(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088710
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造及び前記フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を使用した電気回路基板構造
(51)【国際特許分類】
H05K 1/16 20060101AFI20220608BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20220608BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220608BHJP
H01C 13/00 20060101ALI20220608BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20220608BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20220608BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
H05K1/16 A
H01G4/40 307A
H01G4/40 321A
H01G4/30 541
H01C13/00 A
H01F27/00 S
H05K3/46 G
H05K3/46 Q
H05K3/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200668
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】514300672
【氏名又は名称】鼎展電子股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】葉宗和
【テーマコード(参考)】
4E351
5E001
5E070
5E082
5E316
5E343
【Fターム(参考)】
4E351AA16
4E351BB03
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5E316AA02
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5E343GG20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量薄肉化を有効に実現するフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を提供する。
【解決手段】フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDにおいて、第1導電金属層11と、第1電気抵抗層12と、第1誘電体層Ie1と、可撓性支持層Fsと、第2誘電体層Ie2と、第2電気抵抗層22と、第2導電金属層21と、をこの順に含む。第1電子回路は、2回の現像・エッチング処理を施した後のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の頂部表面の上に、少なくとも1つの薄膜電気抵抗と、少なくとも1つの薄膜インダクタと、少なくとも1つの薄膜コンデンサとを含む。そして、同時に第2電子回路は、フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の底部表面の上に、少なくとも1つの薄膜電気抵抗と、少なくとも1つの薄膜インダクタと、少なくとも1つの薄膜コンデンサとを含む。
【選択図】
図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電金属層と、
その一表面が前記第1導電金属層の一表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第1電気抵抗層と、
その一表面が前記第1電気抵抗層の他表面に結合される第1誘電体層と、
その一表面が前記第1誘電体層の他表面に結合される可撓性支持層と、
その一表面が前記可撓性支持層の他表面に結合される接合層と、
前記接合層の他表面の上に形成される第2導電金属層と,を含むことを特徴とする、
フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込式受動素子の複合銅膜の技術分野に係り、特に、フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造及び前記フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を使用した電気回路基板構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自らプリント電気回路基板(Printed circuit board,PCB)を購入すると共に、予め設計された回路レイアウト(circuit layout)に基づいて、前記プリント電気回路基板に対して現像、エッチングと剥膜(Developing/Etching/Stripping,DES)などのプロセスを行い、その後、前記プリント電気回路基板の表面の上に、電子回路と呼ばれるような図案化された銅箔回路を製作する経験は、電気電子工学、電気機械工学や情報工学を習得した経歴を持つエンジニアであれば、一度は必ずあるはずである。電子回路の製作が完了した後、また、次いで、電子回路の上に予め決定したチップと受動素子を配置し、例えば、アンプ、プロセッサ、レジスト、コンデンサやインダクタンスなどが挙げられる。
【0003】
一方、知能技術の高度発展に伴って、ポータブル式電子製品の基本的な規格として軽量及び薄肉の要求が高まっている。考えれば分かるように、ポータブル式電子製品の体積サイズの更なる軽量薄肉に向けた絶え間ない進化と相まって、その内部の電子チップと受動素子を受容可能な空間もそれにつれて圧縮されてしまうことになる。よって、ポータブル式電子製品の有限な内部空間内に十分な量の電子素子と受動素子を配置できるようにすることが、電子デバイス製造メーカーと組立工場が直面している最大の難題の一つである。
【0004】
これに鑑み、産業界の対応策としては、受動素子の寸法を持続的に縮小することが提唱されている。現在、寸法サイズが0805(80×50mil2)と0603(60×30mil2)の受動素子は、主にマザーボードとノート型パソコンの製作に使用されている一方、寸法サイズが0402(40×20mil2)と0201(20×10mil2)の受動素子では、スマートフォンとタブレット端末の中に広汎に応用されている。受動素子の寸法サイズについて微細化が継続的に進むなかで、技術上またはプロセス上に限界を必然的に迎えざるをえず、このため、「埋込式受動素子」(Embedded passives)の技術は、近年再び注目を集めていることが推知される。特に、スリー・エム・イノベティブ・プロパティ・カンパニー(3M Innovative Properties Company)より提案された受動的電気構造(Passive electrical article)が米国特許出願公開第2006/0286696(A1)号(特許文献1)に開示されていた。
【0005】
図1は、従来技術の受動的電気構造を示す模式的斜視図である。
図1に示すように、従来技術の受動的電気構造PE´は、第1圧延銅層11´と、電気抵抗層12´と、絶縁層13´と、第2圧延銅層14´とを含む。その内、電気抵抗層12´は、ニッケル・リン化合物(Ni-P compound)であり、かつ前記絶縁層13´は、例えば、厚み範囲が6μm~20μmであるポリイミド(Polyimide,PI)のような重合体である。その内、第1圧延銅層11´と前記電気抵抗層12´とで銅箔電気抵抗1´に構成されてなる。特に説明したいところは、さらに誘電体粒子を前記ポリイミド(絶縁層13´)にドープしてもよい。そして、前記受動的電気構造PE´のプロセスは次のステップ(1)~(3)を含む。
(1)適当な厚みの第1圧延銅層11´を用意し、電気めっき技術を利用してその表面に、電気抵抗層12´として厚みが1μmより小さい一層のニッケル・リン化合物(Ni-P alloy)を形成して、銅箔電気抵抗1´の製作を完了する。
(2)適当な厚みの第2圧延銅層14´を用意し、その表面に、厚みが6~20μmである一層の絶縁層13´(PI)を形成して、銅箔絶縁体1a´の製作を完了する。
(3)前記電気抵抗層12´と前記絶縁層13´を相互に貼り合わせる方式によって、係る銅箔電気抵抗1´と係る銅箔絶縁体1a´を結合させて、所要な受動的電気構造PE´を取得する。
【0006】
一般として、前記第2圧延銅層14´と前記第1圧延銅層11´の厚みが36μmであり、つまり、前記受動的電気構造PE´全体の厚みが79μm~93μmの範囲に入るようになる。しかし、特に注意すべきところは、ニッケル・リン化合物で電気めっきプロセスを介して第1圧延銅層11´のマット面(Matt side)の上に係る電気抵抗層12´を形成するため、その電気めっきプロセスで発生する大量の高リン電気めっき液は、反って廃水の排水と処理に新たに問題が派生する。
一方、曲げ試験機を用いて直径φ4mmの丸棒で前記受動的電気構造PE´に対して曲げテストを行い、この曲げテストが完了するまでの過程において、前記受動的電気構造PE´に対して40回を超えるような曲げを行った後、前記第1圧延銅層11´と前記電気抵抗層12´との間に既に剥離現象が現れ始めることを発見した。この現象の原因は、電気めっきの基材である銅層のマット面にあると考えられ、前記電気抵抗層12´が、粗度がとても高いマット面に沿って核生成と成長していくと、前記電気抵抗層12´の被膜の連続性が悪く、孔が多くて緻密化が進まなくなる。このことを微視的に見ると、機械性質に影響を及ぼすだけではなく、前記電気抵抗層12´の抵抗値を極限まで低くすることもできないことは、素子設計のボトルネックとなってしまう。前記第1圧延銅層11´とニッケル・リン化合物により作製される前記電気抵抗層12´との間の接合性には、依然として改善する余地があることが顕現される。
【0007】
以上の説明に続き、前記銅箔電気抵抗1´を含む前記受動的電気構造PE´の上に、電子回路に必要な電気抵抗素子を製作しようとする場合には、前記受動的電気構造PE´に対して少なくとも3回のエッチングプロセスを施さなければならない。プロセスの需要に応じて、第1段階にて、不要な回路の領域にある銅箔と、その底部にある電気抵抗層12´(ニッケル・リン化合物)をそれぞれエッチング液を用いて除去する必要がある。第2段階にて、引き続きエッチング液を用いて所定の電気抵抗領域にある銅箔を除去する。ニッケル・リン化合物の耐銅食薬液の性能が比較的に劣るので、電気抵抗素子の製品の信頼性が好ましくないことを避けるために、及び顧客からの回路寸法精度への要求を満たすために、エッチング作業を少なくとも3回経る必要がある。作業回数が多ければ多いほど、それに伴って品質と歩留り率に問題が発生してくる。それに加えて、現像・エッチング技術を用いて前記受動的電気構造PE´に電子回路を製作した後、前記電子回路の線幅/線ピッチが、通常、30ミクロン/30ミクロンよりも大きいのは、前記銅箔電気抵抗1´の被膜の緻密度と連続性がまだ完璧に至らないことに起因するものである。
【0008】
このほか、オーク・ミツイ・インコーポレイテッド(Oak-Mitsui Inc.)より提案された抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造(Multilayered construction for resistor and capacitor formation)が米国特許第7192654(B2)号(特許文献2)に開示されていた。
図2は、従来技術の抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造を示す模式的斜視図である。
図2に示すように、従来技術の抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造MS´は、第1圧延銅層21´と、電気抵抗層22´と、第1誘電体層23´と、絶縁層24´と、第2誘電体層25´と、第2圧延銅層26´とを含む。その内、係る絶縁層24´は、例えば、厚み範囲が6μm~20μmであるポリイミド(Polyimide,PI)のような重合体であり、かつ前記第1圧延銅層21´と前記電気抵抗層22´とで銅箔電気抵抗2´に構成されてなる。そして、前記抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造MS´のプロセスは次のステップ(1)~(3)を含む。
(1)適当な厚みの第1圧延銅層21´を用意し、電気めっき技術を利用してその表面に、前記電気抵抗層22´として厚みが1μmより小さい一層のニッケル・リン化合物を形成して、銅箔電気抵抗2´の製作を完了する。
(2)適当な厚みの絶縁層(PI)24´と、第1誘電体層23´と、第2誘電体層25´とを用意し、前記第1誘電体層23´と前記第2誘電体層25´を前記絶縁層24´の一表面と、もう一つの表面にそれぞれ貼り付けて、誘電絶縁体2a´を取得する。
(3)適当な厚みの第2圧延銅層26´を用意し、前記第2圧延銅層26´と、前記誘電絶縁体2a´と、前記銅箔電気抵抗2´とを順に積層する。その内、前記銅箔電気抵抗2´の前記電気抵抗層22´と前記誘電絶縁体2a´の前記第1誘電体層23´とを相互に貼り合わせる。
【0009】
一般として、前記第2圧延銅層26´と前記第1圧延銅層21´の厚みが36μmであり、前記第1誘電体層23´と前記第2誘電体層25´の厚みが8μmであり、かつ係る絶縁層24´の厚みが6μm~20μmである。つまり、抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造MS´全体の厚みが94μm~108μmの範囲に入るようになる。
【0010】
そして、特許文献1で開示された受動的電気構造PE´との共通点は、ニッケル・リン化合物で電気めっきプロセスを介して前記第1圧延銅層21´のマット面(Matt side)の上に係る電気抵抗層22´を形成するため、その電気めっきプロセスで発生する大量の高リン電気めっき液は、廃水の排水と処理に新たに問題が派生する点である。
一方、曲げ試験機を用いて直径φ4mmの丸棒で抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造MS´に対して曲げテストを行い、この曲げテストが完了するまでの過程において、抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造MS´に対して40回を超えるような曲げを行った後、前記第1圧延銅層21´と前記電気抵抗層22´との間に既に剥離現象が現れ始めることを発見した。この現象の原因は、電気めっきの基材である銅層のマット面にあると考えられ、電気抵抗層が、粗度がとても高いマット面に沿って核生成と成長していくと、電気抵抗層の被膜の連続性が悪く、孔が多くて緻密化が進まなくなる。このことを微視的に見ると、機械性質に影響を及ぼすだけではなく、電気抵抗層の抵抗値を極限まで低くすることもできないことは、素子設計のボトルネックとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0286696(A1)号明細書
【特許文献2】米国特許第7192654(B2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の説明から分かるように、現有の抵抗器、インダクタとコンデンサを形成した多層化構造には、明らかに数多くの欠点があり、かつ全体の厚みが厚すぎ、例えば、厚みが12ミクロン以上の銅箔導電層、厚みが10ミクロン以上の誘電体層、厚みが100ミクロン以上のガラス繊維強化エポキシ樹脂と緑色インクガラス繊維強化エポキシ樹脂硬板のように、厚膜設計を主にすることが多く、従って軽量薄肉化を有効に実現することができなかった。
そこで、上記に鑑み、本願の発明者は、発明を鋭意研究考案した結果、遂に本発明に係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造及び前記フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を使用した電気回路基板構造を研究開発して完了させた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主な目的は、第1導電金属層と、第1電気抵抗層と、第1誘電体層と、可撓性支持層と、第2誘電体層と、第2電気抵抗層と、第2導電金属層とを含むフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を提供することである。
特に、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造に対して2回の現像・エッチング処理を施した後、そのフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の頂部表面の上に、少なくとも1つの薄膜電気抵抗と、少なくとも1つの薄膜インダクタと、少なくとも1つの薄膜コンデンサとを含む第1電子回路が製作される。そして、同時にそのフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の底部表面の上に、少なくとも1つの薄膜電気抵抗と、少なくとも1つの薄膜インダクタと、少なくとも1つの薄膜コンデンサとを含む第2電子回路も製作される。勿論、フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の上に導通孔を製作する方式によって、前記第1電子回路を前記第2電子回路に接続させることができる。
【0014】
本発明は、上記の主要な目的を達成するために、係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第1実施例を提供する。
このフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造は、第1導電金属層と、その一表面が前記第1導電金属層の一表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第1電気抵抗層と、その一表面が前記第1電気抵抗層の他表面に結合される第1誘電体層と、その一表面が前記第1誘電体層の他表面に結合される可撓性支持層と、その一表面が前記可撓性支持層の他表面に結合される接合層と、前記接合層の他表面の上に形成される第2導電金属層とを含む。
【0015】
本発明は、上記の主要な目的を達成するために、係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第2実施例を提供する。
このフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造は、第1導電金属層と、その一表面が前記第1導電金属層の一表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第1電気抵抗層と、その一表面が前記第1電気抵抗層の他表面に結合される第1誘電体層と、その一表面が前記第1誘電体層の他表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第2電気抵抗層と、前記第2電気抵抗層の他表面の上に形成される第2導電金属層とを含む。
【0016】
本発明は、上記の主要な目的を達成するために、係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第3実施例を提供する。
このフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造は、第1導電金属層と、その一表面が前記第1導電金属層の一表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第1電気抵抗層と、その一表面が前記第1電気抵抗層の他表面に結合される第1誘電体層と、その一表面が前記第1誘電体層の他表面に結合される可撓性支持層と、その一表面が前記可撓性支持層の他表面に結合される第2誘電体層と、その一表面が前記第2誘電体層の他表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第2電気抵抗層と、前記第2電気抵抗層の他表面の上に形成される第2導電金属層とを含む。
【0017】
本発明は、上記の主要な目的を達成するために、係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第4実施例を提供する。
このフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造は、第1導電金属層と、その一表面が前記第1導電金属層の一表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第1電気抵抗層と、その一表面が前記第1電気抵抗層の他表面に結合される第1可撓性支持層と、その一表面が前記第1可撓性支持層の他表面に結合される第1誘電体層と、その一表面が前記第1誘電体層の他表面に結合される第2可撓性支持層と、その一表面が前記第2可撓性支持層の他表面に結合され、かつニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金から作製される第2電気抵抗層と、前記第2電気抵抗層の他表面の上に形成される第2導電金属層とを含む。
【0018】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、前記第1誘電体層及び/または前記第2誘電体層は、第1誘電体定数と第1損失係数を有する第1誘電体材料と、第2誘電体定数と第2損失係数を有し、誘電体定数調整剤として機能する第2誘電体材料と、高分子粘結材料とを含有し、その内、前記高分子粘結材料で前記第1誘電体材料と前記第2誘電体材料とを粘結した後、半固化型誘電体材料を得、前記半固化型誘電体材料は、タブレット焼結工程を経た後に係る第1誘電体層及び/または係る第2誘電体層に成層される。
【0019】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、焼結工程を経過した後、前記第1誘電体材料の前記第1誘電体定数が999よりも大きく、かつそれに係る第1損失係数が0.029よりも小さく、かつ前記第1誘電体材料は、チタン酸バリウム、一酸化鉛(PbO)がドープされたチタン酸バリウム、酸化イットリウム(Y2O3)がドープされたチタン酸バリウム、酸化マグネシウム(MgO)がドープされたチタン酸バリウム、及び酸化カルシウム(CaO)がドープされたチタン酸バリウムのうちのいずれか1種であってもよい。
【0020】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、焼結工程を経過した後、前記第2誘電体材料の前記第2誘電体定数が5よりも小さく、かつそれに係る第2損失係数が0.01よりも小さく、かつ前記第2誘電体材料は、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のうちのいずれか1種であってもよい。
【0021】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、前記第1誘電体層及び/または前記第2誘電体層の誘電体定数が8よりも大きく、かつその損失係数が0.02よりも小さい。
【0022】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、前記高分子粘結材料は、半固化特性を持ち、かつそれはエポキシ樹脂(Epoxy)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)、及びリン含有樹脂のうちのいずれか1種であってもよい。
【0023】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係るエポキシ樹脂(Epoxy)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、オルソクレゾールエポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、p-キシレンエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、及びクレゾールフェニルノボラックエポキシ樹脂のうちのいずれか1種であってもよいし、またはそれらのいずれか2種の組合せであってもよいし、もしくはそれらのいずれか2種以上の組合せであってもよい。
【0024】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係るリン含有樹脂は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、及びリン含有ビスフェノールA型フェノール樹脂のうちのいずれか1種であってもよい。
【0025】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、前記第1誘電体層及び/または前記第2誘電体層は、いずれも硬化材料をさらに含有し、かつ前記硬化材料は、架橋剤、硬化促進剤、難燃剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、下地処理剤、界面活性剤、靭性改質剤、及び溶剤のうちのいずれか1種であってもよい。
【0026】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る架橋剤は、アミン付加物であり、かつ前記アミン付加物は、ジアミノジフェニルスルホン、ヒドラジド、ジヒドラジド、ジシアンジアミド、及びアジピン酸ジヒドラジドのうちのいずれか1種であってもよい。
【0027】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る硬化促進剤は、イミダゾール、三フッ化ホウ素アミン錯体、塩化エチルトリフェニルホスフィン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、及びジメチルアミノピリジンのうちのいずれか1種であってもよい。
【0028】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る難燃剤は、ビスフェノールビフェニルリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ヒドロキノン-ビス-(ジフェニルリン酸エステル)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(イソプロピルクロリド)リン酸エステル、トリメチルリン酸エステル、ジメチル-メチルリン酸エステル、レゾルシノールビスジメチルフェニルリン酸エステル、ポリリン酸メラミン、ホスファゾ化合物、及びホスファゼン化合物のうちのいずれか1種であってもよい。
【0029】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る界面活性剤は、シラン化合物、シロキサン化合物、及びアミノシラン化合物のうちのいずれか1種であってもよいし、またはそれらのいずれか2種の重合体であってもよいし、もしくはそれらのいずれか2種以上の重合体であってもよい。
【0030】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る靭性改質剤は、ゴム樹脂、ポリブタジエン、及びコアシェル重合体のうちのいずれか1種であってもよい。
【0031】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る溶剤は、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオン酸塩、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルのうちのいずれか1種であってもよい。
【0032】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係るレベリング剤は、ドイツBYK-Chemie社製の二酸化ケイ素上に吸着した顔料親和性基を有する共重合体であってもよく、例えば、BYK-3950P、BYK-3951P、BYK-3955P及びDisperbyk-2200などが挙げられる。
【0033】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る消泡剤は、ドイツBYK-Chemie社製のイソパラフィンまたはパラフィン系とナフテン系の混合物であってもよく、例えば、BYK-1790、BYK-1794及びBYK-A530などが挙げられる。
【0034】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る沈降防止剤と液状レオロジーコントロール剤は、ドイツBYK-Chemie社製の変性ウレア溶液であってもよく、例えば、BYK-7410ETが挙げられる。
【0035】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る湿潤分散剤は、ドイツBYK-Chemie社製の水酸基含有カルボン酸エステル、線状高分子共重合体、または高度分岐構造のポリエステルとアクリル酸の共重合体であってもよく、例えば、Disperbyk-107、Disperbyk-111、Disperbyk-118、Disperbyk-2013及びDisperbyk-9010などが挙げられる。
【0036】
前述した本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造のいずれか1つの実施例において、係る基材濡れ剤は、ドイツBYK-Chemie社製のフッ素不含ポリエーテル変性ジメチルシロキサン及びポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであってもよく、例えば、BYK-3455及びBYK-333などが挙げられる。
【発明の効果】
【0037】
前記フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の中において、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層は、特別に設計された誘電体材料で製作されるので、その誘電体定数(Dielectric constant)4~68の間にあり、かつその誘電体損失が0.02よりも小さい。さらに進んで、フレキシブルプリント電気回路基板(FPC)として応用される以外に、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造と少なくとも1つの電気回路基板とを組み合わせてなるリジッドフレックス基板(Rigid-flex board)としても応用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】従来技術の受動的電気構造を示す模式的斜視図である。
【
図2】従来技術の抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造を示す模式的斜視図である。
【
図3A】本発明に係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第1実施例を示す模式的斜視図である。
【
図3B】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第2実施例を示す模式的斜視図である。
【
図3C】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第3実施例を示す模式的斜視図である。
【
図3D】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第4実施例を示す模式的斜視図である。
【
図4】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を示す模式的製作手順図である。
【
図5】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を示す模式的製作手順図である。
【
図6】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を示す模式的製作手順図である。
【
図7A】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を備える電気回路基板構造の現像エッチングプロセスを示す動作分解図である。
【
図7B】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を備える電気回路基板構造の現像エッチングプロセスを示す動作分解図である。
【
図7C】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を備える電気回路基板構造の現像エッチングプロセスを示す動作分解図である。
【
図7D】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を備える電気回路基板構造の現像エッチングプロセスを示す動作分解図である。
【
図8】特許文献1に開示された銅箔電気抵抗のサンプルの電子後方散乱回折(Electron back-scattered diffraction,EBSD)画像を示す図である。
【
図9】本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の銅箔電気抵抗のサンプルのEBSD画像を示す図である。
【
図10】曲げテストの実行手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明が提出した一種のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造及び前記フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を使用した電気回路基板構造をより明瞭に記述するために、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を以下に詳述する。
【0040】
(フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造)
図3Aは、本発明に係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第1実施例を示す模式的斜視図である。
図3Aに示すように、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDは、第1導電金属層11と、第1電気抵抗層12と、第1誘電体層Ie1と、可撓性支持層FSと、接合層Adと、第2導電金属層21とを含む。その内、第1導電金属層11と第2導電金属層21の厚みが0.4ミクロン~50ミクロンである。かつそれらのプロセス材料は、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銀複合物、銅複合物、金複合物、アルミニウム複合物のうちのいずれか1種であってもよいし、またはそれらのいずれか2種の複合物であってもよいし、もしくはそれらのいずれか2種以上の複合物であってもよい。
【0041】
図3Aに示すように、第1電気抵抗層12は、その一表面が第1導電金属層11の一表面に結合され、かつその厚みが2ミクロンよりも小さい。よく見られる第1導電金属層11の材質が銅であり、かつスパッタリングプロセスを介して係る第1電気抵抗層12が第1導電金属層11の上に形成される。勿論、第1電気抵抗層12のプロセス時間を短縮するために、第1電気抵抗層12の製作が完了できるように、一部にスパッタリングを施し、一部に電気めっきを施す方式を採用してもよい。しかしながら、強調すべきことは、スパッタリングによって形成される第1電気抵抗層12は、より高い被膜の緻密度と連続性を有するということである。本発明において、第1電気抵抗層12のプロセス材料としては、ニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金が挙げられる。その内、第1電気抵抗層12の模範的な材料を下記の表1にまとめて示す。
【0042】
【0043】
式中、x、y、zは原子数百分率を表し、かつx+y+z=1である。なおかつ、Mは、例えば、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、またはチタン(Ti)などの金属を表す。一方、Mとは反対に、Nは、例えば、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、またはケイ素(Si)などの非金属を表す。
【0044】
より詳細に説明すると、第1誘電体層Ie1は、その一表面が第1電気抵抗層12の他表面に結合され、かつ可撓性支持層FSは、その一表面が第1誘電体層Ie1の他表面に結合される。本発明の設計によれば、第1誘電体層Ie1の厚みが0.01ミクロン~50ミクロンであり、かつ可撓性支持層FSの厚みが5ミクロン~350ミクロンである。一般的に言えば、第1誘電体層Ie1は、ポリマーマトリックス(Polymer matrix)と、前記ポリマーマトリックスにドープされた複数個の誘電体粒子とを含むものであってもよく、その内、前記誘電体粒子の材料は、高誘電体材料、誘電体材料、及び低誘電体材料のうちのいずれか1種であってもよいし、またはそれらのいずれか2種の混合物であってもよい。異なる種類の誘電体粒子をただ参考として下記の表2に列記するが、第1誘電体層Ie1の材料成分はそれらに制限されるものではない。しかし、さらに説明すべきことは、係る第1誘電体層Ie1は、一層のスパッタリング層であってもよい。特に、前記スパッタリング層には、ペロブスカイト(perovskite)構造またはスピネル(spinal)構造を含み、かつ微量元素を添加し、その内、前記微量元素は、ランタン系元素、オスミウム系元素、希土類元素、及びアルカリ土類元素のうちのいずれか1種であってもよい。説明に値することは、係る微量元素は、ペロブスカイト(perovskite)構造またはスピネル(spinal)構造の内部のドナー(donner)とアクセプター(accepter)の数を調整することによって、スパッタリング層全体に低/高k値(low/high k)と、高Q値(high Q)の誘電体特性を達することができる。
【0045】
【0046】
一方、係る可撓性支持層FSは、軟性基板であってもよい。より詳細に説明すると、軟性基板の厚みが200ミクロン以下であれば、可撓性を確保することができる。本発明において、可撓性支持層FSのプロセス材料は、ゴム樹脂、ポリブタジエン、コアシェル重合体、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エポキシ樹脂(Epoxy)のうちのいずれか1種であってもよいし、またはそれらのいずれか2種のポリマーブレンド物であってもよいし、もしくはそれらのいずれか2種以上のポリマーブレンド物であってもよい。
【0047】
それに加えて、接合層Adは、その一表面が可撓性支持層FSの他表面に結合されると共に、その厚みが2ミクロン以下である。本発明において、接合層Adのプロセス材料は、ニッケル、クロム、タングステン、ニッケル金属化合物、クロム金属化合物、タングステン金属化合物、ニッケル基合金、クロム基合金またはタングステン基合金のうちのいずれか1種であってもよく、模範的な材料については、上記の表1を参照することができる。一方、接合層Adのプロセス材料は、例えばニッケル銅合金、ニッケルチタン合金、銅チタン合金またはクロムニッケル合金であってもよい。
【0048】
図3Bは、本発明に係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第2実施例を示す模式的斜視図である。
図3Bに示すように、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの第2実施例は、第1導電金属層11と、第1電気抵抗層12と、第1誘電体層Ie1と、第2電気抵抗層22と、第2導電金属層21とを含む。一方、
図3Cは、本発明に係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第3実施例を示す模式的斜視図である。
図3Cに示すように、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの第3実施例は、第1導電金属層11と、第1電気抵抗層12と、第1誘電体層Ie1と、可撓性支持層FSと、第2誘電体層Ie2と、第2電気抵抗層22と、第2導電金属層21とを含む。
図3Bと
図3Cとを比較してから、第3実施例のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDは、可撓性支持層FSと、第2誘電体層Ie2とをさらに含み、これら二層を、第2電気抵抗層22と第1誘電体層Ie1との間に挟んで設置するようにしてもよいことを見出した。より詳細に説明すると、可撓性支持層FSは、その一表面が第1誘電体層Ie1の他表面に結合され、かつ第2誘電体層Ie2は、その一表面が可撓性支持層FSの他表面に結合されることで、第2電気抵抗層22は、その一表面が第2誘電体層Ie2の他表面に結合される。特に強調すべきこととしては、前述の説明では、第1誘電体層Ie1の常用プロセス材料を既に紹介しており、かつ第2誘電体層Ie2の常用プロセス材料は、第1誘電体層Ie1と基本的に同様であるので、繰り返し説明を省略する。
【0049】
さらに、
図3Dは、本発明に係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の第4実施例を示す模式的斜視図である。
図3Dに示すように、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの第4実施例は、第1導電金属層11と、第1電気抵抗層12と、第1可撓性支持層FS1と、第1誘電体層Ie1と、第2可撓性支持層FS2と、第2電気抵抗層22と、第2導電金属層21とを含む。その内、第1電気抵抗層12は、その一表面が第1導電金属層11の一表面に結合され、第1可撓性支持層FS1は、その一表面が第1電気抵抗層12の他表面に結合され、第1誘電体層Ie1は、その一表面が第1可撓性支持層FS1の他表面に結合され、第2可撓性支持層FS2は、その一表面が第1誘電体層Ie1の他表面に結合され、かつ第2電気抵抗層22は、その一表面が第2可撓性支持層FS2の他表面に結合される。さらに、第2導電金属層21は、第2電気抵抗層22の他表面の上に形成される。
【0050】
特に説明したいところは、本発明の主な技術的特徴は、材料設計を利用することで、第2誘電体層Ie2及び/または第1誘電体層Ie1の誘電体定数を4~68の範囲内に簡単に調節制御することができ、かつ同時に第2誘電体層Ie2と第1誘電体層Ie1の誘電体損失が0.02よりも小さくなる。材料組成の面から、本発明では、第2誘電体層Ie2と第1誘電体層Ie1は、いずれも第1誘電体材料と、第2誘電体材料と、高分子粘結材料と、硬化材料とを含有する。その内、前記第1誘電体材料は、高誘電体定数と低損失係数を有する。かつ、第2誘電体材料は、誘電体定数調整剤として機能し、かつ低誘電体定数と低損失係数を有する。第1誘電体材料を選択する条件としては、焼結を経過した後、第1誘電体材料の誘電体定数が999よりも大きいこと(即ち、≧1000)が必要であり、かつその損失係数が0.029よりも小さいこと(即ち、≦0.03)が必要である。よって、第1誘電体材料として適用されるものは、チタン酸バリウム、一酸化鉛(PbO)がドープされたチタン酸バリウム、酸化イットリウム(Y2O3)がドープされたチタン酸バリウム、酸化マグネシウム(MgO)がドープされたチタン酸バリウム、または酸化カルシウム(CaO)がドープされたチタン酸バリウムであってもよい。その一方で、第2誘電体材料を選択する条件としては、焼結を経過した後、第2誘電体材料の誘電体定数が5よりも小さいことが必要であり、かつその損失係数が0.01よりも小さいことが必要である。よって、第2誘電体材料として適用されるものは、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であってもよい。
【0051】
本発明において、高分子粘結材料は、半固化特性を持たなければならない。つまり、加熱加圧すると軟化する一方、冷却後に反応を起こせば固化する特性を持たなければならない。このため、係る高分子粘結材料を利用して前述の第1誘電体材料と第2誘電体材料とを粘結した後、半固化型誘電体材料を取得することができ、前記半固化型誘電体材料は、タブレット焼結工程を経た後に係る第1誘電体層Ie1と係る第2誘電体層Ie2とに成層される。本発明は、第1誘電体材料と第2誘電体材料を適切に選択するので、最終に作製される第1誘電体層Ie1と第2誘電体層Ie2の誘電体定数が8よりも大きく、かつその損失係数が0.02よりも小さい。補足説明すると、前記高分子粘結材料は、エポキシ樹脂(Epoxy)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)、及びリン含有樹脂のうちのいずれか1種であってもよい。
【0052】
より詳細に説明すると、係るエポキシ樹脂(Epoxy)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、オルソクレゾールエポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、p-キシレンエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、及びクレゾールフェニルノボラックエポキシ樹脂のうちのいずれか1種であってもよいし、またはそれらのいずれか2種の組合せであってもよいし、もしくはそれらのいずれか2種以上の組合せであってもよい。一方、係る高分子粘結材料として適用されるリン含有樹脂は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、及びリン含有ビスフェノールA型フェノール樹脂のうちのいずれか1種であってもよい。
【0053】
高分子粘結材料、第1誘電体材料と第2誘電体材料のほかに、第1誘電体層Ie1と第2誘電体層Ie2の材料組成は、硬化材料をさらに含有し、かつ前記硬化材料は、架橋剤、硬化促進剤、難燃剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、下地処理剤、界面活性剤、靭性改質剤、及び溶剤のうちのいずれか1種であってもよい。より詳細に説明すると、架橋剤は、アミン付加物であり、かつ前記アミン付加物は、ジアミノジフェニルスルホン、ヒドラジド、ジヒドラジド、ジシアンジアミド、及びアジピン酸ジヒドラジドのうちのいずれか1種であってもよい。一方、係る硬化促進剤は、イミダゾール、三フッ化ホウ素アミン錯体、塩化エチルトリフェニルホスフィン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、及びジメチルアミノピリジンのうちのいずれか1種であってもよい。
【0054】
以上の説明に続き、係る難燃剤は、ビスフェノールビフェニルリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ヒドロキノン-ビス-(ジフェニルリン酸エステル)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(イソプロピルクロリド)リン酸エステル、トリメチルリン酸エステル、ジメチル-メチルリン酸エステル、レゾルシノールビスジメチルフェニルリン酸エステル、ポリリン酸メラミン、ホスファゾ化合物、及びホスファゼン化合物のうちのいずれか1種であってもよい。そして、係る界面活性剤は、シラン化合物、シロキサン化合物、及びアミノシラン化合物のうちのいずれか1種であってもよいし、またはそれらのいずれか2種の重合体であってもよいし、もしくはそれらのいずれか2種以上の重合体であってもよい。一方、係る靭性改質剤は、ゴム樹脂、ポリブタジエン、及びコアシェル重合体のうちのいずれか1種であってもよい。それに加えて、係る溶剤は、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオン酸塩、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルのうちのいずれか1種であってもよい。
【0055】
さらに説明すると、レベリング剤は、ドイツBYK-Chemie社製の二酸化ケイ素上に吸着した顔料親和性基を有する共重合体であってもよく、例えば、BYK-3950P、BYK-3951P、BYK-3955P及びDisperbyk-2200などが挙げられる。そして、消泡剤は、ドイツBYK-Chemie社製のイソパラフィンまたはパラフィン系とナフテン系の混合物であってもよく、例えば、BYK-1790、BYK-1794及びBYK-A530などが挙げられる。一方、沈降防止剤と液状レオロジーコントロール剤は、ドイツBYK-Chemie社製の変性ウレア溶液であってもよく(例えば、BYK-7410ET)、また湿潤分散剤は、ドイツBYK-Chemie社製の水酸基含有カルボン酸エステル、線状高分子共重合体、または高度分岐構造のポリエステルとアクリル酸の共重合体であってもよく、例えば、Disperbyk-107、Disperbyk-111、Disperbyk-118、Disperbyk-2013及びDisperbyk-9010などが挙げられる。それに加えて、基材濡れ剤は、ドイツBYK-Chemie社製のフッ素不含ポリエーテル変性ジメチルシロキサン及びポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであってもよく、例えば、BYK-3455及びBYK-333などが挙げられる。
【0056】
<フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の製作(一)>
図3Bを継続的に参照すると共に、
図4に示される本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の模式的製作手順図を同時に参照する。本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの第2実施例の製作手順は次のステップ(1)~(4)を含む。
(1)
図4の(a)図に示すように、スパッタリングプロセスを介して第1金属導電層11の一表面の上に第1電気抵抗層12を形成して、第1電気抵抗銅膜ユニットCR1を取得する。
(2)
図4の(b)図に示すように、スパッタリングプロセスを介して第2金属導電層21の一表面の上に第2電気抵抗層22を形成して、第2電気抵抗銅膜ユニットCR2を取得する。
(3)
図4の(c)図に示すように、半固化型の第1誘電体層Ie1を第1電気抵抗銅膜ユニットCR1と第2電気抵抗銅膜ユニットCR2との間に置き、それから三方に対して真空熱圧着接合工程を実行する。
(4)
図4の(d)図に示すように、係る真空熱圧着接合工程を完了させれば、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDを取得する。
【0057】
<フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の製作(二)>
図3Cを継続的に参照すると共に、
図5に示される本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の模式的製作手順図を同時に参照する。本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの第3実施例の製作手順は次のステップ(1a)~(5a)を含む。
(1a)
図5の(a)図に示すように、スパッタリングプロセスを介して第1金属導電層11の一表面の上に第1電気抵抗層12を形成して、第1電気抵抗銅膜ユニットCR1を取得する。
(2a)
図5の(b)図に示すように、スパッタリングプロセスを介して第2金属導電層21の一表面の上に第2電気抵抗層22を形成して、第2電気抵抗銅膜ユニットCR2を取得する。
(3a)
図5の(c)図に示すように、塗布工程を介して半固化型の第1誘電体層Ie1と、半固化型の第2誘電体層Ie2とをそれぞれ可撓性支持層FSの両表面の上に結合して、誘電体層ユニットCIを取得する。
(4a)
図5の(d)図に示すように、誘電体層ユニットCIを第1電気抵抗銅膜ユニットCR1と第2電気抵抗銅膜ユニットCR2との間に置き、それから三方に対して真空熱圧着接合工程を実行する。
(5a)係る真空熱圧着接合工程を完了させれば、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDを取得し、その内、任意の2個の接合ユニットの間に気泡や接合の不均一が発生する事態を招来しないことになる。
【0058】
<フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の製作(三)>
図3Dを継続的に参照すると共に、
図6に示される本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の模式的製作手順図を同時に参照する。本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの第4実施例の製作手順は次のステップ(1b)~(4b)を含む。
(1b)
図6の(a)図に示すように、スパッタリングプロセスを介して第1金属導電層11の一表面の上に第1電気抵抗層12を形成し、かつ第1可撓性支持層FS1を第1金属導電層11の他表面に結合して、第1スタック構成ユニットST1を取得する。
(2b)
図6の(b)図に示すように、スパッタリングプロセスを介して第2金属導電層21の一表面の上に第2電気抵抗層22を形成し、かつ第2可撓性支持層FS2を第2金属導電層21の他表面に結合して、第2スタック構成ユニットST2を取得する。
(3b)
図6の(c)図に示すように、半固化型の第1誘電体層Ie1を第1スタック構成ユニットST1と第2スタック構成ユニットST2との間に置き、それから三方に対して真空熱圧着接合工程を実行する。
(4b)
図6の(d)図に示すように、係る真空熱圧着接合工程を完了させれば、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDを取得する。
【0059】
<フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の応用>
特に説明したいところは、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDに対して現像エッチングプロセスを施した後、その頂部表面の上に、少なくとも1つの薄膜電気抵抗(Film resistor)と、少なくとも1つの薄膜インダクタ素子(Film inductor)と、少なくとも1つの薄膜コンデンサ素子(Film capacitor)とを含む第1電子回路が製作される。そして、同時にそのフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの底部表面の上に、少なくとも1つの薄膜電気抵抗素子と、少なくとも1つの薄膜インダクタと、少なくとも1つの薄膜コンデンサとを含む第2電子回路も製作されるということである。次の段落において、現像エッチングプロセスを示す動作分解図を参照しながら、それと関連する原因事由について解説する。
【0060】
図7A~
図7Dは、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造を備える電気回路基板構造の現像エッチングプロセスを示す動作分解図である。
図3Cと
図7Aを同時に参照する。現像エッチングプロセスを実行する際は、まず、第1フォトレジストPR1を第1導電金属層11と第2導電金属層21の上に塗布し(
図7Aの(a)図と(b)図を参照)、それから露光現像の方式を用いて第1導電金属層11と第2導電金属層21の上に1つの図案化された第1フォトレジストpPR1(
図7Aの(a´)図と(b´)図を参照)を製作する。
【0061】
続いて、エッチング液を使用して同時に第1導電金属層11と第1電気抵抗層12との図案化された第1フォトレジストpPR1によって被覆されていない部分を除去すると同時に、そのエッチング液で第2導電金属層21と第2電気抵抗層22との図案化された第1フォトレジストpPR1によって被覆されていない部分(
図7Bの(a)図と(b)図を参照)を除去する。次いで、
図7Bの(a´)図と(b´)図に示すように、図案化された第1フォトレジストpPR1を取り除き、その後、第1誘電体層Ie1の上に図案化された第1導電金属層p11を取得すると同時に、第2誘電体層Ie2に図案化された第2導電金属層p21を取得する。補足説明すると、理解を補助するための
図3Cに示すように、第1誘電体層Ie1と第2誘電体層Ie2とをそれぞれ係る可撓性支持層FSの両表面に結合することが分かる。
【0062】
次いで、
図7Cの(a)図と(b)図に示すように、継続的に第2フォトレジストPR2を図案化された第1導電金属層p11と第1誘電体層Ie1の上に塗布し、かつ第2フォトレジストPR2は、同時に図案化された第2導電金属層p21と第2誘電体層Ie2の上に覆われる。特に説明すべきところは、
図7Cでは第2フォトレジストPR2を半透明な材質で図示していて、その目的は、図案化された第1導電金属層p11と図案化された第2導電金属層p21の後続の製造手順での変化を完全に図解するためである。
図7Cには、特に、頂面の第2フォトレジストPR2の上に第1エッチング窓W11と第2エッチング窓W12が開設されることを図示し、かつ第1エッチング窓W11と第2エッチング窓W12は、係る図案化された第1導電金属層p11に対して相対的に上方箇所に位置する。それと同時に、底面の第2フォトレジストPR2の上に第3エッチング窓W21と第4エッチング窓W22も開設され、かつ第3エッチング窓W21と第4エッチング窓W22は、係る図案化された第2導電金属層p21に対して相対的に上方箇所に位置する。
【0063】
続いて、エッチング液を使用して第1エッチング窓W11と第2エッチング窓W12を通して図案化された第1導電金属層p11の第2フォトレジストPR2によって被覆されていない部分を除去する。それと同時に、エッチング液を使用して第3エッチング窓W21と第4エッチング窓W22を通して図案化された第2導電金属層p21の第2フォトレジストPR2によって被覆されていない部分をも除去する。理解を補助するための
図3Cを対照すると、エッチング液を使用してウェットエッチングを完了した後、
図7Cの(a´)図と(b´)図に示すように、第1電気抵抗層12の一部は、第1エッチング窓W11と第2エッチング窓W12を介して露見され、かつ第2電気抵抗層22の一部も、第3エッチング窓W21と第4エッチング窓W22を介して露見されることが分かる。
【0064】
最後に、
図7Dの(a)図と(b)図に示すように、第2フォトレジストPR2を除去した後、図案化された第1導電金属層p11と、第1薄膜電気抵抗R1と、第1薄膜インダクタL1と、上部金属板UMとを含む第1電子回路は、第1誘電体層Ie1の上に位置する。それと同時に、図案化された第2導電金属層p21と、第2薄膜電気抵抗R2と、第2薄膜インダクタL2と、下部金属板LMとを含む第2電子回路では、第2誘電体層Ie2の上に位置する。注意に値することは、係る上部金属板UMと係る下部金属板LMとの間に、第1電気抵抗層12と、第1誘電体層Ie1と、可撓性支持層FSと、第2誘電体層Ie2と、第2電気抵抗層22とが挟まれている。第1電気抵抗層12、第1誘電体層Ie1、可撓性支持層FS、第2誘電体層Ie2、及び第2電気抵抗層22をコンデンサ誘電体層とすることで、係る上部金属板UMと、コンデンサ誘電体層と、係る下部金属板LMとで埋込式コンデンサ(Embedded capacitor)に構成されてなることが理解される。
【0065】
さらに、レーザーエッチング技術により、前記第1電子回路の第1接点CP1に第1スルーホールTH1を製作することができ、かつ前記第2電子回路の第2接点CP2に第2スルーホールTH2を製作することができる。二層電気回路基板の製作を熟知している電子エンジニアであれば、係る第1電子回路の主体が図案化された第1導電金属層p11であり、かつ係る第2電子回路の主体が図案化された第2導電金属層p21であることを理解できる。さらに、第1スルーホールTH1と第2スルーホールTH2に導電物質(例えば、ハンダ)を充填する方式によって、第1接点CP1と第2接点CP2との電気的接続が達成され、この方式によれば、前記第1電子回路と前記第2電子回路とを電気的に接続することができる。
【0066】
従って、
図7A~
図7Dから分かるように、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDに対して2回の現像・エッチング処理を施した後、そのフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの頂部表面の上に、少なくとも1つの第1薄膜電気抵抗R1と、少なくとも1つの第1薄膜インダクL1と、少なくとも1つの薄膜コンデンサとを含む第1電子回路が製作される。そして、同時にそのフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの底部表面の上に、少なくとも1つの第2薄膜電気抵抗R2と、少なくとも1つの第2薄膜インダクタL2と、少なくとも1つの薄膜コンデンサ素子とを含む第2電子回路も製作される。勿論、フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの上にスルーホール(TH1,TH2)を製作する方式によって、前記第1電子回路を前記第2電子回路に接続させることができる。
【0067】
特に、フレキシブルプリント電気回路基板(FPC)として直接応用される以外に、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDと少なくとも1つの電気回路基板とを組み合わせてなるリジッドフレックス基板(Rigid-flex board)としても応用可能となる。
【0068】
<実施例>
本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDは、確かに特許文献1に開示された受動的電気構造PE´(
図1参照)の銅箔電気抵抗1´に比べてより優れた性質が顕現されることを証明するために、本願の発明者は、同時に
図5に示される電気抵抗銅膜ユニット(CR1,CR2)と
図1に示される銅箔電気抵抗1´のサンプルの製作を完了した。
図8は、特許文献1に開示された銅箔電気抵抗のサンプルの電子後方散乱回折(Electron back-scattered diffraction,EBSD)画像を示す図である一方、
図9は、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造の銅箔電気抵抗のサンプルのEBSD画像を示す図である。ニッケル・リン化合物(Ni-P compound)で第1圧延銅層11´のマット面(Matt side)を電気めっきしていわゆる電気抵抗層12´を形成するという従来技術に比べ、本発明は、スパッタリング技術によって第1導電金属層11(例えば、銅箔)の上に合金、金属または金属化合物からなる電気抵抗膜(即ち、第1電気抵抗層12)を形成する。なおかつ、
図7から分かるように、電気めっきによって生成された薄膜が、銅箔導電体の表面に沿って核生成と成長が進行するので、被膜の不連続性と高い粗度とも、電気特性(表面電気抵抗)、機械特性(曲げ引張)や(細い)回路の歩留り率などに対してマイナスな影響を与えるおそれがある。これに反して、
図9から観察されるように、スパッタリング法を使用して製作されるNi
0.97Cr
0.03合金からなる電気抵抗層12は、微視的に見ると、連続かつ緻密で、その上、表面粗度が小さいであることが顕現されており、曲げ可能な製品と細い回路の設計に適用されている。本発明の電気抵抗銅膜ユニット(CR1,CR2)の電気抵抗膜は、より高い被膜の緻密度と連続性を有することが裏付けられた。
【0069】
次いで、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDのハーフ構造に対して曲げテストを行い、係るハーフ構造とは、第1導電金属層11、第1電気抵抗層12、第1誘電体層Ie1、及び可撓性支持層FSのみを含む構造を指す。
図10は、曲げテストの実行手順を示す模式図である。
図10の(a)図と(b)図に示すように、計3組の異なる銅層厚のサンプルに対して曲げテストを行い、この曲げテストにおいては、曲げ試験機を使用して半径1.5mmの丸棒(曲げ)で片面フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜を0度から90度に曲げるように制御を実施する。それから、
図10の(b)図と(c)図に示すように、曲げ試験機を継続的に操作して半径1.5mmの丸棒(曲げ)で片面フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜を90度から180度に曲げて荷重0.5キログラムをかけて試験を行う。第1組の曲げ試験全体を、(a)図~(c)図の実行手順を計5000回繰り返し、JIS C 5016-8.7に規定された測定方法に従って測定を行った。曲げ試験の実験データを
図10にまとめて示す。
【0070】
図10の曲げテストの実験データから容易に発見できるように、半径1.5mmの曲げで本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDのハーフ構造に対して5000回の曲げを行っても、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDのハーフ構造の中の第1電気抵抗層12に対して計測された電気抵抗値が実質的に変化しないままである。曲げ試験機を利用して半径1.5mmの丸棒でフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDのハーフ構造に対して曲げテストを行い、この曲げテストが完了するまでの過程において、5000回を超えるような曲げ回数を行った結果、無導電性及び層間剥離と銅断線現象が現れ始めることを発見し、銅厚が薄ければ薄いほど、耐屈曲性がより良くなる。
従って、スパッタリング技術によって第1導電金属層11(例えば、銅箔)の上に合金、金属または金属化合物からなる電気抵抗膜(即ち、第1電気抵抗層12)が形成され、それと銅箔の間にかなり良い接合性を有することが測定結果から示されている。これゆえ、電気抵抗銅膜ユニット(CR1,CR2)の信頼性と可屈曲性を向上させることができる。
【0071】
こうして、上記の詳細な説明から、本発明に係るフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの全ての実施例及びその構造組成は、完全かつ明瞭に開示されており、本発明が下記の利点を有することが分かる。
【0072】
(1)本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDは、第1導電金属層11と、第1電気抵抗層12と、第1誘電体層Ie1と、可撓性支持層FSと、第2誘電体層Ie2と、第2電気抵抗層22と、第2導電金属層21とを含む。特に、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDに対して2回の現像・エッチング処理を施した後、そのフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの頂部表面の上に、少なくとも1つの第1薄膜電気抵抗R1と、少なくとも1つの第1薄膜インダクL1と、少なくとも1つの薄膜コンデンサ素子とを含む第1電子回路が製作される。そして、同時にそのフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの底部表面の上に、少なくとも1つの第2薄膜電気抵抗R2と、少なくとも1つの第2薄膜インダクタL2と、少なくとも1つの薄膜コンデンサ素子とを含む第2電子回路も製作される。勿論、フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造PSDの上にスルーホール(TH1,TH2)を製作する方式によって、前記第1電子回路を前記第2電子回路に接続させることができる。
【0073】
(2)特に、フレキシブルプリント電気回路基板(FPC)として直接応用される以外に、本発明のフレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造と少なくとも1つの電気回路基板とを組み合わせてなるリジッドフレックス基板(Rigid-flex board)としても応用可能となる。
【0074】
(3)強調すべきことは、スパッタリングによって形成される電気抵抗層12は、より高い被膜の緻密度と連続性を有するので、その表面抵抗の最小値は、5オーム/□より低いか、またそれと等しい。それと同時に、スパッタリング技術を利用して製作される合金、金属または金属化合物からなる電気抵抗膜(電気抵抗層12)は、工業廃水の発生を効果的に減少させることもできるということである。
【0075】
(4)スパッタリングにより作製される電気抵抗層12は、優れた被膜の緻密度と連続性を有し、現像・エッチング技術を用いて埋込式受動素子構造PSDに電子回路を製作した後、前記電子回路の線幅/線ピッチが10ミクロン/10ミクロンよりも小さくなるように制御することができる。かつ、曲げテストを行った結果、埋込式フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜は、素晴らしい可屈曲性を有することが顕現される。
【0076】
(5)2回のエッチングプロセスに1回の孔あけ・孔めっきプロセスを加えるだけで埋込式RLC電気回路を完成できるため、プロセスが簡易である。
【0077】
(6)本発明が開発された誘電体層の誘電体定数と誘電体損失係数が優れており、材料成分と設計は、独特性と新規性を有する。誘電体定数の値は、これまでの業界最高水準(k>30)を上回ることができるため、未来の電気回路の微小化設計使用に役立てることが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
PSD フレキシブル電気抵抗コンデンサ複合銅膜構造
11 第1導電金属層
12 第1電気抵抗層
Ie1 第1誘電体層
Ie2 第2誘電体層
FS 可撓性支持層
FS1 第1可撓性支持層
FS2 第2可撓性支持層
Ad 接合層
21 第2導電金属層
22 第2電気抵抗層
CR1 第1電気抵抗銅膜ユニット
CR2 第2電気抵抗銅膜ユニット
CI 誘電体層ユニット
ST1 第1スタック構成ユニット
ST2 第2スタック構成ユニット
PR1 第1フォトレジスト
pPR1 図案化された第1フォトレジスト
PR2 第2フォトレジスト
p11 図案化された第1導電金属層
p21 図案化された第2導電金属層
W11 第1エッチング窓
W12 第2エッチング窓
W21 第3エッチング窓
W22 第4エッチング窓
R1 第1薄膜電気抵抗
R2 第2薄膜電気抵抗
L1 第1薄膜インダクタ
L2 第2薄膜インダクタ
UM 上部金属板
LM 下部金属板
TH1 第1スルーホール
TH2 第2スルーホール
CP1 第1接点
CP2 第2接点
PE´ 受動的電気構造
11´ 第1圧延銅層
12´ 電気抵抗層
13´ 絶縁層
14´ 第2圧延銅層
1´ 銅箔電気抵抗
1a´ 銅箔絶縁体
MS´ 抵抗器及びコンデンサ形成のための多層化構造
21´ 第1圧延銅層
22´ 電気抵抗層
23´ 第1誘電体層
24´ 絶縁層
25´ 第2誘電体層
26´ 第2圧延銅層
2´ 銅箔電気抵抗
2a´ 誘電絶縁体