(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088831
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220608BHJP
G01B 9/02 20220101ALI20220608BHJP
【FI】
G01B11/00 G
G01B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200889
(22)【出願日】2020-12-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名:公益社団法人応用物理学会、刊行物名:2020年第81回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集(2020 オンライン開催)8p-Z19-7、発行年月日:2020年8月26日 集会名:2020年第81回応用物理学会秋季学術講演会(オンライン開催)、主催:公益社団法人応用物理学会、開催日:2020年9月8日~11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的先端研究開発支援事業、メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出、「内耳による音のナノ振動の受容・応答機構の解明と難聴治療への展開」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】崔 森悦
(72)【発明者】
【氏名】日比野 浩
(72)【発明者】
【氏名】任 書晃
(72)【発明者】
【氏名】太田 岳
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064EE05
2F064FF01
2F064FF07
2F064FF08
2F064GG02
2F064GG23
2F064GG33
2F064GG37
2F064GG55
2F064HH01
2F064HH06
2F065AA02
2F065AA06
2F065BB01
2F065BB21
2F065FF52
2F065GG04
2F065GG21
2F065HH09
2F065HH13
2F065JJ01
2F065JJ09
2F065JJ23
2F065LL02
2F065LL33
2F065LL35
2F065LL37
2F065NN06
2F065NN08
(57)【要約】
【課題】測定対象物の構造とその動きとを高周波数且つ高分解能で測定する。
【解決手段】光コム生成装置12は、レーザ光を周波数ν
iの周波数変調信号S
iで変調して、周波数ν
i間隔で並んだ周波数成分を含む光コムを生成する。光学装置15は、光コムを、干渉板152と1/8λ波長板154を通して測定対象物3に照射し、反射した光コムと干渉板152で反射した光コムとを干渉させる。1/8λ波長板154は、光コムが干渉板152と測定対象物3の間を往復する間に、S偏光とP偏光との間にπ/2の位相差を与える。情報処理装置17は、P偏光の干渉ピークの強度IとS偏光の干渉ピークの強度Qを検出し、周波数ν
iと干渉次数に基づいて、反射面までの距離をμmオーダで求める。情報処理装置17は、信号強度IとQから、反射面までのズレをnmオーダで求め、ズレの時間変化から、反射面の振動をnmオーダで求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔が周期的に変動する複数の周波数成分を含む光コムを生成する光コム生成部と、
前記光コム生成部により生成された光コムを測定対象物と基準面とに出射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準面で反射した光コムとを干渉させ、干渉信号を生成する光学装置と、
干渉信号に含まれる干渉ピークのエンベローブの強度を求める検出装置と、
前記検出装置により検出された強度に基づいて、基準位置から測定対象物の反射面までの距離を求める位置検出装置と、
を備える測定システム。
【請求項2】
前記検出装置は、干渉信号を第1の干渉信号と第1の干渉信号とは位相がπ/2ずれた第2の干渉信号とに分離する分離手段と、第1の干渉信号の強度と第2の干渉信号の強度とを求める手段と、を備え、
前記位置検出装置は、第1の干渉信号の強度と第2の干渉信号の強度との比に基づいて、基準位置から反射面までの距離を求める、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記検出装置は、光コムをP偏光成分とS偏光成分を含む直線偏光にする手段と、光コムのP偏光成分とS偏光成分の一方と他方の間にπ/2の位相差を与える手段と、P偏光成分による干渉信号の強度とS偏光成分による干渉信号の強度とを求める手段と、を備え、
前記位置検出装置は、P偏光成分とS偏光成分のうち、位相が進んでいる方の偏光成分による干渉信号の強度で位相が遅れている方の偏光成分による干渉信号の強度を除算し、商のtan-1を求めることにより位相を求め、求めた位相に基づいて、基準位置から反射面までの光コムを構成する光の位相を求める、
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記位置検出装置は、干渉信号に含まれている干渉ピークのエンベローブの強度の変化をモニタし、モニタした強度のうちで最大のもの又は最小のものを求め、最大の強度又は最小の強度に基づいて、反射面の位置を求める、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項5】
前記位置検出装置は、求めた反射面の位置の時系列から、反射面の振動の振幅と周波数を求める手段を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項6】
干渉信号に含まれている干渉ピークについて、光コムの周波数成分の間隔周波数と干渉次数とに基づいて、反射面までの光路長差を求める光路長差検出装置、
をさらに備える請求項1から5のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項7】
前記光路長差検出装置は、異なった測定タイミングで得られた光路長差から、反射面の位置の分布を求める手段を備える、
請求項6に記載の測定システム。
【請求項8】
前記光路長差検出装置は、光路長差をμmオーダで求め、前記位置検出装置は、基準位置から反射面までの距離をnmオーダで求める、
請求項6又は7に記載の測定システム。
【請求項9】
間隔が周期的に変動する複数の周波数成分を含む光コムを生成する光コム生成部と、
前記光コム生成部により生成された光コムを測定対象物と基準面とに出射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準面で反射した光コムとを干渉させ、干渉信号を生成する光学装置と、
干渉信号に含まれている干渉ピークについて、光コムの周波数成分の間隔周波数と干渉次数とに基づいて、反射面までの光路長差を求める光路長差検出装置と、
異なったタイミングで取得された光路長差に基づいて、反射面の位置の分布を求める手段と、
を備える測定システム。
【請求項10】
前記光コム生成部は、隣接する2つの周波数成分の中心周波数の間隔周波数νiが、νi=νa+νmcos(2πνst)で表される光コムを生成する、
νa:第1の周波数
νm:最大周波数偏位
νs:第2の周波数
t:時間
請求項1から9のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項11】
前記光コム生成部は、
レーザ光を出射する光源装置と、
第1の周波数の第1の信号を、第2の周波数の第2の信号により周波数変調した第3の周波数の第3の信号を生成する装置と、
前記光源装置からのレーザ光を第3の信号により変調し、第3の周波数の間隔で並んだ複数の周波数成分を含む光コムを生成する光変調装置と、
を備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項12】
複数の周波数成分を有する光コムを生成し、
生成した光コムを測定対象物に照射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準光とを干渉させて干渉信号を生成し、
干渉信号に含まれている干渉ピークのエンベローブの強度に基づいて、基準位置から反射面までの距離を求める、
測定方法。
【請求項13】
間隔が周期的に変動する複数の周波数成分を含む光コムを測定対象物と基準面とに出射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準面で反射した光コムとを干渉させ、干渉信号を生成し、
干渉信号に含まれている干渉ピークについて、光コムの周波数成分の間隔周波数と干渉次数とに基づいて、測定対象物の反射面までの光路長差を求め、
異なったタイミングで取得された光路長差に基づいて、測定対象物の反射面の位置の分布を求める、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メカノバイオロジーの観点から、生体資料などの測定対象物の表面構造、内部構造、及び断面構造と、そのナノメートルレベルの領域における高速で微小な動きとを検出し、生体のさまざまな動きを解明したいという要請が高まっている。例えば、内耳感覚上皮帯の振動、鼓膜の振動、骨伝導、各種鞭毛の動き等である。このための一方式として、ドップラーシフト法が知られている。ドップラーシフト法は、測定対象物の振動などの動きの測定に適する。特許文献1と2は、ドップラーシフト法の一例を開示する。
【0003】
また、光の干渉性を利用して試料内部の構造を撮影する技術としてOCT(Optical Coherence Tomograph)法も知られている。OCT法は、参照ミラーを動かしスキャンを行うTD(Time Domain)-OCT法と、参照ミラーを掃引する代わりに、フーリエ変換により深さ情報を得るFD(Fourier Domain)-OCT法とに分類される。FD-OCTは、さらに、広帯域光源を用い、得られたスペクトルをフーリエ変換することで深さ情報を得るSD(Spectrum Domain)-OCT法と、波長掃引レーザを用い、得られたスペクトルをフーリエ変換することで深さ情報を得るSS(Swept Source)-OCT法とに分類される。特許文献3は、SD-OCT法の一例を、特許文献4は、SS-OCT法の応用例を開示する。
【0004】
ドップラーシフト法及びFD-OCT法は、参照ミラーを動かすため、サンプリング周波数が1kHz程度であり、高速の動きの測定が困難である。一方、FD-OCT法は、3MHz程度までの動きの測定を可能とする。しかし、この方式では、測定対象物の構造を測定できない。また、これらの方法では、測定のために高速フーリエ変換(FFT)処理が必要であり、演算の処理負担が重く、センサの応答速度及び波長スキャン速度による制限がある。このため、主に断層画像イメージングに特化しており、高速化の目指す目標もリアルタイムイメージングが主眼である。このため、測定対象物の高速振動などの動きの検出には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-061255号公報
【特許文献2】特開2010-261911号公報
【特許文献3】特開2015-169650号公報
【特許文献4】特開2014-228473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、測定対象物の構造とその動きとをより高周波数でより高い分解能で測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる測定システムは、
間隔が周期的に変動する複数の周波数成分を含む光コムを生成する光コム生成部と、
光コム生成部により生成された光コムを測定対象物と基準面とに出射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準面で反射した光コムとを干渉させ、干渉信号を生成する光学装置と、
干渉信号に含まれる干渉ピークのエンベローブの強度を求める検出装置と、
検出装置により検出された強度に基づいて、基準位置から測定対象物の反射面までの距離を求める位置検出装置と、
を備える。
【0008】
検出装置は、例えば、干渉信号を第1の干渉信号と第1の干渉信号とは位相がπ/2ずれた第2の干渉信号とに分離する分離手段と、第1の干渉信号の強度と第2の干渉信号の強度とを求める手段と、を備え、位置検出装置は、例えば、第1の干渉信号の強度と第2の干渉信号の強度との比に基づいて、基準位置から反射面までの距離を求める。
【0009】
例えば、検出装置は、光コムをP偏光成分とS偏光成分を含む直線偏光にする手段と、光コムのP偏光成分とS偏光成分の一方と他方の間にπ/2の位相差を与える手段と、P偏光成分による干渉信号の強度とS偏光成分による干渉信号の強度とを求める手段と、を備え、位置検出装置は、P偏光成分とS偏光成分のうち、位相が進んでいる方の偏光成分による干渉信号の強度で位相が遅れている方の偏光成分による干渉信号の強度を除算し、商のtan-1を求めることにより位相を求め、求めた位相に基づいて、基準位置から反射面までの光コムを構成する光の位相を求める。
【0010】
例えば、位置検出装置は、干渉信号に含まれている干渉ピークのエンベローブの強度の変化をモニタし、モニタした強度のうちで最大のもの又は最小のものを求め、最大の強度又は最小の強度に基づいて、反射面の位置を求める。
【0011】
位置検出装置は、求めた反射面の位置の時系列から、反射面の振動の振幅と周波数を求める手段を備えてもよい。
【0012】
干渉信号に含まれている干渉ピークについて、光コムの周波数成分の間隔周波数と干渉次数とに基づいて、反射面までの光路長差を求める光路長差検出装置を備えても良い。
【0013】
光路長差検出装置は、異なった測定タイミングで得られた光路長差から、反射面の位置の分布を求める手段を備えてもよい。
【0014】
例えば、光路長差検出装置は、光路長差をμmオーダで求め、位置検出装置は、基準位置から反射面までの距離をnmオーダで求める。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる測定システムは、
間隔が周期的に変動する複数の周波数成分を含む光コムを生成する光コム生成部と、
光コム生成部により生成された光コムを測定対象物と基準面とに出射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準面で反射した光コムとを干渉させ、干渉信号を生成する光学装置と、
干渉信号に含まれている干渉ピークについて、光コムの周波数成分の間隔周波数と干渉次数とに基づいて、反射面までの光路長差を求める光路長差検出装置と、
異なったタイミングで取得された光路長差に基づいて、反射面の位置の分布を求める手段と、
を備える。
【0016】
光コム生成部は、例えば、隣接する2つの周波数成分の中心周波数の間隔(間隔周波数)νiが、νi=νa+νmcos(2πνst)で表される光コムを生成する。νa:第1の周波数、 νm:最大周波数偏位、 νs:第2の周波数、 t:時間。
【0017】
光コム生成部は、例えば、レーザ光を出射する光源装置と、第1の周波数の第1の信号を、第2の周波数の第2の信号により周波数変調した第3の周波数の第3の信号を生成する装置と、光源装置からのレーザ光を第3の信号により変調し、第3の周波数の間隔で並んだ複数の周波数成分を含む光コムを生成する光変調装置と、を備える。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点にかかる測定方法は、
複数の周波数成分を有する光コムを生成し、
生成した光コムを測定対象物に照射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準光とを干渉させて干渉信号を生成し、
干渉信号に含まれている干渉ピークのエンベローブの強度に基づいて、基準位置から反射面までの距離を求める。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点にかかる測定方法は、
間隔が周期的に変動する複数の周波数成分を含む光コムを測定対象物と基準面とに出射し、測定対象物の反射面で反射した光コムと基準面で反射した光コムとを干渉させ、干渉信号を生成し、
干渉信号に含まれている干渉ピークについて、光コムの周波数成分の間隔周波数と干渉次数とに基づいて、測定対象物の反射面までの光路長差を求め、
異なったタイミングで取得された光路長差に基づいて、測定対象物の反射面の位置の分布を求める。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる測定システムと測定方法によれば、測定対象物の構造とその動きとを、高周波数で高分解能で測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる測定システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示したスキャン信号生成装置が生成するスキャン信号S
sの電圧波形を例示する図である。
【
図3】
図1に示す光源装置が出力するレーザ光の周波数と波長を例示する図である。
【
図4】
図1に示す光コム生成装置の構造を例示する図である。
【
図5】(A)は
図1に示す光変調装置で生成される狭帯域の光コムの構成を例示し、(B)はそのスペクトル分布を例示する図である。
【
図6】(A)は
図1に示す高非線形シフトファイバから出力される広帯域の光コムの構成を例示し、(B)はそのスペクトル分布を例示する図である。
【
図7】(A)と(B)は、スキャン信号に従って、光コムの周波数間隔が変化する様子を説明する図である。
【
図8】
図1に示した測定システムにおいて用いられる光コム干渉法の原理を示す図であり、(A)は干渉信号に発生する干渉ピークのエンベローブを示す図、(b)はエンベローブのピークの強度と位相αとの関係を例示する図である。
【
図9】距離を変数とするときの干渉信号の例を示す図である。
【
図10】変調周波数を変数とするときの干渉信号の例を示す図である。
【
図11】変調周波数と干渉次数と光路長差との関係を示す図である。
【
図12】(A)と(B)は、光路長と光コムを構成する光の位相との関係を示す図である。
【
図13】(A)測定対象物の例を示す図、(B)干渉信号の干渉ピークのエンベローブの例を示す図、(C)エンベローブの強度に対応する位相を例示する図である。
【
図14】測定対象物の微小振動の振幅と周期を求める手法を説明するための図である。
【
図15】
図1に示すデータ解析装置が実行する干渉データ解析処理のフローチャートである。
【
図16】
図1に示すデータ解析装置が実行する分布解析処理のフローチャートである。
【
図17】
図1に示すデータ解析装置が実行する微小振動解析処理のフローチャートである。
【
図18】
図1に示した測定システムの動作実験のための実験系を例示する図である。
【
図19】(A)~(C)は実施例1を説明するための波形図である。
【
図20】(A)~(C)は実施例2を説明するための波形図である。
【
図21】(A)、(B)は実施例2を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態にかかる測定システムと測定方法を図面を参照しつつ説明する。
以下の実施の形態において、同一の構成部分および数値には同一の符号を付す。なお、図面において、理解を容易にするため、説明に不要な構成要素を省略することがある。
【0023】
本実施の形態の測定システム1は、測定対象物の振動と断層とを同時に計測する機能を有し、
図1に示すように、RF信号生成装置11、光コム生成装置12、偏波コントローラ13、サーキュレータ14、光学装置15,光信号処理装置16および情報処理装置17を備える。
【0024】
RF信号生成装置11は、搬送波信号生成装置110、スキャン信号生成装置112および周波数変調装置114を備え、光コムを生成するためにレーザ光を変調する周波数変調信号Siを生成する。
【0025】
光コム生成装置12は、光源装置120、光変調装置122、光増幅装置124および高非線形シフトファイバ126を備え、広帯域光コムを生成する。
【0026】
偏波コントローラ13は、光コム生成装置12により生成された広帯域光コムを構成する光を直線偏光に変換する。
【0027】
サーキュレータ14は、偏波コントローラ13から出力された広帯域光コムを光学装置15に出力し、また、光学装置15から出射された干渉光(干渉信号)を光信号処理装置16に出力する。
【0028】
光学装置15は、光学干渉計から構成され、コリメータ150、干渉板152、1/8λ波長板154を備え、測定対象物3からの反射光と干渉板152で反射した光(基準光)との干渉信号を生成し、干渉信号をサーキュレータ14に送信する。
【0029】
光信号処理装置16は、偏光ビームスプリッタ160、P偏光用1:1カプラ161、P偏光用光検出装置162、S偏光用1:1カプラ163、S偏光用光検出装置164、サンプリング装置165、を備え、サーキュレータ14からの干渉信号を処理し、P偏光とS偏光とに分けて、その強度をサンプリングする。
【0030】
情報処理装置17は、コンピュータ装置から構成され、記憶装置170、データ解析装置172、モニタ装置174を備え、サンプリング装置165にサンプリングされた信号を処理し、測定対象物3の構造とその動きとを高分解能で測定し、その断層構造をイメージ化する。換言すると、情報処理装置17は、反射面までの光路長差を求める光路長差検出装置と基準位置から反射面までの距離を求める位置検出装置として機能する。
【0031】
なお、光源装置120、光変調装置122、光増幅装置124、高非線形シフトファイバ126、偏波コントローラ13、サーキュレータ14、光学装置15、偏光ビームスプリッタ160、P偏光用1:1カプラ161、P偏光用光検出装置162、S偏光用1:1カプラ163、S偏光用光検出装置164の間は、光ファイバなどの光伝送路により適宜接続される。
【0032】
また、RF信号生成装置11の構成要素同士、情報処理装置17の構成要素同士、周波数変調装置114と光変調装置122との間、サンプリング装置165と記憶装置170の間、スキャン信号生成装置112とサンプリング装置165及び情報処理装置17との間は、電線など制御信号の伝送路により接続される。
【0033】
測定システム1は、これらの構成要素により、測定対象物3までの光路長Lopをμm領域の精度で測定し、測定対象物3の微小な動きをnm領域の精度で測定する。測定対象物3が光を透過させるときには、測定対象物3の内部に存在する光反射性の構造までの光路長Lopをμm領域の精度で測定し、その微小な動きをnm領域の精度で測定できる。反射面は、例えば、屈折率の異なる物質の界面である。
【0034】
RF信号生成装置11において、搬送波信号生成装置110は、周波数νa=5GHz~20GHz程度、望ましくは8GHz~12GHz程度、の電気的な正弦波の搬送波信号Saを生成して周波数変調装置114に出力する。
【0035】
搬送波信号Saの電圧波形は、式1で表される。
Sa=Vamcos(ωat) ・・・式1
Vamは振幅値、ωa=2πνaである。
【0036】
スキャン信号生成装置112は、
図2に示す余弦波で、0.5MHz~15MHz程度のスキャン周波数ν
s、1スキャン期間T
s=1/ν
sのスキャン信号S
sを生成する。スキャン信号S
sの電圧波形は式2で表される。
S
s=V
smcos(ω
st) ・・・式2
V
smは振幅値、ω
s=2πν
sである。
【0037】
また、スキャン信号生成装置112は、スキャン信号Ssが位相0のタイミングに、同期信号を、サンプリング装置165と情報処理装置17に出力する。
【0038】
図1に示す周波数変調装置114は、搬送波信号S
aをスキャン信号S
sにより周波数変調(FM)し、搬送波信号S
aに周波数偏位を与えて電気的な周波数変調信号S
iを生成し、光コム生成装置12の光変調装置122に出力する。周波数変調信号S
iの電圧波形は式3で表される。
S
i=V
imsin[ω
at+mfsin(ω
st)] ・・・式3
式3において、V
imは振幅値、mfは変調指数である。
【0039】
また、周波数変調信号Siの瞬時周波数νiは式4により表される。
νi=νa+νmcos(ωst) ・・・式4
式4において、νmは最大周波数偏位、νm=mf・νsである。
【0040】
変調指数mf=10とすると、周波数変調信号Siは式3’により表され、周波数変調信号Siの瞬時周波数νiは式4’により表される。
Si=Vimsin[ωat+10sin(ωst)] ・・・式3’
νi=νa+10νscos(ωst) ・・・式4’
【0041】
従って、例えば、変調指数mf=10で、スキャン信号の周波数νs=1MHzとすれば、最大周波数偏位νm=mf・νs=10MHzとなる。この場合、周波数変調信号Siの周波数νiは、(10GHz-10MHz)~(10GHz+10MHz)~(10GHz-10MHz)の1サイクルを1秒間に1M回繰り返すことになる。
【0042】
なお、搬送波信号Saは請求項おける第1の信号の例、周波数νaは第1の周波数の例、スキャン信号Ssは第2の信号の例、周波数νsは第2の周波数の例、周波数変調信号Siは第3の信号の例、周波数νiは第3の周波数の例である。
【0043】
図1に示す光源装置120は、
図3に示すように、中心周波数ν
c、例えば、2×10
14Hz程度のレーザ光を光変調装置122に出力する。この場合、中心波長λ
c=c/ν
c≒1.49896...μmである。cは光速≒299,792,458m/sである。
【0044】
図1に示す光変調装置122は、例えば、DD-MZM(デュアルドライブマッハツェンタ)変調装置から構成され、周波数変調信号S
iに従って、光源装置120から出射されたレーザ光から比較的狭帯域の光コムを生成する。
図4に示すように、DD-MZM変調装置122は、増幅器1221と、位相変調器1222と、増幅器1223と、減衰器1224と、位相コントローラ1225と、位相変調器1226と、を備える。
【0045】
増幅器1221は、RF信号生成装置11の周波数変調装置114の一方の出力端の信号を増幅する。位相変調器1222は、ニオブ酸リチウム位相変調器(LN-PM)等から構成され、増幅器1221の出力電圧に応じて、光源装置120から入力する赤外線レーザの位相をシフトする。増幅器1223は、周波数変調装置114の他方の出力端の信号を増幅する。減衰器1224は、増幅器1223の出力電圧を減衰する。位相コントローラ1225は、減衰器1224の出力電圧の位相を制御する。位相変調器1226は、ニオブ酸リチウム位相変調器(LN-PM)等から構成され、ニオブ酸リチウム位相変調器1222に並列に接続され、位相コントローラ1225の出力電圧に応じて、光源装置120から入力する赤外線レーザの位相をシフトする。
【0046】
光変調装置122は、上記構成により、赤外線レーザ光を周波数変調信号S
iにより変調し、
図5(A)に示すように、中心周波数ν
cの両側にそれぞれ離散的にj個並ぶ、総計2j+1個の周波数成分を含む光コムを生成する。なお、jは自然数である。各周波数成分は、光コムの歯に相当する。周波数成分の中心周波数ν
c-j~ν
c~ν
c+jの間隔は、周波数変調信号S
iの周波数ν
iに等しい。この光コムの帯域幅BWは、
図5(B)に例示するように、例えば、1.1nm程度と、比較的狭い。
図1及び
図4に示すように、光変調装置122は、生成した光コムを光増幅装置124に出力する。
【0047】
図1に示す光増幅装置124は、例えば、高出力エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)から構成され、光変調装置122から出射された光コムを30dB~35dB程度増幅し、高非線形シフトファイバ126に出力する。
【0048】
高非線形シフトファイバ126は、例えば200m程度の長さを有し、光増幅装置124により光増幅された光コムを、偏波コントローラ13に出力する。高非線形シフトファイバ126により、光コムの干渉次数が高められ、光コムが広帯域化される。
【0049】
広帯域化された光コムは、
図6(A)に示すように、中心周波数ν
cの両側に間隔周波数ν
iで並ぶn個の周波数成分、総計2n+1個の周波数成分を含む。各周波数成分の中心周波数ν
c-n~ν
c~ν
c+nの間隔は変調周波数ν
iに等しい。なお、nは自然数であり、n>jである。この段階での光コムの帯域幅BWは、
図6(B)に示すように、光変調装置122により生成された光コムの帯域幅よりも広い、即ち、広帯域化されている。なお、
図6(A)において、G(ν-ν
c)は、全体の強度分布を示すエンベローブを表し、中心周波数ν
cからの距離(ν-ν
c)の関数である。また、F(ν)は、周波数νにおける縦モードの波形の強度を示す。
【0050】
広帯域光コムを構成する周波数成分の中心周波数の間隔周波数ν
iの瞬時値は、前述の式4で表される。従って、光コムを構成する周波数成分は、
図7(A)(B)に模式的に示すように、中心周波数ν
cを中心に集まるように移動する動作と中心周波数ν
cから離れるように移動する動作、即ち、間隔が周期的に変動する動作を、スキャン信号S
sの周波数ν
sで繰り返す。
【0051】
図1に示すように、高非線形シフトファイバ126で生成された広帯域の光コムは、偏波コントローラ13に出力される。偏波コントローラ13は、光コム生成装置12により生成された広帯域光コムを構成する光を直線偏波光(以下、偏光)に変換し、サーキュレータ14に出力する。
【0052】
サーキュレータ14は、偏波コントローラ13から出力された直線偏光から構成される光コムを光学装置15に出力する。
【0053】
光学装置15は、例えば、共通光路干渉計等の光学装置から構成され、サーキュレータ14からの広帯域の光コムをコリメータ150で平行光化し、干渉板152を介して測定対象物3に向けて出射する。光コムの一部は、干渉板152の反射面で反射し、基準光となる。干渉板152の反射面は、距離測定の基準となるものであり、基準面の一例である。
【0054】
一方、干渉板152を通過した光は、1/8λ波長板154を通過して、測定対象物3に到達し、干渉板152の反射面からの光路長Lopだけ離れた反射面で反射する。反射面は、測定対象物3の外表面、内部の反射面等の、例えば、屈折率の異なる領域の境界である。測定対象物3で反射した光コムの一部は、1/8λ波長板154を再度通過して、干渉板152に入射する。1/8λ波長板154は、光コムが干渉板152と測定対象物3との間を往復する間にπ/2の位相差をP偏光とS偏光の間に与える。以下の説明では、S偏光をP偏光よりも2/8λ(π/2)だけ遅延させるものとする。
【0055】
測定対象物3からの反射光と干渉板152での反射光(基準光)とは干渉し、
図8(A)に例示するような干渉信号(干渉光)を生成する。干渉信号には、フリンジ(干渉縞)は現れず、干渉ピークのエンベローブBのみが観察される。なお、
図8(A)は、光コムが測定対象物3の4箇所で反射して、4つのピーク周波数ν
11~ν
14で干渉ピークが生じた例を示している。
【0056】
干渉信号についてより詳細に説明する。
図6(A)に示す光コム、即ち、光学装置15に入射する光コムが理想的なものであるとすると、光コムの中心周波数ν
cからm番目の周波数成分(中心周波数=ν
c+m・ν
i)によって生ずる干渉信号I
m(ν
i)は、式5で示される。mは整数であり、正と負の数を含む。ここでのmは、後述する干渉次数のmとは異なる。
【0057】
Im(νi)=am・cos[2π(νc+m・νi)L/c] ・・・式5
am:振幅、νc:光コムの中心周波数、L:光路長差=2・Lop、
光路長Lop:干渉板152の反射面と測定対象物3の反射面との距離
【0058】
光コム全体では、全ての周波数成分による干渉の和となるので、干渉信号I(ν
i)は、式6に示すようになる。
【数1】
・・・式6
【0059】
式6において、[ ]内は、周期的な偶関数BΤ(νi)のフーリエ級数展開に相当する。従って、式6は式7に変形できる。
I(νi)=cos[2πνcL/c]BΤ(νi) ・・・式7
【0060】
偶関数B
Τ(ν
i)の周期は、c/Lとなる。干渉次数をp、干渉ピークの周波数ν
p=P(c/L)、偶関数B
Τ(ν
i)の1周期分の関数をB(ν
i)とすると、干渉信号I(ν
i)は式8で表される。
【数2】
・・・式8
α=(2πν
cL)/cである。また、積の演算子は、畳込み積を示す。
【0061】
従って、ピーク周波数に係る干渉次数pでの干渉信号Ip(νi)は式9で表される。
Ip(νi)=cos(α)B(νi-νp) ・・・式9
【0062】
式9に示す干渉信号I
p(ν
i)は、
図8(B)に示すように、エンベローブBの中心周波数(ピーク周波数)ν
p(即ち、ν
11,ν
12,ν
13,ν
14)と変調周波数ν
iとの差(ν
i-ν
p)の関数となる。エンベローブBは、B(0)、即ち、ν
i=ν
pのときにピーク値をとる関数として定義される。また、エンベローブB(ν
i-ν
p)はcos(α)により振幅変調され、干渉信号I
p(ν
i)の強度は、
図8(B)に例示するように、位相αに応じて変化する。
【0063】
次に、干渉信号の1周期分のピーク波形を表す関数であるエンベローブB(ν
i-ν
p)についてより詳細に検討する。
図6(A)に示す光コムのパワースペクトル(電力スペクトル密度)S(ν)は、式10で表される。
【数3】
・・・式10
ここで、G(ν-ν
c)は光コム全体の強度分布を示し、
図6(A)に示す光コム全体のエンベローブを表す関数である。また、F(ν)は、
図6(A)に示す縦モードの波形を示す。
【0064】
干渉信号は、光コムの時間波形の自己相関関数で表され、「ウイナーキンチンの定理」によって、パワースペクトルの逆フーリエ変換Fの実数部に等しい。従って、干渉信号I(τ)は式11で表される。
【数4】
・・・式11
【0065】
なお、g(τ)はG(ν)の逆フィーリエ変換の結果、f(τ)は、F(ν)の逆フィーリエ変換の結果を示す。観測される干渉信号は、実数部を取り、f(τ)≒1であるので、式12が成立する。
【数5】
・・・式12
【0066】
L=cτに変数変換すると、式13が成立する。
【数6】
・・・式13
【0067】
式13から、干渉ピークのエンベローブB(νi)に関し、式14が成立する。
B(νi)=1/νi・g(L-mc/νi) ・・・式14
【0068】
式14から、干渉ピークのエンベローブB(νi)は、パワースペクトル包絡線G(ν-νc)のフーリエ逆変換g(νi)に比例することがわかる。即ち、本実施の形態の測定システム1によれば、逆フーリエ変換などの高負荷のデータ処理を行うことなく、干渉ピークのエンベローブBを得ることができる。
【0069】
光路長差Lを変数とした場合、干渉ピークは、式13から、
図9に示すように、c/ν
iの距離間隔で発生する。より具体的に説明すると、干渉ピークが現れる最も短い光路長L
1は、L
1=c/ν
iで表される。従って、m次の干渉ピークが現れるのは、式15が成立するときである。また、式15を微分することにより、式15’が成立する。
L=mL
1=mc/ν
i ・・・式15
δL=mc/(ν
i
2)δν
i ・・・式15’
m:干渉次数
【0070】
従って、反射面の光路長差Lに応じて、適当な干渉次数mで干渉が起こり、干渉ピークIp(L)を生成する。変調周波数νiが周期的に変動するため、干渉ピークが発生する光路長差Lが変化する。なお、Δν=c/Lとすると、各干渉ピークのエンベローブBのFWHM(半値幅)は1/Δνにほぼ比例する。
【0071】
さらに、式9と式14から、m次の干渉ピークの強度に関し、式16が成立する。
Ip(L)=cos(α)・(1/νi)・B(νi)
=cos(2πνcL/c)・(1/νi)・g(L-mc/νi)
・・・式16
【0072】
また、間隔周波数ν
iを変数とした場合、式17が成立する。
【数7】
・・・式17
【0073】
式17から、干渉ピークI
pは、
図10に示すように、Δν=c/L間隔で、p=無限大まで発生する。ただし、p=1以外は、周波数が高くなり、また、エネルギーが小さくなるため、無視可能である。このため、p=1のみを考えると、式9を式9’に書き換えることができる。
I
1(ν
i)=cos(α)・B(ν
i-ν
1) ・・・式9’
【0074】
式9’により、干渉信号に干渉ピークが発生しているときに、その時点での変調周波数νiと干渉次数mを求めれば、光路長差Lを求めることができる。
【0075】
式15が成立する関係を図示すると、
図11に示すようになる。一例として、ν
i=10GHzとすると、c/ν
i=0.03mとなる。従って、例えば、干渉次数m=1のときには、L≒0.03m、m=2のときには、L≒0.06mと求めることができる。このように、光学装置15を構成する干渉計の既知のおおよその光路長差等から、干渉次数mが推定され、推定した干渉次数mに基づいて、光路長差Lを式15から求めることができる。ただし、変調周波数ν
iは変動しており、その精度はμmオーダとなる。
【0076】
なお、干渉次数mを求める手法は上述の例に限定されない。他の手法で干渉次数mを求めてもよい。例えば、式15’に示す測定対象物3の微小変動δLに対する干渉ピーク周波数の微小変動δνiを観測し、干渉次数mを導き出すようにしてもよい。その他、任意の手法が利用可能である。
【0077】
干渉信号に干渉ピークが生じているとき、光路長差Lは、理想的には、
図12(A)に示すように、光コムの中心波長λ
cの自然数倍の長さとして求められる。しかし、実際には、
図12(B)に模式的に示すように、光路長差Lと光コムを構成する光の中心波長λ
cの自然数(N)倍との間には「ズレ」(距離)ΔL=L-N・λ
cが存在する。
【0078】
前述したように、干渉信号I
1(ν
i)は、cos(α)により振幅変調され、干渉ピークのエンベローブBは、
図8(B)に示すように、位相α=2πν
cL/cに応じて変化する。ここで、光コムの中心波長λ
cと上述のズレΔLを用いて表現すると、光路長差Lは式18で表される。
L=Nλ
c+ΔL=N(c/ν
c)+ΔL ・・・式18
L=2・L
op ΔL=2・ΔL
op N=自然数
【0079】
式18を用いて、cos(α)は次のように変形できる。
cos(α)=cos(2πνcL/c)
=cos[2πνc(Nλc+ΔL)/c)]
=cos(2πN+2πΔL/λc)
=cos[2π(ΔL/λc)]
=cos(2πνcΔL/c) ・・・式19
以後、位相α=2πνc(ΔL/c)と表記する。
【0080】
式19から、干渉ピークのエンベローブBの振幅とズレΔLとの間に相関があることがわかる。従って、干渉ピークのエンベローブBの振幅に基づいて、位相αを求め、位相αから光路長差のズレΔLを求めることが可能である。
【0081】
以下、エンベローブBの振幅に基づいて、位相α及びズレΔLを求める具体的な手法を説明する。
【0082】
前述のように、サーキュレータ14から出射した光コムを構成する直線偏光のうち、干渉板152を通過した光コムは、1/8λ波長板154を通過して、測定対象物3に到達する。さらに、測定対象物3で反射した光コムの一部が、1/8λ波長板154を再度通過する。
【0083】
1/8λ波長板154は、光コムのS偏光成分が、その遅相軸を通過する位置及び向きに配置されている。このため、干渉板152を通過したS偏光は、1/8λ波長板154を通過することでP偏光に対して1/8λだけ遅延し、更に、測定対象物3で反射して、1/8λ波長板154を再度通過することで、1/8λだけ遅延する。一方、P偏光は遅延することなく干渉板152に入射する。このため、測定対象物3で反射したS偏光は、P偏光に対して、2/8λ、即ち、π/2遅延する。
【0084】
このため、P偏光成分とS偏光成分とは位相がπ/2ずれた関係となり、IQ直交変調の関係となる。具体的には、P偏光の光コムに関しては、測定対象物3からの反射光に位相シフトがなく、干渉板152の反射面からの反射光にも位相シフトはない。このため、干渉光の位相α=2πνcΔL/cとなり、干渉信号は、式9のままである。
【0085】
これに対し、S偏光の光コムに関しては、測定対象物3からの反射光は、往復の間にλ/4=π/2遅延される。このため、S偏光の干渉による干渉信号の位相はα-π/2になる。なお、P偏光成分による干渉信号とS偏光成分による干渉信号との一方は、請求項における第1の干渉信号、他方は第2の干渉信号の例である。
【0086】
この位相差のため、P偏光による干渉信号(I干渉信号)の信号強度I(ν
i-Δν
i)とS偏光による干渉信号(Q干渉信号)の信号強度Q(ν
i-Δν
i)は、式20と式21で表される。なお、前述のように、干渉次数pは1に限定可能であり、p=1とすると、Δν
iは、
図10に示す一次の干渉ピークの周波数ν
1に等しい、即ち、Δν
i=ν
1である。なお、I(ν
i-ν
1)とQ(ν
i-ν
1)のエネルギーは等しいとする。
【0087】
I(νi-ν1)=cos(α)B(νi-ν1) ・・・式20
Q(νi-ν1)=cos(α-π/2)B(νi-ν1)
=sin(α)B(νi-ν1) ・・・式21
【0088】
式20と式21から式22が導かれる。
α=tan-1[Q(νi-ν1)/I(νi-ν1)] ・・・式22
なお、式22において、Q(νi-ν1)とI(νi-ν1)は、エンベローブB(νi-ν1)全体のエネルギーでもよいし、νi=ν1のときのピーク値を使用してもよい。
【0089】
従って、i)P偏光による干渉ピークの信号強度I(νi-ν1)とS偏光による干渉ピークの信号強度Q(νi-ν1)とを求め、ii)式22に適用して、信号強度I(νi-ν1)で信号強度Q(νi-ν1)を除算し、その商(比の値)[Q(νi-ν1)/I(νi-ν1)]のtan-1を求めることにより、iii)光コムを構成する光の波長の整数倍N・λcで定まる位置を基準位置として、反射面までの光コムを構成する光の位相αを求めることができる。さらに、求めた位相αから、ズレΔL=α2πνc/c求め、さらに、ΔLop=ΔL/2を求めることができる。なお、位相αとズレΔLと距離ΔLopは相互に変換可能であり、いずれを最終解とするかは任意である。
【0090】
図1に戻って、光学装置15から出射したP偏光の干渉信号及びS偏光の干渉信号は、それぞれ、サーキュレータ14に入射する。
【0091】
サーキュレータ14は、P偏光の干渉信号とS偏光の干渉信号を光信号処理装置16の偏光ビームスプリッタ160に出力する。偏光ビームスプリッタ160は、P偏光の干渉信号(I干渉信号)をP偏光用1:1カプラ161に、S偏光の干渉信号(Q干渉信号)をS偏光用1:1カプラ163に分離して出力する分離手段として機能する。
【0092】
P偏光用1:1カプラ161は、供給されたP偏光の干渉信号を2等分して、P偏光用光検出装置162に出力する。
S偏光用1:1カプラ163は、供給されたS偏光の干渉信号を2等分して、S偏光用光検出装置164に出力する。
【0093】
P偏光用光検出装置162は、例えば、バランスド検波器から構成され、供給された一方のP偏光の干渉信号(第1のP偏光入力)を分光して、光コムの周波数成分に相当する周波数帯別に強度を求めて干渉信号のスペクトル、即ち、信号強度の分布を求める。この際、供給された他方のP偏光干渉信号(第2のP偏光入力)の総エネルギーを基準として、スペクトルの強度を正規化して信号強度の分布を求め、サンプリング装置165に出力する。
【0094】
S偏光用光検出装置164は、例えば、バランスド検波器から構成され、供給された一方のS偏光の干渉信号(第1のS偏光入力)を分光して、光コムの周波数成分に相当する周波数帯別に強度を求めて干渉信号の信号強度の分布を求める。この際、供給された他方のS偏光干渉信号(第2のS偏光入力)の総エネルギーを基準として、スペクトルの強度を正規化して分布を求め、サンプリング装置165に出力する。
【0095】
なお、P偏光用光検出装置162の出力は、P偏光による干渉信号の正規化された信号強度I(ν)を示し、S偏光用光検出装置164の出力は、S偏光による干渉信号の正規化された信号強度Q(ν)を示す。
【0096】
サンプリング装置165は、アナログ/ディジタル(A/D)変換器、高速デジタイザ等を備える。サンプリング装置165は、スキャン信号生成装置112からの同期信号に同期して、P偏光用光検出装置162とS偏光用光検出装置164から供給されたアナログ形式の干渉信号を周波数帯別にサンプリングし、ディジタル形式の干渉データID(ν)とQD(ν)に変換する。サンプリング装置165は、得られた干渉データID(ν)とQD(ν)にタイムスタンプを付して、記憶装置170に記憶させる。サンプリング装置165のサンプリング周期は、例えば、スキャン周波数νsの2以上の自然数倍、例えば、10倍に設定されている。
【0097】
情報処理装置17の記憶装置170は、サンプリング装置165から供給されたP偏光の干渉データID(ν)とS偏光の干渉データQD(ν)を順次記憶する。また、記憶装置170は、データ解析装置172が求めた光路長差Lを示す光路長データを記憶し、要求に応じてデータ解析装置172に出力する。
【0098】
データ解析装置172は、記憶装置170に記憶され、同一のタイミングで取得された干渉データID(ν)とQD(ν)を処理し、周波数ν軸上で
図8(A)に示すように、干渉ピークを検出する。また、干渉データID(ν)とQD(ν)の元となる干渉信号が得られたそのタイミングでの、変調周波数ν
iを特定する。
【0099】
データ解析装置172は、検出された干渉ピークについて、各エンベローブBと各エンベローブBがピーク値を示すピーク周波数ν
pを特定する。例えば、
図8(A)では、エンベローブB
11~B
14と、ピーク(中心)周波数ν
11~ν
14を特定する。
【0100】
データ解析装置172は、特定した各ピーク周波数νpに基づいて、エンベローブBそれぞれについて、干渉次数mを特定する。データ解析装置172は、さらに、そのときの変調周波数νiの値を、式15に適用し、各反射面までの光路長差Lをμm領域の精度で求め、さらに、それを1/2することにより、反射面までの光路長Lopを求める。
【0101】
データ解析装置172は、干渉ピークが複数検出された場合には、それぞれについて、光路長差Lを求める処理、エンベローブBの強度分布を求める処理等を実行し、得られたデータを、算出の基礎となった干渉信号が得られた時刻のタイムスタンプを付して記憶装置170に格納する。従って、
図8(A)の例であれば、各ピーク周波数ν
11~ν
14に基づいて、エンベローブB
11~B
14それぞれについて、干渉次数m
11~m
14を特定し、光路長差L
11~L
14をμm領域の精度で求め、さらに、光路長L
op11~L
op14を求める。
【0102】
データ解析装置172は、記憶装置170に蓄積された、一連の光路長差Lの分布、それぞれの時間変化(移動)、その微分(速度)を求める処理等を実行する。即ち、変調周波数νiが周期的に変化し、変調周波数の1周期の間に複数の干渉データID(ν)とQD(ν)がサンプリングされるため、各サンプリングタイミングで干渉の条件が異なっている。このため、例えば、他のサンプリングタイミングでは、検出できなかった或いは明確には検出できなかった反射面を、検出できる可能姓がある。或いは、反射面がμmオーダで移動する可能性もある。また、反射面が厚みを有する場合には、連続する複数のサンプリングタイミングで反射面を検出できることがある。データ解析装置172は、時間軸上でこれらのデータを処理することにより、測定対象物3の反射面の分布を含む断層構造をより詳細に求める。
【0103】
データ解析装置172は、さらに、干渉データID(ν)に基づいて、各干渉ピークの各エンベローブB(νi-ν1)の信号強度I(νi-ν1)を求める。同様に、干渉データQI(ν)に基づいて、各干渉ピークの各エンベローブB(νi-ν1)の信号強度Q(νi-ν1)を求める。即ち、P偏光による各干渉ピークのエンベローブB(νi-ν1)の信号強度I(νi-ν1)とS偏光による各干渉ピークのエンベローブB(νi-ν1)の信号強度Q(νi-ν1)とを求める。
【0104】
データ解析装置172は、対応する干渉ピーク同士の比或いは商Q(ν
i-ν
1)/I(ν
i-ν
1)を求める。換言すると、第2の干渉信号の大きさと第1の干渉信号の大きさの比、或いは、比の値を求める。次に、求めた値を式22に適用して、位相α(=tan
-1[Q(ν
i-ν
1)/I(ν
i-ν
1)])を求める。
図8(A)の例では、位相α
11=tan
-1[Q(ν
i-ν
11)/I(ν
i-ν
11)]、位相α
12=tan
-1[Q(ν
i-ν
12)/I(ν
i-ν
12)]、位相α
13=tan
-1[Q(ν
i-ν
13)/I(ν
i-ν
13)]、位相α
14=tan
-1[Q(ν
i-ν
14)/I(ν
i-ν
14)]を求める。
【0105】
データ解析装置172は、さらに、式19に従って、ΔL=αc/2πν
cを求めることにより、位相αをnm領域のズレΔLに変換する。前述のように、ズレΔLは、光コムを構成する光の中心波長λ
cの整数(N)倍の光路長L’で定まる基準位置と各反射面の位置との光路長差に相当する。
図8(A)の例では、データ解析装置172は、ΔL
11=α
11c/2πν
c、ΔL
12=α
12c/2πν
c、ΔL
13=α
13c/2πν
c、ΔL
14=α
14c/2πν
cを求めることにより、位相α
11、α
12、α
13、α
14をnm領域のズレΔL
11、ΔL
12、ΔL
13、ΔL
14に変換する。
【0106】
データ解析装置172は、得られた位相α、ズレΔL等を、算出の基礎となった干渉信号が得られた時刻のタイムスタンプを付して記憶装置170に格納する。
【0107】
データ解析装置172は、記憶装置170に蓄積された一連のズレΔLの時間変化を求め、ズレΔLの描く波形を曲線近似等を用いて求め、その周期・周波数と振幅を求める。この波形は、光学装置15の位置が固定であるとすれば、測定対象物3の光反射面の位置の変動の周期と振幅を表す。
【0108】
モニタ装置174は、表示部と入力部とを備え、データ解析装置172から入力された情報を表示する。また、モニタ装置174は、ユーザによる指示をデータ解析装置172に供給する。
【0109】
情報処理装置17は、コンピュータから構成される。データ解析装置172は、例えば、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)およびメモリなど、高速演算処理に必要とされる構成要素から構成される。また、記憶装置170は、例えば、コンピュータの補助記憶装置等から構成される。
【0110】
次に、上記構成を有する測定システム1による測定動作を説明する。
搬送波信号生成装置110は、式1に示す周波数νaの正弦波の搬送波信号Saを出力する。以下の説明では、周波数νa=10GHzとする。また、スキャン信号生成装置112は、式2に示す周波数νsの余弦波のスキャン信号Ssを出力する。以下の説明では、周波数νsを1MHzとする。
【0111】
周波数変調装置114は、搬送波信号Saをスキャン信号Ssにより周波数変調し、式3に示される周波数変調信号Siを出力する。
以下の説明では、変調指数mf=10とする。このため、周波数変調信号Siは、式3’で表され、変調周波数νiは、式4’で表される。
【0112】
一方、光源装置120は、
図3に示すように、周波数ν
c、波長λ
cのレーザ光を出力する。以下の説明では、周波数ν
c=2×10
14Hz、λ
c≒1.5μmとする。
【0113】
図4に示す光変調装置122は、光源装置120から出射したレーザ光を、周波数変調信号S
iにより変調し、
図5(A)に示すように、周波数ν
cを中心に、スペクトルが離散的で周波数ν
iで等間隔に並んだ周波数成分からなる狭帯域の光コムを出力する。周波数変調信号S
iの変調周波数ν
iは、式4’に示すように、周期的に変動する。このため、光コムを構成する各周波数成分は、
図7に示すように、中心周波数ν
cを中心に、連続的に往復運動を繰り返す。
【0114】
図1に示す光変調装置122によって生成された光コムは、
図4に示す光増幅装置124と高非線形シフトファイバ126により広帯域化される。ただし、中心周波数はν
c、周波数成分の間隔はν
iである。従って、広帯域化された光コムを構成する周波数成分は、周波数ν
iの変化に伴って、
図7(a)、(b)に示すように、それらの間隔が周期的に変動し、往復運動を連続的に繰り返す。
【0115】
このようにして生成された、広帯域光コムは、偏波コントローラ13によりP偏光成分とS偏光成分を含む直線偏光に変換され、サーキュレータ14に供給される。
【0116】
サーキュレータ14は、供給された光コムを光学装置15に出力する。
【0117】
光学装置15は、サーキュレータ14から出力された光コムを、コリメータ150と干渉板152を介して、測定対象物3に向けて出射する。出射された光コムの一部は、干渉板152の反射面で反射する。
【0118】
一方、光コムを構成する光の一部は、1/8λ波長板154を通過して、測定対象物3に照射される。1/8λ波長板154を通過する光のうち、S偏光成分は、1/8λ波長板154の遅相軸を通過し、P偏光成分に対して1/8λだけ遅延する。
【0119】
ここでは、測定対象物3が
図13(A)に示す構成を有する生体組織であるとする。
光コムの周波数帯が2×10
14Hzのため、光コムは、測定対象物3の表面で反射されるだけでなく、50μm~1mm内部に侵入する。生体内に侵入した光コムは、組織と組織の界面等、屈折率の異なる層の界面に相当する反射面で反射する。
図13(A)では、生体組織内に存在する4つの反射面1~反射面4に注目するものとする。
【0120】
反射面1~反射面4で反射した光コムは、1/8λ波長板154と干渉板152とコリメータ150を介してサーキュレータ14に入射する。
【0121】
1/8λ波長板154を通過する反射光のうち、S偏光成分は、1/8λ波長板154の遅相軸を通過し、P偏光成分に対して1/8λだけさらに遅延する。このため、S偏光成分は、P偏光成分に対して1/4λ=π/2だけ遅延する。
【0122】
干渉板152で反射した光コムと測定対象物3で反射した光コムとは互いに干渉する。ただし、P偏光同士、S偏光同士が干渉する。このため、P偏光の干渉信号、S偏光の干渉信号、それぞれに、
図13(B)に例示するように、反射面1~反射面4までの光路長差L
21~L
24に応じた周波数ν
21~ν
24に干渉ピークのエンベローブB
21~B
24が現れる。
【0123】
光学装置15で発生した干渉信号は、サーキュレータ14に入射し、光信号処理装置16の偏光ビームスプリッタ160に送信される。
【0124】
サーキュレータ14は、P偏光の干渉信号とS偏光の干渉信号を光信号処理装置16の偏光ビームスプリッタ160に出力する。偏光ビームスプリッタ160は、P偏光の干渉信号をP偏光用1:1カプラ161に、S偏光の干渉信号をS偏光用1:1カプラ163に出力する。
【0125】
P偏光用1:1カプラ161は、供給されたP偏光の干渉信号を2等分して、P偏光用光検出装置162に出力する。S偏光用1:1カプラ163は、供給されたS偏光の干渉信号を2等分して、S偏光用光検出装置164に出力する。
【0126】
P偏光用光検出装置162は、一方のP偏光の干渉信号(第1のP偏光入力)を分光して、光コムの周波数成分に相当する周波数帯別に強度を求めて干渉信号の信号強度の分布I(ν)を求める。この際、供給された他方のP偏光干渉信号(第2のP偏光入力)の総エネルギーを基準として、スペクトルの強度を正規化して信号強度の分布I(ν)を求め、サンプリング装置165に出力する。
【0127】
S偏光用光検出装置164は、供給された一方のS偏光の干渉信号(第1のS偏光入力)を分光して、光コムの周波数成分に相当する周波数帯別に強度を求めて干渉信号の信号強度の分布Q(ν)を求める。この際、供給された他方のS偏光干渉信号(第2のS偏光入力)の総エネルギーを基準として、スペクトルの強度を正規化して信号強度の分布Q(ν)を求め、サンプリング装置165に出力する。
【0128】
サンプリング装置165は、スキャン信号生成装置112からの同期信号に同期して、P偏光用光検出装置162とS偏光用光検出装置164から供給されたアナログ形式の干渉信号を周波数帯別にサンプリングし、ディジタル形式の干渉データID(ν)とQD(ν)に変換する。以下の説明では、サンプリング周波数はスキャン信号Ssの周波数νs=1MHzの10倍の10MHzであるとする。サンプリング装置165は、得られた干渉データにタイムスタンプを付して、記憶装置170に記憶させる。
【0129】
記憶装置170は、サンプリング装置165から供給されたP偏光の干渉データとS偏光の干渉データを順次記憶する。
【0130】
データ解析装置172は、記憶装置170に記憶されたP偏光の干渉データとS偏光の干渉データを処理し、干渉ピークのエンベローブBとそのピーク値を示す周波数を検出する。この例では、
図13(B)に示すエンベローブB
21~B
24とそのピークP
21~P
24の周波数ν
21~ν
24を検出する。
【0131】
データ解析装置172は、処理対象の干渉データに付与されているタイムスタンプから、元となった干渉信号が得られたタイミングを特定する。次に、そのタイミングでの、スキャン信号Ssの位相を特定する。この位相により、その時点での変調周波数νiを式4’に従って求める。
【0132】
次に、データ解析装置172は、エンベローブB21について、変調周波数νiと予め求めておいた干渉次数m21とに基づいて、エンベローブB21を形成する反射光を生成した反射面1までの光路長差L21=m21c/νiをμm領域の精度で求める。例えば、あるサンプリングタイミングで、そのときのνi=10.01GHzとすれば、L21=m21c/(10.01・109)を光路長差として求める。データ解析装置172は、同様に、変調周波数νiと、予め求めておいた干渉次数m22~m24に基づいて、エンベローブB22~B24を形成する反射光を生成した反射面2~反射面4までの光路長差L22=m22c/νi~L24、L23=m23c/νi、m24c/νiを求める。必要に応じて、例えば、光路長差L21~L24を1/2することにより、光路長Lop21~Lop24に変換してもよい。
【0133】
なお、以上の説明では、反射面1~4の反射光により干渉ピークが明確に得られるように説明しているが、反射面の位置と特性によっては、明確な干渉ピークが得られない場合がある。本実施の形態では、変調周波数ν
iを掃引する。従って、あるタイミングでは干渉ピークが明確には得られなかった反射面に関しても、スキャン信号S
sの半周期分の測定を繰り返すうちに、
図10に例示したように、干渉ピークが発生する周波数が変動し、ピークが検出される可能性がある。このため、深さ方向にμmオーダのピーク分布がより的確に得られる。
【0134】
データ解析装置172は、さらに、P偏光の干渉データIDとS偏光の干渉データQDにおけるエンベローブB21の周波数ν21での信号強度I(ν21)とQ(ν21)に基づいて、式22に従って、位相α21=tan-1[Q(ν21)/I(ν21)]を求める。さらに、ΔL21=α21c/(2πνc)から、光路長差LのズレΔL21を求める。換言すると、光コムを構成する光の波長のN倍の距離の位置を基準位置として、反射面1までの微小なズレΔL11を求める。必要に応じて、光路長差のズレL11を1/2することにより、光路長Lop21のズレΔLopに変換してもよい。
【0135】
同様に、データ解析装置172は、P偏光の干渉データとS偏光の干渉データのエンベローブB22、B23、B24のピークP22、P23、P24の周波数ν22、ν23、ν24の信号強度I(ν22)とQ(ν22)、I(ν23)とQ(ν23)、I(ν24)とQ(ν24)にそれぞれ基づいて、位相α22、α23、α24を求め、さらに、位相α22、α23、α24から光路長差のズレΔL22、ΔL23、ΔL24を求め、必要に応じて、光路長差のズレΔL22、ΔL23、ΔL24を1/2することにより、距離ΔLop22、ΔLop23、ΔLop24のズレに変換する。
【0136】
データ解析装置172は、求めた光路長差L21~L24、位相α21~α24、ズレΔL21~ΔL24を算出の基礎となる干渉データが得られた時刻のタイムスタンプを付して記憶装置170に格納する。こうして、記憶装置170には、サンプリング周期1/10νs=0.1μs毎にデータが蓄積される。
【0137】
データ解析装置172は、例えば、測定終了後、記憶装置170に蓄積された一連の光路長差L21~L24を読み出す。データ解析装置172は、光路長差L21の分布、時間変化(移動)、その微分(速度)を求める処理等を実行する。即ち、変調周波数νiが周期的に変化し、変調周波数の1周期の間に検出された反射面の位置を分析することにより、測定対象物3の反射面の分布を含む断層構造をより詳細に求める。
【0138】
また、データ解析装置172は、例えば、測定終了後、記憶装置170に蓄積されたズレΔL
21~ΔL
24を読み出し、
図14に示すように時系列にプロットする。なお、
図14は、ズレΔL
21とΔL
22の時系列のみを例示している。
【0139】
データ解析装置172は、プロットしたズレΔL21~ΔL24を近似する曲線の振幅Am21~Am24と周期T21~T24、周波数1/T21~1/T24を求める。求めた振幅と周期、周波数は、反射面1~反射面4の微小振動の振幅Am21~Am24と周期T21~T24及び周波数ν21~ν24を示す。
【0140】
また、データ解析装置172は、求めた4つの反射面までの光路長Lop21~Lop24及び強度I(ν)、Q(ν)の強度分布を可視化することにより、測定対象物3の内面構造の断層分布のイメージング、断層間の変位、振動等を求める。
【0141】
モニタ装置174は、データ解析装置172から入力された情報、例えば、測定対象物3の内部構造の断層画像、ズレΔL21~ΔL24の振動の振幅Am21~Am24と周期T21~T24、周波数1/T21~1/T24等を表示する。また、モニタ装置174は、データ解析装置172が生成した断層分布のイメージ、断層間の変位、振動等を表示する。
【0142】
次に、データ解析装置172が実行するデータ処理の詳細を
図15~
図17のフローチャートを参照して説明する。
【0143】
データ解析装置172は、記憶装置170に1セットの干渉データIDとQDが記憶されると、
図15に示す干渉データ解析処理を開始する。
【0144】
データ解析装置172は、処理を開始すると、まず、新たに記憶されたP偏光の干渉データIDとS偏光の干渉データQDをそれぞれ解析し、干渉ピークが存在するか否か、存在する場合にはそのエンベローブBのピークPの周波数ν
pを特定し、さらに、そのときの変調周波数ν
iを特定する(ステップS111)。例えば、
図13(B)に示す干渉データの場合、干渉ピークのエンベローブB
21,B
22,B
23,B
24を検出し、ピークP
21,P
22,P
23,P
24の周波数ν
21,ν
22,ν
23,ν
24を特定する。また、そのときの、変調周波数ν
iを特定する。
【0145】
データ解析装置172は、変調周波数ν
iと予め求められている干渉次数mから、干渉板152の反射面から測定対象物3の反射面までの往復の光路長に相当する光路長差Lを、L=mc/ν
iに基づいてμmオーダで求める(ステップS112)。
図13の例であれば、データ解析装置172は、変調周波数ν
iと予め求められている干渉次数m
21から、干渉板152の反射面から測定対象物3の反射面1までの往復の光路長に相当する光路長差L
21=m
21c/ν
iを求める。同様に、反射面2~反射面4までの光路長差L
22=m
22c/ν
i~光路長差L
24=m
24c/ν
iを求める。
【0146】
データ解析装置172は、続いて、P偏光の干渉データIDとS偏光の干渉データQDについて、各エンベローブBのピークPの強度I(ν)とQ(ν)を求める(ステップS113)。
図13の例であれば、データ解析装置172は、P偏光とS偏光の干渉ピークのエンベローブB
21~B
24のピークP
21~P
24の強度I(ν
21)~I(ν
24)及びQ(ν
21)~Q(ν
24)を求める。
【0147】
次に、データ解析装置172は、位相αをα=tan
-1(Q/I)に基づいて求め、さらに、求めた位相αからズレΔLを、ΔL=αc/2πν
cから求める(ステップS114)。
図13の例であれば、データ解析装置172は、α
21=tan
-1(Q(ν
21)/I(ν
21)、~、α
24=tan
-1(Q(ν
24)/I(ν
24)を、
図13(C)に例示するように求める。さらに、求めた位相α
21~α
24から、ズレΔL
21=α
21c/2πν
c、~、ΔL
24=α
24c/2πν
cを求める。
【0148】
データ解析装置172は、求めた光路長差L、位相α及びズレΔLにタイムスタンプを付して記憶装置170に記録する(ステップS115)。
【0149】
このようにして、1サンプリング期間1/(10νs)が経過する度に、光路長Lがμmオーダで求められ、さらに、基準位置と反射面との位置のズレΔLがnmオーダで求められ、記憶装置170に蓄積される。
【0150】
データ解析装置172は、測定終了時などに、反射面の分布を求め、測定対象物3の三次元断面構造をより詳細に特定するため、
図16に示す分布解析処理を実行する。
【0151】
データ解析装置172は、処理を開始すると、一連の測定で得られた反射面の位置を分析し、深さ方向の反射面の分布を特定する(ステップS211)。
【0152】
より詳細に説明すると、スキャン信号Ssの位相が、例えば、0からπまで変化する間に、変調周波数νiは、最大値(νa+10νs)から最小値(νa-10νs)まで、即ち、(10G+10M)Hzから(10G-10M)Hzまで変化する。このため、ある測定タイミングでは検出されなかった反射面が他の測定タイミングでは検出され、或いは、ある測定タイミングで検出された反射面が他の測定タイミングでは検出されなかったりする。また、反射面が厚みと分布を有する場合に、連続して干渉ピークが検出される。従って、複数の連続するタイミングで得られた反射面の位置から、反射面の深さ方向の分布を求める。
【0153】
次に、データ解析装置172は、求めた反射面の深さ方向の分布を画像化し、断層画像を合成する(ステップS212)。
【0154】
データ解析装置172は、得られた断層画像にタイムスタンプを付して記憶装置170に格納する(ステップS213)。
【0155】
なお、スキャン信号Ssの周期Tsの1/2以上の期間(位相π以上の期間)に亘って得られた反射面を処理しても、変調周波数νiは同じ値を繰り返すだけになり、効果は少ない。このため、ステップS211の処理に関しては、スキャン信号Ssの半周期単位で実行することが望ましい。また、このようにして得られた断層画像は、光コムが照射されている特定の一点の深さ方向の断層画像に相当する。このため、光コムを、Ts/2毎に、例えば、1ドット分の距離走査するようにしてもよい。
【0156】
また、データ解析装置172は、周期的に或いは測定終了時などに、各反射面の微小振動を特定するため、
図17に示す微小振動解析処理を開始する。
【0157】
データ解析装置172は、処理を開始すると、記憶装置170に記憶された一連のズレΔLを読み出し、時系列にプロットする(ステップS311)。
図13の例であれば、データ解析装置172は、記憶装置170に記憶されたズレΔL
21の一連のデータ、ΔL
22の一連のデータ、ΔL
23の一連のデータ、ΔL
24の一連のデータをそれぞれ読み出し、
図14に例示するように時系列にプロットする。なお、一連のズレΔLをデータ処理できれば、実際にプロットする必要はない。
【0158】
データ解析装置172は、プロットしたズレΔLを近似する曲線を求める(ステップS312)。
データ解析装置172は、求めた近似曲線の振幅A
mと周期Tと周波数1/T求める(ステップS313)。求めた振幅と周期、周波数は、測定対象物3の反射面の微小振動の振幅A
m、周期T及び周波数1/Tを示す。
図14の例であれば、データ解析装置172は、プロットしたズレΔL
21とΔL
22をそれぞれ近似する曲線を求め、求めた近似曲線の振幅A
m21、A
m22と、周期T
21、T
22と、周波数1/T
21、1/T
22を求める。求めた振幅と周期、周波数は、反射面1と2の微小振動の振幅A
m21、A
m22と、周期T
21、T
22及び周波数1/T
21、1/T
22を示す。
【0159】
データ解析装置172は、求めた振幅Am、周期T及び周波数1/Tを記憶装置170に保存し(ステップS314)、処理を終了する。
【0160】
以上説明したように、本実施の形態に係る測定システム1は、スキャン周波数νsの10倍の10MHzの高速で、各反射面までの光路長Lopをμmオーダで測定でき、さらに、反射面の基準位置からのズレΔLをnmオーダで求めることができる。さらに、測定対象物3が光が内部に侵入可能な物質から構成されている場合には、その内部構造・断層構造を計測可能である。
【0161】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、ズレΔLを求めるために、光コムを構成するS偏光をP偏光よりも1/8λ波長板154によりπ/2遅延させる例を示したが、光コムを構成するP偏光をS偏光よりも1/8λ波長板154によりπ/2遅延させるように構成しても良い。P偏光とS偏光の間にπ/2の位相差を与え直交信号を生成できるならば、手法は任意である。
【0162】
偏光を使用せず、スキャン周期の間、各エンベローブの強度を観察し、最大値又は最小値(負の最大値)を判別し、最大値の時を位相α=0又は2π、最小値のときを位相α=πとして、位相αを求めるようにしてもよい。例えば、スキャン周期2πの前半のπと後半のπの間に、cos(α)は最大値(+1)と最小値(-1)の間で変化する。そこで、スキャン周期Tsのうちで前半Ts/2又は後半Ts/2の間で、エンベローブの強度を観察し、最大値となったタイミングが位相αが0又は2πのタイミング、最小値となったタイミングが位相αがπのタイミングと見なして、処理するようにしてもよい。この処理は、リアルタイムで実行しても、複数のエンベローブ強度が得られた後でまとめて実行してもよい。
【0163】
以上の説明では、理解を容易にするため、光学装置15として、参照光路長Lr=0の例を示したが、参照光路長Lrが存在してもよい。この場合、2(Lop-Lr)が光路長差となる。
【0164】
また、以上の説明では、搬送波信号Saの周波数νaを10GHz、スキャン信号Ssの周波数νsを1MHz、変調指数mfを10,サンプリング周波数を10MH,レーザ光の波長λcを1500nmとする例を示したが、これらの数値は任意に変更可能である。
【0165】
また、RF信号生成装置11は、周波数変調信号を生成できるならば、回路構成自体は任意である。光コム生成装置12の構成は、周波数変調信号Siに従って、光コムを構成する周波数成分間の間隔を変調周波数νiに応じて変化させることができるならば、その構成自体は任意である。さらに、間隔が周期的に変動する複数の周波数成分を含む光コムを生成することができれば、RF信号生成装置11と光コム生成装置12に限らず、光コム生成部の構成自体は任意である。
【0166】
上記実施の形態においては、周波数変調信号Siとサンプリングタイミングを同期させるために、スキャン信号Ssに同期した同期信号を、サンプリング装置165と記憶装置170に供給した。ただし、これに限定されず、回路動作の同期を取る手法は任意である。また、サンプリングデータにタイムスタンプを付加したが、これに限定されない。例えば、タイムスタンプに代えて、スキャン信号Ssの位相の値を付加する等してもよい。
【0167】
また、上記実施の形態においては、サンプリング装置165によりサンプリングされたデータを記憶装置170に記憶し、データ解析装置172はこのデータを処理した。データ解析装置172は、サンプリング装置165の出力データを直接処理してもよい。
【0168】
また、上記実施の形態においては、サンプリング装置165によりサンプリングされたデータを記憶装置170に記憶し、データ解析装置172はこのデータを処理した。データ解析装置172は、サンプリング装置165の出力データを直接処理してもよい。
【0169】
測定対象物3が光透過性の物質で、光反射面間に大きな距離がある場合、光路長差Lを測定するタイミングに差が生じる。この場合、光の伝播に必要な時間に応じて、タイミングを補正することにより、正確に光路長差Lを測定できる。例えば、測定対象物3の第1反射面と第2反射面の距離がLpであり、第1反射面が光コム入射側に位置すると仮定する。この場合、第射面と第2反射面との間で、光コムの伝達に2・Lp/cの時間を要する。従って、データ解析装置172は、第1反射面からのタイミングtでのサンプリング値と、第2反射面からのタイミングt+2・Lp/cでのタイミングのサンプリング値とを、同一の光コムによる信号として処理する。このような時間補正により、測定対象物3内の断層構造を正確に測定することができる。
【0170】
なお、光路長差Lと光路長(距離)Lopとは相互に変換可能であり、実質的に等価である。また、位相αと光路長差のズレΔLと光路長のズレΔLopも相互に変換可能であり、実質的に等価である。従って、いずれを最終解としてもよい。
【実施例0171】
以下、測定システム1の実施例を説明する。
(実施例1)
図18は、
図1に示した測定システム1の動作実験のための実験系30を例示する図である。
図18に示すように、実験系30は、固定装置34により建物の床面などに固定される。測定対象物3は、ピエゾ素子に取り付けられて振動が加えられる。
【0172】
測定対象物3として、光を全反射して返す平面鏡を用いた。測定システム1と測定対象物3とを、測定システム1から光コムを測定対象物3の平面に対して直角に出射し、反射光が測定システム1の光学装置15に返るように位置合わせした。また、S偏光がP偏光に対し、往復でπ/2だけ位相が遅延するように、光コムの通路に1/8λ波長板を配置した。なお、実験系30において、光路長Lopは概ね620mmであり、おおむね33次の干渉に対応した。
【0173】
測定システム1の搬送波信号Saの周波数νaを10GHz、スキャン信号Ssの周波数νsを1MHzとし,変調指数mfを10,赤外線レーザの波長λcを1500μmに設定した。サンプリング装置165のサンプリング周波数を10MHzとした。
【0174】
ピエゾ素子に周波数30kHzの交流電圧を印加し、反射板を30kHzで振動させた。
【0175】
図19(A)と(B)は、実験により得られたI干渉信号とQ干渉信号の信号波形図を示す。横軸は時間であり、0.4msの波形を示す。
図19(C)の縦軸は、I干渉信号とQ干渉信号の干渉ピークの信号強度の比から求められた位相αを示し、横軸は時間であり、ピエゾ素子の振動1周期分に相当する0.2msの波形を2つ重ねて示す。
【0176】
図19(C)に示すように、位相α[rad]がピエゾ素子による反射板の振動に伴ってsin波状に変化していること、反射板の1往復目で得られた位相αと2往復目で得られた位相αとがほぼ一致しており、再現性に優れていることが確認された。
【0177】
(実施例2)
図18に示す実験系30の固定装置34に測定対象物として厚さ120μmのガラス板を固定した。ピエゾ素子を用いず、ガラス板に周波数10kHzの純音がでるスピーカを近接して配置することにより、ガラス板を振動させた。
【0178】
図20(A)と(B)は、得られたI信号とQ信号の信号波形図を示す。横軸は時間であり、0~4.5msの波形を示す。
図20(C)は、I信号とQ信号の1周期分の波形を示し、横軸は時間であり、1.632×10
-4~1.644×10
-4秒の間の信号波形を拡大して示す。
【0179】
図21(A)は、干渉信号の強度を示し、横軸は時間であり、
図20(C)と同一の1.632×10
-4~1.644×10
-4秒の間の信号波形を示す。図示するように、4つの干渉ピークが観測されており、ガラスの裏表で2つの反射が確認できた。
【0180】
さらに、
図21(B)は、
図20(C)のI信号とQ信号から得られた位相αを示す。
ガラス板の表面の位相と裏面の位相とが、ガラス板の振動に同一傾向で変動しており、位相高速に正しく測定できていることが確認された。
【0181】
以上説明した測定システム1により実現される光コム干渉法によれば、測定対象物3と測定システム1の間の光路長Lopを、μm領域の精度で測定できる。また、測定対象物3の構造と動きとを同時に測定できる。また、測定システム1においては、周波数成分ν-n~νnの間隔の周波数νiが周波数変調された周期変動周波数であり、FWHM(半値幅)が50μ秒の光コムを生成できる。また、測定システム1おいては、FFT処理が不要で、データ解析装置172における解析処理に要する演算が軽くて済むので、測定対象物3の100kHzの帯域の振動を、実時間的に測定できる。
【0182】
本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 測定システム、3 測定対象物、11 RF信号生成装置、12 光コム生成装置、13 偏波コントローラ、14 サーキュレータ、15 光学装置、16 光信号処理装置、17 情報処理装置、30 実験系、34 固定装置、110 搬送波信号生成装置、112 スキャン信号生成装置、114 周波数変調装置 120 光源装置、122 光変調装置、124 光増幅装置、126 高非線形シフトファイバ、150 コリメータ、152 干渉板、154 1/8λ波長板、160 偏光ビームスプリッタ、161 P偏光用1:1カプラ、162 P偏光用光検出装置、163 S偏光用1:1カプラ、164 S偏光用光検出装置、165 サンプリング装置、170 記憶装置、172 データ解析装置、174 モニタ装置