(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088803
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】振動プローブおよび計測装置
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200845
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC53
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる振動プローブおよび当該振動プローブを備える計測装置を提供する。
【解決手段】振動プローブ11は、加速度センサ110、台座111、断熱部材112、および探触棒113を備える。断熱部材112は、アルミナセラミックスからなり、開口112b,112cを有する中空円筒形状を有する。探触棒113は、開口112cから断熱部材112の中空部112aに嵌入されて断熱部材112に固定され、加速度センサ110は、開口112bから断熱部材112の中空部112aに嵌入されて固定されている。探触棒113と加速度センサ110とは、中空部112a内において、断熱部材112の筒軸方向に間隔を空けて配されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動の強度を計測する対象である計測対象物に一端が当接するように配される探触棒と、
前記探触棒の前記一端から入力される前記振動に基づき当該振動の強度を計測する振動センサと、
前記探触棒と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記探触棒から入力される前記振動を前記振動センサに伝達可能であって、且つ、前記探触棒を伝わってくる前記計測対象物からの熱を断熱する断熱部材と、
を備える、
振動プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動プローブにおいて、
前記振動センサと前記断熱部材との間に介挿され、前記断熱部材を介して伝達される前記振動を前記振動センサに伝達可能な台座をさらに備え、
前記断熱部材は、中空筒形状を有し、
前記探触棒は、前記一端とは反対側の他端部が前記断熱部材における一方の開口から当該断熱部材の筒内の中空部に嵌入されており、
前記台座は、一端に前記振動センサが固定され、他端部が前記断熱部材における前記一方の開口とは反対側の他方の開口から、前記探触棒に対して前記断熱部材の前記中空部内で間隔が空くように、前記中空部に嵌入されている、
振動プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の振動プローブにおいて、
前記探触棒と前記断熱部材とは、直に当接した状態で固定されており、
前記振動センサと前記台座とは、直に当接した状態で固定されており、
前記台座と前記断熱部材とは、直に当接した状態で固定されている、
振動プローブ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の振動プローブにおいて、
前記断熱部材は、アルミナセラミックスから形成されている、
振動プローブ。
【請求項5】
計測対象物の振動の強度を計測し、計測結果を外部出力する計測装置であって、
請求項1から請求項4の何れかの振動プローブを備える、
計測装置。
【請求項6】
請求項5に記載の計測装置において、
前記振動プローブを前記計測対象物に固定するためのブラケットをさらに備える、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動プローブおよび計測装置に関し、特に蒸気や復水が流れる配管やスチームトラップ等を計測対象とする振動プローブおよび計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトラップの振動の強度および外面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような診断には、スチームトラップの振動の強度を計測するための振動プローブと、スチームトラップの表面温度を計測するための温度プローブとを備える計測装置が用いられる。
【0003】
ここで、計測装置としては、作業者が携帯する可搬タイプのものと、配管等に振動プローブや温度プローブが取り付けられた設置タイプとがある。特許文献1には、設置タイプの計測装置が開示されている。
【0004】
従来技術に係る計測装置9について、
図5を用いて説明する。
【0005】
図5に示すように、計測装置9は、本体部90と、振動プローブ91と、温度プローブ92と、ケーブル93と、ブラケット94とを備える。振動プローブ91は、振動センサ910と、台座911と、探触棒913とを有する。振動プローブ91における探触棒913の先端913aおよび温度プローブ92の先端92aは、それぞれがスチームトラップ501の外周面501aに当接するように配される。そして、振動プローブ91および温度プローブ92は、ブラケット94によりスチームトラップ501に固定されている。振動プローブ91で計測されたスチームトラップ501における振動の強度に関する信号、および温度プローブ92で計測されたスチームトラップ501の外面温度に関する信号は、ケーブル93を通して本体部90に伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術に係る計測装置9では、スチームトラップ501からの熱が探触棒913および台座911を介して振動センサ910に伝達されるが、このように伝達される熱から振動センサ910を保護するための対策が講じられていない。よって、特に設置タイプの計測装置9においては、振動センサ910がスチームトラップ501からの熱にたえず晒されることで故障・破損することが危惧される。具体的には、スチームトラップ501は最大で約550℃の高温となり、設置タイプの計測装置9では、矢印Bで示すようにスチームトラップ501からの熱が振動センサ910に対して伝達され、当該振動センサ910の温度が当該振動センサ910の耐熱温度(例えば、200℃)を超えることが考えられる。
【0008】
なお、振動センサ910の故障・破損を防ぐために高い耐熱温度を有する振動センサ910を用いることも考えられるが、特殊なセンサということとなり部品コストの上昇を招く。よって、高い耐熱温度を有する振動センサを採用することはできない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる振動プローブおよび当該振動プローブを備える計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る振動プローブは、探触棒と、振動センサと、断熱部材とを備える。前記探触棒は、振動の強度を計測する対象である計測対象物に一端が当接するように配される。前記振動センサは、前記探触棒の前記一端から入力される前記振動に基づき当該振動の強度を計測する。前記断熱部材は、前記探触棒と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記探触棒から入力される前記振動を前記振動センサに伝達可能であって、且つ、前記探触棒を伝わってくる前記計測対象物からの熱を断熱する。
【0011】
上記態様に係る振動プローブでは、探触棒と振動センサとの間に断熱部材を介挿した構造を採用する。断熱部材は、探触棒と振動センサとの間で断熱する機能を有する。よって、上記態様に係る振動プローブでは、高い耐熱性を有する振動センサを採用しなくても、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができる。
【0012】
なお、断熱部材は、探触棒から入力された振動を振動センサに伝達することができるので、計測対象物の振動の強度を計測することができる。
【0013】
上記態様に係る振動プローブにおいて、前記振動センサと前記断熱部材との間に介挿され、前記断熱部材を介して伝達される前記振動を前記振動センサに伝達可能な台座をさらに備えていてもよい。また、前記断熱部材は、中空筒形状を有していてもよい。前記探触棒は、前記一端とは反対側の他端部が前記断熱部材における一方の開口から当該断熱部材の筒内の中空部に嵌入されていてもよい。また、前記台座は、一端に前記振動センサが固定され、他端部が前記断熱部材における前記一方の開口とは反対側の他方の開口から、前記探触棒に対して前記断熱部材の前記中空部内で間隔が空くように、前記中空部に嵌入されていてもよい。
【0014】
上記態様に係る振動プローブでは、断熱部材が中空筒形状を有する。そして、探触棒は、断熱部材の一方の開口から嵌入されて固定され、一端に振動センサが固定された台座の他端部は、断熱部材に対して当該断熱部材の他方の開口から嵌入されて固定されている。さらに、探触棒と台座とは、断熱部材の中空部内において、互いに間隔を空けて配されている。よって、探触棒を通じて伝達されてきた熱(計測対象物からの熱)が、台座に対して直に伝達されるのが抑制され、振動センサに熱が伝達されるのも抑制される。
【0015】
上記態様に係る振動プローブにおいて、前記探触棒と前記断熱部材とは、直に当接した状態で固定されていてもよく、前記振動センサと前記台座とは、直に当接した状態で固定されていてもよく、前記台座と前記断熱部材とは、直に当接した状態で固定されていてもよい。
【0016】
上記態様に係る振動プローブでは、探触棒と断熱部材とが直に当接した状態で固定され、台座と断熱部材とが直に当接した状態で固定され、振動センサと台座とが直に当接した状態で固定されている。よって、探触棒を通して伝達されてきた振動が断熱部材および台座を介して振動センサに伝えられる際の振動の減衰を小さく抑えることができる。
【0017】
上記態様に係る振動プローブにおいて、前記断熱部材は、アルミナセラミックスから形成されていてもよい。
【0018】
上記態様に係る振動プローブでは、アルミナセラミックスからなる断熱部材を備える。アルミナセラミックスは、断熱性に優れるとともに、振動の伝達という観点から優れる。よって、上記態様に係る振動プローブでは、計測対象物からの熱が振動センサに伝達されるのを抑制しながら、測定対象物の振動の強度を振動センサに良好に伝達することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る計測装置は、計測対象物の振動の強度を計測し、計測結果を外部出力する計測装置である。そして、本態様に係る計測装置は、上記の何れかの態様に係る振動プローブを備える。
【0020】
上記態様に係る計測装置は、上記の何れかの態様に係る振動プローブを備えるので、計測対象物からの熱に起因する加速度センサの故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇も抑制することができる。
【0021】
上記態様に係る計測装置において、前記振動プローを前記計測対象物に固定するためのブラケットをさらに備えていてもよい。
【0022】
上記態様に係る計測装置のように、ブラケットにより計測対象物に対して振動プローブが固定されている場合には、計測対象物と振動プローブの一端とが常に当接した状態となる。この状態では、計測対象物からの熱が振動プローブの探触棒に伝達されることになるが、上記のように探触棒と振動センサとの間に断熱部材を介挿することにより、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができる。よって、耐熱仕様(高熱に対して耐性を有する)振動センサを用いなくても当該振動センサの故障・破損を抑制することができ、製造コストの上昇を抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
上記の各態様では、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図2】(a)は振動プローブの構成を示す側面図であり、(b)は断熱部材の構成を示す斜視図である。
【
図3】振動プローブの一部構成を示す側面図である。
【
図4】(a)は実施形態に係る振動プローブでの熱の伝わり方を示す断面図であり、(b)は比較例に係る振動プローブでの熱の伝わり方を示す模式図である。
【
図5】従来技術に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0026】
1.計測装置1の構成
本発明の実施形態に係る計測装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
【0027】
図1に示すように、計測装置1は、本体部10と、振動プローブ11と、温度プローブ12と、ケーブル13と、ブラケット14とを備える。本体部10は、筐体と、当該筐体内に収納されたコントローラおよび信号送信部とを有する。本体部10のコントローラは、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有して構成されている。コントローラは、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、振動プローブ11から入力された振動の強度に関する情報と、温度プローブ12から入力された温度に関する情報とを演算処理する。演算処理された信号は、信号送信部からプラントのメインサーバ等に送信(外部出力)される。
【0028】
なお、本実施形態において、本体部10は、振動および温度の測定対象物であるスチームトラップ500から離間した位置に配される。
【0029】
振動プローブ11の先端113aおよび温度プローブ12の先端12aのそれぞれは、スチームトラップ500の外周面500aに当接するように配されている。振動プローブ11および温度プローブ12は、ブラケット14によりスチームトラップ500に対して位置固定されている。
【0030】
ケーブル13は、振動プローブ11および温度プローブ12と本体部10との間を信号接続するように設けられている。なお、本実施形態では、振動プローブ11および温度プローブ12と本体部10との間を有線方式で信号接続することとしているが、本発明では、無線方式で信号接続することも可能である。
【0031】
2.振動プローブ11の構成
振動プローブ11の構成について、
図2および
図3を用いて説明する。
【0032】
図2(a)に示すように、振動プローブ11は、加速度センサ(圧電型加速度センサ)110と、台座111と、断熱部材112と、探触棒113と、複数のビス114とを有する。
図2(a)の引き出し部分に示すように、探触棒113は、中空部113cを有し、肉厚がT1の円筒形状を有する。探触棒113の先端113aがスチームトラップ500の外周面500aに当接する。なお、本実施形態では、ステンレス鋼から形成された探触棒113を採用している。また、
図3に示すように、探触棒113の長さはL1に設定されている。
【0033】
なお、本実施形態に係る振動プローブ11が備える加速度センサ110は、振動センサの一例である。
【0034】
図2(b)に示すように、断熱部材112は、中空部112aを有するとともに、長手方向の両側に開口112b,112cを有する円筒形状を有する。断熱部材112の長さはL2に設定され、肉厚はT2に設定されている。断熱部材112の外周面には、長手方向に沿って4つのネジ孔112dが開けられている。なお、本実施形態では、アルミナセラミックスから形成された断熱部材112を採用している。
【0035】
図3に示すように、断熱部材112に対しては、開口112bから中空部112aに台座111の嵌入部111bが嵌入されている。そして、台座111の嵌入部111bと断熱部材112とは、互いに直に当接した状態でビス114により固定されている。なお、台座111の一端111aには、加速度センサ110が直に当接する状態で固定されている。また、本実施形態では、ステンレス鋼から形成された台座111を採用している。
【0036】
探触棒113の嵌入部113bは、断熱部材112に対して、当該断熱部材112の開口112cから中空部112aに嵌入されている。そして、探触棒113の嵌入部113bと断熱部材112とは、互いに直に当接した状態でビス114により固定されている。
【0037】
図3に示すように、台座111の嵌入部111bと探触棒113の嵌入部113bとは、断熱部材112の中空部112a内において、互いに間隔を空けた状態で配置されるように長さが設定されている。
【0038】
3.振動プローブ11における断熱
振動プローブ11における断熱について、
図4を用いて説明する。なお、
図4は、(a)が本実施形態に係る振動プローブ11での熱の伝わり方を示す断面図であり、(b)が比較例に係る振動プローブ91での熱の伝わり方を示す断面図である。
【0039】
図4(a)に示すように、本実施形態に係る振動プローブ11は、スチームトラップ500の外周面500aに先端113aが当接されているため、スチームトラップ500からの熱が探触棒113を伝ってくる(矢印A1)。
【0040】
しかしながら、探触棒113は、アルミナセラミックスで構成された断熱部材112が加速度センサ110との間に介挿されているため、探触棒113を伝わってきた熱が加速度センサ110へ伝達されるのが抑制される。また、断熱部材112の中空部112aにおいて、探触棒113の嵌入部113aと台座111の嵌入部111bとは間隔を空けた状態で配されているので、探触棒113から台座111へ直接に熱が伝わることも抑制される。よって、本実施形態に係る振動プローブ11では、探触棒113を伝わってきた熱が加速度センサ110へと伝達されるのが抑制される。
【0041】
これに対して、
図4(b)に示すように、比較例に係る振動プローブ91は、加速度センサ(振動センサ)910が台座911の一端に固定され、探触棒913が台座911の他端911bに固定されている。よって、探触棒913を伝わってきた熱が、台座911を通過して加速度センサ910へと伝達される(矢印A2)。このため、比較例に係る振動プローブ91では、スチームトラップからの熱により加速度センサ910が故障・破損してしまうことが考えられる。
【0042】
4.断熱部材112の長さL2および肉厚T2
図2(b)に示したように、本実施形態に係る振動プローブ11の断熱部材112は、長さL2、肉厚T2を有する中空円筒体である。長さL2および肉厚T2の規定方法について、説明する。
【0043】
蒸気および復水(ドレン)の何れか一方が流れるスチームトラップ等の計測対象物においてその振動を計測した場合、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かによって、特定の周波数成分の振動強度が大きく異なり、特に、10kHz付近の振動強度を計測することで、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かを比較的高い精度で判別できることが知られている(特開2014-133948号公報)。
【0044】
そのため、スチームトラップ等の蒸気漏れの診断を行う場合に使用する計測装置1の振動プローブ11については、共振周波数が10kHz付近となるように設計することが重要である。このような知見に基づき、本実施形態に係る振動プローブ11の断熱部材112は、次の関係を満たすように各寸法が規定されている。
f=k2×T2/L2 ・・(式1)
なお、上記の関係式において、“f”は共振周波数(10kHz付近の周波数)であり、“k2”は断熱部材112を構成する材料(アルミナセラミックス)が有する材料係数である。
【0045】
また、本実施形態では、断熱部材112を中空円筒形状を有する部材としたが、この場合の形状係数m2を考慮する場合、次の関係を満たすように各寸法が規定される。
f=k2×m2×T2/L2 ・・(式2)
5.探触棒113の長さL1および肉厚T1
図2(a)および
図3に示したように、本実施形態に係る振動プローブ11の探触棒113は、長さL1、肉厚T1を有する中空円筒体である。
【0046】
探触棒113の各寸法についても、断熱部材112の規定に際しての上記知見に基づき、次の関係を満たすように規定されている。
f=k1×T1/L1 ・・(式3)
なお、上記の関係式において、“k1”は探触棒113を構成する材料(ステンレス鋼)が有する材料係数である。
【0047】
また、本実施形態では、探触棒113についても中空円筒形状を有する部材としたが、この場合の形状係数m1を考慮する場合、次の関係を満たすように各寸法が規定される。
f=k1×m1×T1/L1 ・・(式4)
6.効果
本実施形態に係る計測装置1の振動プローブ11では、探触棒113と加速度センサ110との間に断熱部材112を介挿した構造を採用する。断熱部材112は、アルミナセラミックスを用いて形成されており、探触棒113と加速度センサ110との間で断熱する機能を有する。よって、本実施形態に係る振動プローブ11では、高い耐熱性を有する加速度センサ110を採用しなくても、スチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができる。
【0048】
断熱部材112は、探触棒113から入力された振動を加速度センサ110に伝達することができるので、スチームトラップ500の振動の強度を計測することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る振動プローブ11では、
図2(b)に示したように断熱部材112が中空筒形状を有する。そして、探触棒113の嵌入部113bは、断熱部材112の一方の開口112cから嵌入されて固定され、加速度センサ110が固定された台座111の嵌入部111bは、断熱部材112の他方の開口112bから嵌入されて固定されている。さらに、探触棒113と台座111とは、断熱部材112の中空部112a内において、当該断熱部材112の筒軸方向(長手方向)に互いに間隔を空けて配されている。よって、探触棒113を通じて伝達されてきた熱(スチームトラップ500からの熱)が、台座111に対して直に伝達されるのが抑制され、加速度センサ110に熱が伝達されるのも抑制される。
【0050】
また、本実施形態に係る振動プローブ11では、探触棒113と断熱部材112とが直に当接した状態で固定され、台座111と断熱部材112とが直に当接した状態で固定され、加速度センサ110と台座111とが直に当接した状態で固定されている。よって、探触棒113を通して伝達されてきた振動が断熱部材112および台座111を介して加速度センサ110に伝えられる際の振動の減衰を小さく抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る振動プローブ11では、アルミナセラミックスからなる断熱部材112を備える。アルミナセラミックスは、断熱性に優れるとともに、振動の伝達という観点から優れる。よって、本実施形態に係る振動プローブ11では、計測対象物であるスチームトラップ500からの熱が加速度センサ110に伝達されるのを抑制しながら、スチームトラップ500からの振動の強度を加速度センサ110に良好に伝達することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る計測装置1は、上記のような効果を奏することができる振動プローブ11を備えるので、スチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇も抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る計測装置1のように、ブラケット14を用いてスチームトラップ500に対して振動プローブ11が固定されている場合には、スチームトラップ500と振動プローブ11における探触棒113の先端113aとが常に当接した状態となる(
図1を参照)。この状態では、スチームトラップ500からの熱が振動プローブ11の探触棒113に伝達されることになるが、上記のように探触棒113と加速度センサ110との間に断熱部材112を介挿することにより、スチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができる。よって、耐熱仕様(高い熱に対して耐性をを有する)加速度センサ110を用いなくても当該加速度センサ110の故障・破損を抑制することができ、製造コストの上昇を抑えることもできる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る振動プローブ11および当該振動プローブ11を備える計測装置1では、計測対象物であるスチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇も抑制することができる。
【0055】
[変形例]
詳細な説明を省略したが、上記実施形態に係る計測装置1は、熱電対を有する温度プローブ12を備える。ただし、本発明では、熱電対に代えて、サーミスタ等の他の温度計測用のデバイスを温度プローブに採用することも可能である。
【0056】
上記実施形態では、振動プローブ11における探触棒113および断熱部材112をともに中空円筒体としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、中実の円柱体とすることもできる。また、横断面形状については、円形に限定されるものではなく、多角形状や長円形状(楕円形状を含む)とすることなども可能である。
【0057】
上記実施形態では、探触棒113をステンレス鋼を用いて形成し、断熱部材112をアルミナセラミックスを用いて形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、探触棒113についてもアルミナセラミックスを用いて形成することや、断熱部材112を樹脂材料を用いて形成することなども可能である。
【0058】
上記実施形態では、振動プローブ11と温度プローブ12とを併せ持つ計測装置1を一例として採用したが、本発明は、振動プローブ11を単体として備え、計測対象物の振動の強度だけを計測する装置に適用することも可能である。
【0059】
上記実施形態では、スチームトラップ500を計測対象物の一例としたが、本発明は、スチームトラップ以外の計測対象物の振動を計測する装置に適用することも可能である。
【0060】
上記実施形態では、計測装置1の本体部10が、振動の強度に関する情報と温度に関する情報とを演算処理し、演算処理された信号を外部(例えば、メインサーバ)に送信することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、本体部10の外面の一部に表示部を設けておき、演算結果を作業者の要求に応じて表示部に表示する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 計測装置
11 振動プローブ
110 加速度センサ(振動センサ)
112 断熱部材
113 探触棒