり得る。別の重要な群としては、ミルク飲料、例えば、ホエイ飲料、発酵乳、コンデンスミルク、乳幼児ミルク;フレーバーミルク、アイスクリーム;ミルク含有食品、例えば、スイーツが挙げられる。
【0202】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Megasphaera属の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の属からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の属からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Megasphaeraの1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の属からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の属からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0203】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Megasphaera massiliensis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Megasphaera massiliensis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0204】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Megasphaera massiliensis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のMegasphaera種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のMegasphaera種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Megasphaera massiliensis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のMegasphaera種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のMegasphaera種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0205】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、単一細菌株または種を含有し、いずれの他の細菌株または種を含有しない。かかる組成物は、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の他の細菌株または種を含んでいてよい。かかる組成物は、他の生物種を実質的に含まない培養であってもよい。
【0206】
いくつかの実施形態では、本発明は、Megasphaera属の単一細菌株を含み、いずれの他の株からの細菌を含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の株からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0207】
いくつかの実施形態では、本発明は、Megasphaera massiliensis種の単一細菌株を含み、いずれの他の株からの細菌を含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の株からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0208】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1を超える細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同種内からの1を超える株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40または45を超える株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同種内からの50未満の株(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3未満の株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同種内からの1~40、1~30、1~20、1~19、1~18、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、または31~50株を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。本発明は、上記のいずれの組み合わせも含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、組成物は、微生物コンソーシアム(consortium)を含む。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、微生物コンソーシアムの一部としてMegasphaer共生細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Megasphaer共生細菌株は、腸においてインビボで共生的に生きることができる、他の属からの1または2以上の(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15または20の)他の細菌株と組み合わせて存在する。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、異なる属からの細菌株と組み合わせた本発明のMegasphaeraの共生細菌株を含む。いくつかの実施形態では、微生物コンソーシアムは、単一の生物、例えば、ヒトの糞便試料から得られた2以上の細菌株を含む。いくつかの実施形態では、微生物コンソーシアムは、本来は一緒には見られない。例えば、いくつかの実施形態では、微生物コンソーシアムは、少なくとも2の異なる生物の糞便試料から得られた細菌株を含む。いくつかの実施形態では、2の異なる生物は、同種、例えば、2の異なるヒトからのものである。いくつかの実施形態では、2の異なる生物は、ヒト乳児及びヒト成人である。いくつかの実施形態では、2の異なる生物は、ヒト及び非ヒト哺乳動物である。
【0210】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、株MRX0029と同じ安全性及び治療効果特性を有するが、MRX0029ではない、またはMegasphaera massiliensisでもない細菌株をさらに含む。
【0211】
本発明の組成物が1を超える細菌株、種または属を含むいくつかの実施形態では、個々の細菌株、種または属は、別々、同時または逐次投与用であってよい。例えば、組成物は、1を超える細菌株、種もしくは属の全てを含んでいてよく、または細菌株、種もしくは属は、別々に貯蔵されてよく、また、別々に、同時にもしくは逐次的に投与されてよい。いくつかの実施形態では、1を超える細菌株、種または属は、別々に貯蔵されているが、使用前に一緒に混合される。
【0212】
いくつかの実施形態では、本発明において使用される細菌株は、ヒト成人の糞便から得られる。本発明の組成物が1を超える細菌株を含むいくつかの実施形態では、細菌株の全てがヒト成人の糞便から得られ、または、他の細菌株が存在するとき、ほんの僅少な量でのみ存在する。細菌は、ヒト成人の糞便から得られ、本発明の組成物において使用された後に培養されてよい。
【0213】
上述のように、いくつかの実施形態では、1または2以上のMegasphaer共生細菌株は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。いくつかの実施形態では、組成物における細菌株(複数可)は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。
【0214】
本発明による使用のための組成物は、販売承認を必要としてもしなくてもよい。
【0215】
ある特定の実施形態では、本発明は、前記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、前記細菌株が噴霧乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生きている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存しており、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存しており、かつ腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。
【0216】
いくつかの場合では、凍結乾燥されている細菌株は、投与前に再構成される。いくつかの場合では、再構成は、本明細書に記載されている希釈剤の使用による。
【0217】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を含んでいてよい。
【0218】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株;及び薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物であって、細菌株が、それを必要とする対象に投与した場合、神経変性障害の治療に十分な量である、医薬組成物を提供する。
【0219】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株;及び薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物であって、細菌株が、神経変性障害の治療または予防に十分な量である、医薬組成物を提供する。
【0220】
ある特定の実施形態では、本発明は、上記医薬組成物であって、細菌株の量が、組成物の重量に対してグラム当たり約1×10~約1×1011個のコロニー形成単位である、上記医薬組成物を提供する。
【0221】
ある特定の実施形態では、本発明は、1g、3g、5gまたは10gの用量で投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0222】
ある特定の実施形態では、本発明は、経口、直腸、皮下、鼻、頬側、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0223】
ある特定の実施形態では、本発明は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0224】
ある特定の実施形態では、本発明は、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0225】
ある特定の実施形態では、本発明は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β-ラクトース、コーンシロップ、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0226】
ある特定の実施形態では、本発明は、防腐剤、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む、上記医薬組成物を提供する。
【0227】
ある特定の実施形態では、本発明は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される防腐剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0228】
ある特定の実施形態では、本発明は、上記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。
【0229】
ある特定の実施形態では、本発明は、組成物が約4℃または約25℃で密閉容器に貯蔵されて容器が50%の相対湿度を有する雰囲気に置かれているとき、コロニー形成単位で測定される細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年の期間の後に残存している、上記医薬組成物を提供する。
【0230】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含む密閉容器において提供される。いくつかの実施形態では、密閉容器は、サチェまたはボトルである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含むシリンジにおいて提供される。
【0231】
本発明の組成物は、いくつかの実施形態では、医薬製剤として提供されてよい。例えば、組成物は、錠剤またはカプセルとして提供されてよい。いくつかの実施形態では、カプセルは、ゼラチンカプセル(「gel-cap」)である。
【0232】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、経口投与される。経口投与は、嚥下を含んでいてよく、その結果、化合物が、胃腸管に入ることになり、及び/または頬側、舌側、もしくは舌下投与によって化合物が口から直接血流に入ることになる。
【0233】
経口投与に好適な医薬製剤としては、固体プラグ、固体微粒子状物、半固体及び液体(多相及び分散系を含む)、例えば、錠剤;多-またはナノ-粒子状物を含有する軟質または硬質カプセル、液体(例えば、水溶液)、エマルジョンまたは粉末;ロゼンジ(液体が充填されたものを含む);咀嚼剤;ゲル;急速分散剤形;フィルム;膣坐剤;スプレー;並びに頬側/粘膜接着パッチが挙げられる。
【0234】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による腸への本発明の組成物の送達に好適である胃耐性製剤(例えば、胃のpHに耐性)である。腸溶性製剤は、組成物の細菌または別の成分が酸感受性である、例えば、胃条件下で分解しやすいとき、特に有用であり得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、腸溶性コーティングされた剤形である。例えば、製剤は、腸溶性コーティングされた錠剤または腸溶性コーティングされたカプセルなどであってよい。腸溶性コーティングは、経口送達のための従来の腸溶性コーティング、例えば、錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってよい。製剤は、フィルムコーティング、例えば、腸溶性ポリマー、例えば、酸不溶性ポリマーの薄膜層を含んでいてよい。
【0236】
いくつかの実施形態では、腸溶性製剤は、本質的に腸溶性であり、例えば、腸溶性コーティングを必要としない胃耐性である。そのため、いくつかの実施形態では、製剤は、腸
溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態では、熱ゲル化材料は、セルロース系材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。いくつかの実施形態では、カプセルは、いずれのフィルム形成ポリマーも含有しないシェルを含む。いくつかの実施形態では、カプセルは、シェルを含み、シェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、いずれのフィルム形成ポリマーも含まない(例えば、[86]を参照されたい)。いくつかの実施形態では、製剤は、本質的に腸溶性のカプセル(例えば、Capsugel製Vcaps(登録商標))である。
【0237】
いくつかの実施形態では、製剤は、軟質カプセルである。軟質カプセルは、カプセルシェルに存在する軟化剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールなどの添加のおかげで、ある特定の弾性及び柔軟性を有し得るカプセルである。軟質カプセルは、例えば、ゼラチンまたはデンプンベースで製造され得る。ゼラチンベースの軟質カプセルは、様々な供給者から市販されている。例えば、経口または経直腸などの投与方法に応じて、軟質カプセルは、様々な形状を有することができ、例えば、円形、楕円形、長方形または魚雷型であり得る。軟質カプセルは、従来のプロセス、例えば、Schererプロセス、Accogelプロセスまたは液滴もしくは発泡プロセスなどによって製造され得る。
【0238】
培養方法
本発明において使用される細菌株は、例えば、参照文献[87]、[]及び[89]に詳述されている標準の微生物学的技術を使用して培養され得る。
【0239】
培養に使用される固体または液体培地は、YCFA寒天またはYCFA培地であってよい。YCFA培地として(100ml当たりの近似値):Casitone(1.0g)、酵母エキス(0.25g)、NaHCO(0.4g)、システイン(0.1g)、KHPO(0.045g)、KHPO(0.045g)、NaCl(0.09g)、(NHSO(0.09g)、MgSO・7HO(0.009g)、CaCl(0.009g)、レザズリン(0.1mg)、ヘミン(1mg)、ビオチン(1μg)、コバラミン(1μg)、p-アミノ安息香酸(3μg)、葉酸(5μg)、及びピリドキサミン(15μg)を挙げることができる。
【0240】
ワクチン組成物に使用される細菌株
本発明者らは、本発明の細菌株が、神経変性障害の治療または予防に有用であることを確認した。これは、本発明の細菌株が宿主免疫系に対して有する効果の結果である可能性が高い。従って、本発明の組成物は、ワクチン組成物として投与した場合、神経変性障害の予防にも有用であり得る。ある特定のかかる実施形態では、本発明の細菌株は、殺傷、不活性化、または弱毒化されてよい。ある特定のかかる実施形態では、組成物は、ワクチンアジュバントを含んでよい。ある特定の実施形態では、組成物は、注射を介して、例えば、皮下注射を介して投与される。
【0241】
総則
本発明の実施は、別途示さない限り、当業者の範囲内の、化学、生化学、分子生物、免疫学及び薬理学の従来の方法を用いる。かかる技術は、文献において完全に説明されている。例えば、参照文献[90]及び[91、97]などを参照されたい。
【0242】
用語「comprising(含む)」は、「including(含む)」及び「consisting(からなる)」を包含し、例えば、組成物がXを「comprising(含む)」は、Xから排他的になってもよく、またはさらなる何か、例えば、X+Y
を含んでいてもよい。
【0243】
数値xに関係する用語「約」は、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
【0244】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
【0245】
2つのヌクレオチド配列間の百分率の配列同一性への言及は、整列している場合、ヌクレオチドの百分率が、2つの配列を比較したときに同じであることを意味する。このアラインメント及びパーセント相同性または配列同一性は、当該技術分野において公知のソフトウエアプログラム、例えば、参照文献[98]のセクション7.7.18に記載されているものを使用して決定され得る。好ましいアラインメントは、12のギャップオープンペナルティ及び2のギャップエクステンションペナルティ、62のBLOSUMマトリクスによるアフィンギャップ検索を使用してSmith-Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、参照文献[99]に開示されている。
【0246】
特に記述されていない限り、多数のステップを含むプロセスまたは方法は、方法の開始及び終了時にさらなるステップを含んでいてよく、またはさらなる介在するステップを含んでいてよい。また、ステップは、適切な場合、組み合わされ、省略され、または代替の順序で実施されてよい。
【0247】
本発明の様々な実施形態は本明細書に記載されている。各実施形態では特定されている特徴は、他の特定されている特徴と組み合わされて、さらなる実施形態を付与してよいことが理解されよう。特に、好適な、典型的なまたは好ましいとして本明細書において強調されている実施形態は、互いに組み合わされてよい(これらが互いに排他的であるときを除く)。
【実施例0248】
本発明を実施するための形態
実施例1-細菌接種が神経保護物質として作用する効能
概要
神経芽腫細胞を、本発明による細菌株を含む組成物で処置した。使用したSH-SY5Y神経芽腫細胞は、ドーパミン産生であり、神経変性疾患を研究するためのインビトロモデルとして確立されている。細菌株が神経増殖を増加させる能力が観察された。神経芽腫細胞を、神経芽腫細胞におけるパーキンソン病の永続的症状を誘発するドーパミン作動性神経毒1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP)で処理した。細菌株がMPPに対する神経保護物質として作用する能力を調査した。
【0249】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029;Parabacteroides distasonis MRX0005
【0250】
細胞株
SH-SY5Y神経芽腫細胞は、ECCACC(カタログ番号94030304)から購入し、栄養混合物F-12ハム(Sigma Aldrich、カタログ番号N4888)を補充したMEM(Sigma Aldrich、カタログ番号M2279)中で増殖させた。
【0251】
方法
増殖させた後、SH-SY5Y神経芽腫細胞を、11,000個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、2日間インキュベートした。その後、細胞を分化培地(FBSを1%で含有)及び10uMのレチノイン酸(Sigma Aldrich、カタログ番号R2625-100MG)に移した。分化培地を一日おきに交換し、細胞を分化7日目に収穫した。細胞を、MPP(Sigma Aldrich、カタログ番号D048-1G)の有無に依らず、8時間前処理した。その後、細胞を10%の細菌上清で処理し、一晩インキュベートした。細胞生存率は、CCK-8試薬(Sigma Aldrich、細胞計数キット-8、カタログ番号96992-3000TESTS-F)を用いて測定し、450nm波長で読み取った。
【0252】
結果
これらの実験の結果を図1に示す。MRX0029またはMRX0005による神経芽腫細胞の処置は、ニューロン増殖の増加をもたらした。細菌株と一緒にMPPで処置した神経芽腫細胞は、MPPのみで処置した細胞(生存率を減少させた)と比較して、細胞生存率を増加させた。保護効果は、MRX0029処置細胞が大きく、Quercetinで処置した陽性対照細胞よりも多くの生存をレスキューした。これらのデータは、細菌株が神経保護物質として作用し得ることを示す。
【0253】
実施例2a-細菌接種原がIL-6分泌を減少させる効能。
概要
炎症性サイトカインの活性化は、神経変性疾患におけるニューロン損傷に関連していた。リポ多糖(LPS)は、炎症性サイトカインIL-6の公知の刺激因子である。ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、LPSと組み合わせて、本発明による細菌株を含む組成物で処理し、IL-6のレベルを調節するそれらの能力を観察した。
【0254】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029;Parabacteroides distasonis MRX0005
【0255】
細胞株
MG U373は、悪性腫瘍由来のヒト膠芽腫星状細胞腫であり、Sigma-Aldrich(カタログ番号08061901-1VL)から購入した。MG U373ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL-Glut、1×MEM非必須アミノ酸溶液、及び1×ピルビン酸ナトリウムを補充したMEM(Sigma Aldrich、カタログ番号M-2279)中で増殖させた。
【0256】
方法
増殖させた後、MG U373細胞を、100,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種した。細胞を、LPS(1ug/mL)のみまたはMRX0029もしくはMRX0005からの10%の細菌上清で、24時間処理した。細胞を未処置培地でインキュベートした対照でも行った。その後、無細胞上清を回収し、4℃にて3分間、10,000gで遠心分離した。IL-6は、製造者の指示に従って、Peprotech製のヒトIL-6 ELISAキット(カタログ番号900-K16)を用いて測定した。
【0257】
結果
これらの実験の結果を図2に示す。LPS及び細菌株による神経芽腫細胞の処置は、IL-6の分泌レベルの減少をもたらした。
【0258】
実施例2b-細菌接種原がIL-8分泌を調節する効能。
概要
神経炎症は、神経変性疾患に極めて重要な役割を果たし、かつ、IL-8は、神経肯定的効果を有することが示されているため、本発明の細菌株及びLPSを含む組成物の、IL-8の活性化に対する効果を評価した。ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、LPSと組み合わせて、本発明による細菌株を含む組成物で処理し、IL-8のレベルを調節するそれらの能力を観察した。
【0259】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029;Parabacteroides distasonis MRX0005
【0260】
細胞株
MG U373は、悪性腫瘍由来のヒト膠芽腫星状細胞腫であり、Sigma-Aldrich(カタログ番号08061901-1VL)から購入した。MG U373ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL-Glut、1×MEM非必須アミノ酸溶液、及び1×ピルビン酸ナトリウムを補充したMEM(Sigma Aldrich、カタログ番号M-2279)中で増殖させた。
【0261】
方法
増殖させた後、MG U373細胞を、100,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種した。細胞を、LPS(1ug/mL)のみ、またはMRX0029由来の10%の細菌上清で24時間処理した。その後、無細胞上清を回収し、4℃にて3分間、10,000gで遠心分離した。IL-8は、製造者の指示に従って、Peprotech製のヒトIL-8 ELISAキット(カタログ番号900-K18)を用いて測定した。
【0262】
結果
これらの実験の結果を図3に示す。細菌株による神経芽腫細胞の処置は、LPSの存在に関係なく、IL-8分泌の増加をもたらす。
【0263】
実施例2C-細菌接種原がα-シヌクレイン誘発炎症を減少させる効能。
概要
神経炎症は、パーキンソン病に極めて重要な役割を果たし、及びα-シヌクレインは、神経炎症をインビボで誘発することが示されている。従って、本発明の細菌株がα-シヌクレイン誘発神経炎症を阻害する能力を評価した。ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞及び神経芽腫細胞の共培養を、野生型α-シヌクレイン、並びに変異体アイソフォームE46K及びA53Tに暴露し、本発明による細菌株を含む組成物で処置した。その後、細菌株がIL-6のα-シヌクレイン誘発分泌を阻害する能力を試験した。
【0264】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029;Parabacteroides distasonis MRX0005
【0265】
細胞株
MG U373は、悪性腫瘍由来のヒト膠芽腫星状細胞腫であり、Sigma-Aldrich(カタログ番号08061901-1VL)から購入した。MG U373ヒト
膠芽腫星状細胞腫細胞を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL-Glut、1×MEM非必須アミノ酸溶液、及び1×ピルビン酸ナトリウムを補充したMEM(Sigma Aldrich、カタログ番号M-2279)中で増殖させた。
【0266】
SH-SY5Yは、悪性神経芽細胞腫由来のヒト神経芽腫細胞株であり、Sigma-Aldrich(カタログ番号94030304-1VL)から購入することができる。細胞を、2mMのL-Glutアミン、10%の熱不活性化FBS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを補充した50%のMEM及び50%の栄養混合物F-12ハム培地中で増殖させた。増殖培地の細胞を、11,000個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、インキュベーターに置いた。2日後、培地を分化培地(1%のFBSを含有する増殖培地)及び10μMのレチノイン酸に交換した。分化培地を一日おきに交換し、細胞を、分化7日後に使用した。
【0267】
方法
SHSY5Y細胞を、50,000個の細胞/ウェルの密度で12ウェルプレートに播種した。細胞を、2mMのL-Glutアミン、10%の熱不活性化FBS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを補充した50%のMEM及び50%の栄養混合物F-12ハム培地中で増殖させた。増殖培地の細胞を、11,000個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、インキュベーターに置いた。2日後、培地を分化培地(1%のFBSを含有する増殖培地)及び10μMのレチノイン酸に交換した。分化培地を一日おきに交換し、細胞を、分化7日後に使用した。U373を、50,000個の細胞/ウェルの密度で12トランスウェルプレート(0.4μmのポリエステル膜、Costar)に72時間播種した。細胞を24時間一緒に共培養した後、分化培地(レチノイン酸無しの1%のFBSを含有する増殖培地)で処理した。
【0268】
その後、細胞を、10%の細菌上清の存在下または不在下で、25μg/mlのα-シヌクレイン(Wt、A53T、E46K)で48時間処理した。無細胞上清を回収し、4℃にて3分間、10,000gでスピンダウンし、アリコート化し、-80℃で保存した。ヒトIL-6及びIL-8は、上述のように測定した。
【0269】
結果
これらの実験の結果を図4に示す。野生型α-シヌクレイン並びに変異体アイソフォームE46K及びA53Tによる細胞の処置は、IL-6の適度な分泌を誘発した(図4A)。IL-6のα-syn誘発分泌は、細菌株で処置した細胞で阻害された(図4A)。IL-6分泌の減少は、MRX0029の投与で最も大きかった。
【0270】
実施例3-細菌接種原がNFκB活性化を減少させる効能
概要
NFκBプロモーターの活性化は、IL-1β、IL-1α、IL-18、TNFα及びIL-6を含む炎症性サイトカインの産生をもたらす。NFκBプロモーターは、TLR4リガンドを刺激することで、α-シヌクレイン及びLPSによって活性化することができる。α-シヌクレインの突然変異、例えば、α-シヌクレインA53Tは、家族性パーキンソンに関与している。LPSによる神経細胞の処置は、環境因子に起因するパーキンソン病を模擬する。本発明による細菌株を含む組成物がNFκBプロモーターの活性化を阻害する能力を調査した。
【0271】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029
【0272】
細胞株
ヒトHekブルーTLR4は、InvivoGen(カタログ番号hkb-htlr4)から購入した。ヒトHekブルーTLR4を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL-Glut、ノルモシン及び1×HEKブルー選択溶液を補充したDMEM高グルコース(Sigma Aldrich、カタログ番号D-6171)中で増殖させた。
【0273】
方法
増殖させた後、ヒトHekブルー細胞を、25,000個の細胞/ウェルで4連で96ウェルプレートに播種した。一組の細胞を、α-シヌクレインA53T(1ug/mL)のみ、またはMRX0029由来の10%の細菌上清と共に22時間処理した。第2組の細胞を、LPS(10ng/mL、Salmonella enterica血清型Typhimurium由来、Sigma Aldrich、カタログ番号L6143)のみ、またはMR029由来の10%の細菌上清と共に22時間処理した。その後、細胞をスピンダウンし、20ulの上清を200ulのQuanti Blue試薬(InvivoGen、カタログ番号rep-qb2)と混合し、2時間インキュベートし、吸光度を655nmで読み取った。
【0274】
結果
これらの実験の結果を図5及び6に示す。図5は、α-シヌクレインによるNFκBプロモーターの活性化が、MRX0029によって阻害されないことを示す。図6は、LPSによるNFκBプロモーターの活性化が、MRX0029によって阻害されることを示す。
【0275】
実施例4-細菌が神経突起伸長を変更する効能
概要
神経突起伸長は、ニューロン間の接続の発達に重要なプロセスである。従って、細菌株及び有機酸が神経突起伸長を誘導する能力は、微小管関連タンパク質MAP2、即ち特異的な神経分化マーカーの転写レベルを測定することによって試験した。
【0276】
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029.
【0277】
方法
SHSY5Yを、10cmのペトリ皿に、2×10個の細胞の密度で播種した。24時間後、細胞を、10%の細菌上清またはYCFA+、10uMのRA、200uMのヘキサン酸または200uMのバルプロ酸を有する分化培地(RA無しで1%のFBSを含有する増殖培地)で17時間処理した。その後、代表的な画像を、位相差EVOS XLコア顕微鏡を用いて、40×/0.65の倍率で撮影した。細胞を回収し、総RNAを、RNeasyミニキットプロトコル(Qiagen)に従って単離した。cDNAは、高容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を用いて作製した。遺伝子発現は、qPCRを用いて測定した。GAPDHは、内部対照として使用した。倍数変化は、2(-ΔΔct)法に従って算出した。
【0278】
免疫蛍光及び共焦点顕微鏡
細胞を、5×10個の細胞/ウェルで8ウェルチャンバースライド(Marienfeld Laboratory Glassware)上に一晩播種し、10%の細菌上清で24時間処理した。分化の場合、細胞を10nMのレチノイン酸で5日間処理した後、細菌上清で処置した。その後、細胞を、PBS中の4%のパラホルムアルデヒドで、室温(RT)にて20分間固定した。固定細胞をPBSで洗浄し、PBS中の1%のTri
ton X-100で10分間透過性にした。PBSで洗浄後、スライドを、遮断緩衝液(4%のBSA/PBS)で室温にて1時間インキュベートした後、1%のBSA/PBSで希釈した抗MAP2抗体(sc-74421、Santa Cruz Biotechnology Inc)を4℃で12時間添加した。次いで、それらをPBSで2回洗浄した後、Alexa Flour 488結合抗マウス(Molecular Probes Inc)及びAlexa Flour 594結合ファロイジン(ab176757、Abcam)で室温にて1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄後、スライドを、DAPIを含有するベクターシールド(Sigma、Aldrich)に載せた。使用した蛍光色素の検出に好適な63×/1.2のW Korr対物レンズ及びフィルターセットを備えたZeiss Axioscope顕微鏡を用いて、スライドを観た。MAP-2で免疫標識した画像のデジタル取得のためのマニュアル露出時間を一定に保つことで、異なるウェル及び治療間の比較をすることができた。ファロイジン(F-アクチン)及びDAPI露出時間は、視野に適するように変更した。無作為視野は、Image Pro Plusソフトウェアによって制御されたQImagingカメラを用いて取得した。画像は、TIFとして保存し、Adobe Photoshop CC 2015.1.2で開き、MAP-2、DAPI、及びファロイジン画像のオーバーレイを重ねて、合成した。代表的な画像を選択し、調べたタンパク質の存在度及び位置の差を示した。
【0279】
結果
結果を図7に示す。図7Aは、酸及び細菌上清の各々でインキュベートした未分化SHSY-5Y細胞の代表的な顕微鏡画像を示す。MRX0029による細胞の処置は、ニューロン様表現型を誘発し、レチノイン酸で処置した細胞(神経芽腫細胞の最終分化に使用される)と同様の特徴を示した。細胞体は、大きく、神経突起を有したピラミッド形状で、隣接細胞とのネットワークへの分岐処理が行われた。図7Bは、MRx0029が、未分化神経芽腫細胞中でMAP2を著しく上方制御することを示す。ファロイジン(アクチン細胞骨格結合剤)染色は、MRx0029で処置した細胞の細胞骨格構造の異なる配置をさらに証明し、MRx0029の神経分化仮説をさらに支持した(図7B)。
【0280】
実施例5-細菌接種原が抗酸化能力を変更する効能
概要
本発明による細菌株を含む組成物が抗酸化能力を変更する能力を調査した。細菌株の抗酸化能力は、周知のABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))アッセイを用いて確立した。
【0281】
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029
【0282】
方法
細菌細胞(10個またはそれ以上)を回収し、遠心分離した。それらを、アッセイ緩衝液(ペレット体積の3倍を用いて)中で再懸濁した。懸濁液を氷上で5分間超音波処理した後、12,000×gで10分間スピンダウンした。上清を除去し、製造者の指示に従って、Sigma Aldrichが製造したABTSアッセイキット(code CS0790)を用いて測定した。
【0283】
結果
これらの実験の結果を図8に示す。図8は、MRX0029が、Troloxと比較して、おおよそ2mMの抗酸化能力を有することを示す。
【0284】
実施例6-細菌接種原が脂質過酸化レベルを変更する効能
概要
本発明による細菌株を含む組成物が脂質過酸化レベルを変更する能力を調査した。チオバルビツール酸反応物質アッセイ(TBAR)を使用して、脂質過酸化の副生成物を測定した。
【0285】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029
【0286】
方法
細菌細胞(10個またはそれ以上)を回収し、遠心分離し、洗浄工程を等張食塩水で行った後、ペレットを塩化カリウムアッセイ緩衝液中で再懸濁した。懸濁液を氷上で10分間超音波処理した後、10,000×gで10分間スピンダウンした。上清を除去し、脂質過酸化レベルを、チオバルビツール酸反応物質アッセイを用いて評価した。
【0287】
結果
実験の結果を図9に示す。図9は、MRx0029が、おおよそ20%まで脂質過酸化を阻害することができることを示し、これは、陽性対照であるブチル化ヒドロキシトルエン(1%のw/v)の抗酸化能力よりも高い。
【0288】
実施例7a-細菌接種原が細胞中の酸化レベルを減少させる効能
背景
活性酸素種の生成は、神経変性疾患の病態に寄与する。細菌株が、t-ブチル過酸化水素(TBHP)による治療によって生成された活性酸素種(ROS)から、分化SHSY-5Y及びU373細胞を保護する能力を調査した。
【0289】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029
【0290】
方法
SHSY-5Y細胞を、5000個の細胞/ウェルの密度で黒色丸底96ウェルプレートに播種し、COインキュベーターに置いた。24時間後、培地を、分化培地(1%のFBSを含有する増殖培地)及び10μMのレチノイン酸に交換した。分化培地を一日おきに交換した。10日目に、分化培地を除去し、細胞を予熱PBSで洗浄し、1%のFBSを含有する増殖培地中で20分間、10uMのDCFDA分子プローブで染色した。その後、細胞を予熱PBSで再び洗浄し、10%の細菌上清の存在下または不在下で、100uMのTBHPで2時間処理した。蛍光強度は、Ex/Em485/530nmで、TECANプレートリーダーを用いて測定した。
【0291】
結果
実験の結果を図10に示す。図10bは、MRX0029が、分化SHSY-5Y神経芽腫細胞中のROS産生を阻害することができることを示す。MRX0029は、U373星状膠芽腫細胞中のROSの生成に対する効果を有さなかった(図10a)。これは、抗酸化効果の態様がニューロン特異的であることを示す。
【0292】
実施例7b-神経保護
RA-分化SHSY-5Y細胞を、MPP+、MPTPの活性代謝物(PD病理学の特徴のいくつかをインビトロ及びインビボで模倣するために広く使用される化学物質)で処理した。細胞生存率は、ミトコンドリア呼吸の速度で測定した(図11)。MRx0005及びMRx0029の両方は、著しい効果を示し、SHSY-5Y細胞中のミトコンド
リア代謝能活性の増加自体を促進する。MRX0029は、MPP+からの完全な保護を示し、細胞生存率を、未処置細胞とほぼ同じレベルに、ケルセチン陽性対照よりも高く回復させた。MRx0005保護は、YCFA-MPP+処理試料と比較して約20%であり、ケルセチン陽性対照について観察されたものとほぼ同じであった(図11)。
【0293】
実施例8-ヒストン脱アセチル化酵素活性に対する細菌接種原の効能
概要
本発明による細菌株を含む組成物がヒストン脱アセチル化酵素活性を変更する能力を調査した。ヒストン脱アセチル化酵素の調節異常は、加齢による神経変性疾患に関連する病因に関与していた。
【0294】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029
【0295】
細胞株
細胞株HT-29を使用したのは、ヒストン脱アセチル化酵素が存在するからである。
【0296】
方法
定常期細菌培養の無細胞上清は、遠心分離、及び0.22uMのフィルターの濾過によって単離した。HT-29細胞をコンフルエンスの3日後に使用し、実験を開始する24時間前に1mLのDTSにステップダウンした。HT-29細胞を、DTSで希釈した10%の無細胞上清でチャレンジし、これを放置して、48時間インキュベートした。その後、ヌクレアーゼタンパク質を、Sigma Aldrichヌクレアーゼ抽出キットを用いて抽出し、HDAC活性測定前に試料を急速凍結した。HDAC活性キットは、Sigma Aldrich(UK)キットを用いて蛍光分析的に評価した。
【0297】
結果
実験の結果を図12に示す。図12は、MRX0029が、ヒストン脱アセチル化酵素活性のレベルを減少させることができることを示す。
【0298】
実施例8a-ヒストン脱アセチル化阻害のメカニズムのさらなる分析
導入
腸内微生物叢は、その大きな多様性及び代謝能力を有し、HDAC活性に影響する可能性がある多種多様の分子の産生のための巨大な代謝リザーバーを表す。HDACを阻害することが示され、ハンチントン病における運動機能の改善に関連している酪酸以外の微生物由来代謝産物のHDAC阻害活性を評価した研究はほとんどない[100]。従って、本発明者らは、どの代謝産物がHDAC阻害の役割を担うのかを決定し、阻害が達成されるメカニズムをさらに解明しようとした。
【0299】
材料及び方法
細菌培養及び無細胞上清回収
細菌の純粋培養は、それらの定常成長期に到達するまで、YCFA培養液中で嫌気的に増殖させた。培養を5,000×gで5分間遠心分離し、0.2μMのフィルター(Millipore,UK)を用いて、無細胞上清(CFS)を濾過した。CFSの1mLのアリコートを、使用するまで-80℃で保存した。酪酸ナトリウム、ヘキサン酸、及び吉草酸は、Sigma Aldrich(UK)から入手し、懸濁液をYCFA培養液中で調製した。
【0300】
細菌上清のSCFA及びMCFA定量化
細菌上清由来の短鎖脂肪酸(SCFA)及び中鎖脂肪酸(MCFA)を、以下のように、MS Omics APSによって分析し、定量化した。試料を、塩酸を用いて酸性化し、重水素標識内部標準を添加した。全ての試料は、無作為順序で分析した。四重極検出器(59977B,Agilent)に連結したGC(7890B,Agilent)に設置した高極性カラム(Zebron(商標)ZB-FFAP,GC Cap.Column 30m×0.25mm×0.25μm)を用いて分析を行った。システムは、ChemStation(Agilent)によって制御した。生データを、Chemstation(Agilent)を用いて、netCDFフォーマットに変換した後、データをインポートし、[101]に記載されるPARADISeソフトウェアを用いて、Matlab R2014b(Mathworks,Inc.)で処理した。
【0301】
特異的HDAC活性分析
特異的HDAC阻害活性を、HDACの型ごとの蛍光発生アッセイキット(BPS Bioscience,CA)を用いて、HDAC1、2、3、4、5、6、9について分析した。アッセイは、製造者の指示に従って実施し、各試料は、繰り返し行った。無細胞上清を1/10に希釈し、キットに提供された特異的HDACタンパク質に暴露し、方法間の一貫性を維持した。
【0302】
結果
ヒストン脱アセチル化酵素を阻害する腸内共生微生物代謝産物は、酪酸及び吉草酸である。
【0303】
MRx0029(その上清は、HT29全細胞またはHT29細胞溶解物のいずれかで、アッセイにおける強いHDAC阻害を示した)は、それぞれ、5.08mM及び1.60mMの平均濃度で、吉草酸及びヘキサン酸を産生した(図13A及び13C)。
【0304】
どの代謝産物が株誘発HDAC阻害の役割を担ったかを調査するため、異なる濃度のヘキサン酸、吉草酸及び酪酸ナトリウムを、HT-29全細胞及びHT-29細胞溶解物上のそれらのHDAC阻害について測定した。図13Bの結果は、全細胞並びに細胞溶解物上で酪酸ナトリウムによるHDAC活性の著しい(P<0.05)阻害を示す一方、ヘキサン酸は、著しい阻害活性を示さなかった。吉草酸は、総HDAC活性を阻害した(*(p<0.05)、**(p<0.005)、***(P<0.001)、****(p<0.0001))。
【0305】
調査した強力な総HDAC阻害剤は、クラスI HDACを標的とする。
【0306】
試験細菌株の特異的HDAC阻害プロファイルを調査した。特異的HDAC阻害アッセイ(BPS Bioscience,CA)を、クラスI及びクラスII HDACに対して実施した。細菌株がHDAC酵素を阻害する能力を、酪酸、ヘキサン酸、及び吉草酸と比較した(図14及び15)。MRX0029が、クラス1 HDAC酵素(HDAC1、2及び3)非常に強力な阻害剤であることを結果は示す。クラスII HDACの阻害は、それほど重要ではない(データ不図示)。
【0307】
議論
HDAC阻害活性を有する株は、相当量の吉草酸及びヘキサン酸、並びに相当量の酪酸ナトリウムを産生した(図13C)。純粋な物質として試験した場合、吉草酸及び酪酸ナトリウムは、著しいHDAC阻害をもたらした(p<0.0001)。
【0308】
興味深いことに、特異的HDAC活性の結果は、試験株が、クラスI HDAC、特に、HDAC2の強力な阻害剤であることを示す。クラスI HDAC(HDAC1、2、
3及び8)は、核に存在し、いくつかのヒト細胞型で遍在的に発現される。HDAC1-3は、50%超の相同性を共有するが、別個の構造及び細胞機能を有する[102]。HDAC1-3は、細胞生存、増殖、及び分化に主に関与するため、それらの阻害は、幅広い疾患に有用であり得る[103];[104];[105];[106];[107]。
【0309】
実施例9-細菌中のインドール産生レベル
概要
本発明の細菌がインドールを産生する能力を調査した。インドールは、炎症及び酸化ストレスの弱毒化に関与していた。
【0310】
材料及び方法
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029
ATCC 11775は、インドールを産生することが知られる細菌基準株である。
【0311】
方法
定常期の無傷細菌細胞を、6mMのトリプトファンで48時間インキュベートした。酵素トリプトファナーゼを有する細菌種は、インドールを産生する基質として、トリプトファンを利用する。48時間のインキュベーション期間の後、上清を除去し、コバックの試薬に添加し、インドールを定量化した。標準、原液及び試薬は、社内で検証された標準化法を用いて調製した。
【0312】
結果
実験の結果を図16に示す。図16は、MRX0029が、おおよそ0.2mMの濃度で、トリプトファンからインドールを産生する能力を有することを示す。
【0313】
実施例10-細菌中のキヌレニン産生レベル
概要
本発明の細菌がキヌレニンを産生する能力を調査した。キヌレニン経路の調節異常は、免疫系の活性化及び潜在的に神経毒性な化合物の蓄積をもたらすことがある。キヌレニン代謝の変化は、パーキンソン病の発症に関与し得る。
【0314】
細菌株
Megasphaera massiliensis MRX0029
DSM 17136は、キヌレニンを産生することが知られるBacteroides
copricolaの株である。
【0315】
方法
定常期細菌培養の無細胞上清は、遠心分離、及び0.22uMのフィルターの濾過によって単離し、使用するまで凍結した。キヌレニン標準、原液及び試薬は、社内で検証された標準化法を用いて調製した。試料をトリクロロ酢酸で処理し、10,000×gで4℃にて10分間遠心分離した。上清を回収し、96ウェルプレートに分配した。エールリッヒ試薬をキヌレニン検出に使用し、1:1の比で添加した。
【0316】
結果
実験の結果を図17に示す。図17は、MRX0029が、おおよそ40μMの濃度で、キヌレニンを産生する能力を有することを示す。
【0317】
実施例11-細菌処理MPTPマウスにおける線条体中のドーパミン、DOPAC及び
HVAのレベル
パーキンソン病は、一般的な神経変性障害であり、その基本的な臨床特徴には、振戦、動作緩慢、硬直、及び姿勢の不安定が含まれる。これらの症状は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの変性、及びその結果として生じる線条体における突出神経線維の損失に主に起因する[108]。MPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)で処理したマウスは、著しい数の黒質線条体ドーパミン作動性ニューロンを選択的に損失する[109]。黒質中のドーパミン作動性細胞のMPTP誘発損失は、パーキンソン病における臨床状態を模倣するため、抗パーキンソン病治療薬の試験に有用なモデルである。
【0318】
この研究の目的は、MPTP病変マウスを用いて、MRX0029嫌気性細菌の効果を評価することであった。
【0319】
48匹の雄のマウスを、4つの異なる治療群(A、B、E及びI群、各群で、n=12匹の動物)に割り当てた。治療群を以下の表1に示し、プロジェクト時間経過を以下に概説する。
【0320】
【0321】
A、B、E及びI群は、細菌(MRx0029-E群)またはビヒクル(PBS)のいずれかによる経口強制飼養を介して、18日間毎日治療した。経口治療は、MPTP病変
の14日前に開始した。I群動物は、ビヒクル(PBS)のp.o.(経口)治療を毎日受け、0日目の最初のMPTPの30分前及び90分後に、参照薬をi.p.(腹腔内)注入した。経口及びビヒクル治療の適用量は、マウス当たり200μlであった。E群の細菌株は、グリセロール原液(gly)由来であった。経口治療の場合、適用した強制飼養は、70%のエタノールを含有するバイアル中に保存し、蒸留水で各使用の前後にフラッシュした。全ての治療群は、それ自体の強制飼養並びにエタノールバイアル及び蒸留水バイアルを有した。チューブ及び強制飼養は、群間で変えなかった。治療の直前に、各シリンジを窒素でフラッシュした。
【0322】
0日目に、MPTP(20mg/kg体重(b.w.)で4回、2時間の治療間隔)を、B、E及びI群の動物に腹腔内注入した。動物の1群(A)は、MPTPビヒクル(0.9%の生理食塩水)の腹腔内投与によって疑似病変した。適用量は、体重1g当たり10μlであった。動物の計量は、MPTP治療前に行い、それらの実際の体重に従って、動物に投与した。その後、動物は、経口治療を毎日受けた。
【0323】
投与用調製物の調合、及び投与用グリセロール原液の調製
【0324】
治療群E(MRx0029)の場合
1)1グリセロール原液を-80℃の冷凍庫から取り出し、解凍(30~40分かかった)するために、37℃で、嫌気性状態(サシェを有する嫌気瓶)下に置いた。
2)完全に解凍したグリセロール原液を、6000×gで室温にて10分間遠心分離した。
3)ペレットを乱すことなく(例えば、ピペットを用いて)、上清を廃棄した。
4)4.22mLの無菌予熱(37℃)1×PBSを添加し、ピペットを用いて穏やかに混合した。
5)マウスに200μLの細菌溶液を投与した。ペレットの再懸濁後の15分以内に、動物にPBSを投与した。
【0325】
参照薬物群製剤
【0326】
適切な量の7-ニトロインダゾールを落花生油中に溶解し、50mg/kgの最終濃度に到達した。
【0327】
材料及び方法
動物
【0328】
動物及び無作為化の具体的取り扱い
動物を取り扱う(例えば、治療、行動試験、掃除、及び組織試料採取)際には必ず汚染のリスクを最小限にするために、各治療群の間で手袋を変え、同じ群の各ケージの間で70%のエタノール溶液をスプレーした。
【0329】
治療は、無作為かつ隔日に行い、同じ群が、毎日同じ時間に治療されるのを予防した。組織試料採取にケージごとに動物を無作為化した。
【0330】
組織試料採取及びプロセシング
4日目に、全ての群の動物を犠牲にし、脳を回収した。従って、マウスには、ペントバルビタール注射(600mg/kg)によって深く麻酔した。
【0331】
血液(おおよそ500μl)を心臓穿刺によって回収した。その後、マウスを0.9%の生理食塩水で経心臓的に灌流し、脳を除去し、半切除した。左半球を、線条体組織(HPLC用)、黒質組織、並びに残脳に細分し、秤量し、直ちに凍結し、-80℃で保存した。動物と接触させた器具及び表面は、次の動物を解剖する前に70%のエタノールで掃除する必要があった。
【0332】
線条体中のHPLCによるドーパミン、DOPAC及びHVAレベルの生化学分析
線条体試料(各治療群からn=6;24個の総試料)を、100μMのEDTA-2Naを含む0.2Mの過塩素酸と、1:10(w/v)の比で混合し、ガラス-乳棒マイクロ-ホモジナイザー中で0℃にて均質化した。氷上で30分間静置した後、ホモジネートを、冷蔵遠心分離機Biofuge Fresco(Heraeus Instruments,Germany)中で10分間、10,000RPMで遠心分離した。上清を慎重に吸引し、0.4Mの酢酸ナトリウム緩衝液、pH3と、1:2(v/v)の比で混合し、0.22μmの遠心フィルター(Merck Millipore,Germany)を通じて、14000gで4℃にて4分間濾過した。濾液をHPLC分析前に-80℃で保存した。
【0333】
HPLC分析
線条体試料中のDA、DOPAC、及びHVAの濃度は、電気化学的検出を用いるカラム液体クロマトグラフィーによって決定した[110;111]。+0.45V対Ag/AgCl参照電極で動作するガラス状炭素電極を装備した、パルスフリーマイクロフローポンプ、脱気装置、及びアンペロメトリック検出器を含む、HPLCシステム(HTEC
-500、Eicom Corp.,Kyoto,Japan)を使用した。CMA/200冷蔵マイクロサンプラー(CMA/Microdialysis,Stockholm,Sweden)を使用することで、試料を注入した。クロマトグラムを記録し、コンピューター化されたデータ取得システム(DataApex,Prague,Czech
Republic)の使用により統合した。DA、DOPAC及びHVAは、150×2.1 i.d.mmカラム(CA5-ODS,Eicom Corp.,Kyoto,Japan)上で分離した。移動相は、0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)、0.13mMのEDTA、2.3mMの1-オクタンスルホン酸ナトリウム、及び20%(v/v)メタノールからなった。DAの検出限界(信号対雑音比=3)は、カラム上に注入した15μl(0.03nM)中の0.5fmolに推定した。
【0334】
結果
細菌株の投与は、動物に十分に許容された。MPTP病変日に、必要に応じて、翌日、赤色光を使用して、動物を温めた。動物が悪い状態(寒く感じた、脱水、異常行動)であれば、濡れた食べ物を供給し、必要に応じて、皮下生理食塩水治療を施した。
【0335】
ドーパミン、DOPAC、及びHVAレベルの分析に関して、治療群当たり6匹の動物の線条体組織を使用した。クラスカル・ワリス検定、その後、ダンの多重事後比較検定または一元配置分散分析、その後、ボンフェローニ事後比較検定を用いて、データを分析した(A対全て(*)、B対全て、I対全て(#))。*/#=p<0.05;**=p<0.01;***=p<0.001。
【0336】
A群の健康な動物は、高レベルのドーパミン、DOPAC、及びHVAを有した一方、B群のMPTP治療は、これを減少させ、陽性対照(I群)は、産生をある程度回復させた(図21)。I群の動物は、細菌治療群及びB群よりも高いドーパミンレベルを有する傾向があった(図21A)。一般的なDOPAC(ドーパミン代謝産物)レベルは、A群の病変のない動物のDOPACレベルと比較して、B群の動物において有意に低かった(図21B)。
【0337】
重大なことは、MRx0029(E群)による治療が、ドーパミン及びDOPAC(それぞれ、図21A及び21B)の産生を回復させることが分かった。従って、MRx0029による治療は、神経変性障害の治療または予防に有用であり得る。
【0338】
実施例12-安定性試験
本明細書に記載されている少なくとも1つの細菌株を含有する本明細書に記載されている組成物を、25℃または4℃の密閉容器に貯蔵し、容器を30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%の相対湿度を有する雰囲気に置く。1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年後、標準のプロトコルによって決定されるコロニー形成単位で測定したとき、細菌株の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%が残存する。
【0339】
実施例13-SHSY-5Y細胞中のBDNF分泌のレベル
背景
脳由来神経栄養因子(BDNF)は、神経発達、神経保護及び神経再生に関連する、脳の遍在分子である。BDNFは、神経変性に対して保護するだけでなく、PDまたはADと診断された患者の中で非常に一般的なうつ病及び不安のような精神障害に対しても保護する。
【0340】
方法
SH-SY5-SYを、60,000個の細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに
播種し、インキュベーターに置いた。24時間後、培地を分化培地(1%のFBSを含有する増殖培地)及び10μMのレチノイン酸に交換した。分化培地を一日おきに交換し、分化の10日目に細胞を使用した。治療のために、分化培地を除去し、450ulの完全増殖培地と交換し、50μlの細菌SNを処置ウェルに添加し、またはYCFA+を陰性対照として添加した。
【0341】
結果
結果を図18に示し、レチノイン酸と組み合わせたMRX0029の投与が、分化神経芽腫細胞由来のBDNFの分泌を増加させることを示す。従って、共生細菌株及び有機酸を含む組成物は、治療で有用であり得る。
【0342】
実施例14-代謝産物産生-脳の代謝産物
背景
細菌上清に存在する代謝産物は、酸化ストレス、細胞間通信、及び神経保護に対する宿主反応に直接影響を与え得る。神経学的プロセスで重要な役割を果たす代謝産物は、MRx0005及びMRx0029を給餌したマウスの脳組織におけるエクスビボスクリーニング中に測定した。
【0343】
方法
動物
BALBc(Envigo,UK)成体の雄のマウスを、12時間の明暗サイクルの下でグループ収容し;標準的なげっ歯類の餌及び水は、自由に取れるようにした。全ての実験は、ユニバーシティカレッジコーク動物倫理実験委員会による承認後の欧州ガイドラインに従って行った。動物は、実験の開始時に8週齢であった。
【0344】
研究デザイン
動物は、動物ユニットに到着した後、それらの保持室に1週間慣れさせた。動物は、15:00~17:00に6日間連続で、1×10個のCFUの用量で生きた生物学的治療薬の経口強制飼養(200μL用量)を受ける。7日目に、動物を殺し、組織を実験用に収穫した。
【0345】
組織回収
動物は、治療及び試験条件に関してランダムに犠牲にした;試料採取は、午前9.00から午後1:00の間に行った。体幹の血液をカリウムEDTA(エチレンジアミン四酢酸)チューブに回収し、4000gで15分間スピンした。血漿を単離し、-80℃で保存し、さらなる分析を行った。脳を迅速に摘出し、解剖し、各脳領域をドライアイスで急速冷凍し、-80℃で保存し、さらなる分析を行った。脾臓を切除し、選別直後に処理し、エクスビボ免疫刺激を行った。腸組織(盲腸に最も近い回腸と結腸の2cm切片を摘出し、盲腸から最も遠い1cm組織を使用した)を、ウッシングチャンバーに載置し、腸透過性アッセイを行った。盲腸を切除し、秤量し、-80℃で保存し、SCFA分析を行った。
【0346】
モノアミン分析
神経伝達物質濃度は、脳幹からの試料でHPLCによって分析した。簡単に言うと、内部標準として4ng/40μlのN-メチル5-HT(Sigma ChemicalCo.,UK)でスパイクした500μlの冷却移動相で、脳幹組織を超音波処理した。移動相は、0.1Mのクエン酸、5.6mMのオクタン-1-スルホン酸(Sigma)、0.1Mのリン酸二水素ナトリウム、0.01mMのEDTA(Alkem/Reagecon、Cork)及び9%(v/v)メタノール(Alkem/Reagecon)を含有し、4Nの水酸化ナトリウム(Alkem/Reagecon)を用いてpH2.8
に調整した。その後、ホモジネートを、22,000×gで4℃にて15分間遠心分離し、40μlの上清を、SCL 10-Avpシステムコントローラー、LECD 6A電気化学検出器(Shimadzu)、LC-10ASポンプ、CTO-10Aオーブン、SIL-10Aオートインジェクター(40℃に維持した試料冷却器付き)、及びオンラインGastorr脱気装置(ISS、UK)からなったHPLCシステム上に注入した。30℃で維持した逆相カラム(Kinetex 2.6u C18 100×4.6mm,Phenomenex)を分離(流量0.9ml/分)に採用した。ガラス状炭素作用電極を、+0.8Vで動作するAg/AgCl参照電極(Shimadzu)と組み合わせ、生成したクロマトグラムは、Class-VP 5ソフトウェア(Shimadzu)を用いて分析した。神経伝達物質は、試料分析中に一定間隔で実行する標準注入によって決定されるように、それらの特性保持時間によって同定した。分析物対内部標準のピーク高さの比を測定し、標準注入と比較した。結果は、組織の生重量1g当たりのngの神経伝達物質として表した。
【0347】
代謝産物分析
GC代謝物分析の場合、細菌上清の試料を、[112]に記載されるプロトコルの若干修正したバージョンを用いて、クロロギ酸メチルで誘導体化した。全ての試料は、無作為順序で分析した。四重極検出器(59977B,Agilent)に連結したGC(7890B,Agilent)を用いて分析を行った。システムは、ChemStation(Agilent)によって制御した。生データを、Chemstation(Agilent)を用いて、netCDFフォーマットに変換した後、データをインポートし、[101]に記載されるPARADISeソフトウェアを用いて、Matlab R2014b(Mathworks,Inc.)で処理した。
【0348】
脂肪酸分析の場合、試料を、塩酸を用いて酸性化し、重水素標識内部標準を添加した。全ての試料は、無作為順序で分析した。四重極検出器(59977B,Agilent)に連結したGC(7890B,Agilent)に設置した高極性カラム(Zebron(商標)ZB-FFAP,GC Cap.Column 30m×0.25mm×0.25μm)を用いて分析を行った。システムは、ChemStation(Agilent)によって制御した。生データを、Chemstation(Agilent)を用いて、netCDFフォーマットに変換した後、データをインポートし、[101]に記載されるPARADISeソフトウェアを用いて、Matlab R2014b(Mathworks,Inc.)で処理した。
【0349】
結果-神経伝達物質産生
結果を図19に示す。これは、MRx0029を給餌したマウスの脳において、ノルアドレナリンレベルが、セロトニン及び5-HIAAの僅かな増加を伴って増加する(p=0.0507)ことを示す。これらのデータは、以下に記載の代謝産物分析を支持し、MRx00029が、公知の酸化防止剤である4-ヒドロキシフェニル酢酸の主要な産生物質であることを示唆する[113]。より重要なことは、4-ヒドロキシフェニル酢酸は、ドーパミン及びノルエピネフリンの合成中間体であり、重要な生物活性分子である[114]。実際に、PDでは、退行性変化は、ドーパミン作動性システムを超えて広がり、セロトニン作動性及びノルアドレナリン作動性システムに等しく影響し、線条体及び線条体外構造の両方において、セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)及びノルアドレナリン(ノルエピネフリン)のレベルの低下をさらにもたらす[115]。L-DOPAは、PDのドーパミン関連特徴を主に標的にするが、5-HT及びノルアドレナリンの両方における低下に対処しない。これを添加することは、L-DOPA治療の継続期間が長いほど、運動及び非運動合併症(例えば、ジスキネジア、精神症状)の範囲がより明確になるということである[116]。従って、これらのデータは、有機酸、例えば、4-ヒドロキシフェニル酢酸を産生する細菌が、治療、特に、神経変性疾患の治療にお
いて有用であり得ることを示す。
【0350】
結果-代謝産物の産生
細菌上清に存在する代謝産物は、酸化ストレス、細胞間通信、及び特定の神経保護に対する宿主反応に直接影響を与えることができる。MRX0029及びMRX0005の培養の上清中の代謝産物を分析し、結果を図20に示す。
【0351】
いくつかの代謝産物は、分析した2つの株の間で顕著な違いを示した。コハク酸の濃度は、MRx0005で特に上昇した。興味深いことに、4-ヒドロキシフェニル酢酸の試料/培地の比は、MRx0029で有意に高かった(図20A)。
【0352】
上清中の脂肪酸分析により、2つの株において興味深い両断論理を明らかにした:直鎖及び分枝鎖形態の両方において、MRx0005は、酢酸及びプロパン酸を主に産生した一方、MRx0029は、ブタン酸、ペンタン酸、及びヘキサン酸を産生した(図20B)。2つの株は、非常に異なって見え、特に、それぞれ、MRx0005及びMRx0029によるコハク酸及び4-ヒドロキシフェニル酢酸の産生が顕著であった(図20A)。さらに、MRx0005は、C2及びC3短鎖脂肪酸をより多く産生するようである一方、MRx00029は、C4(酪酸)及び直鎖及び分枝鎖の両方の中鎖脂肪酸、例えば、ヘキサン酸をより多く産生した。
【0353】
コハク酸は、酸化的リン酸化に関与するクレブスサイクル代謝産物である。酸化的リン酸化複合体は、タンパク質及び小胞を近位及び遠位領域にシナプス輸送する重要なステップである[117]。その機能不全は、アルツハイマー病、パーキンソン病及び脊髄小脳変性症1型を含む神経変性障害において報告されている[63]。これらの知見は、コハク酸が、ミトコンドリア活性を増加し、誤って折り畳まれたタンパク質に関係する神経変性疾患、例えば、PDにおいて脆弱なニューロンを支持するために特に興味深い[65]。BDNF及びコハク酸は両方とも、神経変性だけでなく、PDまたはADと診断された患者で非常に一般的なうつ病及び不安などの精神障害において同様の保護活性を有する。
【0354】
図20Bは、MRX0029が、酪酸(ブタン酸)産生物質であることも示す。これは、酪酸が、血液脳関門の不透過性の減少(これは、神経保護効果を有する)において公知の役割を有するため、重要であり得る[118]。MRx0029(及び他の神経保護細菌)のこの性質は、その効能に寄与し得る。
【0355】
実施例15-MRx0029によるタイトジャンクションタンパク質のmRNA発現の調節
腸の機能不全及び炎症が、PDに関連する非運動症状であることを近年のエビデンスが示唆しているため、本発明の細菌株がいずれかの腸バリア機能不全を引き起こす能力を調査した。HT29-mtx上皮、ムチン産生細胞単層[119]をインビトロモデルとして使用し、MRx0005及びMRx0029による処理を行った後に、腸バリア機能障害及び免疫刺激を評価した。ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)に暴露した分化HT29-mtx細胞は、著しい量のIL-8を分泌した;これに対して、MRx005及びMRx0029細菌上清による24時間治療は、未処置及びYCFA処置細胞の両方と比較して、IL-8のさらに低い分泌を誘発した(図22A)。
【0356】
その後、MRx0005及びMRx0029が、腸バリア形成に関与するタンパク質の発現及び局在化に関与する細胞内シグナル伝達を調節することによって上皮透過性を調節する能力を調査した。
【0357】
RNAを単離し、定量的RT-PCR(qRT-PCR)分析を行って、MRx000
5及びMRx0029でインキュベーション中にタイトジャンクションタンパク質の遺伝子発現の変化を特徴付けた。MRx0029の投与は、インキュベーションの2時間後に、オクルディン、ビリン、タイトジャンクションタンパク質1及び2(それぞれ、TJP1及びTJP2)のmRNA発現を増強した(図22B)。これに対して、MRx0005への暴露は、タイトジャンクションタンパク質の遺伝子発現を変更せず、2つの株が腸バリアで差別的に作用することを示唆している。
【0358】
インビトロ結果を、MRx0005及びMRx0029を給餌したマウスの腸におけるエクスビボ並行分析からのデータと比較した。TJP2及びオクルディンの遺伝子発現を結腸及び回腸で定量化した。MRx0029は、ネズミ腸の結腸領域においてTJP1及びオクルディンを有意(p=0.073)に上方制御することができたため、エクスビボデータは、インビトロデータを完全に反映する(図22C+22D)。また、MRx0029は、同じマウスの結腸における透過性機能を低下させることができた(図22E+22F)。
【0359】
材料及び方法-RNA抽出及びqPCR分析
総RNAは、製造者の指示に従って、RNeasyミニキット(Qiagen,Manchester,JUK)を用いて抽出し、RNA濃度は、分光光度計(ナノドロップND-1000;Thermo Scientific,Wilmington,DE)を用いて、260/280nmの吸光度で決定した。mRNA発現分析の場合、cDNAは、製造者の指示に従って、高容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems,UK)を用いて、総RNAから調製した。逆転写反応は、25℃で10分間、37℃で120分間、及び85℃で5分間、Thermo cycler(Biometra,Germany)で行い、4℃に保持した。得られたcDNAを、SYBR-Green PCRアッセイによって複製して増幅し、プライマーに応じて、標準化プロファイル(サイクル前の熱変性:95℃で10分間、40サイクル熱変性:95℃で15秒、及びアニーリング/伸長:60/65℃で60秒)を用いて、QuantStudio 6フレックスリアルタイムPCR機器(Applied Biosystems,UK)で産生物を検出した。40サイクル後に解離段階を加え、融解曲線を生成した。Applied Biosystems QuantStudioリアルタイムPCRソフトウェアv1.2を用いて分析を行った。アクチン、バリン、オクルディンTJP1及びTJP2のプライマー配列を、配列表に提供する。
【0360】
実施例16
方法
動物
使用した動物及び研究デザインは、実施例14と同じであった。
【0361】
細菌株
・755:Parabacteroides distasonis(MRX005)
・Megasphaera massiliensis(MRX0029)
【0362】
組織回収
動物は、治療及び試験条件に関してランダムに犠牲にした;試料採取は、午前9.00から午後2:30の間に行った。体幹の血液をカリウムEDTA(エチレンジアミン四酢酸)チューブに回収し、4000gで15分間スピンした。血漿を単離し、-80℃で保存し、さらなる分析を行った。脳を迅速に摘出し、解剖し、各脳領域をドライアイスで急速冷凍し、-80℃で保存し、さらなる分析を行った。脾臓を切除し、5mLのRPMI培地(L-グルタミン及び重炭酸ナトリウム、R8758 Sigma+10%のFBS(F7524,Sigma)+1%のPen/Strep(P4333,Sigma)を
有する)中で回収し、選別直後に処理し、エクスビボ免疫刺激を行った。腸組織(盲腸に最も近い回腸と結腸の2cm切片を摘出し、盲腸から最も遠い1cm組織を使用した)を、ウッシングチャンバーに載置し、腸透過性アッセイを行った。盲腸を切除し、秤量し、-80℃で保存し、SCFA分析を行った。
【0363】
モノアミン分析
神経伝達物質濃度は、実施例10に記載されるように分析した。
【0364】
脾臓サイトカインアッセイ
犠牲にした後、脾臓を5mLのRPMI培地中で直ちに回収し、直ちに培養した。脾臓細胞をこのRPMI培地でまず均質化した後、1mLのRBC溶解培養液(11814389001 ROCHE,Sigma)で5分間インキュベートした。10mLのRPMI培地をさらに添加した後、200Gで5分間遠心分離した。その後、上清を、40um濾過器を通じて濾過した。細胞を計数し、(4,000,000/mL培地)播種した。適応の2.5時間後、細胞をリポ多糖(LPS-2μg/ml)またはコンカナバリンA(ConA-2.5μg/ml)で24時間刺激した。刺激後、上清を収穫し、炎症性パネル1(マウス)V-PLEXキット(Meso Scale Discovery,Maryland,USA)を用いて、TNFα、IL-10、IL-1β、インターフェロンγ、CXCL2、及びIL6のサイトカイン放出を評価した。MESO QuickPlex SQ 120、SECTOR Imager 2400、SECTOR Imager 6000、SECTOR S 600を用いて、分析を行った。
【0365】
遺伝子発現分析
総RNAを、製造者の推奨に従って、mirVana(商標)miRNA単離キット(Ambion/Llife technologies,Paisley,UK)を用いて抽出し、DNase処理した(Turbo DNA-free,Ambion/life technologies)。RNAを、製造者の指示に従って、NanoDrop(商標)分光光度計(Thermo Fisher Scientific Inc.,Wilmington,Delaware,USA)を用いて定量化した。RNA品質を、製造者の手順に従って、Agilent Bioanalyzer(Agilent,Stockport,UK)を用いて評価し、RNA品質数値(RIN)を算出した。RIN値>7を有するRNAを、その後の実験に使用した。RNAを、製造者の指示に従って、Applied Biosystems高容量cDNAキット(Applied Biosystems,Warrington,UK)を用いて、cDNAに逆転写した。簡単に言うと、Multiscribe逆転写酵素(50U/μL)(1)(2)(1)(10)を、RTマスターミックスの一部として添加し、25℃で10分間、37℃で2時間、85℃で5分間インキュベートし、4℃で保存した。定量的PCRは、Applied Biosystemsによってマウス特異的標的遺伝子に対して設計されたプローブ(6カルボキシフルオレセイン-FAM)を用いた一方、内在性対照としてβ-アクチンを用いて実行した。増幅反応は、1μlのcDNA、5μlの2×PCRマスターミックス(Roche)、900nMの各プライマーを含有し、無RNase水を添加することで、合計で10μlにした。全ての反応は、LightCycler(登録商標)480システム上で、96ウェルプレートを用いて三連で行った。熱サイクル条件は、製造者(Roche)の推奨通りに、55サイクルであった。アンプリコン汚染を確認するため、各ランは、使用したプローブごとに、テンプレート対照を三連で含まなかった。サイクル閾(Ct)値を記録した。β-アクチンを用いてデータを正規化し、2-ΔΔCT法を用いて変換し、対照群に対する倍数変化として提示した。
【0366】
盲腸内容における短鎖脂肪酸分析
盲腸内容を混合し、MilliQ水でボルテックスし、室温で10分間インキュベート
した。遠心分離(10000g、5分、4℃)によって上清を得、細菌及び他の固体をペレットにし、0.2μmで濾過した。それを透明なGCバイアルに移し、2-エチル酪酸(Sigma)を内部標準として使用した。SCFAの濃度は、Varian 3500
GC炎イオン化システムを用いて分析し、ZB-FFAPカラム(30m×0.32mm×0.25mm;Phenomenex)に適合させた。標準曲線は、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソ酪酸塩、n-酪酸塩、イソ吉草酸塩及び吉草酸塩を含有する、異なる濃度の標準ミックスで構築した(Sigma)。ピークは、Varian Star Chromatography Workstationバージョン6.0ソフトウェアを用いて統合した。全てのSCFAデータは、μmol/gとして表す。
【0367】
統計分析
正規分布データは、平均±SEMとして提示し;ノンパラメトリックデータセットは、四分位範囲を有する中央値として提示する。独立両側t検定を適用し、パラメトリックデータを分析し、マン・ホイットニー検定をノンパラメトリックに使用した。スピアマンの順位相関係数を、プールデータセットにおける相関分析に採用した。p値<0.05は、全ての場合において有意と見なされた。
【0368】
結果-神経伝達物質産生
図23の結果は、マウス脳における神経伝達物質の濃度に対するMRx005治療の効果を示す。最も注目すべきは、MRx005による治療は、ドーパミンの減少をもたらす。
【0369】
結果-遺伝子発現
神経伝達物質受容体[セロトニン受容体1a(5-HTR1a)、ドーパミンD1受容体、GABA受容体サブユニットB1、GABAA受容体、NMDA2A(Grin2A)及びNMDA2B(Grin2b)受容体]、炎症マーカー[IL-1β、IL6、CD11b、TNFα及びTLR4]、及び内分泌マーカー[コルチコステロン放出因子(CRF)、コルチコステロン放出因子受容体1及び2(CRFR1、CRFR2)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、バソプレシン受容体、オキシトシン受容体、糖質コルチコイド受容体、及び鉱質コルチコイド受容体]の遺伝子の発現を、海馬、扁桃体、及び前頭前皮質由来の脳組織で分析した。
【0370】
図24~38は、海馬、扁桃体、及び前頭前皮質におけるMRX005またはMRX0029治療後の遺伝子発現の変化を示す。MRx0029による治療は、扁桃体における糖質コルチコイド受容体発現の増加をもたらした(図31C)。図32Aは、MRx005による治療が、扁桃体におけるBDNFの発現を有意に増加させた一方、MRx0029による治療が、扁桃体におけるTLR4の発現を有意に増加させたことを示す(図32)。
【0371】
MRx005及びMRx0029の両方が、扁桃体におけるCD11bの発現を増加させることができる(図33A)一方、IL-6、Grin2a及びGrin2bの発現は、MRx005治療後に減少する(図33B~33D)。加えて、MRx005及びMRx0029は、扁桃体におけるGABRA2の発現及びGABBR1の発現を有意に増加させた。
【0372】
MRx005による治療は、前頭前皮質におけるBDNFの発現の有意な増加をもたらした(図35B)。
【0373】
議論
MRx005及びMRx0029の投与は、特に、扁桃体における遺伝子発現の変化を
引き起こした。
【0374】
結果-Tph1及びIDO-1発現に対する効果
図39は、MRx0029が、結腸においてトリプトファンヒドロキシラーゼ-1(Tph1)の発現を有意に増加させることができ、MRX005治療が、結腸においてIDO-1の発現を増加させることができることを示す。MRX005による治療は、回腸においてTph1及びIDO1の発現を増加させた(図40)。
【0375】
インドールアミン-ピロール2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO-1)は、トリプトファン/キヌレニン経路における第1及び律速酵素である一方、トリプトファンヒドロキシラーゼ1(Tph1)(酵素トリプトファンヒドロキシラーゼのアイソフォーム)は、セロトニンの合成を担う。これらのデータは、MRx0029及びMRx005が、セロトニンレベル及びトリプトファン/キヌレニン経路に影響を及ぼし得ることを示唆する。
【0376】
結果-トリプトファン代謝産物レベルに対する効果
図41は、循環キヌレニン及びトリプトファンのレベルに対するMRx005による治療の効果を示す。
【0377】
結果-脾細胞由来のサイトカイン発現に対する効果
エクスビボ脾細胞アッセイは、脾細胞(脾臓-免疫防御に関与する主臓器から単離した細胞)を、細菌またはウイルス模倣体チャレンジでチャレンジすることを伴う。
【0378】
MRX005は、LPSによるチャレンジ後に、脾細胞におけるインターフェロン-γのレベルを有意に減少させた(図42)。加えて、MRX005は、LPSによるチャレンジ後に、インターロイキン-6及び腫瘍壊死因子のレベルを減少させた(それぞれ、図44及び45)。MRx0029による治療は、LPSによるチャレンジ後に、インターフェロン-γ、インターロイキン-1β、及びインターロイキン-6の減少をもたらした(それぞれ、図42、43及び44)。
【0379】
MRx005及びMRx0029による治療は、化学誘引物質CXCL1のレベルの増加をもたらした(図47)。
【0380】
結果-盲腸の短鎖脂肪酸レベルに対する効果
短鎖脂肪酸(SCFA)は、食事由来の非消化性繊維が消化管内の細菌によって発酵すると産生される。MRX005投与の効果を図48に示す。
【0381】
実施例17-遺伝子発現レベルにおけるMRX029及びMRX005誘発変化のさらなる分析
方法
細胞株
SH-SY5Y細胞
【0382】
細菌株
・755:Parabacteroides distasonis(MRX005)
・Megasphaera massiliensis(MRX0029)
【0383】
qPCR
SHSY5Yを、10cmのペトリ皿に、2×10個の細胞の密度で載置した。24時間後、細胞を、10%の細菌上清またはYCFA+、10uMのRA、200uMのヘ
キサン酸または200uMのバルプロ酸を有する分化培地(RA無しで1%のFBSを含有する増殖培地)で17時間処理した。その後、代表的な画像を、位相差EVOS XLコア顕微鏡を用いて、40×/0.65の倍率で撮影した。細胞を回収し、総RNAを、RNeasyミニキットプロトコル(Qiagen)に従って単離した。cDNAは、高容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を用いて作製した。遺伝子発現は、qPCRを用いて測定した。GAPDHは、内部対照として使用した。倍数変化は、2(-ΔΔct)法に従って算出した。MAP2、DRD2、GABRB3、SYP、PINK1、PARK7、及びNSEのプライマー配列を配列表に提供する。
【0384】
免疫標識及び細胞イメージング
細胞を、5×10個の細胞/ウェルで8ウェルチャンバースライド(Marienfeld Laboratory Glassware)上に一晩播種し、10%の細菌上清で24時間処理した。分化の場合、細胞を10nMのRAで5日間処理した後、無細胞細菌上清で24時間処理した。その後、細胞を、PBS中の4%のパラホルムアルデヒドで、室温(RT)にて20分間固定した。固定細胞をPBSで洗浄し、PBS中の1%のTriton X-100で10分間透過性にした。PBSで洗浄後、スライドを、遮断緩衝液(4%のBSA/PBS)で室温にて1時間インキュベートした後、1%のBSA/PBSで希釈した抗MAP2抗体またはβ3-チューブリン(それぞれ、sc-74421及びsc-80005,Santa Cruz Biotechnology Inc)を4℃で12時間添加した。次いで、それらをPBSで2回洗浄した後、Alexa
Flour 488結合抗マウス(Molecular Probes Inc)及びAlexa Flour 594結合ファロイジン(ab176757、Abcam)で室温にて1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄後、スライドを、DAPIで染色し、Vectashield(登録商標)(Vector Laboratories)を載せた。使用した蛍光色素の検出に好適な63×/1.2のW Korr対物レンズ及びフィルターセットを備えたAxioskop 50顕微鏡(Zeiss)を用いて、スライドを観た。MAP-2で免疫標識した画像のデジタル取得のためのマニュアル露出時間を一定に保つことで、異なるウェル及び治療間の比較をすることができた。ファロイジン(F-アクチン)及びDAPI露出時間は、視野に適するように変更した。無作為視野は、Image Pro Plusソフトウェアによって制御されたQImagingカメラを用いて取得した。画像は、TIFFファイルとして保存し、Adobe Photoshop CC 2015.1.2で開いた。その後、MAP-2、DAPIの画像、及びファロイジン画像のオーバーレイを重ねて、合成した。代表的な画像を選択し、調べたタンパク質の存在度及び位置の差を示した。
【0385】
イムノブロット法
上述の示された条件下で培養したSH-SY5Y細胞を、MRx0005及びMRx0029で24時間処理した後、プロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics,UK)のカクテルを含有するRIPA緩衝液で溶解した。タンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を用いて推定し、SDS-PAGEによって分離し、PVDF膜に移した。その後、膜を、5%の脱脂粉乳または5%のBSAで遮断し、一次抗体(それぞれ、MAP2及びβ3-チューブリン)で4℃にて一晩インキュベートした。次いで、ブロットを適切な西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体でインキュベートし、タンパク質を化学発光検出キット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)で検出した。MAP2及びβ3-チューブリンの両方とも、β-アクチンは、試料中のタンパク質ローディング変動性を監視するための対照として機能した。
【0386】
結果及び議論
遺伝子発現
図7a(グラフ挿入)及び図49は、アクチン、バリン、オクルディンTJP1、TJP2、MAP2、DRD2、GABRB3、SYP、PINK1、PARK7、及びNSEの発現レベルのMRx0029及びMRX005誘発変化を示す。
【0387】
顕微鏡検査及びイムノブロット法
図50は、共焦点顕微鏡によって決定されるように、SHSY5Y細胞中のMAP2の発現レベルの変化を示す。MAP2及びB3-チューブリンの発現レベルは、イムノブロット分析によっても定量化した。図50M及び50Nに示す結果は、MRX029が、MAP2の発現レベルの増加を誘発することを示す。
【0388】
配列
配列番号1(16SリボソームRNA、部分配列、株:NP3-JX424772.1のMegasphaera massiliensis遺伝子)


配列番号2(Megasphaera massiliensis株MRX0029のコンセンサス16S rRNA配列)


qPCRに使用したプライマー(括弧内は、配列番号)


配列番号17(Parabacteroides distasonis株MRX0005のコンセンサス16S rRNA配列)


エクスビボqPCRに使用したプライマー及びプローブ(括弧内は、配列番号)
エクスビボ:


qPCRに使用した追加のプライマー(括弧内は、配列番号)
【0389】
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図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B-1】
図7B-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15-1】
図15-2】
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50-1】
図50-2】
【配列表】
2022088641000001.app