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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088997
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0185 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
H03K19/0185 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201175
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 利弘
【テーマコード(参考)】
5J056
【Fターム(参考)】
5J056AA32
5J056BB02
5J056BB46
5J056CC09
5J056CC12
5J056CC21
5J056DD13
5J056DD28
5J056FF08
5J056KK01
(57)【要約】
【課題】トレラント機能を維持しつつ高速伝送を可能にすることができる。
【解決手段】 実施形態の半導体集積回路は、ゲートに第1の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの入力信号が与えられ基準電位点と中間ノードとの間の導通非導通を制御する第1のMOSトランジスタと、中間ノードを介して第1のMOSトランジスタに接続されて第1のMOSトランジスタと共にスタックを構成し、ゲートにバイアス電圧が供給され、第1のMOSトランジスタの耐圧以下の電圧を中間ノードに印加する第2のMOSトランジスタと、第1の電圧よりも高い第2の電圧が供給され、第1のMOSトランジスタの動作に応じたレベルの信号がゲートに与えられ、第2の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの出力信号を出力する第3のMOSトランジスタと、第1のMOSトランジスタのオフ時に中間ノードを固定電圧とするスイッチ回路とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートに第1の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの入力信号が与えられ基準電位点と中間ノードとの間の導通非導通を制御する第1のMOSトランジスタと、
前記中間ノードを介して前記第1のMOSトランジスタに接続されて前記第1のMOSトランジスタと共にスタックを構成し、ゲートにバイアス電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの耐圧以下の電圧を前記中間ノードに印加する第2のMOSトランジスタと、
前記第1の電圧よりも高い第2の電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの動作に応じたレベルの信号がゲートに与えられ、前記第2の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの出力信号を出力する第3のMOSトランジスタと、
前記第1のMOSトランジスタのオフ時に前記中間ノードを固定電圧とするスイッチ回路と
を具備する半導体集積回路。
【請求項2】
前記スイッチ回路は、ゲートに前記入力信号又はその反転信号が与えられ、第1端子に与えられた前記第1のMOSトランジスタの耐圧以下の固定電圧を第2端子から前記中間ノードに供給する第4のMOSトランジスタにより構成される
半導体集積回路。
【請求項3】
ゲートに第1の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの入力信号が与えられ基準電位点と第1の中間ノードとの間の導通非導通を制御する第1のMOSトランジスタと、
前記第1のMOSトランジスタと差動対を構成し、ゲートに前記入力信号の反転信号が与えられ基準電位点と第2の中間ノードとの間の導通非導通を制御する第2のMOSトランジスタと、
前記第1の中間ノードを介して前記第1のMOSトランジスタに接続されて前記第1のMOSトランジスタと共にスタックを構成し、ゲートにバイアス電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの耐圧以下の電圧を前記第1の中間ノードに印加する第3のMOSトランジスタと、
前記第2の中間ノードを介して前記第2のMOSトランジスタに接続されて前記第2のMOSトランジスタと共にスタックを構成し、ゲートにバイアス電圧が供給され、前記第2のMOSトランジスタの耐圧以下の電圧を前記第2の中間ノードに印加する第4のMOSトランジスタと、
前記第2の電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの動作に応じたレベルの信号がゲートに与えられ、前記第2の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの出力信号を出力する第5のMOSトランジスタと、
前記第2の電圧が供給され、前記第5のMOSトランジスタと共にクロスカップル回路を構成し、前記第2のMOSトランジスタの動作に応じたレベルの信号がゲートに与えられ、前記第2の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの出力信号を出力する第6のMOSトランジスタと、
前記第1のMOSトランジスタのオフ時に前記第1の中間ノードを固定電圧とする第1のスイッチ回路と、
前記第2のMOSトランジスタのオフ時に前記第2の中間ノードを固定電圧とする第2のスイッチ回路と
を具備する半導体集積回路。
【請求項4】
前記クロスカップル回路を構成する前記第5及び第6のMOSトランジスタの出力信号のうちの一方を反転させて他方と合成して出力する合成回路
を更に具備する請求項3に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記合成回路は、前記出力信号のうちの一方を反転させて得た反転信号のエッジタイミング及び前記出力信号のうちの他方の信号のエッジタイミングで論理レベルが変化する信号を生成する
請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記合成回路は、前記論理レベルが変化する信号をラッチして出力するラッチ回路
を更に具備する請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
ゲートに第1の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの入力信号が与えられ基準電位点と中間ノードとの間の導通非導通を制御する第1のMOSトランジスタと、
前記中間ノードを介して前記第1のMOSトランジスタに接続されて前記第1のMOSトランジスタと共にスタックを構成し、ゲートにバイアス電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの耐圧以下の電圧を前記中間ノードに印加する第2のMOSトランジスタと、
前記第1の電圧よりも高い第2の電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの動作に応じたレベルの信号がゲートに与えられ、前記第2の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの出力信号を出力する第3のMOSトランジスタと、
前記第2の電圧が供給される電源ラインと前記基準電位点との間に、直列に接続される第4から第6のMOSトランジスタによる信号経路と、
前記第5のMOSトランジスタと前記第6のMOSトランジスタとの接続点の電圧と基準電圧とを比較し比較結果に基づく電圧を前記第2及び第5のMOSトランジスタのゲートに供給する比較回路と
を具備する半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる電源電圧を用いる電気回路への信号伝送に際して、レベルシフト回路が採用されることがある。この種のレベルシフト回路においては、搭載される素子の耐圧を考慮したトレラント機能を有するものがある。トレラント機能は、回路中の各素子に耐圧を超えた電圧が印加されないようにする機能であり、この機能を実現するために、例えばスタック構成のMOSトランジスタによるトレラント構造の回路が採用されことがある。
【0003】
しかしながら、MOSトランジスタをスタック構成とすることから、出力ノードの状態遷移に遅延が生じる。また、出力のデューティー比も50%にならないことがある。
【0004】
このため、トレラント構造を採用するレベルシフト回路においては、高速伝送をしにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0263731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、トレラント機能を維持しつつ高速伝送を可能にすることができる半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体集積回路は、ゲートに第1の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの入力信号が与えられ基準電位点と中間ノードとの間の導通非導通を制御する第1のMOSトランジスタと、前記中間ノードを介して前記第1のMOSトランジスタに接続されて前記第1のMOSトランジスタと共にスタックを構成し、ゲートにバイアス電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの耐圧以下の電圧を前記中間ノードに印加する第2のMOSトランジスタと、前記第1の電圧よりも高い第2の電圧が供給され、前記第1のMOSトランジスタの動作に応じたレベルの信号がゲートに与えられ、前記第2の電圧の電圧範囲に対応した信号レベルの出力信号を出力する第3のMOSトランジスタと、前記第1のMOSトランジスタのオフ時に前記中間ノードを固定電圧とするスイッチ回路とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体集積回路を示す回路図。
図2図1の半導体集積回路を含むメモリシステムを示すブロック図。
図3】本実施の形態における半導体集積回路の比較例を示す回路図。
図4】本実施の形態における半導体集積回路の比較例を示す回路図。
図5】課題を説明するためのタイミングチャート。
図6】課題を説明するためのタイミングチャート。
図7】実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャート。
図8】本発明の第2の実施の形態を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る半導体集積回路を示す回路図である。また、図2図1の半導体集積回路を含むメモリシステムを示すブロック図である。
【0011】
本実施の形態における半導体集積回路は、スタック構成したMOSトランジスタによるトレラント機能を備えると共に、スタック構成したMOSトランジスタの端子に接続される後述する中間ノードの電位をスイッチ回路を用いて固定することにより出力ノードの遅延時間を安定させてデューティー比を改善できるレベルシフト回路を構成する。また、本実施の形態における半導体集積回路は、差動出力を合成することでデューティー比を更に改善できるレベルシフト回路を構成する。デューティー比の改善によって、本実施の形態における半導体集積回路は、信号の高速伝送が可能となる。
【0012】
図2のメモリシステムにおいて、ホスト1とメモリコントローラ2とは、所定のインタフェースを介して接続される。例えば、このインタフェースとしては、eMMC(embedded Multi Media Card)のパラレルインタフェース、PCIe(Peripheral Component Interconnect-Express)のシリアル拡張インタフェース、M-PHYの高速シリアルインタフェース等の各種インタフェースが採用される。なお、ホスト1及びメモリコントローラ2には、これらの各種インタフェースを採用したインタフェース回路が内蔵されている。
【0013】
メモリコントローラ2とNAND型フラッシュメモリ4とは、NANDインタフェース(I/F)回路3を介して接続される。NANDI/F回路3は、例えば、トグル・ダブルデータレート(ToggleDDR)等の高速データ転送モードやオープンNANDフラッシュインタフェース(ONFI)等の各種インタフェースを採用しており、メモリコントローラ2とNAND型フラッシュメモリ4との間でデータの転送を行う。
【0014】
ホスト1は、メモリコントローラ2に対して、書き込みや読み出しのリクエストを発生する。メモリコントローラ2は、ホストからのリクエストに従ってNAND型フラッシュメモリ4へのデータの書き込み及びNAND型フラッシュメモリ4からのデータの読み出しを制御する。
【0015】
メモリコントローラ2とNAND型フラッシュメモリ4とは、NANDI/F回路3を介して、例えば、データを含む各信号の送受信を行うための信号DQ<7:0>、データストローブ信号DQS、/DQS、チップイネーブル信号CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、及びライトプロテクト信号WP等の各種信号の伝送を行う。
【0016】
NANDI/F回路3は、レベルシフト回路3a及び出力バッファ3bを有している。レベルシフト回路3aは、メモリコントローラ2から供給されNANDI/F回路3の内部で処理されたデータの電圧レベルを高い電圧にシフトした後、出力バッファ3bを介してメモリコントローラ2に出力する。また、レベルシフト回路3aは、NAND型フラッシュメモリ4から供給されNANDI/F回路3の内部で処理されたデータの電圧レベルを高い電圧にシフトした後、出力バッファ回路3bを介してメモリコントローラ2に出力する。
【0017】
なお、本実施の形態におけるレベルシフト回路3aと同一構成のレベルシフト回路が、NANDI/F回路3だけでなく、ホスト1,メモリコントローラ2,NAND型フラッシュメモリ4に内蔵されていてもよい。また、NANDI/F回路3を省略し、メモリコントローラ2及びNAND型フラッシュメモリ4に、NANDI/F回路3と同様の機能を有するインタフェース回路を内蔵してもよい。
【0018】
本実施の形態は、不揮発性の半導体記憶装置であるNANDフラッシュメモリとメモリコントローラとの間のインタフェース回路(NANDインタフェース回路)に適用する例を説明するが、各種インタフェース回路に適用可能である。
【0019】
(課題)
次に、図3から図6を参照して、トレラント構造のレベルシフト回路では高速化が困難である問題について説明する。図3及び図4は本実施の形態における半導体集積回路の比較例を示す回路図である。図3はトレラント構造を有していないレベルシフト回路を示し、図4はトレラント構造を有しているレベルシフト回路を示している。なお、図1図3及び図4において、同一の構成要素には同一符号を付し、同一構成については重複する説明を省略するものとする。
【0020】
図3のレベルシフト回路は、入力バッファ10及びレベルシフタ40により構成される。入力バッファ10は、入力された差動入力信号Ia,Ibから差動出力(信号Oa,Ob)を発生する2つのインバータINV1,INV2を有する。インバータINV1は、PMOSトランジスタM1及びNMOSトランジスタM2により構成されており、インバータINV2は、PMOSトランジスタM3及びNMOSトランジスタM4により構成されている。入力信号Iaは、トランジスタM1,M2のゲートに供給され、入力信号Ibは、トランジスタM3,M4のゲートに供給される。
【0021】
トランジスタM1は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDAが印加され、ドレインはトランジスタM2のドレインに接続される。トランジスタM2のソースは基準電位点に接続される。トランジスタM3は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDAが印加され、ドレインはトランジスタM4のドレインに接続される。トランジスタM4のソースは基準電位点に接続される。
【0022】
入力信号IaはインバータINV1によって反転され、トランジスタM1のドレインとトランジスタM2のドレインとの接続点(以下、Aノードという)には、反転信号である信号Oaが現れる。また、入力信号Iaの反転信号である入力信号Ibは、インバータINV2によって反転される。トランジスタM3のドレインとトランジスタM4のドレインとの接続点(以下、Bノードという)には、信号Oaの反転信号である信号Obが現れる。
【0023】
入力バッファ10は、比較的低い電源電圧VDDAで動作するように構成されており、トランジスタM1~M4は、例えば耐圧が比較的低い薄膜トランジスタにより構成された回路(以下、LVMOSという)により構成される。
【0024】
レベルシフタ40は、差動入力、シングル出力である。レベルシフタ40は、入力バッファ10からの信号Oa,Obが差動入力として入力され、出力端子OUT(以下、OUTノードともいう)から出力信号Oを出力する。レベルシフタ40は、PMOSトランジスタM6,M9により構成されるクロスカップル回路と、NMOSトランジスタM29,M30とを有する。トランジスタM29,M30は、信号Oa,Obをクロスカップル回路に伝達する伝達回路を構成する。
【0025】
トランジスタM6は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが供給され、ドレインはトランジスタM9のゲートに接続される。トランジスタM9は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが供給され、ドレインはトランジスタM6のゲートに接続される。トランジスタM6,M9の各ドレインは、それぞれトランジスタM29,M30のドレインに接続される。トランジスタM29は、ソースが基準電位点に接続され、ゲートには信号Obが供給される。トランジスタM30は、ソースが基準電位点に接続され、ゲートには信号Oaが供給される。
【0026】
Bノードがハイレベル(以下、Hレベル)でAノードがローレベル(以下、Lレベル)の場合には、トランジスタM29がオン、トランジスタM30がオフとなる。この場合には、トランジスタM6のドレインとトランジスタM29のドレインとの接続点(以下、Cノードという)はLレベルとなり、トランジスタM9がオンとなって、トランジスタM9のドレインとトランジスタM30のドレインとの接続点(出力端子OUT)はHレベルとなる。トランジスタM6,M9によるクロスカップル回路により、トランジスタM6はオフとなってCノードのLレベル、出力端子OUTのHレベルは維持される。
【0027】
逆に、AノードがHレベルでBノードがLレベルの場合には、トランジスタM29がオフ、トランジスタM30がオンとなる。この場合には、出力端子OUTはLレベルとなる。トランジスタM6,M9によるクロスカップル回路により、CノードはHレベルになりトランジスタM9はオフとなって、出力端子OUTはLレベルに維持される。
【0028】
レベルシフタ40は、比較的高い電源電圧VDDBで動作するように構成される。トランジスタM6,M9,M29,M30は、例えば耐圧が比較的高い厚膜トランジスタにより構成された回路(以下、HVMOSという)により構成される。
【0029】
入力バッファ10にHレベルの入力信号Iaが入力されると、出力端子OUTからはHレベルの信号が出力され、入力バッファ10にLレベルの入力信号Iaが入力されると、出力端子OUTからはLレベルの信号が出力される。入力バッファ10には電源電圧VDDAが供給されており、レベルシフタ40には電源電圧VDDBが供給されている。この結果、0~VDDAの範囲で変化するA,Bノードの信号Oa,Obは、0~VDDBの範囲で変化する出力信号Oにレベルシフトされて出力される。
【0030】
ところで、レベルシフタ40のトランジスタM29,M30は厚膜トランジスタであり、閾値電圧Vthが比較的高い。これに対し、電源電圧VDDAは、近年のLSI等における低消費電力化の影響により、より低い電圧に設定される。即ち、A,Bノードの信号Oa,Obのレベルはより低いレベルとなっている。この結果、信号Oa,ObのレベルがトランジスタM29,M30の閾値電圧Vthを超えないことがあり、その場合は、レベルシフト回路が正常に動作しないという問題が起こる。
【0031】
そこで、伝達回路を構成するトランジスタとして薄膜トランジスタを採用する図4の回路が採用されることがある。図4の回路は、図3のトランジスタM29,M30を閾値電圧が比較的低いLVMOSに変更して、トランジスタM19、M20としている。従って、トランジスタM19,M20は、Bノード,Aの変化によって確実にオン,オフすることができる。
【0032】
しかしながら、厚膜トランジスタM29,M30を薄膜トランジスタM19,M20に変えただけでは、トランジスタM19,M20に比較的高い電圧VDDBが印加されることになり、耐圧が比較的低いトランジスタM19,M20の特性が変動したり、壊れる懸念がある。。そこで、図4のレベルシフト回路においては、トランジスタM19,M20を保護する回路を採用したトレラント構造を有する。即ち、図4のレベルシフト回路は、伝達回路21をLVMOSにより構成すると共に、HVMOSにより構成したレベルシフタ31に厚膜トランジスタM7,M10による保護回路を設けたものである。
【0033】
トランジスタM6のドレイン(Cノード)とトランジスタM19のドレイン(以下、Gノードという)との間には、NMOSトランジスタM7が設けられる。また、トランジスタM9のドレイン(出力端子OUT)とトランジスタM20のドレイン(以下、Hノードという)との間には、NMOSトランジスタM10が設けられる。トランジスタM7,M10は、厚膜トランジスタである。なお、以下、Gノード及びHノードを中間ノードとも言うものとする。
【0034】
トランジスタM7のドレインはトランジスタM6のドレインに接続され、ソースはトランジスタM19のドレインに接続され、ゲートには所定のバイアス電圧VBIASが印加される。トランジスタM10のドレインはトランジスタM9のドレインに接続され、ソースはトランジスタM20のドレインに接続され、ゲートには所定のバイアス電圧VBIASが印加される。トランジスタM7,トランジスタM10は、トランジスタM19及びM20を保護するため、厚膜トランジスタで構成する。
【0035】
トランジスタM7のオン時におけるドレイン・ソース間電圧Vdsは、バイアス電圧VBIASに応じた値となる。従って、バイアス電圧VBIASを適宜の電圧とすることにより、トランジスタM7のソース(Gノード)を所定の電圧以下の電圧にすることができる。また、同様に、トランジスタM10のオン時におけるドレイン・ソース間電圧Vdsは、バイアス電圧VBIASに応じた値となる。従って、バイアス電圧VBIASを適宜の電圧とすることにより、トランジスタM10のソース(Hノード)を所定の電圧以下の電圧にすることができる。バイアス電圧VBIASは、Gノード及びHノードがトランジスタM19,M20の耐圧を超えない電圧以下の電圧になるように、適宜の値に設定される。
【0036】
このように図4のレベルシフト回路は、伝達回路21を薄膜トランジスタM19,M20によって構成することにより、入力信号の変化をレベルシフタ31に確実に伝達することを可能にすると共に、トランジスタM7,M10による保護回路により、薄膜トランジスタM19,M20のドレイン・ソース間に耐圧以上の電圧が印加されることを防止する。
【0037】
しかしながら、図4のレベルシフト回路は信号を高速に伝達できないという課題がある。図5及び図6はこの課題を説明するためのタイミングチャートである。図5及び図6は入力信号Ia,Ib、A,B,C,G,H,OUTノードに現れる信号を示している。
【0038】
電源電圧VDDA,VDDBの投入後において、入力信号IaがLレベル(入力信号IbがHレベル)であり、信号OaはHレベル、信号ObはLレベルであるものとする。この状態では、トランジスタM20はオンであり、トランジスタM19はオフである。
【0039】
トランジスタM20がオンであるので、HノードはLレベル側の値となる。なお、図5及び図6では、Hノードは、バイアス電圧VBIASの影響を受けてLレベル側の電圧V1となっていることを示している。一方、トランジスタM19はオフであるので、GノードはHi-Z(ハイインピーダンス)となる。なお、Hi-Zは、ノードの電位が不定であり、正負の様々な値を取り得ることを意味する。図5及び図6においては、G,HノードのHi-Z時においてG,HノードがVDDB/2以下の電位になった例を示している。
【0040】
トランジスタM20がオンの場合にはHノードはLレベル側の電圧V1であるので、出力端子OUTはLレベルである。従って、トランジスタM6はオンであり、CノードはHレベルである。トランジスタM9はオフであり、出力端子OUTはLレベルのままである。
【0041】
次に、入力信号IaがLレベルの状態から、入力信号IaがHレベル(入力信号IbがLレベル)の状態に遷移するものとする。入力信号Ia,Ibは、それそれインバータINV1,INV2により反転される。A,Bノードには、それぞれ入力信号Ia,Ibの反転信号である信号Oa,Obが現れる。即ち、Aノードは、HレベルからLレベルに遷移し、Bノードは、LレベルからHレベルに遷移する。そうすると、トランジスタM19はオフからオンに切換り、トランジスタM20はオンからオフに切換る。
【0042】
CノードとトランジスタM19との間には、トランジスタM19と共にスタックを構成するトランジスタM7が設けられる。また、出力端子OUTとトランジスタM20との間には、トランジスタM20と共にスタックを構成するトランジスタM10が設けられる。従って、Cノード及び出力端子OUTのレベルは、トランジスタM19,トランジスタM20のオン,オフの切換りから所定の遅延時間後に遷移する。トランジスタM19がオンになることにより、CノードはLレベルに遷移する。これによりトランジスタM9はオンとなり、出力端子OUTをHレベルに遷移させる。この結果、トランジスタM6はオフとなり、CノードのLレベルが維持される。
【0043】
次に、入力信号IaがHレベルの状態から、入力信号IaがLレベル(入力信号IbがHレベル)の状態に遷移するものとする。入力信号Ia,Ibは、それそれインバータINV1,INV2により反転される。Aノードは、LレベルからHレベルに遷移し、Bノードは、HレベルからLレベルに遷移する。そうすると、トランジスタM19はオンからオフに切換り、トランジスタM20はオフからオンに切換る。
【0044】
トランジスタM19,トランジスタM20のオン,オフの切換りから所定の遅延時間後にC,OUTノードのレベルが遷移する。即ち、トランジスタM20がオンになることにより、出力端子OUTはLレベルに遷移する。これによりトランジスタM6はオンとなり、CノードをHレベルに遷移させる。この結果、トランジスタM9はオフとなり、出力端子OUTのLレベルが維持される。
【0045】
以後、同様に入力信号Ia,IbがHレベルとLレベルとの間で遷移することによって、出力端子OUTのレベルも遷移する。この場合において、特にトランジスタM19,M20にそれぞれトランジスタM7,M10をスタック構成としたことにより、C,OUTノードの遷移に比較的大きな遅延時間が生じる。この遅延時間が、C,OUTノードのいずれにも均等で、且つ、HレベルからLレベルへの遷移(以下、立ち下がり遷移という)とLレベルからHレベルへの遷移(以下、立ち上がり遷移という)においても均等に生じるならば、特には問題は無い。しかし、G,HノードがHi-Zになることと、立ち下がり遷移と立ち上がり遷移とで遅延時間が均等に生じないことによって、高速化が阻害されるという課題がある。
【0046】
図5では、図4のレベルシフト回路の課題を明確にするために、各素子による信号の遅延のうち、高速化を阻害するHi-Zによる遅延について図示し、他の遅延については図示を省略している。
【0047】
図5の例では、電源投入後の入力信号Iaの最初の立ち上がり遷移時において、Gノードは、Bノードの立ち上がり遷移から遅延時間ΔT1後に、Hi-Zから電圧V1に遷移している。また、このとき、Hノードは、Aノードの立ち下がり遷移から遅延時間ΔT1後に、電圧V1からHi-Zに遷移している。上述したように、G,Hノードの遷移によって、C,OUTノードが遷移し、CノードはLレベルとなり、出力端子OUTはHレベルとなる。
【0048】
この遅延時間ΔT1は、Hi-Zのレベルと電圧V1との電位差ΔV1に対応する時間である。Hi-Zのレベルは不定であるので、遅延時間ΔT1は入力信号Ia,Ibが変化する毎に変動する。この結果、パルス幅及びデューティー比が変動し、符号間干渉(ISI(Intersymbol interference)が大きくなる。
【0049】
なお、例えば、入力信号Ia,Ibがクロック信号の場合等において、クロック周期、電圧や温度等が一定である場合には、Hi-Zが所定の値に収束することがある。図5はこのような場合を示しており、Hi-Zは所定値に収束している。Hi-Zの収束後は特に問題はないが、初動時等においてHi-Zが不定の状態ではデューティー比のばらつきが大きくなる。
【0050】
例えば、I/Fにおいて、DDR(Double Data Rate)方式が採用されることがある。DDR方式では、クロックの立ち上がりと立ち下がりを利用してデータのサンプリングが行われる。従って、遅延時間ΔT1が一定でなくクロックのエッジタイミングが変動したり、デューティー比が50%でない場合には、データを確実に取得するための有効なサンプリングタイミングの幅が狭くなる。この結果、セットアップタイム及びホールドタイムを長くする必要があるとともにクロック周期を短くすることが困難となり、高速化することができない。
【0051】
図6は、図4のレベルシフト回路の課題を明確にするために、各素子による信号の遅延のうち、高速化を阻害する立ち上がり遷移と立ち下がり遷移との遅延について図示し、他の遅延については図示を省略している。
【0052】
レベルシフト回路は、伝達回路を構成するトランジスタM19,M20のオン,オフが切換ることで、入力信号Ia,Ibに対応した出力信号Oを発生する。従って、トランジスタM19,M20は、薄膜トランジスタにより構成して比較的急峻にオンに遷移する性能を有するように構成される。このため、C,OUTノードは、立ち下がり遷移の速度が比較的高速であり、逆に、立ち上がり遷移の速度は立ち下がり遷移に比べて遅い。
【0053】
この結果、図6に示すように、入力信号Ia,Ibがデューティー比50%の信号であっても、C,OUTノードに現れる信号は、Lレベル期間がHレベル期間に比べて長くなる。即ち、出力信号Oは、デューティー比が50%にはならない。
【0054】
このように、伝達回路を構成するトランジスタM19,M20を薄膜化してオンに遷移する性能を向上させるとともに、トレラント構造のためにトランジスタM19,M20にそれぞれ保護回路を構成するトランジスタM7,M10をスタック構成としたことから、出力信号の周期が一定でなくデューティー比も50%にならず、信号の高速伝送が困難であるという課題がある。
【0055】
(構成)
そこで、本実施の形態においては、中間ノード(G,Hノード)を一定値にする回路を付加する。これにより、安定した周期でデューティー比が略50%の出力信号Oを得ることを可能にしている。また、CノードとDノード(図4の比較例におけるOUTノード)に現れる信号を利用して出力信号Oを生成する。これにより、確実にデューティー比が50%の出力信号Oを得ることを可能にしている。
【0056】
図1のレベルシフト回路は、図4のレベルシフト回路にトランジスタM5,M8,M11~M18,M21,M22が追加されて構成されている。伝達回路20はLVMOSにより構成されている。伝達回路20は、スイッチ回路として機能するトランジスタM21,M22を付加した点が図4の伝達回路21と異なる。
【0057】
薄膜トランジスタであるPMOSトランジスタM21のドレインは、トランジスタM19のドレインとトランジスタM7のドレインとの接続点である中間ノード(Gノード)に接続される。トランジスタM21は、ゲートにBノードから信号Obが供給され、ソースには電源ラインから電源電圧VDDAが供給される。これにより、トランジスタM21は、トランジスタM19のオン時にオフになり、トランジスタM19のオフ時にオンになる。トランジスタM21がオンになると、GノードにはトランジスタM21を介して電源電圧VDDAが供給されて、Gノードは電圧VDDAとなる。なお、トランジスタM19のオン時には、トランジスタM21はオフであるので、GノードはLレベル側の電圧V1となる。
【0058】
また、薄膜トランジスタであるPMOSトランジスタM22のドレインは、トランジスタM20のドレインとトランジスタM10のドレインとの接続点である中間ノード(Hノード)に接続される。トランジスタM22は、ゲートにAノードから信号Oaが供給され、ソースには電源ラインから電源電圧VDDAが供給される。これにより、トランジスタM22は、トランジスタM20のオン時にオフになり、トランジスタM20のオフ時にオンになる。トランジスタM22がオンになると、HノードにはトランジスタM22を介して電源電圧VDDAが供給され、Hノードは電圧VDDAとなる。なお、トランジスタM20のオン時には、トランジスタM22はオフであるので、HノードはLレベル側の電圧V1となる。
【0059】
このように、本実施の形態においては、中間ノードは、固定電圧VDDAと電圧V1との間で遷移することになり、入力信号Ia,Ibの変化に拘わらず、中間ノードの遷移に要する遅延時間は常に一定である。従って、Cノード及びDノードにおいては、電源投入直後、初動時から、入力信号Ia,Ibに同期した信号を得ることができる。入力信号Ia,Ibのデューティー比が50%の場合には、Cノード,Dノードに現れる信号のデューティー比も50%になる。
【0060】
なお、図1の例では、トランジスタM21,M22のゲートには電源電圧VDDAを印加する例を示したが、トランジスタM19,M20の耐圧以下の適宜の電圧、例えばVDDA以下の電圧を印加するようになっていてもよい。
【0061】
レベルシフタ30は、厚膜トランジスタにより構成される。レベルシフタ30において、トランジスタM6のドレイン(Cノード)は、PMOSトランジスタM11とNMOSトランジスタM12のゲートにも接続される。トランジスタM11,M12は、インバータを構成する。即ち、トランジスタM11は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが印加され、ドレインはトランジスタM12のドレインに接続される。トランジスタM12のソースは基準電位点に接続される。トランジスタM11のドレインとトランジスタM12のドレインとの接続点(以下、Eノードという)には、Cノードに現れる信号の反転信号が現れる。
【0062】
本実施の形態においては、立ち上がり遷移に要する時間と立ち下がり遷移に要する時間の差に拘わらずデューティー比を確実に50%にするために、Eノードに現れる信号とDノードに現れる信号とを合成する。この合成のために、トランジスタM13,M14が採用される。トランジスタM13は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが供給され、ゲートにEノードに現れる信号が入力され、ドレインがトランジスタM14のドレインに接続される。トランジスタM14のソースは基準電位点に接続され、ゲートには、Dノードに現れる信号が入力される。
【0063】
トランジスタM13は、Eノードに現れる信号がLレベルになることにより、トランジスタM13のドレインとM14のドレインとの接続点(以下、Fノードという)をHレベルに遷移させる。一方、トランジスタM14は、Dノードに現れる信号がHレベルになることにより、FノードをLレベルに遷移させる。Eノードに現れる信号は、Cノードに現れる信号の反転信号である。従って、Fノードには、CノードがHレベルになるとHレベルに遷移し、DノードがHレベルになるとLレベルに遷移する信号が現れることになる。
【0064】
トランジスタM19がオフとなってCノードの立ち上がり遷移に要する遅延時間とトランジスタM20がオフとなってDノードの立ち上がり遷移に要する遅延時間とは、同一であると考えられる。従って、Fノードに現れる信号が、トランジスタM19のオフによりHレベルに遷移するまでの遅延時間とトランジスタM20のオフによりLレベルに遷移するまでの遅延時間とは同一である。従って、トランジスタM19,M20が、デューティー比50%の入力信号Ia,Ibに基づいてオン,オフする場合には、Fノードに現れる信号は、立ち上がりから立ち下がりまでの期間と立ち下がりから立ち上がりまでの期間が同一の期間となり、デューティー比が50%の信号になる。
【0065】
おな、トランジスタM13,M14は、温度、プロセス、電圧ばらつきにより同時にオフとなる期間が存在する場合がある。従って、Fノードの出力をそのまま出力信号Oとして用いると、トランジスタM13,M14が同時にオフとなる期間にはFノードが不定となって、貫通電流が流れる場合がある。そこで、本実施の形態においては、Fノードにラッチ回路を接続する。
【0066】
図1の例では、トランジスタM15,M16によるインバータとトランジスタM17,M18によるインバータによりラッチ回路が構成される。PMOSトランジスタM15は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが印加され、ゲートにFノードの信号が供給され、ドレインはNMOSトランジスタM16のドレインに接続される。トランジスタM16は、ソースが基準電位点に接続され、ゲートにFノードの信号が供給される。トランジスタM15のドレインとトランジスタM16のドレインとの接続点(出力端子OUT)には、Fノードの信号の反転信号が現れる。この信号が出力信号Oとなる。
【0067】
トランジスタM15のドレインとトランジスタM16のドレインとの接続点は、出力端子OUT及びトランジスタM17,M18のゲートに接続されており、トランジスタM17,M18のゲートには、Fノードの信号の反転信号が供給される。PMOSトランジスタM17は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが印加され、ドレインはNMOSトランジスタM18のドレインに接続される。トランジスタM18は、ソースが基準電位点に接続される。トランジスタM17のドレインとトランジスタM18のドレインとの接続点には、出力信号Oの反転信号が現れる。トランジスタM17のドレインとトランジスタM18のドレインとの接続点はFノードに接続されており、Fノードには出力信号Oの反転信号が与えられる。トランジスタM15~M18によるラッチ回路によって、Fノードの信号は反転されて出力信号Oとして出力端子OUTから出力される。
【0068】
なお、立ち上がりの遅延時間ΔT2が大き過ぎる場合には、Dノードに現れる信号のパルス幅が狭くなりすぎて消滅してしまうことがある。そこで、本実施の形態においては、立ち上がり遷移の遅延時間を抑制するために、トランジスタM5,M8が設けられている。PMOSトランジスタM5は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが供給され、ゲートに信号Obが印加され、ドレインはトランジスタM6のソースに接続される。PMOSトランジスタM8は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが供給され、ゲートに信号Oaが印加され、ドレインはトランジスタM9のソースに接続される。
【0069】
トランジスタM5は、信号ObがLレベルになるとオンとなり、トランジスタM8は、信号OaがLレベルになるとオンとなる。トランジスタM5がオンすることによって、CノードがLレベルからHレベルに遷移する時間を短縮することができる。また、トランジスタM8がオンすることによって、DノードがLレベルからHレベルに遷移する時間を短縮することができる。これにより、C,Dノードにおいて、Hレベル期間の幅が狭くなりすぎることを防止することができる。
【0070】
(動作)
次に、このように構成された実施の形態の動作について図7を参照して説明する。図7は実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。図7は入力信号Ia,Ib、A,B,C,G,H,OUTノードに現れる信号を示している。なお、説明を簡略化するために、入力信号Ia,Ibは、周期信号の例を示しているが、入力信号Ia,Ibとしては種々の信号を採用することができる。
【0071】
電源電圧VDDA,VDDBの投入後において、入力信号IaがLレベル(入力信号IbがHレベル)であり、信号OaはHレベル、信号ObはLレベルであるものとする。この状態では、トランジスタM20はオンであり、トランジスタM19はオフである。トランジスタM20がオンであるので、HノードはLレベル側の電圧V1となっている。
【0072】
トランジスタM20がオンの場合にはHノードはLレベル側の電圧V1であるので、DノードはLレベルである。従って、トランジスタM6はオンであり、トランジスタM5もオンであるので、CノードはHレベルである。トランジスタM9はオフであり、DノードはLレベルのままである。
【0073】
本実施の形態においては、トランジスタM19がオフの場合には、トランジスタM21はオンとなる。このため、この場合には、Gノードは、固定の電圧VDDAとなる。
【0074】
次に、入力信号IaがLレベルの状態から、入力信号IaがHレベル(入力信号IbがLレベル)の状態に遷移するものとする。入力信号Ia,Ibは、それそれインバータINV1,INV2により反転される。A,Bノードには、それぞれ入力信号Ia,Ibの反転信号である信号Oa,Obが現れる。即ち、Aノードは、HレベルからLレベルに遷移し、Bノードは、LレベルからHレベルに遷移する。そうすると、トランジスタM19はオフからオンに切換り、トランジスタM20はオンからオフに切換る。
【0075】
また、トランジスタM21はオンからオフに切換り、トランジスタM22はオフからオンに切換る。従って、Gノードは、固定の電圧VDDAから固定の電圧V1に変化する。また、Hノードは、固定の電圧V1から固定の電圧VDDAに変化する。以後、G,Hノードは、入力信号Ia,Ibが反転する毎に、電圧V1から電圧VDDAに、又は電圧VDDAから電圧V1に変化する。従って、入力信号Ia,Ibが反転した後、C,Dノードが反転するまでの遅延時間は、常に一定である。従って、トランジスタM19,M20に保護回路を構成するトランジスタM7,M10をスタック構成とした場合でも、トランジスタM7,M10の影響によって出力信号Oのデューティー比が変動することはない。
【0076】
これにより、本実施の形態によるレベルシフト回路は、高速伝送が可能となる。しかしながら、図1のレベルシフト回路においても、立ち下がり遷移時の遅延時間と立ち上がり遷移時の遅延時間とは異なり、デューティー比が多少影響を受けるものと考えられる。
【0077】
図7はこの影響による遅延時間を示している。図7に示すように、トランジスタM19のオンによるCノードの立ち下がり遷移及びトランジスタM20のオンによるDノードの立ち下がり遷移の遅延時間は比較的短い。これに対し、トランジスタM19のオフによるCノードの立ち上がり遷移及びトランジスタM20のオフによるDノードの立ち上がり遷移は比較的長い。図7ではこれらの遅延時間の差がΔT2であることを示している。この結果、図7に示すように、C,DノードのLレベル期間は、Hレベル期間よりも2ΔT2だけ長い。
【0078】
つまり、Dノードの立ち上がりは、Cノードの立ち下がりよりもΔT2だけ遅延しており、Cノードの立ち上がりは、Dノードの立ち下がりよりもΔT2だけ遅延している。従って、Dノードの立ち上がりからCノードの立ち上がりまでの期間と、Cノードの立ち上がりからDノードの立ち上がりまでの期間とは同一となり、入力信号Ia,Ibの周期の1/2の期間となる。
【0079】
トランジスタM11,M12によるインバータは、Cノードの信号を反転させる。これにより、Eノードには、Cノードの信号の反転信号が現れる。従って、Dノードの立ち上がりからEノードの立ち下がりまでの期間と、Eノードの立ち下がりからDノードの立ち上がりまでの期間とは同一となり、入力信号Ia,Ibの周期の1/2の期間となる。
【0080】
トランジスタM13は、Eノードの立ち下がりでオンとなって、FノードをHレベルにする。また、トランジスタM14は、Dノードの立ち上がりでオンとなってFノードをLレベルにする。この結果、図7に示すように、Fノードには、入力信号Ia,Ibと同じ周期でデューティー比が50%の信号が現れる。
【0081】
Fノードの信号は、トランジスタM15,M16によるインバータによって反転される。Fノードの信号の反転信号は、トランジスタM17,M18によるインバータによって反転されてFノードに与えられる。トランジスタM15,M18によって構成されたラッチ回路によって、Fノードの信号は反転された後、出力信号Oとして出力端子OUTから出力される。なお、出力信号Oは、0VからVDDBまで変化する信号である。
【0082】
図7に示すように、出力信号Oは、入力信号Ia,Ibと同一周期でデューティー比が50%の信号である。
【0083】
このように本実施の形態においては、スタック構成のMOSトランジスタによりトレラント機能を備えた場合でも、中間ノードの電位をスイッチ回路を用いて固定することにより出力ノードの遅延時間を安定させてデューティー比を改善したレベルシフト回路を得る。また、本実施の形態においては、差動出力を合成することでデューティー比を更に改善したレベルシフト回路を得ている。デューティー比の改善によって、本実施の形態における半導体集積回路は、信号の高速伝送を可能にする。
【0084】
(第2の実施の形態)
図8は本発明の第2の実施の形態を示す回路図である。図8において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
図4の比較例においては、G,Hノードに、トランジスタM19,M20の耐圧以上の電圧が印加されないように、バイアス電圧VBIASが設定された。本実施の形態においては、このバイアス電圧VBIASの設定を、G,Hノードの電圧が所望の電圧となるように自動化することを可能にしたものである。
【0086】
図8のレベルシフト回路は、トランジスタM92,M102,M202及び比較器38を追加すると共に、トランジスタM7,M10のゲートに比較器38の出力を印加するようにした点が図4のレベルシフト回路と異なる。
【0087】
PMOSトランジスタM92は、ソースに電源ラインから電源電圧VDDBが供給され、ゲートにはイネーブル信号ENBが印加され、ドレインはNMOSトランジスタM102のドレインに接続される。トランジスタM102は、ゲートに比較器38の出力が与えられ、ソースはNMOSトランジスタM202のドレインに接続される。トランジスタM202は、ゲートにイネーブル信号ENが印加され、ソースは基準電位点に接続される。
【0088】
トランジスタM92、M102及びM202は、それぞれ、トランジスタM6、M7及びM19と同様の構成であり、トランジスタM9、M10及びM20とも同様の構成である。イネーブル信号ENBとイネーブル信号ENとは相互に逆極性の信号である。従って、トランジスタM202,M92は同時にオンし、同時にオフする。
【0089】
トランジスタM102のソースとトランジスタM202のドレインとの接続点(以下、H2ノードという)は、比較器38の負極性入力端に接続される。比較器38の正極性入力端には電圧VBIAS2が与えられる。電圧VBIAS2は、トランジスタM19,M20,M202の耐圧を超えない電圧、例えば、電圧VDDA以下の電圧に設定される。比較器38は、2入力を比較し比較結果に応じた電圧レベルの出力をトランジスタM7,M10,M102のゲートに与える。比較器38は、H2ノードの電圧を電圧VBIAS2に一致させるように、出力電圧を変化させる。
【0090】
このように構成された実施の形態においては、トランジスタM7,M10のゲートに与えるバイアス電圧の設定動作が図4の比較例と異なる。電源投入後に、イネーブル信号EN,ENBによりトランジスタM202,M92をオンにする。H2ノードの電圧は比較器38の負極性入力端に印加される。比較器38は、H2ノードと正極性入力端に供給される電圧VBIAS2とを比較し、差分に応じた電圧をトランジスタM102のゲートに印加する。この結果、比較器38は、H2ノードの電圧を電圧VBIAS2に一致させるように動作する。
【0091】
即ち、H2ノードの電圧が電圧VBIAS2よりも低い場合には、比較器38の出力レベルが高くなり、トランジスタM102のドレイン・ソース間電圧Vdsが小さくなって、H2ノードの電圧を高くする。逆に、H2ノードの電圧が電圧VBIAS2よりも高くなると、比較器38の出力レベルが低くなり、トランジスタM102のドレイン・ソース間電圧Vdsが大きくなって、H2ノードの電圧を低くする。この結果、H2ノードの電圧は、電圧VBIAS2に一致する。
【0092】
トランジスタM92、M102及びM202は、トランジスタM6、M7及びM19と同様の構成であり、トランジスタM9、M10及びM20とも同様の構成である。トランジスタM7,M10は、比較器38からの電圧がゲートに印加されている。従って、トランジスタM19,M20のオン時におけるG,Hノードの電圧は、電圧VBIAS2に一致することになる。電圧VBIAS2をトランジスタM19,M20の耐圧を超えない電圧に設定することにより、トランジスタM7,M10の適正なバイアス電圧を自動的に決定することができる。
【0093】
このように本実施の形態においては、保護回路を構成するMOSトランジスタの最適なバイアス電圧を自動的に決定することができる。
【0094】
なお、本実施の形態おいては、中間ノードがHi-Zになる点及び立ち上がり遷移と立ち下がり遷移における遅延時間の相違によるデューティー比の劣化については対策しない回路について説明したが、第1の実施の形態と同様に、この点について対策してもよい。例えば、図1の回路に本実施の形態のトランジスタM92,M102,M202及び比較器38を追加して、トランジスタM7,M10のバイアス電圧を決定するようにしてもよい。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0096】
10…入力バッファ、20…伝達回路、30…レベルシフタ、38…比較器、、INV1,INV2…インバータ、M1~M22…トランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8