(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088898
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】地盤改良体の盛り上がり部の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201029
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000133881
【氏名又は名称】株式会社テノックス
(74)【代理人】
【識別番号】100112416
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 定信
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】村山 篤史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健太
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040BA02
2D040CA01
2D040CC01
2D040EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地盤改良体の盛り上がり部の除去作業を容易かつ効率的に行うことができる地盤改良体の盛り上がり部の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】盛り上がり部7の任意の深度に圧縮空気とともに吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤または水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝集遅延剤に用いられるフミン酸を供給して盛り上がり部7を上下に分離または低強度化した後、盛り上がり部7の除去を行う処理方法及び該処理方法を実施するための処理装置8である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛り上がり部の任意の深度に圧縮空気とともに吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤または水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸を供給した後、盛り上がり部の除去を行うこと特徴とする地盤改良体の盛り上がり部の処理方法。
【請求項2】
下端の周囲に盛り上がり部の掘削刃及び下端の水平方向に吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤または水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸と圧縮空気の吐出口が形成された底部を有する中空ヘッドからなり、上端にベースマシンの掘削ロッドとの連結部が形成されたことを特徴とする地盤改良体の盛り上がり部の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良等の工事において、ソイルセメント等からなる地盤改良体の頭部に形成された盛り上がり部の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良体の頭部に形成される盛り上がり部の処理方法として、ベースマシンに掘削撹拌装置を取り付け、地中において前記掘削撹拌装置を回転させ所定深度まで地中を掘削撹拌し、所定深度に至るソイルセメントからなる地盤改良体を形成する工程と、前記掘削撹拌装置を地上まで引き上げて、前記掘削撹拌装置を前記ベースマシンから取り外し、軸体と前記軸体の底部において前記軸体の半径方向に延びる複数の切刃を有する杭頭処理装置を、前記ベースマシンに取り付ける工程と、前記杭頭処理装置を地中で回転させ、前記地盤改良体の頭部において規定深さよりも盛り上がって形成され、かつ未硬化の前記ソイルセメントからなる余剰部分を、前記複数の切刃で切削し、前記余剰部分を除去する工程と、を含む、方法が提案されている。
【0003】
また、地盤改良体の盛り上がり部の処理装置として、ベースマシンから駆動力を受けて地中で回転しソイルセメントからなる柱状の地盤改良体を前記地中に形成する掘削撹拌装置と交換可能に形成される杭頭処理装置であって、前記ベースマシンに装着され、前記地中で回転する軸体と、前記軸体の底部において、前記地盤改良体の頭部において規定深さより盛り上がって形成され、かつ未硬化の前記ソイルセメントからなる余剰部分を切削する複数の切刃を前記軸体の半径方向に延びるように設けた装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
さらに、セメント改良土を吸水性高分子物質又は生石灰のいずれか一方又は双方を含む粒状化処理剤によって粒状化処理して粒状化処理土を作成し、セメント改良土の頭部の盛り上がり部を粒状化処理する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-108886号公報
【特許文献2】特開2018-168628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の地盤改良体の盛り上がり部の処理方法及び処理装置はバックホーによる頭部の刮ぎ取り作業が不要であり、作業の安全性が高く、かつ高品質な地盤改良体を得ることができるとしている。
【0007】
また、前記特許文献2に記載の粒状化処理方法によれば、遅延剤などの薬剤を使用せずに、セメント改良土を作成した直後であっても或いは数ケ月経過した後であっても、粒状化によりセメント改良土の頭部のはつり作業や削り取り作業を容易に行うことができるとしている。
【0008】
本発明は、地盤改良体の盛り上がり部の除去作業の容易化を図り、盛り上がり部の除去の効率化を図った盛り上がり部の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地盤改良体の盛り上がり部の処理方法は、盛り上がり部の任意の深度に圧縮空気とともに吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤または水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸を供給した後、盛り上がり部の除去を行うことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
本発明では、盛り上がり部の任意の深度に圧縮空気とともに吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤が供給される。その結果、盛り上がり部の任意の深度の粒状化によって盛り上がり部が上下に分離された状態になり、その状態が長期間にわたって維持されて盛り上がり部の除去作業に余裕が生まれる。
【0011】
また、盛り上がり部の任意の深度に圧縮空気とともに水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸を供給した場合には、圧縮空気と水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸が供給された部分の水和反応が低下させられて盛り上がり部が上下に分離または低強度化される。そして、その後に盛り上がり部の除去作業が行われる。
【0012】
なお、盛り上がり部の底部、すなわち、地盤改良体の頂部に圧縮空気と前記吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤または水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸を供給することにより地盤改良体と盛り上がり部との連結関係を断ち切ることができる。
【0013】
前記盛り上がり部の任意の深度が上下に分離または低強度化されるにより、その後の盛り上がり部の除去作業を容易かつ効率的に行うことができる。なお、前記盛り上がり部の任意の深度は盛り上がり部の大きさ等に対応して複数個所とされる。
【0014】
本発明の地盤改良体の盛り上がり部の処理装置は、下端の周囲に地盤改良体の盛り上がり部の掘削刃及び下端の水平方向に吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤または水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸と圧縮空気の噴出口が形成された底部を有する中空ヘッドからなり、上端にベースマシンの掘削ロッドとの連結部を形成したことを特徴とする(請求項2)。
【0015】
前記本発明の地盤改良体の盛り上がり部の処理装置は、計画高さの地盤改良体の築造を完了した後に使用される。その使用の一形態は次の通りである。
【0016】
先ず、地盤改良体の築造に使用した掘削ヘッドをベースマシンの掘削ロッドから取り外し、本発明の中空ヘッドの上端に形成した連結部をベースマシンの掘削ロッドの下端に連結する。
【0017】
つぎに、ベースマシンによって掘削ロッド及び中空ヘッドを回転させて中空ヘッドによって盛り上がり部を任意の深度まで掘削する。なお、前記任意の深度は盛り上がり部が大きい場合には複数個所とされる。
【0018】
前記任意の深度までの掘削が完了したら、ベースマシンの掘削ロッドから前記本発明の中空ヘッドを一旦外す。そして、前記中空ヘッドの上端開口部から所定量の前記吸水性高分子物質からなる粒状化処理剤または水和反応を低下させる砂糖や澱粉などの糖類や高分子有機質系凝結遅延剤に用いられるフミン酸(以下、単に「粒状化処理剤等」と言う。)を中空ヘッドの中空部に投入する。
【0019】
つぎに、前記粒状化処理剤等が内蔵された中空ヘッドを前記ベースマシンの掘削ロッドの下端に連結する。
【0020】
そして、つぎにベースマシンによって掘削ロッド及び中空ヘッドを回転させながらコンプレッサ及び掘削ロッドを利用して中空ヘッド内に圧縮空気を供給する。その結果、中空ヘッドの下端に形成された噴出口から前記粒状化処理剤等が圧縮空気とともに盛り上がり部の任意の深度に噴射されて、盛り上がり部と圧縮空気と粒状化処理剤等が混合されて、盛り上がり部が上下に分離または低強度化されるものである。
【0021】
なお、本発明の地盤改良体の盛り上がり部の処理装置は、下端の周囲に設置する地盤改良体の盛り上がり部の掘削刃の上方に、処理厚さに応じて撹拌翼を複数段設けてもよい。
【0022】
また、本発明は、盛り上がり部の分断だけではなく、グラウトホースを介したポンプ圧送や流量の計測が困難な少量の液体や粉体を地中に供給する場合に応用できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、盛り上がり部の除去作業に先立って、盛り上がり部が上下に分離または低強度化される。したがって、その後の盛り上がり部の除去作業を容易かつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】地盤改良体の盛り上がり部の処理方法及び処理装置を示す工程図である。
【
図2】本発明の地盤改良体の盛り上がり部の処理装置の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の一形態について説明する。
【0026】
図1(a)~(g)は本発明の処理方法及び処理装置を示す工程図である。同図中、1は走行自在のベースマシンであり、リーダ2が起立させられ、該リーダ2と平行に固化材液の流路を有する掘削ロッド3が回転自在に起立支持されている。図中、4は掘削ロッドの3の駆動部、5は掘削ヘッドである。
【0027】
ソイルセメント改良土からなる地盤改良体は前記掘削ロッド3を通して前記掘削ヘッド5に固化材を供給して掘削により築造される。
図1において、6は計画高さに築造された地盤改良体、7は地盤改良体6の頭部に形成された盛り上がり部である。
【0028】
以下に盛り上がり部7の処理方法の一実施例を説明する。
【0029】
掘削ロッド3を回転させながら掘削ヘッド5により所定深さまで掘削が行われ、該掘削ロッド3及び掘削ヘッド5が引き上げられて計画高さの地盤改良体6が築造される。同時に地盤改良体6の頭部には盛り上がり部7が形成される。(
図1(a))。
【0030】
つぎに、前記掘削ロッド3から前記掘削ヘッド5を取り外し、本発明の処理装置の中空ヘッド8が前記掘削ロッド3の下端に連結される(
図1(b))。なお、該処理装置の中空ヘッド8の詳細は後に詳述する。
【0031】
続いて、掘削ロッド3を回転させて前記中空ヘッド8によって盛り上がり部7を計画高さに築造された地盤改良体6の頂部、すなわち、盛り上がり部7の底部まで掘削する(
図1(c))。もっとも、盛り上がり部の大きさに合わせて複数回掘削してもよい。
【0032】
つぎに、前記掘削が完了したら、ベースマシン1の掘削ロッド3の下端から前記中空ヘッド8を一旦切り離す(
図1(d))。続いて、中空ヘッド8の上端開口部からその内部に所定量の前記粒状化処理剤等9を投入する((
図1(e))。
【0033】
つぎに、前記粒状化処理剤等9が投入された中空ヘッド8を前記ベースマシン1の掘削ロッド3の下端に連結する(
図1(f))。続いて、ベースマシン1によって掘削ロッド3及び中空ヘッド8を回転させながら、前記掘削ロッド3を介して中空ヘッド8に圧縮空気を供給して内蔵された粒状化処理剤等9を前記中空ヘッド8の下端の水平方向に開口させた噴出口11から噴射させる。該噴射に伴い盛り上がり部7中の任意の深度が圧縮空気とともに粒状化処理剤等9が効率よく混合される(
図1(f))。すなわち、圧縮空気と粒状化処理剤等9によって盛り上がり部7と地盤改良体6が上下に分離または盛り上がり部7の底部が低強度化される。
【0034】
該盛り上がり部7と地盤改良体6が上下に分離または盛り上がり部7の底部が低強度化されることにより、盛り上がり部の除去作業が容易となり、盛り上がり部の除去を効率的に行うことができる。
【0035】
つぎに、本発明の盛り上がり部の処理装置の前記中空ヘッド8の詳細を説明する。
【0036】
図2に示す通り、中空ヘッド8は、底部12を有し、下端の周囲に前記盛り上がり部7を掘削する掘削刃10と下端の水平方向に粒状化処理剤等9及び圧縮空気の噴出口11が形成される。さらに上端には開口部13を有するベースマシン1の掘削ロッド3との連結部14が形成された構成である。
【0037】
【0038】
地盤改良体6の築造などの工事現場には、前記ベースマシン1のほか、エアーコンプレッサ15、その他の重機が準備されている。そこで、エアーコンプレッサ15を利用することができる。
【0039】
一例として、工事を完了し固化材を除去したベースマシン1の掘削ロッド3の上端にエアーコンプレッサ15の圧縮空気の供給ホース16を連結する。
【0040】
その結果、ベースマシン1の掘削ロッド3を介して掘削ロッド3の下端に連結された中空ヘッド8に圧縮空気を供給することができる。
【0041】
そして中空ヘッド8の噴出口11から粒状化処理剤等9及び圧縮空気を盛り上がり部7に噴射させることにより、該盛り上がり部7に圧縮空気と粒状化処理剤等9を浸透させることができる。
【0042】
前記ベースマシン1、中空ヘッド8及びエアーコンプレッサ15を使用して盛り上がり部7の底部に粒状化処理剤等9及び圧縮空気の供給を行った。その後、中空ヘッド8を引き上げて内部を確認した結果、該中空ヘッド8の内部に粒状化処理剤等9は残っておらず、全ての粒状化処理剤等9が盛り上がり部7の任意の深度に供給されたことが確認された。
【符号の説明】
【0043】
1 ベースマシン
3 掘削ロッド
6 地盤改良体
7 盛り上がり部
8 処理装置(中空ヘッド)
9 粒状化処理剤等
10 掘削刃
11 噴出口
12 底部
14 連結部