(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089070
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】重機移動装置
(51)【国際特許分類】
B60P 3/07 20060101AFI20220608BHJP
B62D 63/06 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B60P3/07 Z
B62D63/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201301
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】505047784
【氏名又は名称】株式会社オムテック
(74)【代理人】
【識別番号】100120145
【弁理士】
【氏名又は名称】田坂 一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰博
(57)【要約】
【課題】停止状態の重機の移動に適用され、移動時における重機のずれを低減できる重機移動装置を提供すること。
【解決手段】クローラ102bを有する重機が載置され、重機を移動させる重機移動装置1であって、クローラ102bが載置される載置面を有する座板20と、座板20に回動自在に取り付けられており、座板20にクローラ102bが載置される前には、座板20の座面より下に配置され、座板20にクローラ102bが載置された後に、回動され、座板20の座面より上であって、クローラ102bの側面に対面する位置に配置されるストッパ片22、22と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動するための走行部を有する重機が載置され、前記重機を移動させる重機移動装置であって、
前記走行部が載置される載置面を有する載置部と、
前記載置部に回動自在に取り付けられており、前記載置部に前記走行部が載置される前には、前記載置面より下に配置され、前記載置部に前記走行部が載置された後に、回動され、前記載置面より上であって、前記走行部の側面に対面する位置に配置される回動部と、を備えることを特徴とする重機移動装置。
【請求項2】
前記回動部は、一対で設けられ、前記走行部の両側面にそれぞれ対面する位置に配置され、
一対の前記回動部は、軸部を介して、互いに連結されており、一方の前記回動部を回動させると、他方の前記回動部も回動することを特徴とする請求項1に記載の重機移動装置。
【請求項3】
前記走行部は、複数の板状体が環形状に配列された無限軌道であり、
前記載置面に固定された軸部を、更に備え、
前記軸部は、前記載置部に前記走行部が載置された場合に、複数の前記板状体の間に、配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の重機移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機移動装置に関し、詳しくは、クローラを具備した重機の移動に適用する重機移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物を移動させる際に、特許文献1に記載されているように、重量物を台車に載せて移動することが一般に行われている。
ところで、施工現場において、例えば、重機を搬入する際に、場所によっては重機が走行できない場合がある。このような場合に、トレーラーで施工現場近くまで重機を搬送し、重機を台車に載せて牽引車で牽引することにより、施工現場に重機を搬入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クローラを具備している重機を台車に載せて現場まで搬送するまでの間に、重機が台車からずれるおそれがある。例えば、牽引車が右折或いは左折した際に、重機が台車上を横滑りして、重機が台車から落下するおそれがある。重機が台車から落下すると再び台車に載せることが困難であり、重機を現場まで搬送したり、搬出したりするのに必要以上の時間がかかるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に対して鑑み、なされたものであり、移動時における重機のずれを低減できる重機移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 移動するための走行部を有する重機が載置され、前記重機を移動させる重機移動装置であって、
前記走行部が載置される載置面を有する載置部と、
前記載置部に回動自在に取り付けられており、前記載置部に前記走行部が載置される前には、前記載置面より下に配置され、前記載置部に前記走行部が載置された後に、回動され、前記載置面より上であって、前記走行部の側面に対面する位置に配置される回動部と、を備えることを特徴とする重機移動装置。
【0007】
(1)の発明によれば、回動部が走行部の側面に対面する位置に配置されることで、移動時等における重機のずれを低減できるようになり、重機が載置部からずれ落ちるのを防止できる。
また、載置部に走行部が載置される前には、回動部が載置面より下に配置されているので、載置部に走行部を載置するときに邪魔にならず、作業性が向上する。
【0008】
(2) (1)において、前記回動部は、一対で設けられ、前記走行部の両側面にそれぞれ対面する位置に配置され、
一対の前記回動部は、軸部を介して、互いに連結されており、一方の前記回動部を回動させると、他方の前記回動部も回動することを特徴とする重機移動装置。
【0009】
(2)の発明によれば、走行部の両側面にそれぞれ対面する位置に回動部が配置されることで、移動時等に、重機が載置部からずれ落ちるのを確実に防止できる。
また、例えば、外側に側面に対面する位置に配置される回動部を回動させることで、作業者の手が入りにくい内側の側面に対面する位置に配置される回動部も回動するので、作業性がより向上する。
【0010】
(3) (1)又は(2)において、前記走行部は、複数の板状体が環形状に配列された無限軌道であり、
前記載置面に固定された軸部を、更に備え、
前記軸部は、前記載置部に前記走行部が載置された場合に、複数の前記板状体の間に、配置されることを特徴とする重機移動装置。
【0011】
走行部が載置された場合に、複数の板状体の間に、軸部が配置されることで、移動時等に、無限軌道を備える重機が載置部からずれ落ちるのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動時における重機のずれを低減できる重機移動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る重機移動装置1に杭打機100を載せた状態を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る重機移動装置1の構成部品を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態の重機移動装置1の使用形態を示す説明図である。
【
図4】本実施形態の重機移動装置1の使用形態を示す説明図である。
【
図5】本実施形態の変形例の構成を示す平面図である。
【
図6】本実施形態の変形例の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
図1は、本発明の実施形態に係る重機移動装置1に杭打機100を載せた状態を示す側面図である。
杭打機100は、本体部101と、本体部101の下部に設けられ、陸上を走行する走行部102と、本体部101の前方側に設けられ、杭打ちを行う杭打部103と、本体部101の前後左右の4箇所にそれぞれ設けられているアウトリガー104と、を備える。
【0015】
走行部102は、本体部101の左右両側部にそれぞれ設けられており、本体部101の前後の2箇所にそれぞれ配置されている車輪102a、102aと、左右の側部にそれぞれ配置された前後の車輪102a、102aに架けられるクローラ102bと、を備える。クローラ102bは、環形状に配置された複数の板状の接地ブロック102cを備えた無限軌道である。杭打機100が地盤を走行するときにクローラ102bの接地ブロック102cが接地する。そして、前後の車輪102a、102aを回転させると、クローラ102bが、車輪102a、102aの回転方向に沿って循環移動することにより、杭打機100が地盤を走行する。
【0016】
重機移動装置1は、停止状態の杭打機100を移動する際に、クローラ102bにおける車輪102aの下部近傍部位に配置される。なお、以下の説明の便宜上、クローラ102bの回転に沿った方向を前後方向(図中X方向)、車輪102a、102aの回転軸に沿った方向を左右方向(図中Y方向)、前後方向及び左右方向に対して直角方向を上下方向(図中Z方向)と称することにする。特に、杭打部103が設けられている側を前側、その反対側を後側と称する。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る重機移動装置1の構成部品を示す分解斜視図である。重機移動装置1は、台車2と、台車2の載置面上に載置されるストッパユニット3と、台車2にストッパユニット3を固定させる固定ねじ4と、を備える。
【0018】
台車2は、略直方体形の台座10と、台座10の下部に配置される車輪11と、車輪11を支持し、台座10に回転自在に固定される車軸12と、台座10の上面に回転自在に載置されるターンテーブル13と、を備える。
【0019】
台座10の左右方向に沿って延びる前側の側面には、前方向に延在する延在片10aが2箇所に形成されている。同様に、台座10の後側の側面にも、後方向に延在する延在片10aが2箇所に形成されている。
【0020】
なお、
図1に示す例では、前側に配置された重機移動装置1と、後側に配置された重機移動装置1と、では、後述するストッパユニット3は同じ構成であるが、台車の形状が異なる。このように、重機移動装置1における台車の構成は、ストッパユニット3を固定可能な台座と、この台座を移動可能とする構成(車輪と車軸等)を備えれば、任意の構成とすることができる。
【0021】
ストッパユニット3は、長方形の座板20と、回転軸21と、4つのストッパ片22と、回転軸21の端部を支持する2本の支持体23と、を備える。
座板20は、左右方向に沿って延びる両側面にそれぞれ2つの円筒部20aを備えている。2つの円筒部20aは同軸に並列配置されており、円筒部20aの軸方向と車軸12の軸方向とは並行である。2つの円筒部20aの貫通孔は回転軸21が遊嵌可能な大きさである。
【0022】
座板20の座面の中心に固定ねじ4が挿入可能な孔部20bが形成されている。また、座板20の座面における孔部20bの両側部に突条20c、20cが形成されている。本実施形態によれば、突条20c、20cは円柱形の棒状部材を溶接等により固定することによって形成されている。2つの突条20cは、回転軸21の軸方向と平行であり、その間隔は、クローラ102bを構成する接地ブロック102cが少なくとも1つ入るように設定されている。言い換えれば、突条20cは、複数の接地ブロック102cの間に配置可能である。
【0023】
回転軸21は、円柱状に形成されており、座板20の左右の長さよりも若干長く構成されている。
【0024】
ストッパ片22は、矩形の板状部22aと、板状部22aの一つの角部の一部を前後方向に沿って延在させてなる、先端部がL字形の延在部22bと、延在部22bの先端部に形成された円筒部22cと、板状部22aの板面に立設させた棒状の取っ手22dと、を備える。円筒部22cは回転軸21が遊嵌可能な貫通孔を備えており、円筒部22cの中心軸は、板状部22aの厚さ方向に延びている。また、円筒部22cの長さは、座板20の角から円筒部20aの端面までの長さよりも短く形成されている。なお、
図2に示すように、円筒部22cと取っ手22dとは互いに逆向き延びており、4つのストッパ片22ごとに円筒部22c及び取っ手22dの位置が異なっている。
【0025】
ストッパ片22の延在部22bに固定ねじ25が取り付けられている。固定ねじ25は、締め付け方向に回すことにより、先端部が円筒部22cの内部に突出する。
【0026】
支持体23は、コ字状に形成されており、四角柱形の棒状部23aと、棒状部23aの両端部から直角方向に延在する軸受部23bとを備えている。棒状部23aの内側の長手方向の長さは、座板20の前後方向の長さと略同じである。軸受部23bには回転軸21が遊嵌可能な貫通孔が形成されている。
【0027】
支持体23は、座板20の左右方向の両端部に載置され、ねじ24によって座板20に固定される。すなわち、棒状部23aには上下方向に延びる貫通孔が2箇所に形成されており、座板20の左右方向の両側部にはこの貫通孔に対応するねじ孔が形成されており、支持体23を、座板20の左右方向の両端部に載置することにより、貫通孔とねじ孔とが重なり合う。そして、固定ねじ24を棒状部23aの貫通孔に通して座板20のねじ孔に螺合することにより、支持体23が座板20に固定される。この時、軸受部23bの貫通孔の中心軸と、円筒部20aの貫通孔の中心軸とが一致する。
【0028】
次に、ストッパユニット3の組み立て手順について説明する。まず、座板20の両側部の円筒部20a、20aにそれぞれ回転軸21を挿入する。次に、回転軸21の両端部に、ストッパ片22の円筒部22cを差し込む。この時、円筒部22cが内側を向き、取っ手22dが外側を向くようにストッパ片22を選択する。そして、固定ねじ25を締め付けて、回転軸21にストッパ片22を固定する。
【0029】
次に、回転軸21の両端部に支持体23の軸受部23bを差し込みながら、支持体23を座板20の端部に載置して、ねじ24を用いて支持体23を座板20に固定する。最後に、ターンテーブル13上に座板20を載置し、孔部20bに固定ねじ4を挿入して、ターンテーブル13の中心に形成されているねじ孔13aに締め付けることにより、ターンテーブル13上に座板20を固定する。これにより、ストッパユニット3が完成する。
【0030】
図3、
図4は、本実施形態の重機移動装置1の使用形態を示す説明図である。
図3(a)は、杭打機100を載せる前の重機移動装置1の状態を示すものである。杭打機100を載せる前の重機移動装置1は、ストッパ片22、22が外側に開いた状態にあり、回転軸21及びストッパ片22、22は、座板20の座面よりも下方に位置付けられている。また、ストッパ片22を座板20の外側に位置付けられている場合には、座板20の側面に延在部22bが当接するため、それ以上の外側への回動が規制される。また、ターンテーブル13が回転しても、ストッパ片22が台車2の本体に当接するため、ターンテーブル13の回転も規制される。
【0031】
重機移動装置1に杭打機100を載せる際には、
図4(a)に示すように、クローラ102bの接地ブロック102c、102cの間に、突条20cを位置付けるように載せる。
【0032】
重機移動装置1上に杭打機100を載せた後に、作業員が取っ手22dを持って、
図3(b)に示すように、ストッパ片22、22を座板20側に回動させて、座板20の座面に載置する。この際、ストッパ片22、22が回転軸21に固定されているため、一方のストッパ片22を回動させると他方のストッパ片22も同時に回動する。
【0033】
そして、
図3(c)に示すように、座板20の両側部のストッパ片22、22を座板20の座面に載置する。これにより、
図4(b)に示すように、ストッパ片22、22の板状部22aが、座板20の座面よりも上方に移動して、クローラ102bの側面に対向する位置に配置される。これにより、ストッパ片22、22により杭打機100の横ずれを規制可能になるとともに、ターンテーブル13に対する規制が解除されてストッパユニット3が回転自在となる。
【0034】
このように本実施形態の重機移動装置1によれば、重機移動装置1上に杭打機100が載せられた後に、ストッパ片22、22が走行部の側面に対面する位置に配置されることで、停止状態の杭打機100の移動時における、杭打機100の重機移動装置1に対するずれを低減できるようになり、重機移動装置1が座板20からずれ落ちることを防止できる。
【0035】
また、重機移動装置1の座板20にクローラ102bが載置される前には、ストッパ片22、22の板状部22a、22aが座板20の座面より下に配置されているので、座板20にクローラ102bを載置するときにストッパ片22、22が邪魔にならない。このため、重機移動装置1の座板20にクローラ102bを載置する際の作業性が向上する。
例えば、クローラ102bの外側の側面に対面する位置に配置されるストッパ片22を回動させることで、作業者の手が入りにくい内側の側面に対面する位置に配置されるストッパ片22も回動するので、ストッパ片22を回動させる作業性がより向上する。
【0036】
なお、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限るものではない。次に、本実施形態の変形例について、
図5、
図6を参照しながら説明する。
図5は本実施形態の変形例の構成を示す平面図、
図6は本実施形態の変形例の外観構成を示す斜視図である。本実施形態の変形例は、
図2に示すストッパユニット3の代わりにストッパユニット3Aを設けたものであり、ストッパユニット3Aは、ストッパユニット3における座板20と回転軸21を、座板30と回転軸31に変更したものであり、他の構成はストッパユニット3と同じである。なお、
図5、
図6において、
図2に示す部品と同一の部品については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
座板30は、ストッパユニット3の座板20の左右幅を広げたものであり、座板20における固定ねじ24に対応するねじ孔20d、20d(
図6(b)参照)以外に、座板30の左右方向の両端部にねじ孔30d、30d(
図6(a)参照)が形成されている。回転軸31は、ストッパユニット3の回転軸21を、座板20の左右幅を広げた分だけ長くしたものである。
【0038】
図6(a)は、支持体23をねじ孔20d、20dの部位に位置付けて固定ねじ24で固定した状態を示すものであり、
図6(b)は、支持体23をねじ孔30d、30dの部位に位置付けて固定ねじ24で固定した状態を示すものである。
図6(a)、
図6(b)に示すように、支持体23の位置を変えることにより、ストッパ片22の左右方向の可動範囲を広げたり狭めたりすることができる。また、このとき、固定ねじ25を緩めてストッパ片22を左右方向に移動させた後に締めることにより、互いに対向するストッパ片22、22の間隔を調節することができる。
【0039】
このように、本実施形態の変形例によれば、互いに対向するストッパ片22、22の間隔を変えることができるため、クローラの幅に合わせて、ストッパ片22、22の間隔を変えることが可能になり、多種のクローラに対応することが可能になる。
【0040】
また、上述した実施形態及び変形例は、杭打機100に適用する重機移動装置1を例として説明したが、本実施形態の重機移動装置1は、クローラを具備する重機であれば適用可能である。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 重機移動装置
2 台車
3,3A ストッパユニット
10 台座
20 座板
20c 突条
21 回転軸
22 ストッパ片
23 支持体
25 固定ねじ
30 座板
31 回転軸
100 杭打機
102b クローラ
102c 接地ブロック