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  • 特開-シールリング欠損の検出構造 図1
  • 特開-シールリング欠損の検出構造 図2
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  • 特開-シールリング欠損の検出構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088750
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】シールリング欠損の検出構造
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20220608BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20220608BHJP
   F28F 11/00 20060101ALI20220608BHJP
   F01P 11/00 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28D1/053 Z
F28F11/00 A
F01P11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200751
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】中岡 八束
(72)【発明者】
【氏名】信川 英一
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA31
3L103BB12
3L103CC02
3L103CC22
3L103DD61
(57)【要約】
【課題】 ラジエータの給水キャップに取付けるシールリングの欠損を確実に検出する構造を提供すること。
【解決手段】 シールリング6を欠損した状態で、シールリング6と栓4との間にタンク1の内外を連通する少なくとも1つの隙間7を形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器のタンク(1)の連通孔(2)の孔縁に、着座面(3)が形成され、その連通孔(2)に嵌入される栓(4)の頭部(5)が前記着座面(3)に当接され、連通孔(2)と栓(4)との間にシールリング(6)が介装される熱交換器において、
連通孔(2)に栓(4)が嵌入され、且つ前記シールリング(6)が欠損した状態で、連通孔(2)と栓(4)との間に、前記タンク(1)の内外を連通する少なくとも一つの隙間(7)が形成される熱交換器のシールリング欠損の検出構造。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器のシールリング欠損の検出構造において、
前記隙間(7)が、前記栓(4)の頭部(5)の前記当接の面(8)に、その外周縁から前記連通孔(2)まで連続する溝(9)により形成された熱交換器のシールリング欠損の検出構造。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器のシールリング欠損の検出構造において、
前記溝(9)の断面積が、頭部(5)の中心側ほど外周縁より狭く形成された熱交換器のシールリング欠損の検出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータ等に用いる熱交換器のタンクに着脱自在に装着される栓に関し、その栓の軸部外周に被着されるシールリングの欠損を検出する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、ラジエータとして用いる従来型熱交換器であって、同図(A)はそのタンク1aと栓4aとの要部分解図であり、同図(B)は栓4aをタンク1aのフィラーネック10aに取付けた状態を示す正面図であり、同図(C)は栓4aの底面図である。
エンジン冷却水を冷却するラジエータとしての熱交換器は、タンク1aの上端にフィラーネック10aが突設され、それに図示しない連通孔が設けられ、その連通孔の孔縁には着座面3aが形成されている。その連通孔に、栓4aが着脱自在に螺着される。この栓4aは、頭部5aの下側にフランジ状の面8aが形成され、頭部5aの下方には、雄ねじからなる軸部が設けられている。さらに、その軸部の下端外周には、環状溝が形成され、そこにシールリング6aが被着されている。
そして、栓4aをタンク1aのフィラーネック10aの連通孔に螺着し、頭部5aの下側の面8aをフィラーネック10aの着座面3aに当接する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のようなラジエータの栓4aは、時として、その環状溝に被着すべきシールリングが被着されていない状態(以降、シールリングの欠損状態と記載する)で、タンク1aに取付けられるおそれがある。
この場合において、タンク1aにHe等の気体を入れて、シール漏れ検査をした場合、栓4aの頭部5aの下側の面8aとフィラーネック10aの着座面3aとが密着状態にあると、漏れを検出できない場合がある。すなわち、このような状況の場合、熱交換器の検査工程において、シールリングの欠損状態を検出することは難しい。
本来のシール性機能を担保するシールリングが、欠損した状態で、その後、外力(熱影響等)の変化により、接触面の密着性が低下すると、栓からタンク内の冷却水が漏れる不具合が生じることになる。
【0004】
そこで、本発明は、上記のようなシールリングの欠損状態であっても、検査工程で確実に、その欠損を検出できる構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、熱交換器のタンク1の連通孔2の孔縁に、着座面3が形成され、その連通孔2に嵌入される栓4の頭部5が前記着座面3に当接され、連通孔2と栓4との間にシールリング6が介装される熱交換器において、
連通孔2に栓4が嵌入され、且つ前記シールリング6が欠損した状態で、連通孔2と栓4との間に、前記タンク1の内外を連通する少なくとも一つの隙間7が形成される熱交換器のシールリング欠損の検出構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器のシールリング欠損の検出構造において、
前記隙間7が、前記栓4の頭部5の前記当接の面8に、その外周縁から前記連通孔2まで連続する溝9により形成された熱交換器のシールリング欠損の検出構造である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の熱交換器のシールリング欠損の検出構造において、
前記溝9の断面積が、頭部5の中心側ほど外周縁より狭く形成された熱交換器のシールリング欠損の検出構造である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、シールリング6が欠損した状態で、連通孔2と栓4との間に、タンク1の内外を連通する少なくとも一つの隙間7が形成されたものである。
そのため、タンク1内を加圧したとき、その隙間7から流体が流出して、シールリング6の欠損を確実に検出することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記構成において、隙間7が栓4の頭部5の当接の面8に、その外周縁から通孔2まで連続する溝9として形成されたものである。
そのため、栓4の頭部5と、連通孔2の着座面3とが圧接状態であっても、溝9を介してタンク1の内外が連通して、シールリング6の欠損を確実に検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記構成において、溝9の断面積が、頭部5の中心側ほど外周縁より狭く形成されたものである。
これにより、溝9の流通抵抗を中心側ほど大きくして、シールリング6の欠損時に、タンク1から外部に流出する流体の過剰な流出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の熱交換器に用いる栓4であって、(A)はその正面図、(B)は(A)のB部拡大図、(C)は同底面図、(D)は(C)のD部拡大図、(E)は(A)のE-E矢視断面図。
図2】同栓4をタンク1のフィラーネック10の連通孔に着座させた状態を示す正面図(A)、(B)は(A)のB部拡大図、(C)は(A)のC-C断面図。
図3】同実施例における作用を示し、(A)はその気体16の放出路を示す底面図、(B)は同縦断面図。
図4】従来型栓4の要部分解図(A)、(B)は同栓4の着座状態を示す要部正面図、(C)は同栓4の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態につき説明する。
図1は、本発明の検出構造に用いる栓4であって、同図(A)は正面図、同図(B)は図1(A)のB部拡大図、同図(C)は同底面図、同図(D)は図1(C)のD部拡大図、同図(E)は図1(A)のE-E矢視断面図である。
また、図2は同検出構造に用いる栓4とタンク1のフィラーネック10との嵌着状態を示し、同図(A)はその要部正面図、同図(B)は図2(A)のB部拡大図、同図(C)は図2(A)のC-C矢視断面図である。図3は、本発明の作用を示す説明図であって、同図(A)は底面図、同図(B)は断面図である。
【0013】
本発明は、熱交換器のタンクに着脱自在に装着される栓、具体的には、その軸部外周にシールリングが被着される栓のシールリング6の欠損状態を検出する構造に関する。
栓4は、一例として図2に示すように、熱交換器の上部のタンク1に形成されたフィラーネック10に取付けられる。フィラーネック10には、栓4が嵌入できるように、タンク1の内外を連通する連通孔2が形成されている。その連通孔2の孔縁に、着座面3が形成されている。この例では、連通孔2の内周面には内ネジが形成されている。
タンク1は、一例として、一端が開口した箱状のタンク本体と、タンク本体の開口を閉塞するヘッダプレートとの嵌着体からなる。連通孔2は、タンク本体の底部、又はその側面に形成される。
栓4は頭部5と軸部を有しており、その栓の軸部の端部の外周に環状溝15が形成され、通常では、その環状溝15にシールリング6が取り付けられる。
【0014】
この例では、軸部の外周に外ネジ13が形成され、その外ネジが連通孔2の内ネジと螺着され、栓4がタンクの連通孔2に着脱自在に嵌入される。その栓4がタンクの連通孔2に嵌入された時、その栓4の頭部5がタンクの連通孔2の着座面3に当接される。そして、シールリング6が上述のように環状溝15に被着されている状態では、タンクの連通孔2内面と栓4の軸部の外周との間が、シールリング6を介して閉塞される。この状態のときは、図2に示す如く、タンク1内の冷却水や蒸気は外部に放出されることはない。
【0015】
本実施例では、シールリング6の取り付け忘れ等により、シールリング6の欠損状態であるとき、検査工程で確実に、その欠損状態を検出できる構造を示す。その構造は、タンク1の内外を連通する少なくとも1つの隙間7が形成されるものである。
連通孔2のタンクの内部側では、栓4の環状溝15にシールリング6の欠損状態で、連通孔2の内面と栓4の軸部の環状溝15の周辺部との間に隙間7が形成される。
連通孔2の中間部では、栓4の軸部の外ネジ13とそれに螺着される連通孔2の内ネジとの間に僅かな隙間7が形成される。
連通孔2の着座面3側では、この例では、図1に示す如く、栓4の頭部5の下側の面8が、頭部5の頂部側へ凹陥し、頭部5の外周縁から連通孔2まで連続する溝9が形成されており、連通孔2の着座面3と栓4の溝9との間に隙間7が形成される。この溝9を介してタンク1の内外が連通する。
栓4に溝9を設けることにより、栓4の形状変更のみでタンク1の形状を変更することなく、連通孔2の着座面3側の隙間7を形成することができる。
【0016】
上述のように形成される隙間7の構造により、タンク1内に検査用のHe等の加圧気体を供給すると、図3に示す如く、その気体16は栓4の外周とタンク1の連通孔2の内周、等の各部位の隙間7を流通して、外部に放出される。その気体16を検出することにより、栓4の環状溝15にシールリング6の欠損状態を検出することができる。
【0017】
栓4に形成された溝9は、図1(B)に示すように、その断面積が頭部5の中心側ほど外周縁より狭く形成されたテーパ14の形状にすることが好適となる。
この例の溝9のテーパ14の形状は、図1(D)に示す如く、頭部5の中心側ほど弧の長さが短くなっている。また、図1(E)に示す如く、溝9の凹みの深さが頭部5の中心側ほど浅くなっている。
このようにテーパ14の溝9を形成することにより、溝9の流通抵抗を中心側ほど大きくして、シールリング6の欠損時に、タンク1から外部に流出する流体の過剰な流出を防止できる。
上記のテーパ14の形状は、図1(D)と図1(E)の両者の特徴を備える図1(B)の形状が好適となるが、図1(D)または図1(E)のいずれか一つの特徴を採用してもよい。
【0018】
(変形例)
上記実施例は、ラジエータの上部タンクについてシールリング6の欠損を検出したが、本発明はこれに限らず、下部タンクの栓4においても同様の手段で、これを検出することができる。更には、本発明は熱交換器として、エンジン冷却水冷却用のタンクについて述べたが、他の各種熱交換器のタンクについても本発明を適用できる。
また、この例では、栓4の頭部5の面8に溝9を1つ設けたが、この溝9は2つ以上設けることもできる。さらに、溝9の位置はシールリング6の環状溝15と栓4の頭部5との間のどこであってもよい。
上述の実施例のように、栓4の頭部5の下側の面8に溝9を設けることが最適である。ただし、この実施例に限定されるものではなく、タンクの連通孔2の着座面3に溝9を設けてもよい。栓4の頭部5の下側の面8と連通孔2の着座面3の両方に溝9を設けることもできる。
上記実施例では、栓4がタンクの連通孔2に着脱自在に嵌入される最適な構造として螺着構造を採用しているが、嵌入の構造はこれに限るものではなく、適宜、公知の構造を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、エンジン冷却水冷却用ラジエータ等の熱交換器用のタンクに取付けられる給水キャップ、エア抜き栓、ドレンコック、その他の栓、特に、その栓の軸部にシールリングが被着されるものであって、特に、そのシールリングの欠損を検出する検出構造として利用できる。
【符号の説明】
【0020】
1 タンク
2 連通孔
3 着座面
4 栓
5 頭部
6 シールリング
7 隙間
8 面
9 溝
10 フィラーネック
13 外ネジ
14 テーパ
15 環状溝
16 気体
図1
図2
図3
図4