(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089032
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ラミネート型電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/543 20210101AFI20220608BHJP
H01M 50/172 20210101ALI20220608BHJP
H01M 50/183 20210101ALI20220608BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220608BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220608BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20220608BHJP
【FI】
H01M2/30 B
H01M2/06 K
H01M2/08 K
H01M2/26 A
H01G11/78
H01G11/74
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201242
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 悟史
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AA14
5E078AB02
5E078AB12
5E078HA02
5E078HA23
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5E078KA04
5E078KA05
5E078KA06
5H011AA09
5H011AA17
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5H011GG09
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5H011KK01
5H043AA07
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA11
5H043BA15
5H043BA16
5H043BA19
5H043BA20
5H043CA08
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5H043HA17E
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5H043HA23E
5H043JA13D
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5H043JA15D
5H043JA15E
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5H043JA22E
5H043KA07D
5H043KA07E
5H043KA08D
5H043KA08E
5H043KA09D
5H043KA09E
5H043KA10D
5H043KA10E
5H043KA22D
5H043KA22E
5H043KA23
5H043KA23D
5H043KA23E
5H043KA24
5H043KA24D
5H043KA24E
5H043KA28
5H043KA28D
5H043KA28E
5H043LA02D
5H043LA02E
5H043LA21D
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】異種金属の境界領域を除くそれぞれの金属の表面に、タブフィルムを配置し、該境界領域を密閉された状態で適切に保護し得るラミネート型電池を提供する。
【解決手段】ここに開示されるラミネート型電池(1)は、電極体(20)とラミネート外装体(10)と、正負極端子と、を備えている。前記正負極端子の少なくともいずれか一方の端子は、相互に異なる第1の金属(40)と第2の金属(50)とが接合された板状のクラッド材から構成されており、前記クラッド材の前記第1および前記第2の金属のそれぞれの表面には、樹脂材料からなるタブフィルム(70)が配置されている。前記クラッド材の前記第1の金属と前記第2の金属との境界領域は、前記外装体の外部に露出しておらず、前記タブフィルムは、前記クラッド材の幅広面の前記境界領域を除いた、該境界領域に近接した周縁部に配置されており、前記外装体と溶着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体と、
矩形状のラミネートフィルムから形成され、幅広面同士を対向させた状態で溶着されることで前記電極体を内部に収容するラミネート外装体と、
正極端子および負極端子であって、一端が前記電極体の同極と電気的に接続され、他端が前記外装体の溶着された溶着部から外部に導出される、正負極端子と、
を備えるラミネート型電池であって、
前記正負極端子の少なくともいずれか一方の端子は、相互に異なる第1の金属と第2の金属とが接合された板状のクラッド材から構成されており、
前記クラッド材から構成されている端子は、前記電極体のうち同極と接続される一端が第1の金属から構成されており、前記外部に導出された他端が第2の金属から構成されており、
前記クラッド材の前記第1の金属と前記第2の金属のそれぞれの表面には、樹脂材料からなるタブフィルムが配置されており、
前記クラッド材の前記第1の金属と前記第2の金属との境界領域は、前記外装体の外部に露出しておらず、
ここで、前記タブフィルムは、前記クラッド材の幅広面の前記境界領域を除いた、該境界領域に近接した周縁部に配置されており、
前記タブフィルムは、前記外装体の前記溶着部と溶着されている、ラミネート型電池。
【請求項2】
前記負極端子が、前記クラッド材から構成されており、前記第1の金属が銅から構成されており、前記第2の金属がアルミニウムから構成されている、請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項3】
前記正極端子が、前記クラッド材から構成されており、前記第1の金属がアルミニウムから構成されており、前記第2の金属が銅から構成されている、請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項4】
前記第1の金属および前記第2の金属のうち、銅で構成されている部分の表面にニッケルメッキ層が設けられている請求項2または3に記載のラミネート型電池。
【請求項5】
前記タブフィルムは、酸変性ポリオレフィン樹脂である、請求項1~4のいずれか一項に記載のラミネート型電池。
【請求項6】
前記正負極端子の厚さは1mm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のラミネート型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、車載搭載用電源、あるいは、パソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。この種の二次電池の一形態として、ラミネートフィルムを使用した電極外装体(以下、ラミネート外装体という)に電極体が収容されて構成されているラミネート型電池が知られている。
【0003】
かかるラミネート型電池を構築する際には、一対のラミネートフィルムの間に発電要素として電極体を挟み込んだ状態で、該フィルムの周縁部を加圧・加熱して溶着する。これにより、周縁部に溶着部を有する袋状のラミネート外装体が形成され、該外装体の内部に電極体が収容される。電極体は、少なくとも正極および負極を備えている。正極は、典型的には、正極集電体上に正極活物質を含む正極活物質層を有する。負極も同様に、典型的には負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層を有する。該ラミネート型電池は、外装体の内部の電極体と、外部機器(他の電池やモーター等)と、を接続するための板状の電極端子を備えている。かかる電極端子は、正極端子および負極端子から構成され、一方の端部が電極体の同極と接続され、他方の端部はそれぞれ異なる位置から外装体の外部に導出されている。
【0004】
かかる電極端子の電極体と接続される側の端部は、同極の集電体と同一の金属から構成されていることが好ましい。また、外部に導出される側の端部は、外部機器との接続を考慮して適切な金属から選択されることが好ましい。かかる要求を満たすために、相互に異なる金属(例えば、銅とアルミニウム)を接合させたクラッド材を電極端子として用いることが知られている。かかるクラッド材は、異種金属の境界(界面)が電解液および外気に露出すると、電解腐食が生じるおそれがある。かかる界面の腐食を防ぐために、従来から種々の技術が提案されてきた。例えば、特許文献1では、銅と第2の金属(例えば、アルミニウム)とが接合されたクラッド材を負極端子として用いており、銅の表面にニッケルメッキ層が設けられるとともに、2種の金属の界面上を覆うように樹脂層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、負極端子の異なる2種の金属の上に樹脂層を設けるため、それぞれの金属と樹脂層とを接着させる際の加工条件が異なり、加工不良が発生することがあった。かかる加工不良が発生した場合には、異種金属の境界(界面)が電解液や外気に露出し、電解腐食が生じるおそれがある。このため、異種金属の境界(界面)が密閉された状態で、適切に保護されている電池が求められている。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、異種金属の境界領域を除くそれぞれの金属の表面とタブフィルムとを好適に溶着させ、さらにタブフィルムとラミネート外装体とを溶着させることで、異種金属の境界領域を密閉された状態で、適切に保護し得るラミネート型電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するべく、ラミネート型電池が提供される。ここに開示されるラミネート型電池は、正極および負極を有する電極体と、矩形状のラミネートフィルムから形成され、幅広面同士を対向させた状態で溶着されることで、前記電極体を内部に収容するラミネート外装体と、正極端子および負極端子であって、一端が前記電極体の同極と電気的に接続され、他端が前記外装体の溶着された溶着部から外部に導出される、正負極端子と、を備えている。前記正負極端子の少なくともいずれか一方の端子は、相互に異なる第1の金属と第2の金属とが接合された板状のクラッド材から構成されており、前記クラッド材から構成されている端子は、前記電極体のうち同極と接続される一端が第1の金属から構成されており、前記外部に導出された他端が第2の金属から構成されている。前記クラッド材の前記第1の金属と前記第2の金属のそれぞれの表面には、樹脂材料からなるタブフィルムが配置されており、前記クラッド材の前記第1の金属と前記第2の金属との境界領域は、前記外装体の外部に露出していない。ここで、前記タブフィルムは、前記クラッド材の幅広面の前記境界領域を除いた、該境界領域に近接した周縁部に配置されており、前記タブフィルムは、前記外装体の前記溶着部と溶着されている。
上述した構成では、タブフィルムは、クラッド材の境界領域を除く該境界領域に近接する周縁部に配置され、第1の金属と第2の金属のそれぞれの表面と溶着されている。さらに該タブフィルムとラミネート外装体とが溶着されている。このため、タブフィルムとそれぞれの金属との溶着時および、該タブフィルムを介してラミネート外装体とそれぞれの金属との溶着時における加工条件を、適宜設定することができる。これにより、タブフィルム、電極端子、およびラミネート外装体のそれぞれを好適に溶着させることができ、異種金属の境界領域が密閉された状態で適切に保護される。かかる構成によれば、ラミネート外装体の接着性(密閉性)が向上し、異種金属の境界領域を電解質(例えば電解液)および外気に露出することなく保護されたラミネート型電池を実現することができる。
【0009】
ここに開示されるラミネート型電池の好ましい一態様においては、前記負極端子が、前記クラッド材から構成されており、前記第1の金属が銅から構成されており、前記第2の金属がアルミニウムから構成されている。また、他の好ましい一態様では、前記正極端子が、前記クラッド材から構成されており、前記第1の金属がアルミニウムから構成されており、前記第2の金属が銅から構成されている。
かかる構成によれば、正負極端子が異なる金属材料(銅とアルミニウム)から構成されていても、異種金属の境界における電解腐食が防止されたラミネート型電池が提供される。
【0010】
ここに開示されるラミネート型電池の好ましい一態様においては、前記第1の金属および前記第2の金属のうち、銅で構成されている部分の表面にニッケルメッキ層が設けられている。
かかる構成によれば、金属材料である電極端子と樹脂材料であるタブフィルムとの接着性がより向上するため、異種金属の境界をより適切に保護することができる。
【0011】
ここに開示されるラミネート型電池の好ましい一態様においては、前記タブフィルムは、酸変性ポリオレフィン樹脂である。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、樹脂材料および金属材料との接着性が高く、さらに電解質(例えば電解液)に対する耐性も高い樹脂材料である。かかる樹脂材料をタブフィルムとして使用することにより、異種金属の境界の電解腐食をより好適に防ぐことができる。
【0012】
ここに開示されるラミネート型電池の好ましい一態様においては、前記正負極端子の厚さは、1mm以下である。
かかる構成によれば、タブフィルムを介してラミネート外装体と電極端子とを好適に熱溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係るラミネート型電池を模式的に示す平面図である。
【
図2】一実施形態に係る電極端子近傍を模式的に示す平面図である。
【
図4】他の一実施形態に係る電極端子近傍を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けないラミネート型電池の一般的な構成)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、各図における符号Xは「幅方向」を示し、符号Yは「奥行方向」を示し、符号Zは「厚さ方向」を示す。なお、寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0015】
本明細書において、「二次電池」とは、繰り返し充電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池(すなわち化学電池)の他、電気二重層キャパシタ(すなわち物理電池)を包含する。また、本明細書において「ラミネート型電池」とは、ラミネートフィルムを外装体として利用し、その内部に電極体を収容した構成の電池全般をいう。以下、電極体をラミネートフィルム製の電池外装体に収容した形態のリチウムイオン二次電池を例にして、本発明について詳細に説明する。なお、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。ラミネート型電池は、例えば、固体の電解質を用いた全固体電池であってもよく、電気二重層キャパシタ等の蓄電素子(物理電池)であってもよい。
【0016】
図1は、一実施形態に係るラミネート型電池の模式図である。
図1に示すように、ラミネート型電池1は、ラミネート外装体10と、電極体20と、電極端子30と、電解質(図示せず)と、を備える。電極体20と電解質とは、ラミネート型電池1の発電要素となる。電極体20と電解質は、ラミネート外装体10が
図1に二点破線で示される溶着部18で熱溶着されることにより、内部に封止される。
【0017】
電極体20の構成は、従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。電極体20は、シート状の正極(正極シート)およびシート状の負極(負極シート)を、それぞれ1枚以上、典型的にはそれぞれ複数枚備えている。正極シートおよび負極シートは、互いに絶縁された状態で交互に積層されている。なお、電極体20の構成は特に限定されない。電極体20は、例えば、正極シートと、負極シートとが、セパレータを介して捲回された捲回電極体であってもよい。
【0018】
正極は、例えば、正極集電体上に正極活物質層が設けられた構成を有する。正極集電体は、この種の電池の正極集電体として用いられる金属製の正極集電体を特に制限なく使用することができる。典型的には、例えば、良好な導電性を有するアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属材から構成される。特にアルミニウム(例えばアルミニウム箔)が好ましい。正極活物質層に含まれる正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。
また、負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質層が設けられた構成を有する。負極集電体は、この種の電池の負極集電体として用いられる金属製の負極集電体を特に制限なく使用することができる。典型的には、例えば、良好な導電性を有する銅や銅を主体とする合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属材から構成される。特に銅(例えば銅箔)が好ましい。負極活物質層に含まれる負極活物質としては、例えば、黒鉛等を用いることができる。
【0019】
ラミネート型電池1は、ラミネートフィルム外装体10の内部に電解質を備える。電解質の構成は、従来公知の電池と同様の構成でよく、特に限定されない。電解質は、液状であってもよいし、ポリマー状(ゲル状)であってもよいし、固体状であってもよい。一例として、カーボネート類等の非水溶媒に、LiPF6等のリチウム塩を溶解させたものを用いることができる。
セパレータは、正極活物質層と負極活物質層とを絶縁する。セパレータは、従来公知の電池と同様の構成でよく、特に限定されない。一例として、多孔質ポリオレフィンシート等を用いることができる。
【0020】
ラミネート外装体10は、発電要素(電極体20および電解質)を収容する絶縁性の容器である。ラミネート外装体10は、矩形状の2枚のラミネートフィルムが、幅広面同士を対向させた状態で溶着されることにより、袋状に形成される。かかる袋状に形成された空間に、発電要素(電極体20および電解質)が封止される。しかしながら、ラミネート外装体10の形成方法は、上述した形成方法に限定されるものではない。例えば、矩形状の1枚のラミネートフィルムを2つ折りとすることで形成され、該折り目以外の部分が溶着されることで袋状に形成されていてもよい。また、ラミネートフィルムが3枚以上貼り合わされて袋状に形成されていてもよい。
【0021】
ラミネート外装体10の構成は従来公知と同様でよく、特に限定されない。
図3に示す一例では、ラミネート外装体10は、積層構造を有する。ラミネート外装体10は、少なくとも複数の樹脂フィルム層を有する、多層構造のラミネートフィルムで構成されている。ラミネートフィルムは、典型的には、2層の樹脂フィルム層(シーラント層12、保護層16)と金属層14とを有する3層構造であり得る。例えば、ラミネート外装体10は、電極体20に近い側から、シーラント層12と、金属層14と、保護層16とがこの順に積層されて構成されている。
【0022】
シーラント層12は、熱溶着を可能にするための層である。シーラント層12は、ラミネート外装体10の最内層、すなわち、電極体20に最も近い側に位置している。シーラント層12は、例えば、熱可塑性樹脂で構成されている。熱可塑性樹脂としては、例えば、無延伸ポリオレフィン系樹脂、二軸延伸ポリエステル系樹脂、二軸延伸ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。無延伸ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、無延伸ポリプロピレン、無延伸ポリエチレン等が挙げられる。
【0023】
金属層14は、ラミネート型電池1の内外で、湿気や空気或いはラミネート型電池1の内部で発生したガスの出入りを遮断する層である。金属層14は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料で構成されている。なかでも、コストや軽量化の観点から、アルミニウムが好ましい。金属層14は、例えば、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層であってもよい。
【0024】
保護層16は、ラミネート外装体10の耐久性および耐衝撃性を向上させるための層である。保護層16は、金属層14よりも外表面側に位置している。保護層16は、ラミネート外装体10の最外層であってもよい。保護層16は、例えば、二軸延伸ポリエステル系樹脂、二軸延伸ポリアミド系樹脂等によって構成されている。二軸延伸ポリエステル系樹脂としては、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタラート等が挙げられる。
【0025】
なお、上記ではラミネート外装体10の構成について、シーラント層12と、金属層14と、保護層16とで構成される3層構造である場合について説明したが、ラミネート外装体10の構成はこれに限られたものではない。例えば、4層以上の多層構造であってもよい。一例として、上述した層と層との間に、両相を相互に接着するための接着層を備えていてもよい。接着層は、例えば、ポリアミド等の樹脂で構成されていてもよい。また、他の一例として、保護層16の上に、例えば最外層として、さらに印刷層、難燃層、表面保護層等を備えていてもよい。
【0026】
電極体20には、集電タブ22(正極集電タブ、負極集電タブ)が設けられている。詳細には、正極集電タブは、捲回または積層されたシート状の正極(詳細には正極集電体)から外方に延びている。負極集電タブは、捲回または積層されたシート状の負極(詳細には負極集電体)から外方に延びている。集電タブ22は、活物質層(正極活物質層または負極活物質層)を具備せず露出している。集電タブ22は、電極体20の幅方向Xの両縁部から互いに異なる方向に延びていてもよいし、電極体20の異なる位置から同一の方向に向けて延びていてもよい。
【0027】
電極端子30(正極端子、負極端子)は、板状の金属部材である。電極端子30の厚みは、1mm以下であることが求められる。例えば、900μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、700μm以下がさらに好ましい。これにより、ラミネート外装体10の溶着部18における、ラミネート外装体10と電極端子30の隙間が、所定の範囲内になるため、ラミネート外装体10の接着性(密閉性)が担保され得る。また、電極端子30の厚みの下限は特に限定されるものではないが、例えば、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、200μm以上がさらに好ましい。
【0028】
正極端子は正極集電タブと接合されることで電気的に接続される。負極端子は負極集電タブと接合されることで電気的に接続される。詳細には、正極端子は、正極集電タブの先端部近傍からさらに外方へ延び、ラミネート外装体10から露出する。負極端子は、負極集電タブの先端部近傍からさらに外方へ延び、ラミネート外装体10から露出する。
【0029】
正極端子と正極集電タブとは、接合部において相互に接合される。負極端子と負極集電タブとは、接合部において相互に接合される。かかる接合部における正負極端子と正負極集電タブとの接合方法としては、例えば、抵抗溶接、レーザ溶接、または、超音波接合等の従来公知の接合方法を特に制限することなく用いることができる。
【0030】
図2および
図3を参照して、ここに開示されるラミネート型電池1の電極端子30(正極端子、負極端子)の構成について説明する。なお、正極端子と負極端子の構成は、略同様の構成を採用することが可能である。
【0031】
正極端子、負極端子のいずれか少なくとも一方の端子は、第1の金属40と第2の金属50とが接合された2種類の金属材料からなるクラッド材で構成されている。電極端子30がクラッド材から構成されるとき、電極端子30は、集電タブ22を介して電極体20と接続される側が第1の金属40で構成される。また、ラミネート外装体10の外部に導出される側が第2の金属50から構成される。
【0032】
第1の金属40と集電タブ22とは、同じ金属材料から構成されている。例えば、電極端子30が正極端子であった場合には、第1の金属40は上述した正極集電体と同様の金属材料から構成されていることが好ましく、特に、アルミニウムで構成されていることが好ましい。電極端子30が負極端子であった場合には、上述した負極集電体と同様の金属材料から構成されていることが好ましく、特に銅で構成されていることが好ましい。
【0033】
第2の金属50は、良好な導電性を有し、第1の金属40と接合可能である金属材料から構成されていればよい。かかる金属材料として、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、銅などが挙げられる。電極端子30が正極端子であり、第1の金属40がアルミニウムで構成されていた場合には、第2の金属50は、銅で構成されることが好ましい。また、電極端子30が負極端子であり、第1の金属40が銅で構成される場合には、第2の金属50は、アルミニウムで構成されることが好ましい。
【0034】
正極端子がクラッド材から構成されているとき、負極端子はクラッド材から構成されていてもよく、1種類の金属(すなわち、クラッド材でない)から構成されていてもよい。負極端子がクラッド材から構成されていない場合は、この種のラミネート型電池において、一般的な負極端子の構造を特に制限することなく用いることができる。また、負極端子がクラッド材から構成されているとき、正極端子はクラッド材から構成されていてもよく、1種類の金属(すなわち、クラッド材でない)から構成されていてもよい。正極端子がクラッド材から構成されていない場合は、この種のラミネート型電池において、一般的な正極端子の構造を特に制限することなく用いることができる。
正極端子および負極端子が共にクラッド材から構成されることも可能である。例えば、正極端子が第1の金属40としてアルミニウム、第2の金属50としてニッケルからなるクラッド材から構成され、負極端子が第1の金属40として銅、第2の金属50としてニッケルからなるクラッド材から構成されていてもよい。
【0035】
第1の金属40と第2の金属50は、境界60で接合されている。境界60は、電極端子30の略中間部に位置している。なお、図示例では、境界60は、斜め方向に直線的に示されているが、境界60の接合形状はこれに限られたものではない。例えば、凹部と凸部が組み合わされて接合されていてもよい。
【0036】
第1の金属40は、電極端子30の境界60から中央側端部32までの厚み方向Zの全域を構成している。第2の金属50は、電極端子30の境界60から外側端部34までの厚み方向Zの全域を構成している。
図2に破線で示すように、境界60を含む境界60の近接領域を境界領域62とする。また、境界領域62に近接する(境界60は含まない)領域を周縁部64とする。
【0037】
電極端子30の境界領域62を除く周縁部64には、樹脂材料からなるタブフィルム70が配置されている。タブフィルム70は、電極端子30を周縁部64において被覆する樹脂部材である。タブフィルム70は、電極端子30とラミネート外装体10(詳細にはシーラント層12)との間に挟まれて配置されている。タブフィルム70は、一対のタブフィルム70が電極端子30の厚さ方向Zの両側(上下)に配置されていてもよい。また、1枚のタブフィルム70が電極端子30に巻きつけられていてもよい。
【0038】
タブフィルム70は、異種金属の境界60を有さない(すなわち、クラッド材から構成されていない)電極端子30の表面には、配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい。クラッド材から構成されていない電極端子30にタブフィルム70が配置されている場合は、電極端子30の全体を被覆するように配置されていてもよいし、一部のみを被覆するように配置されていてもよい。
【0039】
タブフィルム70の接着方法としては、タブフィルム70と電極端子30とが熱溶着されてもよいし、電極端子30とシーラント層12との間にタブフィルム70が挟まれた状態で熱溶着されてもよい。タブフィルム70を電極端子30とシーラント層12との間に介在させることによって、金属材料からなる電極端子30と、樹脂材料からなるシーラント層12と、を好適に接着させることができる。
なお、熱溶着の方法(温度、時間等)は、従来公知の手法と同様でよく、特に制限されない。例えば、タブフィルム70およびラミネート外装体10を150℃~250℃の範囲で加熱できるように設定された溶着装置を用いて、所定の時間、加熱・加圧することにより熱溶着することができる。
【0040】
タブフィルム70は、
図2に示すように、境界領域62を挟んで両側の周縁部64にタブフィルム70Aおよびタブフィルム70Bが配置されている。すなわち、タブフィルム70A、70Bは、第1の金属40と第2の金属50のそれぞれの表面に配置されている。第1の金属40と第2の金属50とは、相互に異なる金属材料から構成されているため、それぞれの特性(熱伝導率等)が異なり、タブフィルム70との接着性も異なる。かかる構成によれば、第1の金属40とタブフィルム70Bとの熱溶着、第2の金属50とタブフィルム70Aとの熱溶着、のそれぞれに対して異なる加工条件を設定して加工することができる。例えば、上述した熱溶着の温度や加熱・加圧の時間等を、それぞれの金属とタブフィルム70との接着性を考慮して適宜調整することができる。これにより、電極端子30にタブフィルム70を溶着させる際の加工不良が抑制され、境界60を適切に保護することができる。
【0041】
タブフィルム70の材料は、ラミネート外装体10と同程度の温度で溶融し、かつ、樹脂材料と金属材料の両方に対して好適な接着性を発揮する樹脂材料であることが求められる。また、これに加えて、電解質に対する耐久性が優れたものであることが好ましい。このような樹脂材料として、例えば、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸ポリエステル等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。なかでも、上述した効果をより高いレベルで発揮する観点から、ポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
なお、タブフィルム70は、2層以上の多層構造であってもよい。タブフィルム70が多層構造である場合には、ポリオレフィン層を含む多層構造のフィルムであることが好ましい。
【0042】
タブフィルム70の厚さは、40μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。かかる範囲内の厚さを有するタブフィルム70であれば、電極端子30とラミネート外装体10とを接着する機能を好適に発揮することができる。また、タブフィルム70の厚みの上限は、特に限定されないが、タブフィルム70が厚すぎる場合には、溶融が不十分となり、溶着不良の原因となり得る。かかる観点から、タブフィルム70の厚さは、350μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
【0043】
図2に示す奥行方向Yにおけるタブフィルム70の長さ(奥行)は、電極端子30の奥行方向Yの長さ(奥行)よりも長くなるように設計されている。すなわち、タブフィルム70の奥行方向Yの両端部においては、タブフィルム70が、電極端子30を間に挟むことなく配置されている。かかる構成によれば、電極端子30とラミネート外装体10との間に生じる隙間を、タブフィルム70によって好適に埋めることができ、密閉性を向上させることができる。
【0044】
タブフィルム70の厚さは、電極端子30と溶着される部分(すなわち、中央部)から奥行方向Yの外側に向けて、フィルムの厚さが徐々に薄くなるようにテーパーがとられてもよい。かかる構成によれば、電極端子30とラミネート外装体10との間に生じる隙間をさらに好適に抑制することができる。
【0045】
なお、
図2に示す幅方向Xにおけるタブフィルム70の長さ(幅)は、境界領域62に侵入しない限り、特に限定されない。例えば、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。さらに、タブフィルム70Aの端部がラミネート外装体10から外部に露出していることが好ましい。これにより、ラミネート外装体10の金属層14と電極端子30との導通による短絡の発生を防止できる効果も奏する。
【0046】
電極端子30の銅で構成される部分の表面には、ニッケルメッキ層(図示しない)が設けられていてもよい。かかるニッケルメッキ層は、銅で構成される部分から銅が溶出することを防ぐとともに、樹脂材料からなるタブフィルム70との接着性を向上させることができる。これにより、タブフィルム70が電極端子30から剥離することを防ぎ、境界60を適切に保護することができる。
【0047】
電極端子30の銅で構成される部分の耐食性を向上させるために、かかるニッケルメッキ層の表層部にさらに表面処理を行ってもよい。かかる表面処理は、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理等の従来公知の表面処理の手法を特に制限することなく用いることができる。電極端子30の銅で構成される部分の耐食性およびタブフィルム70との接着性を向上させる観点から、特に、クロメート処理が好ましい。
【0048】
図1および
図3を参照して、ラミネート外装体10による発電要素等の封止方法について説明する。まず、電極体20から延びる正極集電タブおよび負極集電タブの同極側にそれぞれ、正極端子および負極端子が接合される。次いで、正負極端子のいずれか少なくとも一方のクラッド材から構成される端子の境界領域62を除く周縁部64に一対のタブフィルム70A、一対のタブフィルム70Bが配置される。詳細には、タブフィルム70A、70Bは、ラミネート型電池1の厚み方向Zの両側から電極端子30を挟み込むように配置され、熱溶着される。そして、電極体20、電極端子30、およびタブフィルム70A、70Bの全体を厚み方向Zの両側から覆うように、一対のラミネート外装体10の幅広面同士が、シーラント層12を内側に位置するように対向して配置される。
【0049】
一対のラミネート外装体10の間に袋状の密閉空間が形成されるように、ラミネート外装体10の周縁部にあたる溶着部18において、シーラント層12が熱溶着される。その結果、電極体20がラミネート外装体10の内部に封止される。溶着部18においてラミネート外装体10は、電極端子30の外側端部34をラミネート外装体10の外方に露出させた状態で溶着する。ここで、上述した熱溶着の際に、ラミネート外装体10と電極端子30との間に配置されているタブフィルム70A、70Bも、共に熱溶着される。したがって、電極端子30の接着性が向上し、境界60がラミネート外装体10の内部に密封される。かかる構成によれば、湿気や空気、電解質(例えば電解液)等の侵入を遮断し、境界60の電解腐食を防ぐことができる。
【0050】
<変形形態>
上述したラミネート型二次電池1では、第1の金属40と第2の金属50の境界領域62を除く周縁部64にタブフィルム70A、70Bが設けられている構成について説明した。しかしながら、タブフィルム70の形態は、上述の実施形態に限定されない。
図4は、変形形態に係る電極端子30の近傍を模式的に示す平面図である。
【0051】
電極端子30の境界領域62を除く周縁部64には、略ロの字状のタブフィルム70が配置されている。かかるタブフィルム70は、電極端子30を周縁部64において被覆する樹脂部材である。タブフィルム70は、一対のタブフィルム70が電極端子30の厚さ方向Zの両側(上下)に配置されている。
【0052】
上述したように加工条件を好適に設定する観点から、一対のタブフィルム70は、第1の金属40と第2の金属50のそれぞれの表面(厚さ方向Zの両側)と溶着される。上述した形態では、タブフィルム70A、70Bとの間に隙間が生じていた。そこで、変形形態では、タブフィルム70を略ロの字とすることで、タブフィルム70A、70B間の隙間をなくした状態で境界領域62を除く周縁部64に配置される。
【0053】
変形形態においても、奥行方向Yの両端部は、一対のタブフィルム70同士が熱溶着される。これにより、境界領域62の密閉性がさらに向上し、湿気や空気、電解質等の侵入が抑制され、境界60の腐食を防ぐことができる。
【0054】
ラミネート型電池1は、各種用途に利用可能である。例えば、車両に搭載されるモーター用の高出力動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、典型的には自動車、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。ラミネート型電池1は、複数個が電気的に接続された組電池の形態で使用することもできる。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 ラミネート型電池
10 ラミネート外装体
12 シーラント層
14 金属層
16 保護層
18 溶着部
20 電極体
22 集電タブ
30 電極端子
32 中央側端部
34 外側端部
40 第1の金属
50 第2の金属
60 境界
62 境界領域
64 周縁部
70 タブフィルム
70A タブフィルム
70B タブフィルム