(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088956
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】呼吸音計測装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20220608BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20220608BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B7/04 B
A61B5/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201104
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000101204
【氏名又は名称】株式会社oneA
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛原 弘安
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SV05
4C038SX01
4C038VA04
4C038VA05
4C038VB09
(57)【要約】
【課題】被験者の首に装着されたときに、自動的に測定状態となる呼吸音計測装置を提供する。
【解決手段】呼吸音計測装置1は、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着されていることを検出する近接センサ53と、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着された際に、被験者Pの前頸部Pfの皮膚に当接して呼吸音を取得する呼吸音取得部と、制御部57とを備える。制御部57は、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着されていることが検出された後に、呼吸音取得部からの取得音が所定の呼吸判定基準を満たすとき、当該取得音の呼吸音としての計測を開始する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者頸部の外周に沿うように装着されるネックバンド型の呼吸音計測装置であって、
前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着されていることを検出する装着状態検出センサと、
前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着された際に、被験者の前頸部の皮膚に当接して呼吸音を取得する呼吸音取得部と、
前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着されていることが検出された後に、前記呼吸音取得部からの取得音が所定の呼吸判定基準を満たすとき、当該取得音の呼吸音としての計測を開始する制御部とを備える、
ことを特徴とする呼吸音計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記呼吸音取得部が呼吸音を取得する測定モードで動作している場合に、前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着されていないことが検出されたとき、前記呼吸音取得部を待機モードにさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸音計測装置。
【請求項3】
前記呼吸音計測装置の電源をオンオフするための電源スイッチをさらに備え、
前記電源スイッチがオンされると、前記呼吸音取得部は待機モードとして起動される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の呼吸音計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠状態を計測するネックバンド式の呼吸音計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠中の鼾により周囲の人に迷惑がかかったり、鼾から無呼吸状態となり閉塞性無呼吸症候群を併発するおそれがある。そこで、被験者の睡眠状態を計測する呼吸音計測装置が望まれている。
【0003】
特許文献1には、マイクロフォンを各患者の首の周りに取り付けて、患者の睡眠中にマイクロフォンが受信した音を記録する方法が示されている。特許文献2には、睡眠時における使用者の状態把握のためのネックバンド型の睡眠状態測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-202939号公報
【特許文献2】特開2019-201946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、呼吸音計測装置で睡眠時の呼吸を計測する場合、就寝前に電源スイッチを「入」にし、起床時にスイッチを「切」にすることで測定を行うのが一般的である。しかしながら、就寝前にスイッチを「入」にすることを忘れたり、スイッチを「入」にしたつもりが「入」になっておらず就寝時の呼吸計測ができていないことが起こりえる。特に、ネックバンド式の睡眠状態測定装置では、被験者の首(頸部)に取り付けるため、装置を首に取り付けた後にスイッチのオン状態の目視確認ができないという課題がある。
【0006】
また、呼吸音計測装置は、被験者の装着時の違和感を緩和する観点から、小型、軽量化が求められ、搭載できるバッテリは小さい方が好ましい。一方で、一度の充電で長く使用できることが望まれる。そうすると、呼吸音計測装置が使用されていない場合に、なるべく速やかに測定状態からスリープ状態等の低消費電力モードに移行することが望まれる。しかしながら、電源スイッチ(例えば、スライド式またはプッシュ式)を設けた構成の場合、起床時にスイッチを「切」にすることを忘れるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被験者の首に装着されたときに、自動的に測定状態となるとともに、首に装着されていないにもかかわらずに測定をすることがないような呼吸音測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、被験者頸部(被験者の首)の外周に沿うように装着されるネックバンド型の呼吸音計測装置を対象として、前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着されていることを検出する装着状態検出センサと、前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着された際に、被験者の前頸部の皮膚に当接して呼吸音を取得する呼吸音取得部と、前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着されていることが検出された後に、前記呼吸音取得部からの取得音が所定の呼吸判定基準を満たすとき、当該取得音の呼吸音としての計測を開始する制御部とを備える。
【0009】
この態様によると、呼吸音計測装置が被験者頸部に装着されて、呼吸音が取得されたと判断された場合に、自動的に呼吸音の測定が開始されるので、被験者が測定状態にするためにスイッチを入れ忘れて呼吸音の計測ができないという事態を未然に防ぐことができ、就寝中の呼吸音計測が確実に行えるようになる。さらに、装着されていることが検出された後に、呼吸音取得部からの取得音が所定の呼吸判定基準を満たしてから、呼吸音の測定を開始するようにしているので、首に装着されていないにもかかわらずに測定をすることがない。
【0010】
上記態様の呼吸音計測装置において、前記制御部は、前記呼吸音取得部が前記測定モードで動作している場合に、前記呼吸音計測装置が被験者頸部に装着されていないことが検出された場合に、前記呼吸音取得部を前記待機モードにさせる、としてもよい。
【0011】
これにより、無駄な消費電力を削減できるともに、呼吸音計測装置が被験者の頸部に装着されていない状態にもかかわらずマイクロフォンで取得された音を計測し続ける、という不要な計測を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の呼吸音計測装置によると、被験者の首に装着されたときに、自動的に測定状態となるので、被験者の利便性を高めることができる。さらに、装着されていることが検出された後に、呼吸音取得部からの取得音が所定の呼吸判定基準を満たしてから、呼吸音の測定を開始するようにしているので、首に装着されていないにもかかわらずに測定をすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】呼吸音計測装置による呼吸音計測動作を示すフローチャート
【
図6】呼吸音計測装置による呼吸音計測動作を示すフローチャート
【
図7】呼吸音計測装置の呼吸判定の一例について説明するための図
【
図8】呼吸音計測装置の呼吸判定の他の例について説明するための図
【
図9】呼吸音計測装置による呼吸音計測動作を示すフローチャート
【
図10】呼吸音計測装置の手動での電源オンオフ処理を示すフローチャート
【
図11】電源ボタンの操作による呼吸音計測装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
<呼吸音計測装置の構成>
図1に示すように、呼吸音計測装置1は、被験者Pが、就寝前に、被験者頸部Pn(以下、単に頸部Pnという)に装着し、睡眠時における吸気・呼気の気流音(以下、単に呼吸音という)を計測するためのものである。
【0016】
以下の説明では、被験者Pの呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、上下方向及び左右方向を定義する。また、被験者Pの正面(胸)側を前、背中側を後と定義する。また、呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、「被験者側」を定義するものとし、ネックバンド30や計測部40等の説明に際して、被験者側を「内側」その反対側を「外側」として説明する場合がある。また、呼吸音計測装置1の被験者頸部Pn側の面を「呼吸音計測装置1の内面11」と呼ぶ。すなわち、「呼吸音計測装置1の内面11」とは、ネックバンド30の内面に加えて、後述する収容ケース41の内面411を含む概念とする。
【0017】
呼吸音計測装置1は、ネックバンド型の装置であり、被験者が片手で頸部の周方向に沿って装着できるように構成されている。具体的に、呼吸音計測装置1は、ネックバンド30と、呼吸音を計測するための計測部40とが、周知構造のヒンジ部60で連結された構成を有する。
【0018】
呼吸音計測装置1は、その中心から見て、展開状態における開放両端間の開放角度θが90を超えるように構成される。換言すると、呼吸音計測装置1の展開状態(
図3参照)における外形形状は、その外形に沿って周方向に延びる仮想円に対して270度未満となるように構成される。
図3において、AXは、回動軸を示す。
【0019】
ここで、展開位置とは、計測部40が外側に向かって最大に開かれた位置であり、展開位置では、呼吸音計測装置1の内面11が実質的にフラットになり、呼吸音計測装置1全体として円弧状体となる。
【0020】
図2には、呼吸音計測装置1が折曲位置の状態を示す。折曲位置とは、計測部40がネックバンド30に対して内側に向かって折り曲げられた位置である。展開位置と折曲位置との間の可動範囲は、特に限定されないが、例えば、40度程度である。40度程度の回動範囲があれば、幅広い体型の被験者Pに対応することができる。
【0021】
さらに、呼吸音計測装置1は、外部の端末装置80(
図1参照)と双方向通信が可能に構成されている。双方向通信の方式は特に限定されず、例えば、Bluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した近距離無線で直接接続されてもよいし、インターネット回線等のネットワークを介して接続されてもよい。
【0022】
ネックバンド30は、例えば、被験者頸部Pnに沿うように円弧状(例えば、略C字状)に形成される。ネックバンド30は、(1)被験者Pが両手で呼吸音計測装置1の両開放端部を両側に広げたり、片手で頸部Pnの後ろ側から頸部Pnに向かって押し当てることで装着することができ、(2)被験者Pが手を離した際に呼吸音計測装置1の内面11の少なくとも一部が頸部Pnに密着するように頸部Pnを周方向の外側から挟むための弾性力を有し、(3)継続的な使用に耐えうる強度を有するのが好ましい。上記(1)~(3)の条件を満たしていれば、ネックバンド30の具体的な構造及び構成材料は、特に限定されない。例えば、ネックバンド30として板バネの周囲をエラストマー樹脂で取り巻いた弾性構造を採用したり、弾性があるポリプロピレンの樹脂を採用することができる。
【0023】
図4には、計測部40のブロック構成図を示している。計測部40は、内側に収容空間が形成された収容ケース41を有する。収容ケース41の収容空間には、加速度センサ51、マイクロフォン52、近接センサ53、バイブレータ50、モニタランプ55、通信モジュール56、マイクロプロセッサ等の電子部品が実装された基板(図示省略)と、電子部品に電源を供給するバッテリ59とが収容される。マイクロプロセッサは、例えば、CPUとメモリ等を有している。メモリには、CPUで実行されるプログラムが格納されたり、マイクロフォン52で取得された呼吸音のデータが保存される。CPUは、例えば、メモリに格納されたプログラムに基づいて呼吸音計測装置1の動作を制御する。CPUは、呼吸音計測装置1の全体動作を制御する制御部57の一例である。メモリは、マイクロフォン52で取得された呼吸音データを記憶するための記憶部58の一例である。
【0024】
計測部40には、収容ケース41の内面411から被験者側に向かって突設された当接部70が設けられている。当接部70の先端には、被験者Pの呼吸音を導入するための導音口71が形成され、その導音口を囲むようにリング状の当接面72が形成されている。当接面72は、呼吸音計測装置1が装着された際に、被験者Pの頸部Pnに当接する。導音口71は、計測部40に内蔵されたマイクロフォン52(
図2では図示省略)に向かって内径が次第に狭まるテーパー状になっている。尚、当接部70は、計測部40に出没自在に支持され、計測部40に取り付けられたばね等の弾性部材78により突出方向に付勢されていてもよい。呼吸音取得部は、呼吸音計測装置1が被験者Pに装着された際に、被験者Pの前頸部Pfの皮膚に当接されて呼吸音を取得するためのものであり、例えば、当接部70及びマイクロフォン52により構成される。
【0025】
収容ケース41の内面411には、周方向及び上下の略中央位置に矩形状の開口42が形成されている。開口42は、近接センサ53がフォトセンサの場合に、そのフォトセンサの計測光を通過させるための計測窓として用いられる。近接センサ53は、呼吸音計測装置1の内側に向かって計測光を照射し、その反射光に基づいて、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着されていることを検出する。近接センサ53は、装着状態検出センサの一例である。なお、装着状態検出センサは、近接センサ53に限定されない。例えば、装着状態検出センサとして、被験者の皮膚に接触したことを検出する各種の接触センサを用いてもよいし、被験者頸部Pnの体温を測定するような温度センサを用いてもよい。また、装着状態検出センサとして、ネックバンドやヒンジ部60の展開の度合いを検出するようなセンサ(例えば、ひずみセンサ等)を設けてもよい。
【0026】
収容ケース41の側面(上面)には、押しボタン式の電源ボタン54と、モニタランプ55とが設けられる。被験者は、電源ボタン54を押すことで、呼吸音計測装置1の電源のオン/オフができるようになっている。モニタランプ55は、呼吸音計測装置1の電源のオン/オフ状態や通信状態、充電状態等を表示する。また、図示しないが、収容ケース41の側面に、外部機器との通信及びバッテリへの充電をするためのコネクタを設けてもよい。
【0027】
加速度センサ51は、被験者の体位/体動を検出するためのものであり、周知構造が採用できる。加速度センサ51で検出された被験者の体位/体動は、端末装置80に送信され、その表示画面81(
図4参照)に、呼吸音データと時間軸を揃えて表示させてもよい。そうすることで、被験者にいびきや無呼吸の状態のときの体位/体動を知らせることができる。
【0028】
バイブレータ50は、制御部57の制御を受けて振動する。具体的な動作は、後ほど説明するが、例えば、被験者Pが無呼吸状態のときや、被験者Pのいびきが大きいときに、被験者頸部Pnに振動を伝えて姿勢を変化させる。図示は省略するが、バイブレータ50は、振動を被験者頸部Pnに伝えやすくする観点から、収容ケース41と密着するように取り付けられる。
【0029】
通信モジュール56は、周知構造の無線/有線のモジュールであって、端末装置80の通信モジュール82(
図4参照)との間で双方向通信ができるように構成されている。
【0030】
<呼吸音の計測動作>
本実施形態の呼吸音計測装置1は、被験者Pの頸部Pnに装着されていないときには、無駄な計測はせずに、かつ、被験者の首に装着されたときには、自動的に測定状態となるように構成されている。すなわち、呼吸音計測装置1が被験者Pの頸部Pnに装着されたこと、及び、呼吸音が取得できる状態になっていることを確認した上で、実際の呼吸音計測に移行するようになっている。
【0031】
-装着状態の判定動作-
図5は、呼吸音計測装置1で呼吸音計測をする前に行う呼吸音計測装置1の装着状態の判定動作例を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS1において、呼吸音計測装置1が電源オフの状態から電源ボタン54が長押しされると、呼吸音計測装置1が起動され、呼吸音の取得動作をしない待機モードとなる(ステップS2)。待機モードでは、例えば、近接センサ53がオンされて装着状態の検出ができるようになる一方で、マイクロフォン52のように呼吸音データの取得に関連する構成がオフされる。
【0033】
次のステップS3において、近接センサ53は、所定の第1周期(例えば20秒周期)で、呼吸音計測装置1が装着されたかどうかを確認する。そして、呼吸音計測装置1が被験者Pの頸部Pnに装着されたことが検出されると(ステップS31でYES)、処理は次のステップS4に進む。
【0034】
ステップS4では、近接センサ53は、第1周期よりも短い所定の第2周期(例えば50ミリ秒周期)で、呼吸音計測装置1の装着が継続されているかを確認する。そして、ステップS4においてに、呼吸音計測装置1が被験者Pの頸部Pnから外れたことが検出されると(ステップS41でNO)、処理はステップS3に戻る。
【0035】
このステップS4では、被験者Pの呼吸音を取得するのに必要な構成(例えばマイクロフォン52)がオン制御され、マイクロフォン52を介して所定期間(例えば、10秒)の呼吸音を取得する「呼吸音の取得処理」が実行される(ステップS42)。
【0036】
ステップS4での「呼吸音の取得処理」が終わると(ステップS5でYES)、処理はステップS6の「呼吸判定処理」に進む。
図6には、「呼吸判定処理」の一例を示す。
【0037】
図6のステップS61,S62では、制御部57は、ステップS4で取得された取得音が呼吸音かどうかを判定するための「判定値条件」を満たしているかどうかを判定する呼吸音判定部として機能する。「判定値条件」は、任意に設定することができ、特に限定されないが、例えば、マイクロフォン52で取得された取得音が所定の閾値を超えている期間が所定の周期となっているかどうかで判定する。
【0038】
図7には、ステップS4で取得された取得音の時間的な変化を模式的に示している。「判定値条件」は、例えば、(1)所定の閾値(
図7では100)を超えている回数および下回っている回数が所定回数(例えば、それぞれ3回程度)あって、「誤差範囲」として(2)閾値を超えている時間t11~t13の時間幅がそれぞれ所定の誤差範囲内であり、(3)所定の閾値未満の時間t21~t23の時間幅がそれぞれ所定の誤差範囲内である、という3つの条件が設定される。制御部57では、例えば、上記(1)~(3)の条件がすべて満たされる場合、または(1)と(2)もしくは(1)と(3)を満たした場合に、マイクロフォン52で取得された取得音が呼吸音であると判定する(ステップS63)。そうすると、次のステップS7でYES判定となり、呼吸音計測装置1では、呼吸音の計測を開始する(ステップS8)。なお、呼吸音の計測を開始するときに、バイブレータ50を振動させて、被験者Pに呼吸音の計測が開始されたことを知らせるようにしてもよい。
【0039】
一方で、上記(1)の条件が満たされない場合(ステップS61でNO)や上記(2)~(3)の条件に対して所定の誤差範囲に入らない場合(ステップS62でNO)には、マイクロフォン52で取得された取得音が呼吸音ではないと判定する(ステップS64)。そうすると、次のステップS7でNO判定となり、処理は、ステップS4において、追加で「呼吸音の取得処理」が実行される。
【0040】
図8には、ステップS7でNO判定となり、2回目の「呼吸音の取得処理」が実行された例を示している。この場合、例えば、
図8の実線で示すように、ステップS6の「呼吸判定処理」において、1回目の履歴と2回目の「呼吸音の取得処理」で取得された取得音を用いてマイクロフォン52で取得された取得音が呼吸音かどうかを判定する。このように、前回の測定分の履歴を使用したり、2回分の測定データを使用したりすることで、呼吸音かどうかの判定がしやすくなる。
【0041】
-呼吸音の計測動作-
図9は、
図5のステップS8の呼吸音の計測動作についての一例を示したものである。
【0042】
ステップS8において、呼吸音の計測が開始されると、制御部57では、マイクロフォン52で取得された呼吸音の計測処理を行う(ステップS81)。この呼吸音の計測処理は、計測終了となるまでの間、継続して実行される。
【0043】
制御部57では、呼吸音の計測と並行して、所定時間毎に、加速度センサ51から得られた加速度データを基に、被験者Pの体位を検出する(ステップS82)。さらに、制御部57では、呼吸音の計測と並行して、所定時間毎に、マイクロフォン52で取得された音声データ(呼吸音)の音量に基づいて、いびきの有無の判定をするとともに、睡眠時無呼吸の発生の有無を判定する(ステップS83,S84)。
【0044】
図10には、呼吸音計測装置1を用いて被験者の呼吸音を計測した結果の一例を示している。
図10の上段には、マイクロフォン52から取得された音声データの計測波形を示す。
図10の計測波形において、横軸は計測時刻であり、縦軸は呼吸音の音量である。また、
図10の下段は、呼吸音計測装置1において、呼吸音の音量を基に、睡眠状態を判定した結果を示している。
【0045】
制御部57は、例えば、マイクロフォン52から取得された呼吸音の音量が所定の第1閾値Vt1以上の場合に、いびきであると判定する。また、制御部57は、マイクロフォン52から取得された呼吸音の音量が第2閾値Vt2未満の場合に無呼吸であるものと判定し、第1閾値Vt1と第2閾値Vt2との間は通常の睡眠状態(快眠)であると判定する。
【0046】
次のステップS85において、制御部57は、バイブレータ50の振動判定を行う。例えば、制御部57は、端末装置80から送られてきた振動モードと、いびき及び無呼吸の判定結果とに基づいて、条件が合致する場合には、ステップS86に進み、バイブレータ50を振動させる。例えば、制御部57は、振動モードがいびき判定時に振動させる設定となっている場合に、いびきありと判定されたときには、バイブレータを振動させる。
【0047】
そして、制御部57は、所定時間毎に、体位、いびき及び無呼吸の判定結果や各センサでの計測データを保存する(ステップS87)。保存先は、特に限定されないが、例えば、呼吸音計測装置1に内蔵されている記憶部58に保存される。また、所定時間毎に、通信モジュール56を介して、端末装置80等にデータを送信し、端末装置80内の記憶部(図示省略)に記憶させたり、計測結果が端末装置80の表示画面81に表示されるようにしてもよい。
【0048】
そして、所定の計測時間が経過する、もしくは、呼吸音計測装置1が被験者Pの頸部Pnから外れたことが検出されると、ステップS88でYES判定となり、制御部57は、呼吸音計測装置1の電源をオフにし、処理を終了する。また、呼吸音の計測中に、呼吸音計測装置1が被験者の首から外れたり、電源ボタン54が長押しされた場合には、それまでの判定結果や各センサーでの計測データが記憶部58に保存され、呼吸音計測装置1の電源がオフにされ、処理が終了となる。
【0049】
以上のように、本実施形態の呼吸音計測装置1は、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着されていることを検出する近接センサ53と、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着された際に、被験者Pの前頸部Pfの皮膚に当接される当接部70と、呼吸音を取得するマイクロフォン52と、制御部57とを備える。制御部57は、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着されていることが検出されたときに、マイクロフォン52を呼吸音の取得動作をしない待機モードから呼吸音の取得動作をする通常動作モードに起動させる。制御部57は、通常動作モードになったマイクロフォン52で取得された取得音が所定の呼吸判定基準を満たす場合に、被験者Pの呼吸音としての計測を開始する。制御部57で計測された被験者の呼吸音データは、記憶部58に記憶される。
【0050】
このような構成にすることで、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着された場合に、自動的に待機モードから測定モードになり、被験者Pの呼吸音の測定を開始させることができる。これにより、被験者Pが測定状態にするためにスイッチを入れ忘れて呼吸音の計測ができないという事態を未然に防ぐことができ、就寝中の呼吸音計測が確実に行えるようになる。
【0051】
さらに、本実施形態において、制御部57は、マイクロフォン52が測定モードで動作している場合に、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnに装着されていないことが検出された場合に、マイクロフォン52を待機モードにさせるようにしている。
【0052】
このように、近接センサ53が、呼吸音計測装置1が首に装着されているかを常時監視しているため、呼吸音計測装置1が首に装着されていなければ測定を止めて待機モード(待機状態)させることができる。これにより、無駄な消費電力を削減できるともに、装着されていない状態にもかかわらずマイクロフォン52で取得された音を計測するという、不要な計測を防ぐことができる。
【0053】
以上のように、本開示の技術の例示として、実施形態について説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されるものではなく、以下のような構成としてもよい。
【0054】
例えば、上記の実施形態の動作に加えて、電源ボタン54の操作による呼吸音の測定開始ができるように構成されていてもよい。
図11では、電源ボタン54の操作による呼吸音計測装置1の動作の一例を示している。
【0055】
図11において、呼吸音計測装置1が電源オフの状態から電源ボタン54が長押しされると(ステップS11)、呼吸音計測装置1が起動され(ステップS12)、待機モードとなる(ステップS13)。
【0056】
次のステップS14では、呼吸音計測装置1の通信モジュール56であるBLE(Bluetooth Low Energy:登録商標)がオンされる。そうすると、端末装置80側の通信モジュール82との通信が可能となり、例えば、端末装置80から呼吸音計測装置1に、端末装置80の設定画面で設定された設定情報が送信される。
【0057】
そして、電源ボタン54が長押しされると、通信モジュール56がオフされて、待機状態となり、処理は、
図5のステップS3に進む。そして、
図5の処理では、前述のとおり、近接センサ53による装着確認と、マイクロフォン52の取得音が所定の呼吸判定基準を満たすかを確認した後、被験者Pの呼吸音の計測が開始される。
【0058】
そして、その後に再度電源ボタン54が長押しされると、フローは、ステップS13に戻り、呼吸音計測装置1は待機状態になる。なお、ステップS8において、呼吸音計測装置1が被験者頸部から外されたことが検出された場合にも、フローは、ステップS13に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、主に在宅等で被験者の呼吸音を計測する装置として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 呼吸音計測装置
53 フォトセンサ(装着状態検出センサ)
30 装着部
40 計測部
60 ヒンジ部
62 付勢手段