IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社MIZUTECの特許一覧 ▶ 熊谷 健の特許一覧 ▶ トゥルーシード株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-内視鏡クリップ 図1
  • 特開-内視鏡クリップ 図2
  • 特開-内視鏡クリップ 図3
  • 特開-内視鏡クリップ 図4
  • 特開-内視鏡クリップ 図5
  • 特開-内視鏡クリップ 図6
  • 特開-内視鏡クリップ 図7
  • 特開-内視鏡クリップ 図8
  • 特開-内視鏡クリップ 図9
  • 特開-内視鏡クリップ 図10
  • 特開-内視鏡クリップ 図11
  • 特開-内視鏡クリップ 図12
  • 特開-内視鏡クリップ 図13
  • 特開-内視鏡クリップ 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088695
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】内視鏡クリップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
A61B17/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019079742
(22)【出願日】2019-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】508001316
【氏名又は名称】有限会社MIZUTEC
(71)【出願人】
【識別番号】519143580
【氏名又は名称】熊谷 健
(71)【出願人】
【識別番号】517100842
【氏名又は名称】トゥルーシード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】水本 吉則
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 健
(72)【発明者】
【氏名】中久保 剛
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD01
4C160DD19
4C160MM32
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】処置対象部位の状況に応じて適宜使用することができ使い勝手の良い内視鏡クリップを提供する。
【解決手段】本発明の内視鏡クリップ1は、両端が開口する管体4と、管体4内に配置される第1基体6を備え、第1基体6から延伸するとともに管体4の一端開口から突出して配置される第1アーム5と、管体4内に配置される第2基体8を備え、第2基体8から延伸するとともに管体4の一端開口から突出して配置されて第1アーム5と対向する第2アーム7と、第1基体6を管体4に係止する係止部20とを備え、第2基体8は、係止部20が第1基体6を管体4に係止した状態で、管体4の一端開口から他端開口に向かって長軸方向に移動して第2アーム7を管体4に収容可能であることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口する管体と、
前記管体内に配置される第1基体を備え、前記第1基体から延伸するとともに前記管体の一端開口から突出して配置される第1アームと、
前記管体内に配置される第2基体を備え、前記第2基体から延伸するとともに前記管体の一端開口から突出して配置されて前記第1アームと対向する第2アームと、
前記第1基体を前記管体に係止する係止部とを備え、
前記第2基体は、前記係止部が前記第1基体を前記管体に係止した状態で、前記管体の一端開口から他端開口に向かって長軸方向に移動して前記第2アームを前記管体に収容可能であることを特徴とする内視鏡クリップ。
【請求項2】
前記第2基体の前記管体の一端開口から他端開口に向かう移動を一時的に停止させる停止機構をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の内視鏡クリップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を結紮等する際に用いられる内視鏡クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置を用いて体内に挿入され、生体組織に生じた開口の閉塞や止血処置を行うためのクリップとして、例えば特許文献1及び2に記載のクリップがある。特許文献1記載のクリップは、互いに対向して配置された一対のアームを粘膜に押しつけて、この状態を維持しながらクリップを互いに近接させていき、粘膜をはさみ込むことで処置対象部位の結紮処置を行う。特許文献2記載のクリップは、一方のアームを患部周辺の粘膜に押しつけてこの状態を維持したまま固定された他方のアームに向かって一方のアームを牽引することで、粘膜を他方のアーム側に引き寄せて処置対象部位の結紮処置を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4512725号公報
【特許文献2】特許第6084347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1記載のクリップは一対のアームを均等な力で粘膜に押しつけておく必要があるため、均等な力で押し付けることが難しい側壁等の処置には適していない。また、特許文献2記載のクリップは、処置対象部位の大きさに対してクリップの開口が大きすぎる場合には、クリップの開口を閉じるために必要以上に粘膜を牽引することになり、処置対象部位を適切に処置することができない。そのため、術者は処置対象部位の状況に応じて上述したクリップを使い分ける必要があるが、予め体内の状況を見極めてクリップを選定しておくことは難しい。また、当初使用する予定で患者の体内に挿入したクリップでの処置を行うことができない場合には、一度クリップを抜いて異なるクリップを付け替えなければならず、術者に時間と手間がかかり手術が煩雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであって、処置対象部位の状況に応じて適宜使用することができる内視鏡クリップを提供することをその主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内視鏡クリップは、両端が開口する管体と、前記管体内に配置される第1基体を備え、前記第1基体から延伸するとともに前記管体の一端開口から突出して配置される第1アームと、前記管体内に配置される第2基体を備え、前記第2基体から延伸するとともに前記管体の一端開口から突出して配置されて前記第1アームと対向する第2アームと、前記第1基体を前記管体に係止する係止部とを備え、前記第2基体は、前記係止部が前記第1基体を前記管体に係止した状態で、前記管体の一端開口から他端開口に向かって長軸方向に移動して前記第2アームを前記管体に収容可能であることを特徴とする。
【0007】
上述の構成により、本発明の内視鏡クリップは、第1基体を管体に係止した状態で第2基体を管体の長軸方向に移動させて第1アームに対する第2アームの配置を変更させることができる。そのため、第2基体を移動させないで第1アームと第2アームとが対向した第1処置形態で処置を行えば、第1アームと第2アームとで患部周辺の粘膜を挟み込んで結紮処置を行うことができる。また、第2基体を管体の長軸方向に移動させて第2アームを管体に収容し第1アームと第2アームとが離間する第2処置形態で処置を行えば、第1アームを第2アーム側に牽引して粘膜を一方向に引き寄せて結紮処置を行うことができる。そのため、本発明の内視鏡クリップは処置対象部位に応じて術者が所望する第1処置形態又は第2処置形態のいずれかにも構成することができ、術者の手間を省いて使い勝手の良いクリップを提供することができる。
【0008】
本発明の内視鏡クリップの具体的な一態様としては、前記第2基体の前記管体の一端開口から他端開口に向かう移動を一時的に停止させる停止機構をさらに備えるものを挙げることができる。
【0009】
上述の構成により、停止機構によって第2基体の移動を一時的に停止させることができるため、例えば術者が所望する任意の位置で第2基体の移動を停止すれば、術者は第1アームと第2アームとの開口幅が処置対象部位に最適な開口幅となるように調整することができ、さらに使い勝手のよい内視鏡クリップを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処置対象部位の状況に応じて適宜使用することができ使い勝手の良い内視鏡クリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1挿入管に本実施形態の内視鏡クリップを挿入した断面図。
図2】第1挿入管から本実施形態の内視鏡クリップを送出した断面図。
図3】第1処置形態における内視鏡クリップの斜視図。
図4】第1処置形態における内視鏡クリップの展開図。
図5】第1処置形態における内視鏡クリップの断面図。
図6】本実施形態の内視鏡クリップが結索処置を行う際の斜視図。
図7】本実施形態の内視鏡クリップが結索処置を行う際の断面図。
図8】患者の体内に残留する内視鏡クリップ本体の断面図。
図9】第2処置形態における内視鏡クリップの斜視図。
図10】第2処置形態における内視鏡クリップの断面図。
図11】停止機構を備える内視鏡クリップの断面図。
図12】別の実施形態における内視鏡クリップの斜視図。
図13】別の実施形態における内視鏡クリップの断面図。
図14】別の実施形態における内視鏡クリップの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の内視鏡クリップについて、以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
本発明の内視鏡クリップは、患者の体内において結紮処置を行うためのものであって、図示しない外部装置である内視鏡操作ユニットに接続して使用されるものである。
【0014】
内視鏡操作ユニットは、患者の体内に挿入される図示しない内視鏡本体と、内視鏡本体に挿入して使用される図1に示す処置具100と、図示しない撮像装置と、図示しない光源装置とを備える。
【0015】
内視鏡本体は、可撓性を有する材料で構成されるとともに管状形状をなすものであって、その内部に複数の挿通路が設けられたものである。本実施形態においては、処置具100を挿通するための第1挿通路、患者の体内の映像を体外に配置した外部モニターに映すための撮像装置が配置される第2挿通路、患者体内を術者が視認するための光源装置が配置される第3挿通路が設けられている。
【0016】
処置具100は、図1及び図2に示すように、第1挿通路に挿通される挿入管101と、挿入管101内に挿通される操作ワイヤ102と、患者の体外に配置され術者が操作ワイヤ102を押出または牽引する操作を行う操作本体103とを備える。
【0017】
挿入管101は、可撓性を有する材料で構成されるものであって、外径が第1挿通路の内径よりも小さくなるように構成される。また、管内には操作ワイヤ102が挿通されるとともに、操作ワイヤ102に連結された内視鏡クリップ1が先端に配置されるものである。
【0018】
操作ワイヤ102は、図1及び図2に示すように、その先端に内視鏡クリップ1が連結されるフックを備えるとともに、終端に操作本体103が連結される。該フックは先端に第1矢じりフック102aが設けられるとともに、一定距離を隔てて逆向きに同形状の第2矢じりフック102bが設けられている。これら第1矢じりフック102a及び第2矢じりフック102bは操作ワイヤ102を介して連結されている。
【0019】
操作本体103は図1及び図2に示すように、スライダー103aを備え、スライダー103aを摺動させることで操作ワイヤ102を押出または牽引する操作を行い、挿入管101に対して本実施形態の内視鏡クリップ1を進退移動するように構成されている。
【0020】
しかして、本実施形態の内視鏡クリップ1は図3図4及び図5に示すように、内視鏡クリップ本体2と、内視鏡クリップ本体2を処置具100に接続する接続部3とを備える。
【0021】
内視鏡クリップ本体2は、図3図4及び図5に示すように、両端が開口する管体4と、管体4内に配置される第1基体6を備え、第1基体6から延伸するとともに管体4の一端開口から突出して配置される第1アーム5と、管体4内に配置される第2基体8を備え、第2基体8から延伸するとともに管体4の一端開口から突出して配置されて第1アーム5と対向する第2アーム7とを備える。
【0022】
管体4は、図3及び図4に示すように略円筒形状をなし、例えばプラスチック等の素材を用いて構成される。この管体4の外径は、挿入管101よりも小さい外径を有するように構成されている。なお、以下では説明のため、第1アーム5及び第2アーム7が突出して配置される一端開口を先端と記載し、接続部3が配置される他端開口を終端と記載することとする。
【0023】
管体4の外周面の略中央部の相対する位置には、終端に向かって外径が広がるように傾斜する平面視略矩形状の一対の突起部4aと、突起部4aを押圧すると管体4の外周面と面一となるように収容する平面視略矩形状の一対の管体孔部4bとがそれぞれ設けられている。この突起部4aは、力が加えられていない状態においてその外径が挿入管101の外径よりも大きくなるように構成されている。
【0024】
管体4の内面は、段階的に先端から終端に向かって内径が広がるように構成されており、図5に示すように内径の大きさによって3つの領域に区分けされる。この3つの領域とは、管体4の先端近傍に配置する第1領域r1、終端近傍に配置する第3領域r3、第1領域r1と第3領域r3との間に配置される第2領域r2である。第1領域r1の内径は第2領域r2の内径よりも小さくなるように構成され、第2領域r2の内径は第3領域r3の内径よりも小さくなるように構成される。そのため、第1領域r1と第2領域r2との境界には段差が設けられるとともに、第2領域r2と第3領域との境界にも段差が設けれている。
【0025】
また管体4の終端には、図3及び図4に示すように管体4の開口端の一部に略円弧状をなす切り欠き4cが設けられている。この切り欠き4cは後述する引掛部11bよりも十分大きい開口を形成する。
【0026】
第1アーム5は、図3図4及び図5に示すように長尺な金属製の薄板に曲げ加工を施して形成されるものであって、管体4に配置される第1基体6と、第1基体6から延伸するとともに管体4の一端開口から突出する第1延伸部5aと、第1延伸部5aの先端を内側に湾曲させた第1湾曲部5bとを備える。この第1基体6、第1延伸部5a及び第1湾曲部5bは同一部材を用いて構成される。
【0027】
第1基体6は、図4及び図5に示すように管体4の長軸方向と平行に延伸し第1延伸部5aの終端に接続される第1接続部6aと、第1接続部6aに接続されて略コの字形状に折り曲げられた第1屈曲部6bとを備える。
【0028】
第1屈曲部6bは弾性を有し、屈曲する両端部が管体4の内面を押圧した状態で管体4の第2領域r2に配置され、第1屈曲部6bの先端は第1領域r1と第2領域r2との間に形成される段差によって第1領域r1に侵入できないようになっている。
【0029】
第1屈曲部6bはその弾性力によって管体4の内面を押圧することで第1基体6を管体4に係止している。そのため本実施形態において第1屈曲部6bが請求項にいう係止部20となる。
【0030】
第1延伸部5aは開口から広がるように管体4の長軸方向に対して斜め方向に延伸するものである。また、第1湾曲部5bは本実施形態においてその先端部分に山型の凸部9が設けられている。
【0031】
第2アーム7は、図4及び図5に示すように、長尺な金属製の薄板に曲げ加工を施して形成されるものであって、管体4に配置される第2基体8と、第2基体8から延伸するとともに管体4の一端開口から突出する第2延伸部7aと、第2延伸部7aの先端を内側に湾曲させた第2湾曲部7bとを備える。この第2基体8、第2延伸部7a及び第2湾曲部7bとは同一部材を用いて構成される。
【0032】
第2基体8は、管体4の長軸方向と平行に延伸し第2延伸部7aの終端に接続される第2接続部8aと、第2接続部8aに接続されて略コの字形状に折り曲げられた第2屈曲部8bとを備える。
【0033】
第2屈曲部8bは弾性を有し、屈曲する両端部が管体4の内面を押圧した状態で管体4の第2領域r2に配置される。このとき、第2領域r2には第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bが配置されるが、第1屈曲部6bは管体4の先端側に配置され、第2屈曲部8bは管体4の終端側に配置される。そのため、管体4の先端から終端に向かって第1基体6、第2基体8の順に配置されている。
【0034】
第2延伸部7aは第1延伸部5aと対向して開口から広がるように管体4の長軸方向に対して斜め方向に延伸する。また、第2湾曲部7bは本実施形態においてその先端部分に谷型の凹部10が設けられている。この凹部10は第1湾曲部5bに設けられた凸部9に嵌合するものである。
【0035】
接続部3は、図3図4及び図5に示すように、管体4の終端に挿入して配置され、第1基体6を管体4の終端側に牽引する牽引部11と、管体4の終端に当接して配置されるとともに処置具100に接続される連結部材12とを備える。
【0036】
牽引部11は、管体4に挿入して配置され、連結部材12の一端面から管体4の長軸方向に延伸する第3延伸部11aと、第3延伸部11aの先端に設けられた引掛部11bとを備える。
【0037】
第3延伸部11aは、管体4の内径よりも十分小さい幅の薄板から構成され、管体4の内側面に沿って近接して配置される。そのため、管体4内に第3延伸部11aが配置している状態で、管体4の第2領域r2及び第3領域r3には第2基体8が管体4の長軸方向に移動可能な空間が形成される。
【0038】
引掛部11bは第3延伸部11aと同一部材で構成されたものであって、第3延伸部11aの先端を延伸方向に対して略直角に折り曲げた形状をなすものである。この引掛部11bは第1屈曲部6bよりも管体4の先端側に配置されるため、第1屈曲部6bが引掛部11bに引っかかった状態で配置される。
【0039】
連結部材12は、略円筒形状をなすものであって、その外径が管体4の外径よりも大きくなるように構成されている。一端面には牽引部11が配置され、他端面には処置具100の操作ワイヤ102の先端に設けられた第1矢じりフック102aが挿入して係止される連結孔部13が設けられている。この連結孔部13は、略中央部に設けられ第1矢じりフック102aよりも大きな外径を有する第1開口部13aと第1開口部13aに連通するとともに連結部材12を対称な2つの分割体に分割する第2開口部13bとを備える。この第2開口部13bの幅は第1矢じりフック102aの外径よりも十分小さく構成される。
【0040】
第2開口部13bによって分割された分割体は、それぞれ円筒の半径方向に弾性変形可能に構成されるので、第1矢じりフック102aはこの分割体を半径方向に弾性変形することによって第1開口部13aまで侵入する。そして第1矢じりフック102aが第1開口部13aまで侵入すると分割体は弾性力によって元の位置にもどる。ここで、第2矢じりフック102bは連結部材12に近接して配置されるとともに、第1矢じりフック102aと第2矢じりフック102bとの間を連結する操作ワイヤ102が第2開口部13bに配置される。上述の構成により、第1矢じりフック102aが第1開口部13aに留まり、操作ワイヤ102が連結部材12に連結される。
【0041】
以下、本実施形態における内視鏡クリップ1を用いた処置動作について説明する。
【0042】
術者は、患者の体内にある患部に結索処置を行う場合、既に患者の体内に配置されている内視鏡本体の第1挿通路に内視鏡クリップ1が接続された処置具100を挿入する。ここで、内視鏡クリップ1は、図1に示すように連結部材12を上述のように操作ワイヤ102に連結することによって処置具100に連結されている。
【0043】
第1挿通路に挿入された処置具100が第1挿通路から突出して患者の体内に入ると、図2に示すように術者は操作本体103のスライダー103aを摺動させて内視鏡クリップ本体2を挿入管101から送出させる。
【0044】
このとき、内視鏡クリップ1の管体4の外側周面に設けられた一対の突起部4aはそれぞれ管体孔部4bに収容された状態で挿入管101内を進み、内視鏡クリップ本体2が挿入管101から送出されると、突起部4aはその弾性力により管体孔部4bから付勢して挿入管101の外径よりも大きく広がり、突起部4aが挿入管101の開口端に当接する。そのため、この突起部4aが内視鏡クリップ本体2が再度挿入管101に侵入することを阻害する。
【0045】
また、第1アーム5及び第2アーム7は図1に示すように、挿入管101の内面を押圧した状態で通過する。そして、挿入管101から内視鏡クリップ本体2が送出されると、図2に示すようにその弾性力によって付勢して患者の体内で広がり、第1アームと第2アーム7とが対向した状態で配置する。
【0046】
ここから、処置対象部位によって本実施形態の内視鏡クリップ1は以下2通りのいずれかの処置動作を行う。
【0047】
<第1処置形態>
まず、本実施形態の内視鏡クリップ1の第1処置形態における処置動作について説明する。ここで、第1処置形態とは上述したように第1アーム5及び第2アーム7が互いに対向して配置された図2図5に示す状態をいう。
【0048】
術者は第1アーム5の第1湾曲部5bを患部周囲の粘膜に押圧して配置するとともに、第2アーム7の第2湾曲部7bを患部を挟んで第1湾曲部5bと対向する患部周囲の粘膜に押圧して配置する。
【0049】
そして、第1湾曲部5b及び第2湾曲部7bを粘膜に押圧した状態で、術者がスライダー103aを摺動させて操作ワイヤ102を牽引すると、引掛部11bが管体4の終端に向かって移動することによって引掛部11bに引っかかった第1屈曲部6b、また第1屈曲部6bに押される第2屈曲部8bが管体4の終端に向かって長軸方向に移動する。同時に第1延伸部5a及び第2延伸部7aが管体4内に収容されていくため、第1アーム5と第2アーム7との開口幅が徐々に狭まりながら、第1湾曲部5bと第2湾曲部7bとが押圧する粘膜が近接していく。
【0050】
その後、第1延伸部5a及び第2延伸部7aがともに管体4内に全て収容されると、図6及び図7に示すように第1湾曲部5bの凸部9及び第2湾曲部7bの凹部10が、第1湾曲部5bが押圧した粘膜と第2湾曲部7bが押圧する粘膜とを挟み込みながら嵌合して結索する。
【0051】
このとき、第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bが管体4の終端側に向かって長軸方向に移動すると、図7に示すように管体4の第2領域r2と第3領域r3との間に設けられた段差を通過する。このとき、第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bは、その両端部が管体4の内面を押圧しているので段差を通過するとその弾性力によって管体4の第3領域r3の内径に付勢して広がり第3領域r3の内面を押圧する。そのため、第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bが段差によって先端側に移動することができなくなり、第1湾曲部5b及び第2湾曲部7bが粘膜を結索して固定される。
【0052】
第1湾曲部5b及び第2湾曲部7bが粘膜を結索して固定されると、術者はさらにスライダー103aを摺動させて操作ワイヤ102を牽引する。このとき、突起部4aが挿入管101の開口端に当接して内視鏡クリップ本体2は挿入管101に侵入することができないので、接続部3のみが牽引される。接続部3が牽引されることで、引掛部11b及び引掛部11bに引っ掛けられた第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bも同時に牽引される。管体4の終端まで引掛部11bが移動すると、第3延伸部11aを管体4の径方向に移動させることで切り欠き4cから引掛部11bが抜出される。このとき、第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bは管体4の内面を押圧して配置するため管体4内に留まり、第1基体6及び第2基体8が管体4に固定される。
【0053】
その後、術者がさらにスライダー103aを摺動させて操作ワイヤ102を牽引すると、接続部3が挿入管101を移動して患者の体外へと排出され、図8に示すように内視鏡クリップ本体2は患部を結索した状態で体内に留置される。
【0054】
<第2処置形態>
次に、本実施形態の内視鏡クリップ1の第2処置形態における処置動作について説明する。
【0055】
術者は、処置対象部位が第1アーム5と第2アーム7との開口よりも大きい場合や、処置対象部位が側壁等にある場合、第2アーム7の第2湾曲部7bの先端を粘膜に押し付ける。ここで、管体4の第2領域r2及び第3領域r3には空間が形成されているので、この空間を第2屈曲部8bが管体4の終端に向かって長軸方向に移動する。同時に第2アーム7の第2延伸部7aが管体4に収容されて第2湾曲部7bは第1湾曲部5bから離間していく。このとき、第1屈曲部6bが管体4の第2領域r2の内面を押圧して配置しているので第1基体6は管体4に係止されている。(この第1屈曲部6bが請求項にいう係止部20となる。)そのため、第1アーム5は係止部20(本実施形態では第1屈曲部6b)によって係止された状態で第2アーム7のみが管体4内に収容される。
【0056】
第2屈曲部8bが管体4の終端側に向かって長軸方向に移動すると管体4の第2領域r2と第3領域r3との間の段差を通過する。第2屈曲部8bの両端部は管体4の内面に押圧されて配置されているので、段差を通過すると第2屈曲部8bは付勢して第3領域r3の内径に広がる。そのため、第2屈曲部8bは段差によって管体4の終端から先端に向かって移動することが出来なくなる。
【0057】
これにより、本実施形態の内視鏡クリップ1は、図9及び図10に示すように、第2アーム7が管体4に収容されて第1アーム5と第2アーム7とが離間して、第2湾曲部7bと第1湾曲部5bとが離間した第2処置形態となる。
【0058】
術者は、内視鏡クリップ1が第2処置形態となれば、第1湾曲部5bを処置対象部位周辺の粘膜に押し付けて、スライダー103aを摺動させて操作ワイヤ102を牽引する。このとき、操作ワイヤ102に接続された牽引部11の引掛部11bが管体4の終端側に向かって長軸方向に移動することによって、引掛部11bに引っ掛かっている第1屈曲部6bが管体4の終端側に向かって長軸方向に移動する。そのため、第1延伸部5aが管体4内に収容されて、第1湾曲部5bが粘膜を引張しながら第2湾曲部7bに近接していく。
【0059】
その後、第1延伸部5aが管体4内に全て収容されると、第1湾曲部5bが引張してきた粘膜が第1湾曲部5bと第2湾曲部7bとで挟み込まれ、第1湾曲部5bの凸部9及び第2湾曲部7bの凹部10が、第1湾曲部5bが引張してきた粘膜を挟み込みながら嵌合して結索する。
【0060】
このとき、図10に示すように第1屈曲部6bが管体4の終端側に向かって長軸方向に移動すると、前述したように管体4の第2領域r2と第3領域r3との間に設けられた段差を通過する。そのため、第1屈曲部6bが付勢して第3領域r3の内径に広がり、第1屈曲部6bが段差によって第2領域r2に侵入することができなくなる。
【0061】
そのため、図7及び図8に示すように、第1湾曲部5b及び第2湾曲部7bが粘膜を結索した状態で固定される。術者はさらにスライダー103aを摺動させて操作ワイヤ102を牽引して切り欠き4cから引掛部11bを抜出する。このとき、第1屈曲部6bは管体4の内面を押圧して配置するため管体4内に留まり、第1基体6が管体4に固定される。
【0062】
その後、術者がさらにスライダー103aを摺動させて操作ワイヤ102を牽引すると、接続部3が挿入管101を移動して患者の体外へと排出され、図8に示すように内視鏡クリップ本体2は患部を結索した状態で体内に留置される。
【0063】
上述したように構成された本実施形態の内視鏡クリップ1は以下のような格別な効果を備える。
【0064】
つまり、本実施形態の内視鏡クリップ1は、第2基体8を管体4の長軸方向に移動させて第2アーム7の第1アーム5に対する位置を変更させることができる。そのため、第1アーム5と第2アーム7とが対向した第1処置形態で処置を行えば、第1アーム5と第2アーム7とで患部周辺の粘膜を挟み込んで結紮処置を行うことができる。
【0065】
また、第2基体8を管体4の長軸方向に移動させて第2アーム7を管体4に収容すれば第1アーム5と第2アーム7とが離間した第2処置形態を形成することができる。この第2処置形態で処置を行えば、第1アーム5を第2アーム7側に牽引して粘膜を一方向に引き寄せて結紮処置を行うことができる。そのため、本実施形態の内視鏡クリップ1は処置対象部位に応じて術者が所望する第1処置形態又は第2処置形態のいずれかにも構成することができ、処置対象部位の予測やクリップを交換する等の術者の手間を省いて使い勝手の良いクリップを提供することができる。
【0066】
また、第1湾曲部5b及び第2湾曲部7bに互いに嵌合する凸部9及び凹部10をそれぞれ設けているので、より粘膜を掴みやすくすることができる。
【0067】
さらに、第2アーム7が管体4の長軸方向に移動する際に、第1アームが係止部20によって固定される(本実施形態では第1屈曲部6bを弾性部材で構成することにより、第1屈曲部6bが管体4の内面を押圧して係止する)。そのため、第1屈曲部6bによって第1アームを確実に管体4に係止した状態で第2屈曲部8bを管体4の終端に向かって長軸方向に移動させて第2処置形態とすることができる。
【0068】
加えて、管体4の内径を段階的に変化させて第1領域r1、第2領域r2、第3領域r3を設けることにより、管体4の内面を押圧して配置する第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bがそれぞれの領域の内径に付勢して広がり、領域の境界に設けられた段差によって、その領域よりも管体4の先端側に配置する領域には侵入できなくなる。そのため、第1屈曲部6b及び第2屈曲部8bが管体4の先端から抜出することを確実に防止できる。
【0069】
また、本発明の内視鏡クリップは以下のように構成してもよい。
【0070】
つまり、本実施形態の内視鏡クリップ1に、図11に示すように第2基体8の管体4の終端に向かう移動(請求項にいう「一端開口から他端開口に向かう移動」に該当する)を一時的に停止させる停止機構30を設けてもよい。
【0071】
停止機構30は、管体4の内周面において長軸方向に設けられた複数の第1凸部31と、第2基体8の第2接続部8aに設けられた第1凸部31と合致する複数の第2凹部32とを備える。
【0072】
第1凸部31は、管体4の第2領域r2及び第3領域r3に設けられており、第2接続部8aと対向する面に連続して形成されている。
【0073】
第2凹部32は、第2接続部8aの管体4に対向する面に長軸方向にわたって一定間隔に形成されている。
【0074】
上述した内視鏡クリップ60の結索措置について説明する。術者が第2処置形態を使用する場合に、第2アーム7の第2湾曲部7bの先端を押圧して第2基体8を管体4に収容させると、第2接続部8aに設けられた第2凹部32と管体4に設けられた第1凸部31とが嵌合して第2基体8の終端に向かう移動が停止する。
【0075】
ここで、第1アーム5と第2アーム7の開口幅が術者の所望の大きさである場合には、術者は第2湾曲部7bの先端の押圧をやめて、スライダー103aを摺動させて操作ワイヤ102を牽引して第1アーム5を第2アーム7側に牽引する。
【0076】
一方、第1アーム5と第2アーム7の開口幅が術者の所望の大きさでない場合には、術者はさらに第2湾曲部7bの先端を押圧する。すると、第2接続部8aの第2凹部32と管体4に設けられた第1凸部31との嵌合が外れて、第2基体8がさらに管体4の終端側に移動する。このとき、第1凸部31は管体4の第3領域r3まで形成されているので、先程とは異なる第1凸部31に第2凹部32が嵌合して第2基体8の移動が停止される。
【0077】
このように術者は第1アーム5と第2アーム7の開口幅が所望の大きさとなるまで第2湾曲部7bを押圧し、所望の位置となったところでスライダー103aを摺動させて第1アーム5を第2アーム7側に牽引する。
【0078】
上述のように構成した第2実施形態の内視鏡クリップ60では、停止機構30によって第2基体8を一時的に停止させることができるため、術者が所望する任意の位置で第2基体8の移動を停止すれば、術者は第1アーム5と第2アーム7との開口幅が処置対象部位に最適な開口幅となるように調整することができ、さらに使い勝手のよい内視鏡クリップ1を提供することができる。
【0079】
本発明は、上述の構成に限られたものではない。
【0080】
管体の先端部に図12に示すように円環形状のカバー40を配置してもよい。カバー40を配置すれば第1アーム5及び第2アーム7が出し入れされる際の接触部分を補強することができる。このカバー40は金属部材で構成されることが好ましい。また、カバー40が配置された状態において、管体4とカバー40とは外面及び内面ともに面一となるように構成すれば、挿入管101内で管体4をスムーズに移動させることができる。
【0081】
第2領域と第3領域との間に設けられた段差は管体の軸方向の断面視において鋭角に構成されてもよい。この場合鋭角に構成された段差に第1屈曲部及び第2屈曲部が引っ掛ることで、第1屈曲部及び第2屈曲部が管体から外れることを確実に防止できる。
【0082】
また、牽引部によって係止部を構成してもよい。この場合、管体内部において引掛部が管体の内側面に近接するように第3延伸部を湾曲させて構成したものが挙げられる。このように構成すれば引掛部に引っ掛かかる第1屈曲部は管体の内面に押し付けられるため、牽引部が第1基体を係止した状態で、第2基体を管体の終端に向けて移動させることができる。
【0083】
さらに、図13に示すように、係止部として第1屈曲部6bの先端をさらに内側へ折り曲げた当接部6cを設けてもよい。これにより、当接部6cが引掛部11bよりも管体4の先端側に配置されるため引掛部11bが移動しない限り確実に第1基体6を当接部6cで係止して、第2基体8を管体4の終端に向けて移動させることができる。
【0084】
接続部3を内視鏡クリップ本体2から取り外す構成としては、図14に示すように、牽引部11の第3延伸部11aに切り欠き50を設けてもよい。このように構成すれば、術者がスライダーを摺動させて操作ワイヤを牽引した際に第3延伸部11aの切り欠き50によって第3延伸部11aが剪断されて牽引部11を内視鏡クリップ本体2から切り離すことができる。
【0085】
停止機構の構成は上述のものに限られたものではなく、第1凸部及び第2凹部の形状、位置、間隔等は適宜変更することができる。
【0086】
また、停止機構を構成する第1凸部や第2凹部は管体や第2基体そのものに形成されるのではなく、別体として形成されてその後管体や第2基体に組み込まれたものであってもよい。
【0087】
さらに停止機構の構成は第1凸部や第2凹部に限られたものではなく、例えば第2基体と管体との間に摩擦が生じるシート等を配置することにより構成してもよい。
【0088】
加えて、第2基体の第1基体と対向する面と管体と対向する面とにおいて摩擦力が異なるように材料や形状を変更して、第2基体の第1基体に対する摩擦力を、第2基体の管体に対する摩擦力よりも小さくすることにより停止機構を構成してもよい。このように構成すれば、第2基体を管体内で確実に停止した状態で第1基体を移動させることができ、第1基体の移動に連動して第2基体が移動することを確実に防止することができる。
【0089】
管体内における第1屈曲部と第2屈曲部との位置関係は上記実施形態に限られたものではない。例えば、管体の先端側に第2屈曲部を配置し、管体の終端側に第1屈曲部を配置してもよい。この場合、第1屈曲部に孔部を設けてこの孔部を第2屈曲部が通過するように構成することができる。また、第1屈曲部と第2屈曲部とを管体内において並列に配置してもよい。この場合、第1屈曲部及び第2屈曲部それぞれに引掛部を配置してもよい。
【0090】
本発明は、その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1・・・内視鏡クリップ
4・・・管体
5・・・第1アーム
6・・・第1基体
7・・・第2アーム
8・・・第2基体
20・・係止部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14