(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088941
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
F28F 9/26 20060101AFI20220608BHJP
F28F 9/007 20060101ALI20220608BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
F28F9/26
F28F9/007
F25B39/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201085
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 新吾
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065FA13
(57)【要約】
【課題】製造工数を削減しうるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ1の左ヘッダタンク6と左ヘッダタンク6に固定された受液器7とにまたがってブラケット9が取り付けられている。ブラケット9は、受液器7の外周面の一部を抱持する第1抱持部31、左ヘッダタンク6の外周面の一部に係止させられた第1係止部32および取付部33を有する第1ブラケット部材30と、受液器7の外周面における第1抱持部31により抱持された部分とは反対側の一部を抱持する第2抱持部、左ヘッダタンク6の外周面の一部に係止させられた第2係止部42および固定部43を有する第2ブラケット部材40とを備えている。受液器7と両ブラケット部材30,40にそれぞれ設けられた位置決め部によりブラケット9の受液器7に対する上下方向の位置が決められた状態で、固定部43が取付部33に機械的に締結されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を上下方向に向けた状態で互いに間隔をおいて配置された2つのヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部と、長手方向を上下方向に向けた状態で一方のヘッダタンクに取り付けられた受液器と、受液器が取り付けられた受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器にまたがって固定されたブラケットとを備えているコンデンサにおいて、
ブラケットが、受液器の外周面における周方向の一部を抱持する第1抱持部、第1抱持部の受液器取付用ヘッダタンク側の一端部に一体に設けられかつ受液器取付用ヘッダタンクの外周面の一部に係止させられた第1係止部、および第1抱持部の他端部に一体に設けられた取付部を有する第1ブラケット部材と、受液器の外周面における第1ブラケット部材の第1抱持部により抱持された部分とは周方向の反対側の一部を抱持する第2抱持部、第2抱持部の受液器取付用ヘッダタンク側の一端部に一体に設けられかつ受液器取付用ヘッダタンクの外周面の一部に係止させられた第2係止部、および第2抱持部の他端部に一体に設けられた固定部を有する第2ブラケット部材とを備えており、受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器のうちの少なくともいずれか一方と、両ブラケット部材のうちの少なくともいずれか一方とに、それぞれブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部が設けられ、当該位置決め部によりブラケットの受液器に対する上下方向の位置が決められた状態で、第2ブラケット部材の固定部が第1ブラケット部材の取付部における第1抱持部側の端部に機械的に締結されることにより、ブラケットが受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器にまたがって取り付けられているコンデンサ。
【請求項2】
受液器の外周面に、2つの環状凸部が上下方向に間隔をおいて全周にわたって設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部が2つの環状凸部間に配置され、2つの環状凸部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、第1抱持部および第2抱持部が第1ブラケット部材および第2ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
受液器の外周面に、上下方向に一定の長さを有する小径部が設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部が小径部の周囲に配置され、小径部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、第1抱持部および第2抱持部が第1ブラケット部材および第2ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている請求項1記載のコンデンサ。
【請求項4】
受液器の外周面に、径方向の内方に凹みかつ上下方向に一定の長さを有する少なくとも1つの平坦部が設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部のうちの少なくともいずれか一方に、平坦部に密着する密着部が設けられ、平坦部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、密着部が少なくともいずれか一方のブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている請求項1記載のコンデンサ。
【請求項5】
受液器の外周面に、径方向の内方に凹みかつ上下方向に一定の長さを有する平坦部が周方向に離隔して複数設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部に、それぞれ平坦部に密着する密着部が設けられ、複数の平坦部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、複数の密着部が両ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている請求項4記載のコンデンサ。
【請求項6】
受液器取付用ヘッダタンクが、上下方向に隣接する2つの区画と、当該2つの区画間に位置する仕切部材とを備えており、当該仕切部材が、受液器取付用ヘッダタンクの周壁に形成された挿通穴に、一部が受液器取付用ヘッダタンクの外部に突出するように挿入されて受液器取付用ヘッダタンクに接合されており、仕切部材における受液器取付用ヘッダタンクの外部に突出した部分が、受液器取付用ヘッダタンクに設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うヘッダタンク側位置決め部となり、第1係止部および第2係止部が第1ブラケット部材および第2ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている請求項1記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコンデンサに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図1の上下、左右を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえば、カーエアコンに用いられるコンデンサとして、長手方向を上下方向に向けた状態で互いに間隔をおいて配置された2つのヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部と、長手方向を上下方向に向けた状態で一方のヘッダタンクに取り付けられた受液器とを備えており、熱交換コア部が、長手方向を両ヘッダタンクの長手方向と直角をなす方向に向けた状態で両ヘッダタンク間に上下方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部が両ヘッダタンクに接続された複数の熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間および両端の熱交換管の外側に配置されて熱交換管にろう材により接合されたフィンとからなるコンデンサが周知である。以下の説明において、ろう材による接合をろう付と称する。
【0004】
上述した周知のコンデンサはブラケットを備えており、ブラケットを利用して車体に直接取り付けられ、あるいはブラケットを利用してケースに取り付けられるとともに当該ケースが車体に組み込まれることにより車両に用いられるのが一般的である。
【0005】
前記ブラケットが受液器に固定状に設けられたコンデンサとして、本出願人は、先に、特許文献1記載のコンデンサを提案した。特許文献1記載のコンデンサは、上述した周知のコンデンサにおいて、受液器の周面における周方向の一部分を抱持する第1抱持部を有する第1ブラケット部材が、受液器が取り付けられた受液器取付用ヘッダタンクの周壁の上部にろう付され、受液器の周面における周方向の一部分を抱持する第2抱持部を有する第2ブラケット部材が、受液器取付用ヘッダタンクに係止させられ、両ブラケット部材における抱持部を挟んで受液器取付用ヘッダタンクとは反対側の部分どうしが締結部材により締結されており、受液器が、第1ブラケット部材の第1抱持部と第2ブラケット部材の第2抱持部とにより両側から抱持され、第1ブラケット部材の受液器取付用ヘッダタンク側の端部が、当該ヘッダタンクの外周面における第2ブラケット部材の第2抱持部により抱持されている側と同じ側の部分に沿わされて固定され、第1ブラケット部材における第1抱持部と受液器取付用ヘッダタンクへの固定部との間に貫通穴が形成され、第2ブラケット部材の受液器取付用ヘッダタンク側の端部が、第1ブラケット部材の貫通穴に通されるとともに、当該ヘッダタンクの外周面における第1ブラケット部材の第1抱持部により抱持されている側と同じ側の部分に係止させられているコンデンサである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載のコンデンサにおいては、第1ブラケット部材を受液器取付用ヘッダタンクにろう付する必要があり、第1ブラケット部材の受液器取付用ヘッダタンクへのろう付は、ヘッダタンクと熱交換管、および熱交換管とフィンとのろう付と同時に行われることになる。しかしながら、ろう付の際の第1ブラケット部材の位置ずれを防止する目的で、ろう付の前の段階において第1ブラケット部材をスポット溶接などの方法により受液器取付用ヘッダタンクに仮止めする必要があり、コンデンサを製造する際の製造工数が増加するという問題がある。
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、特許文献1記載コンデンサに比較して、製造工数を削減しうるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)長手方向を上下方向に向けた状態で互いに間隔をおいて配置された2つのヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部と、長手方向を上下方向に向けた状態で一方のヘッダタンクに取り付けられた受液器と、受液器が取り付けられた受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器にまたがって固定されたブラケットとを備えているコンデンサにおいて、
ブラケットが、受液器の外周面における周方向の一部を抱持する第1抱持部、第1抱持部の受液器取付用ヘッダタンク側の一端部に一体に設けられかつ受液器取付用ヘッダタンクの外周面の一部に係止させられた第1係止部、および第1抱持部の他端部に一体に設けられた取付部を有する第1ブラケット部材と、受液器の外周面における第1ブラケット部材の第1抱持部により抱持された部分とは周方向の反対側の一部を抱持する第2抱持部、第2抱持部の受液器取付用ヘッダタンク側の一端部に一体に設けられかつ受液器取付用ヘッダタンクの外周面の一部に係止させられた第2係止部、および第2抱持部の他端部に一体に設けられた固定部を有する第2ブラケット部材とを備えており、受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器のうちの少なくともいずれか一方と、両ブラケット部材のうちの少なくともいずれか一方とに、それぞれブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部が設けられ、当該位置決め部によりブラケットの受液器に対する上下方向の位置が決められた状態で、第2ブラケット部材の固定部が第1ブラケット部材の取付部における第1抱持部側の端部に機械的に締結されることにより、ブラケットが受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器にまたがって取り付けられているコンデンサ。
【0011】
2)受液器の外周面に、2つの環状凸部が上下方向に間隔をおいて全周にわたって設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部が2つの環状凸部間に配置され、2つの環状凸部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、第1抱持部および第2抱持部が第1ブラケット部材および第2ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている上記1)記載のコンデンサ。
【0012】
3)受液器の外周面に、上下方向に一定の長さを有する小径部が設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部が小径部の周囲に配置され、小径部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、第1抱持部および第2抱持部が第1ブラケット部材および第2ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている上記1)記載のコンデンサ。
【0013】
4)受液器の外周面に、径方向の内方に凹みかつ上下方向に一定の長さを有する少なくとも1つの平坦部が設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部のうちの少なくともいずれか一方に、平坦部に密着する密着部が設けられ、平坦部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、密着部が少なくともいずれか一方のブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている上記1)記載のコンデンサ。
【0014】
5)受液器の外周面に、径方向の内方に凹みかつ上下方向に一定の長さを有する平坦部が周方向に離隔して複数設けられており、第1ブラケット部材の第1抱持部および第2ブラケット部材の第2抱持部に、それぞれ平坦部に密着する密着部が設けられ、複数の平坦部が受液器に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う受液器側位置決め部となり、複数の密着部が両ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている請求項4記載のコンデンサ。
【0015】
6)受液器取付用ヘッダタンクが、上下方向に隣接する2つの区画と、当該2つの区画間に位置する仕切部材とを備えており、当該仕切部材が、受液器取付用ヘッダタンクの周壁に形成された挿通穴に、一部が受液器取付用ヘッダタンクの外部に突出するように挿入されて受液器取付用ヘッダタンクに接合されており、仕切部材における受液器取付用ヘッダタンクの外部に突出した部分が、受液器取付用ヘッダタンクに設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うヘッダタンク側位置決め部となり、第1係止部および第2係止部が第1ブラケット部材および第2ブラケット部材に設けられてブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行うブラケット部材側位置決め部となっている上記1)記載のコンデンサ。
【発明の効果】
【0016】
上記1)~6)のコンデンサによれば、ブラケットが、受液器の外周面における周方向の一部を抱持する第1抱持部、第1抱持部の受液器取付用ヘッダタンク側の一端部に一体に設けられかつ受液器取付用ヘッダタンクの外周面の一部に係止させられた第1係止部、および第1抱持部の他端部に一体に設けられた取付部を有する第1ブラケット部材と、受液器の外周面における第1ブラケット部材の第1抱持部により抱持された部分とは周方向の反対側の一部を抱持する第2抱持部、第2抱持部の受液器取付用ヘッダタンク側の一端部に一体に設けられかつ受液器取付用ヘッダタンクの外周面の一部に係止させられた第2係止部、および第2抱持部の他端部に一体に設けられた固定部を有する第2ブラケット部材とを備えており、受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器のうちの少なくともいずれか一方と、両ブラケット部材のうちの少なくともいずれか一方とに、ブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部が設けられ、当該位置決め部によりブラケットの受液器に対する上下方向の位置が決められた状態で、第2ブラケット部材の固定部が第1ブラケット部材の取付部における第1抱持部側の端部に機械的に締結されることにより、ブラケットが受液器取付用ヘッダタンクおよび受液器にまたがって取り付けられているので、両ブラケット部材をろう付により受液器取付用ヘッダタンクに固定する必要はない。したがって、コンデンサを製造するにあたって、両ブラケット部材のうちの少なくともいずれか一方を受液器取付用ヘッダタンクにろう付により固定する際に不可避のスポット溶接などの方法による仮止め作業が不要になり、作業工数を削減することが可能になって製造作業が容易になる。しかも、第1ブラケット部材および第2ブラケット部材が受液器取付用ヘッダタンクにろう付されていなくても、ブラケットの受液器に対する上下方向の位置を適切に決めることが可能になる。
【0017】
上記2)~6)のコンデンサによれば、比較的簡単な構成で、ブラケットの受液器に対する上下方向の位置を適切に決めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明のコンデンサの全体構成を示す正面図である。
【
図3】
図1のコンデンサのブラケットを示す平面図である。
【
図4】
図3の一部を拡大して示す水平断面図である。
【
図5】(a)は第2ブラケット部材の固定部を第1ブラケット部材の取付部に機械的に締結する手段の第1の変形例を示す部分拡大水平断面図であり、(b)は第2ブラケット部材の固定部を第1ブラケット部材の取付部に機械的に締結する手段の第2の変形例を示す部分拡大水平断面図である。
【
図6】この発明のコンデンサにおけるブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部の第1の変形例を示す
図2相当の図である。
【
図7】この発明のコンデンサにおけるブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部の第2の変形例を示す
図2相当の図である。
【
図8】
図7の位置決め部を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図9】この発明のコンデンサにおけるブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部の第3の変形例を示す
図8相当の図である。
【
図10】この発明のコンデンサにおけるブラケットの受液器に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部の第4の変形例を示す
図2相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
なお、以下の説明において、風の流れる方向は
図1の紙面表側から紙面裏側であり、
図1の上下、左右、すなわちこの明細書および特許請求の範囲における上下、左右は、風上側から風下側を見た際の上下、左右をいうものとする。また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0021】
図1はこの発明のコンデンサの全体構成を示し、
図2~
図4は
図1のコンデンサの要部の構成を示す。
【0022】
図1において、車両用空調装置のコンデンサ(1)は、凝縮部(2)および凝縮部(2)の下方に設けられた過冷却部(3)を備えており、熱交換コア部(4)と、長手方向を上下方向に向けた状態で熱交換コア部(4)の右側および左側に配置された2つのアルミニウム製ヘッダタンク(5)(6)と、長手方向を上下方向に向けた状態で左ヘッダタンク(6)に取り付けられたアルミニウム製受液器(7)と、右ヘッダタンク(5)に固定された右側ブラケット(8)と、左ヘッダタンク(6)および受液器(7)にまたがって取り付けられ左側ブラケット(9)とを備えており、両ブラケット(8)(9)を用いて車両に設置されるようになっている。この実施形態において、左ヘッダタンク(6)が、受液器(7)が取り付けられた受液器取付用ヘッダタンクである。
【0023】
コンデンサ(1)は、圧縮機、膨張弁(減圧器)およびエバポレータとともに、フロン系冷媒を用いる冷凍サイクルを構成して車両に搭載される。
【0024】
コンデンサ(1)の熱交換コア部(4)は、幅方向を前後方向(通風方向)に向けるとともに長手方向を左右方向に向け、さらに高さ方向を上下方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置され、かつ長手方向両端部が両ヘッダタンク(5)(6)に接続された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(11)と、隣り合う熱交換管(11)どうしの間および上下両端の熱交換管(11)の外側に配置されて熱交換管(11)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(12)と、上下両端のコルゲートフィン(12)の外側に配置されてコルゲートフィン(12)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(13)とからなる。
【0025】
コンデンサ(1)の凝縮部(2)および過冷却部(3)には、それぞれ上下に連続して並んだ複数の熱交換管(11)により少なくとも1つ、ここでは1つの熱交換パス(P1)(P2)が設けられており、凝縮部(2)に設けられた熱交換パス(P1)が冷媒凝縮パスとなり、過冷却部(3)に設けられた熱交換パス(P2)が冷媒過冷却パスとなっている。そして、各熱交換パス(P1)(P2)を構成する全ての熱交換管(11)の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管(11)の冷媒流れ方向が異なっている。ここで、凝縮部(2)の熱交換パス(P1)を第1熱交換パスといい、過冷却部(3)の熱交換パス(P2)を第2熱交換パスというものとする。
【0026】
両ヘッダタンク(5)(6)内は、それぞれ第1熱交換パス(P1)と第2熱交換パス(P2)との間の高さ位置に設けられた板状のアルミニウム製仕切部材(14)により上下方向に並んだ2つの区画に仕切られており、コンデンサ(1)における両仕切部材(14)よりも上方に位置する部分が凝縮部(2)となり、両仕切部材(14)よりも下方に位置する部分が過冷却部(3)となっている。第1熱交換パス(P1)の熱交換管(11)の長手方向両端部は、両ヘッダタンク(5)(6)の仕切部材(14)よりも上方の区画に通じさせられ、第2熱交換パス(P2)の熱交換管(11)の長手方向両端部は、両ヘッダタンク(5)(6)の仕切部材(14)よりも下方の区画に通じさせられている。
【0027】
右ヘッダタンク(5)における仕切部材(14)よりも上方の部分に,圧縮機により圧縮された気相冷媒が流入する冷媒入口(図示略)が形成され、同じく仕切部材(14)よりも下方の部分に、液相冷媒が膨張弁に向かって流出する冷媒出口(図示略)が形成されている。そして、右ヘッダタンク(5)に、冷媒入口に通じるアルミニウム製入口部材(15)と、冷媒出口に通じるアルミニウム製出口部材(16)とが、上下方向に間隔をおいてろう付されている。
【0028】
左ヘッダタンク(6)における仕切部材(14)よりも上方の区画の下部は、左ヘッダタンク(6)および受液器(7)にろう付されたアルミニウム製連通部材(17)によって受液器(7)に通じさせられ、同じく仕切部材(14)よりも下方の区画は、左ヘッダタンク(6)および受液器(7)にろう付されたアルミニウム製連通部材(18)によって受液器(7)に通じさせられている。
【0029】
両ヘッダタンク(5)(6)が上述したように構成されているので、右ヘッダタンク(5)における仕切部材(14)よりも上方の区画が凝縮部入口ヘッダ(19)となっているとともに、左ヘッダタンク(6)における仕切部材(14)よりも上方の区画が凝縮部出口ヘッダ(21)となり、左ヘッダタンク(6)における仕切部材(14)よりも下方の区画が過冷却部入口ヘッダ(22)となっているとともに、右ヘッダタンク(5)における仕切部材(14)よりも下方の区画が過冷却部出口ヘッダ(23)となっている。
【0030】
受液器(7)はアルミニウム製であって、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖された円筒状であり、左ヘッダタンク(6)と別個に設けられて左ヘッダタンク(6)に固定されている。図示は省略したが、受液器(7)内には冷媒から異物を除去するフィルタや乾燥剤が入れられている。
【0031】
そして、圧縮機で圧縮された気相冷媒が、入口部材(15)から冷媒入口を通って凝縮部入口ヘッダ(19)に流入し、第1熱交換パス(P1)を流れる間に冷却されることにより凝縮して気液混相冷媒になって、凝縮部出口ヘッダ(21)に入る。凝縮部出口ヘッダ(21)に入った気液混相冷媒は、上側の連通部材(17)を通って受液器(7)内に入り、気液混相冷媒が受液器(7)において気相冷媒と液相冷媒とに分離され、貯留された液相冷媒が下側の連通部材(18)を通って過冷却部入口ヘッダ(22)に入る。過冷却部入口ヘッダ(22)に入った液相冷媒は、第2熱交換パス(P2)を流れる間に過冷却されて過冷却部出口ヘッダ(23)に入り、冷媒出口を通って出口部材(16)から流出して膨張弁に送られるようになっている。
【0032】
右側ブラケット(8)は、ろう付などの適当な手段によって右ヘッダタンク(5)に固定されており、自動車への固定に使用されるボルトなどの締結具が通される貫通穴(8a)を有している。
【0033】
図2~
図4に示すように、左側ブラケット(9)は、受液器(7)の外周面の周方向の一部、この実施形態では風上側の略半部を抱持する第1抱持部(31)、第1抱持部(31)の左ヘッダタンク(6)側の一端部(右端部)の上部に一体に設けられかつ左ヘッダタンク(6)の外周面の風下側部分における周方向の一部に係止させられた第1係止部(32)、および第1抱持部(31)の他端部に左方に突出するように一体に設けられた取付部(33)を有する第1ブラケット部材(30)と、受液器(7)の外周面における第1ブラケット部材(30)の第1抱持部(31)により抱持された部分とは周方向の反対側の残りの部分、この実施形態では風下側の略半部を抱持する第2抱持部(41)、第2抱持部(41)の右端部の下部に一体に設けられかつ左ヘッダタンク(6)の外周面の風上側部分における周方向の一部に係止させられた第2係止部(42)、および第2抱持部(41)の他端部に一体に設けられた固定部(43)を有する第2ブラケット部材(40)とからなる。両ブラケット部材(30)(40)は、それぞれ合成樹脂などの非金属や、アルミニウムなどの金属によって形成されている。
【0034】
左側ブラケット(9)は、左ヘッダタンク(6)および受液器(7)のうちの少なくともいずれか一方、ここでは受液器(7)と、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)のうちの少なくともいずれか一方、ここでは両ブラケット部材(30)(40)とにそれぞれ設けられかつ左側ブラケット(9)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部を利用して、左ヘッダタンク(6)および受液器(7)にまたがって取り付けられている。
【0035】
受液器(7)に設けられた受液器側位置決め部は、受液器(7)の周壁外周面に上下方向に間隔をおいて全周にわたって設けられた2つの環状凸部(50)からなり、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)に設けられたブラケット部材側位置決め部は、第1ブラケット部材(30)の第1抱持部(31)および第2ブラケット部材(40)の第2抱持部(41)からなる。ブラケット部材側位置決め部である第1ブラケット部材(30)の第1抱持部(31)および第2ブラケット部材(40)の第2抱持部(41)は、受液器側位置決め部である2つの環状凸部(50)間において受液器(7)の周壁の周囲に配置されており、第1抱持部(31)および第2抱持部(41)の上下両端部が上下の環状凸部(50)に係合することによって左側ブラケット(9)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めが行われている。そして、左側ブラケット(9)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めが行われた状態で、第2ブラケット部材(40)の固定部(43)が第1ブラケット部材(30)の取付部(33)における第1抱持部(31)側の端部に機械的に締結されることによって、左側ブラケット(9)が左ヘッダタンク(6)および受液器(7)にまたがって取り付けられている。
【0036】
第1ブラケット部材(30)の取付部(33)に、自動車への固定に使用されるボルトなどの締結具が通される貫通穴(9a)が形成されている。
【0037】
第2ブラケット部材(40)の固定部(43)を第1ブラケット部材(30)の取付部(33)に機械的に締結する手段は、
図4に示すように、第2ブラケット部材(40)の固定部(43)に上下方向に間隔をおいて一体に設けられて風上側に突出し、かつ第1ブラケット部材(30)の取付部(33)の第1抱持部(31)側端部に形成された貫通穴(34)に通された2つの突出部(44)と、各突出部(44)の先端に設けられて貫通穴(34)の周縁の一部に係合する係合爪(45)とよりなる。
【0038】
左側ブラケット(9)は、コンデンサ(1)における両ブラケット部材(30)(40)を除く部品を一括してろう付した後に、左ヘッダタンク(6)および受液器(7)にまたがって取り付けられる。
【0039】
図5は、第2ブラケット部材(40)の固定部(43)を第1ブラケット部材(30)の取付部(33)に機械的に締結する締結手段の変形例を示す。
【0040】
図5(a)に示す締結手段は、トックスかしめにより第1ブラケット部材(30)の取付部(33)の第1抱持部(31)側端部および第2ブラケット部材(40)の固定部(43)に形成されて風上側に突出した中空状の凸部(35)(46)からなり、第2ブラケット部材の凸部(46)が第1ブラケット部材(30)の凸部(35)内に圧入されることによって、第2ブラケット部材(40)の固定部(43)が第1ブラケット部材(30)の取付部(33)に機械的に締結されている。
【0041】
図5(b)に示す締結手段は、第2ブラケット部材(40)の固定部(43)に形成された貫通穴(47)に通されて、第1ブラケット部材(30)の取付部(33)の第1抱持部(31)側端部に形成されためねじ穴(36)にねじ嵌められたビス(300)からなる。
【0042】
図6~
図10は、左ヘッダタンク(6)および受液器(7)のうちの少なくともいずれか一方と、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)のうちの少なくともいずれか一方とにそれぞれ設けられ、かつ左側ブラケット(9)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めを行う位置決め部の第1~第4の変形例を示す。
【0043】
図6は位置決め部の第1の変形例を示し、当該位置決め部は、受液器(7)と、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)とにそれぞれ設けられている。
【0044】
図6において、受液器(7)に設けられた受液器側位置決め部は、受液器(7)の周壁外周面に段部(61)を介して設けられ、かつ上下方向に一定の長さを有する小径部(60)からなり、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)に設けられたブラケット部材側位置決め部は、第1ブラケット部材(30)の第1抱持部(31)および第2ブラケット部材(40)の第2抱持部(41)からなる。ブラケット部材側位置決め部である第1ブラケット部材(30)の第1抱持部(31)および第2ブラケット部材(40)の第2抱持部(41)は、受液器側位置決め部である小径部(60)の周囲に配置されており、第1抱持部(31)および第2抱持部(41)の上下両端部が小径部(60)の上下両端部に存在する段部(61)に係合することによって第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めが行われている。
【0045】
図7および
図8は位置決め部の第2の変形例を示し、当該位置決め部は、受液器(7)と、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)とにそれぞれ設けられている。
【0046】
図7および
図8において、受液器(7)に設けられた受液器側位置決め部は、受液器(7)の周壁外面に径方向の内方に凹むように設けられ、かつ上下方向に一定の長さを有する平坦部(65)からなり、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)のいずれか一方、ここでは第1ブラケット部材(30)に設けられたブラケット部材側位置決め部は、第1抱持部(31)に設けられて平坦部(65)に密着する密着部(66)からなる。密着部(66)の上下両端部が平坦部(65)の上下両端部に存在する段部(67)に係合することによって、左側ブラケット(9)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めが行われている。
【0047】
図9は位置決め部の第3の変形例を示し、当該位置決め部は、受液器(7)と、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)とにそれぞれ設けられている。
【0048】
図9において、受液器(7)に設けられた受液器側位置決め部は、受液器(7)の周壁外面に径方向の内方に凹むとともに周方向に間隔をおいて風上側および風下側に設けられ、かつ上下方向に一定の長さを有する複数、ここでは2つの平坦部(70)からなり、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)に設けられたブラケット部材側位置決め部は、第1抱持部(31)および第2抱持部(41)に設けられて各平坦部(70)に密着する密着部(71)からなる。各密着部(71)の上下両端部が平坦部(70)の上下両端部に存在する段部(72)に係合することによって、左側ブラケット(9)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めが行われている。
【0049】
図10は位置決め部の第4の変形例を示し、当該位置決め部は、左ヘッダタンク(6)と、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)とにそれぞれ設けられている。
【0050】
図10において、左ヘッダタンク(6)は、上下方向に隣接する2つの区画(6a)(6b)と、当該2つの区画(6a)(6b)間に位置するアルミニウム製仕切部材(80)とを備えており、仕切部材(80)が、左側ヘッダタンク(6)の周壁に形成された挿通穴に、一部が左側ヘッダタンク(6)の外部に突出するように挿入されて左側ヘッダタンク(6)にろう付されている。
【0051】
左ヘッダタンク(6)に設けられたヘッダタンク側位置決め部は、仕切部材(80)における左ヘッダタンク(6)の外部に突出した突出部(81)からなり、第1ブラケット部材(30)および第2ブラケット部材(40)に設けられたブラケット部材側位置決め部は、第1ブラケット部材(30)の第1係止部(32)および第2ブラケット部材(40)の第2係止部(42)からなる。第1係止部(32)の下端部および第2係止部(42)の上端部が仕切部材(80)の突出部(81)に係合することによって左側ブラケット(9)の受液器(7)に対する上下方向の位置決めが行われている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明によるコンデンサは、カーエアコンを構成する冷凍サイクルのコンデンサとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0053】
(1):コンデンサ
(4):熱交換コア部
(5):右ヘッダタンク
(6):左ヘッダタンク(受液器取付用ヘッダタンク)
(7):受液器
(9):左側ブラケット
(30):第1ブラケット部材
(31):第1抱持部
(32):第1係止部
(33):取付部
(40):第2ブラケット部材
(41):第2抱持部
(42):第2係止部
(43):固定部
(50):環状凸部
(60):小径部
(65):平坦部
(66):密着部
(70):平坦部
(71):密着部
(80):仕切部材
(81):突出部