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  • 特開-受圧板及び該受圧板を用いた受圧構造 図1
  • 特開-受圧板及び該受圧板を用いた受圧構造 図2
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  • 特開-受圧板及び該受圧板を用いた受圧構造 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088822
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】受圧板及び該受圧板を用いた受圧構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
E02D17/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200880
(22)【出願日】2020-12-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】301077437
【氏名又は名称】朝日エンヂニヤリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512101121
【氏名又は名称】エーイ-ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】徳野 光弘
(57)【要約】
【課題】 塞ぐ対象の開口部の幅にバラツキが生じ、特に当該開口部の幅が予定よりも広くなっているときに、作業現場でフレキシブルに対応できる受圧板の提供。
【解決手段】 本発明に係る受圧板1は、開口部12を塞ぐ受圧板1であって、該開口部12内に並列して配される第一板部2と第二板部3を備えると共に、該第一・第二板部2・3を保持しつつ上記開口部12の縁部に係合する係合部4とを備え、上記第一板部2及び/又は上記第二板部3を並列方向に沿ってスライド可能に保持し、上記開口部の幅にフレキシブルに対応する構成により、コンクリート打設現場や土留め現場において、適切に受圧構造を構築することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を塞ぐ受圧板であって、該開口部内に並列して配される第一板部と第二板部を備えると共に、該第一・第二板部を保持しつつ上記開口部の縁部に係合する係合部とを備え、上記第一板部及び/又は上記第二板部を並列方向に沿ってスライド可能に保持し、上記開口部の幅にフレキシブルに対応することを特徴とする受圧板。
【請求項2】
上記第一板部は、上記第二板部と隣接する側部に第一オーバーラップ部を設けると共に、上記第二板部は、上記第一板部と隣接する側部に第二オーバーラップ部を設け、上記第一オーバーラップ部と上記第二オーバーラップ部がオーバーラップした状態で上記スライドが可能であることを特徴とする請求項1記載の受圧板。
【請求項3】
上記第一・第二オーバーラップ部の一方を受圧面側で断落ちする継手形状とし、他方を非受圧面側で断落ちする継手形状としたことを特徴とする請求項2記載の受圧板。
【請求項4】
上記第一・第二オーバーラップ部の一方を凸形状とし、他方を凹形状としたことを特徴とする請求項2記載の受圧板。
【請求項5】
上記係合部を上記第一・第二板部の長手方向に沿って複数設けることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の受圧板。
【請求項6】
上記請求項1乃至請求項5の何れかに記載の受圧板でコンクリート型枠又は土留め壁の開口部を塞ぐ受圧構造であって、該開口部の対向する縁部のコンクリート充填空間側又は土留め対象地盤側に上記係合部を係合したことを特徴とする受圧構造。
【請求項7】
上記第一板部と上記第二板部間、上記第一板部と上記開口部の縁部間又は上記第二板部と上記開口部の縁部間に間詰材を充填することを特徴とする請求項6記載の受圧構造。
【請求項8】
上記第一板部と上記第二板部間、上記第一板部と上記開口部の縁部間又は上記第二板部と上記開口部の縁部間をシールすることを特徴とする請求項6記載の受圧構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠や土留め壁の開口部を塞いでコンクリート充填圧や土圧を受圧する受圧板及び該受圧板を用いた残存型枠構造や土留め構造等の受圧構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の受圧板として、下記特許文献1の図6図7において継ぎ板15として示されているものが既知である。当該継ぎ板15は、隣接するH形鋼の下側のフランジ部間に存する開口部を塞ぐものであり、係合部たる上掛け15aによって、対象のフランジ上面に掛け止めして配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4697739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の受圧板においては、受圧板の幅が、開口部の幅、すなわち隣接するH形鋼のフランジ間の幅と同等であれば、適切に受圧構造を構築することができる。
【0005】
しかし、H形鋼のような鋼材は、精密に製造されているとはいえ、フランジの幅等の寸法にバラツキが生ずる場合やフランジが変形している場合等があり、その場合には、開口部の幅にもバラツキが生じてしまい、特に受圧板の幅よりも開口部の幅が広いときに問題となる。
【0006】
このように受圧板の幅よりも開口部の幅が広いときに、従来の受圧板では、受圧板の一側部と一方のフランジとの間、及び、受圧板の他側部と他方のフランジとの間にそれぞれ隙間が生じてしまうため、各隙間をそれぞれ間詰材やシール材で埋める作業が必要となってしまう問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塞ぐ対象の開口部の幅にバラツキが生じ、特に当該開口部の幅が予定よりも広くなっているときに、作業現場でフレキシブルに対応できる受圧板を提供する。加えて該受圧板を用いた受圧構造を提供する。
【0008】
要述すると、本発明に係る受圧板は、開口部を塞ぐ受圧板であって、該開口部内に並列して配される第一板部と第二板部を備えると共に、該第一・第二板部を保持しつつ上記開口部の縁部に係合する係合部とを備え、上記第一板部及び/又は上記第二板部を並列方向に沿ってスライド可能に保持し、上記開口部の幅にフレキシブルに対応する構成により、コンクリート打設現場や土留め現場において、適切に受圧構造を構築することができる。
【0009】
また、上記第一板部は、上記第二板部と隣接する側部に第一オーバーラップ部を設けると共に、上記第二板部は、上記第一板部と隣接する側部に第二オーバーラップ部を設け、上記第一オーバーラップ部と上記第二オーバーラップ部がオーバーラップした状態で上記スライドが可能である構成により、上記開口部の幅に対応しながらも、打設コンクリートや土留め対象地盤の土砂が漏れる隙間の形成を抑止することができる。
【0010】
好ましくは、上記第一・第二オーバーラップ部の一方を受圧面側で断落ちする継手形状とし、他方を非受圧面側で断落ちする継手形状とすることにより、上記第一板部及び/又は上記第二板部のスライドを許容しつつ打設コンクリートや土砂が漏れる隙間の形成を抑止することができる。
【0011】
又は、上記第一・第二オーバーラップ部の一方を凸形状とし、他方を凹形状とすることにより、上記第一板部及び/又は上記第二板部のスライドを許容しつつ打設コンクリートや土砂が漏れる隙間の形成を抑止することができる。
【0012】
また、上記係合部を上記第一・第二板部の長手方向に沿って複数設けることにより、可及的に簡素な構造としながら、確実に且つ安定して上記第一板部及び上記第二板部を保持することができる。
【0013】
また、本発明に係る受圧構造は、上述した受圧板でコンクリート型枠又は土留め壁の開口部を塞ぐ受圧構造であって、該開口部の対向する縁部のコンクリート充填空間側又は土留め対象地盤側に上記係合部を係合した構造により、上記第一板部及び上記第二板部が適切に受圧を行うことができるように保持することができる。
【0014】
上記第一板部と上記第二板部間、上記第一板部と上記開口部の縁部間又は上記第二板部と上記開口部の縁部間に間詰材を充填するか、又はシールすることにより、打設コンクリートや土留め対象地盤の土砂の漏れを有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る受圧板によれば、塞ぐ対象の開口部の幅にバラツキが生じ、特に当該開口部の幅が予定よりも広くなっているときに、作業現場でフレキシブルに対応でき、残存型枠板や土留め板等として好適な部材となる。
【0016】
また、本発明に係る受圧構造によれば、適切な受圧構造を煩雑な工程を経ずに簡便に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る受圧板を残存型枠板として用いる場合の設置例を示す断面図である。
図2】本発明に係る受圧板を残存型枠板として用いる場合の設置例を一部断面して示す平面図である。
図3図1に示す型枠内にコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図4図1で示した設置例の拡大断面図であり、(A)は隙間に間詰材を充填した例を示しており、(B)は隙間をシール材で塞いだ例を示している。
図5】第一板部のみをスライド可能とした場合の構成を示す拡大断面図である。
図6】第一・第二オーバーラップ部を示す説明図であり、(A)は第一・第二オーバーラップ部を継手形状とした例を示し、(B)は第一・第二オーバーラップ部を凹凸形状とした例を示し、(C)は第一・第二オーバーラップ部を凹凸形状とした他例を示している。
図7】本発明に係る受圧板を土留め板として用いる場合を示す斜視図である。
図8】保持板の他例及び長孔若しくは大径孔の他例を示す説明図であり、(A)は受圧板を保持板側から示す斜視図であり、(B)は第一・第二板部に大径孔又は長孔を設けた例を示す拡大断面図であり、(C)は係合部に大径孔又は長孔を設けた例を示す拡大断面図である。
図9】(A)は第一・第二板部を突き合せた状態で設置する例を示す斜視図であり、(B)は同拡大断面図である。また、(C)は開口部が(A)・(B)に示す場合よりも広い場合に第一板部と第二板部を離間させた状態の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る受圧板及び受圧構造の好適な実施例を図1乃至図9に基づき説明する。
【0019】
<受圧板の基本構造>
本発明に係る受圧板1は、型枠構造や土留め構造等における開口部を塞ぐ板状部材であり、基本構造としては、図1乃至図5に示すように、開口部12内に並列して配される第一板部2と第二板部3を備えると共に、該第一・第二板部2・3を保持しつつ上記開口部12の縁部に係合する係合部4とを備える構造を有している。
【0020】
また、本発明に係る受圧板1にあっては、特に、後記するように、係合部4によって第一板部2及び/又は第二板部3を並列方向に沿ってスライド可能に保持し、すなわち第一板部2と第二板部3を互いに接近又は離間できるようにスライドすることができ、開口部12の幅にフレキシブルに対応することができる。
【0021】
<第一板部2、第二板部3及び係合部4(保持手段5含む)の構成>
図1図2に示すように、第一板部2は、板状部材であり、コンクリート充填圧や土圧を受圧する受圧面2aと、該受圧面2aと平行する非受圧面2bを有している。同様に第二板部3も、板状部材であり、受圧面3aと、該受圧面3aと平行する非受圧面3bを有している。
【0022】
これら第一・第二板部2・3は、材質に特に限定はないが、適切な受圧を行う強度を確保するために、木製の他、鋼製、高強度モルタル製、コンクリート製、プラスチック製又は繊維強化プラスチック製の板状部材で構成することが望ましい。
【0023】
なお、本実施例では、図2等において、第一・第二板部2・3を縦長の長板として説明しているが、本発明においてはこれに限らず、第一・第二板部2・3を矩形板とすることや横長の長板とすることも実施に応じ任意である。
【0024】
係合部4は、図1図2に示すように、塞ぐ対象の開口部12の幅よりも長尺の細長形状の部材であり、開口部12の対向する縁部に掛け渡し、当該各縁部に係合部4の各端部をそれぞれ係合する。また、係合部4は、保持手段5を介して、第一・第二板部2・3を、その並列方向にスライド可能に保持する。なお、係合部4は、第一・第二板部2・3が長板の場合には、その長手方向に沿って複数設けて第一・第二板部2・3を安定して保持する。
【0025】
係合部4として、好ましくは、断面L形や断面T形のチャンネル材を用い、基板部4aを第一・第二板部2・3の受圧面2a・3aに添わせると共に開口部12の縁部に係合させる一方、該基板部4aから立設する立壁部4bを打設されたコンクリート又は土留対象地盤内に埋設し、残存型枠又は土留壁の一部となる受圧板1を強固に結合させる。
【0026】
第一・第二板部2・3を保持する保持手段5は、各板部2・3の非受圧面2b・3bをバックアップする保持板5aと、該保持板5aから第一板部2及び係合部4の基板部4aを貫通し係合部4の基板部4aの表面に設けたナット5cと螺合するボルト5bと、同保持板5aから第二板部3及び係合部4の基板部4aを貫通し係合部4の基板部4aの表面に設けたナット5cと螺合するボルト5bとから成る。すなわち、ボルト5bの軸部は保持板5aの貫通孔5d、次いで第一板部2の貫通孔2c又は第二板部3の貫通孔3c、最後に係合部4の基板部4aの貫通孔4cに貫挿され、ナット5cと螺合する。
【0027】
したがって、第一板部2と第二板部3は、それぞれ、保持手段5の保持板5aと係合部4の基板部4a間に挾持され、当該保持板5aは係合部4側に設けられたナット5cと螺合するボルト5bの頭部により固定される。なお、保持板5aは、図8に示すように、第一板部2をバックアップする保持板5aと第二板部3をバックアップする保持板5aとを別々に設けても良い。このようにすることにより、第一板部2及び第二板部3のスライドをスムーズにすることができる。
【0028】
また、図4(A)(B)に示すように、ボルト5bの軸部を貫挿する第一板部2の貫通孔2cの内径をボルト5bの軸部の外径よりも大径とするか、長孔形状とすることにより、第一板部2が第二板部3との並列方向に沿ってスライド可能に保持される。同様に、第二板部3の貫通孔3cの内径をボルト5bの軸部の外径よりも大径とするか、長孔形状とすることにより、第二板部3が第一板部2との並列方向に沿ってスライド可能に保持される。
【0029】
本発明にあっては、既述のように、第一板部2と第二板部3の双方をスライド可能にする他、一方のみをスライド可能にすることもできる。例えば、図5に示すように、第一板部2のみをスライド可能に保持し、第二板部3の貫通孔3cの内径をボルト5bの軸部外径と略同等にして該第二板部3を固定し保持する構造としても良い。
【0030】
また、図8の例示のように、第一板部2をバックアップする保持板5aと第二板部3をバックアップする保持板5aとを別々に設けた場合には、図8(B)のように、第一板部2の貫通孔2cをボルト5bの軸部の外径より大径の孔又は長孔形状にして、第一板部2をスライド可能にすることができる。同様に、第二板部3の貫通孔3cをボルト5bの軸部の外径より大径の孔又は長孔形状にして、第二板部3をスライド可能にすることができる。
【0031】
又は、図8(C)のように、係合部4の基板部4aに設けた貫通孔4cをボルト5bの軸部の外径より大径の孔又は長孔形状にして、第一板部2及び/又は第二板部3をスライド可能にしても良い。
【0032】
さらに、図9に示すように、単一の保持板5aと単一のボルト5bで第一板部2と第二板部3の双方を保持し、図9(B)・(C)に示すように、保持板5aの幅の範囲で第一板部2及び/第二板部3をスライド可能とすることもできる。この場合、第一板部2にボルト5bの軸部を受け入れる半円状スリット2dを設けると共に、第二板部3にボルト5bの軸部を受け入れる半円状スリット3dを設け、第一板部2と第二板部3を突き合せることをも可能とする。
【0033】
したがって、図4図5図8図9の何れの場合でも、第一板部2と第二板部3を相対的にスライドすることができ、開口部12の幅に対応することができる。
【0034】
また、図4図5図8図9に示したように、開口部12の幅に対応して第一板部2と第二板部3とが離間し、両者間に隙間Sが生じた場合には、必要に応じて、図4(A)・図8(B)・図8(C)に示すように、隙間Sに間詰材7を充填して打設コンクリート又は土砂の漏れを防止するか、図4(B)・図5に示すように、隙間Sをシール材8で塞いで打設コンクリートや土砂の漏れを確実に防止する。なお、間詰材7及びシール材8の材質には特に限定はなく、打設コンクリートや土砂が隙間Sを通じて漏れ出さないようにすることができればよい。
【0035】
また、本発明に係る受圧板1にあっては、図6に示すように、第一板部2における第二板部3と隣接する側部に第一オーバーラップ部6Aを設けると共に、第二板部3における第一板部2と隣接する側部に第二オーバーラップ部6Bを設け、当該第一オーバーラップ部6Aと第二オーバーラップ部6Bがオーバーラップした状態で第一板部2及び/又は第二板部3をスライドさせることができる。
【0036】
すなわち、第一板部2の第一オーバーラップ部6Aと、第二板部3の第二オーバーラップ部6Bとが、受圧面2a・3aと直交する方向においてオーバーラップすることにより、隙間Sの発生を防いで打設コンクリートや土砂の漏れを抑止すると共に、独立して並列する第一板部2と第二板部3による安定した受圧を担保することができる。
【0037】
オーバーラップ構造としては、図6(A)に示すように、第一板部2の側部を受圧面2a側で断落ちする継手形状として第一オーバーラップ部6Aとし、第二板部3の側部を非受圧面3b側で断落ちする継手形状として第二オーバーラップ部6Bとすることができる。具体的には図示しないが、上述とは逆の構成、つまり第一板部2の側部を非受圧面2b側で段落ちする継手形状として第一オーバーラップ部6Aとし、第二板部3の側部を受圧面3a側で段落ちする継手形状として第二オーバーラップ部6Bとしても良い。
【0038】
又は、図6(B)・(C)に示すように、第一板部2の側部を凸形状にして第一オーバーラップ部6Aとし、第二板部3の側部を凹形状にして第二オーバーラップ部6Bとすることができる。凹凸形状に特に限定はないが、図6(B)・(C)の例示のように、凹部分と凸部分が互いに対応する相似形であれば良い。具体的には図示しないが、上述とは逆の構成、つまり第一板部2の側部を凹形状として第一オーバーラップ部6Aとし、第二板部3の側部を凸形状として第二オーバーラップ部6Bとしても良い。
【0039】
<本発明に係る受圧板を用いた受圧構造>
次に、本発明に係る受圧板1を用いた受圧構造について説明する。なお、図1乃至図3は本発明に係る受圧板1を残存型枠板として用いる受圧構造例を示しており、図7は本発明に係る受圧板1を土留め板として用いる受圧構造例を示している。
【0040】
≪残存型枠構造としての受圧構造≫
図1図2は、橋梁のコンクリート床版を形成する場合において、橋幅方向に並列した複数本の鋼桁としてのH形鋼11で形成されたコンクリート型枠の開口部12、つまり該各H形鋼11の第二フランジ11b間に開設された開口部12を本発明に係る受圧板1で塞いだ状態を示している。なお、図中の11cは第一フランジ11aと第二フランジ11bとを繋ぐウェブである。
【0041】
換言すると、図1図2は、コンクリート床版用の型枠の開口部12におけるコンクリート充填空間側の対向する縁部、つまり隣接するH形鋼11の第二フランジ11bのコンクリート充填空間側の縁部に受圧板1の各係合部4を係合し、該受圧板1をH形鋼11の第二フランジ11b間に架橋した状態である。
【0042】
次いで、各H形鋼11の第一フランジ11a間の空間を通じてコンクリートを打設すると、図3に示すように、該打設コンクリート21の充填圧を第一板部2の受圧面2a及び第二板部3の受圧面3aで受圧しつつ、該打設コンクリート21内に係合部4の立壁部4bが埋設される。第一板部2と第二板部3間に隙間Sが生じている場合には、既述の如く、必要に応じて、隙間Sに間詰材7を充填するか、隙間Sをシール材8で塞ぐことができる。
【0043】
≪土留め構造としての受圧構造≫
図7の斜視図は、間隔を置いて複数立設された杭としてのH形鋼11で形成された土留め壁の開口部12、つまり該各H形鋼11の第二フランジ11b間に開設された開口部12を本発明に係る受圧板1で塞いで、土圧を第一板部2の受圧面2a及び第二板部3の受圧面3aで受圧し、土留め対象地盤22に対して土留めを行っている状態を示している。なお、図中の11cは第一フランジ11aと第二フランジ11bとを繋ぐウェブである。
【0044】
この土留め構造としての受圧構造においても、残存型枠構造と同様に、土留め対象地盤22内に係合部4の立壁部4bが埋設される。また、第一板部2と第二板部3間に隙間Sが生じている場合には、既述の如く、必要に応じて、隙間Sに間詰材7を充填するか、隙間Sをシール材8で塞ぐことができる。
【0045】
以上のとおり、本発明に係る受圧板1によれば、塞ぐ対象の開口部12の幅にバラツキが生じ、特に当該開口部12の幅が予定よりも広くなっているときに、並列配置された第一板部2と第二板部3を離間させることにより作業現場でフレキシブルに対応でき、残存型枠板や土留め板等として好適な部材となる。また、第一板部2と第二板部3の隣接する側部をオーバーラップ構造にすれば、上記のように、第一板部2と第二板部3を離間させたときでも間詰材やシール材を用いずに打設コンクリートや土砂の漏れを防止できる。
【0046】
また、本発明に係る受圧構造によれば、適切な受圧構造を煩雑な工程を経ずに簡便に構築することができる。
【0047】
なお、残存型枠構造としての受圧構造については、図1乃至図3では橋梁のコンクリート床版を形成する場合に基づき説明したが、本発明に係る受圧板1を残存型枠板として用いることができれば、特に限定はない。
【符号の説明】
【0048】
1…受圧板、2…第一板部、2a…受圧面、2b…非受圧面、2c…貫通孔、2d…半円状スリット、3…第二板部、3a…受圧面、3b…非受圧面、3c…貫通孔、3d…半円状スリット、4…係合部、4a…基板部、4b…立壁部、4c…貫通孔、5…保持手段、5a…保持板、5b…ボルト、5c…ナット、5d…貫通孔、6A…第一オーバーラップ部、6B…第二オーバーラップ部、7…間詰材、8…シール材、S…隙間、11…H形鋼、11a…第一フランジ、11b…第二フランジ、11c…ウェブ、12…開口部、21…打設コンクリート、22…土留め対象地盤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
コンクリート型枠又は土留め壁の開口部を塞ぐ受圧板であって、該開口部内に並列して配される第一板部と第二板部を備えると共に、該第一・第二板部を保持しつつ上記開口部の縁部に係合する係合部とを備え、上記第一板部及び/又は上記第二板部を並列方向に沿ってスライド可能に保持し、上記開口部の幅にフレキシブルに対応することを特徴とする受圧板。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
要述すると、本発明に係る受圧板は、コンクリート型枠又は土留め壁の開口部を塞ぐ受圧板であって、該開口部内に並列して配される第一板部と第二板部を備えると共に、該第一・第二板部を保持しつつ上記開口部の縁部に係合する係合部とを備え、上記第一板部及び/又は上記第二板部を並列方向に沿ってスライド可能に保持し、上記開口部の幅にフレキシブルに対応する構成により、コンクリート打設現場や土留め現場において、適切に受圧構造を構築することができる。