(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088947
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】高速炉の流量測定装置及び配管破損検出装置
(51)【国際特許分類】
G21C 17/025 20060101AFI20220608BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20220608BHJP
G21C 17/032 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G21C17/025
G01F1/00 N
G01F1/00 F
G01F1/00 H
G21C17/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201094
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】307041573
【氏名又は名称】三菱FBRシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】平松 貴志
【テーマコード(参考)】
2F030
2G075
【Fターム(参考)】
2F030CA01
2F030CB04
2F030CC18
2F030CE02
2F030CE04
2G075AA09
2G075BA03
2G075CA08
2G075CA40
2G075DA05
2G075EA01
2G075FB04
2G075FB07
2G075FC05
2G075GA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タンク型原子炉において一次冷却材の流量を測定する。
【解決手段】流量測定装置100は、タンク型原子炉である高速炉の炉心を複数の熱出力のそれぞれで運転したときの、炉内に設けられている炉内配管の複数の管路抵抗のそれぞれに対応する一次冷却材の流量と、一次系ポンプのポンプ電動機の電流である一次電流との関係を示す特性情報を記憶する記憶部120と、ポンプ電動機に流入する電流の電流値を測定する電流測定部131と、炉心の熱出力を測定する熱出力測定部132と、熱出力測定部132が測定した熱出力に対応する特性情報において電流測定部131が測定した電流に関連付けられている流量を特定することにより、流量を測定する流量測定部133と、流量測定部133が特定した流量を示す情報を出力する出力部135と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク型原子炉である高速炉に設けられ、前記高速炉の炉内を流通する一次冷却材を流通させる一次系ポンプによる前記一次冷却材の流量を特定する高速炉の流量特定装置であって、
前記高速炉の炉心を複数の熱出力のそれぞれで運転したときの、前記炉内に設けられている炉内配管の複数の管路抵抗のそれぞれに対応する前記一次冷却材の流量と、前記一次系ポンプのポンプ電動機の電流である一次電流との関係を示す特性情報を記憶する記憶部と、
前記ポンプ電動機に流入する電流の電流値を測定する電流測定部と、
前記炉心の熱出力を測定する熱出力測定部と、
前記熱出力測定部が測定した前記熱出力に対応する前記特性情報において前記電流測定部が測定した電流に関連付けられている流量を特定することにより、前記流量を測定する流量測定部と、
前記流量測定部が測定した前記流量を示す情報を出力する出力部と、
を有する高速炉の流量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高速炉の流量測定装置を有し、
前記記憶部には、前記高速炉の炉心を複数の熱出力のそれぞれで運転したときの、前記炉内配管の健全時における流量と、前記一次電流とが関連付けられて記憶されており、
前記熱出力測定部が測定した前記熱出力に関連付けられている前記健全時における流量と、前記流量測定部が測定した流量とに基づいて、前記炉内配管の破損を検出する破損検出部をさらに有し、
前記出力部は、前記破損検出部による検出結果を出力する、
配管破損検出装置。
【請求項3】
前記流量測定部は、前記電流測定部が測定した前記電流値の単位時間当たりの変化量が所定量以上である場合、所定時間にわたって直前に測定した前記流量の測定値を、前記所定時間における前記流量の測定値とする、
請求項2に記載の配管破損検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速炉の流量測定装置及び配管破損検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間熱交換器、ポンプ及び一次冷却材(液体ナトリウム)等の一次系機器を主容器に収容するタンク型の原子炉が知られている(例えば、特許文献1を参照)。タンク型の原子炉では、一次系ポンプを駆動することにより一次冷却材を炉心に供給して昇温させ、中間熱交換器により、昇温された一次冷却材と、二次冷却材との熱交換を行うことにより、二次冷却材に熱エネルギーを伝達する。二次冷却材に伝達された熱は、蒸気発生器において動力に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速炉では、一次冷却材の流量検出器として電磁流量計が一般的に用いられている。電磁流量計を一次系ポンプと炉心とを接続する炉内配管に直接設置することにより、一次系ポンプを流れる一次冷却材の流量を測定することができる。しかしながら、タンク型原子炉では、炉内配管が一次冷却材に浸っていることから、電磁流量計を交換することが困難であり、電磁流量計を設置することができないという問題があった。このため、他の手法で一次冷却材の流量を測定することが求められている。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、タンク型原子炉において一次冷却材の流量を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る高速炉の流量測定装置は、タンク型原子炉である高速炉に設けられ、前記高速炉の炉内を流通する一次冷却材を流通させる一次系ポンプによる前記一次冷却材の流量を特定する流量特定装置であって、前記高速炉の炉心を複数の熱出力のそれぞれで運転したときの、前記炉内に設けられている炉内配管の複数の管路抵抗のそれぞれに対応する前記一次冷却材の流量と、前記一次系ポンプのポンプ電動機の電流である一次電流との関係を示す特性情報を記憶する記憶部と、前記ポンプ電動機に流入する電流の電流値を測定する電流測定部と、前記炉心の熱出力を測定する熱出力測定部と、前記熱出力測定部が測定した前記熱出力に対応する前記特性情報において前記電流測定部が測定した電流に関連付けられている流量を特定することにより、前記流量を測定する流量測定部と、前記流量測定部が測定した前記流量を示す情報を出力する出力部と、を有する。
【0007】
本発明の第2の態様に係る配管破損検出装置は、前記高速炉の流量測定装置を有し、前記記憶部には、前記高速炉の炉心を複数の熱出力のそれぞれで運転したときの、前記炉内配管の健全時における流量と、前記一次電流とが関連付けられて記憶されており、前記熱出力測定部が測定した前記熱出力に関連付けられている前記健全時における流量と、前記流量測定部が測定した流量とに基づいて、前記炉内配管の破損を検出する破損検出部をさらに有し、前記出力部は、前記破損検出部による検出結果を出力してもよい。
【0008】
前記流量測定部は、前記電流測定部が測定した前記電流値の単位時間当たりの変化量が所定量以上である場合、所定時間にわたって直前に測定した前記流量の測定値を、前記所定時間における前記流量の測定値としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンク型原子炉において一次冷却材の流量を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】ポンプ流量とポンプ揚程との関係を示す図である。
【
図3】原子炉熱出力ごとのポンプ電動機の一次電流とポンプ流量の関係を示す図である。
【
図5】流量測定装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[タンク型原子炉1の構造の概要]
本実施形態に係る高速炉の流量測定装置100は、タンク型原子炉1である高速炉に設けられ、高速炉の炉内を流通する一次冷却材としてのナトリウムの流量を測定する装置である。高速炉の流量測定装置100を説明するにあたり、まず、図を参照しながらタンク型原子炉1の構造について説明する。
図1は、タンク型原子炉1の概略構成を示す図である。なお、
図1では、冷却材としてのナトリウムの流れを矢印で示している。また、以下の説明では、高速炉の流量測定装置100を単に流量測定装置100という。
【0012】
タンク型原子炉1は、例えば高速炉である。タンク型原子炉1の主容器2の内部には、
図1に示すように、炉心3と、中間熱交換器4と、一次系ポンプ5と、炉内配管6とが設けられている。また、主容器2の内部には、一次冷却材としての液体金属であるナトリウムが収容されている。また、一次系ポンプ5には、ポンプ電動機7が接続され、ポンプ電動機7には、インバータ8が接続されている。
【0013】
主容器2は、直径が15mから20m程度の容器である。炉心3は、主容器2の内部において水平方向に支持されている。炉心3には、核分裂物質を含む炉心燃料と、炉心反応度を制御するための制御棒とが設けられている。制御棒は、制御棒駆動機構により駆動される。制御棒駆動機構は、炉心燃料の間への制御棒の挿入量を制御する。これにより、炉心燃料の核分裂が制御され、炉心3における熱出力が制御される。炉心3は、一次冷却材としてのナトリウムを昇温させる。以下の説明において、昇温する前のナトリウムを低温ナトリウム、昇温して高温状態となったナトリウムを高温ナトリウムともいう。
【0014】
中間熱交換器4は、高温ナトリウムを流入させる流入窓と、熱交換された後の低温ナトリウムを流出させる流出窓とを有している。中間熱交換器4は、流入窓から流入した高温ナトリウムと、二次冷却材として機能するナトリウムとの熱交換を行う。具体的には、一次系ポンプ5の作用により、中間熱交換器4の流入口に、炉心3において約550℃まで温度が上昇した高温ナトリウムが流入する。流入した高温ナトリウムは、二次冷却材として機能する二次系のナトリウムとの熱交換が行われることにより、約400℃にまで温度が低下した低温ナトリウムとなる。低温ナトリウムは、流出窓から主容器2の下部へと流出する。二次系のナトリウムは、蒸気発生器9に流入し、水を加熱して、タービンを駆動させるための蒸気を発生させる。
【0015】
一次系ポンプ5は複数基あり、図示は省略するが、複数基の中間熱交換器4が設置されている円周上に設けられている。一次系ポンプ5は、インバータ8から供給される電流により制御されるポンプ電動機7により駆動する。一次系ポンプ5は、中間熱交換器4から流出した低温ナトリウムを炉内配管6に圧送する。炉内配管6は、一次系ポンプ5により圧送された低温ナトリウムを炉心3に案内する。
【0016】
ところで、一次系ポンプ5が吐出するナトリウムの流量であるポンプ流量と、ポンプ揚程とは、以下の式(1)に示す関係を有している。ただし、Hはポンプ揚程(kPa)であり、Qはポンプ流量(kg/s)である。
H∝Q2・・・(1)
【0017】
図2は、ポンプ流量とポンプ揚程との関係を示す図である。炉内配管6に破損や閉塞がない場合、
図2に示すように、ポンプの揚程は、ポンプ流量の二乗に比例する健全時管路抵抗曲線上を推移する。また、ポンプ流量とポンプ揚程との関係を示す特性曲線は一次系ポンプ5のポンプ回転数ごとに存在する。
図2には、ポンプ回転数が定格回転数、定格の75%の回転数、定格の50%の回転数のそれぞれに対応する特性曲線である定格回転数特性、75%回転数特性、50%回転数特性が示されている。これらから、ポンプ揚程及びポンプ回転数を測定し、測定したポンプ回転数に対応する特性曲線におけるポンプ揚程とポンプ流量との関係に基づいて、ポンプ流量が求められる。また、炉内配管6に破損や閉塞が発生しておらず、炉内配管6が健全である場合、一次系ポンプ5の運転点は、健全時管路抵抗曲線と、ポンプ回転数に対応する特性曲線とが交差する点に定まる。
【0018】
ポンプ揚程は、一次系ポンプの吐出部及び吸込部に圧力計を設けることにより測定することができる。しかしながら、圧力計の感圧部は、周囲も含めてナトリウムに浸るため、圧力計の交換が困難であり、圧力計の設置が困難となる。そこで、流量測定装置100は、ポンプ電動機7の特性のうちの電動機電流を利用して流量を測定する。ここで、ポンプ電動機7の一次トルク分電流、ポンプ電動機7のトルク及びポンプ揚程は、以下の式(2)に示す関係を有している。ただし、ITは一次トルク分電流(A)、Tはポンプ電動機7のトルク(Nm)、Hはポンプ揚程(kPa)である。
IT∝T∝H・・・(2)
【0019】
インバータ8からポンプ電動機7に供給される電流であるポンプ電動機7の一次電流は、一次トルク分電流と励磁電流とをベクトル的に合算した以下の式(3)に示す関係を有している。ただし、I1はポンプ電動機7の一次電流(A)、IMはポンプ電動機7の励磁電流(A)である。
I1
2=IT
2+IM
2・・・(3)
【0020】
式(2)及び(3)に示す関係から、ポンプ揚程に代えてポンプ電動機7の一次電流を測定することで、ポンプ流量を測定することができる。一方、ポンプ流量とポンプ揚程との関係を示す特性曲線を特定するための一次系ポンプ5のポンプ回転数は、直接測定することにより得ることができる。しかしながら、高速炉では、機能喪失時の共通要因又は従属要因をなくすために、ポンプ回転数とポンプ流量との多様性のある測定系を独立させて多重化システムの信頼性を高める必要があり、ポンプ回転数を用いてポンプ流量を測定することができない。ポンプ回転数とは異なる情報であるポンプ電動機7の電源の周波数は、高速炉において未使用であるとともに、ポンプ回転数の近似値である。ポンプ電動機7の電源の周波数は、すべりによるずれを含むもののポンプ回転数に比例し、以下の式(4)に示す関係を有している。
N∝F×(1-s)・・・(4)
【0021】
式(4)において、Nはポンプ回転数(min-1)、Fはポンプ電動機7の電源の周波数(Hz)、sはポンプ電動機7のすべり(次元なし)である。しかしながら、すべりによるずれの影響が大きい場合、ポンプ電動機7の電源の周波数に基づいてポンプ流量を測定することは困難となる。
【0022】
高速炉では、一次冷却材としてのナトリウムの流量は、部分負荷時から定格出力運転時にかけて原子炉熱出力に比例するよう設定されている。このため、
図2に示す一次系ポンプ5のポンプ回転数ごとに特定されるポンプ流量とポンプ揚程との関係を示す特性曲線に代用可能な、原子炉熱出力ごとの、ポンプ流量と、ポンプ電動機7の一次電流との関係を示す特性曲線が存在する。このことから、この特性曲線を予め特定しておき、原子炉熱出力及びポンプ電動機7の一次電流を測定することで、測定した原子炉熱出力及びポンプ電動機7の一次電流に基づいてポンプ流量を特定することができる。
【0023】
原子炉熱出力ごとの、ポンプ流量と、ポンプ電動機7の一次電流との関係を示す特性曲線は、原子炉出力運転の前に、以下に示すように求めることができる。まず、一次系ポンプ5の運転を行い、0~100%のポンプ回転数を測定するとともに、ポンプ流量と、ポンプ電動機7の一次電流との関係を特定する。例えば、ポンプ回転数が100%、90%、80%等である場合における、ポンプ流量と、ポンプ電動機7の一次電流との関係を示す特性点を算出する。次に、ポンプ流量を原子炉熱出力に比例させて運転する際の、原子炉熱出力に対するポンプ回転数の一意の関係を用いて、算出した特性点を、原子炉熱出力における、ポンプ流量と、ポンプ電動機7の一次電流との関係を示す特性点に換算する。
【0024】
原子炉熱出力が100%の時の特性曲線を算出する場合、炉内配管6に破損や閉塞が発生していない場合(健全時)のポンプ電動機7の一次電流及びポンプ流量と、健全時の炉内配管6の管路抵抗と異なる一つの管路抵抗に対応するポンプ電動機7の一次電流及びポンプ流量とを測定又は算出する。そして、健全時の一次電流及びポンプ流量の関係と、健全時とは異なる一つの一次電流及びポンプ流量との関係とに基づいて、特性曲線を算出する。
【0025】
図3は、原子炉熱出力ごとのポンプ電動機7の一次電流とポンプ流量の関係を示す図である。
図3では、原子炉熱出力が100%であるときの特性曲線を太い実線で示し、原子炉熱出力が90%であるときの特性曲線を細い実線で示し、原子炉熱出力が80%であるときの特性曲線を破線で示している。これらの特性曲線から、原子炉熱出力を測定して、測定した原子炉熱出力に対応する特性曲線を特定するとともに、ポンプ電動機7の一次電流を測定することにより、ポンプ流量を求めることができる。流量測定装置100は、
図3に示す原子炉熱出力ごとの特性曲線に基づいてポンプ流量を特定する。
【0026】
また、
図3では、炉内配管6が健全である時のポンプ電動機7の一次電流と、ポンプ流量との関係を示す曲線を太い破線で示している。例えば、炉内配管6が健全である時のポンプ電動機7の一次電流と、ポンプ流量との関係を示す曲線(太い破線)と、原子炉熱出力が100%であるときの特性曲線(太い実線)との交点は、炉内配管6が健全であるとともに原子炉熱出力が100%であるときのポンプ電動機7の一次電流とポンプ流量とを示している。
【0027】
図3に示すように、原子炉熱出力が100%であるとともに、ポンプ電動機7の一次電流が200Aである場合、ポンプ流量は約3100kg/sに定まり、太い破線に位置することから、炉内配管6が健全であることが確認できる。一方、測定したポンプ電動機7の一次電流と、ポンプ流量との関係が、太い破線上に位置しない場合、炉内配管6に破損等の異常が発生しているおそれがある。
【0028】
例えば、原子炉熱出力が100%であるとともに、ポンプ電動機7の一次電流が150Aの場合、特性曲線に基づきポンプ流量が約3750kg/sと特定される。この場合には、ポンプ電動機7の一次電流と、ポンプ流量との関係を示す位置が、太い破線上ではないことから、炉内配管6に破損等の異常が発生していることが特定できる。流量測定装置100は、配管破損検出装置として機能し、炉内配管6の破損を検出する。
【0029】
[流量測定装置100の構成]
続いて、流量測定装置100の構成を説明する。
図4は、本実施形態に係る流量測定装置100の構成を示す図である。流量測定装置100は、例えばコンピュータであり、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。制御部130は、電流測定部131と、熱出力測定部132と、流量測定部133と、破損検出部134と、出力部135とを有する。
【0030】
通信部110は、例えば、流量測定装置100が、中性子検出器10、電流計11等の他の装置と通信するための通信インタフェースである。ここで、電流計11は、インバータ8とポンプ電動機7との間に設けられており、ポンプ電動機7の一次電流を測定する。
【0031】
記憶部120は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等である。記憶部120は、流量測定装置100を機能させるための各種プログラムを記憶する。例えば、記憶部120は、流量測定装置100の制御部130を、電流測定部131、熱出力測定部132、流量測定部133、破損検出部134、及び出力部135として機能させるプログラムを記憶する。
【0032】
また、記憶部120は、高速炉の炉心を複数の熱出力のそれぞれで運転したときの、炉内配管6の複数の管路抵抗のそれぞれに対応するナトリウムの流量(ポンプ流量)と、ポンプ電動機7の一次電流との関係を示す特性情報を記憶する。特性情報は、
図3に示す複数の原子炉熱出力それぞれに対応する特性曲線を示す情報である。なお、記憶部120は、
図3に示す3つの原子炉熱出力のそれぞれに対応する特性情報に限らず、他の原子炉熱出力に対応する特性情報を記憶しているものとする。
【0033】
また、記憶部120には、高速炉の炉心を複数の熱出力のそれぞれで運転したときの、正常なナトリウムの流量と、ポンプ電動機7の一次電流とが関連付けられて記憶されている。具体的には、記憶部120は、
図3に示す、炉内配管6が健全である時のポンプ電動機7の一次電流と、ポンプ流量との関係を示す曲線を示す情報を記憶する。
【0034】
制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部130は、記憶部120に記憶されている出力制御プログラムを実行することにより、電流測定部131、熱出力測定部132、流量測定部133、破損検出部134、及び出力部135として機能する。
【0035】
電流測定部131は、ポンプ電動機7に流入する電流の電流値を測定する。例えば、電流測定部131は、ポンプ電動機7とインバータ8との間に設けられた電流計11が測定した、ポンプ電動機7に流入する電流の電流値を示す電流値情報を取得することにより、ポンプ電動機7に流れる一次電流の電流値を測定する。
【0036】
熱出力測定部132は、タンク型原子炉1の炉心の熱出力である原子炉熱出力を測定する。例えば、熱出力測定部132は、中性子検出器10が検出した中性子の強度を示す中性子束情報を取得し、当該中性子束情報から対応する熱出力に変換することにより、原子炉熱出力を測定する。
【0037】
流量測定部133は、熱出力測定部132が測定した原子炉熱出力に対応する特性情報において、電流測定部131が測定した電流に関連付けられているポンプ流量を特定することにより、ポンプ流量を測定する。具体的には、流量測定部133は、記憶部120に記憶されている複数の原子炉熱出力のそれぞれに対応する特性情報から、熱出力測定部132が測定した原子炉熱出力に対応する特性情報を特定する。流量測定部133は、選択した特性情報において電流測定部131が測定した電流に関連付けられているポンプ流量を特定することによりポンプ流量を測定する。
【0038】
なお、タンク型原子炉1において、インバータ8には予備機が設けられており、常用機が故障したことに応じて予備機に切り替えられる。常用機から予備機への切替動作が行われている最中は、ポンプ電動機7の一次電流が0となる。これに対し、流量測定部133は、電流測定部131が測定した電流値の単位時間当たりの変化量が所定量以上である場合、所定時間にわたって直前に測定したポンプ流量の測定値を、当該所定時間におけるポンプ流量の測定値とする。所定時間は、例えばサブ秒である。このようにすることで、インバータ8の切替動作が発生した場合に、誤ったポンプ流量が測定されてしまうことを防止することができる。
【0039】
破損検出部134は、熱出力測定部132が測定した原子炉熱出力に関連付けられている炉内配管6の健全時におけるポンプ流量と、流量測定部133が測定したポンプ流量とに基づいて、炉内配管6の破損を検出する。具体的には、破損検出部134は、熱出力測定部132が測定した原子炉熱出力に関連付けられている健全時におけるポンプ流量と、流量測定部133が測定したポンプ流量との差が所定の閾値を超えた場合に、炉内配管6が破損したことを検出する。
【0040】
出力部135は、流量測定部133が測定したポンプ流量を示す情報を出力する。例えば、出力部135は、通信部110を介して、流量測定装置100と通信可能に接続されている端末(不図示)に流量測定部133が測定したポンプ流量を示す情報を出力する。また、出力部135は、破損検出部134による検出結果を出力する。
【0041】
[流量測定装置における処理の流れ]
続いて、流量測定装置100における処理の流れを説明する。
図5は、流量測定装置100における処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートは繰り返し実行される。
まず、熱出力測定部132は、原子炉熱出力を測定する(S1)。
続いて、電流測定部131は、ポンプ電動機7に流れる一次電流の電流値を測定する(S2)。
【0042】
続いて、流量測定部133は、記憶部120に記憶されている複数の原子炉熱出力のそれぞれに対応する特性情報から、熱出力測定部132が測定した原子炉熱出力に対応する特性情報を特定する(S3)。
続いて、流量測定部133は、選択した特性情報において電流測定部131が測定した一次電流に関連付けられているポンプ流量を特定することによりポンプ流量を測定する(S4)。
【0043】
続いて、流量測定部133は、S2において測定された一次電流の電流値が所定量以上変化したか否かを判定する(S5)。流量測定部133は、一次電流の電流値が所定量以上変化したと判定すると、S7に処理を移し、流量測定部133は、一次電流の電流値が所定量以上変化していないと判定すると、S6に処理を移す。
【0044】
S6において、出力部135は、流量測定部133が測定したポンプ流量を示す情報を出力する。
S7において、出力部135は、流量測定部133が直前に測定したポンプ流量を示す情報を所定時間出力する。
【0045】
続いて、破損検出部134は、流量測定部133が測定したポンプ流量が、健全時におけるポンプ流量と異なるか否かを判定する(S8)。破損検出部134は、健全時におけるポンプ流量と異なると判定すると、S9に処理を移し、健全時におけるポンプ流量と同じであると判定すると、本フローチャートに係る処理を終了する。
S9において、出力部135は、炉内配管6が破損したことを示す破損検出情報を出力する。
【0046】
[本実施形態における効果]
以上のとおり、本実施形態に係る流量測定装置100は、高速炉の炉心を複数の原子炉熱出力のそれぞれで運転したときの、炉内に設けられている炉内配管6の複数の管路抵抗のそれぞれに対応するナトリウムの流量と、ポンプ電動機7の一次電流との関係を示す特性情報を記憶部120に記憶させておき、熱出力測定部132が測定した原子炉熱出力に対応する特性情報において電流測定部131が測定した一次電流に関連付けられているポンプ流量を特定することにより、ポンプ流量を測定する。このようにすることで、タンク型原子炉におけるナトリウムの流量を測定することができる。
【0047】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0048】
1 タンク型原子炉
2 主容器
3 炉心
4 中間熱交換器
5 一次系ポンプ
6 炉内配管
7 ポンプ電動機
8 インバータ
9 蒸気発生器
10 中性子検出器
11 電流計
100 流量測定装置
110 通信部
120 記憶部
130 制御部
131 電流測定部
132 熱出力測定部
133 流量測定部
134 破損検出部
135 出力部