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特開2022-88986複数の楽譜表示装置が連携して動作する楽譜表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088986
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】複数の楽譜表示装置が連携して動作する楽譜表示システム
(51)【国際特許分類】
   G10G 1/00 20060101AFI20220608BHJP
   G09B 15/00 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G10G1/00
G09B15/00 A
G09B15/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201145
(22)【出願日】2020-12-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年2月25日株式会社ソリトンウェーブ内での概要説明書の配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年4月10日株式会社ソリトンウェーブ内での概要説明書の配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年4月10日株式会社ソリトンウェーブ内での概要説明書の配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月1日株式会社ソリトンウェーブ内での概要説明書の配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月1日株式会社ソリトンウェーブ内での概要説明書の配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 令和2年6月1日株式会社ソリトンウェーブ内での概要説明書の配布
(71)【出願人】
【識別番号】520477669
【氏名又は名称】株式会社ソリトンウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】芹井 滋喜
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182AA12
(57)【要約】
【課題】複数の楽譜表示装置が連携動作し、電子楽譜を適切にシェアする。
【解決手段】管理者楽譜表示装置は、入力装置と、電子楽譜データ格納装置と、表示データ作成装置と、表示装置と、シェアメンバー楽譜表示装置との間の通信を実行する通信装置と、シェアメンバー楽譜表示装置に関する情報を管理するシェアメンバー管理装置と、電子楽譜データ格納装置に格納された電子楽譜データを、シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、通信装置を介してシェアメンバー楽譜表示装置にシェアする電子楽譜シェア装置と、入力装置からの入力に基づいて、電子楽譜のページ送り順を設定するページ送り順設定装置と、ページ送り順設定装置が設定したページ送り順を、シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、通信装置を介してシェアメンバー楽譜表示装置にシェアするページ送りシェア装置とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の楽譜表示装置のうちの一つを管理者楽譜表示装置として、他の楽譜表示装置をシェアメンバー楽譜表示装置として、それらが連携して動作して電子楽譜を表示する楽譜表示システムであって、
前記管理者楽譜表示装置は、
操作者が操作するのに必要な情報を入力する入力装置と、
電子楽譜データを格納する電子楽譜データ格納装置と、
前記電子楽譜データ格納装置に格納された電子楽譜データに基づいて表示データを作成する表示データ作成装置と、
前記表示データ作成装置が作成した表示データに基づいて楽譜を表示する表示装置と、
前記シェアメンバー楽譜表示装置との間の通信を実行する通信装置と、
前記シェアメンバー楽譜表示装置に関する情報を管理するシェアメンバー管理装置と、
前記電子楽譜データ格納装置に格納された電子楽譜データを、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアする電子楽譜シェア装置と、
前記入力装置からの入力に基づいて、前記電子楽譜のページ送り順を設定するページ送り順設定装置と、
前記ページ送り順設定装置が設定したページ送り順を、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアするページ送りシェア装置と
を有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載した楽譜表示システムであって、
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、
前記入力装置からの入力に基づいて、前記電子楽譜の調性を変更する調性変更装置と、
前記調性変更装置による調性変更の情報又は当該調性変更後の電子楽譜のデータを、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアするキーチェンジシェア装置と
を有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項3】
請求項2に記載した楽譜表示システムであって、
前記シェアメンバー管理装置は、シェアメンバーが移調楽器を演奏する場合に、当該移調楽器についての情報を有しており、
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、
前記シェアメンバー管理装置が有する情報に基づいて、移調楽器に対応する調性変更の情報又は当該調性変更後の電子楽譜のデータを、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアする移調楽器対応装置をさらに有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載した楽譜表示システムであって、
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、
前記入力装置からの入力に基づいて、演奏する曲目順を記したセットリストを作成するセットリスト作成装置と、
前記セットリスト作成装置が作成したセットリストを、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアするセットリストシェア装置と
をさらに有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項5】
請求項4に記載した楽譜表示システムであって、
前記ページ送り順設定装置は、前記セットリスト作成装置が作成したセットリストを参照して、複数の曲目にわたってページ順を設定し、
前記ページ送りシェア装置は、複数の曲目にわたったページ送り順をシェアメンバー楽譜表示装置にシェアすることを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載した楽譜表示システムであって、
前記通信装置は、インターネット接続が可能であって、
さらに、前記管理者楽譜表示装置は、
前記通信装置を介して、ウェブサイトから電子楽譜のデータをダウンロードするダウンロード装置を有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載した楽譜表示システムであって、
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、
前記入力装置に基づいて、入力された内容を前記電子楽譜データ格納装置に格納されている電子楽譜データに追記する入力データ追記装置を有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載した楽譜表示システムであって、
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、
前記電子楽譜シェア装置による電子楽譜データのシェアが私的複製の範囲で許諾される場合に、前記管理者楽譜表示装置と前記シェアメンバー楽譜表示装置との連携動作が終了した時点で、当該データが削除されるように設定する著作権管理装置を有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項9】
請求項8に記載した楽譜表示システムであって、
前記著作権管理装置は、データを削除されたシェアメンバー楽譜表示装置の操作者が、ウェブサイトにアクセスして当該電子楽譜データをダウンロード可能な情報を当該シェアメンバー楽譜表示装置に引き渡すことを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載した楽譜表示システムであって、
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、
楽譜の使用回数、頻度、使用時間、楽譜表示装置の使用回数、頻度、使用時間を含む使用状況についての情報を管理する使用状況管理装置を有することを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載した楽譜表示システムであって、
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、
シェアメンバー楽譜表示装置を前記管理者自身が、前記管理者楽譜表示装置とともに並べて連動させて用いる連動モード設定装置を有し、
前記ページ送り順設定装置は、隣の表示装置との間で、ページがつながって表示されるようにページ送り順を設定し、
前記ページ送りシェア装置は、前記ページ送り順設定装置が設定した情報に基づいてページ送り順の情報をシェアすることを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載した楽譜表示システムであって、
前記複数の楽譜表示装置は、互いに遠隔地に置かれたものであって、
前記通信装置は、インターネットを介して通信を実行し、
前記ページ送りシェア装置によるページ送りの連携動作もまた、インターネットを介して実行されるものであることを特徴とする楽譜表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の楽譜表示装置が連携して動作する楽譜表示システムに関し、特に楽譜のシェア、表示タイミングの利便性に優れた楽譜表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
合唱、合奏、ジャズセッション、音楽のレッスンを行う場合など、複数人の演奏者が集まって演奏することがある。そうした場合には、必要な楽譜を持っている人と持っていない人とがいることが、それらの人が集まってから判明することがある。紙の楽譜を用いる場合には、必要な楽譜を必要な枚数だけ複写する作業が必要になる。複写行為が著作権管理上、禁じられている場合には、事前に購入や貸し出しの手続きをすることもある。
【0003】
近時、タブレットコンピュータや、液晶表示装置に代替する電子ペーパーと呼ばれる表示装置が普及することにより、電子楽譜の可能性が高まってきている。
【0004】
特許文献1には、指揮者用および各演奏者用電子楽譜表示端末の表示手段の表示画面にサーバから配信された指揮者用および演奏者用の電子楽譜情報および付帯情報を表示して、指揮者は指揮者用の電子楽譜情報および付帯情報を見ながらタクト振って指揮をとり、各演奏者は演奏者用の電子楽譜情報および付帯情報を演奏するように構成されたシステムが開示されている。付帯情報として映像情報と、演奏時間を支援する時間情報と、作曲家や指揮者の指示事項・注意事項などを表示するコメント情報などを表示することにより、指定された時間の演奏ができるようになっている。
【0005】
特許文献2には、演奏する曲のプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、前記プログラムの電子楽譜情報を記憶する楽譜情報記憶手段と、前記電子楽譜情報に基づいて楽譜を表示する電子楽譜表示手段と、この電子楽譜表示手段により表示される楽譜の操作に関する情報を入力する入力手段とを有する電子楽譜表示システムであって、前記入力手段は、足で踏まれることにより前記楽譜の操作に関する情報を入力するフットスイッチであるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-085825号公報
【特許文献2】特開2005-031217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者は、楽譜表示装置に格納された電子楽譜を必要に応じて、適切にシェアすることが望ましいことに気づいた。
【0008】
本発明は、複数の楽譜表示装置が連携して動作し、電子楽譜を適切にシェアすることを可能とする楽譜表示システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、複数の楽譜表示装置のうちの一つを管理者楽譜表示装置として、他の楽譜表示装置をシェアメンバー楽譜表示装置として、それらが連携して動作して電子楽譜を表示する楽譜表示システムであって、前記管理者楽譜表示装置は、操作者が操作するのに必要な情報を入力する入力装置と、電子楽譜データを格納する電子楽譜データ格納装置と、前記電子楽譜データ格納装置に格納された電子楽譜データに基づいて表示データを作成する表示データ作成装置と、前記表示データ作成装置が作成した表示データに基づいて楽譜を表示する表示装置と、前記シェアメンバー楽譜表示装置との間の通信を実行する通信装置と、前記シェアメンバー楽譜表示装置に関する情報を管理するシェアメンバー管理装置と、前記電子楽譜データ格納装置に格納された電子楽譜データを、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアする電子楽譜シェア装置と、前記入力装置からの入力に基づいて、前記電子楽譜のページ送り順を設定するページ送り順設定装置と、前記ページ送り順設定装置が設定したページ送り順を、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアするページ送りシェア装置とを有することを特徴とする。
これにより、管理者が保有する楽譜をシェアメンバーにシェアすることができ、管理者がページ送り操作をすることで、シェアメンバーの楽譜のページ送りをも実現できる。また、ページ送り順設定装置に、楽譜の中の繰り返し記号などに基づくページの戻りや、送りの情報をあらかじめ設定しておくことで、管理者は、演奏の際に、ページ送り操作のみをすれば、戻りや、送りの区別をせずに譜めくりができる。
【0010】
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、前記入力装置からの入力に基づいて、前記電子楽譜の調性を変更する調性変更装置と、前記調性変更装置による調性変更の情報又は当該調性変更後の電子楽譜のデータを、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアするキーチェンジシェア装置とを有することを特徴とする。
これにより、演奏現場にて、キーチェンジの必要が生じる場合にも、臨機応変に対処可能となる。
【0011】
前記シェアメンバー管理装置は、シェアメンバーが移調楽器を演奏する場合に、当該移調楽器についての情報を有しており、前記管理者楽譜表示装置は、さらに、前記シェアメンバー管理装置が有する情報に基づいて、移調楽器に対応する調性変更の情報又は当該調性変更後の電子楽譜のデータを、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアする移調楽器対応装置をさらに有することを特徴とする。
これにより、演奏する楽器の中に移調楽器がある場合の対処が可能である。
【0012】
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、前記入力装置からの入力に基づいて、演奏する曲目順を記したセットリストを作成するセットリスト作成装置と、前記セットリスト作成装置が作成したセットリストを、前記シェアメンバー管理装置に管理されている情報に基づき、前記通信装置を介して前記シェアメンバー楽譜表示装置にシェアするセットリストシェア装置とをさらに有することを特徴とする。
これにより、複数曲を演奏する場合に、次の曲へ移る作業がスムーズに行える。
【0013】
前記ページ送り順設定装置は、前記セットリスト作成装置が作成したセットリストを参照して、複数の曲目にわたってページ順を設定し、前記ページ送りシェア装置は、複数の曲目にわたったページ送り順をシェアメンバー楽譜表示装置にシェアすることを特徴とする。
これにより、複数曲を演奏する場合であっても、管理者がページ送り操作をすることにより、シェアメンバーの楽譜が準備されるので、シェアメンバーは煩わしい操作をしなくてよい。
【0014】
前記通信装置は、インターネット接続が可能であって、さらに、前記管理者楽譜表示装置は、前記通信装置を介して、ウェブサイトから電子楽譜のデータをダウンロードするダウンロード装置を有することを特徴とする。
これにより、管理者が持っていない楽譜を、ウェブサイトからダウンロードすることが可能となる。
【0015】
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、前記入力装置に基づいて、入力された内容を前記電子楽譜データ格納装置に格納されている電子楽譜データに追記する入力データ追記装置を有することを特徴とする。
これにより、指揮者や音楽監督により指示された項目を当該楽譜に追記することが可能となる。
【0016】
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、前記電子楽譜シェア装置による電子楽譜データのシェアが私的複製の範囲で許諾される場合に、前記管理者楽譜表示装置と前記シェアメンバー楽譜表示装置との連携動作が終了した時点で、当該データが削除されるように設定する著作権管理装置を有することを特徴とする。
これにより、シェアメンバー楽譜表示装置に当該電子楽譜データが残らないので、著作権侵害(複製権侵害)を未然に防ぐことができる。
【0017】
前記著作権管理装置は、データを削除されたシェアメンバー楽譜表示装置の操作者が、ウェブサイトにアクセスして当該電子楽譜データをダウンロード可能な情報を当該シェアメンバー楽譜表示装置に引き渡すことを特徴とする。
これにより、シェアメンバーが、当該楽譜を入手したい場合の便宜を図ることができる。
【0018】
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、楽譜の使用回数、頻度、使用時間、楽譜表示装置の使用回数、頻度、使用時間を含む使用状況についての情報を管理する使用状況管理装置を有することを特徴とする。
これにより、著作権者が時間による課金をする場合の便宜を図ることができる。
【0019】
前記管理者楽譜表示装置は、さらに、シェアメンバー楽譜表示装置を前記管理者自身が、前記管理者楽譜表示装置とともに並べて連動させて用いる連動モード設定装置を有し、前記ページ送り順設定装置は、隣の表示装置との間で、ページがつながって表示されるようにページ送り順を設定し、前記ページ送りシェア装置は、前記ページ送り順設定装置が設定した情報に基づいてページ送り順の情報をシェアすることを特徴とする。
これにより、管理者が一人で複数台の楽譜表示装置を一度に用いる場合の利便性が図れる。
【0020】
前記複数の楽譜表示装置は、互いに遠隔地に置かれたものであって、前記通信装置は、インターネットを介して通信を実行し、前記ページ送りシェア装置によるページ送りの連携動作もまた、インターネットを介して実行されるものであることを特徴とする。
これにより、リモートセッション、リモート合唱、リモート合奏を行う場合の譜めくりの便宜を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように、本発明のシステムを用いると、管理者が保有する楽譜をシェアメンバーにシェアすることができ、管理者がページ送り操作をすることで、シェアメンバーの楽譜のページ送りをも実現できる。また、ページ送り順設定装置に、楽譜の中の繰り返し記号などに基づくページの戻りや、送りの情報をあらかじめ設定しておくことで、管理者は、演奏の際に、ページ送り操作のみをすれば、戻りや、送りの区別をせずに譜めくりができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】楽譜表示システムの概要を示す図である。
図2】管理者楽譜表示装置の内部構成を概略的に示すブロック図である。
図3】セッションの際に電子楽譜データを管理者がダウンロードし、それを用いてシェアメンバーにシェアしてセッションを行い、セッションを終えるときまでの一連の動作を示すシーケンス図である。
図4】連続ページ表示の実施例を示す図である。
図5】メモ機能を用いて、電子楽譜データに追記する実施例を示す図である。
図6】ピアノ伴奏でバイオリンを弾く実施例を示す図である。
図7】セミナーや講演、授業のサブテキストとして用いる実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のシステムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1から図3までは、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0024】
≪システムの概要≫
図1は、楽譜表示システムの概要を示す図である。
図1で、下方に描かれたやや大きめの横に延びる長円は、例えば、無線通信網により構成されるネットワーク1である。無線通信網は、たとえば、Wi-Fi(登録商標)により構成され得る。
ネットワーク1につながる管理者楽譜表示装置10、シェアメンバー楽譜表示装置21、…、29は、たとえばタブレットコンピュータなどの表示装置と入力装置とを積層配置してなるコンピュータにより構成され得る。その場合の表示装置には、液晶表示装置や、電子ペーパー(視認性や携帯性を保っ た表示媒体のうち、表示内容を電気的に書き換えられるもの。たとえば、E Ink電子ペーパー。イー・インクは、アメリカ合衆国イーインクコーポレイションの登録商標)を用いることができる。
管理者楽譜表示装置10と、シェアメンバー楽譜表示装置21、…、29は、同様に構成されたものを用いることができ、管理者楽譜表示装置と、シェアメンバー楽譜表示装置との関係は、ホストとクライアント、マスターとスレーブ、あるいは主と従の関係となる。
シェアメンバー楽譜表示装置21、…、29は、従となる楽譜表示装置が多数あることを示すものである。オーケストラの楽団員の数や、合唱団の団員数の数をカバーする数が不足する場合は、複数のルータを使って連携させて用いることにより実現可能である。
【0025】
図1の上方に描かれたやや小さめの横に延びる長円2は、インターネット(ウェブ)を示している。管理者楽譜表示装置10は、あらかじめ多くの電子楽譜を格納したものとして準備することができる。また、管理者楽譜表示装置10が、保有していない電子楽譜を入手するには、インターネット2を介して、電子楽譜データ格納サーバ3,4,5,6のうちのいずれかにアクセスして、購入またはレンタルをして用いることができる。当該電子楽譜データ格納サーバを運営する主体と、管理者楽譜表示装置の所有者との間に、結ばれる契約により、合奏又は合唱などの際に、一緒に演奏する演奏者にシェアすることを許諾される。または、一緒に演奏する演奏者にシェアすることは、私的複製の範囲内であるとする解釈を管理者楽譜表示装置の所有者が電子楽譜データ格納サーバの運営主体に申し入れ、電子楽譜データ格納サーバの運営主体はそれに合意することで、本発明に係る楽譜のシェアが契約上も適法なものとして実現される。
なお、後述するように、楽譜表示装置10(21、…、29)には、著作権管理装置133が設けられており、一緒に演奏する状態が解除された際には、シェアメンバー楽譜表示装置側の当該電子楽譜データは削除される。それにより、著作権侵害(複製権侵害)の問題を未然に防止する。
【0026】
≪管理者楽譜表示装置の内部構成≫
図2は、管理者楽譜表示装置10の内部構成を概略的に示すブロック図である。
入力装置101は、表示装置121に積層配置されたタッチパネル又はデジタイザー(座標入力装置)により、構成される。たとえば、表示装置121で表示された表示画面上に描かれたアイコンのうちの一つをタッチすることにより、キーボードがポップアップ表示されて、電子ペンを用いた文字入力を可能にする。また、入力装置として、ワイヤレスコントローラーや、フットスイッチを用いることでページ送り(譜めくり)の信号を入力することが容易になる。
電子楽譜データ格納装置103は、何らかの不揮発性メモリに電子楽譜データを格納したものである。電子楽譜データは、音の高さ、長さ、大きさなどの情報を規格(例えば、MIDI規格)に従って、曲単位に格納したものである。調性に関する情報をも含んでおり、移調(キーチェンジ)の要求に応じて、調性変更が可能になっている。電子楽譜データ格納装置103に格納された電子楽譜データに基づいて、表示データ作成装置123は、演奏者が視認可能な楽譜のイメージを作成して、表示装置121に表示させる。不揮発性メモリとして、SDカードを用いる場合、128ギガバイトのSDカードを用いれば、500,000ページ以上の楽譜が格納できる。したがって、演奏者が所有する楽譜のすべてを持ち歩くことが可能である。
入力データ追記装置105は、入力装置101を用いて楽譜に各自がメモをすることを実現する装置である。紙の楽譜ならば、鉛筆などでメモするのを、電子ペン又は指による手書き入力による追記を実現するものである。追記されたメモのデータは、楽譜を表示するのとは、別の層(レイヤ)に格納して、メモを表示するか否かを選択できるようにするのが望ましい。また、レイヤを複数設けることにより、先月のメモ、今月のメモなど、用途によって、メモ内容を切り替えて用いることもできる。
【0027】
電子楽譜シェア装置107は、通信装置125を通じて、シェアメンバーに電子楽譜データをシェアすることを実現する装置である。入力データ追記装置105が追記した内容をも一緒に送ることが可能である。
調性変更装置109は、ハ長調から、ト長調へ、など調整を変更する装置である。電子楽譜のデータは、MIDI規格などにしたがって、音の高さについての情報を持っているので、例えば、完全5度上への移動をし、移動した先の音の高さをシャープで表現するのか、フラットで表現するのかについてのルールを持っている。それにしたがって、機械的に移調操作をすることができる。この調性変更装置による調性の変更は、現場にて、各種事情(例えば、歌手の声域の問題など)により調性の変更を必要とした際に、その場で臨機応変に対応することを可能にするものである。
キーチェンジシェア装置111は、移調の情報、すなわち〇調から〇調への移動をする、又は、主音を〇から〇へ移動するという情報を通信装置125を通じて、シェアメンバーに送る装置である。キーチェンジ(移調)のための情報をシェアメンバー楽譜表示装置21、…、29に送れば、それぞれのシェアメンバー楽譜表示装置において、調性変更の処理をすることが可能となる。各装置にて、調性変更処理を実行する代わりに、管理者楽譜表示装置において実行した調性変更の結果の電子楽譜データをシェアメンバー楽譜表示装置に送ることとしてもよい。
【0028】
ページ送り順設定装置113は、楽譜の譜めくり順序を設定する順序を設定する装置である。たとえば、5ページからなる楽譜に、反復記号や、ダカーポ、ダルセーニョがあるとする。そして、1ページ、2ページ、3ページと演奏した後、2ページにもどり、次は、4ページ、5ページと演奏して、最後は4ページに戻って終わるとする。その場合、ページ送り順は、1→2→3→2→4→5→4と、入力装置101を用いて管理者が設定するものである。そのようにあらかじめ設定しておけば、譜めくりの動作をするだけで、所望のページに動くことを可能にする。
ページ送りシェア装置115は、ページ送り順に関する情報を通信装置125を介して、それぞれのシェアメンバー楽譜表示装置に送る装置である。ページ送り順をあらかじめそれぞれのシェアメンバー楽譜表示装置に送っておくことで、譜めくり動作の単純化を図ることができる。
【0029】
セットリスト作成装置117は、演奏会などで複数曲を連続して演奏する場合の曲順(セットリスト)を作成する装置である。たとえば、4曲を演奏するとした場合に、セットリストが作成できていれば、1曲目の演奏直後に譜めくりをすると、2曲目の最初のページが開く。2曲目の演奏直後に譜めくりをすると、3曲目の最初のページが開く。というように演奏の最後まで、譜めくりの操作のみで済んでしまう。
セットリストシェア装置119は、セットリスト作成装置117が作成したセットリストの情報を、通信装置125を通じて、シェアメンバー楽譜表示装置に送るものである。
【0030】
表示装置121は、液晶表示装置、または電子ペーパーで構成される平板型の表示装置である。
表示データ作成装置123は、表示装置121が表示することのできる画像を形成するための装置である。
通信装置125は、シェアメンバー楽譜表示装置に各種データを送るための通信を実行する装置である。
シェアメンバー管理装置127は、電子楽譜データ、移調(キーチェンジ)データ、ページ送り順データ、セットリスト情報などを送る相手を管理する装置である。必要ない装置に、シェアしないようにしつつ、新たに必要となった装置にも送ることができるように、管理者の入力にしたがって管理する。
移調楽器対応装置129は、シェアメンバー楽譜表示装置を用いる操作者がどのような移調楽器を用いているかを管理し、必要な移調ができるように対応する装置である。たとえば、木管楽器奏者は、複数の楽器を携えており、演奏曲目によって、使い分ける場合がある。そのような場合には、曲目によって、楽譜を切り替える必要が生じる。
【0031】
ダウンロード装置131は、ウェブサイトにある楽譜データをダウンロードする装置である。
著作権管理装置133は、それぞれの電子楽譜が、購入した者か、レンタルしたものか、有効期限はいつまでか、シェアメンバーにシェアする場合の条件は何か、などにしたがって、シェアメンバーへのシェアの正当性を担保するように著作権を管理する装置である。
使用状況管理装置135は、楽譜を用いた時間の長さに応じて、課金されて、料金を著作権者に支払う場合に、課金の目安になる情報を算定するため、時間を計測して、支払金額を算定する装置である。
連動モード設定装置137は、複数台の楽譜表示装置を一人で用いる場合に、配置する順にしたがって、左から1ページ目、2ページ目、3ページ目と順に表示できるように設定する装置である。
【0032】
≪シェアメンバー楽譜表示装置の内部構成≫
シェアメンバー楽譜表示装置21、…、29の内部構成は、管理者楽譜表示装置10の内部構成と同様のものを用いることができる。管理者楽譜表示装置が主であるのにたいして、シェアメンバー楽譜表示装置は、従として機能する。そのような設定をすることができるように構成される。
【0033】
≪システムの動作≫
図3は、セッションの際に電子楽譜データを管理者がダウンロードし、それを用いてシェアメンバーにシェアしてセッションを行い、セッションを終えるときまでの一連の動作を示すシーケンス図である。管理者は、電子楽譜をダウンロードすると、それを格納し、必要があれば、たとえば、曲想についてなどの追記を実行する。そして、演奏者の楽器の音域、歌手がいれば、その声域を考慮して調性変更を実行する。反復記号などに気をつけてページ送り順の設定をする。複数曲を演奏する場合には、セットリストを作成する。そして、楽譜をシェアすべきメンバーの装置を特定するための管理を実行する。そのうえで電子楽譜データ、調性情報、ページ送り順情報、セットリストなどの各種情報をシェアメンバーにシェアする。
シェアメンバー楽譜表示装置は、各種情報を管理者楽譜表示装置から受け取ってそれを格納する。シェアメンバーの演奏する楽器が移調楽器である場合は、それに対応する処理を実行する(管理者が演奏する楽器が移調楽器である場合も同様である)。演奏の間には、譜めくり情報を管理者楽譜表示装置から、シェアメンバー楽譜表示装置が受け取って、その情報に基づいてそのタイミングで譜めくりを実行する。
一連の演奏が終了すると、管理者楽譜表示装置は、シェアメンバー楽譜表示装置に向けて、電子楽譜データ削除指示を出す。シェアメンバー楽譜表示装置は、その指示に基づいて削除を実行して、それが完了した旨を管理者楽譜表示装置に報告する。
管理者楽譜表示装置は、(複数の)シェアメンバー楽譜表示装置から、報告をまとめて、最終的にすべての削除が完了したことを電子楽譜データ格納サーバに報告する。
これらの一連の動作により、電子楽譜データの複製が、個人的使用、私的使用など、適切な範囲で行われて、演奏が終了した時点で、削除がなされたことが担保できる。
【0034】
図4は、連続ページ表示の実施例を示す図である。図4(a)は、一台の楽譜表示装置に楽譜を表示させる状態を示している。図4(b)は、二台の楽譜表示装置を連続して表示させる状態を示している。左側の楽譜表示装置に第1ページが表示され、右側の楽譜表示装置に第2ページが表示されている状態から、譜めくりの動作を実行すると、2ページと3ページの表示がされるようにできる。このとき、譜めくりにより、3ページと4ページとが表示されるようにページの進み具合を選択できるようにしてもよい。図4(c)は、三台の楽譜表示装置を用いて、連続して表示させる状態を示している。
【0035】
図5は、メモ機能を用いて、電子楽譜データに追記する実施例を示す図である。「2曲目」というメモ、ボーカルのところを丸で囲む。「ゆっくりと」を追記する。ブレス記号を足す。タイトルの説明を書き加える。などの追記をした状態を示している。
【0036】
図6は、ピアノ伴奏でバイオリンを弾く実施例を示す図である。たとえば、バイオリン奏者が二台の楽譜表示装置を持っている場合に、そのうちの一台をピアノ奏者に渡して、伴奏を御願いするということが可能となる。この場合にも、バイオリン奏者の譜めくり動作により、ピアノ伴奏者の持つ楽譜表示装置の譜めくりも実行される。逆に、ピアノ伴奏者が譜めくりを実行して、バイオリン奏者の楽譜表示装置がそれにリンクするようにしてもよい。
【0037】
図7は、セミナーや講演、授業のサブテキストとして用いる実施例を示す図である。参加者の数だけ、楽譜表示装置を用意して、講師や講演者が表示したページを、すべての参加者に同時に見せることができる。OHPや、スライドプロジェクターなどのように、室内の照明を落とす必要がないというメリットがある。データは、PDFなどで準備することができる。参加者全員が手元で資料の確認が簡単にできる。講演やセミナーのテキストやサブテキスト、参考資料用などに活用することができる。
【0038】
上述した実施例では、管理者一人が、譜めくり信号を発するようにしたが、オーケストラなどでは、それぞれの楽器により、譜めくりのタイミングは、異なるものと考えられる。したがって、パートごとにグルーピングして、パートリーダーが代表して譜めくり信号を発するようにすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
楽譜を用いて複数人で演奏する現場、たとえば合唱団、楽団、バンド、音楽レッスンの現場などにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ネットワーク
2 インターネット
3,4,5,6 電子楽譜データ格納サーバ
10 管理者楽譜表示装置
21,…,29 シェアメンバー楽譜表示装置
101 入力装置
103 電子楽譜データ格納装置
105 入力データ追記装置
107 電子楽譜シェア装置
109 調性変更装置
111 キーチェンジシェア装置
113 ページ送り順設定装置
115 ページ送りシェア装置
117 セットリスト作成装置
119 セットリストシェア装置
121 表示装置
123 表示データ作成装置
125 通信装置
127 シェアメンバー管理装置
129 移調楽器対応装置
131 ダウンロード装置
133 著作権管理装置
135 使用状況管理装置
137 連動モード設定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7