(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088744
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】充填ノズル
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20220608BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20220608BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220608BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220608BHJP
【FI】
F17C13/02 301A
F17C5/06
H01M8/00 Z
H01M8/04 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200731
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 勉
(72)【発明者】
【氏名】名取 直明
【テーマコード(参考)】
3E172
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172EA35
3E172EB02
3E172EB15
3E172EB19
3E172KA21
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA56
5H127BA59
5H127EE04
5H127EE18
5H127EE25
5H127FF20
(57)【要約】
【課題】校正に必要な流量計その他の装置を小型化しつつ、校正に際しても水素充填プロトコルで求められている充填特性を獲得する。
【解決手段】本発明の充填ノズル(20)は、流量計(30)を内蔵し、流量計(30)の吸入側における流量計吸入側レセプタクル(32)と吐出側における流量計吐出側ノズル(34)を設け、流量計吸入側レセプタクル(32)は水素充填装置(2)側のノズル(5)と着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、流量計吐出側ノズル(34)は燃料電池自動車(FCV1)のレセプタクル(10)に着脱自在である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量計を内蔵し、
流量計の吸入側における流量計吸入側レセプタクルと吐出側における流量計吐出側ノズルを設け、
前記流量計吸入側レセプタクルは水素充填装置側のノズルと着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、
前記流量計吐出側ノズルは燃料電池自動車のレセプタクルに着脱自在であることを特徴とする充填ノズル。
【請求項2】
支持装置を設けている請求項1の充填ノズル。
【請求項3】
請求項1、請求項2の充填ノズルを用いた校正方法において、
校正終了時に、水素充填装置内における脱圧のみを行い、水素充填装置内の流量計とは別途設けられた流量計を内蔵する充填ノズルにおける脱圧を行わないことを特徴とする校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池自動車(FCV)等に水素を充填する施設である水素ステーションで用いられる充填ノズルに関し、より詳細には、充填するべき水素の流量(質量流量)を正確に計測する機能を有する充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
充填するべき水素の流量を正確に計測し、水素ステーションの充填装置内の流量計に対して不正行為が行われないことを保証するため、従来技術においては、所定規則に従って、充填装置の校正を行っている。
係る校正に際して、流量計(マスターメーター)を内蔵した校正装置を用いて、車両に水素充填をしつつ、校正を行う場合が存在する(例えば特許文献1参照)。そして、その様な校正装置で用いられる流量計として、小型のコリオリ流量計が存在する。
校正に際しては、圧力と温度に基づく水素の充填特性を定める水素充填プロトコルに従って水素充填が行われ、その水素充填の際に、水素充填装置における流量計の計測値と、校正装置に内蔵された流量計の計測値とを比較することにより、校正作業が行われる。
【0003】
校正装置を用いた従来の校正(特許文献1参照)について、
図5を参照して説明する。
図5において、水素充填装置2には充填ホース4が接続され、充填ホース4の先端に充填ノズル5が設けられている。
校正装置3には、基準流量計7(マスターメーター)が介装され、流量計吸入側レセプタクル6(逆止弁内蔵)、流量計吐出側ホース8、吐出側ホース8先端の流量計吐出側ノズル9を備えている。
流量計吸入側レセプタクル6は、充填ホース4先端の充填ノズル5と接続/取り外し可能に構成されており、流量計吐出側ノズル9は、水素を充填するべき機器である燃料電池自動車1(FCV)のレセプタクル10と接続/取り外し可能に構成されている。
図5に示す従来技術では、非通信充填で校正が行われる。
【0004】
校正装置3を用いて校正を行う場合は、
図5で示す様に、水素充填装置2の充填ノズル5を校正装置3の流量計吸入側レセプタクル6に接続し、流量計吐出側ノズル9をFCV1のレセプタクル10に接続する。
校正の際に、水素は、水素充填装置2から充填ホース4、充填ノズル5、校正装置3の流量計吸入側レセプタクル6、基準流量計7、流量計吐出側ホース8、流量計吐出側ノズル9、レセプタクル10を介して、FCV1の図示しない車載タンクに充填される。
基準流量計7は充填された水素充填量を正確に計測し、それにより水素充填装置2内で水素を計測する流量計(図示しない)の計測精度を評価(校正)することが出来る。
一方、通常の水素充填の際には、水素充填装置2の充填ノズル5を、直接、燃料電池車1側のレセプタクル10に接続する。水素は、水素充填装置2から充填ホース4、充填ノズル5、レセプタクル10を介して、FCV1の車載タンクに充填される。
校正終了後は、水素充填装置2の充填ホース4、充填ノズル5内に残存する水素ガスは、水素充填装置2の脱圧機構(遮断弁12、脱圧弁13、脱圧系統14)を介して、自動的に排出される。
【0005】
図5で示す校正の際に、校正装置3内の基準流量計7(マスターメーター)としては、小型のコリオリ流量計が用いられている。
しかし、
図5に示す従来の校正装置3は、前記機能を有し有効ではあるものの、上述した様に吐出側ホース8(流量計吐出側ホース)を介してFCV1の車載タンクに水素ガスを充填するので、通常充填時の(非校正時の)水素充填に比較して、校正装置3の流量計吐出側ホース8の分だけ、水素充填系統における熱容量及び圧損が増大している。
そして、水素充填系統における熱容量、圧損が大きいと、定められた充填プロトコルに従った充填特性が得られなくなり、水素充填プロトコルに従った水素充填が困難になる。校正装置3の流量計吐出側ホース8により、通常充填の場合に比較して、校正時には水素充填系統における熱容量及び圧力損失が大きくなるため、校正時において、プロトコル通りの充填特性が得られない恐れがある。
また、流量計吐出側ホース8には寿命があり、通常は1000~2000回という水素充填の回数(校正の回数)の制限が存在する。寿命が尽きたホース8は交換する必要があり、そのために労力、コストが必要になるため、ホースの使用回数の制限を無くしたいという要請が存在した。
それに加えて、
図5に示す従来の校正装置3では、校正終了後に校正装置3内に存在する高圧の水素ガスを脱圧する構造(脱圧弁15を備える脱圧系統11)を用いて、作業員が脱圧作業(手作業)を行う必要があり、校正における作業場の負担が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、校正に必要な流量計その他の装置を小型化しつつ、校正に際しても水素充填プロトコルで求められている充填特性を獲得することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は種々研究の結果、充填車両側のレセプタクルに接続される充填ノズルにおいて校正の際に充填される水素流量(質量流量)を計測すれば、上述した問題を解消できることを見出した。
係る知見に基づいて創作された本発明の水素ガス供給用の充填ノズル(20)は、
流量計(質量流量計30)を内蔵し、
流量計(30)の吸入側における流量計吸入側レセプタクル(32)と吐出側における流量計吐出側ノズル(34)を設け、前記流量計吸入側レセプタクル(32)は水素充填装置(2)側のノズル(5)と着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、
前記流量計吐出側ノズル(34)は燃料電池自動車(FCV1)のレセプタクル(10)に着脱自在であることを特徴としている。
本発明の充填ノズル(20)は水素充填のみならず、給油装置の給油用ノズルとして適用することも可能である。
【0009】
本発明において、(前記充填ノズル20を載置する)支持装置(40)を設けることが好ましい。
そして、支持装置(40)は台車部(42)を備えているのが好ましい。
【0010】
上述した充填ノズル(請求項1、請求項2の充填ノズル20)を用いた校正方法は、
校正終了時に、水素充填装置(2)内における脱圧のみを行い、水素充填装置(2)内の流量計と別途設けられた流量計(30)を内蔵する充填ノズル(20)における脱圧を行わないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明の充填ノズル(20)は、流量計(30)を有し、且つ、水素充填装置(2)の水素充填ノズル(5)と流量計(30)の流量計吸入側レセプタクル(32)とを接続し、流量計(30)の流量計吐出側ノズル(34)を燃料電池自動車(FCV1)のレセプタクル(10)に接続することにより、燃料電池自動車(FCV1)内に水素ガスを充填することが出来る。
そして構成の際には、流量計(30)で水素ガスの質量流量を計測することにより、従来技術に係る校正装置(3)を用いることなく、燃料電池乗車(FCV1)に水素ガスを充填しつつ、校正を行うことが出来る。
【0012】
また本発明の水素充填ノズル(20)では、校正用の流量計(30)の吐出側にホースを設ける必要が無いため、従来の校正装置(3:
図5参照)におけるマスターメーター(7)と校正装置(3)のノズル(9)とを結ぶホース(8)が不要である。
その結果、従来の校正と比較して、流量計吐出側水素充填ホース(8:
図5)の分だけ、水素充填系統における熱容量及び圧損を減少して、その結果、定められた充填プロトコルにおける充填特性を容易に得ることが出来て、水素充填プロトコルに従った水素充填が実行できる。
そして、従来の校正装置(3)における流量計吐出側水素充填ホース(8)が不要であることから、当該ホースの使用回数の制限を考慮する必要がなくなる。
【0013】
さらに、本発明の水素充填ノズル(20)で校正を行えば、校正終了後、水素充填ノズル(20)内に残存する水素ガスは微量であり、また、当該残存する水素ガスは、水素充填装置(2)側の脱圧機構(脱圧弁13、脱圧系統14)を介して、自動的に排出される。
そのため、従来の校正装置(3)の様に、校正終了後に、校正装置(3)内に存在する高圧の水素ガスを脱圧する構造(脱圧弁15、脱圧系統11:
図5参照)を設ける必要がなく、作業員による脱圧作業が不要である。
これに加えて、本発明の水素充填ノズル(20)は流量計(30)を有していても、上述した通り脱圧系統を設ける必要がないため、脱圧系統から逆流するのを防止するための逆止弁等も不要である。従って、校正における作業が簡素化され、校正に必要な機器の製造コストの低下にも寄与する。
【0014】
本発明の水素充填装置(20)において支持装置(40)を設ければ、支持装置(40)により、流量計(30)を有するノズル(20)の大重量を支持することが出来る。その結果、流量計(30)を有するノズル(20)を燃料電池車(FCV1)のレセプタクル(10)に接続しても、当該レセプタクル(10)がノズル(20)の重量で破損することが防止される。
それに加えて、支持装置(40)に台車部(42)を設ければ、支持装置(40)と共にノズル(20)を容易に移動することが出来る。それにより、ノズル(20)として要求される取り回し性能が低下してしまうことを防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る水素充填ノズルの説明図である。
【
図2】
図1で示す水素充填ノズルを用いた校正作業の説明図である。
【
図3】
図1で示す水素充填ノズルにおける支持装置の説明図である。
【
図4】
図1~
図3で示す水素充填ノズルを用いた校正における校正終了時の作業フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1~
図4において、
図5で示すのと同様の部材は
図5と同様な符号を付して示している。
図1において、図示の実施形態に係る水素充填ノズルは全体を符号20で示している。
充填ノズル20は流量計30(質量流量計)を内蔵しており、流量計吸入側レセプタクル32と、流量計吐出側ノズル34を有している。また充填ノズル20は、
図3を参照して後述する支持装置40を有している。
流量計吸入側レセプタクル32は、水素充填装置2(
図2)の充填ホース4先端の充填ノズル5と着脱自在となる様に構成されている。ここで、流量計吸入側レセプタクル32は、
図5で示す校正装置3のレセプタクル6とは異なり、逆止弁は内蔵していない。
流量計吐出側ノズル34は、
図5で示す校正装置3のノズル9と同様に構成されており、FCV1のレセプタクル10(逆止弁を内蔵)と着脱自在に構成されている。
【0017】
充填ノズル20を用いた校正作業の説明図である
図2には、図示の実施形態で校正に関わる機器が示されており、水素ステーションにおけるシステムが示されている。
図2において、水素充填装置2は、水素充填装置2の充填ホース4、充填ノズル5内に残存する水素ガスを水素充填後に脱圧するための脱圧機構(遮断弁12、脱圧弁13、脱圧系統14)を有している。
図1、
図2において、充填ノズル20の流量計吸入側レセプタクル32に水素充填装置2の充填ノズル5を接続し、充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10に接続して、FCV1に対して水素充填を行えば、水素充填装置2、充填ホース4、充填ノズル5、流量計吸入側レセプタクル32を介して水素ガスが流量計30を流れ、(流量計30により)質量流量が計測され、校正が行われる。
明確には図示されていないが、例えばカメラ(画像撮影機器)を設け、水素充填装置2において表示された各種数値を撮影して、画像として記録することが可能である。係る画像は証拠写真として活用することが出来る。
【0018】
図5で示す従来の校正と比較すると、
図2で示す充填ノズル20には流量計吐出側水素充填ホース8(
図5)が存在しないので、その分だけ水素充填系統における熱容量及び圧損が少なく、定められた充填プロトコルにおける充填特性で、水素充填プロトコルに従った水素充填を実行することができる。
流量計30で計測された質量流量は、図示しない送信装置により、例えば赤外線通信(IR通信)により、例えば作業者が保持する図示しない情報処理装置(例えばタブレット)に送信される。係る送信は図示しない無線装置で行うことが出来るし、或いは、図示しない信号ラインを介して行うことが出来る。図示しない情報処理装置においては、流量計30の計測結果に基づいて水素充填装置2側の流量計の器差を演算し、校正の報告書を作成することが可能である。
図2において、明示されていないがFCV1内における圧力、温度もIR通信或いは図示しない信号伝達ラインにより水素充填装置2に送信され、通信充填が実行されている。
【0019】
図示の実施形態に係る充填ノズル20は、校正装置としての機能を発揮するノズルであり、この充填ノズル20を使用することにより、通常の水素充填と同様な態様で校正を行うことが出来る。
図示されていないが、通常の水素充填は、充填ノズル20における流量計吸入側レセプタクル32、流量計30、流量計吐出側ノズル34を介さずに、水素充填装置2の充填ノズル5を、直接、FCV1側のレセプタクル10に接続して行う。
なお、図示の実施形態に係る充填ノズル20は流量計30を有しているので、燃料電池自動車(FCV1)内に水素ガスを充填する際に、充填した水素ガスの質量流量を計測できるので、水素充填装置2内の流量計を省略することも可能である。
【0020】
図示の実施形態に係る充填ノズル20は流量計30を内蔵しているが、流量計30とFCV1のレセプタクル10との間に充填ホースは存在しないので、FCV1に対して充填ノズル20により水素充填を行った後に充填ノズル20内に残存する水素ガスは微量である。また、レセプタクル32には逆止弁が内蔵されていない。そのため、校正の後、充填ノズル20内に残存する水素ガスは、水素充填装置2の充填ノズル5、充填ホース4を介して、水素充填装置2側の脱圧機構(脱圧弁13、脱圧系統14)により自動的に排出される。
そのため、
図5に示す従来の校正装置3とは異なり、校正終了後に、校正装置3内に存在する高圧の水素ガスを脱圧する構造(脱圧弁15、脱圧系統11:
図5)を設ける必要がなく、作業員による脱圧作業が不要である。
そして、脱圧系統を設ける必要がないため、脱圧系統から逆流するのを防止するための逆止弁等も不要であり、その分だけ校正に用いられる機器の構造が簡素化され、校正に関するコストも低減できる。
【0021】
流量計30の駆動源としてはバッテリー(図示せず)が好適であるが、電源ケーブル(図示せず)を用いて図示しない商用電源と接続して駆動源とすることも可能である。
流量計30の駆動源をバッテリーとした場合には、省スペースを達成できて、可搬性、操作性及び取り扱い性が向上する。
駆動源を商用電源とした場合には電源ケーブルが必要となるが、
図3で後述する支持装置40に電源ケーブルを配置することが可能である。
【0022】
図3において、図示の実施形態では、充填ノズル20を支持する支持装置40を設けている。
支持装置40は本体部41と台車部42を備えており、本体部41の上端近傍に充填ノズル20が載置、固定される。本体部41に載置された充填ノズル20は、支持装置40の本体部41の長手方向を軸に回動(矢印A1)することが可能であり、充填ノズル20の水平面(図示せず)に対する傾斜を矢印A2で示す様に調整出来る。
支持装置40を、例えば公知の三脚で構成することも出来る。その他の従来技術も採用可能である。
ここで、充填ノズル20は流量計30を内蔵するため重量が大きい。支持装置40を設けることなく大重量の充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10に接続すると、充填ノズル20の大重量がレセプタクル10に作用してレセプタクル10を破損する恐れがある。
支持装置40を設けることにより、FCV1のレセプタクル10には充填ノズル20の大重量が負荷されなくなり、レセプタクル10の破損が防止される。
また、本体部41を載置する台車部42を設けているので、大重量の充填ノズル20を載置した状態の支持装置40が容易に移動することが出来る。
さらに、流量計30の駆動源を商用電源とした場合に対応するため、支持装置40にはコンセント35を有する電気ケーブル36が設けられている。
【0023】
ここで、大重量の充填ノズル20を支えるため、図示しないサポートアームにより、上方から充填ノズル20を吊り下げて支持することも可能である。
ただし、サポートアームのバランサは固定されているので、サポートアームの調整が必要となる。そのため、サポートアームの調整を行わずに済むように、充填ノズル20の支持は、支持装置40によることが好適である。
さらに、図示の支持装置40において、公知の機構により本体部41の長手方向の長さを調整可能に構成し、流量計吐出側ノズル34の高さ位置を垂直方向(矢印A3方向)に調節可能としている。以て、流量計吐出側ノズル34とFCV1側のレセプタクル10の垂直方向位置を一致させて、レセプタクル10に余分な荷重が負荷されない様にせしめ、レセプタクル10の破損を防止している。
【0024】
次に、
図4を参照して、図示の実施形態に係る充填ノズル20を用いて校正を行った場合における校正終了の手順を説明する。
図4のステップS1では、充填(校正)を終了するか否かを判断する。水素充填の際には、水素充填装置2(
図2)の吐出側に配置された圧力計(図示せず)で圧力がチェックされるので、水素充填装置2の吐出側圧力が所定値(例えば80MPa)以上か否かを判断し、所定以上の高圧になった場合に「充填(校正)を終了」と判断する。当該判断は、水素充填装置2の図示しない制御ユニットにより実行される。
ステップS1の判断の結果、充填(校正)を終了する場合(ステップS1が「YeS」)はステップS2に進む。充填(校正)を終了しない場合(ステップS1が「No」)はステップS1に戻り、充填(校正)を継続する(ステップS1が「No」のループ)。
【0025】
ステップS2(充填(校正)を終了)では、水素充填装置2の遮断弁12(
図2)を閉鎖して、ステップS3に進む。
ステップS3では、水素充填装置2の脱圧弁13(
図2)を開放し、脱圧系統14(
図2)を介して水素充填装置2内に残留する水素ガスを脱圧する。
脱圧弁13を開放することにより、水素充填装置2の充填ホース4(
図2)、水素充填装置2の充填ノズル5(
図2)内に残存する水素ガスが排出されると共に、充填ノズル20内に残存する微量の水素ガスも、逆止弁が内蔵されていないレセプタクル32、水素充填装置2の充填ノズル5、充填ホース4を介して、水素充填装置2の脱圧弁13、脱圧系統14を介して排出(自動脱圧)される。
【0026】
続くステップS4では、ステップS3による水素充填装置2の自動脱圧が終了したか否かを判断する。自動脱圧が終了したか否かの判断に際し、水素充填装置2の吐出側圧力が脱圧の基準圧力(例えば1MPa)以下になった場合に「自動脱圧が終了」と判断する。当該判断は、水素充填装置2の制御ユニットにより実行される。
ステップS4で自動脱圧が終了した場合(ステップS4が「YeS」)にはステップS5に進む。自動脱圧が終了していない場合(ステップS4が「No」)にはステップS3に戻り、脱圧を継続する(ステップS4が「No」のループ)。
【0027】
ステップS5(自動脱圧が終了)では、水素充填装置2の遮断弁12を開放し、脱圧弁13を閉鎖する。そしてステップS6に進む。
ステップS6では、充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1側のレセプタクル10から取り外す。その際に、充填ノズル20の脱圧は不要である。ステップS3において、充填ノズル20内の水素は、水素充填装置2側の脱圧弁13、脱圧系統14を介して排出されているからである。換言すれば、図示の実施形態では、校正終了時に、水素充填装置2内における脱圧のみを行い、水素充填装置2内の流量計とは別途設けられた充填ノズル20に内蔵された流量計30については脱圧を行わない。
なお、ステップS5、S6の作業は、同時に実行することも出来、或いはステップS6、ステップS5の順で実行することも出来る。
【0028】
図示の実施形態における充填ノズル20を用いれば、水素充填装置2の充填ノズル5と充填ノズル20の流量計吸入側レセプタクル32とを接続し、充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34を燃料電池自動車(FCV1)のレセプタクル10に接続することにより、燃料電池自動車(FCV1)内に水素ガスを充填することが出来る。
そして充填ノズル20は流量計30を有しているので、燃料電池自動車(FCV1)内に水素ガスを充填する際に、FCV1内に充填される水素ガスの質量流量を計測し、その計測結果を用いて水素充填装置2内の流量計を校正することが出来る。
図示の実施形態に係る充填ノズル20は校正装置としての機能を奏するノズルであり、図示の実施形態に係る充填ノズル20を用いれば、従来の校正装置3(
図5)を用いることなく、水素充填と同時に校正を行うことが出来る。
【0029】
また図示の実施形態における充填ノズル20では、流量計30と流量計吐出側ノズル34にホースを介装する必要が無いため、校正装置3のマスターメーター7とノズル9とを結ぶためのホース8(従来の校正装置3では必須)が不要になる。その結果、図示の実施形態に係る充填ノズル20による校正では、従来の校正と比較して、水素充填ホース8の分だけ、水素充填系統における熱容量及び圧損を減少することが出来る。そして、水素充填系統における熱容量、圧損を減少させる結果として、定められた充填プロトコルにおける充填特性を得ることが容易となり、水素充填プロトコルに従った水素充填が実行できる。
さらに、従来の校正(
図5参照)におけるマスターメーター7とノズル9とを結ぶホース8が不要であることから、当該水素充填用ホース8の使用回数の制限を考慮する必要がなくなる。
【0030】
ここで、従来の校正(
図5)で用いられた校正装置3では、校正終了後に校正装置3内に存在する高圧の水素ガスを脱圧する構造(脱圧弁15、脱圧系統11)を用いて、作業員によって脱圧作業(手作業)を行う必要がある。
それに対して、図示の実施形態に係る充填ノズル20で校正を行えば、校正終了後、充填ノズル20内に残存する水素ガスは微量である。また、レセプタクル32には逆止弁が内蔵されていないので、充填ノズル20内に残存する水素ガスは、水素充填装置2の充填ノズル5、充填ホース4を介して、水素充填装置2側の脱圧機構(脱圧弁13、脱圧系統14)により、校正終了後、自動的に排出される。
従って、校正の終了時に、作業員による脱圧作業が不要である。
また、流量計30を設けているにも拘らず充填ノズル20に脱圧系統を設ける必要がないため、脱圧系統から逆流するのを防止するための逆止弁等も不要である。その結果、校正が簡素化され、製造コストの低下にも寄与する。
【0031】
さらに、図示の実施形態では、充填ノズル20の支持装置40が設けられているので、流量計30を有する充填ノズル20の大重量を支持することが出来る。その結果、流量計30を有する大重量の充填ノズル20をFCV1に取り付けたとしても、FCV1のレセプタクル10が充填ノズル20の重量で破損する恐れはない。
また、支持装置40は、本体部41を載置する台車部42が設けられており、充填時、充填終了時における支持装置40の移動を容易にしており、充填ノズルとして要求される取り回し性が損なわれることがない。
加えて、支持装置40において、本体部41の長手方向の長さを調整可能とし、載置された充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34の高さ位置を垂直方向に調節可能に構成している。そのため、流量計吐出側ノズル34とFCV1側のレセプタクル10の垂直方向位置が一致し、レセプタクル10に余分な荷重が負荷しない。
【0032】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態は水素充填ノズルについて説明しているが、本発明の充填ノズルは給油ノズルとして適用することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・燃料電池自動車(FCV)
2・・・水素充填装置
5・・・充填ノズル
10・・・燃料電池自動車のレセプタクル
20・・・充填ノズル
30・・・流量計(質量流量計)
32・・・流量計吸入側レセプタクル
34・・・流量計吐出側ノズル
40・・・支持装置