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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089015
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
B23K20/12 330
B23K20/12 344
B23K20/12 346
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201216
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
(72)【発明者】
【氏名】吉田 諒
(72)【発明者】
【氏名】小泉 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】及川 恵太
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA07
4E167AA13
4E167BG06
4E167BG12
4E167BG14
4E167BG20
4E167BG22
4E167BG25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接合不良となるのを防ぐことができる接合装置及び接合方法を提供する。
【解決手段】突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置された第一金属部材1と第二金属部材2とによって形成される接合を行う部位となる接合部の近傍の高さを測定して測定値を得る測定部23と、測定部23で得られた測定値に基づいて回転ツールFの高さ位置を設定する設定部と、高さ位置に基づいて接合部に沿って回転する回転ツールFを相対移動させる摩擦攪拌本体部22と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置された第一金属部材と第二金属部材とによって形成される接合を行う部位となる接合部の近傍の高さを測定して測定値を得る測定部と、
前記測定部で得られた前記測定値に基づいて回転ツールの高さ位置を設定する設定部と、
前記高さ位置に基づいて前記接合部に沿って回転する前記回転ツールを相対移動させる摩擦攪拌本体部と、を備える、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項2】
前記第一金属部材を架台に固定する固定部をさらに備え、
前記測定部は、前記架台に固定された状態の前記第一金属部材を測定して前記測定値を得る、
請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定する固定部をさらに備え、
前記固定部は、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置して前記接合部を形成した状態の前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定して、
前記測定部は、前記架台に固定された状態の前記第一金属部材及び第二金属部材の少なくとも一方を測定して前記測定値を得る、
請求項1に記載の接合装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記回転ツールを保持する部位の近傍に設けられている、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記測定値を前記高さ位置に設定する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項6】
前記回転ツールは、前記摩擦攪拌本体部の回転軸に連結される連結部と、前記連結部から垂下する攪拌ピンとを有し、
前記摩擦攪拌本体部は、前記連結部を前記接合部から離間させた状態で、前記攪拌ピンのみを前記接合部に挿入して、前記回転ツールを相対移動させる、
請求項5に記載の接合装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記測定値のうち最低値を前記高さ位置に設定する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項8】
前記回転ツールは、前記摩擦攪拌本体部の回転軸に連結されるショルダ部と、前記ショルダ部から垂下する攪拌ピンとを有し、
前記摩擦攪拌本体部は、前記ショルダ部と前記攪拌ピンとを前記接合部に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させる、
請求項7に記載の接合装置。
【請求項9】
前記設定部は、前記測定値の平均値を前記高さ位置に設定する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項10】
前記回転ツールは、前記摩擦攪拌本体部の回転軸に連結される連結部と、前記連結部から垂下する攪拌ピンとを有し、
前記摩擦攪拌本体部は、前記連結部を前記接合部から離間させた状態で、前記攪拌ピンのみを前記接合部に挿入して、前記回転ツールを相対移動させる、
請求項9に記載の接合装置。
【請求項11】
前記測定値が、予め設定された許容範囲に含まれない場合、前記第一金属部材及び前記第二金属部材を再セットすることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項12】
前記測定値が、予め設定された許容範囲に含まれない場合、当該第一金属部材及び前記第二金属部材を許容範囲外品であると特定することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項13】
突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置された第一金属部材と第二金属部材とによって形成される接合を行う部位となる接合部の近傍の高さを測定して測定値を得る測定工程と、
前記測定工程で得られた前記測定値に基づいて回転ツールの高さ位置を設定する設定工程と、
前記設定工程で設定した前記高さ位置に基づいて前記接合部に沿って回転する前記回転ツールを相対移動させる摩擦攪拌工程と、を備える、
ことを特徴とする接合方法。
【請求項14】
前記第一金属部材を架台に固定する固定工程をさらに備え、
前記測定工程では、前記固定工程において前記架台に固定された状態の前記第一金属部材を測定して前記測定値を得る、
請求項13に記載の接合方法。
【請求項15】
前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定する固定工程をさらに備え、
前記固定工程では、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置して前記接合部を形成した状態の前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定して、
前記測定工程では、前記固定工程において前記架台に固定された状態の前記第一金属部材及び第二金属部材の少なくとも一方を測定して前記測定値を得る、
請求項13に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、第一金属部材と第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成し、当該突合せ部に沿って回転ツールを移動させて摩擦攪拌接合を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-65164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第一金属部材及び第二金属部材の高さ位置は、各金属部材の反り、ねじれなどの変形、寸法公差等によりばらつきがある。また、架台の治具と第一金属部材及び第二金属部材との間に異物が挟まっていたり、治具の押さえ不足、押さえ不良が発生したりするおそれもある。第一金属部材及び第二金属部材の高さ位置が許容範囲を超えると、回転ツールをどのように制御しても接合不良となるおそれが高くなる。
【0005】
このような観点から、本発明は、接合不良となるのを防ぐことができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置された第一金属部材と第二金属部材とによって形成される接合を行う部位となる接合部の近傍の高さを測定して測定値を得る測定部と、前記測定部で得られた前記測定値に基づいて回転ツールの高さ位置を設定する設定部と、前記高さ位置に基づいて前記接合部に沿って回転する前記回転ツールを相対移動させる摩擦攪拌本体部と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置された第一金属部材と第二金属部材とによって形成される接合を行う部位となる接合部の近傍の高さを測定して測定値を得る測定工程と、前記測定工程で得られた前記測定値に基づいて回転ツールの高さ位置を設定する設定工程と、前記設定工程で設定した前記高さ位置に基づいて前記接合部に沿って回転する前記回転ツールを相対移動させる摩擦攪拌工程と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
また、前記第一金属部材を架台に固定する固定部をさらに含み、前記測定部は、前記架台に固定された状態の前記第一金属部材を測定して前記測定値を得ることが好ましい。
また、前記第一金属部材を架台に固定する固定工程をさらに備え、前記測定工程では、前記固定工程において前記架台に固定された状態の前記第一金属部材を測定して前記測定値を得ることが好ましい。
【0009】
また、前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定する固定部をさらに含み、前記固定部は、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置して前記接合部を形成した状態の前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定して、前記測定部は、前記架台に固定された状態の前記第一金属部材及び第二金属部材の少なくとも一方を測定して前記測定値を得ることが好ましい。
また、前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定する固定工程をさらに備え、前記固定工程では、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせ又は重ね合わせて接合を行う位置関係に配置して前記接合部を形成した状態の前記第一金属部材及び前記第二金属部材を架台に固定して、前記測定工程では、前記固定工程において前記架台に固定された状態の前記第一金属部材及び第二金属部材の少なくとも一方を測定して前記測定値を得ることが好ましい。
【0010】
また、前記測定部は、前記回転ツールを保持する部位の近傍に設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記設定部は、前記測定値を前記高さ位置に設定することが好ましい。
【0012】
また、前記回転ツールは、前記摩擦攪拌本体部の回転軸に連結される連結部と、前記連結部から垂下する攪拌ピンとを有し、前記摩擦攪拌本体部は、前記連結部を前記接合部から離間させた状態で前記回転ツールを相対移動させることが好ましい。
【0013】
また、前記設定部は、前記測定値のうち最低値を前記高さ位置に設定することが好ましい。
【0014】
また、前記回転ツールは、前記摩擦攪拌本体部の回転軸に連結されるショルダ部と、前記ショルダ部から垂下する攪拌ピンとを有し、前記摩擦攪拌本体部は、前記ショルダ部と前記攪拌ピンとを前記接合部に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させることが好ましい。
【0015】
また、前記設定部は、前記測定値の平均値を前記高さ位置に設定することが好ましい。
【0016】
また、前記回転ツールは、前記摩擦攪拌本体部の回転軸に連結される連結部と、前記連結部から垂下する攪拌ピンとを有し、前記摩擦攪拌本体部は、前記連結部を前記接合部から離間させた状態で前記回転ツールを相対移動させることが好ましい。
【0017】
また、前記測定値が、予め設定された許容範囲に含まれない場合、前記第一金属部材及び前記第二金属部材を再セットすることが好ましい。
【0018】
また、前記測定値が、予め設定された許容範囲に含まれない場合、当該第一金属部材及び前記第二金属部材を許容範囲外品であると特定することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る接合装置及び接合方法によれば、接合不良となるのを防ぎやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る第一金属部材、第二金属部材及び摩擦攪拌本体部を示す斜視図である。
図2】本実施形態の接合装置を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る測定値及び高さ位置の一例を示す表である。
図4】本実施形態の第一配置工程を示す断面図である。
図5】本実施形態の第二配置工程を示す断面図である。
図6】本実施形態の摩擦攪拌工程を示す斜視図である。
図7】本実施形態の摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図8】重ね合されて形成された接合部を示す断面図である。
図9】本実施形態の第一変形例に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図10】本実施形態の第二変形例に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図11】本実施形態の第三変形例に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態及び変形例における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。
【0022】
[1.実施形態]
[1-1.接合装置]
図1に示すように、本発明の実施形態に係る接合装置100は、第一金属部材1と第二金属部材2とを回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合する装置である。
【0023】
第一金属部材1は、中央に開口部10が形成されており、開口部10の周縁に沿って段差部11が形成されている。段差部11は、段差底面11aと、段差底面11aから立ち上がる段差側面11bとを有する。開口部10は平面視略矩形を呈する。開口部10の四隅は丸面取り加工が施されている。第一金属部材1は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金等、摩擦攪拌接合可能な金属で形成されている。本実施形態では、第一金属部材1は、ダイキャストにより成形されたアルミニウム合金鋳造材で形成されている。
【0024】
第二金属部材2は、平面視略矩形の板状を呈する。第二金属部材2は、段差部11に概ね隙間無く配置される形状になっている。第二金属部材2の板厚は、段差側面11bの高さ寸法と同一か、それよりも大きくなっている。第二金属部材2の板厚寸法を段差側面11bよりも大きく設定することで、接合部J1(図5参照)の金属不足を防ぐことができる。第二金属部材2は、摩擦攪拌接合可能な金属であればよいが、本実施形態ではアルミニウム合金展伸材で形成されている。
【0025】
接合装置100は、図1及び図2に示すように、本実施形態ではマシニングセンタであって、固定部21a,21bと、摩擦攪拌本体部22と、測定部23と、制御装置24(図2参照)と、を備えている。固定部21aは、第一金属部材1を架台Kに固定する部材(治具)である。固定部21aは、第一金属部材1の周囲を複数箇所で拘束できるように架台Kに複数個設置されている。固定部21b(図2,6参照)は、第二金属部材2を架台Kに固定する部材(治具)である。固定部21bは、第二金属部材2の周囲を複数箇所で拘束できるように架台Kに複数個設置されている。固定部21a,21bは、制御装置24と電気的に接続されており、制御装置24からの制御信号に基づいて各金属部材を固定又は解除する。なお、以降、固定部21aと固定部21bとを特に区別しない場合は、固定部21と総称して説明する。
【0026】
摩擦攪拌本体部22は、回転ツールFが取り付けられる回転軸が内装された部位である。摩擦攪拌本体部22は、架台Kに対して相対移動可能になっている。摩擦攪拌本体部22は、後記する設定部で設定された回転ツールFのX位置(横位置)、Y位置(縦位置)及びZ位置(高さ位置)に基づいて、回転ツールFを相対移動させる。
【0027】
測定部23は、摩擦攪拌本体部22に設けられている。つまり、測定部23は、回転ツールFを保持する部位の近傍に設けられている。測定部23は、例えば、レーザー変位計等の高さ測定器具を用いることができる。
【0028】
制御装置24は、演算部25(CPU(Central Processing Unit))と、キーボード、タッチパネル等の入力部27と、モニター、ディスプレイ等の表示部28と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)等の記憶部29とを備えている。
【0029】
演算部25は、機能要素として、設定部26を有している。設定部26は、回転ツールFを移動させるための指示位置(ティーチング位置)を設定する部位である。指示位置は、回転ツールFが通過する軌跡を座標位置によって指定している。つまり、指示位置は、回転ツールFのX位置(横位置)、Y位置(縦位置)及びZ位置(高さ位置)をX,Y,Z座標軸で設定することができるようになっている。
【0030】
設定部26は、本実施形態では、指示位置のうちX位置及びY位置は予め設定されており、測定部23で得られた測定値及び設定プログラムに基づいてZ位置(高さ位置)が設定されるように構成されている。本実施形態の設定プログラムでは、図3に示すように、測定部23で得られた測定値を回転ツールFのZ位置(高さ位置)に設定している。なお、測定値を回転ツールFの高さ位置に設定するとは、測定値と高さ位置とを一対一の対応関係で設定することをいう。例えば、本実施形態の様に、ある位置の測定値に対して変更を加えることなく、測定値をそのまま当該位置の高さ位置として設定してもよい。また、例えば、ある位置の測定値に対して所定の数値分シフトさせる計算を施して、当該位置の高さ位置として設定してもよい。より具体的に例えば、得られる測定値と回転ツールFの高さ位置との関係に合わせて、ある位置の測定値に対して所望の幅の数値による加算または減算を施して、その値を当該位置の高さ位置として設定してもよい。
【0031】
例えば、演算部25がROMから設定プログラムを読み込んで、RAMに展開して実行することで、設定部26として機能させることができる。また、設定プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read only memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read only memory)等の光ディスク;USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDメモリ等のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録されて配布されてもよく、インターネット、イントラネット等の通信ネットワークを通じて配布されてもよい。制御装置24は、記録媒体から設定プログラムを読みだしたり、通信ネットワークを介して設定プログラムを受信したりすることで、設定プログラムを取得して実行することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、接合装置100としてマシニングセンタを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、摩擦攪拌本体部22をロボットアームの先端に取り付けてもよい。
【0033】
[1-2.接合方法]
本実施形態に係る接合方法では、接合装置100を用いて、第一配置工程と、第一固定工程と、測定工程と、第二配置工程と、第二固定工程と、設定工程と、摩擦攪拌工程とを行う。
第一配置工程は、第一金属部材1を架台K上に配置する工程である。
【0034】
第一固定工程は、図4に示すように、第一金属部材1を架台Kの表面Kaにクランプする工程である。例えば、架台Kに設けられた複数の固定部21aが、架台Kに対して第一金属部材1を移動不能に拘束する。
【0035】
測定工程は、図1に示すように、測定部23で第一金属部材1の表面1bの高さを計測する工程である。測定工程では、基準点(例えば、架台Kの表面Ka)から測定点までの高さを計測する。測定工程では、第一金属部材1と第二金属部材2とによって形成される接合を行う部位となる接合部J1(図5参照)の近傍の高さを測定する。具体的には、図1に示すように、第一金属部材1の表面1bにおいて、開口縁1eの外側の周りに所定の間隔で設定した測定点P1~P8の高さを測定する。測定点は、本実施形態では8箇所設定したが、数を制限するものではなく、単数又は複数箇所で設定すればよい。
【0036】
測定工程では、回転ツールFと接合部J1とは離間させつつ、摩擦攪拌本体部22(測定部23)を開口縁1eに沿って一周させて、測定点P1~P8の高さを連続的に計測する。測定された測定値は、制御装置24の記憶部29に各測定点と関連して記憶される。
【0037】
第二配置工程は、図5に示すように、第一金属部材1と第二金属部材2とを、接合を行う位置関係に配置する工程である。第一金属部材1と第二金属部材とは、互いに突き合わせて接合を行う位置関係に配置してもよく、重ね合わせて接合を行う位置関係に配置してもよく、突き合わせるとともに重ね合わせて接合を行う位置関係に配置してもよい。本実施形態では、第一金属部材1の段差側面11bと第二金属部材2の側面2aとが突き合わされるとともに、段差底面11aと第二金属部材2の裏面2cとが重ね合されて、接合部J1が形成されている。すなわち、第二配置工程では、第一金属部材1の段差部11に、第二金属部材2を配置することで、第一金属部材1と第二金属部材2とを突き合わせた接合部(突合せ部)J1を形成している。接合部J1は、後記する摩擦攪拌工程において回転ツールFで摩擦攪拌接合される部位である。
【0038】
第二固定工程は、図6に示すように、第二金属部材2を架台Kの表面Kaにクランプする工程である。例えば、架台Kに設けられた複数の固定部21bが、架台Kに対して第二金属部材2を移動不能に拘束する。
【0039】
設定工程は、図3に示すように、測定工程で得られた測定値及び設定プログラムに基づいて回転ツールFの高さ位置を設定する工程である。本実施形態では、前記したように回転ツールFのX位置及びY位置は予め設定されている。Z位置(高さ位置)は、図3に示すように、得られた測定値をそのまま高さ位置に設定している。
【0040】
摩擦攪拌工程は、図6及び図7に示すように、設定工程で設定された設定値に基づいて接合部J1に沿って回転ツールFを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う工程である。回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とを備えている。連結部F1は摩擦攪拌本体部22に内装された回転軸に取り付ける部位であり、円柱状を呈する。攪拌ピンF2は、連結部F1の先端面(下端面)から先端側へ突出(垂下)しており、先細りになっている。攪拌ピンF2の先端には回転中心軸線Cに対して垂直な平坦面F3が形成されている。なお、連結部F1は、円柱形に限定されるものではなく、先端側に向かうに連れて縮径する円錐台状であってもよい。この場合、連結部F1の先端部の径と、攪拌ピンF2の基端部の径は同じである。摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌本体部22は、連結部F1を接合部J1から離間させた状態で、回転する攪拌ピンF2のみを接合部に挿入して、回転ツールFを相対移動させる。
【0041】
図7に示すように、回転の中心となる攪拌ピンF2の回転中心軸線Cにおいて、平坦面F3から所定の高さで攪拌ピン基準点F4を設定している。本実施形態では、例えば、挿入深さを2.5mmに設定しているため、当該所定の高さを2.5mmに設定している。挿入深さとは、第一金属部材1の表面1bから攪拌ピンF2の平坦面F3までの距離である。なお、平坦面F3から攪拌ピン基準点F4までの距離は挿入深さや測定工程で得られた測定値等に基づいて適宜設定することができる。
【0042】
攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。螺旋溝は、回転ツールFを右回転させる場合は基端側から先端側に向けて左回りに形成し、右回転させる場合は基端側から先端側に向けて左回りに形成する。このようにすることで、塑性流動材が攪拌ピンF2の先端側に導かれるため、バリの発生を抑制することができる。
【0043】
摩擦攪拌工程では、図6に示すように、接合部J1上に設定した開始位置SP1に攪拌ピンF2を挿入し、接合部J1に沿って回転させた回転ツールFを第二金属部材2に対して時計回りに相対移動させる。固定部21bは、制御装置24からの制御信号に基づいて、回転ツールFが通過する直前に起立し、通過したら再度第二金属部材2を固定するように構成されている。これにより、固定部21bと回転ツールFとの干渉を防ぐことができる。回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域Wが形成される。このとき、回転ツールFの攪拌ピン基準点F4の高さ位置が、設定工程で設定した設定値(X位置、Y位置、Z位置)となるように、回転ツールFの位置を制御する。特に、本実施形態では、Z方向が図3に示す高さ位置となるように、回転ツールFの位置を上下動させる。つまり、接合部J1のうち測定点P1に対応する位置では、架台Kの表面Kaから高さ方向に4.8mmの位置に攪拌ピン基準点F4が位置するように制御する。
【0044】
また、接合部J1のうち測定点P2に対応する位置では、架台Kの表面Kaから高さ方向に5.0mmの位置に攪拌ピン基準点F4が位置するように制御する。このとき、測定点P1から測定点P2に至るまでに、攪拌ピン基準点F4の高さ位置が0.2mm徐々に上昇するように回転ツールFの高さ位置を制御する。
【0045】
また、接合部J1のうち測定点P3に対応する位置では、架台Kの表面Kaから高さ方向に5.4mmの位置に攪拌ピン基準点F4が位置するように制御する。このとき、測定点P2から測定点P3に至るまでに、攪拌ピン基準点F4の高さ位置が0.4mm徐々に上昇するように回転ツールFの高さ位置を制御する。
【0046】
また、接合部J1のうち測定点P4に対応する位置では、架台Kの表面Kaから高さ方向に5.7mmの位置に攪拌ピン基準点F4が位置するように制御する。このとき、測定点P3から測定点P4に至るまでに、攪拌ピン基準点F5の高さ位置が0.3mm徐々に上昇するように回転ツールFの高さ位置を制御する。
【0047】
また、接合部J1のうち測定点P5に対応する位置では、架台Kの表面Kaから高さ方向に5.5mmの位置に攪拌ピン基準点F4が位置するように制御する。このとき、測定点P4から測定点P5に至るまでに、攪拌ピン基準点F4の高さ位置が0.2mm徐々に下降するように回転ツールFの高さ位置を制御する。
【0048】
同じような手順で回転ツールFの高さ位置を昇降させつつ、接合部J1に設定した終了位置EP1に回転ツールFが達したら、接合部J1から回転ツールFを離脱させる。摩擦攪拌工程では、このように塑性化領域Wの始端と終端とはオーバーラップさせることが好ましい。これにより水密性及び気密性を高めることができる。以上の工程により、第一金属部材1と第二金属部材2とを摩擦攪拌接合することができる。
【0049】
[1-3.作用・効果]
以上説明した接合方法及び接合装置によれば、セットされた状態の接合前の接合部J1の近傍の高さを測定し、その測定結果に基づいて回転ツールFの高さ位置(挿入深さ)を制御する。これにより、セット状態の接合部J1の高さにあわせて回転ツールFの高さ位置を変化させることができ、疑似的な荷重制御を行うことができる。したがって、接合部J1の高さが変化した場合であっても、回転ツールFの挿入深さを一定に保つことができ、接合不良となるのを防ぎやすくなる。
【0050】
特に、本実施形態では、測定値をそのまま回転ツールFの高さ位置として設定し、当該設定値に基づいて回転ツールFの高さ位置を昇降させる。これにより、測定点P1~P8の高さが同一でなくても、塑性化領域Wの深さ(攪拌ピンF2の挿入深さ)を一定にすることができる。塑性化領域Wの深さを一定にすることで、接合部J1の接合強度を周方向に亘って概ね一定にすることができる。また、測定値をそのまま高さ位置に設定すればよいため、高さ位置(設定値)の設定を容易に行うことができる。
【0051】
また、回転ツールFの種類(形状)はどのようなものであってもよいが、本接合方法では、連結部F1と接合部J1とを離間させた状態で、攪拌ピンF2のみを接合部J1に挿入して、摩擦攪拌接合を行う。これにより、回転ツールのショルダ部を押し込む場合に比べて塑性化領域の幅を小さくすることができるとともに、回転ツールの押圧力を低減することができる。また、回転ツールのショルダ部を押し込む場合に比べて摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。また、摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で、突合せ部の深い位置を接合することができる。さらに、本実施形態では、攪拌ピンF2のみが接合部J1と接触することになるため、接合部J1の高さが多少変化した場合であっても、攪拌ピンF2の接触する深さが多少変化するにとどまり、回転ツールのショルダ部を押し込む場合に比べて、接合部J1の高さの変化に対する裕度が比較的に高い。このため、本接合方法によれば、測定値をそのまま回転ツールFの高さ位置として設定し、当該設定値に基づいて回転ツールFの高さ位置を昇降させて接合を行うにあたり、第一金属部材1もしくは第二金属部材2の位置が測定工程での位置から変位したり、または攪拌ピンF2の位置が設定工程で設定した高さ位置から変位したりといった場合であっても、接合不良が生じにくい。
【0052】
また、本接合装置及び本接合方法では、第一金属部材1を架台Kに固定する固定部21aを備え、架台Kに固定された状態の第一金属部材1を測定する測定工程を行う。これにより、高さ位置の測定が行われる第一金属部材1が接合時に近い状態で高さを正確に測定することができるため、接合不良をより防ぎやすくなる。
【0053】
仮に、回転ツールFから離れた位置に測定部23が設けられていると、測定位置と接合位置との間で位置のずれが生じ、高さの測定のもずれが生じやすくなる。しかし、本実施形態によれば、回転ツールFが保持されている部位の近傍に測定部23が設けられることで、接合状態に近い状態で高さ位置を測定することができる。つまり、本実施形態では、摩擦攪拌本体部22の進行方向前部に測定部23が設けられているため、接合状態に近い状態で高さ位置を測定することができる。
【0054】
[1-4.その他]
ここで、例えば、上述した実施形態では、第一配置工程、第一固定工程、測定工程、第二配置工程、及び第二固定工程を、この順で行い、第一金属部材1のみを架台Kに固定してから測定工程を行う場合を例示して説明した。第一配置工程及び第一固定工程と、第二配置工程及び第二固定工程を行い、第一金属部材1及び第二金属部材2の両方を架台Kに固定した後に、測定工程を行ってもよい。この際、測定工程では、架台Kに固定された状態の第一金属部材1及び第二金属部材2の少なくとも一方において接合部J1近傍の表面の高さを測定すればよい。このようにしても、接合時に近い状態で高さを正確に測定することができるため、接合不良をより防ぎやすくなる。
【0055】
上述した実施形態では、接合部J1の近傍として、第一金属部材1の表面1bにおいて、開口縁1eの外側の周りに設定した測定点P1~P8の高さを測定する場合を例示して説明した。測定点の位置は、第一金属部材1及び第二金属部材2の配置と固定の順序、第一金属部材1と第二金属部材2との配置関係、第一金属部材1と第二金属部材2との接合部J1の位置にあわせて適宜設定すればよい。特には、測定点の位置は、接合への影響が大きい場所に設定することが好ましい。また、配置工程、固定工程、測定工程の順序は、測定点の位置に合わせて適宜変更してもよい。
【0056】
例えば、上述した実施形態のように、第一金属部材1の段差側面11bと第二金属部材2の側面2aとが突き合わされるとともに、段差底面11aと第二金属部材2の裏面2cとが重ね合されて、第一金属部材1の段差側面11bと第二金属部材2の側面2aとが突き合わされた部位に接合部J1が形成される場合について考える。この場合には、第二金属部材2の表面2bにおける周縁部2d(図5参照)を測定点としてもよい。なお、第二金属部材2の表面2bにおける周縁部2dを測定点とする場合には、第一配置工程、第一固定工程、第二配置工程、第二固定工程、及び測定工程を、この順で行い、第一金属部材1及び第二金属部材2を架台Kに固定してから測定工程を行うことが好ましい。すなわち、高さ位置の測定を行う箇所を固定してから測定工程を行うことが好ましい。
【0057】
また、図8に示すように、第一金属部材1の段差側面11bと第二金属部材2の側面2aとが突き合わされるとともに、段差底面11aと第二金属部材2の裏面2cとが重ね合されて、段差底面11aと第二金属部材2の裏面2cとが重ね合された部位に接合部J2が形成される場合には、接合部J2の近傍となる、第一金属部材1の段差底面11aを測定点Pとすればよい。このときは、第一配置工程、第一固定工程、測定工程、第二配置工程、及び第二固定工程を、この順で行い、第一金属部材1のみを架台Kに固定してから測定工程を行う必要がある。
【0058】
[2.第一変形例]
次に、前記した実施形態の第一変形例について説明する。第一変形例では、図9に示すように、回転ツールGを用いる点で前記した実施形態と相違する。第一変形例では、前記した実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0059】
回転ツールGはショルダ部G1と、攪拌ピンG2とを有する。
ショルダ部G1は基端部が摩擦攪拌本体部22の回転軸に取り付けられる部位であって、底面G1aが被接合部材に当接した状態で被接合部材を押圧する部位である。ショルダ部G1は、攪拌ピンG2の基端部から拡径する円柱状に形成されており、平面状且つリング状の先端面を備えている。つまり、ショルダ部G1の先端面から攪拌ピンG2の先端部が先端側に向かって突出している。言い換えれば、攪拌ピンG2がショルダ部G1の底面G1aから垂下している。ショルダ部G1の形状は、円柱状に限定されるものではなく、錐台状ですり鉢状の先端面を備えていてもよい。
【0060】
攪拌ピンG2は、被接合部材に回転しつつ挿入されて被接合部材に対する摩擦攪拌を行う部位である。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の底面G1aから垂下し、円錐台形状を呈する。攪拌ピンG2の先端部は、先端に向かうにつれて先細りになっている。攪拌ピンG2の先端部の先端は、軸方向に直交する平坦面状の平坦面G3となっている。攪拌ピンG2の基端部には、ショルダ部G1が一体形成されている。攪拌ピンG2の外周面には、螺旋溝が刻設されている。螺旋溝は、回転ツールGを右回転させる場合は基端側から先端側に向けて左回りに形成し、右回転させる場合は基端側から先端側に向けて左回りに形成する。このようにすることで、塑性流動材が攪拌ピンG2の先端側に導かれるため、バリの発生を抑制しやすくなる。
【0061】
本接合装置では、摩擦攪拌本体部22が、ショルダ部G1と攪拌ピンG2とを接合部J1に接触させた状態で回転ツールGを相対移動させる。
図9に示すように、回転の中心となる回転中心軸線Cにおいて、攪拌ピンG2の平坦面G3から所定の高さで攪拌ピン基準点G4を設定している。本実施形態では、例えば、挿入深さを2.5mmに設定しているため、当該所定の高さを2.5mmに設定している。挿入深さとは、第一金属部材1の表面1bから攪拌ピンG2の平坦面G3までの距離である。なお、平坦面G3から攪拌ピン基準点G4までの距離は挿入深さや測定工程で得られた測定値等に基づいて適宜設定することができる。
【0062】
摩擦攪拌工程では、前記した実施形態と同じ要領で接合部J1に沿って摩擦攪拌接合を行う。このとき、回転ツールGの攪拌ピン基準点G4の高さ位置が、設定工程で設定した設定値(X位置、Y位置、Z位置)となるように、回転ツールGの位置を制御する。特に、本実施形態では、Z方向が図3に示す高さ位置となるように、回転ツールGの位置を上下動させる。つまり、接合部J1のうち測定点P1に対応する位置では、架台Kの表面Kaから高さ方向に4.8mmの位置に攪拌ピン基準点G4が位置するように接合部J1に沿って回転ツールGを相対移動させる。このとき、ショルダ部G1の底面G1aは第一金属部材1及び第二金属部材2の表面1b,2bと接触する。
【0063】
このように、摩擦攪拌工程では、ショルダ部G1及び攪拌ピンG2を備えた回転ツールGを用いてもよい。回転ツールGによれば、ショルダ部G1の底面G1aで塑性流動材を押さえることができるため、バリの発生を抑制しやすくなる。
【0064】
[3.第二変形例]
次に、前記した実施形態の第二変形例について説明する。第二変形例では、図10に示すように、第一金属部材1と第二金属部材2とを重ね合わせる点で前記した実施形態と相違する。第二変形例では、前記した実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0065】
第二変形例に係る接合方法では、第一配置工程と、第一固定工程と、測定工程と、第二配置工程と、第二固定工程と、設定工程と、摩擦攪拌工程とを行う。図10に示すように、第二変形例に係る第二配置工程では、第一金属部材1の表面1bと第二金属部材2の裏面2cとを重ね合わされて接合部(重ね合わせ部)J3が形成される。
【0066】
測定工程では、測定部23を、接合部J3に対応する位置に沿って走行させて、第二金属部材を配置する前の第一金属部材1の表面1bの高さを測定する。測定する位置は、接合部J3の近傍であることが好ましい。よって、本変形例では、第一金属部材1の表面1bのうち、摩擦攪拌工程で回転ツールFが走行する走行予定位置S1又はその近傍の高さを測定することが好ましい。
【0067】
第二固定工程では、重ね合された第一金属部材1及び第二金属部材2を、固定部21を介して架台Kに固定する。
【0068】
設定工程では、測定工程で得られた測定値に基づいて回転ツールFの高さ位置を設定する。本第二変形例では、測定値をそのまま回転ツールFの高さ位置に設定する。
【0069】
摩擦攪拌工程では、例えば、回転ツールFを用いて第二金属部材2の表面2bから攪拌ピンF2を第二金属部材2の表面2bに垂直に挿入し、接合部(重ね合わせ部)J3を接合する。摩擦攪拌工程における回転ツールFの高さ位置については、前記した実施形態と同じ要領で制御する。回転ツールFの攪拌ピンF2の挿入深さは適宜設定すればよいが、第一金属部材1の表面1bに達するように設定することが好ましい。なお、第二変形例では、回転ツールFに代えて、回転ツールGを用いて接合部J3を摩擦攪拌接合してもよい。
【0070】
上述の通り、本接合装置及び本接合方法では、接合部となる第一金属部材1と第二金属部材2との重ね合わせ部の位置に対応する、第一金属部材1の表面1bの高さを測定する。このように、回転ツールが挿入される目標位置であり、また接合状態に影響を与える部位の高さを測定し、その測定結果に基づいて回転ツールFの高さ位置(挿入深さ)を制御する。これにより、第一金属部材1の表面1bに達するように回転ツールFが挿入されて、重ね合わせ部が接合されることで、接合不良となるのを防ぎやすくなる。
【0071】
[4.第三変形例]
次に、前記した実施形態の第三変形例について説明する。第三変形例では、図11に示すように、第一金属部材1と第二金属部材2とを重ね合わせる点で前記した実施形態と相違する。第三変形例では、前記した実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0072】
第三変形例に係る接合方法では、第一配置工程と、第二配置工程と、固定工程と、測定工程と、設定工程と、摩擦攪拌工程とを行う。図11に示すように、第三変形例に係る第二配置工程では、第一金属部材1の表面1bと第二金属部材2の側面2aとで接合部(入隅部)J4が形成される。
【0073】
固定工程では、図11に示すように、重ね合された第一金属部材1及び第二金属部材2を固定部21を介して架台Kに固定する。
【0074】
測定工程では、測定部23を接合部J4に沿って走行させて第一金属部材1の表面1bの高さを測定する。測定する位置は、接合部J4の近傍であることが好ましい。よって、本変形例では、摩擦攪拌工程で回転ツールFが走行する、第一金属部材1の表面1bと第二金属部材2の側面2aとで形成される入隅部に位置する走行予定位置S2又はその近傍の高さを測定することが好ましい。
【0075】
設定工程では、測定工程で得られた測定値に基づいて回転ツールFの高さ位置を設定する。本第二変形例では、測定値をそのまま回転ツールFの高さ位置に設定する。
【0076】
摩擦攪拌工程では、図11に示すように、回転ツールFを用いて接合部(入隅部)J4から斜めに回転ツールFを挿入して、接合部J4を摩擦攪拌接合する。摩擦攪拌工程における回転ツールFの高さ位置については、前記した実施形態と同じ要領で制御する。
【0077】
上述の通り、本接合装置及び本接合方法では、接合部J4となる第一金属部材1と第二金属部材2との入隅部の位置に対応する、第一金属部材1の表面1bの高さを測定する。このように、回転ツールFが挿入される目標位置であり、また接合状態に影響を与える部位の高さを測定し、その測定結果に基づいて回転ツールFの高さ位置(挿入深さ)を制御する。これにより、第一金属部材1と第二金属部材2との入隅部に達するように回転ツールFが挿入されて、入隅部が接合されることで、接合不良となるのを防ぎやすくなる。
【0078】
[5.第四変形例]
次に、本実施形態の第四変形例について説明する。第四変形例では、設定工程が前記した実施形態と相違する。第四変形例に係る設定工程では、例えば図3の測定値が得られた場合に、測定値のうち最低値を回転ツールF,Gの高さ位置として設定してもよい。図3の場合、最低値は4.8mmであるため、回転ツールF,Gの攪拌ピン基準点F4,G4が架台Kの表面Kaから4.8mmの高さとなるように回転ツールF,Gを相対移動させる。つまり、この場合は、回転ツールF,Gの高さ位置を設定したら、回転ツールF,Gを昇降させずに、一定の高さで回転ツールF,Gを相対移動させる。
【0079】
当該変形例に係る設定工程によれば、回転ツールF,Gの高さ位置の設定を容易に行うことができる。また、測定値のうち最低値を高さ位置として設定することで、回転ツールF,Gが接合部のうち最も低い箇所の深さにあわせて挿入されることになる。これにより、接合部の高さが変化する場合であっても、最も低い位置の接合部を含めて摩擦擦攪拌を行うことができ、接合不良より防ぎやすくなる。
【0080】
この時、回転ツールはどちらの回転ツールを用いてもよいが、回転ツールGを用いることが好ましい。回転ツールの高さ位置を、測定値の最低値に設定しているため、ショルダ部G1で常に塑性流動材を押さえることができるため、バリが大量に発生するのを防ぎやすくなる。
【0081】
一方、第四変形例に係る設定工程では、例えば図3の測定値が得られた場合に、その測定値の平均値を回転ツールF,Gの高さ位置として設定してもよい。図3の場合、平均値は約5.3mmであるため、回転ツールF,Gの攪拌ピン基準点F4,G4が架台Kの表面Kaから5.3mmの高さとなるように回転ツールF,Gを相対移動させる。つまり、この場合も、回転ツールF,Gの高さ位置を設定したら、回転ツールF,Gを昇降させずに、一定の高さで回転ツールF,Gを相対移動させる。
【0082】
当該変形例に係る設定工程によれば、回転ツールF,Gの高さ位置の設定を容易に行うことができる。
【0083】
この時、回転ツールはどちらの回転ツールを用いてもよいが、回転ツールFを用いることが好ましい。回転ツールFを用いる場合には、攪拌ピンF2のみが接合部と接触することになるため、回転ツールGを用いる場合に比べて、接合部の高さの変化に対する裕度が比較的に高いためである。回転ツールFの高さ位置を測定値の平均値に設定して、当該設定値に基づいて回転ツールFの高さ位置を昇降させて接合を行うにあたり、各々の測定値のばらつきが大きい場合であったり、第一金属部材1もしくは第二金属部材2の位置が測定工程での位置から変位したり、または攪拌ピンF2の位置が設定工程で設定した高さ位置から変位したりといった場合であっても、接合不良が生じにくい。
【0084】
[6.第五変形例]
次に、前記した実施形態の第五変形例について説明する。第五変形例では、測定値に基づいて許容範囲を設定する点で他の変形例と相違する。当該変形例では、高さの測定値の許容範囲を設定している。例えば、図3の測定値においては、許容範囲を4.8~5.5mmに設定する。制御装置24は、測定部23で得られた測定値が予め設定された許容範囲内に含まれるか否かを判定する判定部(図示省略)を備えている。
【0085】
例えば、前記した実施形態の場合において、制御装置24は、測定工程で得られた測定値が、予め設定された許容範囲内であると判定した場合(判定工程)、そのまま第二配置工程に移行する。一方、制御装置は、測定工程で得られた測定値が、予め設定された許容範囲外であると判定した場合、その第一金属部材1(第一金属部材1及び第二金属部材2)を架台Kから一旦取り外す再セット信号を出力する。その第一金属部材1(第一金属部材1及び第二金属部材2)を架台Kに再セットしたら、再度、測定工程及び判定工程を行う。
【0086】
摩擦攪拌接合において、第一金属部材1及び第二金属部材2の高さは重要な要素の一つであり、例えば、治具の押さえ不足によって高さが許容範囲を超えていると回転ツールF,Gをどのように制御しても接合不良となるおそれが高くなる。しかし、本変形例によれば、第一金属部材1及び第二金属部材2の高さに許容範囲を設けることで、接合不良となるのをより防ぎやすくなる。
【0087】
他方、制御装置24は、測定工程で得られた測定値が、予め設定された当該許容範囲外であると判定した場合(判定工程)、その第一金属部材1(第一金属部材1及び第二金属部材2)を許容範囲外品であると特定して、記憶部29に記憶してもよい。本発明によれば、接合不良となるのをより防ぎやすくなるとともに、品質管理を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1 第一金属部材
2 第二金属部材
21a,21b 固定部
22 摩擦攪拌本体部
23 測定部
P1~P8 測定点
F 回転ツール
F1 連結部
F2 攪拌ピン
G 回転ツール
G1 ショルダ部
G2 攪拌ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11