(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088990
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20220608BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201155
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆司
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA10
4M109DA06
4M109EA02
4M109EB13
4M109EC09
(57)【要約】
【課題】品質低下を抑制できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、基板20と、基板20の下面に形成された接着層30と、接着層30の下面に接着された半導体素子40と、基板20及び接着層30を貫通し、半導体素子40の上面に設けられた電極41,42を露出する貫通孔21とを有する。半導体装置10は、貫通孔21内に形成されたビア配線V1と、ビア配線V1を介して電極41,42と電気的に接続されるとともに、基板20の上面に積層された配線層50と、接着層30の下面に積層されるとともに、半導体素子40の側面全面及び半導体素子の下面の外周縁を被覆し、半導体素子の下面の中央部を露出する保護絶縁層60とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の下面に形成された接着層と、
前記接着層の下面に接着された半導体素子と、
前記基板及び前記接着層を貫通し、前記半導体素子の上面に設けられた第1電極を露出する貫通孔と、
前記貫通孔内に形成されたビア配線と、
前記ビア配線を介して前記第1電極と電気的に接続されるとともに、前記基板の上面に積層された配線層と、
前記接着層の下面に積層されるとともに、前記半導体素子の側面全面及び前記半導体素子の下面の外周縁を被覆し、前記半導体素子の下面の中央部を露出する保護絶縁層と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記基板は、前記保護絶縁層の外側面よりも外方に突出して形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板の外側面は、前記接着層の外側面と面一に形成されている請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子が実装される配線基板を更に有し、
前記保護絶縁層は、前記半導体素子の下面に設けられた第2電極を露出する開口部を有し、
前記第2電極は、前記開口部内に形成された接続部材を介して前記配線基板の配線パターンに電気的に接続されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記接続部材は、前記開口部を充填するように形成されている請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記配線基板の下面に設けられた放熱部材を更に有する請求項4又は請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記保護絶縁層の下面に設けられた放熱部材を更に有し、
前記保護絶縁層は、前記半導体素子の下面の中央部を露出する開口部を有し、
前記開口部に露出する前記半導体素子の下面は、前記開口部内に形成された接着剤を介して前記放熱部材に接続されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記接着剤は、前記開口部を充填するように形成されている請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ビア配線は、前記貫通孔の内側面と前記貫通孔の底部に露出する前記第1電極の上面とを連続して被覆するシード層と、前記シード層よりも内側の前記貫通孔を充填する電解めっき金属層とを有する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
基板と、前記基板の下面に形成された接着層とを有する構造体を準備する工程と、
前記接着層の下面に半導体素子を搭載する工程と、
前記接着層の下面に、前記半導体素子の側面全面及び下面の外周縁を被覆し、前記半導体素子の下面の中央部を露出する保護絶縁層を形成する工程と、
前記基板の上面に、前記半導体素子の上面に設けられた第1電極と電気的に接続される配線層を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置として、ポリイミド等の樹脂フィルムに接着層を介して半導体素子が貼り付けられ、樹脂フィルムの接着層とは反対側の面に配線層が形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の半導体装置では、接着層に半導体素子を貼り付ける際に、接着層と半導体素子との間に異物が混入する場合がある。すると、接着層と半導体素子との間に隙間が生じるため、その隙間に配線層を形成する際のめっき液が染み込み、そのめっき液によって製品の品質が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、基板と、前記基板の下面に形成された接着層と、前記接着層の下面に接着された半導体素子と、前記基板及び前記接着層を貫通し、前記半導体素子の上面に設けられた第1電極を露出する貫通孔と、前記貫通孔内に形成されたビア配線と、前記ビア配線を介して前記第1電極と電気的に接続されるとともに、前記基板の上面に積層された配線層と、前記接着層の下面に積層されるとともに、前記半導体素子の側面全面及び前記半導体素子の下面の外周縁を被覆し、前記半導体素子の下面の中央部を露出する保護絶縁層と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、品質低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態の半導体装置を示す概略断面図(
図2における1-1線断面図)である。
【
図2】一実施形態の半導体装置を示す概略平面図である。
【
図3】(a),(b)は、一実施形態の半導体装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図4】(a),(b)は、一実施形態の半導体装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図5】(a),(b)は、一実施形態の半導体装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図6】(a),(b)は、一実施形態の半導体装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図7】一実施形態の半導体装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図8】変更例の半導体装置を示す概略断面図である。
【
図9】変更例の半導体装置を示す概略断面図である。
【
図10】変更例の半導体装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について添付図面を参照して説明する。
なお、添付図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。なお、本明細書において、「平面視」とは、対象物を
図1等の鉛直方向(図中上下方向)から視ることを言い、「平面形状」とは、対象物を
図1等の鉛直方向から視た形状のことを言う。また、本明細書における「上下方向」及び「左右方向」は、各図面において各部材を示す符号が正しく読める向きを正位置とした場合の方向である。
【0009】
まず、
図1に従って、半導体装置10の構造について説明する。
半導体装置10は、基板20と、基板20の下面に形成された接着層30と、接着層30の下面に搭載された1つ又は複数の半導体素子40とを有している。半導体装置10は、半導体素子40と電気的に接続され、基板20の上面に設けられた配線層50と、接着層30の下面に設けられ、半導体素子40の側面全面及び下面を被覆する保護絶縁層60とを有している。
【0010】
各半導体素子40としては、例えば、シリコン(Si)やシリコンカーバイド(SiC)を用いたデバイスを用いることができる。各半導体素子40としては、例えば、窒化ガリウム(GaN)やガリウム砒素(GaAs)などを用いたデバイスを用いることもできる。例えば、半導体素子40としては、能動素子としての半導体素子(例えば、CPU等のシリコンチップ)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やダイオード等を用いることができる。本実施形態の半導体素子40は、表裏面に電極が設けられた半導体素子である。半導体素子40の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。半導体素子40の平面形状は、例えば、矩形状に形成されている。半導体素子40の厚さは、例えば、50μm~500μm程度とすることができる。
【0011】
半導体素子40は、例えば、電極41と、電極42と、電極43とを有している。電極41,42は、例えば、半導体素子40の上面に形成されている。電極41,42は、半導体素子40の上面において互いに離れて設けられている。電極43は、例えば、半導体素子40の下面に形成されている。なお、本実施形態において、電極41,42は第1電極の一例であり、電極43は第2電極の一例である。
【0012】
電極41,42,43の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属、又はこれら金属から選択される少なくとも一種の金属を含む合金を用いることができる。なお、必要に応じて、電極41,42,43の表面に表面処理層を形成するようにしてもよい。表面処理層の例としては、金(Au)層、ニッケル(Ni)層/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)、Ni層/パラジウム(Pd)層/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。これらAu層、Ni層、Pd層としては、例えば、無電解めっき法により形成された金属層(無電解めっき金属層)を用いることができる。また、Au層はAu又はAu合金からなる金属層、Ni層はNi又はNi合金からなる金属層、Pd層はPd又はPd合金からなる金属層である。
【0013】
基板20としては、例えば、テープ状基板やフレキシブル基板などを用いることができる。基板20としては、例えば、樹脂フィルム等を用いることができる。樹脂フィルムの材料としては、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂やエポキシ系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。基板20は、例えば、可撓性を有している。ここで、可撓性とは、曲げや撓みを持たせることができる性質をいう。基板20の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。基板20の平面形状は、例えば、矩形状に形成されている。基板20の厚さは、例えば、50μm~100μm程度とすることができる。
【0014】
接着層30は、基板20の下面を被覆するように形成されている。接着層30は、例えば、基板20の下面全面を被覆すように形成されている。接着層30は、基板20と半導体素子40とを接着する機能を有している。接着層30は、基板20の下面に接着するとともに、半導体素子40の上面に接着している。換言すると、半導体素子40は、接着層30により基板20の下面に搭載されている。半導体素子40は、接着層30の下面に接着されている。
【0015】
接着層30の材料としては、例えば、エポキシ系、ポリイミド系やシリコーン系などの接着剤を用いることができる。接着層30の厚さとしては、例えば、20μm~40μm程度とすることができる。
【0016】
基板20及び接着層30には、それら基板20及び接着層30を厚さ方向に貫通する貫通孔21が形成されている。貫通孔21は、電極41,42の上面の一部を露出するように形成されている。本例の貫通孔21は、
図1において上側(基板20の上面側)から下側(接着層30の下面側)に向かうに連れて開口幅(開口径)が小さくなるテーパ状に形成されている。
【0017】
配線層50は、基板20の上面に形成されている。配線層50は、貫通孔21内に形成されたビア配線V1を介して電極41又は電極42と電気的に接続されている。配線層50は、例えば、ビア配線V1と一体に形成されている。ビア配線V1は、例えば、貫通孔21を充填するように形成されている。ビア配線V1は、基板20及び接着層30を厚さ方向に貫通して形成されている。
【0018】
配線層50及びビア配線V1は、例えば、基板20の上面と貫通孔21の内面とを被覆するシード層51を有している。本例のシード層51は、基板20の上面と、貫通孔21の内側面と、貫通孔21の底部に露出された電極41,42の上面とを連続して被覆するように形成されている。シード層51としては、スパッタ法により形成された金属膜(スパッタ膜)を用いることができる。スパッタ法により形成されたシード層51としては、例えば、基板20の上面及び貫通孔21の内面に、チタン(Ti)からなるTi層と、銅(Cu)からなるCu層とが順に積層された2層構造の金属膜を用いることができる。この場合には、Ti層の厚さは例えば10nm~300nm程度とすることができ、Cu層の厚さは例えば100nm~1000nm程度とすることができる。なお、Ti層は、基板20及び電極41,42等とシード層51との密着性を向上させる密着層として機能する。また、Ti層は、Cu層等から基板20等に銅が拡散することを抑制する金属バリア層として機能する。このような密着層及び金属バリア層として機能する金属膜の材料としては、Tiの他に、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)等を用いることができる。
【0019】
ビア配線V1は、シード層51よりも内側の貫通孔21を充填する金属層52を有している。金属層52の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。金属層52としては、例えば、電解めっき法により形成された金属層(電解めっき金属層)を用いることができる。
【0020】
ビア配線V1は、貫通孔21内に形成されたシード層51と金属層52とによって構成されている。
配線層50は、基板20の上面に形成されたシード層51上及びビア配線V1(金属層52)上に形成された金属層53を有している。金属層53は、例えば、金属層52と一体に形成されている。金属層53の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。金属層53としては、例えば、電解めっき法により形成された電解めっき金属層を用いることができる。
【0021】
配線層50は、基板20の上面に形成されたシード層51と金属層53とによって構成されている。
保護絶縁層60は、接着層30の下面を被覆するように形成されている。保護絶縁層60は、接着層30の下面に密着している。保護絶縁層60は、半導体素子40の側面全面を接触した状態で被覆するように形成されている。保護絶縁層60は、半導体素子40の側面全面に密着している。保護絶縁層60は、例えば、半導体素子40の下面の一部を被覆するように形成されている。保護絶縁層60は、半導体素子40の下面に密着している。保護絶縁層60は、半導体素子40の下面の外周縁を覆うように形成されている。
【0022】
図2に示すように、保護絶縁層60は、半導体素子40の下面の外周縁を全周にわたって連続して被覆するように形成されている。保護絶縁層60は、半導体素子40の下面の中央部を露出するように形成されている。換言すると、保護絶縁層60には、半導体素子40の下面の一部を露出する開口部61が設けられている。開口部61は、例えば、半導体素子40の下面に設けられた電極43の下面を露出するように形成されている。開口部61の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。開口部61の平面形状は、例えば、矩形状に形成されている。開口部61の平面形状は、半導体素子40の平面形状よりも小さく形成されている。なお、半導体素子40の下面(電極43の下面)から保護絶縁層60の下面までの厚さは、例えば、5μm~50μm程度とすることができる。なお、
図2は、
図1に示した半導体装置10を下方から見た平面図である。
【0023】
保護絶縁層60の平面形状は、半導体素子40の平面形状よりも大きく形成されている。保護絶縁層60の平面形状は、例えば、接着層30の平面形状よりも小さく形成されている。本例の保護絶縁層60の平面形状は、接着層30の平面形状よりも一回り小さく形成されている。すなわち、本例の保護絶縁層60は、接着層30の下面の一部を被覆するとともに、接着層30の下面の外周縁を全周にわたって連続して露出するように形成されている。
【0024】
図1に示すように、保護絶縁層60の外側面は、接着層30の外側面よりも内側に設けられている。換言すると、接着層30は、保護絶縁層60の外側面よりも外方に突出するように形成されている。このため、半導体装置10では、保護絶縁層60の外側面と、保護絶縁層60から露出する接着層30の下面と、接着層30の外側面とによって段差が形成されている。また、基板20は、保護絶縁層60の外側面よりも外方に突出するように形成されている。ここで、接着層30の外側面は、例えば、基板20の外側面と面一に形成されている。例えば、接着層30の外側面と基板20の外側面とは切断面である。
【0025】
保護絶縁層60としては、例えば、ソルダーレジスト層を用いることができる。保護絶縁層60の材料としては、例えば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いることができる。保護絶縁層60は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。また、保護絶縁層60の材料としては、感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂に限らず、例えば、熱硬化性樹脂等の非感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いてもよい。
【0026】
(半導体装置10の製造方法)
次に、
図3~
図6に従って、半導体装置10の製造方法について説明する。以下の説明では、半導体装置10となる部分を一括して製作した後に、個片化して多数の半導体装置10を製造する、いわゆる多数個取りの製造方法について説明する。なお、説明の便宜上、最終的に半導体装置10の各構成要素となる部分には、最終的な構成要素の符号を付して説明する。
【0027】
まず、
図3(a)に示す工程では、大判の基板20を準備する。大判の基板20は、例えば、半導体装置10が形成される個別領域A1がマトリクス状に複数個連設されている。ここで、個別領域A1は、最終的に切断線A2に沿って切断させて個片化され、各々個別の半導体装置10となる領域である。なお、大判の基板20が有する個別領域A1の数は特に限定されない。
【0028】
図3(a)に示すように、基板20の下面には、基板20の下面全面を被覆する接着層30が形成されている。
次に、
図3(b)に示す工程では、基板20及び接着層30の所要箇所に、基板20及び接着層30を厚さ方向に貫通する貫通孔21を形成する。貫通孔21は、例えば、CO
2レーザやUV-YAGレーザ等によるレーザ加工法又はパンチング法によって形成することができる。
【0029】
続いて、
図4(a)に示す工程では、基板20に半導体素子40を搭載する。接着層30の下面に半導体素子40を接着させる。このとき、半導体素子40の電極41,42が平面視において貫通孔21と重なるように位置合わせして、半導体素子40を接着層30の下面に接着する。
【0030】
次いで、
図4(b)に示す工程では、基板20の上面全面と貫通孔21の内面全面とを被覆するようにシード層51を形成する。シード層51は、例えば、スパッタ法や無電解めっき法により形成することができる。例えば、スパッタ法によりシード層51を形成する場合には、まず、基板20の上面と貫通孔21の内面とを被覆するように、それら基板20の上面及び貫通孔21の内面にチタンをスパッタリングにより堆積させてTi層を形成する。その後、Ti層上に銅をスパッタリングにより堆積させてCu層を形成する。これにより、2層構造(Ti層/Cu層)のシード層51を形成することができる。また、無電解めっき法によりシード層51を形成する場合には、例えば、無電解銅めっき法によりCu層(1層構造)からなるシード層51を形成することができる。
【0031】
次に、
図5(a)に示す工程では、接着層30の下面に、半導体素子40の側面全面及び下面を被覆する保護絶縁層60を形成する。保護絶縁層60は、半導体素子40の側面全面に密着した状態で半導体素子40の側面全面を被覆するように形成される。保護絶縁層60は、半導体素子40の下面の一部に密着した状態で半導体素子40の下面の一部を被覆するように形成される。保護絶縁層60には、半導体素子40の下面の中央部を露出する開口部61が形成されている。保護絶縁層60は、例えば、各個別領域A1に個別に形成される。すなわち、隣接する2つの個別領域A1に設けられた2つの保護絶縁層60は、互いに離れて形成されている。換言すると、隣接する2つの保護絶縁層60の間には、接着層30の下面を露出する貫通孔62が形成されている。貫通孔62は、切断線A2及び切断線A2の周辺領域に設けられている。このため、本例では、切断線A2及び切断線A2の周辺領域に保護絶縁層60が形成されていない。保護絶縁層60は、例えば、保護絶縁層60となる液状樹脂やペースト状樹脂をディスペンサ等により接着層30の下面に塗布することにより形成することができる。また、保護絶縁層60は、例えば、感光性のソルダーレジストフィルムをラミネートし、又は液状のソルダーレジストを塗布し、当該レジストをフォトリソグラフィ法により所要の形状にパターニングすることにより形成することができる。
【0032】
続いて、
図5(b)に示す工程では、保護絶縁層60の下面に保護フィルム70を形成する。例えば、保護絶縁層60の下面に、その保護絶縁層60の下面全面を覆う保護フィルム70を貼り付ける。保護フィルム70は、保護絶縁層60の開口部61の開口を塞ぐように形成されている。保護フィルム70は、例えば、後工程の電解めっき処理において、めっき液が半導体素子40の表面に接触することを抑制するために設けられている。保護フィルム70は、例えば、平板状に形成されている。例えば、複数の個別領域A1に対して1枚の保護フィルム70が共通して設けられている。保護フィルム70は、例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステルやPET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルムの表面に離型剤又は制電コーティングを施したフィルムを用いることができる。離型剤としては、例えば、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤を用いることができる。なお、保護フィルム70の離型剤の施された面が保護絶縁層60の下面に接着される。
【0033】
本工程において、例えば保護絶縁層60が形成されていない場合には、半導体素子40を囲むために、保護フィルム70の上面に半導体素子40を収容可能な凹部を形成する必要がある。この場合には、個別領域A1内の半導体素子40の数や配置に合わせて凹部を形成する必要があるため、保護フィルム70の形成に工数がかかり、保護フィルム70の製造コストが増大する。これに対し、本実施形態では、半導体素子40の側面全面及び下面を覆う保護絶縁層60を設けるようにした。このため、保護絶縁層60の開口部61を塞ぐように保護フィルム70を形成することにより、半導体素子40をめっき液から保護することができる。したがって、保護フィルム70の上面に凹部を設ける必要がないため、保護フィルム70を容易に形成することができ、保護フィルム70の製造コストが増大することを抑制できる。
【0034】
次いで、
図6(a)に示す工程では、貫通孔21内にビア配線V1を形成するとともに、そのビア配線V1を介して電極41又は電極42と電気的に接続される配線層50を基板20の上面に積層する。ビア配線V1及び配線層50は、例えば、サブトラクティブ法やセミアディティブ法などの各種の配線形成方法を用いて形成することができる。以下に、一例としてサブトラクティブ法を用いてビア配線V1及び配線層50を形成する方法を簡単に説明する。
【0035】
まず、保護フィルム70をマスクとし、シード層51を給電層とする電解めっき法(例えば、電解銅めっき法)により、シード層51よりも内側の貫通孔21を充填する金属層52を形成するとともに、シード層51の上面全面を覆う金属層53を形成する。続いて、金属層53の上面に配線層50に対応する位置の金属層53を覆うレジスト層(図示略)を形成する。次いで、そのレジスト層をマスクにして、レジスト層に覆われていない部分の金属層53及びシード層51をエッチングにより除去する。その後、レジスト層を除去する。これにより、シード層51と金属層52とから構成されるビア配線V1が形成されるとともに、シード層51と金属層53とから構成される配線層50が形成される。
【0036】
ここで、
図4(a)に示した工程、つまり接着層30の下面に半導体素子40を接着する工程では、接着層30と半導体素子40との間に異物が混入する場合がある。接着層30と半導体素子40との間に異物が混入した場合には、接着層30と半導体素子40との間に隙間が生じる。このような状態の構造体に対して電解めっき処理を施すと、めっき液が接着層30と半導体素子40との間の隙間に染み込む。このとき、保護絶縁層60が形成されていない場合には、接着層30と半導体素子40との間の隙間に染み込んだめっき液が半導体素子40の側面を通じて半導体素子40の下面まで流れる。すると、電極43の下面にめっき液が接触するため、半導体装置10の品質が低下する。これに対し、本実施形態では、半導体素子40の側面及び下面を接触した状態で被覆する保護絶縁層60を形成した。これにより、半導体素子40の側面と保護絶縁層60との間に隙間が無くなる。このため、半導体素子40と接着層30との間に隙間が生じた場合であっても、半導体素子40の側面と保護絶縁層60との間にめっき液が染み込むことを抑制できる。したがって、半導体素子40の下面に設けられた電極43にめっき液が接触することを抑制できる。
【0037】
次に、
図6(a)に示した保護フィルム70を除去する。例えば、保護絶縁層60の下面から保護フィルム70を剥離する。これにより、
図6(b)に示すように、保護絶縁層60の下面が外部に露出される。
【0038】
以上の製造工程により、各個別領域A1に半導体装置10に対応する構造体を製造することができる。
その後、
図6(b)に示す構造体を切断線A2に沿ってダイシングブレード等によって切断する。本例では、切断線A2上の基板20及び接着層30を切断する。これにより、
図7に示すように、半導体装置10が個片化され、複数の半導体装置10が製造される。このとき、
図6(b)に示した構造体では、切断線A2上に基板20及び接着層30のみを設けるようにしたため、それら基板20及び接着層30のみがダイシングブレード等によって切断される。このため、個片化後の半導体装置10の切断面には、基板20の外側面及び接着層30の外側面のみが露出される。これら基板20の外側面及び接着層30の外側面が切断面となるとともに、基板20の外側面と接着層30の外側面とが面一に形成される。換言すると、切断線A2上に保護絶縁層60を設けないようにしたため、本工程において保護絶縁層60が切断されない。このため、接着層30と保護絶縁層60との間で剥離が生じることを未然に防止できる。
【0039】
なお、個片化後の半導体装置10は、天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0040】
(1)接着層30の下面に、半導体素子40の側面全面及び下面を被覆する保護絶縁層60を形成するようにした。この構成によれば、半導体素子40の側面と保護絶縁層60との間の隙間を無くすことができる。このため、異物の混入等に起因して半導体素子40と接着層30との間に隙間が生じた場合であっても、半導体素子40の側面と保護絶縁層60との間にめっき液が染み込むことを抑制できる。したがって、半導体素子40の下面に設けられた電極43にめっき液が接触することを抑制できる。これにより、半導体装置10の品質が低下することを好適に抑制できる。
【0041】
(2)また、保護絶縁層60を設けたことにより、製造工程の途中で使用する保護フィルム70を平板状態で使用することができる。したがって、保護フィルム70の上面に凹部を設ける必要がないため、保護フィルム70を容易に形成することができ、保護フィルム70の製造コストが増大することを抑制できる。ひいては、半導体装置10の製造コストが増大することを抑制できる。
【0042】
(3)切断線A2上に保護絶縁層60を設けないようにした。このため、半導体装置10を個片化する際に、保護絶縁層60が切断されない。このため、接着層30と保護絶縁層60との間で剥離が生じることを未然に防止できる。
【0043】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・
図8に示すように、半導体装置10は、配線基板80を更に有してもよい。本変更例の半導体素子40は、例えば、配線基板80に実装される。配線基板80の構造は特に限定されない。配線基板80は、例えば、基板本体81と、基板本体81の上面に形成された配線層82とを有している。
【0045】
基板本体81は、例えば、平板状に形成されている。基板本体81は、例えば、酸化物系セラミックスや非酸化物系セラミックス等のセラミックスからなるセラミックス基板である。酸化物系セラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)などを挙げることができる。非酸化物系セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)などを挙げることができる。なお、基板本体81は、単層構造に限定されない。例えば、基板本体81を、1層又は複数層の配線層と複数層の絶縁層とを積層した積層構造に具体化してもよい。配線層82の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0046】
半導体素子40は、例えば、配線基板80の上面に実装されている。半導体素子40の電極43は、例えば、導電性を有する接続部材85を介して配線基板80の配線層82と電気的に接続されている。接続部材85は、保護絶縁層60の開口部61内に設けられている。接続部材85は、例えば、開口部61を充填するように形成されている。
【0047】
接続部材85の材料としては、例えば、はんだ、銀ペースト等の導電性ペーストや金属ろう材を用いることができる。接続部材85の材料としては、例えば、金属の焼結材料を用いることもできる。焼結材料としては、例えば、銀(Ag)粒子を主成分とする焼結材料(銀シンタリング材料)や銅粒子を主成分とする焼結材料(銅シンタリング材料)を用いることができる。
【0048】
本変更例の半導体装置10では、保護絶縁層60の開口部61の内側面を、接続部材85の流れ出しを抑制するダム部材として機能させることができる。このため、保護絶縁層60とは別にダム部材を設ける必要がない。
【0049】
・
図9に示すように、半導体装置10は、放熱部材90を更に有してもよい。放熱部材90は、例えば、配線基板80の下面に搭載されている。放熱部材90は、例えば、接着剤95により基板本体81の下面に接着されている。
【0050】
放熱部材90は、例えば、平板状に形成されている。放熱部材90は、例えば、半導体素子40で生じた熱を放熱する機能を有している。放熱部材90の材料としては、例えば、熱伝導率が20W/mK以上である材料であることが好ましい。放熱部材90の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素やアルミナ等の熱伝導性に優れたセラミックスを用いることができる。また、放熱部材90の材料としては、例えば、熱伝導性に優れた金属材料を用いることができる。放熱部材90の材料としては、例えば、銅やアルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属又はこれらの金属を少なくとも一つ以上含む合金を用いることができる。放熱部材90の材料として銅やアルミニウムを用いる場合には、例えば、放熱部材90の表面に、その表面の酸化等を抑制するための表面処理層を形成してもよい。表面処理層としては、例えば、Au層、Ni層/Au層、Ni層/Pd層/Au層などのめっき層を挙げることができる。また、放熱部材90の材料としてアルミニウムを用いる場合には、例えば、放熱部材90の表面にジンケート処理を施した後に表面処理層を形成するようにしてもよい、
接着剤95は、例えば、配線基板80の基板本体81の下面全面を覆うように形成されている。接着剤95としては、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系等の接着剤を用いることができる。接着剤95としては、例えば、合成ゴムをベースとした接着剤を用いることができる。また、接着剤95としては、熱伝導部材(TIM:Thermal Interface Material)等の高熱伝導性を有するものを用いることもできる。熱伝導部材の材料としては、例えば、インジウム(In)、銀等の軟質金属、シリコンゲル又は金属フィラー、グラファイト等を含有した有機系の樹脂バインダー等を用いることができる。接着剤95を熱伝導率の高い材料で構成することにより、半導体素子40で生じた熱を放熱部材90に効率良く伝導することができる。
【0051】
・
図10に示すように、放熱部材90を、保護絶縁層60の下面に設けるようにしてもよい。放熱部材90は、例えば、接着剤95により半導体素子40の下面に接着されている。接着剤95は、保護絶縁層60の開口部61内に設けられている。接着剤95は、例えば、開口部61を充填するように設けられている。この場合には、例えば、半導体素子40の下面に設けられた電極43(
図1参照)を省略してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、基板20の上面に1層の配線層50を設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、基板20の上面に、複数層の配線層と複数層の絶縁層とを交互に積層した構造体を設けるようにしてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、シード層51を形成した後に、接着層30の下面に保護絶縁層60を形成するようにしたが、製造工程の順序はこれに限定されない。例えば、接着層30の下面に保護絶縁層60を形成した後に、基板20の上面及び貫通孔21の内面を覆うシード層51を形成するようにしてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、基板20の外側面と接着層30の外側面とを面一に形成したが、基板20の外側面と接着層30の外側面とは面一でなくてもよい。
・上記実施形態において、保護絶縁層60の外側面を、基板20の外側面及び接着層30の外側面と面一になるように形成してもよい。この場合には、例えば、切断線A2上に保護絶縁層60が形成される。
【0055】
・上記実施形態では、3つの電極41,42,43を有する半導体素子40に具体化したが、電極41,42,43の数は特に限定されない。例えば
図10に示すように、2つの電極41,42を有する半導体素子40に具体化してもよい。
【0056】
・半導体装置10としては、基板20と、接着層30と、接着層30に接着された半導体素子40と、半導体素子40の側面全面及び下面を被覆する保護絶縁層60とを有していれば、その他の構造や機能等は特に限定されない。
【符号の説明】
【0057】
10 半導体装置
20 基板
21 貫通孔
30 接着層
40 半導体素子
41,42 電極
43 電極
50 配線層
51 シード層
52 金属層
53 金属層
60 保護絶縁層
61 開口部
80 配線基板
85 接続部材
90 放熱部材
95 接着剤
V1 ビア配線