(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088922
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】水素供給システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/26 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
C01B3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201062
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】清家 匡
(72)【発明者】
【氏名】壱岐 英
(72)【発明者】
【氏名】前田 征児
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DB01
4G140DC02
4G140DC03
(57)【要約】
【課題】脱水素反応部の脱水素触媒の劣化を抑制しつつ、水素供給システムとしてのシステム効率を向上できる水素供給システムを提供する。
【解決手段】水素供給システム100では、水素供給部40は、脱水素反応部3と、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部6との間の水素含有ガス、及び、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部6にて分離された水素含有ガス、の少なくとも一方を脱水素反応部3へ供給する。このように、水素供給部40が、水素精製部8よりも上流側の水素含有ガスを脱水素反応部3に供給する。従って、脱水素反応部3の脱水素触媒の劣化抑制用の水素を水素精製部8から取り出すことが不要となるため、水素精製部8に投入されるエネルギーを低減することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の供給を行う水素供給システムであって、
水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、
前記脱水素反応部へ水素を供給する水素供給部と、
前記水素供給システムを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記脱水素反応部での前記水素含有ガスの生成を停止する場合、前記水素供給部に前記脱水素反応部へ水素を供給させ、
前記水素供給部は、
前記脱水素反応部と、前記水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部との間の前記水素含有ガス、
及び、前記水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部にて分離された前記水素含有ガス、の少なくとも一方を前記脱水素反応部へ供給する、水素供給システム。
【請求項2】
前記水素供給部は、更に、外部からの水素を前記脱水素反応部へ供給する、請求項1に記載の水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の供給を行う水素供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水素供給システムとして、例えば特許文献1に挙げるものが知られている。特許文献1の水素供給システムは、原料の芳香族炭化水素の水素化物を貯蔵するタンクと、当該タンクから供給された原料を脱水素反応させることによって水素を得る脱水素反応部と、脱水素反応部で得られた水素を気液分離する気液分離部と、気液分離された水素を精製する水素精製部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような水素供給システムでは、脱水素反応部での水素含有ガスの生成を停止した場合、原料の供給を停止して、窒素等の不活性ガスを脱水素反応部に供給することがある。これにより、脱水素反応部に残存する原料をパージする。しかし、当該方法では、脱水素反応部が高温であり、且つ、水素が存在しない状態となるため、コークなどの生成によって脱水素触媒が劣化する場合がある。その一方、水素精製装置側から水素を取り出して、脱水素反応部に供給した場合、水素製造装置において、製品として用いられない水素に対する投入エネルギーが必要となってしまう。従って、脱水素反応部の脱水素触媒の劣化を抑制しつつ、水素供給システムとしてのシステム効率を向上することが求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、脱水素反応部の脱水素触媒の劣化を抑制しつつ、水素供給システムとしてのシステム効率を向上できる水素供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る水素供給システムは、水素の供給を行う水素供給システムであって、水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、水素供給システムを制御する制御部と、を備え、制御部は、脱水素反応部での水素含有ガスの生成を停止する場合、水素供給部に脱水素反応部へ水素を供給させ、水素供給部は、脱水素反応部と、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部との間の水素含有ガス、及び、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部にて分離された水素含有ガス、の少なくとも一方を脱水素反応部へ供給する。
【0007】
水素供給システムでは、脱水素反応部は、水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る。脱水素反応部は、脱水素触媒が加熱された状態で脱水素反応を行う。ここで、脱水素反応部での水素含有ガスの生成を停止する場合、制御部は、脱水素反応部に水素を供給する。これにより、停止時においても、脱水素反応部に水素が存在する状態となる。従って、脱水素反応部が高温の状態であって水素が存在していない状態となることで脱水素触媒にコークが析出すること、を回避できる。更に、水素供給部は、脱水素反応部と、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部との間の水素含有ガス、及び、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部にて分離された水素含有ガス、の少なくとも一方を脱水素反応部へ供給する。このように、水素供給部が、水素精製部よりも上流側の水素含有ガスを脱水素反応部に供給する。従って、脱水素反応部の脱水素触媒の劣化抑制用の水素を水素精製部から取り出すことが不要となるため、水素精製部に投入されるエネルギーを低減することができる。以上より、脱水素反応部の脱水素触媒の劣化を抑制しつつ、水素供給システムとしてのシステム効率を向上できる。
【0008】
水素供給部は、外部からの水素を供給してよい。この場合、水素供給部は、システム内に存在する水素の残量を気にせずに、水素を供給することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脱水素反応部の脱水素触媒の劣化を抑制しつつ、水素供給システムとしてのシステム効率を向上できる水素供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る水素供給システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る水素供給システムの好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る水素供給システムの構成を示すブロック図である。水素供給システム100は、有機化合物(常温で液体)を原料とするものである。なお、水素精製の過程では、原料である有機化合物(常温で液体)を脱水素した、脱水素生成物(有機化合物(常温で液体))が除去される。原料の有機化合物として、例えば、有機ハイドライドが挙げられる。有機ハイドライドは、製油所で大量に生産されている水素を芳香族炭化水素と反応させた水素化物が好適な例である。また、有機ハイドライドは、芳香族の水素化化合物に限らず、2-プロパノール(水素とアセトンが生成される)の系もある。有機ハイドライドは、ガソリンなどと同様に液体燃料としてタンクローリーなどによって水素供給システム100へ輸送することができる。本実施形態では有機ハイドライドとして、メチルシクロヘキサン(以下、MCHと称する)を用いる。その他、有機ハイドライドとしてシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン、ジメチルデカリン、エチルデカリンなど芳香物炭化水素の水素化物を適用することができる(なお、芳香族化合物は特に水素含有量の多い好適な例である)。水素供給システム100は、燃料電池自動車(FCV)や水素エンジン車に水素を供給することができる。なお、メタンを主成分とした天然ガスやプロパンを主成分としたLPG、あるいはガソリン、ナフサ、灯油、軽油といった液体炭化水素原料から水素を製造する場合にも適用可能である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る水素供給システム100は、圧縮部1、熱交換部2、脱水素反応部3、加熱部4、気液分離部6、圧縮部7、及び水素精製部8を備えている。このうち、圧縮部1、熱交換部2、及び脱水素反応部3は、水素含有ガスを製造する水素製造部10に属する。また、気液分離部6、圧縮部7、及び水素精製部8は、水素の純度を高める水素純度調整部11に属する。また、水素供給システム100は、ラインL1~L12を備えている。なお、本実施形態では、原料としてMCHを採用し、水素精製の過程で除去される脱水素生成物がトルエンである場合を例として説明する。なお、実際には、トルエンのみならず、未反応のMCHと少量の副生成物及び不純物も存在するが、本実施形態中では、トルエンに混じって当該トルエンと同じ挙動を示す。従って、以下の説明において、「トルエン」と称して説明するものには、未反応のMCHや副生成物も含むものとする。
【0014】
ラインL1~L12は、MCH、トルエン、水素含有ガス、オフガス、高純度水素、または加熱媒体が通過する流路である。ラインL1は、圧縮部1が図示されないMCHタンクからMCHをくみ上げるためのラインであり、圧縮部1とMCHタンクを接続する。ラインL2は、圧縮部1と脱水素反応部3とを接続する。ラインL3は、脱水素反応部3と気液分離部6とを接続する。ラインL4は、気液分離部6と図示されないトルエンタンクとを接続する。ラインL5は、気液分離部6と圧縮部7とを接続する。ラインL6は、圧縮部7と水素精製部8とを接続する。ラインL7は、水素精製部8とオフガスの供給先とを接続する。ラインL8は、水素精製部8と図示されない精製ガスの供給装置とを接続する。ラインL11,L12は、加熱部4と脱水素反応部3とを接続する。ラインL11,L12は、熱媒体を流通させる。
【0015】
圧縮部1は、原料となるMCHを脱水素反応部3へ供給する。なお、外部からタンクローリーなどで輸送されたMCHは、MCHタンクにて貯留される。MCHタンクに貯留されているMCHは、圧縮部1によってラインL1,L2を介して脱水素反応部3へ供給される。
【0016】
熱交換部2は、ラインL2を流通するMCHとラインL3を流通する水素含有ガスとの間で熱交換を行う。脱水素反応部3から出てきた水素含有ガスの方がMCHよりも高温である。従って、熱交換部2では、水素含有ガスの熱によってMCHが加熱される。これにより、MCHは、温度が上昇した状態で脱水素反応部3へ供給される。なお、MCHは、ラインL7を介して水素精製部8から供給されたオフガスと合わせて、脱水素反応部3へ供給される。
【0017】
脱水素反応部3は、MCHを脱水素反応させることによって水素を得る機器である。すなわち、脱水素反応部3は、脱水素触媒を用いた脱水素反応によってMCHから水素を取り出す機器である。脱水素触媒は、特に制限されないが、例えば、白金触媒、パラジウム触媒及びニッケル触媒から選ばれる。これら触媒は、アルミナ、シリカ及びチタニア等の担体上に担持されていてもよい。有機ハイドライドの反応は可逆反応であり、反応条件(温度、圧力)によって反応の方向が変わる(化学平衡の制約を受ける)。一方、脱水素反応は、常に吸熱反応で分子数が増える反応である。従って、高温、低圧の条件が有利である。脱水素反応は吸熱反応であるため、脱水素反応部3は加熱部4からラインL11,L12を循環する熱媒体を介して熱を供給される。脱水素反応部3は、脱水素触媒中を流れるMCHと加熱部4からの熱媒体との間で熱交換可能な機構を有している。脱水素反応部3で取り出された水素含有ガスは、ラインL3を介して気液分離部6へ供給される。ラインL3の水素含有ガスは、液体であるトルエンを混合物として含んだ状態で、気液分離部6へ供給される。
【0018】
加熱部4は、熱媒体を加熱すると共に、当該熱媒体をラインL11を介して脱水素反応部3へ供給する。加熱後の熱媒体は、ラインL12を介して加熱部4に戻される。熱媒体は特に限定されないが、オイルなどが採用されてよい。なお、加熱部4は、脱水素反応部3を加熱することができるものであればどのようなものを採用してもよい。例えば、加熱部4は、脱水素反応部3を直接加熱するものであってもよく、例えばラインL2を加熱することによって脱水素反応部3に供給されるMCHを加熱してもよい。また、加熱部4は、脱水素反応部3と、脱水素反応部3へ供給されるMCHの両方を加熱してもよい。例えば、加熱部4としてバーナーやエンジンを採用することができる。
【0019】
気液分離部6は、水素含有ガスからトルエンを分離する装置である。気液分離部6は、混合物としてトルエンを含む水素含有ガスを供給し、気体である水素と液体であるトルエンとに気液分離する。また、気液分離部6に供給される水素含有ガスは、熱交換部2で冷却される。なお、気液分離部6は、冷熱源からの冷却媒体によって冷却されてよい。この場合、気液分離部6は、気液分離部6中の水素含有ガスと冷熱源からの冷却媒体との間で熱交換可能な機構を有している。気液分離部6で分離されたトルエンは、ラインL4を介して図示されないトルエンタンクへ供給される。気液分離部6で分離された水素含有ガスは、圧縮部7の圧力によりラインL5,L6を介して水素精製部8へ供給される。なお、水素含有ガスを冷やすと当該ガスの一部(トルエン)は液化し、気液分離部6によって、液化しないガス(水素)と分離することができる。ガスを低温とした方が、分離の効率は良くなり、圧力を上げると更に、トルエンの液化が進む。
【0020】
水素精製部8は、脱水素反応部3で得られると共に気液分離部6で気液分離された水素含有ガスから、脱水素生成物(本実施形態ではトルエン)を除去する。これによって、水素精製部8は、当該水素含有ガスを精製して高純度水素(精製ガス)を得る。得られた精製ガスは、ラインL8へ供給される。なお、水素精製部8で生じたオフガスは、ラインL7を介して脱水素反応部3へ供給される。
【0021】
水素精製部8は、採用する水素精製方法によって異なるが、具体的には、水素精製方法として膜分離を用いる場合には、水素分離膜を備える水素分離装置であり、PSA(Pressure swing adsorption)法又はTSA(Temperature swing adsorption)法を用いる場合には、不純物を吸着する吸着材を格納する吸着塔を複数備えた吸着除去装置である。
【0022】
水素精製部8が膜分離を用いる場合について説明する。この方法では、所定温度に加熱された膜に、圧縮部(不図示)によって所定圧力に加圧された水素含有ガスを透過させることによって、脱水素生成物を除去し、高純度の水素ガス(精製ガス)を得ることができる。膜を透過した透過ガスの圧力は、膜を透過する前の圧力と比べて低下する。一方、膜を透過しなかった非透過ガスの圧力は、膜を透過する前の所定圧力と略同一である。このとき、膜を透過しなかった非透過ガスが、水素精製部8のオフガスに該当する。
【0023】
水素精製部8に適用される膜の種類は特に限定されず、多孔質膜(分子流によって分離するもの、表面拡散流によって分離するもの、毛管凝縮作用によって分離するもの、分子ふるい作用によって分離するものなど)や、非多孔質膜を適用することができる。水素精製部8に適用される膜として、例えば、金属膜(PbAg系、PdCu系、Nb系など)、ゼオライト膜、無機膜(シリカ膜、カーボン膜など)、高分子膜(ポリイミド膜など)を採用することができる。
【0024】
水素精製部8の除去方法として、PSA法を採用する場合について説明する。PSA法で用いられる吸着材は、高圧下では水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着し、低圧下では吸着したトルエンを脱着する性質を持つ。PSA法は、吸着材のこのような性質を利用するものである。すなわち、吸着塔内を高圧にすることにより、水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去し、高純度の水素ガス(精製ガス)を得る。吸着により吸着塔内の吸着材の吸着機能が低下した場合には、吸着塔内を低圧にすることにより、吸着材に吸着したトルエンを脱着し、併せて除去した精製ガスの一部を逆流させることにより当該脱着されたトルエンを吸着塔内から除去することで、吸着材の吸着機能を再生する(このとき、トルエンを吸着塔内から除去することで排出される少なくとも水素とトルエンを含む水素含有ガスが、水素精製部8からのオフガスに該当する)。
【0025】
水素精製部8の除去方法として、TSA法を採用する場合について説明する。TSA法で用いられる吸着材は、常温下では水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着し、高温下では吸着したトルエンを脱着する性質を持つ。TSA法は、吸着材のこのような性質を利用するものである。すなわち、吸着塔内を常温にすることにより、水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去し、高純度の水素ガス(高純度水素)を得る。吸着により吸着塔内の吸着材の吸着機能が低下した場合には、吸着塔内を高温にすることにより、吸着材に吸着したトルエンを脱着し、併せて除去した高純度水素の一部を逆流させることにより当該脱着されたトルエンを吸着塔内から除去することで、吸着材の吸着機能を再生する(このとき、トルエンを吸着塔内から除去することで排出される少なくとも水素とトルエンを含む水素含有ガスが、水素精製部8からのオフガスに該当する)。
【0026】
続いて、上述した水素供給システム100の特徴的な部分について説明する。
図1に示すように、水素供給システム100は、水素供給部40と、制御部50と、を備える。
【0027】
水素供給部40は、脱水素反応部3へ水素を供給する。制御部50は、脱水素反応部3での水素含有ガスの生成を停止する場合、水素供給部40に脱水素反応部3へ水素を供給させる。これにより、水素供給部40は、停止時における脱水素反応部3内に水素を入れることができる。
【0028】
具体的に、水素供給部40は、脱水素反応部3と気液分離部6との間の水素含有ガスを脱水素反応部3へ供給するパージガスラインL20と、当該パージガスラインL20に設けられたバルブ51と、を備える。パージガスラインL20は、ラインL3から、ラインL2まで延びている。
【0029】
また、水素供給部40は、気液分離部6にて分離された水素含有ガスを脱水素反応部3へ供給するパージガスラインL25と、当該パージガスラインL25に設けられたバルブ52をと、備える。パージガスラインL25は、ライン5から分岐して、ラインL2まで延びている。なお、パージガスラインL25は、ラインL6から分岐してもよい。
【0030】
また、水素供給部40は、外部からの水素を供給する供給部55と、当該供給部55からの水素を脱水素反応部3へ供給するパージガスラインL15と、を備える。パージガスラインL15は、ラインL2に接続されている。供給部55は、例えば、水素を貯留したタンクや、当該タンクを圧送するポンプなどによって構成される。
【0031】
なお、水素供給部40は、パージガスラインL20及びパージガスラインL25の少なくとも一方を備えていればよい。すなわち、水素供給部40は、パージガスラインL20,L25の何れか一方を備えていればよく、またはパージガスラインL20,L25の両方を備えていてもよい。また、パージガスラインL15は必須の構造ではなく、必要に応じて設置してもよいし、省略してもよい。
【0032】
次に、制御部50の動作について説明する。脱水素反応を停止する場合、制御部50は、ラインL2のバルブ54を閉として、脱水素反応部3に対する原料の供給を停止する。この段階では、脱水素反応部3には、未反応の原料や、脱水素生成物などが存在している。当該状態では、脱水素反応部3は高温状態にある。
【0033】
次に、制御部50は、水素供給部40を制御して、脱水素反応部3にパージガスとしての水素を供給する。具体的に、制御部50は、バルブ51を開として、パージガスラインL20で脱水素反応部3と気液分離部6との間から水素含有ガスを取り出して、脱水素反応部3へ供給する。また、制御部50は、バルブ52を開として、パージガスラインL25で気液分離部6から水素含有ガスを取り出して、脱水素反応部3へ供給する。また、制御部50は、供給部55を起動させて、パージガスラインL15を介して脱水素反応部3へ水素を供給する。なお、制御部50は、パージガスラインL20,L25の何れか一方を介しての水素含有ガスの供給を行えばよく、またはパージガスラインL20,L25の両方を介しての水素含有ガスの供給を行えばよい。また、制御部50がパージガスラインL15を介して水素含有ガスを供給する動作は必須ではなく、必要に応じて行われればよい。
【0034】
以上により、水素供給部40は、脱水素反応部3内に残存する未反応の原料、及び脱水素生成物を水素でパージすることができる。ここで、水素供給部40が供給した水素のうち、脱水素反応部3を通過した水素は、そのまま系外に排出してもよい。例えば、気液分離部6の上端側に系外に開放された排出ラインL35を設ける。脱水素反応部3を通過した水素は、バルブ56を開として排出ラインL35から排出されてよい。なお、脱水素反応部3の液分(未反応の原料、脱水素生成物)を十分にパージした後は、脱水素反応部3を通過した水素の一部、または全部をリサイクルしてもよい。リサイクルする場合、脱水素反応部3を通過した水素は、再び脱水素反応部3へ戻される。
【0035】
制御部50は、脱水素反応部3の停止後、水素供給部40にていつまで水素を供給し続けるかは特に限定されない。例えば、制御部50は、脱水素反応部3の温度が所定の温度以下まで下がったタイミングで水素供給部40の水素の供給を停止してよいし、予め定めた時間が経過したら、水素供給部40の水素の供給を停止してよい。
【0036】
なお、前述のように、制御部50は、パージガスラインL20,L25,L15の全てから水素を供給しなくともよく、パージガスラインL20,L25の少なくとも一つから水素を供給すればよい。また、制御部50は、タイミングによって、どのパージガスラインL20,L25,L15から水素を供給するかを切り替えてもよい。例えば、制御部50は、まずはパージガスラインL20で水素を供給し、当該箇所での水素がなくなったら、パージガスラインL25などから水素を供給してよい。また、制御部50は、パージガスラインL20,L25の水素がなくなったら、パージガスラインL15で水素を供給してよい。なお、水素供給部40がパージガスラインL20,L25の何れか一方だけを備える場合は、上述のような制御部50による切り替えを行わなくともよい。
【0037】
次に、本実施形態に係る水素供給システム100の作用・効果について説明する。
【0038】
水素供給システム100では、脱水素反応部3は、水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る。脱水素反応部3は、脱水素触媒が加熱された状態で脱水素反応を行う。ここで、脱水素反応部3での水素含有ガスの生成を停止する場合、制御部50は、脱水素反応部3に水素を供給する。これにより、停止時においても、脱水素反応部3に水素が存在する状態となる。従って、脱水素反応部3が高温の状態であって水素が存在していない状態となることで脱水素触媒にコークが析出すること、を回避できる。以上より、脱水素反応部3の脱水素触媒の劣化を抑制できる。
【0039】
更に、水素供給部40は、脱水素反応部3と、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部6との間の水素含有ガス、及び、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部6にて分離された水素含有ガス、の少なくとも一方を脱水素反応部3へ供給する。このように、水素供給部40が、水素精製部8よりも上流側の水素含有ガスを脱水素反応部3に供給する。従って、脱水素反応部3の脱水素触媒の劣化抑制用の水素を水素精製部8から取り出すことが不要となるため、水素精製部8に投入されるエネルギーを低減することができる。以上より、脱水素反応部3の脱水素触媒の劣化を抑制しつつ、水素供給システム100としてのシステム効率を向上できる。
【0040】
なお、水素供給部40が、脱水素反応部3と気液分離部6との間の水素含有ガスを脱水素反応部3へ供給する場合、水素供給部40は、気液分離がなされる前の水素含有ガスを脱水素反応部3へ供給することができるため、システム効率を向上できる。また、気液分離部6が液面計の故障(水素漏れを生じる液面上昇、液面低下等)などで十分に機能を果たせない場合に、パージガスラインL20からの水素含有ガスを脱水素反応部3に供給することができる。
【0041】
また、水素供給部40が、気液分離部6にて分離された水素含有ガスを脱水素反応部3へ供給する場合、水素供給部40は、脱水素生成物を除去した純度の高い状態の水素(パージガスラインL20の水素より純度が高い水素)を脱水素反応部3へ供給することができる。従って、システム効率の向上と純度の高い水素の利用との両方をバランス良く保つことができる。
【0042】
水素供給部40は、外部からの水素を供給してよい。この場合、水素供給部40は、システム内に存在する水素の残量を気にせずに、水素を供給することができる。脱水素反応部3の脱水素触媒の劣化抑制用の水素として、脱水素反応部3と気液分離部6との間の水素含有ガス及び/又は気液分離部6にて分離された水素含有ガスでは不十分な場合や、圧損が大きくなりパージガスラインL20,L25のパージガス圧力では水素含有ガスを脱水素反応部3に供給できない場合にでも、外部からの水素を供給することで、脱水素触媒の劣化を効果的に抑制することが出来る。また、イニシャルスタートアップやメンテナンス用として外部からの水素を供給しても良い。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、水素供給システムとしてFVCのための水素ステーションを例示したが、例えば家庭用電源や非常用電源などの分散電源のための水素供給システムであってもよい。
【0044】
水素供給システム100は、水素供給部40として、パージガスラインL20,L25のうち、少なくとも一つを有していればよい。
【符号の説明】
【0045】
3…脱水素反応部、6…気液分離部、8…水素精製部、40…水素供給部、50…制御部、100…水素供給システム。