(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088830
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】底面給水育苗方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20220608BHJP
A01G 27/06 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
A01G9/02 F
A01G27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200888
(22)【出願日】2020-12-03
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】520472778
【氏名又は名称】千賀 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】千賀 秀幸
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NC24
2B327NC37
2B327NC44
2B327NC56
2B327ND03
2B327UA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】給水マット等への根の絡みつきを防止し、耐久性を向上させる。
【解決手段】底面給水育苗方法が、上下方向に開口が設けられ、培地が収容される底面給水用育苗ポット6と、底面給水用トレイ2を用いて、育苗マット5を組み合わせて底面給水し、育苗マット5が、底面給水用トレイの上に敷設される第1底面給水マット3と、この第1底面給水マット3の上に敷設され、硫化銅を含む透水性の第2底面給水マット4と、から構成され、第2底面給水マット4の上に底面給水用育苗ポット6を載置して育苗することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に開口が設けられ、培地が収容される底面給水用ポットと、底面給水用トレイを用いて、育苗マットを組み合わせて底面給水をする底面給水育苗方法において、
前記育苗マットが、
前記底面給水用トレイの上に敷設される、厚さ1~5mmで目付量100~400g/m2の第1底面給水マットと、
該第1底面給水マットの上に敷設され、硫化銅を含む、厚さ0.1~1mmで目付量30~150g/m2の第2底面給水マットと、から構成され、
前記第2底面給水マットの上に前記底面給水用ポットを載置して育苗することを特徴とする底面給水育苗方法。
【請求項2】
第2底面給水マットがナイロン製不織布である請求項1の底面給水育苗方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は底面給水育苗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す発明は、底面給水用ポットと、底面給水用トレイを組み合わせて、炭そ病の罹病を回避して、花芽分化促進を可能とする。そのための解決手段として、この発明は、ピートモス、籾殻くん炭、パーライトを主要な材料としてなる培地の周囲を不織布で包み、上下を開放した培地がむき出しになった底面給水用ポットであって、底面給水用ポットを、底面給水用トレイ上の育苗マットと組み合わせて底面給水をすることで、炭素病を回避し、花芽分化を促進することを最も主要な特徴とする。
【0003】
この発明の底面給水用ポットと底面給水用トレイに、給水用マットと根切マットを併用した給水トレイで、鉢受け及び挿し苗育苗し、底面からの給水のみで育苗できる。この育苗法では、底面給水用ポットと底面給水用トレイを使用することで特に大きな施設を要することなくあらゆる場所での育苗が容易になり、炭そ病を回避できる。根切マットにより、根が厚手の不織布へ侵入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1では、
図5に示す通り、底面給水用ポットの底面で根が捲きついたり、根がポットの底面から周囲に延伸して、根切マットの上部に広がること、隣接するポットからの根同士が絡み合うことを防止できない。底面給水用ポットの根への病気の蔓延を有効に防止する手段がなかった。底面給水用ポットを移動させる場合、根を切断せざるを得ず、根を傷める為、根からの病気を回避出来なかった。ポットの底部で直根が捲きつくので、苗の活着力が弱いという問題がある。給水マットや根切シートに雑菌や青苔が繁殖するおそれもある。給水マットや根切マットにも根が絡みつき、毎年更新する必要があり、その耐久性の低下やコスト高の問題があった。
【0006】
本発明は、苗の根の絡み合いに起因する弊害の防止、細根による苗の活着力の増大、雑菌等の繁殖を防止すること、マットの耐久性やコスト高を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、上下方向に開口が設けられ、培地が収容される底面給水用ポットと、底面給水用トレイを用いて、育苗マットを組み合わせて底面給水をする底面給水育苗方法において、前記育苗マットが、前記底面給水用トレイの上に敷設される、厚さ1~5mmで目付量100~400g/m2の第1底面給水マットと、該第1底面給水マットの上に敷設され、硫化銅を含む、厚さ0.1~1mmの第2底面給水マットと、から構成され、前記第2底面給水マットの上に前記底面給水用ポットを載置して育苗することを特徴とする底面給水育苗方法である。
【0008】
第1底面給水マットの厚さが1mmを下回ると、保水力が不足し、5mmを超えると、保水量が多すぎ、コストが増大する。目付量が100g/m2を下回ると、保水力が不足し、400g/m2を超えると、保水量が過剰となり、コストが増大する。第2底面給水マットの厚さが0.1mm以下になると、強度が低下し、1mm以上になると、細根が不十分となり、定植後の苗の活着が弱くなる。
【0009】
第1底面給水マットは、ポリエステル製の不織布、これとネット等を複合化した複合一体構造の不織布等が例示される。第2底面給水マットは、強度の面からは、ナイロン製不織布が好ましく、これとネット等を複合化した複合一体構造の不織布等が例示される。底面給水マットの耐久性が高くなる。
【発明の効果】
【0010】
底面給水用ポットの底面から根が周囲に延伸せず、第2底面給水マットの上部に広がらず、隣接するポットからの根同士が絡み合うことを防止できる。根がポットの外へ出られないため、ポットの培地に植えられた苗の直根がポットの底部まで伸びて止まり、ポット内の底部で直根が捲くことを防止でき、細根が底から上方に向かって、広がり延び出すことから、細根による苗の活着力が増大する。苗の根への病気の蔓延を有効に防止できる。底面給水用ポットを移動させる場合、根を切断する必要がなく、根からの病気を防止できる。第1底面給水マットに雑菌や青苔が繁殖することを防止できる。育苗マットの耐久性の向上やコスト低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の底面給水育苗方法の実施方法を示した斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の底面給水育苗方法の実施方法を示した部分断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の底面給水育苗方法の実施方法を示した斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態の底面給水育苗方法の実施方法により育苗された苗を示す斜視図である。
【
図5】従来の底面給水育苗方法の実施方法により育苗された苗の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の底面給水育苗方法の実施方法は、
図1~
図4に示す通り、底面給水装置1から底面給水用トレイ2(以下、トレイ2という。)に水を供給し、第1底面給水マット3と第2底面給水マット4とから構成される育苗マット5を介して、底面給水用育苗ポット6(以下、ポット6という。)に収容された培地に植設された苗7に底面から給水をする底面給水育苗方法である。本実施形態では苺苗の例で説明する。底面給水装置1は、水を供給する給水パイプ11、給水パイプ11からの水をトレイ2に供給する滴下チューブ12、及び給水ポンプ(図示略)等を備えている。架台8の上に水受け箱9が載置され、この水受け箱9の上にトレイ2が設置される。以下、各要素を説明する。
【0013】
トレイ2におけるポット6の数は適宜数、例えば、32~40個程度とする。
【0014】
育苗マット5が、底面給水用トレイ2の上に敷設される、厚さ1~5mmで目付量100~400g/m2のポリエステル製不織布である第1底面給水マット3と、第1底面給水マット3の上に敷設され、硫化銅を含む、厚さ0.1~1mmで目付量30~150g/m2のナイロン製不織布である第2底面給水マット4と、から構成される。
【0015】
第1底面給水マット3は、一般的な底面給水マットが挙げられ、例えば、ポリエステル繊維製が好ましく、ネット等を複合化した一体構造としてもよい。第1底面給水マット3として、例えば、布帛が保水層と給水拡散層の2層からなり、給水拡散層側に抗菌剤が固着され、給水拡散層の上面と第2底面給水マット4の裏面とが当接し、給水拡散層から第2底面給水マット4に水を供給する。給水拡散層側に銀や銅を担持させてもよいが、限定されるわけではない。第2底面給水マット4は、例えばナイロン製の不織布が好適ではあるが、材料や材質は適宜選択できる。
【0016】
ポット6は上下方向に開口が設けられ、培地が収容され、苗7が植えられている。ポット6は市販品で十分であるが、専用のものでもよい。
【0017】
底面給水に適したポット6は、トレイ2の上に置いて培地に水分を含ませることで、培地がポット6から落ちないようにすることが出来る。この培地の条件を満たすものであれば適宜の材料でよい。ポット6から根が延伸しないために、育苗マット5を使用する。
【0018】
底面給水育苗方法は、第2底面給水マット4の上に底面給水用育苗ポット6を載置して育苗することを特徴とし、水は第1底面給水マット3及び第2底面給水マット4を介してポット6の底面に水を供給する。排水は従来技術に従うので、説明は省略する。育苗方法の手順については従来技術に従うので、説明は省略する。
【0019】
底面給水育苗方法において、第2底面給水マット4の硫化銅の作用によって、根がポット6の外へ出られないため、ポット6の培地に植えられた苗7の直根が下へ伸びて止まり、細根が上方に向かって、延び出すことから、ポット6内の底部で直根が捲くことを防止できるので、苗7の活着力が増大する。第2底面給水マット4の厚さと第1底面給水マット3の目付量の組み合わせが適正なため、育苗マット5の素早い湿りと素早い乾きを実現できる。
【0020】
底面給水育苗方法において、トレイ2に供給される水が第1底面給水マット3に供給されて保水され、この第1底面給水マット3から第2底面給水マット4に水が供給され、第2底面給水マット4からポット6の底面に供給される。第2底面給水マット4の硫化銅の作用によって、ポット6の底面から根が周囲に延伸せず、第2底面給水マット4の上部に広がらず、隣接するポット6からの根同士が絡み合うことを防止できる。苗7の根への病気の蔓延を有効に防止できる。ポット6を移動させる場合、根を切断する必要がなく、根からの病気を防止できる。育苗マット5に雑菌や青苔が繁殖することを防止できる。育苗マット5の耐久性の向上やコスト低減が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の底面給水育苗方法は、育苗の病気の防止、育苗効率の向上に資するので、農業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0022】
1 :底面給水装置
2 :底面給水用トレイ
3 :第1底面給水マット
4 :第2底面給水マット
5 :育苗マット
6 :底面給水用育苗ポット
7 :苗
8 :架台
9 :水受け箱
11 :給水パイプ
12 :水滴チューブ