(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088714
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】工作機械の自動化支援装置および自動化支援方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/414 20060101AFI20220608BHJP
G16Y 10/25 20200101ALI20220608BHJP
【FI】
G05B19/414 Q
G16Y10/25
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200674
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000168551
【氏名又は名称】鋼鈑工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山聰
(72)【発明者】
【氏名】政田 智成
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269AB11
3C269AB31
3C269AB33
3C269BB16
3C269KK08
3C269MN09
3C269MN47
3C269PP02
3C269QD02
3C269QD05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既設の工作機械に対して大掛かりな改造を施さずに搬送ロボットや搬出ロボットなどの加工周辺装置を後付けで組み合わせ可能な工作機械の自動化支援装置および自動化支援方法を提供する。
【解決手段】工作機械の操作パネルに追設される自動化支援装置100は工作機械にワークを搬送する第1加工周辺装置からの信号を受信する外部入力手段と、工作機械の操作パネルを撮像する操作パネル撮像手段と、外部入力手段による信号の受信を受けて、操作パネルを押圧して加工に必要な加工情報の入力を行う加工情報入力手段と、加工情報入力手段による操作パネルへの情報入力前後の画像を比較して加工情報入力手段が入力指示した加工処理の状況を判定する制御手段などを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する既設の工作機械の操作パネルに追設される自動化支援装置であって、
前記工作機械に前記ワークを搬送する第1加工周辺装置からの信号を受信する外部入力手段と、
前記工作機械の操作パネルを撮像する操作パネル撮像手段と、
前記外部入力手段による前記信号の受信を受けて、前記操作パネルを押圧して前記加工に必要な加工情報の入力を行う加工情報入力手段と、
前記加工情報入力手段による前記操作パネルへの情報入力前後の画像を比較して、前記加工情報入力手段が入力指示した加工処理の状況を判定する制御手段と、
を含むことを特徴とする工作機械の自動化支援装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記操作パネルの画面に対してOCR処理を行うことで、前記加工処理の状況として、前記ワークの加工中と前記ワークの加工停止中の少なくとも一方を判定する、請求項1に記載の工作機械の自動化支援装置。
【請求項3】
加工済のワークを前記工作機械から搬出するための第2加工周辺装置へ信号を送信する外部出力手段をさらに有し、
前記外部出力手段は、前記制御手段による前記加工処理の状況の判定結果に基づいて、加工完了を示す信号を前記第2加工周辺装置へ送信する、請求項1又は2に記載の工作機械の自動化支援装置。
【請求項4】
前記第1加工周辺装置から搬送された前記ワークの形状を測定する形状測定装置をさらに有し、
前記制御手段は、前記形状測定装置の測定結果に基づいて、前記加工情報入力手段を介して前記ワークの加工内容を変更する制御を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の工作機械の自動化支援装置。
【請求項5】
前記ワークの加工情報および前記工作機械の動作情報の少なくとも一方を含む管理データを外部に送信する通信装置をさらに有し、
前記制御手段は、外部に設けられた生産管理手段に対してネットワークを介して前記管理データを送信する制御を行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の工作機械の自動化支援装置。
【請求項6】
ワークを加工する既設の工作機械の操作パネルに追設された自動化支援装置を用いた自動化支援方法であって、
前記工作機械に前記ワークを搬送する第1加工周辺装置からの信号を受信する受信工程と、
前記第1加工周辺装置からの信号の受信を受けて、加工情報入力手段を介して前記操作パネルを押圧して前記加工に必要な加工情報の入力を行う加工情報入力工程と、
前記加工情報入力手段による前記操作パネルへの情報入力前後の画像を操作パネル撮像手段によって取得する画像取得工程と、
取得した前記情報入力前後の画像を比較して前記加工情報入力手段が入力指示した加工処理の状況を判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする工作機械の自動化支援方法。
【請求項7】
前記判定工程においては、前記操作パネルの画面に対してOCR処理を行うことで、前記加工処理の状況として、前記ワークの加工中と前記ワークの加工停止中の少なくとも一方を判定する、請求項6に記載の工作機械の自動化支援方法。
【請求項8】
加工済のワークを前記工作機械から搬出するための信号を第2加工周辺装置へ送信する外部出力工程をさらに有し、
前記加工処理の状況の判定結果に基づいて前記ワークの加工完了を示す信号が前記第2加工周辺装置へ送信される、請求項6又は7に記載の工作機械の自動化支援方法。
【請求項9】
前記第1加工周辺装置から搬送された前記ワークの形状を形状測定装置によって測定する形状測定工程をさらに有し、
前記形状測定装置の測定結果に基づいて、前記加工情報入力手段を介して前記ワークの加工内容が変更される、請求項6~8のいずれか一項に記載の工作機械の自動化支援方法。
【請求項10】
前記ワークの加工情報および前記工作機械の動作情報の少なくとも一方を含む管理データを、外部に設けられた生産管理手段に対してネットワークを介して送信する外部通信工程をさらに有する、請求項6~9のいずれか一項に記載の工作機械の自動化支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の自動化支援装置に関し、より具体的には例えば数値制御工作機械の操作パネルに取り付けられて自動化を支援する自動化支援装置および自動化支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば数値制御によって金属材料や木材などを加工する数値制御工作機械として、数値制御旋盤(以下、NC旋盤ともいう)やマシニングセンタ(以下、MC)などが既知である。かようなNC旋盤は、例えばこのNC旋盤に対して加工前ワークの供給や加工済ワークを搬出する搬送ロボットを備えてシステム化されていることが多い(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
また、近年では、例えば特許文献2や特許文献3に例示されるごとき上記したNC旋盤などの数値制御工作機械にコンピュータ制御を適用したコンピュータ数値制御工作機械も市場に提供されている。かようなコンピュータ数値制御工作機械においては、例えば公知のPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)などの制御機器によって、互いに直交するX、Y及びZ方向への各移動を制御するCNC装置や各動作の順序などが制御されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-237743号公報
【特許文献2】特開2001-282331号公報
【特許文献3】特開2008-152543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した各特許文献に限らず現在の技術では市場のニーズを適切に満たしているとは言えず、上記各手法では以下に述べるごとき課題が存在する。
すなわち、上記したNC旋盤などの数値制御工作機械は初期導入時に搬送ロボットなどと組み合わされてシステム化されるが、諸々の事情によって工作機械の導入後において搬送ロボットなどを加えて自動化するニーズも存在する。
【0006】
このとき、例えば上記した旋盤内で完結する装備類は後から追加で導入する事は比較的容易であるが、例えば特許文献2に例示されるような各種のI/Oユニットを経由するレベルの改造(例えば搬送や搬出ロボットをつなげて自動化するなど)である場合、事業者の規模や技術レベルによっては工作機械のメーカーや制御装置のメーカーなどに依頼しなければならない。そしてこのような小規模業者が外部へ発注して改造を行う場合には、工作機械の専用性ゆえに難易度が高いことから受注できる事業者も限られており、そもそも受注先すら見つからないといった事態にもなりかねない。
なお上記の点については数値制御(NC)された工作機械に限られず一般の工作機械全般にも当てはまる事柄である。
【0007】
このように既存の技術においては、既設の工作機械に対して搬送ロボットや搬出ロボットなどの加工周辺装置を後付けで組み合わせてシステム化する場合には、事業者の規模や技術レベルによっては現実的にその実現が困難であり未だに改善の余地が大きくある。
【0008】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、既設の工作機械に対して大掛かりな改造を施さずに搬送ロボットや搬出ロボットなどの加工周辺装置を後付けで組み合わせ可能な工作機械の自動化支援装置および自動化支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる工作機械の自動化支援装置は、(1)ワークを加工する既設の工作機械の操作パネルに追設される自動化支援装置であって、前記工作機械に前記ワークを搬送する第1加工周辺装置からの信号を受信する外部入力手段と、前記工作機械の操作パネルを撮像する操作パネル撮像手段と、前記外部入力手段による前記信号の受信を受けて、前記操作パネルを押圧して前記加工に必要な加工情報の入力を行う加工情報入力手段と、前記加工情報入力手段による前記操作パネルへの情報入力前後の画像を比較して、前記加工情報入力手段が入力指示した加工処理の状況を判定する制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
なお、上記した(1)に記載の工作機械の自動化支援装置においては、(2)前記制御手段は、前記操作パネルの画面に対してOCR処理を行うことで、前記加工処理の状況として、前記ワークの加工中と前記ワークの加工停止中の少なくとも一方を判定することが好ましい。
【0011】
また、上記した(1)又は(2)に記載の工作機械の自動化支援装置においては、(3)加工済のワークを前記工作機械から搬出するための第2加工周辺装置へ信号を送信する外部出力手段をさらに有し、前記外部出力手段は、前記制御手段による前記加工処理の状況の判定結果に基づいて、加工完了を示す信号を前記第2加工周辺装置へ送信することが好ましい。
【0012】
また、上記した(1)~(3)のいずれかに記載の工作機械の自動化支援装置においては、(4)前記第1加工周辺装置から搬送された前記ワークの形状を測定する形状測定装置をさらに有し、前記制御手段は、前記形状測定装置の測定結果に基づいて、前記加工情報入力手段を介して前記ワークの加工内容を変更する制御を行うことが好ましい。
【0013】
また、上記した(1)~(4)のいずれかに記載の工作機械の自動化支援装置においては、(5)前記ワークの加工情報および前記工作機械の動作情報の少なくとも一方を含む管理データを外部に送信する通信装置をさらに有し、前記制御手段は、外部に設けられた生産管理手段に対してネットワークを介して前記管理データを送信する制御を行うことが好ましい。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる工作機械の自動化支援方法は、(6)ワークを加工する既設の工作機械の操作パネルに追設された自動化支援装置を用いた自動化支援方法であって、前記工作機械に前記ワークを搬送する第1加工周辺装置からの信号を受信する受信工程と、前記第1加工周辺装置からの信号の受信を受けて、加工情報入力手段を介して前記操作パネルを押圧して前記加工に必要な加工情報の入力を行う加工情報入力工程と、前記加工情報入力手段による前記操作パネルへの情報入力前後の画像を操作パネル撮像手段によって取得する画像取得工程と、取得した前記情報入力前後の画像を比較して前記加工情報入力手段が入力指示した加工処理の状況を判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
なお上記した(6)に記載の自動化支援方法においては、(7)前記判定工程においては、前記操作パネルの画面に対してOCR処理を行うことで、前記加工処理の状況として、前記ワークの加工中と前記ワークの加工停止中の少なくとも一方を判定することが好ましい。
【0016】
また、上記した(6)又は(7)に記載の自動化支援方法においては、(8)加工済のワークを前記工作機械から搬出するための信号を第2加工周辺装置へ送信する外部出力工程をさらに有し、前記加工処理の状況の判定結果に基づいて前記ワークの加工完了を示す信号が前記第2加工周辺装置へ送信されることが好ましい。
【0017】
また、上記した(6)~(8)のいずれかに記載の自動化支援方法においては、(9)前記第1加工周辺装置から搬送された前記ワークの形状を形状測定装置によって測定する形状測定工程をさらに有し、前記形状測定装置の測定結果に基づいて、前記加工情報入力手段を介して前記ワークの加工内容が変更されることが好ましい。
【0018】
また、上記した(6)~(9)のいずれかに記載の自動化支援方法においては、(10)前記ワークの加工情報および前記工作機械の動作情報の少なくとも一方を含む管理データを、外部に設けられた生産管理手段に対してネットワークを介して送信する外部通信工程をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既設の工作機械に対して大掛かりな改造を施さずに搬送ロボットや搬出ロボットなどの加工周辺装置を後付けで組み合わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態におけるワーク加工システムを模式的に示す外観斜視図である。
【
図2】ワーク加工システムのうち数値制御工作機械の操作パネルに追設される自動化支援装置を示す模式図である。
【
図3】実施形態の自動化支援装置を含むワーク加工システムのブロック図を示す模式図である。
【
図4】実施形態における自動化支援方法の一部を説明するフローチャートである。
【
図5】実施形態における自動化支援方法の他の一部を説明するフローチャートである。
【
図6】実施形態における判定工程での画像比較の例を示す図である。
【
図7】変形例におけるワーク加工システムを模式的に示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための実施形態について説明する。なお、以下の図で例示するように、鉛直方向をZ方向として当該Z方向と交差する方向をX方向及びY方向とそれぞれ便宜的に定義して説明する。しかしながら本発明は上述した方向の規定に左右されるものではなく、特許請求の範囲を不当に減縮するものでないことは言うまでもない。
【0022】
また、以下で特に詳述する構成以外の構成については公知の装置や機構を適用できる。より具体的には、例えば数値制御(NC)工作機械の詳細な構造、PLCの構成あるいはI/Oユニットの詳細な構造については、上記した特許文献をはじめ公知の種々のNC工作機械、PLCあるいはI/Oユニットを援用してもよい。
【0023】
<ワークの加工システム>
まず本発明の実施形態にかかるワークWの加工システムについて、
図1を用いて説明する。同図から理解されるとおり、実施形態のワーク加工システムは、自動化支援装置100、数値制御工作機械200、第1加工周辺装置300および第2加工周辺装置400を含んで構成されている。なお本実施形態では、第1加工周辺装置300および第2加工周辺装置400は六軸制御が可能な搬送ロボットで兼用して構成されているが、この形態に限られず第1加工周辺装置300と第2加工周辺装置400をそれぞれ別体で構成してもよい。
【0024】
数値制御工作機械200は、例えばコンピュータ制御によってワークWを加工する機能を備えている。このように、本発明において「NC工作機械」とは、従来のNC工作機械に加えてコンピュータ制御によって動作するCNC工作機械も含まれるものとする。
なお、数値制御によって駆動するNC工作機械としては、例えばNC旋盤やNCフライス盤などが例示できるが左記に限定されない。
また、本実施形態では自動化支援装置100の適用対象としてNC工作機械を例示しているが、これに限られず撮像可能な操作盤(操作パネル)を有する一般的な工作機械にも適用可能であることは上述のとおりである。
【0025】
すなわち本発明が適用できるNC工作機械としては、上記の他に、例えば工具を自動交換して多種類の加工が可能なターニングセンターやマシニングセンター、NC研削盤、NCボール盤、NC歯車加工機、あるいはNC放電加工機やNCレーザー加工機など数値制御で加工が可能な公知の種々の工作機械が適用できる。
また、本実施形態に適用可能なワークWについても特に制限はなく、例えば材料面においては金属材料や樹脂材料で構成された公知の被加工材が適用でき、形状面についても丸棒や矩形物など公知のワークが適用できる。
【0026】
一例として、本実施形態における数値制御工作機械200は、ワークWを加工可能なCNC旋盤であり、操作パネル210、ワーク加工部220、チャッキング部230を含んで構成されている。
【0027】
操作パネル210は、例えば
図2(a)に例示されるような、加工中であることを示す「実行中」表示や各種の数値を表示する操作画面210aと、ワーク加工部220によるワークWの加工を開始するスタートボタンや加工プログラムの入力ボタンや呼出ボタンなどが配置された操作ボタン210bと、を備えた公知の操作パネルである。
このうち操作ボタン210bは、操作画面210aに隣接した押しボタンとなっているが、この形態に限られず操作画面210a内に表示される形態のボタンとなっていてもよい。この場合、操作画面210aの例としては、例えば公知のタッチパネル式の液晶パネルなどが挙げられる。
【0028】
なお操作パネル210におけるスタートボタンの位置や加工プログラムの入力ボタンなど各種ボタンの入力位置(画面上のレイアウト)は、メーカー及びシリーズが同じであればそれぞれの制御装置において画面レイアウトやボタン配置がほぼ同様な仕様になっていることが多い(一例として、例えばFANUC社製の0iシリーズや30iシリーズ、三菱電機株式会社のM80シリーズなど)。
従って、あるメーカーにおける特定のシリーズに注目すればその画面レイアウトやボタン配置は同様な仕様であることから、例えば操作パネル内におけるボタン位置(加工を開始する「スタートボタン」、加工中であるか否かを表示する「実行中」表示(
図2(b)参照)、あるいは加工プログラムを入力する「プログラムボタン」などの位置)などは画面内のどの位置に存在するかを予測して概ね特定することが可能であると言える。
【0029】
したがって後述する自動化支援装置100においては、
図2(a)に示すように、操作ボタン210bのうちスタートボタンやプログラムボタンに対応する位置などに加工情報入力手段(ソレノイドなど)を配置するとともに、操作画面210aに対応する位置に操作パネル撮像手段(カメラなど)を配置する構成を基準としている。
なお一部の工作機械における操作パネルは上記したごとき標準レイアウトとなっていないものも存在するが、そのような場合には自動化支援装置100を組み込む際に加工情報入力手段(ソレノイドなど)や操作パネル撮像手段(カメラなど)の位置を調整すれば足りる。
【0030】
ワーク加工部220は、例えばワークWを研削加工する工具(刃物)を保持可能な公知の刃物台を含む送り装置が例示できる。
チャッキング部230は、例えばワークWをチャッキング可能なチャックを備えた公知の主軸台が例示できる。
なおNC旋盤(CNC旋盤も同様)の詳細な構造や仕様については、例えば特開平5-177494号公報などに開示された構造や、他の公知の構造を適用できる。
【0031】
第1加工周辺装置300は、未加工のワークWを上記したチャッキング部230に搬送可能なワーク搬送手段である。かようなワーク搬送手段としては、特に制限はなく、例えば特開2010-277425号公報や特開2017-102825号公報に開示された6軸制御が可能な公知の搬送ロボットが例示できる。
【0032】
第2加工周辺装置400は、加工済のワークWを上記したチャッキング部230から外部へ搬出可能なワーク搬出手段である。かようなワーク搬出手段としては、特に制限はなく、例えば上記と同様に特開2010-277425号公報や特開2017-102825号公報に開示された6軸制御が可能な公知の搬送ロボットが例示できる。
なお本実施形態の第2加工周辺装置400は上記第1加工周辺装置300と兼用される構成(すなわち一台の搬送・搬出ロボット)となっているが、それぞれを別々に設置してもよい。
【0033】
<自動化支援装置100>
次に
図1~3を参照しつつ、本実施形態における数値制御工作機械に追設可能な自動化支援装置100の詳細な構成について説明する。
まず本実施形態の自動化支援装置100は、
図1及び
図2から明らかなとおり、ワークWを加工する既設の数値制御工作機械200の操作パネル210に追設される。
図2に示すように、本実施形態では、自動化支援装置100は、操作パネル210の操作画面210aや操作ボタン210bの設置面に対して開閉可能なように接続部材110を介して操作パネル210に取り付けられる。
【0034】
なお接続部材110の具体例としては、例えば蝶番など公知の部品が例示できる。また、本実施形態では水平方向(θz方向)に蝶番を介して開閉する構成となっているが、鉛直方向(θy方向)に蝶番を介して開閉する構成となっていてもよい。また、自動化支援装置100の操作パネル210に対する取り付け態様も上記に限定されず、例えば公知のスライド機構(接続部材110の他の一例)を介して操作画面210aに対して上下方向(Z方向)や左右方向(Y方向)にスライド可能に取り付けられる構成であってもよい。
【0035】
このように自動化支援装置100は接続部材110を介して操作画面210aや操作ボタン210bに対して開閉可能とされているため、例えば作業者が直接的に操作画面210aを見たり又は操作ボタン210bを押圧したいときなどに自動化支援装置100を開状態とすることができる。
【0036】
次に
図3も参照しつつ、自動化支援装置100の具体的な構成について説明する。
同図に示すように、本実施形態の自動化支援装置100は、外部入力手段10、操作パネル撮像手段20、加工情報入力手段30、制御手段40及び外部出力手段50などを含んで構成されている。
【0037】
外部入力手段10は、上記した数値制御工作機械200にワークWを搬送する第1加工周辺装置300からの信号を受信する機能を有している。かような外部入力手段10の具体例としては、上記特許文献3に例示されるような一般的な公知のI/Oユニットなどが例示できる。
【0038】
このとき第1加工周辺装置300からの信号としては、数値制御工作機械200へワークWの搬送が完了(例えばチャッキング部230にワークWをチャッキングさせるなど)したことを示す搬送完了信号や、未だワークを搬送中である旨の信号などが例示できる。
【0039】
操作パネル撮像手段20は、前記数値制御工作機械200の操作パネル210(操作画面210a)を撮像する機能を有している。かような操作パネル撮像手段20の具体例としては、公知のカメラが例示できる。なお
図2に示すように、ハーフミラーH/Mを介して操作パネル撮像手段20を操作パネル210の上部に取り付ける態様であってもよい。これにより、作業者は自動化支援装置100が操作パネル210に取り付けられた状態でも操作画面210aの表示内容(一例として
図2(b)参照)を視認することが可能となる。
【0040】
加工情報入力手段30は、前記した外部入力手段10による前記信号の受信を受けて、操作パネル210を押圧して加工に必要な加工情報の入力を行う機能を有している。かような加工情報入力手段30の具体例としては、例えばソレノイドによる押圧棒(押しボタン式の場合)や、スタイラスペン(タッチパネル式の場合)など公知の入力部材が例示できる。
【0041】
そして本実施形態の自動化支援装置100は、例えば第1加工周辺装置300からワークWの搬送完了を示す信号を受信すると、後述する制御手段40におけるタスク処理部42の制御の下で、上記したソレノイドやスタイラスペンを介して操作パネル210の操作ボタン210bを押圧する。これにより、例えば加工処理をスタートする情報や加工に使用する加工プログラムの情報などワークWの加工に必要な加工情報の入力を行うことが可能となっている。
【0042】
制御手段40は、前記した加工情報入力手段30による前記操作パネル210への情報入力前後の画像を比較して、加工情報入力手段30が入力指示した加工処理の状況を判定する機能を有している。かような制御手段40としては、メモリや演算機能を備えた公知のCPUが例示できる。
【0043】
本実施形態における制御手段40、
図3に示すように、OCR処理部41、タスク処理部42、比較処理部43、アラーム部44およびデータ送信部45を含んで構成されている。
OCR処理部41は、公知の光学的文字認識(Optical Character Recognition/Reader)アルゴリズムに基づいて、操作パネル210(操作画面210a)の文字認識を行う機能を有している。これにより、制御手段40は、操作画面210a内の文字を認識することが可能となっている。
【0044】
なお上述のとおり汎用的な数値制御工作機械の操作パネルにおける画面レイアウトはほぼ共通な仕様となっていることから、例えば上記「実行中」や加工プログラムのプログラム番号など文字認識が必要な領域を予め絞っておくこともできる。
【0045】
タスク処理部42は、不図示のメモリに格納された加工プログラムに従った処理などを実行する機能を有している。これにより、制御手段40は、例えば第1加工周辺装置300からの搬送完了信号を受信した後で、上記した加工に必要な加工情報(スタートボタンの押圧指令や所定の加工プログラムの番号入力指令)に基づくタスクを実行することが可能となっている。
【0046】
比較処理部43は、操作画面210a内の所定領域における時間的な前後を比較することで、ワークWの加工状態を比較する機能を有している。一例として、
図6に示すように、ワークWが加工中であれば操作画面210a内の所定領域に「実行中」の表示がなされる一方で、ワークWの加工が停止中であれば操作画面210a内の所定領域に「実行中」の表示がなされない。そこで比較処理部43は、上記OCR処理部のOCR処理を介して、上記所定領域の時間的な前後を比較する処理を行う。これにより制御手段40は、前記した加工処理の状況として「ワークWの加工中」と「ワークWの加工停止中」の少なくとも一方を判定することが可能となっている。
【0047】
アラーム部44は、例えばワークWの加工中におけるエラー発生など非定常状態となった際に警告を発する機能を有している。かような警告の態様としては、音声および映像の少なくとも1つを用いて作業者など外部に対してアラームを発することが例示できる。
データ送信部45は、通信装置の一部として機能し、前記したワークWの加工情報および数値制御工作機械200の動作情報の少なくとも一方を含む管理データを外部に送信する。
【0048】
図3に示すように、本実施形態の制御手段40は、外部に設けられた生産管理手段HDに対してインターネットやLANなど公知のネットワークを介して前記した管理データを送信する制御を行う。これにより例えば本実施形態の加工システムを工場内に複数備えて各々の制御手段40からそれぞれ上記管理データを送信することで、生産管理手段HDにおいて生産状況などを集中管理することなどが可能となる。
【0049】
また、生産管理手段HDは、例えば各制御手段40を介して各装置における「実行中」を監視する事で各々の装置の稼働時間の集中管理することもできる。あるいは、生産管理手段HDは、制御手段40を介して操作画面210a内における主軸の回転数を読み取るように設定すれば、稼働中の装置における加工条件を集中管理することにも応用できる。
なお生産管理手段HDの具体例としては、例えば大容量のハードディスクを備えたPCやサーバ、あるいはクラウド上のデータベースなど公知の記憶手段を備えたコンピュータが挙げられる。
【0050】
外部出力手段50は、加工済のワークWを前記数値制御工作機械200から搬出するための第2加工周辺装置400へ信号を送信する機能を有している。そして本実施形態の外部出力手段50は、前記した加工処理の状況の判定結果に基づいて、加工完了を示す信号を第2加工周辺装置400へ送信する。
【0051】
これにより第2加工周辺装置400は、例えば外部出力手段50を介して制御手段40(タスク処理部42)からワークWの加工完了を示す加工完了信号を受信すると、数値制御工作機械200のチャッキング部230から加工済のワークWを搬出する処理を行う。
なお上記した外部入力手段10への信号入力や外部出力手段50からの信号出力は、公知技術に従って、直接的に加工周辺装置と送受信されていてもよいし、上記したPLCを介して実行される態様であってもよい。
【0052】
<自動化支援装置100の操作パネル210への追設処理>
次に
図4も参照しつつ、既設の数値制御工作機械200へ自動化支援装置100を追設する場合における追設処理(装置立ち上げ)について説明する。
例えば既設の数値制御工作機械200に対して上記した搬出入ロボットなどの加工周辺装置を増設して自動化する場合、まずステップ1では1又は複数の加工周辺装置を数値制御工作機械200と隣接して配備する。
【0053】
次いでステップ2では、本装置(自動化支援装置100)と加工周辺装置の入出力を配線する。より具体的には、
図3を用いて上述のとおり、PLCを介して又は介さずに、自動化支援装置100のInput及びOutputのI/Oユニット(外部入力手段10&外部出力手段50)と加工周辺装置の制御部とを電気的に接続する。これにより自動化支援装置100の制御手段40は、上記した加工周辺装置との間で各種の制御信号の送受信が可能となる。
【0054】
その後にステップ3では、本装置(自動化支援装置100)をワーク加工装置(数値制御工作機械200)に取り付ける。より具体的には、上記した接続部材110を介して操作パネル210に自動化支援装置100を配設する。このとき、上述したとおり自動化支援装置100は必要に応じて操作パネル210に対して開閉可能となっており、作業者は必要に応じて直接的に操作画面210aや操作ボタン210bを調整することもできる。
【0055】
操作パネル210に自動化支援装置100を取り付けた後で、続くステップ4ではコーディングと微調整の少なくとも1つを実施する。すなわち、かようなコーディング処理としては、例えば上記したタスク処理部42で実行するタスク(例えばワークWの加工手順や加工内容のプログラミング)を制御手段40にインプットすることが例示できる。また、かような微調整の一例としては、例えば自動化支援装置100における加工情報入力手段30(ソレノイドなど)の押圧位置の調整などが挙げられる。
【0056】
そしてステップ5では、一例として試し加工を行って上記した配線やコーディングなどが適正か否かが判定される。なお本例では、試し加工を行ってその結果に基づいて設置態様の良否を判定しているが、この例に限られずワークを試し加工をせず試運転だけ行って設置態様の良否を判定してもよい。
【0057】
以上のステップを経ることで、元々は加工周辺装置(搬送ロボットや搬出ロボットなど)と連動しておらず単独で設置されていた数値制御工作機械200に対し、自動化支援装置100を追設して後付けで加工周辺装置と数値制御工作機械200とを自動化した加工システムを実現できる。
【0058】
<自動化支援装置が追設された加工システムによるワークの加工処理>
次に
図5を参照しつつ、自動化支援装置100が追設された加工システム(本例では数値制御工作機械200、第1加工周辺装置300及び第2加工周辺装置400)によるワークWの加工態様について説明する。
【0059】
すなわち本実施形態では、ワークWを加工する既設の数値制御工作機械200の操作パネル210に追設された自動化支援装置100を用いた自動化支援方法に基づいて、上述の加工システムによってワークWの加工が実行される。
まずステップ1では、自動化支援装置100の制御手段40は、数値制御工作機械200に未加工のワークWを搬送する第1加工周辺装置300から上記した信号を受信したか否かが判定される(受信工程)。
【0060】
そして第1加工周辺装置300から上記した信号を受信した場合には、次いでステップ2で加工情報入力手段30を介して加工処理が開始される(加工情報入力工程)。より具体的には、第1加工周辺装置300からの上記信号の受信を受けて、加工情報入力手段30を介して操作パネル210を押圧して前記した加工に必要な加工情報の入力(例えば加工プログラム番号の入力やスタートボタンの押圧など)が行われる。
【0061】
上記ステップ2に次いでステップ3では、上記操作パネル撮像手段20で操作パネル210の操作画面210aを撮像する(画像取得工程)。より具体的に本実施形態では、ワークWの加工中において、
図5に示すようにステップ3からステップ5を繰り返すことで、前記加工情報入力手段30による操作パネル210への情報入力前後の画像を操作パネル撮像手段20によって取得する。
【0062】
そしてステップ4においては、ステップ3で撮像した画像を解析する。具体的に制御手段40は、撮像した操作パネル210の画面情報に対して上記したOCR処理を行って、所定の領域に表示された内容を解析する。
【0063】
続くステップ5において、制御手段40はワークWの加工が継続しているか否かを判定する(判定工程)。より具体的に制御手段40は、取得した前記情報入力前後の画像を比較して加工情報入力手段30が入力指示した加工処理の状況を判定する。
【0064】
一例として、制御手段40は、当該判定工程においては、前記操作パネル210の画面(操作画面210a)に対して上記OCR処理を行うことで、加工処理の状況としてワークWの加工中とワークの加工停止中の少なくとも一方を判定することができる。
なおステップ2でワークWの加工が開始された直後は比較される画像はないことから、最初に画像を取得した直後のステップ5においては比較処理が行われないこととなる。
【0065】
一方で
図6に示すように、画像比較の結果、所定領域において「実行中」から文字無し状態に変化したと判定された場合には、チャッキングされたワークWの加工が完了したこととなる。
その場合にはステップ6において、制御手段40は、加工完了を示す信号を外部へ出力する(外部出力工程)。より具体的に制御手段40は、前記した加工処理の状況の判定結果に基づいてワークWの加工完了を示す加工完了信号が第2加工周辺装置400へ送信される。この加工完了信号の受信を受けて、第2加工周辺装置400によって加工済のワークWが数値制御工作機械200から搬出される。
【0066】
なお本実施形態ではステップ6において加工完了信号が外部へ送信される例を説明したが、本実施形態は上記に限られず他の信号を外部に送信することができる。例えば上述したとおり、ステップ2からステップ6のいずれかの工程において、ワークWの加工情報および数値制御工作機械200の動作情報の少なくとも一方を含む管理データを、外部に設けられた生産管理手段HDに対して公知のネットワークを介して送信してもよい(外部通信工程)。
【0067】
以上説明した本実施形態における数値制御工作機械に追設される自動化支援装置およびこれを用いた自動化支援方法によれば、既設の数値制御工作機械に対して大掛かりな改造を施さずに搬送ロボットや搬出ロボットなどの加工周辺装置を後付けで組み合わせてシステム化することが可能となっている。
【0068】
<変形例>
図6に変形例における本発明の加工システムを示す。
上記した実施形態に加え、本変形例で数値制御工作機械200は形状測定装置60をさらに備えている。かような形状測定装置60の具体例としては、接触式であるか非接触式であるかを問わず、例えば探針式計測装置やレーザー式計測装置、画像解析式計測装置など公知の種々の形状測定装置を適用できる。
【0069】
そして自動化支援装置100の制御手段40は、上記した形状測定装置60を用いて、第1加工周辺装置300からチャッキング部230へ搬送されたワークWの形状を測定してもよい(形状測定工程)。
さらに制御手段40は、この形状測定装置60の測定結果に基づいて、例えば加工寸法や加工プログラムを変更するなど加工情報入力手段30を介してワークWの加工内容を変更する制御を行ってもよい。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態やその変形例について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の数値制御工作機械の自動化支援装置および自動化支援方法は、簡易な構成で加工システムの自動化を促進するのに適している。
【符号の説明】
【0072】
100 自動化支援装置
10 載置手段
20 操作パネル撮像手段
30 加工情報入力手段
40 制御手段
50 外部出力手段
200 数値制御工作機械
300 第1加工周辺装置
400 第2加工周辺装置