(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088790
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ダイヤモンド粒子分散体、コーティング液、光散乱体、光散乱膜、及び映像投影構造体
(51)【国際特許分類】
G03B 21/62 20140101AFI20220608BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G03B21/62
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200821
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武司
(72)【発明者】
【氏名】野田 史織
(72)【発明者】
【氏名】北本 隆志
【テーマコード(参考)】
2H021
2H042
【Fターム(参考)】
2H021BA27
2H021BA29
2H042BA02
2H042BA12
2H042BA13
2H042BA15
2H042BA19
(57)【要約】
【課題】ダイヤモンド粒子の分散安定性に優れるとともに塗布ムラが発生しにくく、光散乱性及び鮮明性に優れる光散乱体の形成を可能とするコーティング液、並びにそれを得ることができるダイヤモンド粒子分散体を提供すること。
【解決手段】ダイヤモンド粒子と、有機溶剤とを含み、ダイヤモンド粒子は514nmの測定光源を用いたラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、1300~1400cm
-1の範囲に観測されるDバンドのピーク面積と、1570~1640cm
-1の範囲に観測されるGバンドのピーク面積との比率D/G比が5以上、22以下であり、有機溶剤は、25℃におけるSP値が8以上、23以下である、ダイヤモンド粒子分散体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド粒子と、有機溶剤とを含み、
前記ダイヤモンド粒子は514nmの測定光源を用いたラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、1300~1400cm-1の範囲に観測されるDバンドのピーク面積と、1570~1640cm-1の範囲に観測されるGバンドのピーク面積との比率D/G比が5以上、22以下であり、
前記有機溶剤は、25℃におけるSP値が8以上、23以下である、ダイヤモンド粒子分散体。
【請求項2】
前記ダイヤモンド粒子が表面処理されていない、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の分散体と、樹脂成分と、を含む、コーティング液。
【請求項4】
請求項3に記載のコーティング液から形成されてなる、光散乱体。
【請求項5】
基材と、前記基材の少なくとも一方の主面上に設けられた請求項3に記載のコーティング液から形成されてなる光散乱層と、を備える、光散乱膜。
【請求項6】
請求項4に記載の光散乱体、又は、請求項5に記載の光散乱膜を備える、映像投影構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド粒子分散体、コーティング液、光散乱体、光散乱膜、及び映像投影構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
映像投影構造体として、プロジェクター等より投射された光や映像をスクリーンに投影してプロジェクター側から視認する反射型スクリーンや、背面から視認する透過型スクリーンが知られている。このようなスクリーンは、ホームシアター、デジタルサイネージ、イベント等の広告媒体及び照明等、様々な分野で使用されている。
【0003】
投影された映像は、スクリーンの正面方向からだけでなく、斜め方向からも見られることが多い。そのため、スクリーンには、斜めの角度からでもスクリーン面の映像が鮮明に見えることが求められる。
【0004】
このような観点から、基材上に樹脂媒体中にダイヤモンド粒子のような屈折率が高い微細粒子が分散した光散乱層が設けられたスクリーンの検討がなされている。例えば、下記特許文献1には、特定の屈折率を有するダイヤモンド粒子と、アニオン性ポリマーとを含む水分散体をコーティング液として用いて透過型スクリーンを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダイヤモンド粒子を含むコーティング液には、様々な基材への利用が期待されている。例えば、平板状の基材、易接着処理が施してある基材だけでなく、曲面、球体など非平面状の基材や易接着処理が施していない基材へのコーティング液の利用が望まれている。
【0007】
特許文献1に開示の水分散体は、非平面状の基材、易接着処理が施されていない基材へ塗布すると、塗布ムラが発生する場合があった。このような塗布ムラの発生は、形成される光散乱体に膜むら、白濁、クラックなどが発生する可能性があり、望ましくない。
【0008】
本発明の一側面は、上記の技術的課題に鑑みてなされたものであり、ダイヤモンド粒子の分散安定性に優れるとともに塗布ムラが発生しにくく、光散乱性及び鮮明性に優れる光散乱体の形成を可能とするコーティング液、並びにそれを得ることができるダイヤモンド粒子分散体を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の一側面は、上記コーティング剤を用いて得られる光散乱体及び光散乱膜、並びにこれらを備える映像投影構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の表面構造を有するダイヤモンド粒子と、特定のSP値を有する有機溶剤とを組み合わせることにより、ダイヤモンド粒子の分散安定性を確保しつつ塗布ムラを抑制することができ、特定の表面構造を有するダイヤモンド粒子による特性を有効に発現できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の一側面は、ダイヤモンド粒子と、有機溶剤とを含み、ダイヤモンド粒子は514nmの測定光源を用いたラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、1300~1400cm-1の範囲に観測されるDバンドのピーク面積と、1570~1640cm-1の範囲に観測されるGバンドのピーク面積との比率D/G比が5以上、22以下であり、有機溶剤は、25℃におけるSP値が8以上、23以下である、ダイヤモンド粒子分散体に関する。
【0012】
一態様において、ダイヤモンド粒子は、表面処理されていなくてよい。
【0013】
本発明の他の一側面は、上記のダイヤモンド粒子分散体と、樹脂成分と、を含むコーティング液に関する。
【0014】
一態様において、コーティング液は、映像投影構造体製造用であってよい。
【0015】
本発明の更に他の一側面は、上記のコーティング液から形成されてなる、光散乱体に関する。
【0016】
本発明の更に他の一側面は、基材と、基材の少なくとも一方の主面上に設けられた上記のコーティング液から形成されてなる光散乱層と、を備える、光散乱膜に関する。
【0017】
本発明の更に他の一側面は、上記の光散乱体、又は、上記の光散乱膜を備える、映像投影構造体に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、ダイヤモンド粒子の分散安定性に優れるとともに塗布ムラが発生しにくく、光散乱性及び鮮明性に優れる光散乱体の形成を可能とするコーティング液、並びにそれを得ることができるダイヤモンド粒子分散体を提供することができる。
【0019】
本発明の他の一側面によれば、上記コーティング剤を用いて得られる光散乱体及び光散乱膜、並びにこれらを備える映像投影構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光散乱体を示す模式断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光散乱膜を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[ダイヤモンド粒子分散体]
本実施形態のダイヤモンド粒子分散体(以下、単に「分散体」ともいう。)は、特定の表面構造を有するダイヤモンド粒子と、特定のSP値を有する有機溶剤と、を含有する。
【0023】
まず、特定の表面構造を有するダイヤモンド粒子について説明する。
【0024】
ダイヤモンド粒子は、514nmの測定光源を用いたラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、1300~1400cm-1の範囲に観測されるDバンドのピーク面積と、1570~1640cm-1の範囲に観測されるGバンドのピーク面積との比率D/G比(以下、単に「D/G比」ともいう。)が5以上、22以下である。
【0025】
励起波長514nmで測定したラマンスペクトルにおける、1300~1400cm-1の範囲に観測されるDバンドのピークは、ダイヤモンド構造のsp3混成軌道に由来する。1570~1640cm-1の範囲に観測されるGバンドのピークは、グラフェン構造のsp2混成軌道に由来する。これらのピークに由来するピーク面積を用いてD/G比を算出することで、ダイヤモンド粒子中に含まれるグラファイト量が規定される。
【0026】
ダイヤモンド粒子のD/G比は、5以上であり、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。D/G比が5以上であることで、ダイヤモンド粒子の表面のグラファイト量が少なくなるため、本実施形態の分散体に係る有機溶剤への分散安定性が向上する。また、ダイヤモンド粒子のD/G比は、22以下であり、21以下であることが好ましく、19以下であることがより好ましい。D/G比が22以下であることにより、ダイヤモンド粒子の表面に適度な量のグラファイト量が存在することとなる。その結果、形成される光散乱体のコントラスト比が高くなり、鮮明性が向上する。一方で、D/G比が5未満であると、表面のグラファイト量が過剰となるため、本実施形態の分散体に係る有機溶剤への濡れ性が悪くなり、有機溶剤への分散性が低下する。D/G比が22を超えると、表面のグラファイト量が過少となり、形成される光散乱体のコントラスト比が低下し、鮮明性が悪くなる。
【0027】
ダイヤモンド粒子としては、製造方法や精製方法により、多種存在するが、天然ダイヤモンド粒子、又は高圧法で合成されたダイヤモンド粒子が好ましく、高圧法で合成されたダイヤモンド粒子がより好ましい。
【0028】
ダイヤモンド粒子を高圧法により合成する場合、ダイヤモンド粒子を合成する際の圧力は、5.0~30.0GPaであってよく、温度は、1300~3000℃であってよい。
【0029】
天然ダイヤモンド粒子及び高圧法で合成されたダイヤモンド粒子以外のダイヤモンド粒子として、爆轟法で合成されたダイヤモンド粒子が知られている。爆轟法で合成されたダイヤモンド粒子には、表面に多くのグラファイト層が形成され、D/G比が5未満となる。グラファイト層は親水性である。そのため、グラファイト層を多く含有する爆轟法で合成されたダイヤモンド粒子は、有機溶剤への分散安定性に劣る。
【0030】
また、ダイヤモンド粒子は、結晶の形態構造として、単結晶ダイヤモンド粒子、多結晶ダイヤモンド粒子の2つに分類されるが、いずれか一方を単独で、もしくは両方を組み合わせて用いることができる。
【0031】
ダイヤモンド粒子のメジアン径は、分散安定性が向上し、且つ、形成される光散乱体の光散乱性が向上する観点から、50nm~10μmが好ましく、80nm~5μmがより好ましく、100nm~1μmが更に好ましい。光の散乱強度は粒子径に依存しており、メジアン径が大きくなると散乱強度が強くなる。そのため、メジアン径が50nm以上であることで、十分な光散乱性能が得られ易い。一方で、メジアン径が10μm以下であることで、沈降速度が遅くなり、分散安定性が得られ易くなる。
【0032】
ダイヤモンド粒子は1種又はメジアン径が異なる2種以上を用いてもよい。本明細書においてメジアン径とは、粒子の体積基準での50%メジアン径を言い、動的散乱方式の粒度分布計(例えば、Malvern社製、Nano-ZS)を用いて測定される。
【0033】
ダイヤモンド粒子は、その表面に表面修飾基を有していてもよく、有していなくてもよい。表面修飾基としては、例えば、―NHCOR(Rは直鎖状若しくは分岐アルキル基、又はシクロアルキル基を示す)で表される基、アミノ基、シリル基及び架橋性基等が挙げられる。表面修飾基は、例えば、ナノダイヤモンド粒子の表面を表面処理剤で表面処理することによりダイヤモンド粒子の表面に導入することができる。
【0034】
ダイヤモンド粒子が表面修飾基を有する場合、ダイヤモンド粒子における表面修飾基の割合は、形成される光散乱体の光散乱性及び鮮明性が一層向上することから、ダイヤモンド粒子の全量を基準として、0.010質量%未満であることが好ましく、0.008質量%未満であることがより好ましく、0.005質量%未満であることが更に好ましく、ダイヤモンド粒子が表面修飾基を有しない、つまり、ダイヤモンド粒子が表面処理されていないことが特に好ましい。ダイヤモンド粒子が表面処理されていないことは、例えば、赤外分光分析法又は近赤外分光分析法により得られたダイヤモンド粒子のスペクトルデータにおいて、表面修飾基に由来する吸収ピークが検出されないことにより確認できる。
【0035】
ダイヤモンド粒子に表面修飾基を導入する場合、表面処理剤と、ダイヤモンド粒子との反応を促進するために粒子を解砕する工程が必要となる。しかし、ダイヤモンド粒子を表面処理しない場合、ダイヤモンド粒子を解砕する必要がないため、ダイヤモンド粒子のメジアン系が小さくなりすぎない。その結果、当該ダイヤモンド粒子を含む分散体を用いて形成された光散乱体は、光散乱性及び鮮明性が一層向上する。表面修飾基の割合は、例えば、ダイヤモンド粒子を熱重量測定し、特定の温度範囲(例えば、200~500℃)における減量率から算出することができる。
【0036】
分散体におけるダイヤモンド粒子の含有量は、分散安定性、形成される光散乱体の光散乱性及び鮮明性の観点から、分散体の全量を基準として、0.001~15.0質量%であることが好ましく、0.2~4.0質量%がより好ましい。
【0037】
光の散乱強度は粒子密度、すなわちダイヤモンド粒子の含有量に依存しており、ダイヤモンド粒子の含有量が多くなると散乱強度が大きくなる。ダイヤモンド粒子の含有量が0.001質量%以上であることで、得られる光散乱体は、十分な光散乱性が得られ易くなる。また、ダイヤモンド粒子の含有量が15.0質量%以下であることで、ダイヤモンド粒子間の凝集力が大きくなりすぎず、その結果、分散安定性が一層向上する傾向にある。
【0038】
次に、本実施形態の分散体に含まれる特定のSP値を有する有機溶剤について説明する。
【0039】
有機溶剤のSP値は、25℃においてFedorsの計算により算出される値であり、単位は、(cal/cm3)0.5である。本実施形態の分散体において、有機溶剤のSP値は、8以上であり、9以上であることが好ましい。SP値が8以上である場合、有機溶剤は十分な表面自由エネルギーを有するため、本実施形態の分散体に係るダイヤモンド粒子への濡れ性が良好になる。その結果、分散体の分散安定性が向上する。SP値が8より小さいと、有機溶剤の表面自由エネルギーが小さすぎるため、本実施形態の分散体に係るダイヤモンド粒子の表面に有機溶剤が浸透しない(濡れ性が悪い)。そのため、ダイヤモンド粒子の有機溶剤への分散安定性が低下する。また、有機溶剤のSP値は、23以下であり、20以下であることが好ましく、15以下であることが更に好ましい。SP値が23以下である場合、有機溶剤の表面自由エネルギーが適度な大きさに調整されるため、分散体から調整されるコーティング液は、塗布ムラが抑制されたものとなる。SP値が23より大きいと、有機溶剤の表面自由エネルギーが大きすぎるため、分散体から調整されるコーティング液は、塗布ムラが発生しやすくなる。
【0040】
有機溶剤としては、例えば、メタノール(SP値:13.8)、エタノール(SP値:12.6)、1-プロパノール(SP値:11.8)、イソプロピルアルコール(SP値:11.6)等の1価アルコール類;エチレングリコール(SP値:14.6)、グリセリン(SP値:16.5)の多価アルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:8.7)、エチレングリコールブチルエーテル(SP値:8.9)、プロピレングリコールモノメチルアセテート(SP値:10.2)等のグリコールエーテル類;テトラヒドロフラン(SP値:8.3)等のエーテル類;酢酸エチル(SP値:8.8)、酢酸ブチル(SP値:8.7)等のエステル類;アセトン(SP値:9.1)、メチルエチルケトン(SP値:9.0)、シクロヘキサノン(SP値:9.8)等のケトン類;ジメチルホルムアルデヒト等のアミド類が挙げられる。
【0041】
有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本実施形態の分散体は、水を含んでいてもよいが、塗布ムラが一層抑制されたコーティング液を調整可能であることから、水を含んでいないことが好ましい。
【0043】
分散体における有機溶剤の含有量は、形成される光散乱体の光散乱性及び鮮明性が一層向上することから、分散体に含まれるダイヤモンド粒子1質量部に対して、5~99999質量部であることが好ましく、24~499質量部であることがより好ましい。
【0044】
分散体において、ダイヤモンド粒子及び有機溶剤の合計含有量は、分散体の全量を基準として、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってもよい。
【0045】
分散体は、上述した特定の表面構造を有するダイヤモンド粒子以外のダイヤモンド粒子、つまり、D/G比が5未満又は22を超えるダイヤモンド粒子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。分散体におけるD/G比が5未満又は22を超えるダイヤモンド粒子の含有量は、分散体に含まれるダイヤモンド粒子の全量を基準として、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、又は0.1質量%以下であってもよい。
【0046】
分散体は、上述した特定のSP値を有する有機溶剤以外の有機溶剤、つまり、SP値が8未満又は23を超える有機溶剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。分散体におけるSP値が8未満又は23を超える有機溶剤の含有量は、分散体に含まれる有機溶剤の全量を基準として、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
【0047】
本実施形態の分散体は、ダイヤモンド粒子、有機溶剤以外の他の成分を含有してよい。他の成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、防腐剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤、有機、無機顔料、及び染料の各種添加剤、添加助剤、帯電防止剤、並びに艶消し剤等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の分散体は、ダイヤモンド粒子が有機溶剤に分散されてなる。分散体は、例えば、ダイヤモンド粒子と、有機溶剤とを混合し、分散処理することで、製造されてよい。分散処理は、例えば、超音波処理、ビーズミリングが挙げられる。分散体は、必要に応じて、濾過処理、及び遠心分離処理等の精製処理をされてもよい。
【0049】
本実施形態の分散体は、ダイヤモンド粒子に由来する特性である、高い機械的強度、電気絶縁性、優れた熱伝導性、消臭効果、抗菌効果、耐薬品性を併せて有する。そのため、本実施形態の分散体を油剤や樹脂成分に添加して得られる組成物は、ナノダイヤモンド由来の特性を高度に発現することができる。本実施形態の分散体及び分散体を用いて調整される組成物は、例えば、放熱材料、光学材料(例えば、高機能フィルム材料)、素材強化材料、熱交換流動媒体、コーティング液(例えば、抗菌コーティング液、消臭コーティング液)、研磨剤、潤滑剤、医療材料等として好適に使用される。本実施形態の分散体は、塗布ムラが抑制されたコーティング液を調整可能であることから、コーティング液の調整のために特に好適に使用される。
【0050】
[コーティング液]
本実施形態のコーティング液は、上記実施形態の分散体と、樹脂成分と、を含む。
【0051】
本実施形態のコーティング液におけるダイヤモンド粒子の含有量は、分散安定性、及び形成される光散乱体の光散乱性が向上する観点から、コーティング液の全量を基準として、0.001~11.0質量%が好ましく、0.2~4.0質量%がより好ましい。
【0052】
樹脂成分について説明する。コーティング液に含まれる樹脂成分は、コーティング液から形成される光散乱体において、ダイヤモンド粒子を固定する樹脂媒体として機能する。
【0053】
樹脂成分は、樹脂及び重合性モノマーが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を用いる場合、ダイヤモンド粒子との屈折率差が得られやすく、形成される光散乱体は、光散乱性及び鮮明性に更に優れる傾向がある。樹脂は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、ポリウレタン樹脂及びポリアクリル樹脂のうち少なくとも一方の樹脂を含有することがより好ましい。樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。樹脂は、重合性の官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。本実施形態のコーティング液では、上述の樹脂を溶媒で希釈又は分散した溶液(樹脂溶液)として市販されているものを使用してよい。樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0055】
重合性モノマーは、上述した樹脂を形成することができる原料であってよい。重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系化合物;ウレタンアクリレート化合物;エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ブタジエン、イソブレン等のアルケン化合物;クロロエチレン、ジクロロエチレン等のハロゲン化アルケン化合物;シクロヘキセン等のシクロアルケン化合物;スチレン;エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のエポキシ化合物等が挙げられる。重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0056】
本実施形態のコーティング液が重合性モノマー又は重合性の官能基を有する樹脂を含む場合、樹脂成分は、必要に応じて、重合開始剤等を含んでいてもよい。
【0057】
重合開始剤としては、アゾ化合物、過酸化物等の熱ラジカル重合開始剤;ベンゼン酸スルホン酸エステル化合物、アルキルスルホニウム塩等の熱カチオン重合開始剤;ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物等の光重合開始剤等が挙げられる。
【0058】
本実施形態のコーティング液における有機溶剤及び樹脂成分の合計含有量は、分散安定性及び塗工性と、形成される光散乱体の光散乱性の観点から、コーティング液の全量を基準として、89.0~99.999質量%が好ましく、96.0~99.8質量%がより好ましい。
【0059】
有機溶剤及び樹脂成分の合計含有量が89.0質量%以上である、すなわちダイヤモンド粒子の含有量が11.0質量%以下となることで、ダイヤモンド粒子間の凝集力が大きくなりすぎず、分散安定性が一層向上する。また、コーティング液の粘度の増加が抑制され、塗布ムラが一層抑制される。一方、有機溶剤及び樹脂成分の合計含有量が99.999質量%以下である、すなわちダイヤモンド粒子が0.001質量%以上であることで、形成される光散乱体は、十分な光散乱性能を得ることができる。
【0060】
本実施形態のコーティング液における有機溶剤及び樹脂成分の合計含有量は、分散安定性及び塗工性と、形成される光散乱体の光散乱性の観点から、ダイヤモンド粒子1質量部に対して、5~99999質量部が好ましく、24~499質量部がより好ましい。
【0061】
本実施形態のコーティング液の製造方法は、特に限定されないが、例えば、有機溶剤及び樹脂成分を混合したものに、ダイヤモンド粒子を添加し、分散させる方法が挙げられる。
【0062】
ダイヤモンド粒子を分散させる方法としては、例えば、従来公知の混合、分散方法等が挙げられる。ダイヤモンド粒子をより確実に分散させるためには、分散機を用いて分散処理を行うことが好ましい。
【0063】
分散機としては、例えば、ディスパ、ホモミキサー、プラネタリーミキサー(PRIMIX社「フィルミックス」)、自転公転ミキサー((株)シンキー製「あわとり練太郎」等)等のミキサー類;ホモジナイザ(エム・テクニック(株)製「クレアミックス」);ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル((株)シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、(株)スギノマシン製「スターバースト」、ナノマイザー(株)製「ナノマイザー」等);メディアレス分散機(エム・テクニック(株)製「クレアSS―5」、(株)奈良機械製作所製「MICROS」等);その他ロールミル等が挙げられる。
【0064】
本実施形態のコーティング液は、塗布ムラの発生が抑制されているため、様々な基材に好適に用いることができる。基材の表面は、例えば、平面であってよく、曲面であってもよい。基材は、例えば、平板であってもよく、球体であってもよい。基材の表面は、易接着処理されていてもよく、されていなくてもよい。
【0065】
[光散乱体]
図1は、光散乱体の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示される本実施形態の光散乱体4は、樹脂媒体2中にダイヤモンド粒子1が分散している。光散乱体4は、シート状である。
【0066】
光散乱体4は、上記実施形態のコーティング液を用いて形成することができる。樹脂媒体は、上記実施形態のコーティング液に含まれる樹脂成分から形成される。
【0067】
光散乱体4に含まれるダイヤモンド粒子の含有量は、光散乱体のダイヤモンド粒子及び樹脂媒体の合計質量を基準として、0.001~15.0質量%が好ましく、0.5~13.0質量%がより好ましい。ダイヤモンド粒子の含有量が0.001質量%以上であることで、十分な光散乱性を得られ易くなる。一方で、ダイヤモンド粒子の含有量が15質量%以下であると、ダイヤモンド粒子間の凝集力が大きくなりすぎず、光散乱性及び鮮明性が一層向上する傾向にある。
【0068】
光散乱体4の厚さは、光散乱性及び経済性に優れる観点から、0.1~500μmが好ましく、0.5~80μmがより好ましい。光散乱体4の厚さは、マイクロメーター((株)ミツトヨ社製、商品名:MDH-25M)を用いて測定される。光散乱体4の厚さが0.1μm以上であると、光散乱体4に含まれるダイヤモンド粒子の量が十分となるため、十分な光散乱性を得られ易くなる。一方、光散乱体4の厚さの上限については、特に制限はされないが、経済性に優れることから、500μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。
【0069】
光散乱体4において、ダイヤモンド粒子1が光散乱体4の表面から露出していてもよく、露出していなくてもよい。
【0070】
光散乱体4は、例えば、上記実施形態のコーティング液から形成されていてよい。光散乱体4は、例えば、上記実施形態のコーティング液を剥離基材に塗布する工程と、塗膜を乾燥又は硬化する工程と、乾燥物又は硬化物を剥離基材から剥離する工程と、を備える方法によって製造することができる。
【0071】
コーティング液の塗布方法は、特に限定されないが、剥離基材の形状に応じて適宜選択することができ、例えば、スライドビード方式、スプレー方式、スライドカーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、エアーナイフ方式、ブレードコーティング方式及びロッドバーコーティング方式等が挙げられる。
【0072】
形成された塗膜を乾燥又は硬化する方法としては、温風乾燥機や赤外線乾燥機等で加熱する方法を用いることができる。樹脂成分が樹脂を含む場合、コーティング液は、塗膜を加熱することにより、塗膜に含まれる有機溶剤を蒸発させて樹脂を硬化することができる。塗膜の加熱には、例えば、温風乾燥機及び赤外線乾燥機等を用いることができる。また、樹脂成分が重合性モノマー及び重合開始剤を含む場合は、必要に応じて、塗膜を加熱して塗膜中の有機溶剤を除去した後に、活性エネルギー線を塗膜に照射する。それにより、重合性モノマーを重合し、高分子化することで、塗膜を硬化することができる。このような活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、赤外線、可視光線、X線、α線、γ線及び重粒子線等が挙げられる。
【0073】
塗膜の乾燥物又は硬化物を剥離基材から剥がす方法としては、特に限定されないが、例えば、シール剥離、物理的剥離及び剥離剤添加等が挙げられる。
【0074】
光散乱体4の形状は、シート状に限られない。
【0075】
[光散乱膜]
図2は、光散乱膜の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示される本実施形態の光散乱膜5は、基材3と、該基材3上に設けられた光散乱層4と、を備える。
【0076】
基材3は、光散乱膜5の光学特性を阻害するものでなければ特に限定されるものではないが、具体的には、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ほうけい酸ガラス等のガラス;ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニル系樹脂等のプラスチック;石英;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化インジウウムスズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の金属酸化物;鉄鋼、炭素鋼、クロム-モリブデン鋼、アルミ合金、ステンレス合金、銅合金、チタン合金等の合金;金、銀、銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、白金、鉛、パラジウム等の金属;綿、麻等の植物繊維;絹、羊毛、アルパカ、アンゴラ、カシミヤ、モヘア等の動物繊維;レーヨン、ポリアセテート、プロミックス、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の合成繊維;ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等の無機繊維等が挙げられる。
【0077】
光散乱膜5を透過型の映像投影構造体として使用する場合、透明な基材3が好ましい。透明な基材3の具体例としては、ガラス及びプラスチック等が挙げられる。
【0078】
基材3の厚さは、特に限定されないが、強度及び経済性の観点から、1μm~50mmが好ましく、20μm~30mmがより好ましい。
【0079】
光散乱層4に含まれるダイヤモンド粒子の含有量は、光散乱体4に含まれるダイヤモンド粒子の含有量と同様であってもよい。光散乱層4の厚さは、光散乱体4と同様であってもよい。光散乱膜5において、ダイヤモンド粒子1が光散乱層4の表面から露出していてもよく、露出していなくてもよい。
【0080】
本実施形態の光散乱膜5は、投影画像を投影するときには透過型の映像投影構造体として用いることができる。
【0081】
本実施形態の光散乱膜5は、例えば、基材3上に、コーティング液を塗布する工程と、塗膜を乾燥又は硬化する工程と、を備える方法によって製造することができる。また、別の方法として、基材3上に、シート状の光散乱体4をラミネートする工程とを備える方法が挙げられる。
【0082】
基材3上に、コーティング液を塗布する方法、並びに塗膜を乾燥又は硬化する方法は、上記実施形態の光散乱体を形成する際にコーティング液を基材上に塗布する方法、並びに塗膜を乾燥又は硬化する方法と同様であってよい。
【0083】
シート状の光散乱体を、基材上にラミネートする方法としては、光学粘着剤及び光学接着剤等による接合、並びに熱溶融接合などが挙げられる。
【0084】
[映像投影構造体]
本実施形態の映像投影構造体は、上述した本実施形態の光散乱体、又は、上述した本実施形態の光散乱膜を備える。本実施形態の映像投影構造体は、光源に対し透過する側から画像を認識できる透過型としてもよく、光源に対し反射する側から画像を認識できる反射型としてもよい。
【0085】
本実施形態の映像投影構造体は、平面又は曲面を有する基材上に、光散乱体又は光散乱膜が設けられたものであってもよい。この場合、曲面基材に、光散乱体又は光散乱膜を接着又は密着させてもよく、上述したコーティング液を曲面基材表面に直接塗布することにより光散乱体を形成してもよい。
【0086】
この場合、曲面画像や立体画像の投影、立体曲面への投影に適した、透過型の曲面映像投影構造体又は反射型の曲面映像投影構造体を構成することができる。
【実施例0087】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例により何ら制限されるものではない。
【0088】
下記のとおり、ダイヤモンド粒子を含有する分散体、光散乱体、光散乱膜、及び映像投影構造体を製造するための材料及び基材を準備した。
【0089】
[ダイヤモンド粒子]
ダイヤモンド粒子1:(ビジョン開発(株)製、メジアン径:150nm、D/G比:18.3)
ダイヤモンド粒子2:(ビジョン開発(株)製、メジアン径:80nm、D/G比:17.0)
ダイヤモンド粒子3:(ビジョン開発(株)製、メジアン径:750nm、D/G比:18.5)
ダイヤモンド粒子4:(ビジョン開発(株)製、メジアン径:2.0μm、D/G比:18.7)
ダイヤモンド粒子5:(ビジョン開発(株)製、メジアン径:150nm、D/G比:8.2)
ダイヤモンド粒子6:(ビジョン開発(株)製、メジアン径:200nm、D/G比:22.8)
ダイヤモンド粒子7:(ビジョン開発(株)製、メジアン径:100nm、D/G比:1.4)
【0090】
[有機溶剤]
イソプロピルアルコール:(SP値:11.6)
エチレングリコール:(SP値:14.6)
グリセリン:(SP値:16.5)
テトラヒドロフラン:(SP値:8.3)
プロピレングリコールモノメチルエーテル:(SP値:8.7)
エチレングリコールブチルエーテル:(SP値:8.9)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:(SP値:10.2)
酢酸エチル:(SP値:9.0)
メチルエチルケトン:(SP値:9.0)
メチルイソブチルケトン:(SP値:9.6)
N,N-ジメチルホルムアミド:(SP値:12.1)
n-ヘキサン:(SP値:7.3)
ジエチルエーテル:(SP値:7.4)
n-オクタン:(SP値:7.6)
水:(SP値:23.4)
【0091】
[樹脂]
アクリル樹脂:ネオクリルB818(商品名、楠本化成(株)製、揮発分:0%)。
ウレタン樹脂:バーノック18-472(商品名、DIC(株)製、揮発分(イソプロピルアルコール及びメチルエチルケトン):30.0質量%)
アクリル樹脂:ボンロンPS-001(商品名、三井化学(株)製、揮発分(水):50.0質量%)。
[重合性モノマー]
(メタ)アクリル酸エステル系化合物:アロニックスM403(商品名、東亜合成(株)製、揮発分:0%)。
ウレタンアクリレート:EBECRYL9260(商品名、ダイセルオルネックス(株)製、揮発分:0%)
[光開始剤]
アセトフェノン化合物:Omnirad184(商品名、IGM Resins B.V.製)
【0092】
[基材]
基材1;ポリカーボネート平板(TG技研製、8cm×8cm、厚さ1mm)
基材2;PETフィルム(ルミラーT60-A4、東レ(株)製、厚さ100μm)
基材3;PPフィルム(トレファン#60-2500、東レ(株)製、厚さ60μm)
基材4;COPフィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製、厚さ100μm)
基材5;TACフィルム(フジタック、富士フィルム(株)製、厚さ50μm)
基材6;ポリカーボネート曲板((株)エンジニアリングテストサービス製、9cm×16cm、厚さ2mm、曲率半径R=300mm)
基材7;ポリカーボネートドーム型((株)エンジニアリングテストサービス製、φ3cm、厚さ2mm)
【0093】
<ダイヤモンド粒子分散体の調製>
(実施例1)
(ダイヤモンド粒子分散体1の調製)
200mlステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を2.0g、イソプロピルアルコールを98.00g加え、ホモミキサー(ROBOMICS(fmodel)、プライミクス社製)を用いて4000rpmで30分間、混合及び分散処理を行い、ダイヤモンド粒子分散体1を得た。
【0094】
(実施例2)
(ダイヤモンド粒子分散体2の調製)
イソプロピルアルコールに代えてエチレングリコールを用いたいこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体2を調製した。
【0095】
(実施例3)
(ダイヤモンド粒子分散体3の調製)
イソプロピルアルコールに代えてグリセリンを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体3を調製した。
【0096】
(実施例4)
(ダイヤモンド粒子分散体4の調製)
イソプロピルアルコールに代えてテトラヒドロフランを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体4を調製した。
【0097】
(実施例5)
(ダイヤモンド粒子分散体5の調製)
イソプロピルアルコールに代えてプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体5を調製した。
【0098】
(実施例6)
(ダイヤモンド粒子分散体6の調製)
イソプロピルアルコールに代えてエチレングリコールブチルエーテルを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体6を調製した。
【0099】
(実施例7)
(ダイヤモンド粒子分散体7の調製)
イソプロピルアルコールに代えてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体7を調製した。
【0100】
(実施例8)
(ダイヤモンド粒子分散体8の調製)
イソプロピルアルコールに代えて酢酸エチルを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体8を調製した。
【0101】
(実施例9)
(ダイヤモンド粒子分散体9の調製)
イソプロピルアルコールに代えてメチルエチルケトンを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体9を調製した。
【0102】
(実施例10)
(ダイヤモンド粒子分散体10の調製)
イソプロピルアルコールに代えてメチルイソブチルケトンを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体10を調製した。
【0103】
(実施例11)
(ダイヤモンド粒子分散体11の調製)
イソプロピルアルコールに代えてN,N-ジメチルホルムアミドを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体11を調製した。
【0104】
(実施例12)
(ダイヤモンド粒子分散体12の調製)
ステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を3.50g、イソプロピルアルコールを96.50g加えたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体12を調製した。
【0105】
(実施例13)
(ダイヤモンド粒子分散体13の調製)
ステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を5.00g、イソプロピルアルコールを95.00g加えたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体13を調製した。
【0106】
(実施例14)
(ダイヤモンド粒子分散体14の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子3を用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体14を調製した。
【0107】
(実施例15)
(ダイヤモンド粒子分散体15の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子4を用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体15を調製した。
【0108】
(実施例16)
(ダイヤモンド粒子分散体16の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子5を用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体16を調製した。
【0109】
(比較例1)
(ダイヤモンド粒子分散体17の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子7を用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体17を調製した。
【0110】
(比較例2)
(ダイヤモンド粒子分散体18の調製)
イソプロピルアルコールに代えてn-ヘキサンを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体18を調製した。
【0111】
(比較例3)
(ダイヤモンド粒子分散体19の調製)
イソプロピルアルコールに代えてジエチルエーテルを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体19を調製した。
【0112】
(比較例4)
(ダイヤモンド粒子分散体20の調製)
イソプロピルアルコールに代えてn-オクタンを用いたこと以外は、ダイヤモンド粒子分散体1と同様にして、ダイヤモンド粒子分散体20を調製した。
【0113】
ダイヤモンド粒子分散体1~20の組成をまとめて表1~5に示す。
【0114】
実施例1~16、及び比較例1~4で作製したダイヤモンド粒子分散体1~20について、分散安定性を下記の方法にしたがって評価した。その結果を表1~5に示す。
【0115】
<分散安定性>
ダイヤモンド粒子分散体について、以下の基準により3段階で分散安定性を評価した。水準1、又は水準2を満たすダイヤモンド粒子分散体を合格とした。評価は、目視で行った。
水準1:分散体の調整から30分が経過した時点で、ダイヤモンド粒子の沈殿は見られず、均一に分散している。
水準2:分散体の調整から10分が経過した時点では、ダイヤモンド粒子の沈殿は見られず、均一に分散しているが、分散体の調整から30分が経過した時点では、若干のダイヤモンド粒子の沈殿が見られる。
水準3:分散体の調整から10分が経過した時点で、ダイヤモンド粒子と溶剤がはっきりと2層に分離している。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
表1~5から明らかであるように、実施例1~16のダイヤモンド粒子分散体1~16は、分散安定性に優れることがわかる。
【0122】
<コーティング液の調製>
(コーティング液21の調製)
200mlステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を0.60g、イソプロピルアルコールを70.00g、及びネオクリルB818を29.40g加え、ホモミキサー(ROBOMICS(fmodel)、プライミクス社製)を用いて4000rpmで30分間、混合及び分散処理を行い、コーティング液21を得た。
【0123】
(コーティング液22の調製)
イソプロピルアルコールに代えてエチレングリコールを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液22を調製した。
【0124】
(コーティング液23の調製)
イソプロピルアルコールに代えてグリセリンを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液23を調製した。
【0125】
(コーティング液24の調製)
イソプロピルアルコールに代えてテトラヒドロフランを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液24を調製した。
【0126】
(コーティング液25の調製)
イソプロピルアルコールに代えてプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液25を調製した。
【0127】
(コーティング液26の調製)
イソプロピルアルコールに代えてエチレングリコールブチルエーテルを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液26を調製した。
【0128】
(コーティング液27の調製)
イソプロピルアルコールに代えてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液27を調製した。
【0129】
(コーティング液28の調製)
イソプロピルアルコールに代えて酢酸エチルを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液28を調製した。
【0130】
(コーティング液29の調製)
イソプロピルアルコールに代えてメチルエチルケトンを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液29を調製した。
【0131】
(コーティング液30の調製)
イソプロピルアルコールに代えてメチルイソブチルケトンを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液30を調製した。
【0132】
(コーティング液31の調製)
イソプロピルアルコールに代えてN,N-ジメチルホルムアミドを用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液31を調製した。
【0133】
(コーティング液32の調製)
ステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を0.14g、更にネオクリルB818を29.86g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液32を調製した。
【0134】
(コーティング液33の調製)
ステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を0.3g、更にネオクリルB818を29.70g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液33を調製した。
【0135】
(コーティング液34の調製)
ステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を3.50g、更にネオクリルB818を26.50g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液34を調製した。
【0136】
(コーティング液35の調製)
ステンレスポットに、ダイヤモンド粒子1を4.20g、更にネオクリルB818を25.80g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液34を調製した。
【0137】
(コーティング液36の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子2を用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液36を調製した。
【0138】
(コーティング液37の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子3を用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液37を調製した。
【0139】
(コーティング液38の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子4を用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液38を調製した。
【0140】
(コーティング液39の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子5を用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液39を調製した。
【0141】
(コーティング液40の調製)
ステンレスポットに、イソプロピルアルコールに代えてメチルエチルケトンを70.00g加え、ネオクリルB818に代えてアロニックスM403を29.40g加え、更にOmnirad184を1.50g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液40を調製した。
【0142】
(コーティング液41の調製)
ステンレスポットに、ネオクリルB818に代えてバーノック18-472を98.00g加え、イソプロピルアルコールを1.4g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液41を調製した。
【0143】
(コーティング液42の調製)
ステンレスポットに、ネオクリルB818に代えてEBECRYL9620を29.40g加え、更にOmnirad184を1.50g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液42を調製した。
【0144】
(コーティング液43の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子6を用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液43を調製した。
【0145】
(コーティング液44の調製)
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子7を用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液44を調製した。
【0146】
(コーティング液45の調製)
ダイヤモンド粒子7に超純水を加えて、ダイヤモンド濃度が8質量%の懸濁液を調整した。調整した懸濁液に水酸化ナトリウムを添加し、スラリー状の懸濁液のpHを10に調整した。次に、上記で得られたスラリー状の懸濁液300mLを、ビーズミル(商品名「バッチ式サンドグラインダー BSG-2」)、アイメックス(株)製)を使用して解砕処理をした。本処理では、解砕メディアとしてジルコニアビーズ(直径0.03mm)を使用した。ミル容器内に充填されるビーズの量はミル容器の容積に対して60%とした。ミル容器内で回転するローターピンの周速は10m/sとして、90分間処理した。
【0147】
次いで、得られた解砕されたナノダイヤモンド水分散体を、遠心分離機で処理し(20,000G、10分間)、粗大粒子を除去して、黒色透明のダイヤモンド粒子水分散体を得た。このダイヤモンド粒子の粒子径は、メジアン径が24nmであった。次に、ナノダイヤモンド粒子水分散体をスプレードライヤー(商品名「B-290型」、日本ビッヒ(株)製)を用いて、解砕されたダイヤモンド粒子粉末(ダイヤモンド粒子8)を得た。
【0148】
ダイヤモンド粒子1に代えてダイヤモンド粒子8を用いたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液45を調製した。
【0149】
(コーティング液46の調製)
ステンレスポットに、イソプロピルアルコールに代えて水を40.60g、更にネオクリルB818に代えてボンロンPS-001を58.80g加えたこと以外は、コーティング液21と同様にして、コーティング液46を調製した。
【0150】
コーティング液21~46の組成(単位:g)をまとめて表6~12に示す。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
<光散乱膜の作製>
(実施例17)
基材1の片面に、コーティング液21を、固形分濃度が6.0g/m2になるようにスライドビード塗布装置(三井電気精機製の卓上コーター、TC-3型)を用いて塗布した。その後、80℃のオーブンの中に2分間入れて乾燥させ、基材上に光散乱層が設けられた光散乱膜を作製した。光散乱層は、厚さが6.3μmであった。
【0159】
(実施例18)
コーティング液21に代えてコーティング液22を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0160】
(実施例19)
コーティング液21に代えてコーティング液23を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.1μmであった。
【0161】
(実施例20)
コーティング液21に代えてコーティング液24を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.3μmであった。
【0162】
(実施例21)
コーティング液21に代えてコーティング液25を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.1μmであった。
【0163】
(実施例22)
コーティング液21に代えてコーティング液26を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0164】
(実施例23)
コーティング液21に代えてコーティング液27を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.4μmであった。
【0165】
(実施例24)
コーティング液21に代えてコーティング液28を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.3μmであった。
【0166】
(実施例25)
コーティング液21に代えてコーティング液29を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0167】
(実施例26)
コーティング液21に代えてコーティング液30を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.3μmであった。
【0168】
(実施例27)
コーティング液21に代えてコーティング液31を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは5.8μmであった。
【0169】
(実施例28)
コーティング液21に代えてコーティング液32を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.6μmであった。
【0170】
(実施例29)
コーティング液21に代えてコーティング液33を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.0μmであった。
【0171】
(実施例30)
コーティング液21に代えてコーティング液34を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0172】
(実施例31)
コーティング液21に代えてコーティング液35を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0173】
(実施例32)
コーティング液21に代えてコーティング液36を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.6μmであった。
【0174】
(実施例33)
コーティング液21に代えてコーティング液37を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.6μmであった。
【0175】
(実施例34)
コーティング液21に代えてコーティング液38を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.3μmであった。
【0176】
(実施例35)
コーティング液21に代えてコーティング液39を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.4μmであった。
【0177】
(実施例36)
コーティング液21に代えてコーティング液40を塗布し、更に乾燥後にUV照射装置(商品名「アイグランデージ」、アイクラフィックス(株)製)を用い、積算光量600mJ/cm2で照射した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0178】
(実施例37)
コーティング液21に代えてコーティング液41を塗布した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.3μmであった。
【0179】
(実施例38)
コーティング液21に代えてコーティング液42を塗布し、更に乾燥後にUV照射装置(商品名「アイグランデージ」、アイクラフィックス(株)製)を用い、積算光量600mJ/cm2で照射した以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0180】
(実施例39)
基材1に代えて基材2を用いたこと以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.3μmであった。
【0181】
(実施例40)
基材1に代えて基材3を用いたこと以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0182】
(実施例41)
基材1に代えて基材4を用いたこと以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.1μmであった。
【0183】
(実施例42)
基材1に代えて基材5を用いたこと以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.5μmであった。
【0184】
(実施例43)
基材1に代えて基材6を用いたこと、スライドビード塗布装置に代えてスプレー塗布装置(アピロス社製、型式:API-40RA)を用いてコーティング液21を基材に塗布したこと以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは5.8μmであった。
【0185】
(実施例44)
基材1に代えて基材7を用いたこと、スライドビード塗布装置に代えてスプレー塗布装置(アピロス社製、型式:API-40RA)を用いてコーティング液21を基材に塗布したこと以外は、実施例17と同様にして、光散乱膜を作製した。なお、ドーム型の内側に塗布した。光散乱層の厚さは6.0μmであった。
【0186】
(比較例5)
コーティング液21に代えてコーティング液43を塗布したこと以外は、実施例17と同様に光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0187】
(比較例6)
コーティング液21に代えてコーティング液44を用いて基材に塗布を行おうとしたが、コーティング液44の分散安定性が悪いために基材に塗布することができなかった。
【0188】
(比較例7)
コーティング液21に代えてコーティング液45を用いたこと以外は、実施例17と同様に光散乱膜を作製した。光散乱層の厚さは6.2μmであった。
【0189】
(比較例8)
コーティング液21に代えてコーティング液46を用いたこと以外は、実施例17と同様に光散乱膜を作製した。得られた光散乱膜の表面の大部分に膜むらが見られたので、光散乱層の厚さを測定することができなかった。
【0190】
(比較例9)
基材1に代えて基材2を用いたこと、スライドビード塗布装置に代えてスプレー塗布装置(アピロス社製、型式:API-40RA)を用いてコーティング液46を基材に塗布したこと以外は、比較例8と同様に光散乱膜を作製した。得られた光散乱膜表面の大部分に膜むらが見られたので、光散乱層の厚さを測定することができなかった。
【0191】
(比較例10)
基材1に代えて基材3を用いたこと、スライドビード塗布装置に代えてスプレー塗布装置(アピロス社製、型式:API-40RA)を用いてコーティング液46を基材に塗布したこと以外は、比較例8と同様に光散乱膜を作製した。得られた光散乱膜表面の大部分に膜むらが見られたので、光散乱層の厚さを測定することができなかった。
【0192】
[コーティング液の評価]
<分散安定性>
作製したコーティング液について、分散安定性を評価した。分散安定性は、ダイヤモンド粒子分散体の分散安定性の評価と同様にして、評価した。その結果を表13~19に示す。
【0193】
[光散乱膜の評価]
実施例17~44及び比較例5~10の光散乱膜について、膜外観評価、光散乱性及び映像の鮮明性を下記の方法にしたがって評価した。その結果を表13~19に示す。
【0194】
<膜外観評価>
目視にて光散乱膜の表面状態を目視で観察し、以下の基準により3段階で評価した。1、又は2を合格とした。
水準1:膜むら、白濁、クラックなどの外観上の不具合が全く無い
水準2:膜むら、白濁、クラックなどの外観上の不具合が有るが、その割合が表面全体の5%未満である
水準3:膜むら、白濁、クラックなどの外観上の不具合が有る割合が表面全体の5%以上である
【0195】
<光散乱性>
変角光度計(日本電色工業(株)製、品番:GC5000)を用いて光散乱膜の明度を以下の手順で測定した。光源の入射角を20度にセットし、測定ステージに何も置かない状態で20度方向への透過光強度を100とした。次に光散乱膜を測定ステージに置いて光源の入射角を20度のまま、0度の透過のL*値を測定した。L*値は0.20以上を合格とした。0.30以上だと更に好ましい。
【0196】
(映像の鮮明性(透過モード)>
プロジェクターにより映像を光散乱膜に投影し、鮮明性の評価を行なった。具体的には、デジタルプロジェクター(エプソン社製、商品名:EH-TW-410)で、白色の背景に黒色で線幅0.5mmの線の間隔0.6mmの格子縞の映像を光散乱膜に投影し、プロジェクター側の反対側から、各光散乱膜に投影された映像を目視し、映像の鮮明性を、以下の基準により3段階で評価した。1を合格とした。
(基準)
水準1:投影された格子縞の間隔がはっきり見える。
水準2:投射された格子縞の間隔が見えにくい。
水準3:投射された格子縞の間隔がぼやけて見えない。
【0197】
<映像の鮮明性(反射モード)>
デジタルプロジェクター(エプソン社製、商品名:EH-TW-410)で、白色の背景に黒色で線幅0.5mmの線の間隔0.6mmの格子縞の映像を光散乱膜に投影し、プロジェクター側と同一側から、各光散乱膜に投影された映像を目視し、映像の鮮明性を、以下の基準により3段階で評価した。1を合格とした。
(基準)
水準1:投影された格子縞の間隔がはっきり見える。
水準2:投射された格子縞の間隔が見えにくい。
水準3:投射された格子縞の間隔がぼやけて見えない。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
表13~19から明らかであるように、実施例17~44の光散乱膜を作製するのに用いたコーティング液は、分散安定性に優れることが分かる。また、実施例17~44の光散乱膜は塗布ムラがないことが示され、光散乱膜、及び映像投影構造体として有用であることが分かる。実施例17~44の光散乱膜は、光散乱性が高いことが示され、光散乱膜、及び映像投影構造体として有用であることが分かる。また、実施例17~44の光散乱膜は、鮮明性の高い映像を得ることができることが示され、光散乱膜、及び映像投影構造体として有用であることが分かる。