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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088779
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】粘度調整剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/269 20160101AFI20220608BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20220608BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20220608BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220608BHJP
   A23L 27/50 20160101ALN20220608BHJP
【FI】
A23L29/269
A23L29/238
A23L29/25
A23L27/00 D
A23L27/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200806
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡史
(72)【発明者】
【氏名】秋山 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓矩
【テーマコード(参考)】
4B039
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B039LB14
4B039LC20
4B039LG42
4B041LC03
4B041LD01
4B041LD03
4B041LH07
4B041LH09
4B041LH16
4B047LB02
4B047LB09
4B047LF10
4B047LG26
4B047LG30
4B047LG60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】食品の食感やなめらかさを維持しつつ液状食品に保形性を付与することができる粘度調整剤を提供する。
【解決手段】キサンタンガム、ガラクトマンナン及びアラビアガムを含有する粘度調整剤を調製する。ガラクトマンナンとしては、グアーガムが好ましい。また、粘度調整剤を蒸留水中に、6質量%添加した溶液の20℃、せん断速度0.5/秒における粘度V0.5は、50Pa・秒~500Pa・秒の範囲で、上記溶液の20℃、せん断速度50/秒における粘度V50は、2.0Pa・秒~18Pa・秒の範囲であり、上記粘度V0.5と上記溶液の20℃、せん断速度5/秒における粘度Vとの比は、3.5~7.5であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガム、ガラクトマンナン及びアラビアガムを含有することを特徴とする粘度調整剤。
【請求項2】
前記ガラクトマンナンは、グアーガムであることを特徴とする請求項1に記載の粘度調整剤。
【請求項3】
前記粘度調整剤を蒸留水中に、6質量%添加した溶液の20℃、せん断速度0.5/秒における粘度V0.5は、50Pa・秒~500Pa・秒の範囲で、前記溶液の20℃、せん断速度50/秒における粘度V50は、2.0Pa・秒~18Pa・秒の範囲であり、前記粘度V0.5と前記溶液の20℃、せん断速度5/秒における粘度Vとの比は、3.5~7.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘度調整剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の粘度調整剤を含むことを特徴とする調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘度調整剤に関し、特に食品等に添加して、保形性を付与するための粘度調整剤に関する。
【背景技術】
【0002】
調味成分に澱粉、穀粉、多糖類等からなる増粘剤(粘度調整剤)等を加えて製造される保形性(ゲル状)調味料は、流動性が少ないことから、液だれや液はね等のおそれがなく、トッピング用の調味料等としても利用されている。特許文献1には、乾燥野菜と、増粘剤とを含む調味料であって、乾燥野菜の分量が、給水前状態の全重量対比で6%~19%であり、かつ調整後の具材部が全重量対比で60%~98%であることを特徴とする調味料が開示されている。特許文献1の調味料は、野菜本来のシャキシャキとした食感を維持した具材を大量に含んでおり、かつ必要以上の流動性を有していないため、調味対象の食材、例えば肉や野菜などに戴置しても液が垂れることがないことが示されている。そして、そのため喫食者にとって調味料の液が衣服等にはねるといった心配をする必要もなく、屋外でのバーベキューなどにおいても手が汚れることなく本物の野菜の食感を堪能することが可能となることが記載されている。
特許文献1では、増粘剤として、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、小麦粉澱粉、米澱粉、ワキシー澱粉等の生澱粉、α化澱粉、老化澱粉等の加工澱粉、小麦粉、米粉、とうもろこし粉、その他の穀粉、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム等のガム質、カラギーナン、アルギン酸、ペクチン、寒天等の各種多糖類ならびにゼラチンが挙げられている。
また、特許文献2には、原材料として生醤油を含み、キサンタンガム及びローカストビーンガムをゲル化剤として使用したゲル状調味料であって、当該生醤油が分子量5万を超える成分を除去した生醤油であることを特徴とするゲル状調味料が開示されている。引用文献2のゲル状調味料は、生醤油を含有していながら、ゲルの保形性が良く、ゲル状調味料の色がうすく鮮やかであり、トッピング用の食材として見栄えが良いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-170353号公報
【特許文献2】特開2013-162781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、保形性を有し、かつ食感に優れ、容器から容易に絞り出せる調味料が求められている。しかしながら、現状では、上記特性を調味料に付与できる汎用性のある粘度調整剤は得られていない。そこで、本発明では、食品の食感やなめらかさを維持しつつ液状食品に保形性を付与することができる粘度調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、キサンタンガム、ガラクトマンナン及びアラビアガムを含有する粘度調整剤において、上記課題を解決できることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明の粘度調整剤は、キサンタンガム、ガラクトマンナン及びアラビアガムを含有する、ことを特徴とする。
上記ガラクトマンナンは、グアーガムであることが好ましい。また、上記粘度調整剤を蒸留水中に、6質量%添加した溶液の20℃、せん断速度0.5/秒における粘度V0.5は、50Pa・秒~500Pa・秒の範囲で、上記溶液の20℃、せん断速度50/秒における粘度V50は、2.0Pa・秒~18Pa・秒の範囲であり、上記粘度V0.5と上記溶液の20℃、せん断速度5/秒における粘度Vとの比は、3.5~7.5であることが好ましい。
本発明の調味料は、上記粘度調整剤を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘度調整剤によれば、食感やなめらかさを維持しつつ液状食品に保形性を付与(半固形化)することができる。そのため、本発明の粘度調整剤を適用することにより、容器から絞り出しやすく、かつ液はねや液だれ等のおそれがなく、屋外での利用をはじめ、各種用途に好適に用いられる半固体(半固形)食品を容易に得ることができる。
本発明の粘度調整剤は、食品のみならず、化粧品、医薬品及び工業製品等様々な分野で、液状体に保形性を付与する目的で用いることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の粘度調整剤は、キサンタンガム、ガラクトマンナン及びアラビアガムを含有する。上記成分を含む本発明の粘度調整剤を、液状調味料等の液状食品に添加することにより、食感やなめらかさを維持しつつ保形性を付与することができる。
以下にそれぞれの成分について説明する。
【0008】
(A)キサンタンガム
本発明の粘度調整剤は、増粘多糖類であるキサンタンガムを含む。キサンタンガムは、トウモロコシを原料とするデンプンを微生物(Xanthomonas campestris)が菌体外に産出することにより得られる水溶性の天然多糖類である。一次構造は、D-グルコースがβ-1,4結合した主鎖及び該主鎖のアンヒドログルコースに結合するD-マンノース、D―グルクロン酸からなる側鎖を有する。なお、側鎖は、主鎖のD-グルコース残基1つおきに、D-マンノース2分子とD-グルクロン酸が結合している。また、側鎖の末端にあるD-マンノースは、ピルビン酸塩になっている場合があり、主鎖に結合したD-マンノースのC-6位はアセチル化されている場合がある。上記多糖類の分子量は、200万ないし5000万程度のものが知られている。本発明においては、キサンタンガムの分子量は特に限定されない。
【0009】
本発明では、市販のキサンタンガムを用いることもできる。市販品としては、ネオソフトXR(太陽化学株式会社製)、SATIAXANE CX90(Cargill社製)、サンエース(商標)、サンエース(商標)S、サンエース(商標)E-S、サンエース(商標)C、ビストップ(商標)D-3000-DF-C(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)等が挙げられる。
【0010】
キサンタンガムの含有量は、特に制限されないが、粘度調整剤全体に対して、10質量%以上、40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上、30質量%以下であることがより好ましい。キサンタンガムの含有量を上記範囲とすることにより、より優れた保形性を付与することができる。
【0011】
(B)ガラクトマンナン
本発明の粘度調整剤は、ガラクトマンナンを含む。ガラクトマンナンは、主鎖がマンノース、側鎖がガラクトースで構成される水溶性高分子であり、ガラクトースの側鎖がついた部分と側鎖がついていないスムース領域を有する。キサンタンガムとガラクトマンナンを混合すると、キサンタンガムとガラクトマンナンのスムース領域が水素結合して、架橋することにより、粘度上昇やゲル化が生じると考えられている。
ガラクトマンナンとしては、主鎖のマンノースと側鎖のガラクトースの比率がそれぞれ2:1、3:1及び4:1であるグアーガム、タラガム及びローカストビーンガムが知られている。本発明では、いずれのガラクトマンナンを用いることもできるが、これらの中でもキサンタンガムとの相互作用による増粘効果及びコストを考慮すると、特にグアーガムが好ましい。本発明では、1種類のガラクトマンナンを用いることもできるし、複数種のガラクトマンナンを用いることもできる。
【0012】
グアーガム(学名 Cyamopsis tetragonoloba)は、パキスタンやインドで栽培されている一年生豆科植物の種子から得られる多糖類である。
本発明では、市販のグアーガムを用いることもできる。市販品としては、PROCOL U(Habgen Guargums Limited社製)、VIDOGUM GHK 175(ユニテックフーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0013】
タラガムは豆科植物タラの種子胚乳部より得られる中性多糖である。本発明では、市販のタラガムを用いることもできる。市販品としては、タラガム(精製品)MT-120(三菱ケミカルフーズ株式会社製)、タラガム(伊那食品株式会社製)、VIDOGUM SP 175(ユニテックフーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0014】
ローカストビーンガムは、カロブガム(Carob gum)とも呼ばれている。地中海沿岸地域(北アフリカ、中近東、南ヨーロッパ)及びカナリア諸島に広く生息するマメ科の常緑樹であるカロブ(学名 Ceratonia siliqua L.)の種子の胚乳を分離粉砕した多糖類である。
本発明では、市販のローカストビーンガムを用いることもできる。市販品としては、SESALPINIA L.B.G LN-1/200(Tate & Lyle社製)、VISCOGUM BJ(Cargill社製)等が挙げられる。
【0015】
ガラクトマンナンの含有量は、特に制限されないが、粘度調整剤全体に対して、15質量%以上、45質量%以下であることが好ましく、20質量%以上、35質量%以下であることがより好ましい。ガラクトマンナンの含有量を上記範囲とすることにより、より優れた保形性を付与することができる。
【0016】
(C)アラビアガム
アラビアガムは、アフリカ、ナイル地方原産のマメ科アカシア属アラビアゴムノキの樹皮の傷口から採取された分泌物を乾燥させて得られる。飲食品の乳化剤や安定剤、医薬品の錠剤のコーティング剤、絵具、インク等の工業製品等広範囲に用いられている。
アラビアガムは、ペプチド鎖にII型アラビノガラクタン及びβ-アラビノオリゴ糖の糖鎖が付加した糖タンパク質(以下、「AGP」という。)により構成される。II型アラビノガラクタンは、AGPのペプチド鎖に結合するβ-1,3-ガラクタン主鎖に、β-1,6-ガラクタン側鎖が付加した構造で、その末端はアラビノース、ラムノース又はグルクロン酸等で修飾される。II型アラビノガラクタンの修飾糖は多岐にわたり、アラビノースでは、フラノース型又はピラノース型がα又はβ結合により結合している。
【0017】
本発明では、市販のアラビアガムを用いることもできる。市販品としては、GUM ARABIC 396A(Alland & Robert社製)等が挙げられる。
【0018】
アラビアガムの含有量は、特に制限されないが、粘度調整剤全体に対して、30質量%以上、70質量%以下であることが好ましく、40質量%以上、60質量%以下であることがより好ましい。アラビアガムの含有量を上記範囲とすることにより、より優れたなめらかさを付与することができる。
【0019】
本発明の粘度調整剤には、本来の特性に影響を及ぼさない範囲で、他の添加物を添加することができる。他の添加物としては、pH調整剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の粘度調整剤は、上記各成分を混合することにより得られる。
上述の(A)キサンタンガム、(B)ガラクトマンナン及び(C)アラビアガムの組成等を調整して混合することにより、食感やなめらかさを維持しつつ液状食品に保形性を付与することができる。混合方法は、特に限定されず、一般的な粉末の混合方法が適用される。具体的には、パドルミキサー、タンブラー混合、W型混合、V型混合、ドラム型混合、リボン混合、円錐スクリュー混合、ボールミル等が挙げられる。
本発明の粘度調整剤では、上記成分を粒子レベルで均一に混合することにより、より優れた特性を得ることができる。また、本発明の粘度調整剤は造粒により製造することもできる。
【0021】
保形性に優れた増粘物を得るためには、増粘効果が高くかつゲル化を抑制できる粘度調整剤が求められる。本発明の粘度調整剤では、キサンタンガムとガラクトマンナンとの水素結合に起因する粘度上昇及びゲル形成をアラビアガムが適度に緩和することにより、なめらかさを維持した状態で液状体に保形性を付与することができる。
なお、ガラクトマンナンとしては、主鎖のマンノースと側鎖のガラクトースの比率が異なるグアーガム、タラガム及びローカストビーンガムが知られているが、いずれを用いた場合でも、本発明の効果は認められる。これらの中でも、特にグアーガムを用いた場合には、キサンタンガムとグアーガムとの間の水素結合に起因するゲルが生じにくいため、アラビアガムの緩和効果により、より均一で優れた保形性及びなめらかさを有する増粘物を得ることができる。
【0022】
本発明の粘度調整剤は、液状食品に添加することができる。例えば、本発明の粘度調整剤を用いた調味料等は、容器から容易に絞り出せ、かつ絞り出した後は、形状を保持できるため、トッピング用途等に好適に用いることができる。
食品用途の具体例としては、たれ、ソース、ドレッシング類等が挙げられる。
本発明の粘度調整剤の添加量は、添加する用途等にもよるが、2質量%~10質量%の範囲であることが好ましく、4質量%~8質量%の範囲であることがより好ましい。本発明の粘度調整剤の添加量を上記範囲とすることにより、より優れた保型性、なめらかさ及び食感が得られる。
【0023】
本発明の粘度調整剤は、多糖類を含有する粘度調整剤であって、上記粘度調整剤を蒸留水中に、6質量%添加した溶液の20℃、せん断速度0.5/秒における粘度V0.5は、50Pa・秒~500Pa・秒の範囲で、上記溶液の20℃、せん断速度50/秒における粘度V50は、2.0Pa・秒~18Pa・秒の範囲であり、上記粘度V0.5と上記溶液の20℃、せん断速度5/秒における粘度Vとの比は、3.5~7.5であることを特徴とする。上記粘度調整剤によれば、さらに優れた食感やなめらかさを維持しつつ液状食品に保形性を付与することができる。
【0024】
本発明の粘度調整剤は、液状化粧品にも適用することができる。液状化粧品の具体例としては、皮膚用化粧品(化粧水、乳液、美容液、パック、モイスチャークリーム、マッサージクリーム、コールドクリーム、クレンジングクリーム、洗顔料、バニシングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、制汗・デオドラント剤、日焼け止め用化粧料など)、仕上げ用化粧品(ファンデーション、おしろい、口紅、リップクリーム、ほほ紅、サンスクリーン化粧料、まゆ墨、マスカラ等まつげ用化粧料、マニキュアや除光液など)、頭髪用化粧品(シャンプー、ヘアリンス、ヘアトニック、ヘアトリートメント、ポマード、チック、ヘアクリーム、香油、整髪料、ヘアスタイリング剤、ヘアスプレー、染毛料、育毛剤、養毛剤など)、その他ハンドクリーナーのような洗浄剤、浴用化粧品、ひげそり用化粧品、芳香剤、歯磨き剤、軟膏、貼布剤等が挙げられる。
【0025】
また、本発明の粘度調整剤は、液状医薬品に適用することもできる。液状医薬品の具体例としては、経口用製剤、経鼻用製剤、点滴用製剤、経管用製剤、軟膏、薬用化粧品、ビタミン含有保健剤、薬用育毛剤、薬用歯磨き剤、浴用剤、駆虫剤、腋臭防止剤、口内清涼剤、生体材料、貼布剤、皮膚塗布剤等が挙げられる。
【0026】
さらに、本発明の粘度調整剤は、液状工業製品に適用することもできる。液状工業製品の具体例としては、顔料、塗料、インク類、消臭・芳香剤、抗菌・防カビ剤、接着剤、コーティング剤、シーリング剤、放熱剤、各種オイル(切削油、潤滑油等)、パンク補修剤、タイヤ、自転車や自動車用チューブ、界面活性剤(分散剤)、衛生材料、湿潤材料、吸湿材料、吸着材料、表面保護剤、培養材料、洗剤、液体石けん、各種電池等が挙げられる。
【0027】
本発明の粘度調整剤は、特に水系の液状体に効果的に用いることができる。また、水分を含有する油系の液状体にも有効に用いることができ、本発明の粘度調整剤を乳化剤とともに添加することにより、優れた乳化及び保形効果が得られる。
【実施例0028】
以下に、実施例により本発明の実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、特に記載がない場合には、「%」及び「部」は質量%及び質量部を示す。
【0029】
<粘度調整剤の構成成分>
(A)キサンタンガム
(a)キサンタンガム:ネオソフトXR(太陽化学株式会社製)
(B)ガラクトマンナン
(b1)グアーガム:PROCOL U(Habgen Guargums Limited社製)
(b2)タラガム:MT1000(三菱ケミカルフーズ株式会社製)
(b3)ローカストビーンガム:CESALPINIA L.B.G LN-1/200(Tate & Lyle社製)
(C)アラビアガム
(c)アラビアガム:GUM ARABIC 396A(Alland & Robert社製)
【0030】
(粘度調整剤の調製)
表1及び表2に示す配合割合で、キサンタンガム、ガラクトマンナン及びアラビアガムを量り取り、アイボーイ広口びん(250ml)に投入し、ハンドシェイクにより5分間混合し、実施例1~実施例7の粘度調整剤を得た。
同様に、表1及び表2に示す配合割合にて、各成分を量り取り、アイボーイ広口びん(250ml)に投入し、ハンドシェイクにより5分間混合し、比較例1~比較例7の粘度調整剤を得た。
【0031】
(増粘物の調製及び評価)
実施例1~7及び比較例1~7の粘度調整剤を、表1及び表2に記載の配合比で市販のしょうゆに添加して、85℃で3分間撹拌機を用いて撹拌することにより、増粘物を得た。得られた増粘物の温度を25℃に維持した状態で、回転型レオメータ(共軸二重円筒型)にて、せん断速度0.5/秒、5/秒及び50/秒における粘度をそれぞれ測定した。それぞれのせん断速度での粘度、せん断速度0.5/秒及び5/秒における粘度の比、並びにせん断速度5/秒及び50/秒における粘度の比を算出した結果を表1及び表2に示す。
また、各増粘物について、以下の基準で食感、なめらかさ(絞りやすさ)及び保形性を評価した結果についても表1及び表2に示す。
<食感評価基準>
〇:口当たりがなめらか
×:ぼぞぼぞする(ゼリーのように崩れる)
<なめらかさ(絞りやすさ)>
増粘物をポリ袋に入れ、以下の基準で絞りやすさを評価した。
〇:なめらかに絞り出せる
×:ゼリー状でぼそぼそ崩れる
―:液状で流れ出る
<保形性>
〇:形状を維持できる
×:形状を維持できない
【0032】
キサンタンガムのみを用いた粘度調整剤を醤油に添加した比較例1では、粘度の上昇が認められ、得られた増粘物の食感となめらかさは良好であったが、絞り出した後形状を保持できなかった。また、キサンタンガムにアラビアガムを添加した粘度調整剤を用いた比較例2では、せん断速度0.5/秒、5/秒及び50/秒における粘度が、それぞれ2.4Pa・秒、2.2Pa・秒及び1.0Pa・秒と低く、増粘物は液状で、容器から流れ出て、形状を維持できなかった。
グアーガムとアラビアガムからなる粘度調整剤を用いた比較例3及びローカストビーンガムとアラビアガムからなる粘度調整剤を用いた比較例4でも、増粘物の粘度は比較例2と同様に低く、増粘物は液状となり、容器から流れ出て、形状が維持できなかった。
一方、キサンタンガムとグアーガムからなる粘度調整剤を用いた比較例5では、せん断速度0.5/秒、5/秒及び50/秒における粘度が、それぞれ419Pa・秒、67Pa・秒及び7Pa・秒と高く、得られた増粘物は、容器からなめらかに絞り出すことができ、保形性も良好であった。しかし、ぼそぼそした口当たりで良好な食感は得られなかった。
比較例5の粘度調整剤にさらにアラビアガムを加えた実施例1の粘度調整剤では、いずれのせん断速度における粘度も比較例5に比べ、明らかに低く、優れた食感となめらかさを有し、保形性も維持できることがわかった。キサンタンガム、グアーガム及びアラビアガムの比率を変えた実施例2、実施例3、実施例4及び実施例5でも同様に優れた食感、なめらかさ及び保形性が認められた。
以上の結果から、キサンタンガム、ガラクトマンナンであるグアーガム及びアラビアガムを含有する本発明の粘度調整剤の効果が確認された。
【0033】
【表1】
【0034】
表2に、ガラクトマンナンとして、グアーガムに代えて、タラガム及びローカストビーンガムを用いた他は、実施例1と同様に調製した粘度調整剤を用いて評価した結果を示す(実施例6及び実施例7)。また、比較として、ガラクトマンナンとして、グアーガムに代えて、タラガム及びローカストビーンガムを用いた他は、比較例5と同様に調製した粘度調整剤を用いて評価した結果も表2に示す(比較例6及び比較例7)。
キサンタンガムとタラガムからなる粘度調整剤を用いた比較例6では、増粘物がゲル化し、保形性は得られたが、ポリ袋から絞り出すとぼそぼそ崩れ、口内に入れても優れた食感は得られなかった。なお、得られた増粘物はゲル化したため、粘度を測定することはできなかった。これに対して、比較例6の組成にアラビアガムを加えた実施例6の粘度調整剤を用いると増粘物は流動性を有し、優れた食感、なめらかさ及び保形性が得られることがわかった。
キサンタンガムとローカストビーンガムからなる粘度調整剤を用いた比較例7でも、増粘物がゲル化し、保形性は得られたが、ポリ袋から絞り出すとぼそぼそ崩れ、口内に入れても優れた食感は得られなかった。なお、比較例6と同様、得られた増粘物はゲル化したため、粘度を測定することはできなかった。これに対して、比較例7の組成にアラビアガムを加えた実施例7の粘度調整剤を用いると増粘物は流動性を有し、優れた食感、なめらかさ及び保形性が得られることがわかった。
以上の結果より、ガラクトマンナンとしてグアーガムに代えて、タラガム及びローカストビーンガムを用いても本発明の粘度調整剤の効果が得られることが確認された。また、ガラクトマンナンとして、グアーガムを用いると、高粘度でもゲルを形成しにくいため、より均一で優れた食感、なめらかさ及び保形性を有する増粘物を得ることがわかった。
なお、上記評価は、市販のしょうゆに粘度調整剤を添加して行ったが、しょうゆに代えて水(蒸留水)を用いた場合もほぼ同様の粘度変化の傾向が認められ、同様に優れた食感、なめらかさ、及び保形性、並びに粘度が得られることが確認された。
【0035】
【表2】