(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088902
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ランナーユニット
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20220608BHJP
E05F 5/10 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
E05D15/06 119
E05F5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201035
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】三谷 有希
(72)【発明者】
【氏名】矢羽野 水葵
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034BA03
2E034CA04
2E034EA00
(57)【要約】
【課題】 引戸のランナーユニットにおいて、戸パネルの跳ね上がり時の衝撃緩和用のダンパーを付加したことに伴う構造変化を最小限化して、全体コストの削減を図る。
【解決手段】 ランナーユニット5は、上レール2で案内されるランナー本体8と、戸パネル4に埋設固定されるホルダー9と、ホルダー9に装着固定されるランナー台10と、ランナー台10を吊持するランナー軸11と、戸パネル4の跳ね上がり時の衝撃を緩和することを目的として、ランナー台10とランナー軸11との間に設けられるダンパー12とを備える。ランナー台10に、ランナー軸11を連結する軸連結穴30と、ダンパー12を収容するダンパー収容部31とを上下方向に連設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上レール(2)で移行案内されるランナー本体(8)と、
下荷重型の戸パネル(4)の上部左右に埋設固定されるホルダー(9)と、
ホルダー(9)に対して装着固定されるランナー台(10)と、
ランナー本体(8)に組付けられてランナー台(10)を吊持するランナー軸(11)と、
戸パネル(4)の跳ね上がり時の衝撃を緩和することを目的として、ランナー台(10)とランナー軸(11)との間に設けられるダンパー(12)と、
を備えることを特徴とするランナーユニット。
【請求項2】
ランナー台(10)に、ランナー軸(11)を連結する軸連結穴(30)と、ダンパー(12)を収容するダンパー収容部(31)とが上下方向に連設されている、請求項1記載のランナーユニット。
【請求項3】
ダンパー(12)は、シリンダー(43)と、シリンダー(43)に対して出退するピストン体(44)と、シリンダー(43)の内部に配置される緩衝部材とを備えており、
シリンダー(43)の筒端とピストン体(44)の突端のいずれか一方が、ランナー台(10)で受止め支持され、他方がランナー軸(11)に連結されている、請求項1又は2記載のランナーユニット。
【請求項4】
ダンパー(12)は、シリンダー(43)と、シリンダー(43)に対して出退するピストン体(44)と、シリンダー(43)の内部に配置される緩衝部材と、ピストン体(44)に対して押上げ付勢力を付与するダンパーばね(49)とを備えており、
ダンパーばね(49)で押上げ付勢されたピストン体(44)のロッド(44b)の上端が、ランナー軸(11)の下面に圧接されている請求項1又は2記載のランナーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下荷重型の戸パネルを開閉案内するランナーユニットに関して、特に戸パネルの跳ね上がり時の衝撃を緩和するためのダンパーを備えるランナーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のダンパーを備えるランナーユニットは、例えば特許文献1に開示されている(発明の名称:引戸の上部ガイド装置)。特許文献1の上部ガイド装置は、引戸の上部に固定される引戸固定体と、引戸固定体から上方に突出する連結杆と、連結杆の先端部に取付けられて引戸を上レールに沿って開閉案内するランナ体と、引戸固定体に設けられる内蔵ダンパ部材とを備えている。内蔵ダンパ部材は外筒と、外筒に対して進退するロッドと、ロッドを進出方向に付勢するスプリングと、外筒の上部に設けられてランナ体に圧接するランナ圧接部とを備えている。ランナ体と連結杆は、連結杆に設けた軸ガイド孔とランナ体に固定される取付軸を介して、上下に相対スライド可能に連結されている。引戸固定体は、引戸の上隅の収納溝にビスで固定される第1固定体と、第1固定体に対して着脱可能に装着される第2固定体で構成されており、先の内蔵ダンパ部材は第1固定体に設けたダンパ収納穴に組込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ランナ体と引戸固定体との間に内蔵ダンパ部材が配置されていると、引戸が跳ね上がって、ランナ体が上レールの天井面に押し付けられると、内蔵ダンパの緩衝作用が発揮されて、上レールやランナ体、引戸固定体、或いは引戸などの各部材に作用する衝撃を、当該内蔵ダンパ部材で緩和吸収することができる。これにより、各部材に大きな衝撃力が作用するのを抑えることができるので、各部材が破損することを効果的に防ぐことができる。しかし、ランナ体と第2固定体を、第2固定体に固定した連結杆と取付軸で上下に相対スライド可能に連結するので、その分だけ構造が複雑化し、支持構造の全体コストが嵩んでしまう。また、第1固定体に内蔵ダンパ部材を収容するダンパ収納孔を設け、第2固定体に連結杆を収容する杆収容空間を設け、ランナ体に杆取付孔を設ける必要があるので、第1固定体、第2固定体、およびランナ体を新たに設計し直す必要があり、従来のランナ体に比べて、全体コストが嵩むことが避けられない。
【0005】
本発明の目的は、戸パネルの跳ね上がり時の衝撃を緩和するためのダンパーを備えるランナーユニットにおいて、ダンパーを付加することに伴う構造変化を最小限に抑えて、全体コストの削減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のランナーユニット5は、上レール2で移行案内されるランナー本体8と、下荷重型の戸パネル4の上部左右に埋設固定されるホルダー9と、ホルダー9に対して装着固定されるランナー台10と、ランナー本体8に組付けられてランナー台10を吊持するランナー軸11と、戸パネル4の跳ね上がりを防止することを目的として、ランナー台10とランナー軸11との間に設けられるダンパー12とを備えることを特徴とする。
【0007】
具体的には、ランナー台10に、ランナー軸11を連結する軸連結穴30と、ダンパー12を収容するダンパー収容部31とが上下方向に連設されている構成を採ることができる。
【0008】
ダンパー12は、シリンダー43と、シリンダー43に対して出退するピストン体44と、シリンダー43の内部に配置される緩衝部材とを備える。シリンダー43の筒端とピストン体44の突端のいずれか一方が、ランナー台10で受止め支持され、他方がランナー軸11に連結されている構成を採ることができる。
【0009】
ダンパー12は、シリンダー43と、シリンダー43に対して出退するピストン体44と、シリンダー43の内部に配置される緩衝部材と、ピストン体44に対して押上げ付勢力を付与するダンパーばね49とを備えており、ダンパーばね49で押上げ付勢されたピストン体44のロッド44bの上端が、ランナー軸11の下面に圧接されている構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のランナーユニット5のように、ランナー台10とランナー軸11の間にダンパー12が設けられていると、戸パネル4が跳ね上がって、ランナー本体8が上レール2の天井壁に押し付けられると、ダンパー12の緩衝作用が発揮されて、上レール2やランナー本体8、ランナー台10、或いは戸パネル4などの各部材に作用する衝撃を、当該ダンパー12で緩和吸収することができる。これにより、各部材に大きな衝撃力が作用することを抑えることができるので、各部材が破損することを効果的に防ぐことができる。そのうえで、本発明のように、ランナー台10とランナー軸11の間に配置したダンパー12で、戸パネル4の跳ね上がりを防ぐようにしていると、ダンパー12を付加することに伴う新規な構造変更を、ランナー台10に限ることができるので、ランナー台10だけでなく、ランナー本体8やランナー軸11などの大幅な構造変更が必要であった従来のランナーユニットに比べて、構造変更を最小限化して、ランナーユニットの全体コストを削減することができる。
【0011】
上記構成を採るための基本的な設計変更としては、ランナー台10にランナー軸11を連結する軸連結穴30と、ダンパー12を収容するダンパー収容部31とを上下方向に連設することで足りるので、従来のランナーユニットに比べて、構造変更を最小限化して、ランナーユニットの全体コストを削減することができる。
【0012】
ダンパー12が、シリンダー43と、シリンダー43に対して出退するピストン体44と、シリンダー43の内部に配置される緩衝部材とを備えるものとし、シリンダー43の筒端とピストン体44の突端のいずれか一方が、ランナー台10で受止め支持され、他方がランナー軸11で連結されていると、簡単な構成で戸パネル4の跳ね上がり動作を、タイムロスなく、シリンダー43とピストン体44とを介してランナー軸11に伝えることができる。つまり、例えば、ランナー軸11とピストン体44との間に常態的に隙間が形成されているような構成では、戸パネル4が跳ね上がり始めてから、ランナー軸11にピストン体44が接触してダンパー12が緩衝作用を発揮するまでの間にタイムラグが生じることが避けられないが、本発明のようにシリンダー43の筒端とピストン体44の突端のいずれか一方が、ランナー台10で受止め支持され、他方がランナー軸11で連結されていると、戸パネル4が跳ね上がり始めてから、ダンパー12が緩衝作用を発揮するまでの間にタイムラグが生じることを抑えて、より的確に緩衝作用を発揮させることができる。
【0013】
特許文献1のように、ダンパ部材にロッドを進出方向に付勢するスプリングが設けられている構成では、常時、ランナ体に対してスプリングの付勢力が作用するため、当該付勢力を受けてランナ体が押し上げられ、ランナ体が上レールの天井面に接触するおそれがある。ダンパ部材の上端に配されたランナ圧接部が、上レールの前後フランジ壁に接触するおそれもある。このため、特許文献1の構成では、ランナ体やランナ圧接部が上レールに接触して走行抵抗が増加し、スムーズな引戸の開閉操作が阻害される、或いはランナ体やランナ圧接部が上レールに接触して、走行騒音が大きくなるという不利がある。
これに対して、本発明のように、ダンパー12を、シリンダー43と、ピストン体44と、緩衝部材とを備えるものし、換言すればダンパー12を、ピストン体44に対して押し出し付勢力を付与するダンパーばねを具備しないものとしていると、常態においてピストン体44によりランナー本体8が押し上げられるということはなく、走行移動時にランナー本体8が上レール2の天井面に不用意に接触することを防ぐことができる。したがって、本発明のランナーユニットによれば、走行抵抗が増加することや、走行騒音が大きくなることを防ぐことが可能であり、例えば本発明のランナーユニットを引戸に適用した場合には、開閉操作がスムーズであり、しかも静粛性に優れた引戸を構築することができる。
【0014】
ダンパー12が、シリンダー43と、シリンダー43に対して出退するピストン体44と、シリンダー43の内部に配置される緩衝部材に加えて、ピストン体44に対して押上げ付勢力を付与するダンパーばね49を備えるものとして、ダンパーばね49で押上げ付勢されたピストン体44のロッド44bの上端が、ランナー軸11の下面に圧接されている構成を採ることができる。これによれば、上記のようなロッド44bとランナー軸11とを連結することなく、両者間に隙間が形成されることを防ぐことができるので、両者間に隙間が形成される構成では不可避となる、戸パネル4が跳ね上がり始めてから、ランナー軸11にピストン体44が接触してダンパー12が緩衝作用を発揮するまでの間のタイムラグが生じることを抑えて、より的確に緩衝作用を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係るランナーユニットの断面図(
図3のB-B線断面図)である。
【
図5】引戸の組付け途中状態を示す一部破断正面図である。
【
図6】ランナー軸とダンパーの連結構造を示す分解断面図である。
【
図7】本発明の実施例2に係るランナーユニットを示す断面図である。
【
図8】ランナー軸とダンパーの連結構造を示す分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
図1ないし
図6に本発明に係るランナーユニットを引戸に適用した実施例1を示す。この実施例における前後、左右、上下とは、
図2、
図3に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。
図2に示すように、引戸は開口枠1と、同枠1の上下に固定した上レール2および下レール3で開閉案内される戸パネル4とを備える。戸パネル4は、上レール2の内部に設けた一対の吊車型のランナーユニット5・5と、下レール3で移行案内される戸車6に支持されて、閉じ位置と全開放位置の間でスライド開閉可能に構成されている。上レール2は、下向きに開口する断面がC字状のアルミニウム条材からなり、下面の前後にレール部2aが設けられており(
図3参照)、後述するローラー16の移行軌跡に臨む天井壁には、前後一対の補助レール2b(上レール2の天井壁に相当する)が下向きに突設されている。下レール3は逆ハ字状のレール面3aと、レール面3aの間に凹み形成される規制溝3bとを備えたアルミニウム条材からなる。戸パネル4の閉じ端側には取手7が設けられている。この引戸は下荷重型であり、戸パネル4の全荷重は戸車6を介して下レール3で受け止められている。引戸は引違い開閉される複数の戸パネル4を備えるものであってもよい。
【0017】
図1においてランナーユニット5は、上レール2で移行案内されるランナー本体8と、戸パネル4の上部左右に埋設固定されるホルダー9と、ホルダー9に対して側方から装着固定されるランナー台10と、ランナー本体8に組付けられてランナー台10を吊持するランナー軸11と、戸パネル4の跳ね上がりを防ぐダンパー12などで構成される。ランナー本体8は、左右横長のプラスチック成型品からなるランナーボディ15と、ランナーボディ15の左右に前後一対ずつ配置される4個のローラー16と、これらのローラー16を軸支するローラー軸17などで構成される。
図3に示すようにランナーボディ15は前後に分割されており、分割面に凹み形成した連結穴15aにランナー軸11が相対回転可能に、しかし上下に相対スライド不能に嵌込み連結されている。ランナーボディ15の前後面の下部には、戸パネル4が跳ね上がろうとするとき、レール部2aの下面で受止められる規制壁18が張り出し形成されている(
図3参照)。
図4に示すように、ランナー本体8の開放端には、アシスト装置19が連結されている。
【0018】
図5に示すようにホルダー9は、水平の下壁21と垂直の内奥壁22と、これら両壁21・22と一体の前後壁23・23を備えた、上面と左側面が開口するダイキャスト成形品である。前後壁23・23には、後述するロック構造のロック溝24と、ロック構造のロックピン51をロック溝24に向かって落とし込み案内するガイド面25とが形成されている。ホルダー9は、戸パネル4の左右上隅に形成した装着溝26に嵌め込まれて、下壁21と内奥壁22の上下が3個のビス27で戸パネル4に固定されている。ホルダー9は従来のホルダーをそのまま流用できる。
【0019】
図1および
図5においてランナー台10は、その右半上下にランナー軸11を連結するための軸連結穴30と、ダンパー12を収容するためのダンパー収容部31とが設けられたプラスチック成型品からなり、軸連結穴30およびダンパー収容部31の左方に、ホルダー9に装着したランナー台10の分離を防ぐロック構造が設けてある。
図1に示すように軸連結穴30とダンパー収容部31は、区画壁32で上下に区分されており、これら両者30・31が区画壁32に形成した通口33を介して連通されている。軸連結穴30にはランナー軸11が連結され、ダンパー収容部にはダンパー12が配置固定される。ランナー台10の基本構造は、従来のランナー台の構造を概ね踏襲しており、上述のように軸連結穴30の下方にダンパー収容部31を設ける点が異なる。
【0020】
図6に示すようにランナー軸11は、丸軸状の軸本体部11aと、軸本体部11aの上端のフランジ部11bを一体に備えた鋼材部品からなり、軸本体部11aの周面下部に半円状の回止部11cが膨出形成されている。また、ランナー軸11の下部には、ピストン体44のロッド44bに外嵌するロッド連結穴34と、止輪組付溝35が形成されている。軸連結穴30は、軸本体部11aを受入れる軸受穴36と、回止部11cを受入れる回止溝37とで鍵穴状に形成されており、回止部11cと回止溝37が係合する状態で、ランナー軸11が軸連結穴30に連結される。軸受穴36の下部には、ランナー台10を前後に貫通する上組付穴38が形成されている。
【0021】
ダンパー収容部31の下壁には、ダンパー収容部31に連通するシリンダー組付穴41と、ランナー台10を前後に貫通する下組付穴42とが形成されている。ダンパー12は市販されているオイルダンパーからなり、シリンダー43と、シリンダー43に対して進退するピストン体44とを備えている。ピストン体44は、シリンダー43の内部を上下するピストン44aと、ピストン44aに固定されてシリンダー43の上面に突出するロッド44bとを備えている。このダンパー12においては、シリンダー43の内部に収容されるオイル(または気体などの流体)と、オイルの流動を規制するオリフィスなどが緩衝部材として機能する。ダンパー12は、シリンダー43がシリンダー組付穴41の下面側からダンパー収容部31に組付けられて、シリンダー43の上端が区画壁32で受止められ、シリンダー43の下端が下組付穴42に組付けた板状の担持体45で受止められている。この状態のロッド44bは、通口33を介して軸連結穴30に進入している。ロッド44bの上部には止輪溝46が形成されている。
【0022】
ランナー軸11とダンパー12のロッド44bは同行移動可能に連結されるが、この連結状況を
図6で説明する。まず、先に説明した要領でダンパー12をダンパー収容部31に組付けて、下組付穴42に組付けた担持体45でシリンダー43を固定する。次に、ランナー軸11を先に説明した要領で軸連結穴30に装着して、ランナー軸11をランナー台10に連結する。なお、
図6におけるランナー軸11には、ランナー本体8が組付けられていないが、ランナー本体8は予めランナー軸11に組付けてあってもよい。軸連結穴30に装着したランナー軸11を押下げ操作して、ピストン体44のロッド44bの上部をロッド連結穴34に係合させ、その上端を止輪組付溝35の上壁に接当させる。この状態のまま、ランナー軸11をさらに押下げ操作して、止輪組付溝35を上組付穴38に臨ませ、E形の止輪47を止輪組付溝35の下壁に沿って差込んで、ロッド44bの止輪組付溝35に装着して、ロッド44bをランナー軸11と一体化(連接)する。最後に
図1に示すように、スプリングピン48を回止部11cより上側に位置する状態でランナー台10に打ち込んで、ランナー軸11が軸連結穴30から抜出るのを阻止する。この時のスプリングピン48は、ランナー軸11の周面に接する状態で回止溝37と直交している。
【0023】
ホルダー9とランナー台10の間に、ホルダー9に装着したランナー台10の分離を防ぐロック構造が設けられている。ロック構造は、ホルダー9の前後壁23・23に設けたロック溝24と、ランナー台10のピン溝10aに組付けられて、ロック溝24に沿って係脱スライドするロックピン51と、ロックピン51をロック位置に向かって移動付勢するロックばね52と、ランナー台10に組付けられて、ロックピン51をロック解除操作するロック解除レバー53などで構成される。ロック解除レバー53は、ランナー台10を前後に挟む横臥三角形状のレバー本体54と、ランナー台10の左側面を塞ぐ指掛けレバー55とを一体に備えたプラスチック成型品からなる。レバー本体54には、ロックピン51を捕捉するピン溝56が形成されており、全体が鳥のくちばし状とされている。ピン溝56は三角形のレバー頂部で開口しており、その溝奥でロックピン51を捕捉している。ロック解除レバー53は、レバー本体54のピン溝56の左方が、スプリングピン57でランナー台10に組付けられており、同ピン57を中心にして往復揺動できる。
図1に示す状態から、指掛けレバー55の上端に指先をあてがって、左側方へ引き寄せ操作すると、ロック解除レバー53は反時計回転方向へ揺動するので、ロック溝24に係合していたロックピン51を、ピン溝56でロックばね52の付勢力に逆らいながらロック解除位置まで押上げ操作できる。この状態で、ランナー台10をホルダー9から抜き出して分離できる。ロック構造は、従来のロック構造と同じである。
【0024】
図4においてアシスト構造は、上向きに開口するケーシング60と、ケーシング60内に配置されるシリンダー型のダンパー61、蓄力ばね62、およびトリガー体63と、ダンパーロッドが接合されるスライダー64と、スライダー64をスライド案内するガイド軸65と、トリガー体63を待機姿勢と作動姿勢に切換え操作するトリガー切換え具66などで構成されており、戸パネル4の閉じ動作をアシストする。ケーシング60の両端には、それぞれエンドブロック68・69が固定されており、
図4に向かって左側のエンドブロック68とスライダー64でガイド軸65の両端を軸支し、両者68・64の間に圧縮ばねからなる蓄力ばね62が配置されている。ケーシング60と左側のエンドブロック68は、閉じ端側のランナーボディ15にビス71で連結されている。ダンパー61は、スライダー64と右側のエンドブロック69の間に配置されている。
【0025】
戸パネル4が閉じ操作されるときのアシスト構造は、蓄力ばね62の弾性力で戸パネル4を閉じ端寄りから閉じ位置まで、戸パネル4をゆっくりと閉じ操作する。詳しくは
図4に示すように、トリガー体63の係合爪部63aがケーシング60の底壁の係合穴60a
に係合した状態(待機姿勢)で戸パネル4が閉じ端寄りまで閉じ操作されると、トリガー体63の上部の切欠部の右縁がトリガー切換え具66で受止められ、トリガー体63がばね70の付勢力に抗して時計回転方向へ揺動操作されて作動姿勢に切換わる。同時にトリガー体63の切欠部の左縁が、トリガー切換え具66で移動不能に受止められて、トリガー体63の係合爪部63aがケーシング60の係合穴60aから分離して両者の係合が解除される。このように、トリガー体63が作動姿勢に切換わった状態では、それまで圧縮変形されていた蓄力ばね62のばね力が、左側のエンドブロック68とランナーユニット5を介して戸パネル4に作用する。そのため、戸パネル4はダンパー61の緩衝作用を受けながら、閉じ端寄りから閉じ位置までゆっくりと閉じ移動する。
【0026】
戸パネル4が閉じ位置から開放操作されると、トリガー体63がトリガー切換え具66に受止められた状態のまま、ランナーユニット5とケーシング60が開放方向へ移動するので、蓄力ばね62はエンドブロック68で圧縮変形されて蓄力される。そして、ケーシング60の係合穴60aがトリガー体63の係合爪部63aの真下まで移動すると、トリガー体63はばね70のばね力で反時計回転方向へ揺動操作される。トリガー体63が揺動するのに伴って、係合爪部63aが係合穴60aに落込み係合して待機姿勢に切換り、その位置に保持される。待機姿勢に切換ったトリガー体63は、トリガー切換え具66の下面側をくぐり抜けることができるので、以後、アシスト装置19は戸パネル4に同行して開放移動し、戸パネル4が再び閉じ端寄りまで閉じ操作されるまで待機姿勢を保持し続ける。なお、この実施例では、アシスト装置が戸パネル4の閉じ動作をアシストする場合について説明したが、アシスト装置は、戸パネル4の閉じ動作をアシストすることに加えて、戸パネル4を開放端寄りから全開放位置まで開放するときの開放動作をアシストする機能を備えていてもよい。
【0027】
以上のように構成した引戸によれば、戸パネル4が勢いよく閉じ操作されるような場合に、戸パネル4が閉じ端寄りで跳ね上がろうとする傾向があり、とくに閉じアシスト装置19を備えているランナーユニット5の場合には、トリガー体63の切欠部の右縁がトリガー切換え具66に衝突するため、戸パネル4が跳ね上がりやすい。戸パネル4が跳ね上がりかけると、ホルダー9およびランナー台10が僅かに上方移動するが、移動を開始する間もなくローラー16が補助レール2bで受止められ、さらに規制壁18がレール部2aの下面で受止められるので、ランナー軸11およびロッド44bは、ランナー本体8が上レール2で受け止められた位置に保持される。
【0028】
一方、ランナー台10側に配置したシリンダー43は、ホルダー9およびランナー台10に同行して上方移動しようとする。そのため、シリンダー43とピストン体44は僅かに相対移動するが、この動きはシリンダー43内部のオイル流動を規制するオリフィスによって規制され緩衝される。以上のように、実施例1のランナーユニット5によれば、戸パネル4の跳ね上がり動作がピストン体44でランナー軸11に伝えられて、ランナー本体8が上レール2で受止められることで、以後の跳ね上がり動作はダンパー12の緩衝作用で緩和吸収される。また、勢い良く戸パネル4が跳ね上がることを防ぐことができるので、戸車6が下レール3から脱輪するのを防止できる。
【0029】
以上のように、本実施例1のランナーユニット5においては、ランナー台10とランナー軸11の間にダンパー12を設けたので、戸パネル4が跳ね上がった場合でも、上レール2やランナー本体8、ランナー台10、或いは戸パネル4などの各部材に作用する衝撃を、当該ダンパー12で緩和吸収することができる。これにより、各部材に大きな衝撃力が作用することを抑えることができるので、各部材が破損することを効果的に防ぐことができる。そのうえで、本実施例のように、ランナー台10とランナー軸11の間に配置したダンパー12で、戸パネル4の跳ね上がりを防ぐようにしていると、ダンパー12を付加することに伴う新規な構造変更を、ランナー台10に限ることができるので、ランナー台10だけでなく、ランナー本体8やランナー軸11などの大幅な構造変更が必要であった従来のランナーユニットに比べて、構造変更を最小限化して、ランナーユニットの全体コストを削減することができる。
【0030】
具体的には、ランナー台10にランナー軸11を連結する軸連結穴30と、ダンパー12を収容するダンパー収容部31とを上下方向に連設することで足りるので、従来のランナーユニットに比べて、構造変更を最小限化して、ランナーユニットの全体コストを削減することができる。
【0031】
ダンパー12を、シリンダー43と、シリンダー43に対して出退するピストン体44と、シリンダー43の内部に配置される緩衝部材とを備えるものとし、そのうえでシリンダー43の筒端をランナー台10で受止め支持させ、ピストン体44をランナー軸11に連結させたので、簡単な構成で戸パネル4の跳ね上がり動作を、タイムロスなく、シリンダー43とピストン体44とを介してランナー軸11に伝えることが可能となる。つまり、例えば、ランナー軸11とピストン体44との間に常態的に隙間が形成されているような構成では、戸パネル4が跳ね上がり始めてから、ランナー軸11にピストン体44が接触してダンパー12が緩衝作用を発揮するまでの間にタイムラグが生じることが避けられないが、本実施例のようにシリンダー43の筒端がランナー台10で受止め支持され、ピストン体44の突端がランナー軸11に連結されていると、戸ダンパー12が跳ね上がり始めてから、ダンパー12が緩衝作用を発揮するまでの間にタイムラグが生じることを抑えて、より的確に緩衝作用を発揮させることができる。
【0032】
また、本実施例では、ダンパー12を、シリンダー43と、ピストン体44と、緩衝部材とを備えるものとし、換言すればダンパー12を、ピストン体44に対して押し出し付勢力を付与するダンパーばねを具備しないものとしたので、常態においてピストン体44によりランナー本体8が押し上げられるということはなく、走行移動時にランナー本体8が上レール2の天井面に不用意に接触することを防ぐことができる。したがって、本実施例によれば、走行抵抗が増加することや、走行騒音が大きくなることを防ぐことが可能であり、開閉操作がスムーズであり、しかも静粛性に優れた引戸を構築することができる。
【0033】
ピストン体44のロッド44bの上部に止輪溝46を形成し、ランナー軸11の下部に、ピストン体44のロッド44bに外嵌するロッド連結穴34と、止輪組付溝35とを形成し軸連結穴30の下部に、ランナー台10を前後に貫通する上組付穴38を形成して、ピストン体44のロッド44bがロッド連結穴34に連結されて、ロッド44bの上面が止輪組付溝35の上壁で受止められ、止輪組付溝35が上組付穴38に臨む状態で、止輪47をランナー台10の外から止輪溝46に差込み係合することで、ピストン体44のロッド44bとランナー軸11とが一体的に連結されている構成を採る。これによれば、止輪47をランナー台10の外から止輪溝46に差込み係合することで、ロッド44bとランナー軸11とを一体的に連結することができるので、両者(ロッド44bとランナー軸11)の連結作業を容易に行うことができる。また、比較的簡単な構成で、両者(ロッド44bとランナー軸11)を確実に連結することができる。
【0034】
ランナー軸11とランナー本体8とを上下に相対スライド不能に連結したので、戸パネル4の跳ね上がり動作が、ピストン体44でランナー軸11に伝えられるのと同時に、ランナー本体8を上レール2の補助レール2bに遅滞なく押し付けることができる。したがって、戸パネル4が跳ね上がり始めてから、ダンパー12が緩衝作用を発揮するまでのタイムラグの発生を抑えて、より的確に緩衝作用を発揮させることができる。
【0035】
(実施例2)
図7および
図8は、本発明に係るランナーユニットの実施例2を示す。この実施例2ではダンパー12を、シリンダー43の内部に、圧縮コイルばねであるダンパーばね49が収容されたエアダンパーとし、ダンパーばね49で押上げ付勢されたピストン体44のロッド44bの上端が、ランナー軸11の下面に常に圧接するようにした。この実施例では止輪47を使用しないので、ランナー軸11のロッド連結穴34と止輪組付溝35を省略でき、ロッド44bの上端の止輪溝46も省略できる。また、ランナー台10の上組付穴38も省略できる。他は実施例1で説明した説明した部材と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。実施例2のダンパー12においては、シリンダー43の内部の気体と、気体の流動を規制するオリフィスと、ダンパーばね49が緩衝部材として機能する。
【0036】
上記のように、実施例2のランナーユニットでは、ダンパー12を、シリンダー43の内部にダンパーばね49が収容されたエアダンパーで構成して、ダンパーばね49で押上げ付勢されたピストン体44のロッド44bの上端が、ランナー軸11の下面に圧接されるようにしたので、実施例1のランナーユニットに比べて、ロッド44bとランナー軸11の連接構造を簡略化できるうえ、止輪47を組む必要がない分だけ組立の手間を省いて、支持構造の全体コストを削減できる。また、実施例1と同様に、ロッド44bとランナー軸11との間に隙間が形成されることを防ぐことができるので、両者間に隙間が形成される構成では不可避となる、戸パネル4が跳ね上がり始めてから、ランナー軸11にピストン体44が接触してダンパー12が緩衝作用を発揮するまでの間のタイムラグが生じることを抑えて、より的確に緩衝作用を発揮させることができる。
【0037】
上記実施例においては、シリンダー43の筒端がランナー台10で受止め支持され、ロッド44bがランナー軸11に連結されている構成であったが、本発明はこれに限られず、シリンダー43の筒端がランナー軸11に連結され、ロッド44bがランナー台10で受止め支持されている構成であってもよい。
【0038】
ピストン体44とランナー軸11との連結構造は、上記実施例に挙げたものに限らず、例えば、ピストン体44の上端に磁石を配し、ランナー軸11の下端に磁性体を配し、これら磁石と磁性体の間で作用する磁力により、ピストン体44とランナー軸11とを連結する構成を採ることができる。また、他の連結構造としては、例えば、ピストン体44の上端にランナー軸11の下端を被せ付けたうえで、当該下端を変形させてカシメ固定する、ピストン体44の上端にランナー軸11の下端との間にリベットを通したうえで、当該リベットを変形させて、両者をカシメ固定する、或いはピストン体44の上端にランナー軸11の下端を嵌合させるなどの方法を採ることができる。
【符号の説明】
【0039】
2 上レール
4 戸パネル
5 ランナーユニット
8 ランナー本体
9 ホルダー
10 ランナー台
11 ランナー軸
12 ダンパー
30 軸連結穴
31 ダンパー収容部
32 区画壁
33 通口
34 ロッド連結穴
35 止輪組付溝
43 シリンダー
44 ピストン体
44b ロッド
46 止輪溝
47 止輪
49 ダンパーばね