(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088875
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20220608BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20220608BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20220608BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20220608BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220608BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/405
B60K6/445
B60K1/02
H02K7/116
F16H48/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200991
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3D202AA04
3D202EE21
3D202EE22
3D202EE23
3D202FF15
3D235AA01
3D235BB18
3D235CC12
3D235FF35
3D235HH06
3D235HH16
3J027FA36
3J027FB01
3J027HA01
3J027HA03
3J027HB07
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC05
5H607CC09
5H607DD01
5H607DD02
5H607DD19
5H607EE34
(57)【要約】
【課題】第1回転電機と第2回転電機とが同軸に配置された構成であっても、第1回転電機及び第2回転電機の双方のロータを適切に支持しつつ、軸方向寸法の小型化を図ることができる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】第1ロータ12A及び第2ロータ支持部材13Bを軸方向Lに貫通する第1ロータ支持部材13Aを回転可能に支持する第1軸受B1及び第2軸受B2と、第2ロータ支持部材13Bを回転可能に支持する第3軸受B3と、が設けられ、ケース9は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bが収容された第1室9Aと、出力用差動歯車機構3及び動力伝達機構4が収容された第2室とを軸方向Lに区画する区画部92cと、第1室9Aの軸方向第1側L1を覆うように設けられた側壁部91cと、を備え、第1軸受B1が側壁部91cに支持され、第2軸受B2が第2ロータ支持部材13Bに支持され、第3軸受B3が区画部92cに支持されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
第1ステータ、及び前記第1ステータに対して径方向の内側に配置された第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ステータ、及び前記第2ステータに対して前記径方向の内側に配置された第2ロータを備えた第2回転電機と、
入力される回転を一対の前記出力部材に分配する出力用差動歯車機構と、
前記入力部材と前記第1ロータと前記第2ロータと前記出力用差動歯車機構との間で駆動力の伝達を行う動力伝達機構と、
前記第1回転電機、前記第2回転電機、前記出力用差動歯車機構、及び前記動力伝達機構を収容するケースと、を備え、
前記第1回転電機と前記第2回転電機とが同軸に配置され、
前記出力用差動歯車機構が、前記第1回転電機及び前記第2回転電機とは別軸に配置され、
前記第1回転電機は、前記第1ロータと一体的に回転するように連結された第1ロータ支持部材を備え、
前記第2回転電機は、前記第2ロータと一体的に回転するように連結された第2ロータ支持部材を備え、
前記第1ロータ支持部材は、前記第1ロータ及び前記第2ロータ支持部材を軸方向に貫通した状態で配置され、
前記軸方向における一方側を軸方向第1側、他方側を軸方向第2側として、
前記第1ロータに対して前記軸方向第1側に配置され、前記第1ロータ支持部材を回転可能に支持する第1軸受と、
前記第1ロータに対して前記軸方向第2側に配置され、前記第1ロータ支持部材を回転可能に支持する第2軸受と、
前記第2ロータ支持部材を回転可能に支持する第3軸受と、を更に備え、
前記第1ロータは、前記第2ロータに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記ケースは、前記第1回転電機及び前記第2回転電機が収容された第1室と、当該第1室に対して前記軸方向第2側に配置されて前記出力用差動歯車機構及び前記動力伝達機構が収容された第2室と、を形成していると共に、前記第1室と前記第2室とを前記軸方向に区画する区画部と、前記第1室の前記軸方向第1側を覆うように設けられた側壁部と、を備え、
前記第1軸受が、前記側壁部に支持され、
前記第2軸受が、前記第2ロータ支持部材に支持され、
前記第3軸受が、前記区画部に支持されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ケースは、第1ケース部材と、当該第1ケース部材に対して前記軸方向第2側から接合された第2ケース部材と、を備え、
前記側壁部が、前記第1ケース部材に設けられ、
前記区画部が、前記第2ケース部材に設けられ、
前記第1ステータ及び前記第2ステータが、前記第1ケース部材に固定されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第2ロータ支持部材は、前記軸方向に沿って延在する筒状部を備え、
前記第1ロータ支持部材は、前記筒状部を前記軸方向に貫通した状態で配置された軸状部を備え、
前記区画部は、前記筒状部に対して前記径方向の外側であって前記筒状部と同軸に配置された筒状内周面を備え、
前記第2軸受は、前記軸状部の外周面と前記筒状部の内周面との前記径方向の間に配置され、
前記第3軸受は、前記筒状部の外周面と前記区画部の前記筒状内周面との前記径方向の間に配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第2軸受及び前記第3軸受が、前記第2ロータに対して前記径方向の内側であって、前記径方向に沿う径方向視で前記第2ロータと重複する位置に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記動力伝達機構は、前記第1ロータに駆動連結された第1回転要素と、前記入力部材に駆動連結された第2回転要素と、前記第2ロータ及び前記出力用差動歯車機構に駆動連結された第3回転要素と、を有する分配用差動歯車機構を備え、
前記入力部材及び前記分配用差動歯車機構が、前記第1回転電機及び前記第2回転電機と同軸に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記第1ステータは、第1ステータコアと、当該第1ステータコアから前記軸方向に突出したコイル部分である筒状の第1コイルエンド部と、を備え、
前記第2ステータは、第2ステータコアと、当該第2ステータコアから前記軸方向に突出したコイル部分である筒状の第2コイルエンド部と、を備え、
前記第1コイルエンド部は、前記第2コイルエンド部に対して前記径方向の内側又は外側であって、前記径方向に沿う径方向視で前記第2コイルエンド部と重複する位置に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの回転電機と出力用差動歯車機構とを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置は、第1回転電機(60)と、第2回転電機(70)と、内燃機関(50)に駆動連結される入力部材(1)と、第1回転電機(60)、第2回転電機(70)、及び入力部材(1)から伝達された回転を、それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材に分配する出力用差動歯車機構(45)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/128288号(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用駆動装置では、第1回転電機(60)と第2回転電機(70)とが同軸に配置されている。そして、第1回転電機(60)と第2回転電機(70)とが、ケース(52)に設けられた支持壁部を挟んで軸方向に並んで配置されている。第1回転電機(60)のロータ軸(2c)は、一対の第1軸受(61,62)によって回転可能に支持されている。第2回転電機(70)のロータ軸(2b)は、一対の第2軸受(71,72)によって回転可能に支持されている。一対の第1軸受のうちの一方の軸受(61)と、一対の第2軸受のうちの一方の軸受(72)とは、軸方向に並んで配置された状態で、支持壁部に支持されている。
【0006】
このように、特許文献1の車両用駆動装置では、第1回転電機(60)と第2回転電機(70)とが同軸に配置された構成において、第1回転電機(60)のロータ軸(2c)の軸受(61)と、第2回転電機(70)のロータ軸(2b)の軸受(72)とのそれぞれを支持するために、軸方向における第1回転電機(60)と第2回転電機(70)との間に支持壁部が設けられている。そのため、車両用駆動装置の軸方向寸法が大型化し易いという課題があった。
【0007】
そこで、第1回転電機と第2回転電機とが同軸に配置された構成であっても、第1回転電機及び第2回転電機の双方のロータを適切に支持しつつ、軸方向寸法の小型化を図ることができる車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
第1ステータ、及び前記第1ステータに対して径方向の内側に配置された第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ステータ、及び前記第2ステータに対して前記径方向の内側に配置された第2ロータを備えた第2回転電機と、
入力される回転を一対の前記出力部材に分配する出力用差動歯車機構と、
前記入力部材と前記第1ロータと前記第2ロータと前記出力用差動歯車機構との間で駆動力の伝達を行う動力伝達機構と、
前記第1回転電機、前記第2回転電機、前記出力用差動歯車機構、及び前記動力伝達機構を収容するケースと、を備え、
前記第1回転電機と前記第2回転電機とが同軸に配置され、
前記出力用差動歯車機構が、前記第1回転電機及び前記第2回転電機とは別軸に配置され、
前記第1回転電機は、前記第1ロータと一体的に回転するように連結された第1ロータ支持部材を備え、
前記第2回転電機は、前記第2ロータと一体的に回転するように連結された第2ロータ支持部材を備え、
前記第1ロータ支持部材は、前記第1ロータ及び前記第2ロータ支持部材を軸方向に貫通した状態で配置され、
前記軸方向における一方側を軸方向第1側、他方側を軸方向第2側として、
前記第1ロータに対して前記軸方向第1側に配置され、前記第1ロータ支持部材を回転可能に支持する第1軸受と、
前記第1ロータに対して前記軸方向第2側に配置され、前記第1ロータ支持部材を回転可能に支持する第2軸受と、
前記第2ロータ支持部材を回転可能に支持する第3軸受と、を更に備え、
前記第1ロータは、前記第2ロータに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記ケースは、前記第1回転電機及び前記第2回転電機が収容された第1室と、当該第1室に対して前記軸方向第2側に配置されて前記出力用差動歯車機構及び前記動力伝達機構が収容された第2室と、を形成していると共に、前記第1室と前記第2室とを前記軸方向に区画する区画部と、前記第1室の前記軸方向第1側を覆うように設けられた側壁部と、を備え、
前記第1軸受が、前記側壁部に支持され、
前記第2軸受が、前記第2ロータ支持部材に支持され、
前記第3軸受が、前記区画部に支持されている点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、第1回転電機と第2回転電機とが同軸に配置された構成において、ケースに形成された第1室に第1回転電機と第2回転電機とが共に収容されている。そして、第2ロータ支持部材を支持する第3軸受が区画部に支持されていることで、当該第2ロータ支持部材がケースに支持されている。そのため、第2ロータを適切に支持することができる。また、第2ロータ支持部材を軸方向に貫通する第1ロータ支持部材が、第2軸受を介して第2ロータ支持部材に支持されている。これにより、第1ロータ支持部材は、第1ロータに対して軸方向第2側において、第2軸受、第2ロータ支持部材、及び第3軸受を介してケースに支持されている。そのため、第1回転電機と第2回転電機との軸方向の間に支持壁等のケースの支持部を設けなくても、第1ロータを適切に支持することができる。したがって、第1回転電機と第2回転電機との軸方向の間にケースの支持部が設けられた構成に比べて、第1回転電機と第2回転電機とを軸方向に近づけて配置することができ、車両用駆動装置の軸方向寸法の小型化を図ることができる。
また、第1ロータ支持部材は、第1ロータに対して軸方向第1側において、第1軸受を介してケースの側壁部に支持されている。このように第1軸受及び第2軸受が配置されていることにより、第1ロータ支持部材は、第1ロータに対して軸方向の両側において、軸受を介してケースに対して適切に支持されている。したがって、軸方向における第1ロータ支持部材の支持間隔を適切に確保することができ、安定的に第1ロータを支持することができる。
以上のように、本特徴構成によれば、第1回転電機と第2回転電機とが同軸に配置された構成であっても、第1ロータ及び第2ロータを適切に支持しつつ、車両用駆動装置の軸方向寸法の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
【
図2】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【
図3】実施形態に係る車両用駆動装置における第1回転電機及び第2回転電機の周辺の構成を示す断面図
【
図4】実施形態に係る車両用駆動装置における動力伝達機構の周辺の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bと、入力部材21と、一対の出力部材22と、出力用差動歯車機構3と、動力伝達機構4と、ケース9と、を備えている。本実施形態では、動力伝達機構4は、分配用差動歯車機構5と、減速用差動歯車機構6と、カウンタギヤ機構7と、を備えている。
【0012】
第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、それらの回転軸心としての第1軸X1上に配置されている。つまり、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとが同軸に配置されている。本実施形態では、入力部材21、分配用差動歯車機構5、及び減速用差動歯車機構6も、第1軸X1上に配置されている。カウンタギヤ機構7は、その回転軸心としての第2軸X2上に配置されている。出力用差動歯車機構3は、その回転軸心としての第3軸X3上に配置されている。つまり、出力用差動歯車機構3が、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bとは別軸に配置されている。本実施形態では、一対の出力部材22も、第3軸X3上に配置されている。
【0013】
本例では、上記の軸X1~X3は、互いに平行に配置されている。以下の説明では、上記の軸X1~X3に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおいて、内燃機関EGに対して入力部材21が配置される側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。また、上記の軸X1~X3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合や、どの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0014】
ケース9は、第1回転電機1A、第2回転電機1B、出力用差動歯車機構3、及び動力伝達機構4を収容している。本実施形態では、ケース9は、第1ケース部材91と、当該第1ケース部材91に対して軸方向第2側L2から接合された第2ケース部材92と、当該第2ケース部材92に対して軸方向第2側L2から接合された第3ケース部材93と、を備えている。
【0015】
本実施形態では、第1ケース部材91は、第1周壁部91aと、第2周壁部91bと、第1側壁部91cと、を備えている。第1周壁部91aは、第1回転電機1Aの径方向Rの外側を囲む筒状に形成されている。第2周壁部91bは、第2回転電機1Bの径方向Rの外側を囲む筒状に形成されている。本実施形態では、第2周壁部91bは、第1周壁部91aに対して軸方向第2側L2に配置されている。そして、第2周壁部91bは、第1周壁部91aよりも大径に形成されている。第1側壁部91cは、第1周壁部91aの軸方向第1側L1の開口を閉塞するように形成されている。
【0016】
本実施形態では、第2ケース部材92は、第3周壁部92aと、第2側壁部92bと、区画部92cと、を備えている。第3周壁部92aは、入力部材21と、一対の出力部材22と、出力用差動歯車機構3と、動力伝達機構4との径方向Rの外側を囲む筒状に形成されている。本実施形態では、第3周壁部92aは、入力部材21と、動力伝達機構4との径方向Rの外側を囲む第1部分と、一対の出力部材22と、出力用差動歯車機構3との径方向Rの外側を囲む第2部分とを含む。第3周壁部92aの第1部分は、第2周壁部91bに対して軸方向第2側L2から接合されている。第2側壁部92bは、第3周壁部92aの第2部分における軸方向第1側L1の開口を閉塞するように形成されている。区画部92cは、第3周壁部92aの第1部分における軸方向第1側L1の開口を閉塞するように形成されている。
【0017】
本実施形態では、第3ケース部材93は、第3側壁部93aを備えている。第3側壁部93aは、第3周壁部92aの軸方向第2側L2の開口を閉塞するように形成されている。本実施形態では、第3側壁部93aは、第3周壁部92aに対して軸方向第2側L2から接合されている。
【0018】
ケース9には、第1室9Aと、第2室9Bとが形成されている。第1室9Aは、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bを収容する空間である。第2室9Bは、出力用差動歯車機構3及び動力伝達機構4を収容する空間である。第2室9Bは、第1室9Aに対して軸方向第2側L2に配置されている。本実施形態では、入力部材21、及び一対の出力部材22は、第2室9Bに収容されている。ただし、入力部材21は、その一部がケース9の外部に露出した状態で、第2室9Bに収容されている。
【0019】
本実施形態では、第1ケース部材91の第1周壁部91a、第2周壁部91b、及び第1側壁部91cと、第2ケース部材92の区画部92cとによって、第1室9Aが形成されている。また、第2ケース部材92の第3周壁部92a、第2側壁部92b、及び区画部92cと、第3ケース部材93の第3側壁部93aとによって、第2室9Bが形成されている。つまり、区画部92cは、第1室9Aと第2室9Bとを軸方向Lに区画するように設けられている。また、第1側壁部91cは、第1室9Aの軸方向第1側L1を覆うように設けられている。
【0020】
このように、ケース9は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bが収容された第1室9Aと、当該第1室9Aに対して軸方向第2側L2に配置されて出力用差動歯車機構3及び動力伝達機構4が収容された第2室9Bと、を形成している。そして、ケース9は、第1室9Aと第2室9Bとを軸方向Lに区画する区画部92cと、第1室9Aの軸方向第1側L1を覆うように設けられた第1側壁部91cと、を備えている。
【0021】
第1回転電機1Aは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。そのため、第1回転電機1Aは、蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。この蓄電装置としては、バッテリやキャパシタ等の公知の各種の蓄電装置を用いることができる。本実施形態では、第1回転電機1Aは、内燃機関EGの駆動力により発電を行って、蓄電装置を充電し、或いは第2回転電機1Bを駆動するための電力を供給するジェネレータとして機能する。ただし、第1回転電機1Aは、車両の高速走行時や内燃機関EGの始動時等には、力行して駆動力を発生するモータとして機能する場合もある。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0022】
第1回転電機1Aは、第1ステータ11Aと、当該第1ステータ11Aに対して径方向Rの内側に配置された第1ロータ12Aと、を備えている。
【0023】
第1ステータ11Aは、第1ステータコア111Aと、第1コイルエンド部112Aと、を備えている。第1ステータコア111Aは、非回転部材に固定されている。本実施形態では、第1ステータコア111Aは、第1ケース部材91の第1周壁部91aに固定されている。第1コイルエンド部112Aは、軸方向Lに延在する筒状に形成されている。第1コイルエンド部112Aは、第1ステータコア111Aから軸方向Lに突出したコイル部分である。具体的には、第1ステータコア111Aには、当該第1ステータコア111Aから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するようにコイルが巻装されている。そして、このコイルにおける第1ステータコア111Aから軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2に突出する部分のそれぞれが、第1コイルエンド部112Aに相当する。
【0024】
第1ロータ12Aは、第1ステータコア111Aに対して回転自在に支持された第1ロータコア121Aを備えている。なお、図示は省略するが、第1ロータコア121Aの内部には、永久磁石が配置されている。
【0025】
第2回転電機1Bは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。そのため、第2回転電機1Bも、第1回転電機1Aと同様に、上記の蓄電装置と電気的に接続されている。本実施形態では、第2回転電機1Bは、主に車両を走行させるための駆動力を発生するモータとして機能する。ただし、車両の減速時等には、第2回転電機1Bは、車両の慣性力を電気エネルギとして回生するジェネレータとして機能する場合もある。
【0026】
第2回転電機1Bは、第2ステータ11Bと、当該第2ステータ11Bに対して径方向Rの内側に配置された第2ロータ12Bと、を備えている。
【0027】
第2ステータ11Bは、第2ステータコア111Bと、第2コイルエンド部112Bと、を備えている。第2ステータコア111Bは、非回転部材に固定されている。本実施形態では、第2ステータコア111Bは、第1ケース部材91の第2周壁部91bに固定されている。第2コイルエンド部112Bは、軸方向Lに延在する筒状に形成されている。第2コイルエンド部112Bは、第2ステータコア111Bから軸方向Lに突出したコイル部分である。具体的には、第2ステータコア111Bには、当該第2ステータコア111Bから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するようにコイルが巻装されている。そして、このコイルにおける第2ステータコア111Bから軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2に突出する部分のそれぞれが、第2コイルエンド部112Bに相当する。
【0028】
第2ロータ12Bは、第2ステータコア111Bに対して回転自在に支持された第2ロータコア121Bと、当該第2ロータコア121Bを保持する保持体122B(
図3参照)と、を備えている。本実施形態では、保持体122Bは、第2ロータコア121Bを軸方向Lの両側から把持する一対の板部材(所謂、エンドプレート)である。なお、図示は省略するが、第2ロータコア121Bの内部には、永久磁石が配置されている。
【0029】
第1回転電機1Aは、第2回転電機1Bに対して軸方向第1側L1に配置されている。つまり、第1ロータ12Aは、第2ロータ12Bに対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0030】
上述したように、本実施形態では、第1ケース部材91が第1周壁部91aを備え、第2ケース部材92が区画部92cを備えている。また、本実施形態では、第1ステータコア111Aが、第1ケース部材91の第1周壁部91aに固定されている。そして、第2ステータコア111Bが、第1ケース部材91の第2周壁部91bに固定されている。つまり、本実施形態では、第1ステータ11A及び第2ステータ11Bが、第1ケース部材91に固定されている。
【0031】
このように、本実施形態では、ケース9は、第1ケース部材91と、当該第1ケース部材91に対して軸方向第2側L2から接合された第2ケース部材92と、を備え、
第1側壁部91cが、第1ケース部材91に設けられ、
区画部92cが、第2ケース部材92に設けられ、
第1ステータ11A及び第2ステータ11Bが、第1ケース部材91に固定されている。
【0032】
この構成によれば、第1ケース部材91に設けられた第1側壁部91cと第2ケース部材92に設けられた区画部92cとの軸方向Lの間に第1室9Aを形成し、当該第1室9Aに第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとを共に収容することができると共に、第1ステータ11A及び第2ステータ11Bの双方をケース9によって適切に支持することができる。したがって、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bを、ケース9に適切に収容することができると共に、ケース9によって適切に支持することができる。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、第1回転電機1Aの第1コイルエンド部112Aと、第2回転電機1Bの第2コイルエンド部112Bとは、径方向Rの寸法が互いに異なっている。そして、第1コイルエンド部112Aは、第2コイルエンド部112Bに対して径方向Rの内側又は外側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2コイルエンド部112Bと重複する位置に配置されている。本例では、第1コイルエンド部112Aは、第2コイルエンド部112Bよりも径方向Rの寸法が小さく、第2コイルエンド部112Bに対して径方向Rの内側に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0034】
このように、本実施形態では、第1ステータ11Aは、第1ステータコア111Aと、当該第1ステータコア111Aから軸方向Lに突出したコイル部分である筒状の第1コイルエンド部112Aと、を備え、
第2ステータ11Bは、第2ステータコア111Bと、当該第2ステータコア111Bから軸方向Lに突出したコイル部分である筒状の第2コイルエンド部112Bと、を備え、
第1コイルエンド部112Aは、第2コイルエンド部112Bに対して径方向Rの内側又は外側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2コイルエンド部112Bと重複する位置に配置されている。
【0035】
この構成によれば、第1コイルエンド部112Aと第2コイルエンド部112Bとを径方向視で互いに重複させて配置しているため、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとを軸方向Lに近づけて配置することができる。上記の通り、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間にケース9の支持部を設ける必要がないため、このような構成を実現し易い。このように、本構成によれば、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法の更なる小型化を図ることができる。
【0036】
第1回転電機1Aは、第1ロータ12Aと一体的に回転するように連結された第1ロータ支持部材13Aを備えている。第1ロータ支持部材13Aは、第1ロータ12Aを支持する部材である。本実施形態では、第1ロータ支持部材13Aは、軸状部131Aを備えている。軸状部131Aは、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。
【0037】
第2回転電機1Bは、第2ロータ12Bと一体的に回転するように連結された第2ロータ支持部材13Bを備えている。第2ロータ支持部材13Bは、第2ロータ12Bを支持する部材である。本実施形態では、第2ロータ支持部材13Bは、第1筒状部131Bと、第2筒状部132Bと、連結部133Bと、を備えている。
【0038】
第1筒状部131B及び第2筒状部132Bのそれぞれは、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。本実施形態では、第1筒状部131Bは、第2筒状部132Bよりも径方向Rの寸法が大きい。そして、第1筒状部131Bは、第2ロータ12Bに対して径方向Rの内側から接するように配置されている。また、第2筒状部132Bは、第1筒状部131Bよりも径方向Rの内側に配置されている。本実施形態では、第1筒状部131B及び第2筒状部132Bは、第1軸X1上に配置されている。つまり、第1筒状部131Bと第2筒状部132Bとは、同軸上に配置されている。連結部133Bは、第1筒状部131Bと第2筒状部132Bとを連結するように、径方向Rに沿って延在している。
【0039】
第1ロータ支持部材13Aは、第1ロータ12A及び第2ロータ支持部材13Bを軸方向Lに貫通した状態で配置されている。本実施形態では、第1ロータ支持部材13Aの軸状部131Aが、第2ロータ支持部材13Bの第2筒状部132Bを軸方向Lに貫通した状態で配置されている。
【0040】
図1に示すように、入力部材21は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、入力部材21は、第3ケース部材93の第3側壁部93aから軸方向第2側L2に突出するように、第3側壁部93aを軸方向Lに貫通している。
【0041】
図2に示すように、入力部材21は、内燃機関EGに駆動連結されている。本実施形態では、入力部材21は、ダンパ装置DPを介して、内燃機関EGの出力軸(クランクシャフト等)に駆動連結されている。ダンパ装置DPは、伝達されるトルクの変動を減衰する装置である。本実施形態では、ダンパ装置DPには、出力側から過大なトルクが入力される等した場合に、一対の出力部材22から内燃機関EGまでの動力伝達経路に過大な負荷が作用することを制限するためのトルクリミッタが設けられている。
【0042】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0043】
動力伝達機構4は、入力部材21と第1ロータ12Aと第2ロータ12Bと出力用差動歯車機構3との間で駆動力の伝達を行うように構成されている。上述したように、本実施形態では、動力伝達機構4は、分配用差動歯車機構5と、減速用差動歯車機構6と、カウンタギヤ機構7と、を備えている。
【0044】
分配用差動歯車機構5は、入力部材21に伝達される内燃機関EGの駆動力を、第1回転電機1Aと、第2回転電機1B及び出力用差動歯車機構3とに分配するように構成されている。このように、本実施形態に係る車両用駆動装置100は、所謂、スプリット型のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
【0045】
図4に示すように、分配用差動歯車機構5は、第1回転要素E1と、第2回転要素E2と、第3回転要素E3と、を備えている。本実施形態では、分配用差動歯車機構5の回転要素の回転速度の順は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3の順となっている。また、分配用差動歯車機構5は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0046】
第1回転要素E1は、第1ロータ12Aに駆動連結されている。本実施形態では、第1回転要素E1は、第1サンギヤS5である。第1サンギヤS5は、第1ロータ12Aと一体的に回転するように連結されている。図示の例では、第1サンギヤS5は、当該第1サンギヤS5に対して径方向Rの内側に第1ロータ支持部材13Aの軸状部131Aが配置された状態で、スプライン係合により軸状部131Aに連結されている。
【0047】
第2回転要素E2は、入力部材21に駆動連結されている。本実施形態では、第2回転要素E2は、第1サンギヤS5に噛み合う第1ピニオンギヤP5を回転可能に支持する第1キャリヤC5である。第1キャリヤC5は、入力部材21と一体的に回転するように連結されている。第1ピニオンギヤP5は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第1サンギヤS5を中心として回転(公転)する。第1ピニオンギヤP5は、その公転軌跡に沿って複数設けられている。
【0048】
第3回転要素E3は、第2ロータ12B及び出力用差動歯車機構3に駆動連結されている。本実施形態では、第3回転要素E3は、第1ピニオンギヤP5に噛み合う第1リングギヤR5である。本実施形態では、第1リングギヤR5は、軸方向Lに沿って延在する筒状のギヤ形成部材51と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、第1リングギヤR5は、ギヤ形成部材51と一体的に形成されている。
【0049】
このように、本実施形態では、動力伝達機構4は、第1ロータ12Aに駆動連結された第1回転要素E1と、入力部材21に駆動連結された第2回転要素E2と、第2ロータ12B及び出力用差動歯車機構3に駆動連結された第3回転要素E3と、を有する分配用差動歯車機構5を備え、
入力部材21及び分配用差動歯車機構5が、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bと同軸に配置されている。
【0050】
この構成によれば、分配用差動歯車機構5を備えることにより、内燃機関EGを効率の良い回転速度で動作させつつ、第1回転電機1Aの回転速度を調整することにより、車速に応じた回転速度で内燃機関EG及び第1回転電機1Aの駆動力を出力用差動歯車機構3に伝達することができる。また、第2回転電機1Bの駆動力を、分配用差動歯車機構5を介さずに、必要に応じて出力用差動歯車機構3に伝達することができる。また、本構成によれば、入力部材21及び分配用差動歯車機構5が第1回転電機1A及び第2回転電機1Bと同軸に配置されるが、上記の通り、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとを軸方向Lに近づけて配置できるため、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法が大きくなることを抑制することができる。
【0051】
減速用差動歯車機構6は、第2ロータ12Bの回転を減速して、分配用差動歯車機構5の第3回転要素E3に伝達するように構成されている。本実施形態では、減速用差動歯車機構6は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。具体的には、減速用差動歯車機構6は、第2サンギヤS6と、当該第2サンギヤS6に噛み合う第2ピニオンギヤP6を支持する第2キャリヤC6と、第2サンギヤS6よりも径方向Rの外側に配置されて第2ピニオンギヤP6に噛み合う第2リングギヤR6と、を備えている。
【0052】
本実施形態では、第2サンギヤS6は、減速用差動歯車機構6の入力要素であり、第2ロータ12Bと一体的に回転するように連結されている。図示の例では、第2サンギヤS6は、第2ロータ支持部材13Bの第2筒状部132Bと一体的に形成されている。
【0053】
本実施形態では、第2キャリヤC6は、ケース9に対して相対回転不能に連結されている。図示の例では、第2キャリヤC6は、第2ケース部材92の区画部92cに固定されている。第2ピニオンギヤP6は、第2キャリヤC6により回転可能に支持されている。第2ピニオンギヤP6は、その公転軌跡に沿って複数設けられている。
【0054】
本実施形態では、第2リングギヤR6は、減速用差動歯車機構6の出力要素であり、分配用差動歯車機構5の第1リングギヤR5と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、第2リングギヤR6は、ギヤ形成部材51の内周面に形成されている。
【0055】
本実施形態では、減速用差動歯車機構6は、軸方向Lにおける第2ロータ12Bと分配用差動歯車機構5との間において、分配用差動歯車機構5に隣接して配置されている。図示の例では、減速用差動歯車機構6は、分配用差動歯車機構5に対して軸方向第1側L1に隣接すると共に、第2ロータ12Bに対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。
【0056】
図1に示すように、カウンタギヤ機構7は、カウンタ入力ギヤ71と、カウンタ出力ギヤ72と、これらが一体的に回転するように連結するカウンタ軸73と、を備えている。
【0057】
カウンタ入力ギヤ71は、カウンタギヤ機構7の入力要素である。カウンタ入力ギヤ71は、カウンタ駆動ギヤ52に噛み合っている。本実施形態では、カウンタ駆動ギヤ52は、ギヤ形成部材51と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、カウンタ駆動ギヤ52は、ギヤ形成部材51の外周面に形成されている。
【0058】
カウンタ出力ギヤ72は、カウンタギヤ機構7の出力要素である。本実施形態では、カウンタ出力ギヤ72は、カウンタ入力ギヤ71よりも小径に形成されている。また、本実施形態では、カウンタ出力ギヤ72は、カウンタ入力ギヤ71よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0059】
カウンタ軸73は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。図示の例では、カウンタ入力ギヤ71は、スプライン係合によりカウンタ軸73に連結されている。そして、カウンタ出力ギヤ72は、カウンタ軸73と一体的に形成されている。
【0060】
出力用差動歯車機構3は、当該出力用差動歯車機構3に入力される回転を、一対の出力部材22に分配するように構成されている。本実施形態では、出力用差動歯車機構3は、当該出力用差動歯車機構3の入力要素である差動入力ギヤ31を備えている。差動入力ギヤ31は、カウンタギヤ機構7のカウンタ出力ギヤ72に噛み合っている。つまり、本実施形態では、出力用差動歯車機構3は、差動入力ギヤ31の回転を一対の出力部材22に分配する。
【0061】
本実施形態では、出力用差動歯車機構3の軸方向Lの配置領域が、分配用差動歯車機構5の軸方向Lの配置領域と重なっている。つまり、出力用差動歯車機構3の軸方向Lの配置領域内に、分配用差動歯車機構5の軸方向Lの配置領域の少なくとも一部が含まれている。図示の例では、出力用差動歯車機構3の軸方向Lの配置領域が、分配用差動歯車機構5及び減速用差動歯車機構6の双方の軸方向Lの配置領域と重なっている。
【0062】
本実施形態では、出力用差動歯車機構3は、上記の差動入力ギヤ31に加えて、差動ケース32と、一対の差動ピニオンギヤ33と、一対のサイドギヤ34と、を備えている。ここでは、一対の差動ピニオンギヤ33、及び一対のサイドギヤ34は、いずれも傘歯車である。
【0063】
差動ケース32は、差動入力ギヤ31と一体的に回転するように連結されている。差動ケース32は、中空の部材である。差動ケース32の内部には、一対の差動ピニオンギヤ33と、一対のサイドギヤ34と、が収容されている。
【0064】
一対の差動ピニオンギヤ33は、第3軸X3を基準とした径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向するように配置されている。そして、一対の差動ピニオンギヤ33のそれぞれは、差動ケース32と一体的に回転するように支持された差動ピニオンシャフト33aに取り付けられている。一対の差動ピニオンギヤ33のそれぞれは、差動ピニオンシャフト33aを中心として回転(自転)可能、かつ、第3軸X3を中心として回転(公転)可能に構成されている。
【0065】
一対のサイドギヤ34は、出力用差動歯車機構3の出力要素である。一対のサイドギヤ34は、互いに軸方向Lに間隔を空けて、一対の差動ピニオンシャフト33aを挟んで対向するように配置されている。一対のサイドギヤ34は、一対の差動ピニオンギヤ33に噛み合っている。一対のサイドギヤ34のそれぞれは、出力部材22と一体的に回転するように連結されている。
【0066】
一対の出力部材22のそれぞれは、車輪W(
図2参照)に駆動連結されている。本実施形態では、一対の出力部材22のそれぞれは、サイドギヤ34と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、一対の出力部材22のそれぞれは、サイドギヤ34と一体的に形成されている。また、本実施形態では、一対の出力部材22のそれぞれは、車輪Wに駆動連結されたドライブシャフトDSと一体的に回転するように連結されている。図示の例では、一対の出力部材22のそれぞれは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成され、サイドギヤ34に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、出力部材22に対して径方向Rの内側にドライブシャフトDSが挿入され、それらがスプライン係合によって互いに連結されている。
【0067】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、第1ロータ支持部材13Aを回転可能に支持する第1軸受B1及び第2軸受B2と、第2ロータ支持部材13Bを回転可能に支持する第3軸受B3と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、入力部材21を回転可能に支持する第4軸受B4と、ギヤ形成部材51を回転可能に支持する第5軸受B5及び第6軸受B6と、カウンタギヤ機構7のカウンタ軸73を回転可能に支持する第7軸受B7及び第8軸受B8と、出力用差動歯車機構3の差動ケース32を回転可能に支持する第9軸受B9及び第10軸受B10と、を更に備えている。
【0068】
図3に示すように、第1軸受B1は、第1ロータ12Aに対して軸方向第1側L1に配置されている。第1軸受B1は、第1側壁部91cに支持されている。本実施形態では、第1軸受B1は、第1側壁部91cにより径方向Rの外側から支持されている。そして、第1軸受B1は、径方向Rの外側から第1ロータ支持部材13Aの軸状部131Aを回転可能に支持している。
【0069】
本例では、第1軸受B1は、軸状部131Aの外周面13aに形成された軸方向第1側L1を向く第1段差面14aに対して軸方向第1側L1から対向するように配置されている。これにより、第1ロータ支持部材13Aは、第1軸受B1を介して第1側壁部91cに対して軸方向Lに支持されている。その結果、第1ロータ支持部材13Aの軸方向第1側L1への移動が規制される。
【0070】
第2軸受B2は、第1ロータ12Aに対して軸方向第2側L2に配置されている。第2軸受B2は、第2ロータ支持部材13Bに支持されている。本実施形態では、第2軸受B2は、第1ロータ支持部材13Aの軸状部131Aの外周面13aと、第2ロータ支持部材13Bの第2筒状部132Bの内周面13bとの径方向Rの間に配置されている。このように、第2軸受B2は、第1ロータ支持部材13Aを第2ロータ支持部材13Bに対して相対的に回転可能に支持している。
【0071】
本例では、第2軸受B2は、軸状部131Aの外周面13aに形成された軸方向第2側L2を向く第2段差面14bに対して軸方向第2側L2から対向するように配置されている。また、第2軸受B2は、第2筒状部132Bの内周面13bに形成された軸方向第1側L1を向く第3段差面14cに対して軸方向第1側L1から対向するように配置されている。後述するように、第2ロータ支持部材13Bは、第3軸受B3を介して区画部92cに対して軸方向Lに支持されている。そのため、第1ロータ支持部材13Aは、第2軸受B2、第2ロータ支持部材13B、及び第3軸受B3を介して区画部92cに対して軸方向Lに支持されている。その結果、第1ロータ支持部材13Aの軸方向第2側L2への移動が規制される。
【0072】
第3軸受B3は、区画部92cに支持されている。本実施形態では、区画部92cは、第2ロータ支持部材13Bの第2筒状部132Bに対して径方向Rの外側であって第2筒状部132Bと同軸に配置された筒状内周面92dを備えている。そして、第3軸受B3は、第2筒状部132Bの外周面13cと、区画部92cの筒状内周面92dとの径方向Rの間に配置されている。本実施形態では、筒状内周面92dは、区画部92cにおける軸方向第1側L1に突出するように形成された筒状部分の内周面である。図示の例では、一対の第3軸受B3が互いに軸方向Lに隣接して配置されている。
【0073】
本例では、一対の第3軸受B3は、第2筒状部132Bの外周面13cに形成された軸方向第2側L2を向く一対の第4段差面14dのそれぞれに対して軸方向第2側L2から対向するように配置されている。また、一対の第3軸受B3は、筒状内周面92dに形成された軸方向第1側L1を向く一対の第5段差面14eのそれぞれに対して軸方向第1側L1から対向するように配置されている。これにより、第2ロータ支持部材13Bは、一対の第3軸受B3を介して区画部92cに対して軸方向Lに支持されている。その結果、第2ロータ支持部材13Bの軸方向第2側L2への移動が規制される。また、前述の通り、第1ロータ支持部材13Aは、第1軸受B1を介して第1側壁部91cに対して軸方向Lに支持されている。そのため、第2ロータ支持部材13Bは、第2軸受B2、第1ロータ支持部材13A、及び第1軸受B1を介して第1側壁部91cに対して軸方向Lに支持されている。その結果、第2ロータ支持部材13Bの軸方向第1側L1への移動も規制される。なお、本例では、一対の第3軸受B3のうち、軸方向第1側L1の第3軸受B3の方が、軸方向第2側L2の第3軸受B3よりも大径とされている。したがって、第4段差面14d及び第5段差面14eのそれぞれも、軸方向第1側L1の方が大径となる2段階の段差面となっている。
【0074】
このように、本実施形態では、第2ロータ支持部材13Bは、軸方向Lに沿って延在する第2筒状部132Bを備え、
第1ロータ支持部材13Aは、第2筒状部132Bを軸方向Lに貫通した状態で配置された軸状部131Aを備え、
区画部92cは、第2筒状部132Bに対して径方向Rの外側であって第2筒状部132Bと同軸に配置された筒状内周面92dを備え、
第2軸受B2は、軸状部131Aの外周面13aと第2筒状部132Bの内周面13bとの径方向Rの間に配置され、
第3軸受B3は、第2筒状部132Bの外周面13cと区画部92cの筒状内周面92dとの径方向Rの間に配置されている。
【0075】
この構成によれば、第1ロータ支持部材13Aの軸状部131Aを、第2軸受B2、第2ロータ支持部材13Bの第2筒状部132B、及び、第3軸受B3を介して、ケース9の区画部92cに適切に支持することができる。
【0076】
また、本実施形態では、第2軸受B2及び第3軸受B3が、第2ロータ12Bに対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2ロータ12Bと重複する位置に配置されている。図示の例では、第2軸受B2の一部が、径方向視で第2ロータ12Bと重複している。また、軸方向第1側L1の第3軸受B3の全体が、径方向視で第2ロータ12Bと重複している。そして、軸方向第2側L2の第3軸受B3の一部が、径方向視で第2ロータ12Bと重複している。
【0077】
この構成によれば、第2ロータ12Bに対して径方向Rの内側であって径方向視で当該第2ロータ12Bと重複する空間を利用して、第2軸受B2及び第3軸受B3を配置することができる。したがって、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法の更なる小型化を図ることができる。
【0078】
図1に示すように、第4軸受B4は、第3側壁部93aに支持されている。本実施形態では、第4軸受B4は、第3側壁部93aにより径方向Rの外側から支持されている。そして、第4軸受B4は、径方向Rの外側から入力部材21を回転可能に支持している。
【0079】
第5軸受B5は、区画部92cに支持されている。第6軸受B6は、第3側壁部93aに支持されている。本実施形態では、第5軸受B5は、区画部92cにより径方向Rの外側から支持され、第6軸受B6は、第3側壁部93aにより径方向Rの内側から支持されている。そして、第5軸受B5が径方向Rの外側から、第6軸受B6が径方向Rの内側から、ギヤ形成部材51を回転可能に支持している。
【0080】
第7軸受B7は、区画部92cに支持されている。第8軸受B8は、第3側壁部93aに支持されている。本実施形態では、第7軸受B7は、区画部92cにより径方向Rの外側から支持され、第8軸受B8は、第3側壁部93aにより径方向Rの外側から支持されている。そして、第7軸受B7及び第8軸受B8は、径方向Rの外側からカウンタギヤ機構7のカウンタ軸73を回転可能に支持している。
【0081】
第9軸受B9は、第2側壁部92bに支持されている。第10軸受B10は、第3側壁部93aに支持されている。本実施形態では、第9軸受B9は、第2側壁部92bにより径方向Rの外側から支持され、第10軸受B10は、第3側壁部93aにより径方向Rの外側から支持されている。そして、第9軸受B9及び第10軸受B10は、径方向Rの外側から出力用差動歯車機構3の差動ケース32を回転可能に支持している。
【0082】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、動力伝達機構4が分配用差動歯車機構5と減速用差動歯車機構6とカウンタギヤ機構7とを備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、動力伝達機構4が分配用差動歯車機構5と減速用差動歯車機構6とカウンタギヤ機構7との少なくとも1つを備えていない構成としても良い。
【0083】
(2)上記の実施形態では、第1側壁部91cが第1ケース部材91に設けられ、区画部92cが第2ケース部材92に設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1側壁部91c及び区画部92cの双方が第1ケース部材91に設けられていても良い。
【0084】
(3)上記の実施形態では、第1ステータ11A及び第2ステータ11Bの双方が、第1ケース部材91に固定された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1ステータ11Aが第1ケース部材91に固定され、第2ステータ11Bが第2ケース部材92に固定されていても良い。或いは、第1ステータ11A及び第2ステータ11Bの双方が第2ケース部材92に固定されていても良い。
【0085】
(4)上記の実施形態では、第2軸受B2の一部、軸方向第1側L1の第3軸受B3の全体、及び軸方向第2側L2の第3軸受B3の一部が、径方向視で第2ロータ12Bと重複する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、一対の第3軸受B3のうちの一方が、径方向視で第2ロータ12Bと重複していなくても良い。また、第2軸受B2が径方向視で第2ロータ12Bと重複していなくても良い。また、第2軸受B2及び一対の第3軸受B3が径方向視で第2ロータ12Bと重複していなくても良い。
【0086】
(5)上記の実施形態では、第1コイルエンド部112Aが、第2コイルエンド部112Bに対して径方向Rの内側又は外側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2コイルエンド部112Bと重複する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1コイルエンド部112Aが径方向視で第2コイルエンド部112Bと重複していない構成としても良い。
【0087】
(6)上記の実施形態では、分配用差動歯車機構5がシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、第1回転要素E1が第1サンギヤS5であり、第2回転要素E2が第1キャリヤC5であり、第3回転要素E3が第1リングギヤR5である構成を例として説明した。しかし、この構成は単なる一例であり、遊星歯車機構の具体的構成、並びに第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の割り当ては適宜変更可能である。例えば、分配用差動歯車機構5がダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、第1回転要素E1が第1サンギヤS5であり、第2回転要素E2が第1リングギヤR5であり、第3回転要素E3が第1キャリヤC5である構成としても良い。
【0088】
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示に係る技術は、2つの回転電機と出力用差動歯車機構とを備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
100:車両用駆動装置、1A:第1回転電機、11A:第1ステータ、12A:第1ロータ、13A:第1ロータ支持部材、1B:第2回転電機、11B:第2ステータ、12B:第2ロータ、13B:第2ロータ支持部材、21:入力部材、22:出力部材、3:出力用差動歯車機構、4:動力伝達機構、9:ケース、9A:第1室、9B:第2室、91c:第1側壁部(側壁部)、92c:区画部、B1:第1軸受、B2:第2軸受、B3:第3軸受、EG:内燃機関、W:車輪、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、R:径方向