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  • 特開-貯留槽の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088757
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】貯留槽の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20220608BHJP
   E03B 3/03 20060101ALI20220608BHJP
   E03B 3/02 20060101ALI20220608BHJP
   E03B 11/14 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
E03B3/03 B
E03B3/02 Z
E03B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200760
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】520352193
【氏名又は名称】ライトウエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 正和
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝功
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA01
(57)【要約】
【課題】貯留構造体を覆うシートに防水樹脂原料を塗布して防水樹脂層を形成する際に、防水樹脂層に気泡を残存させることなく、また防水樹脂原料によって貯留構造体とシートとを接着する。
【解決手段】貯留槽設置面12aを有する基礎部1を形成する第1工程と、貯留槽設置面12aに防水樹脂原料2を塗布して基礎防水樹脂層3を形成する第2工程と、基礎防水樹脂層3上に貯留構造体STを組み立てる第3工程と、樹脂織布シート4の下部が、貯留槽設置面12aに形成されている基礎防水樹脂層3と所定幅の重なり部分を有するように、貯留構造体STの側面を樹脂織布シート4で覆う第4工程と、樹脂織布シート4の貯留構造体STの側面を覆っている部分、樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3との重なり部分、および重なり部分に連続する所定幅の基礎防水樹脂層3の露出部分に防水樹脂原料2を塗布して側面防水樹脂層5を形成する第5工程とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に設置する貯留槽の施工方法であって、
貯留槽設置面を有する基礎部を形成する第1工程と、
前記貯留槽設置面に防水樹脂原料を塗布して基礎防水樹脂層を形成する第2工程と、
前記基礎防水樹脂層上に複数個の貯留ブロックからなる貯留構造体を組み立てる第3工程と、
樹脂織布シートの下部が、前記貯留槽設置面に形成されている前記基礎防水樹脂層と所定幅の重なり部分を有するように、前記貯留構造体の側面を前記樹脂織布シートで覆う第4工程と、
前記樹脂織布シートの前記貯留構造体の側面を覆っている部分、前記樹脂織布シートと前記基礎防水樹脂層との前記重なり部分、および前記重なり部分に連続する所定幅の前記基礎防水樹脂層の露出部分に防水樹脂原料を塗布して側面防水樹脂層を形成する第5工程と
を有することを特徴とする貯留槽の施工方法。
【請求項2】
前記防水樹脂原料が無発泡ポリウレタン樹脂原料である請求項1記載の貯留槽の施工方法。
【請求項3】
前記防水樹脂層の塗布がスプレー塗布である請求項1又は2記載の貯留槽の施工方法。
【請求項4】
前記樹脂織布シートがポリオレフィン系織布シートである請求項1~3のいずれかに記載の貯留槽の施工方法。
【請求項5】
前記樹脂織布シートの厚みが0.2mm以上0.6mm以下の範囲である請求項1~4のいずれかに記載の貯留槽の施工方法。
【請求項6】
前記貯留構造体の側面を前記樹脂織布シートで覆う際、前記樹脂織布シートに50N以上200N以下の張力を掛けながら前記貯留構造体に前記樹脂織布シートを取り付ける請求項1~5のいずれかに記載の貯留槽の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯留槽の施工方法に関し、より詳細には、地下に設置する貯留槽の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
降雨時の雨水の流出を抑制し浸水被害を軽減させるために国内各地において地下に貯留槽を設けることが行われつつある。地下に貯留槽を設ける工法としては、現場において型枠を設置してコンクリートを打設して設ける工法やプレキャストされたコンクリートを現場で組み立てる工法などがこれまで用いられてきたが、近年、このようなコンクリートを用いた工法に代わって、プラスチック製の貯留ブロックを積み上げて貯留構造体を形成し、この貯留構造体の外周を遮水シートで覆って貯留槽とする工法(以下、「シート遮水工法」と記すことがある。)が施工期間の短縮化や低コスト化、省力化が可能なことから注目され広まりつつある。
【0003】
本出願人も前記のシート遮水工法で複数件の貯留槽を施工した。その結果、貯留構造体の底面及び側面を3枚のシート(内側保護シート+遮水シート+外側保護シート)で覆うシート遮水工程に予想以上に多くの時間と労力がかかることがわかった。特に、棒状芯材にロール状に巻き付けられた、塩化ビニルなどからなる遮水シートは通常数十kgもの重量があるところ、このような遮水シートを棒状芯材から巻き出して幅方向両端部が10cmから15cm程度重なるように並べて設置する作業は多くの時間と労力が必要であった。また、並置した遮水シートの幅方向両端部の延べ長さが数十mから数百mにも達する重なり部分を約600℃の熱風で溶着する作業にも時間と労力、そして注意力が必要であった。そしてまた、当該作業を行う作業者はかがんだ姿勢を長時間にわたって強いられるため作業者にかかる負担も大きかった。
【0004】
加えて、並置し熱風溶着した遮水シートの遮水性能の確認作業が必要となる。遮水性能の確認作業は、一般に、熱風溶着部に0.1MPaのエアーを吹付けて、エアー圧が0.05MPa以上であるかどうかで判断され、エアー圧が0.05MPaに達していないと遮水シートの熱風溶着部に連続性が無い(重なり部分が熱溶着していない)と判断され、エアー圧が安定して0.05MPa以上になるまで熱風溶着が繰り返し行われる。このような遮水性能の確認及び遮水シートの溶着補修作業にも多くの時間と労力が必要となる。
【0005】
シート遮水工法による貯留槽の施工件数を今後増やしていくためにはシート遮水工程における作業労力の軽減や遮水性能の向上、工期の短縮などを図る必要がある。そこで、貯留構造体の底面及び側面を不織布などのシートで覆い、当該シートに防水材を塗布する工法が提案されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-167137号公報
【特許文献2】特開2017-206950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記提案の工法によれば、従来のシート遮水工法に比べてシート遮水工程における作業労力の軽減等は図れるものと考えられる。しかしながら、ポリウレタン系樹脂などの液状の防水材をシートにスプレー塗布する場合、防水材は一般に液温60℃から90℃程度に加熱されてスプレー塗布される。このとき、前記提案の工法のように貯留構造体を覆っているシートが不織布であると、不織布に内包されている空気が、高温の防水材によって膨張し、不織布の表面に形成される防水樹脂層内に気泡として残存することがある。防水樹脂層内に気泡が残存していると、埋設されている貯留槽の周囲からの土圧等による応力が防水樹脂層の気泡周辺に集中してシートの防水性劣化の起点となる虞がある。
【0008】
また、前記提案の工法において、使用する不織布の厚みが薄いと、貯留構造体の側面に不織布を取り付ける際にかかる引張力によって不織布の厚みにバラツキが生じ、厚みの薄い部分においてシートの防水性が低下するおそれがある。このため、前記提案の工法に使用される不織布の厚みは少なくとも4mmは必要とされている(引用文献2の段落(0023)など)。しかし、不織布の厚みが4mm以上であると、貯留構造体の不織布で覆って液状の防水材を外側からスプレー塗布した場合、防水材は不織布を通り抜けて貯留構造体に達することができず、不織布と貯留構造体とを防水材によって接着させることはできない。
【0009】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯留構造体を覆うシートに防水樹脂原料を塗布することで防水樹脂層を形成する際に、防水樹脂層に気泡を残存させることなく、また防水樹脂原料によって貯留構造体とシートとを接着することが可能な貯留槽の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明に係る貯留槽の施工方法は、地下に設置する貯留槽の施工方法であって、貯留槽設置面を有する基礎部を形成する第1工程と、前記貯留槽設置面に防水樹脂原料を塗布して基礎防水樹脂層を形成する第2工程と、前記基礎防水樹脂層上に複数個の貯留ブロックからなる貯留構造体を組み立てる第3工程と、樹脂織布シートの下部が、前記貯留槽設置面に形成されている前記基礎防水樹脂層と所定幅の重なり部分を有するように、前記貯留構造体の側面を前記樹脂織布シートで覆う第4工程と、前記樹脂織布シートの前記貯留構造体の側面を覆っている部分、前記樹脂織布シートと前記基礎防水樹脂層との前記重なり部分、および前記重なり部分に連続する所定幅の前記基礎防水樹脂層の露出部分に防水樹脂原料を塗布して側面防水樹脂層を形成する第5工程とを有することを特徴とする。
【0011】
前記構成の施工方法において、前記防水樹脂原料は無発泡ポリウレタン樹脂原料であるのが好ましい。
【0012】
また前記構成の施工方法において、前記防水樹脂層の塗布はスプレー塗布であるのが好ましい。
【0013】
そしてまた前記構成の施工方法において、前記樹脂織布シートはポリオレフィン系織布シートであるのが好ましい。
【0014】
さらに前記構成の施工方法において、前記樹脂織布シートの厚みは0.2mm以上0.6mm以下の範囲であるのが好ましい。
【0015】
また前記構成の施工方法において、前記貯留構造体の側面を前記樹脂織布シートで覆う際、前記樹脂織布シートに50N以上200N以下の張力を掛けながら前記貯留構造体に前記樹脂織布シートを取り付けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る貯留槽の施工方法によれば、貯留構造体を覆うシートに防水樹脂原料を塗布し形成される防水樹脂層に気泡を発生させることがなく、長期間にわたってシートの防水性能が安定して維持される。また、シートに防水樹脂原料を塗布することでシート表面に防水樹脂層を形成すると同時に、貯留構造体とシートと防水樹脂原料を一体的に接着させ高強度複合防水膜の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る貯留槽の施工方法の一例を示す工程図である。
図2】本発明に係る貯留槽の施工方法の一例を示す工程図である。
図3】防水樹脂原料のスプレー塗布装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る貯留槽の施工方法について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。なお、本明細書において「~」はその前後の数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0019】
本発明に係る貯留槽の施工方法の一例を図1及び図2に基づき各工程ごとに説明する。
【0020】
(第1工程)
図1(a)に示すように、まず第1工程として貯留槽設置面12aを有する基礎部1を形成する。具体的には、貯留槽の埋設予定地において、平面視における貯留槽S(図2(c)に図示)の外形よりも大きい領域をショベルカーなどによって掘削して、貯留槽Sの高さよりも0.5m~2.0mほど深い穴を掘る。そして穴の底面を略水平に整地した後、通常10cm~20cm程度の基礎砕石層11を施工し、その上に均しコンクリート層12を施工する。本実施形態では基礎砕石層11及び均しコンクリート層12が本発明の基礎部1を構成し、均しコンクリート層12の上面が貯留槽設置面12aとなる。なお、穴の底面が頑丈な岩盤等である場合には基礎砕石層11は設けなくてもよいことがある。平面視における基礎部1の外形は貯留構造体STの外形よりも大きく設定される。具体的には、平面視における基礎部1の端部と貯留構造体STの端部との間の長さL1(図2(a)に図示)はおおよそ200mm以上が望ましい。また、後述する樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3との重なり部分41の幅L2(図2(a)に図示)はおおよそ30mm以上が望ましい。
【0021】
(第2工程)
次に、図1(b)に示すように、第2工程として、均しコンクリート層12の貯留槽設置面12aに防水樹脂原料2を塗布して基礎防水樹脂層3を形成する。ここで使用可能な防水樹脂原料2としては、無発泡ポリウレタン樹脂原料や無発泡ポリウレア樹脂原料、ウレタンゴム系樹脂原料、アクリルゴム系樹脂原料、クロロプレン系樹脂原料、ゴムアスファルト系樹脂原料、FRP樹脂原料などが挙げられる。これらの中でも、原料の液体粘度が低くスプレー塗布が可能で硬化も早いことから無発泡ポリウレタン樹脂原料が好適に使用される。無発泡ポリウレタン樹脂原料は、ポリオールとイソシアネート及び触媒を含み、ポリオールとイソシアネートの反応により無発泡ポリウレタン樹脂層(防水樹脂層)が形成される。
【0022】
防水樹脂原料2の均しコンクリート層12の貯留槽設置面12aへの塗布は、スプレー塗布やローラ塗布など従来公知の塗布方法を用いることができるが、作業労力の軽減および作業時間の短縮化が可能なことからスプレー塗布が好適に使用される。防水樹脂原料2として無発泡ポリウレタン樹脂原料を用いてスプレー塗布する場合には、例えば図3に示すスプレー塗布装置SPを用いるのが好ましい。図3に示すスプレー塗布装置SPでは、ドラム缶61とドラム缶62からイソシアネートとポリオールとがそれぞれ装置本体60に供給され、装置本体60において所定圧力に調整されたイソシアネートとポリオールは加熱ホース63を介してスプレーガンGに供給される。そして、スプレーガンGにおいてイソシアネートとポリオールとが混合されて塗布対象物(貯留槽設置面12aや樹脂織布シート4)に噴霧される。例えば、噴霧する際のスプレー塗布装置SPの装置本体60からの吐出圧力は14MPa~24MPa程度で、最高液圧温度は約90℃程度である。このようなスプレー塗布装置SPとしては、例えば、GRACO社製「H-XP3リアクター」が好適に使用される。
【0023】
基礎防水樹脂層3の厚みは、防水機能を発揮する限りにおいて特に限定はないが、通常、1.5mm~5.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは2.0mm~2.5mmの範囲である。基礎防水樹脂層3の厚みが薄すぎると防水機能や強度が不足する一方、基礎防水樹脂層3が厚すぎると原料費用が高くなって経済的でない。
【0024】
基礎防水樹脂層3の塗布面積は、平面視における貯留構造体STよりも大きく、後述する樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3との重なり部分41(図2(a)に図示)よりも大きく設定される。通常は、均しコンクリート層12の上面全体に基礎防水樹脂層3が塗布される。
【0025】
(第3工程)
第3工程として、図1(c)に示すように、基礎防水樹脂層3上に複数個の貯留ブロックSBからなる貯留構造体STを組み立てる。貯留構造体STは複数個の貯留ブロックSBが積層されてなる。図1(c)の積層構造を有する貯留構造体STの一つの層は、截頭四角錐状の凸部が平面視において直交するX-Y方向に8個×4個が所定間隔でマトリックス状に設けられた貯留ブロックSBがX-Y方向に所定個数並べて配置されてなる。そして、上下方向に隣接する貯留ブロックSBはX-Y平面で向きを90度回転されて交互に積層される。一つの貯留ブロックSBの大きさとしては、例えば、X方向及びY方向が900mm~1100mmの正方形状で、高さが200mm~400mmの範囲である。このような貯留ブロックSBからなる貯留構造体STの空隙率は80%以上が好ましく、より好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。貯留ブロックSBの材質としては、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料が、軽量で所定強度を有することから好ましい。なお、本発明で使用可能な貯留ブロックSBはこのような形態のものに限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。
【0026】
(第4工程)
第4工程として、図2(a)に示すように、基礎防水樹脂層3上に組み立てられた貯留構造体STの側面をシートで覆う。ここで重要なことの一つは、貯留構造体STの側面を覆うシートが樹脂織布シート4であることである。前述のように、従来の工法では貯留構造体STの側面を覆うシートとして不織布を用いていたため、不織布の外表面に防水樹脂原料2を塗布すると気泡が発生し防水樹脂層に気泡が残存したり、防水樹脂原料2が不織布を通り抜けて貯留構造体STに達することができず、不織布と貯留構造体STとを防水樹脂原料2によって接着させることができなかった。これに対して本発明では、貯留構造体STの側面を覆うシートとして樹脂織布シート4を用いるので、防水樹脂原料2を塗布し側面防水樹脂層5を形成する際に気泡が生じることはない。また、不織布に比べて樹脂織布シート4は所定の強度を維持させながら厚みを薄くすることが可能で、防水樹脂原料2の一部が樹脂織布シート4を通り抜けて貯留構造体STに達して、樹脂織布シート4と貯留構造体STと防水樹脂原料2とが接着することで高強度複合防水膜形成が可能となる。
【0027】
本発明で使用可能な樹脂織布シート4は、例えば、ポリオレフィン系織布シートやポリエステル系織布シートなどが挙げられる。これらの中でもポリオレフィン系織布シートが好ましく、より好ましくはポリプロピレン織布シートである。樹脂織布シート4の厚みは、外表面に側面防水樹脂層5を安定して形成でき、防水樹脂原料2の一部が樹脂織布シート4を通り抜けるようにする観点から0.2mm~0.6mmの範囲が好ましい。また樹脂織布シート4がこのような厚みであると柔軟性を有し、貯留構造体STの側面への取り付け作業が不織布の場合に比べて格段に容易になる。
【0028】
また、貯留構造体STの側面を樹脂織布シート4で覆う際のもう一つの重要なことは、樹脂織布シート4の下部が、貯留槽設置面12aに形成されている基礎防水樹脂層3と所定幅の重なり部分41を有するようにすることである(図2(a)の拡大図を参照)。このような樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3とが重なり部分41を有することによって、次工程において樹脂織布シート4の外表面、重なり部分41及び重なり部分41に連続する所定幅wの基礎防水樹脂層3の露出部分に防水樹脂原料2が塗布され側面防水樹脂層5が形成されると、図2(c)の左下の部分拡大図に示すように、樹脂織布シート4の下端部が基礎防水樹脂層3と側面防水樹脂層5とで挟み込まれて封止構造となり、貯留槽Sを囲む周囲からの水圧や土圧による水や土砂の貯留槽S内部への侵入を確実に防止可能となる。
【0029】
図2(a)の左下の部分拡大図に示すように、樹脂織布シート4の下部の、樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3と重なり部分41の幅L2は30mm~100mmの範囲が好ましい。
【0030】
貯留構造体STの側面を樹脂織布シート4で覆う際、樹脂織布シート4は貯留構造体STの側面に接触するように取り付けられるのが望ましい。樹脂織布シート4が貯留構造体STの側面に接触していると、次工程の防水樹脂原料2の樹脂織布シート4への塗布工程において、樹脂織布シート4を通過した防水樹脂原料2の一部が、貯留構造体STと樹脂織布シート4との接触部において貯留構造体STと樹脂織布シート4とを固定する作用を奏するからである。樹脂織布シート4を貯留構造体STの側面に接触するように取り付けるには、樹脂織布シート4に50N~200Nの張力を掛けながら300mm~2000mmのピッチでステープルなど公知の留め具で樹脂織布シート4を貯留構造体STに取り付けるのが好ましい。
【0031】
(第5工程)
第5工程として、図2(b)に示すように、樹脂織布シート4の貯留構造体STの側面を覆っている部分、樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3との重なり部分41、および重なり部分41に連続する所定幅wの基礎防水樹脂層3の露出部分に防水樹脂原料2を塗布して側面防水樹脂層5を形成する。ここで重要なことは、樹脂織布シート4の貯留構造体STの側面を覆っている部分のみならず、樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3との重なり部分41およびこの重なり部分41に連続する所定幅wの基礎防水樹脂層3の露出部分に防水樹脂原料2を塗布することである。前記重なり部分41及び前記露出部分に防水樹脂原料2を塗布し側面防水樹脂層5を一体に形成することで、貯留槽Sを囲む周囲からの水圧や土圧による水や土砂の貯留槽S内部への侵入を確実に防止可能となる。
【0032】
防水樹脂原料2を塗布する、樹脂織布シート4と基礎防水樹脂層3との重なり部分41に連続する基礎防水樹脂層3の露出部分の所定幅w(図2(c)に図示)は、外部から貯留槽S内への水や土砂の侵入を防止できる限りにおいて限定はないが、通常、50mm~150mmの範囲が好ましい。
【0033】
ここで使用する防水樹脂原料2は、基礎防水樹脂層3の形成に使用した物と同じ物が使用できる。また、防水樹脂原料2の塗布によって形成される側面防水樹脂層5の厚みd(図2(c)に図示)は、防水機能を発揮する限りにおいて特に限定はないが、通常、1.5mm~5.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは2.0mm~2.5mmの範囲である。
【0034】
(その他)
貯留構造体STの上面には所定の樹脂製天板材、透水性保護シートが取り付けられる。あるいは、貯留構造体STの上面にも樹脂織布シート4が取り付けられ、必要により防水樹脂原料2が塗布され防水樹脂層が形成される。また、貯留槽Sには、不図示の流入用パイプ及び排出用パイプが取り付けられる。
【0035】
作製された貯留槽Sは、周りの空間及び上面に土が埋め戻され地下に埋設された状態とされる。そして貯留槽Sの上には土被り、更に、用途に応じ被覆層が施工され、例えば公園や駐車場等として活用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る貯留槽の施工方法によれば、貯留構造体STを覆う樹脂織布シート4に防水樹脂原料2を塗布することで側面防水樹脂層5を形成する際に、側面防水樹脂層5に気泡を残存させることなく、また防水樹脂原料3によって貯留構造体STと樹脂織布シート4とを接着することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 基礎部
2 防水樹脂原料
3 基礎防水樹脂層
4 樹脂織布シート
5 側面防水樹脂層
S 貯留槽
11 基礎砕石層
12 均しコンクリート層
12a 貯留槽設置面
41 樹脂織布シートと基礎防水樹脂層との重なり部分
SB 貯留ブロック
SP スプレー塗布装置
ST 貯留構造体
図1
図2
図3