(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088736
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】撓み量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20220608BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20220608BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220608BHJP
【FI】
G01B11/16 H
E01C23/01
G06T7/00 650A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200719
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】506427222
【氏名又は名称】一般財団法人建設工学研究所
(71)【出願人】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506359532
【氏名又は名称】地球観測株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520476271
【氏名又は名称】中西 典明
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100199808
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 昌代
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】230116643
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】中西 典明
(72)【発明者】
【氏名】福田 芳雄
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真也
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 啓
【テーマコード(参考)】
2D053
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2D053AA35
2D053AB02
2D053AD01
2D053FA02
2D053FA03
2F065AA09
2F065AA65
2F065BB15
2F065CC13
2F065CC14
2F065DD02
2F065FF04
2F065FF22
2F065JJ03
2F065MM02
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ29
2F065QQ31
2F065UU05
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA09
5L096FA67
5L096HA08
5L096JA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、効率的かつ低コストで安全に測定対象物の撓み量を測定することが可能な撓み量測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る撓み量測定方法は、測定対象物をカメラによって連続的に撮影する撮影工程と、上記撮影工程で得られた上記測定対象物の画像データにおける1又は複数の特徴部分とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分の経時的な撓み量を検出する検出工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物をカメラによって連続的に撮影する撮影工程と、
上記撮影工程で得られた上記測定対象物の画像データにおける1又は複数の特徴部分とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分の経時的な撓み量を検出する検出工程と
を備える撓み量測定方法。
【請求項2】
上記測定対象物が路面である請求項1に記載の撓み量測定方法。
【請求項3】
上記撮影工程で、上記カメラを上記路面又は上記路面に隣接する地面に対して固定する請求項2に記載の撓み量測定方法。
【請求項4】
上記撮影工程で、上記路面の振動が上記カメラに伝わることを抑制する防振材を用いる請求項3に記載の撓み量測定方法。
【請求項5】
上記撮影工程で、上記カメラを上記路面に沿って移動させ、上記路面の複数点の画像データを撮影する請求項2に記載の撓み量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撓み量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路面の動的な変位を計測する装置として、FWD(Falling Weight Deflectometer)が知られている。FWDは、計測車に配置された錘を落とした際に発生する撓み量をセンサーによって複数点で同時に測定するものである。FWDで測定した撓み量を解析することで舗装の劣化等を評価することができる(特開2015-68691号公報参照)。そのため、FWDを用いることで、改修工事の要否等を判断し、道路の維持管理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年では、社会資本の維持管理の効率化及び低コスト化が求められている。
【0005】
しかしながら、FWDによって路面の変位を計測する場合、(1)路面に計測車を停めて計測を行うことを要するため計測の際に交通規制を行うことが必要となる、(2)路面の任意の位置に錘を落下させることが困難である、(3)装置に要するコストが高い、等の課題を有する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率的かつ低コストで測定対象物の撓み量を測定することが可能な撓み量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る撓み量測定方法は、測定対象物をカメラによって連続的に撮影する撮影工程と、上記撮影工程で得られた上記測定対象物の画像データにおける1又は複数の特徴部分とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分の経時的な撓み量を検出する検出工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る撓み量測定方法は、効率的かつ低コストで測定対象物の撓み量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る撓み量測定方法を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、
図1の撓み量測定方法における撮影工程を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2の撮影工程で撮影された画像データを示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図2の撮影工程とは異なる実施形態に係る撮影工程を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図4の撮影工程で撮影された画像データを示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施例における撮影工程を示す模式図である。
【
図7】
図7は、No.1による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、No.2による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、No.3による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、No.4による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、No.5による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、No.6による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、No.7による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、No.8による撓み量の測定結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、No.6の測定結果から求められる対数近似曲線とNo.8の測定結果とを比較したグラフである。
【
図16】
図16は、No.7の測定結果から求められる対数近似曲線とNo.8の測定結果とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本発明の一態様に係る撓み量測定方法は、測定対象物をカメラによって連続的に撮影する撮影工程と、上記撮影工程で得られた上記測定対象物の画像データにおける1又は複数の特徴部分とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分の経時的な撓み量を検出する検出工程とを備える。
【0012】
当該撓み量測定方法は、カメラによって撮影された連続画像データを用いて上記1又は複数の特徴部分の経時的な撓み量を検出することができるので、従来のFWDのように計測車を停車させて撓み量を測定することを要しない。また、当該撓み量測定方法は、従来のFWDのように計測車に錘を配置したうえで、この錘を落として測定対象物を強制的に撓ませることを要しない。そのため、当該撓み量測定方法は効率性に優れる。さらに、当該撓み量測定方法は、従来のFWDに比べて装置の簡素化を図ることができる。そのため、当該撓み量測定方法は、低コスト化を実現することができる。
【0013】
上記測定対象物が路面であるとよい。当該撓み量測定方法は、路面の撓み量を効率的かつ低コストで測定するのに適している。
【0014】
上記撮影工程で、上記カメラを上記路面又は上記路面に隣接する地面に対して固定するとよい。このように、上記撮影工程で、上記カメラを上記路面又は上記路面に隣接する地面に対して固定することによって、装置の簡素化を図りつつ、道路の特定部分における舗装の劣化の有無を評価することができる。
【0015】
上記撮影工程で、上記路面の振動が上記カメラに伝わることを抑制する防振材を用いるとよい。このように、上記撮影工程で、上記路面の振動が上記カメラに伝わることを抑制する防振材を用いることによって、路面の振動に起因する画像のブレを抑制することができる。その結果、上記路面の所望の部分の撓み量をより正確に測定することができる。
【0016】
上記撮影工程で、上記カメラを上記路面に沿って移動させ、上記路面の複数点の画像データを撮影するとよい。このように、上記撮影工程で、上記カメラを上記路面に沿って移動させ、上記路面の複数点の画像データを撮影することによって、上記路面の延在方向における撓み量を広範囲で容易に測定することができる。
【0017】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0018】
[第一実施形態]
図1に示すように、当該撓み量測定方法は、測定対象物をカメラによって連続的に撮影する撮影工程S1と、撮影工程S1で得られた上記測定対象物の画像データにおける1又は複数の特徴部分とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分の経時的な撓み量を検出する検出工程S2とを備える。なお、当該撓み量測定方法では、撮影工程S1が終わった後に検出工程S2を行う必要はなく、撮影工程S1と検出工程S2とを並行して行ってもよい。
【0019】
当該撓み量測定方法は、
図2に示す測定装置10を用いて行うことができる。測定装置10は、カメラ1と、カメラ1を支持する支持部材2と、支持部材2の底部に配置される防振材3と、カメラ1とデータ通信可能に接続されるコンピュータ4とを備える。カメラ1としては、例えばCCDカメラ、CMOSカメラ等が挙げられる。支持部材2としては、例えば三脚、ミニ三脚、支持台等が挙げられ、
図2では三脚を図示している。防振材3は、支持部材2と支持部材2の設置面との間に介在して設置面からカメラ1に振動が伝わることを抑制する。防振材3としては、例えばスポンジシート等の発泡体、不織布シート、ラバーシート、ゲルダンパーなどが挙げられる。測定装置10は、コンピュータ4に複数のカメラ1が接続されていてもよい。
【0020】
当該撓み量測定方法は、従来のFWDに比較して測定対象物を問わない点で汎用性に優れる。当該撓み量測定方法で撓み量を測定可能な測定対象物としては、例えば路面、線路等の交通路や、橋梁等の道路構造物、ダム等の河川構造物などが挙げられる。中でも、上記測定対象物としては、路面が好ましい。当該撓み量測定方法は、例えば
図2に示すように、路面R1を走行する車両C1のタイヤ近傍をカメラ1で撮影することで、車両C1の荷重に起因する路面R1の撓み量を測定することができる。換言すると、当該撓み量測定方法は、従来のFWDのように、計測車を用いて路面R1に錘を落とすことを要しない。また、当該撓み量測定方法は、車両C1の通行の妨げとならない位置にカメラ1を設置するようにすれば、路面R1の撓み量を測定する際に通行規制を行うことを要しない。従って、当該撓み量測定方法は、路面R1の撓み量を効率的かつ低コストで測定するのに適している。
【0021】
以下、
図1から
図3を参照して、上記測定対象物が路面である場合における当該撓み量測定方法の測定手順の一例を詳述する。
【0022】
(撮影工程)
撮影工程S1では、カメラ1によって路面R1を連続的に撮影する。撮影工程S1では、カメラ1を路面R1又は路面R1に隣接する地面に対して固定する。当該撓み量測定方法は、カメラ1を路面R1又は路面R1に隣接する地面に対して固定することで、測定装置10の簡素化を図りつつ、道路の特定部分における舗装の劣化の有無を評価しやすい。
【0023】
撮影工程S1では、光軸がカメラ1から路面R1に向けて水平方向下方側に傾斜するようにカメラ1を路面R1又は路面R1に隣接する地面に対して固定することが好ましい。本発明者らは、路面R1と上記光軸とのなす角度が比較的小さくなるようにカメラ1を配置した場合に、検出工程S2によって路面R1の撓み量を適切に測定できるとの知見を得た。路面R1と上記光軸とのなす角度の上限としては、例えば45°であってもよく、30°であってもよい。一方、上記なす角度の下限としては、例えば10°とすることができる。
【0024】
カメラ1を路面R1又は路面R1に隣接する地面に対して固定する場合、カメラ1と路面R1とは正対しないことになる(より詳しくは、カメラ1を支持する支持部材2又は支持部材2に配置される防振材3が路面R1と同一平面に固定されることになる)。当該撓み量測定方法は、このような構成においても測定対象物の撓み量を適切に測定することができる。
【0025】
上述のように、当該撓み量測定方法では、路面R1の振動がカメラ1に伝わることを抑制する防振材3を用いている。この構成によると、路面R1の振動に起因してカメラ1で撮影した画像にブレが生じることを抑制でき、路面R1の所望の部分の撓み量をより正確に測定することができる。また、この構成によると、撓み量を測定したい部分に近接してカメラ1を配置することが容易となり、遠距離撮影時に必要とされるような望遠レンズを用いなくてもよいことで測定装置10の簡素化を促進することができると共に、撓み量を測定する際に交通の妨げとなるおそれを低減できる。
【0026】
撮影工程S1では、撓み量を測定したい部分(以下、「測定部分M1」ともいう)を含むように路面R1を連続的に撮影する。当該撓み量測定方法は、撮影工程S1で撮影された路面R1の画像データを用いて路面R1の撓み量を直接的に測定できるので、撓み量を測定するためのターゲットを路面M1とは別個に設けることを要しない。なお、当該撓み量測定方法では、マーキング等によって測定部分M1に目印を設けておくことも好ましい。この構成によると、測定部分M1の撓み量を判別しやすい。
【0027】
図2では、測定部分M1は固定されている。すなわち、撮影工程S1では、路面R1又は路面R1に隣接する地面に対して固定されたカメラ1によって、路面R1の固定領域を連続的に撮影する。この構成によると、道路の特定部分における舗装の劣化の有無を評価しやすい。
【0028】
撮影工程S1における撮影速度としては、特に限定されるものではなく、測定対象物や用途に応じて設定可能であり、例えば1フレーム/秒以下とすることも可能である。上記測定対象物が路面R1であり、検出工程S2で路面R1の瞬間的な撓み量を検出する場合であれば、上記撮影速度の下限としては、例えば450フレーム/秒が好ましく、500フレーム/秒がより好ましく、600フレーム/秒がさらに好ましい。一方、上記撮影速度の上限としては、1000フレーム/秒が好ましく、800フレーム/秒がより好ましい。上記撮影速度が上記下限に満たないと、撓み量が最大となったタイミングで撮影することが困難になる場合があり、その結果撓み検出工程S2で撓み量を適切に検出し難くなるおそれがある。逆に、上記撮影速度が上記上限を超えると、画像データ数が不必要に多くなり、測定装置10の高コスト化を招来するおそれがある。
【0029】
測定部分M1とカメラ1との平面距離(平面視における距離)としては、特に限定されないが、その下限としては、例えば1mが好ましく、2mがより好ましい。一方、上記平面距離の上限としては、10mが好ましく、5mがより好ましい。上記平面距離が上記下限に満たないと、検出工程S2で画像データを用いて撓み量を検出する際に、遠近(奥行)に起因して検出誤差が生じるおそれが高くなる。逆に、上記平面距離が上記上限を超えると、カメラ1の望遠性能を高める必要が生じることで測定装置10のコストが高くなるおそれや、撓み量の測定に際して他者の交通の妨げとなるおそれが高くなる。
【0030】
(検出工程)
図2及び
図3に示すように、検出工程S2では、カメラ1で撮影され、コンピュータ4に送られた各フレームの画像データQ1における1又は複数の特徴部分M1’(測定部分M1に対応する部分)とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分M1’の経時的な撓み量を検出する。すなわち、当該撓み量測定方法は、方向符号照合(OCM:Orientation Code Matching)によって上記1又は複数の特徴部分M1’の経時的な撓み量を検出する。方向符号照合とは、画像データの各部分の濃淡の強さ方向を符号化し、撮影工程S1で撮影された画像データとテンプレート画像データとの符号同士を照合することで、撮影工程S1で撮影された画像データとテンプレート画像データとの適合度合いを求める方法である。テンプレート画像データは、例えば撮影工程S1で連続撮影された一連の画像データのうちの最初の画像データを用いて設定することができる。検出工程S2では、例えば撮影工程S1で撮影した各画像データにおけるピクセルを中心とする輝度勾配方向をテンプレート画像データと照合することで1又は複数の特徴部分M1’の経時的な撓み量を検出する。当該撓み量測定方法によると、1又は複数の特徴部分M1’の変位の時間変化を解析して変位の大きさ、速度及び方向を算定することができる。当該撓み量測定方法によると、検出工程S2で検出された1又は複数の特徴部分M1’の経時的な撓み量から、1又は複数の特徴部分M1’の動的変位の波形を把握することができる。その結果、路面R1の強度、弾性等を判別し、路面R1の変形特性や健全性を評価することができる。
【0031】
当該撓み量測定方法は、方向符号照合を用いることで、路面R1の動的変形特性を導出することができる。そのため、当該撓み量測定方法を用いることで、既設道路の路面R1の性状を極めて簡易かつ機動的に判別することができ、路面R1の性能評価を経済的に行うことができる。
【0032】
特徴部分M1’の個数としては、特に限定されるものではなく、1つであってもよい。検出工程S2では、複数の特徴部分M1’を設けることで、路面R1の撓み量の検出精度を高めやすい。
【0033】
<利点>
当該撓み量測定方法は、カメラ1によって撮影された連続画像データを用いて1又は複数の特徴部分M1’の撓み量を検出することができるので、従来のFWDのように計測車を路上に停車させて撓み量を測定することを要しない。また、当該撓み量測定方法は、従来のFWDのように計測車に錘を配置したうえで、この錘を落として路面を強制的に撓ませることを要しない。そのため、当該撓み量測定方法は効率性に優れる。さらに、当該撓み量測定方法は、従来のFWDに比べて装置の簡素化を図ることができる。そのため、当該撓み量測定方法は、低コスト化を実現することができる。加えて、従来のFWDは、20m程度の広い間隔を空けて撓み量を測定するものである一方、当該撓み量測定方法は、所望の間隔で容易に撓み量を測定することができる。従って、当該撓み量測定方法は、路面等の局所的な異常箇所を容易に検出することができる。
【0034】
当該撓み量測定方法によると、例えば路面下空洞調査で空洞が確認された付近を通行する車両による路面R1の変位を測定することができる。従って、当該撓み量測定方法を用いることで、舗装への空洞の影響を把握することが容易となり、陥没危険度等を評価することが容易となる。
【0035】
[第二実施形態]
図4及び
図5を参照して、
図1から
図3の撓み量測定方法とは異なる実施形態に係る撓み量測定方法について説明する。当該撓み量測定方法は、測定対象物をカメラによって連続的に撮影する撮影工程と、上記撮影工程で得られた上記測定対象物の画像データにおける1又は複数の特徴部分とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分の経時的な撓み量を検出する検出工程とを備える。当該撓み量測定方法では、上記撮影工程が終わった後に上記検出工程を行う必要はなく、上記撮影工程と上記検出工程とを並行して行ってもよい。
【0036】
当該撓み量測定方法は、カメラ1と、カメラ1とデータ通信可能に接続されるコンピュータ(不図示)とを備える測定装置を用いて行うことができる。カメラ1としては、
図1から
図3の撓み量測定方法で挙げたカメラ1と同様のものを用いることができる。上記測定装置は、コンピュータに複数のカメラ1が接続されていてもよい。
【0037】
当該撓み量測定方法で撓み量を測定可能な測定対象物としては、例えば路面、線路等の交通路が挙げられる。中でも、上記測定対象物としては、路面が好ましい。当該撓み量測定方法は、例えば
図5に示すように、路面R2を走行する車両C2のタイヤ近傍をカメラ1で撮影することで、車両C2の荷重に起因する路面R2の撓み量を測定することができる。
【0038】
(撮影工程)
上記撮影工程では、カメラ1によって路面R2を連続的に撮影する。
図4に示すように、上記撮影工程では、カメラ1を路面R2に沿って移動させ、カメラ1の移動方向における路面R2の複数箇所の画像データQ2を撮影する。より詳しくは、上記撮影工程では、路面R2を走行している車両C2の後をつけるようにカメラ1を移動させつつ、車両C2の後輪近傍を連続的に撮影する。つまり、上記撮影工程では、カメラ1を路面R2上で移動させる。カメラ1は、車両C2の後を追う他の車両C3に配置して移動させることができる。また、カメラ1は、車両C2の先を行く他の車両又は車両C2と並走する他の車両に配置することも可能である。さらに、カメラ1は、車両C2の後輪の前方又は後方に取り付けて車両C2と一体的に移動させることも好ましい。当該撓み量測定方法は、上記撮影工程で、カメラ1を路面R2に沿って移動させ、路面R2の複数箇所の画像データQ2を撮影することで、路面R2の延在方向に亘る撓み量を広範囲で容易に測定することができる。これにより、道路の広範囲における舗装の劣化の有無を容易に評価することができる。
【0039】
上記撮影工程では、撓み量を測定したい部分(測定部分M2)を含むように路面R2を撮影する。測定部分M2は、路面R2に沿って移動する。具体的には、測定部分M2は、車両C2の位置(より詳しくは、車両C2の後輪の位置)に対応して移動する。上記撮影工程では、測定部分M2に追随するようにカメラ1を移動させ、路面R2の延在方向の複数箇所における画像データQ2を撮影する。
【0040】
(検出工程)
上記検出工程では、カメラ1で撮影され、上記コンピュータに送られた各画像データQ2における1又は複数の特徴部分M2’(測定部分M2に対応する部分)とテンプレート画像データとの方向符号照合によって上記1又は複数の特徴部分M2’の経時的な撓み量を検出する。上記検出工程では、例えば車両C2の後輪に押圧されて撓みを生じている特定の画像データQ2における特徴部分M2’と、この画像データQ2以外の画像データにおける特徴部分(又は特徴部分に対応する部分)とを照合することで、上記1又は複数の特徴部分M2’の撓み量を検出することができる。
【0041】
特徴部分M2’の個数としては、特に限定されるものではなく、1つであってもよいが、複数の特徴部分M2’を設定することで、車両C2の荷重に起因する撓み量を容易に検出することができる。例えば路面R2の車両C2との当接部分(後輪との当接部分)近傍と、この当接部分と離れた部分(車両C2の荷重に起因する撓みが生じない部分)とを特徴部分M2’として設定し、両者の差分をとることで、車両C2に基づく路面R2の変形量を算出することができる。
【0042】
<利点>
当該撓み量測定方法は、従来のFWDのように計測車を路上に停車させて撓み量を測定することを要しない。また、当該撓み量測定方法は、従来のFWDのように計測車に錘を配置したうえで、この錘を落として路面を強制的に撓ませることを要しない。そのため、当該撓み量測定方法は効率性に優れる。さらに、当該撓み量測定方法は、従来のFWDに比べて装置の簡素化を図ることができる。そのため、当該撓み量測定方法は、低コスト化を実現することができる。加えて、従来のFWDは、20m程度の広い間隔を空けて撓み量を測定するものである一方、当該撓み量測定方法は、路面R2の延在方向における撓み量を容易かつ連続的に測定することができる。従って、当該撓み量測定方法は、路面の局所的な異常箇所を容易に検出することができる。
【0043】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0044】
例えば当該撓み量測定方法は、上記撮影工程で上記カメラを固定する場合でも、カメラの固定位置は特に限定されるものではない。
【0045】
また、当該撓み量測定方法は、上記撮影工程で上記カメラを固定する場合でも、上記カメラの振動を考慮しなくてもよいような場合であれば、上述の防振材を用いなくてもよい。
【0046】
上記実施形態では、車両による交通荷重に起因する撓み量を測定する構成について説明した。しかしながら、当該撓み量測定方法は、例えば路面に錘を落とした際の路面の撓み量を測定するのに用いられてもよい。
【実施例0047】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0048】
図6に示すように、アスファルト舗装された路面に計測車C4を停車させ、5tfの錘Wを落とした際に発生する撓み量を測定した。No.1からNo.5では、錘Wの中心からカメラ側(
図6における下方側)に向けて300mm、450mm及び600mm離れた位置にそれぞれ測定部分M300、M450及びM600を設定し、各測定部分の撓み量を求めた。また、各測定部分には、チョークによってマーキングを施した。
【0049】
[実施例]
[No.1からNo.3]
No.1からNo.3では、
図2の測定装置10を用い、
図1の撮影工程S1及び検出工程S2を実施することで撓み量を測定した。No.1では錘Wの中心位置とカメラ1との平面距離を2mに設定し、No.2では錘Wの中心位置とカメラ1との平面距離を3mに設定し、No.3では錘Wの中心位置とカメラ1との平面距離を4mに設定した。カメラ1は、
図6の錘Wから下方に延びる線上に配置した。カメラ1の撮影速度は525フレーム/秒とした。また、No.1からNo.3では、支持部材2として三脚を用い、支持部材2と設置面との間にラバーシートからなる防振材3を配置した。No.1による測定結果を
図7に、No.2による測定結果を
図8に、No.3による測定結果を
図9に示す。
【0050】
[No.4]
テンプレートの位置を補正したこと以外、No.1と同様にして撓み量を測定した。No.4では、撮影工程S1で撮影される画像データの遠近を考慮して、錘Wの中心から300mm離れた測定部分M300に対応するテンプレート画像データを錘W側に補正し、錘Wの中心から600mm離れた測定部分M600に対応するテンプレート画像データをカメラ1側に補正した。No.4による測定結果を
図10に示す。
【0051】
[比較例]
[No.5]
No.5では、FWDによって撓み量を測定した。No.5による測定結果を
図11に示す。
【0052】
<評価結果>
図7から
図11に示すように、No.1からNo.4による撓み量の測定結果は、FWDによって撓み量を測定したNo.5と概略等しい。このことから、No.1からNo.4によると、路面の撓み量を適切に測定できることが分かる。また、
図7、
図10及び
図11に示すように、No.1よりもNo.4による測定結果の方が、No.5による測定結果に近似している。このことから、測定部分とカメラ1との平面距離が短い場合には、画像データの遠近を考慮して補正を行ってもよいことが分かる。
【0053】
[実施例]
[No.6]
No.1からNo.4と同様の装置を用いて、路面に5tfの錘Wを落とした際に発生する撓み量を測定した。No.6では、コンクリート舗装された路面に錘Wを落とすことで撓み量を測定した。No.6では、錘Wの中心位置とカメラ1との平面距離を3mに設定した。また、No.6では、錘Wの中心からカメラ1側に向けて300mm、450mm及び600mm離れた位置にそれぞれ測定部分M300、M450、M600を設定し、各測定部分の撓み量を求めた。各測定部分には、チョークによってマーキングを施した。No.6による測定結果を
図12に示す。
【0054】
[No.7]
錘Wの中心からカメラ1側に向けて200mm離れた位置に測定部分M200を追加した以外はNo.6と同様にして各測定部分の撓み量を求めた。No.7による測定結果を
図13に示す。
【0055】
[比較例]
[No.8]
No.8では、No.6及びNo.7と同様に、コンクリート舗装された路面に5tfの錘Wを落とした際に発生する撓み量を測定した。No.8では、FWDによって撓み量を測定した。No.8による測定結果を
図14に示す。
【0056】
<評価結果>
No.6の測定結果から求められる対数近似曲線をNo.8の測定結果と比較したグラフを
図15に示し、No.7の測定結果から求められる対数近似曲線をNo.8の測定結果と比較したグラフを
図16に示す。
図15及び
図16から、測定部分M200を追加したNo.7の方が、No.6よりもFWDによる測定結果に近似させやすいことが分かる。